JP2005002139A - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物を提供することにある。
【解決手段】天然ゴム及び/又はポリイソプレンゴムを70〜20重量部、並びに50〜75 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴムを30〜80重量部、含んでなる、合計で100重量部のゴム成分に対して、
HAF級よりも粒径が小さいカーボンブラックを60〜90重量部、
硫黄を1〜2重量部、及び
アルキルフェノールジスルフィドを0.2〜1重量部、配合してなるゴム組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】天然ゴム及び/又はポリイソプレンゴムを70〜20重量部、並びに50〜75 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴムを30〜80重量部、含んでなる、合計で100重量部のゴム成分に対して、
HAF級よりも粒径が小さいカーボンブラックを60〜90重量部、
硫黄を1〜2重量部、及び
アルキルフェノールジスルフィドを0.2〜1重量部、配合してなるゴム組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物に関する。より詳細には、本発明は、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物に関する。本発明に係るゴム組成物は、例えば、空気入りタイヤにおけるリム接触部(ビード部)の表面を覆うチェーファーゴムとして使用するのに好適である。好ましい態様において、本発明は、上述のゴム組成物が上記チェーファーゴムとして使用されている空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤ、特にトラックやバス等の重荷重用タイヤにおいては、タイヤ走行時の応力歪が集中する箇所としてビード部がある。このビード部において発生する故障としては、(1)リム擦れによるチェーファーゴムの摩耗、(2)発熱に起因するゴム硬化によるビードトウ部のゴム欠損、及び(3)チェーファーゴムの変形によるプライ剥離等が挙げられる。
【0003】
従来、チェーファーゴムにおける摩耗や発熱を考慮して、上記チェーファーゴムにポリブタジエンゴム(BR)を多量に配合することが一般に行われているけれども、これに伴い、チェーファーゴムが変形し易くなり、かつ破断物性が低下するため、上記(1)〜(3)等の故障を同時に防止することは困難であった。
【0004】
例えば、特開平7−266813号公報には、チェーファーゴムの基本配合にスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)又は特殊なポリブタジエンゴム(VC−BR(商品名))等を混入することにより、100%モジュラスおよび熱老化後の破断伸びを改良し、耐リム摩耗を損なうことなくプライ末端の剥離、ビートトウ部の損傷を防止することが開示されている。
【0005】
また、特開平7−81335号公報には、チェーファーゴムのヒール側ゴム並びにトウ側ゴムのクリープ性及び老化後切断伸びを規定したゴム組成物を使用することにより、耐リム擦性を損なうこと無く、プライ端の耐剥離性を向上し、かつビードトウ部の損傷欠落を防止することが開示されている。
【0006】
更に、特開平4−369533号公報には、チェーファーゴムに高シスでかつ分子量の異なるポリブタジエンゴム(BR)を2種以上ブレンドしたものを使用することにより、耐候性、亀裂成長性、耐外傷性、発熱性を損なうこと無く、スウェルを改良することが開示されている。
【0007】
また更に、特開平11−59142号公報には、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)と特定のポリブタジエンゴム(BR)との配合物に特定のカーボンブラックを配合することにより、チェーファーゴムの摩耗、ビードトウ部の欠損、及び変形を防止し、ビード部の耐久性を高めることが開示されている。
【0008】
更にまた、特開平10−236115号公報には、特定のヤング率を有する熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなり、特定の幅及び高さを有するビードトウ補強部を設けることにより、タイヤ重量の増加、乗り心地性の悪化、又はリムに対する嵌合性の悪化を招くこと無く、高速走行時の操縦安定性を高めることが開示されている。
【0009】
上記の如く、従来技術においては、リム接触部に使用されるゴム組成物において、カーボンブラックの配合量を増大させたり、高分子量のポリブタジエンゴム(BR)及び/又はスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を使用したり、異なる分子量を有する2種類以上のポリブタジエンゴム(BR)を配合したりすることによって、上記(1)〜(3)等の問題を解消しようとする試みがなされてきたけれども、これらの手法によっては、上記問題のすべてを満足のいくレベルで解消することは困難であり、一方では、加硫前のゴム組成物の粘度が増大し、製造過程における加工性が低下するという新たな問題が発生した。
【0010】
一方、低粘度のポリブタジエンゴム(BR)を使用することによって加硫前のゴム組成物の加工性を改良しようとすると、加硫前のゴム組成物の粘度が低下し、製造過程における加工性は向上するものの、耐リム擦れ性、耐セット性、耐トウ欠け性等が悪化する。
【0011】
以上のように、当該技術分野においては、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物に対する継続的な要求が存在している。
【0012】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】
特開昭7−266813号公報
【特許文献2】
特開平7−81335号公報
【特許文献3】
特開平4−369533号公報
【特許文献4】
特開平11−59142号公報
【特許文献5】
特開平10−236115号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)を70〜20重量部、並びに50〜75 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴム(BR)を30〜80重量部、含んでなる、合計で100重量部のゴム成分に対して、HAF級よりも粒径が小さいカーボンブラックを60〜90重量部、硫黄を1〜2重量部、及びアルキルフェノールジスルフィドを0.2〜1重量部、配合してなるゴム組成物によって達成される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)と特定のポリブタジエンゴム(BR)とを特定の配合比で配合してなるゴム成分に対して、特定の配合量のカーボンブラック、硫黄、及びアルキルフェノールジスルフィドを配合することにより、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物を提供することが可能であることを見出したことに基づくものである。
【0016】
すなわち、本発明に係るゴム組成物は、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)を70〜20重量部、並びに50〜75 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴム(BR)を30〜80重量部、含んでなる、合計で100重量部のゴム成分に対して、HAF級よりも粒径が小さいカーボンブラックを60〜90重量部、硫黄を1〜2重量部、及びアルキルフェノールジスルフィドを0.2〜1重量部、配合してなるゴム組成物である。
【0017】
本発明に係るゴム組成物において使用されるゴム成分は、主たる構成成分としての天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)並びに50〜75 mPa・s 、好ましくは50〜65 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴム(BR)を含んでなる。
【0018】
上記天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)としては、当該技術分野において既知のいずれの天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)を使用することもでき、これら両者の比率も、特に限定されるものではない。
【0019】
一方、上記ゴム成分に配合されるポリブタジエンゴム(BR)の5%トルエン溶液粘度が25℃において75 mPa・s を超える場合には、加硫前のゴム組成物の粘度が増大し、製造過程における加工性が低下するので好ましくない。逆に、上記ゴム成分に配合されるポリブタジエンゴム(BR)の5%トルエン溶液粘度が25℃において50 mPa・s 未満である場合には、加硫後のゴム組成物の破断物性(例えば、老化後の破断伸び)や耐摩耗性が不十分となるので好ましくない。
【0020】
尚、上記25℃における5%トルエン溶液粘度は、2.28gのポリブタジエンゴム(BR)を50mLのトルエンに溶解させた後、粘度計較正用標準液(JIS−Z8809に準拠)を標準液として用いて、キャノン−フェンスケ粘度計 No. 400を使用して、25℃において測定される値である。
【0021】
また、本発明に係るゴム組成物において使用されるゴム成分は、ゴム成分100重量部のうち、70〜20重量部、好ましくは60〜25重量部を天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)が占め、30〜80重量部、好ましくは40〜75重量部を上述のポリブタジエンゴム(BR)が占めるゴム成分である。
【0022】
本発明に係るゴム組成物においては、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)の配合量がゴム成分100重量部に対して70重量部を超える場合には、加硫前のゴム組成物の粘度が増大し、製造過程における加工性が低下することに加え、加硫後のゴム組成物の耐摩耗性が不良となるので好ましくない。逆に、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)の配合量がゴム成分100重量部に対して20重量部未満である場合には、加硫後のゴム組成物の破断物性(例えば、破断伸び)が不十分となるので好ましくない。
【0023】
従って、本発明に係るゴム組成物においては、上記ゴム成分に配合されるポリブタジエンゴム(BR)の配合量がゴム成分100重量部に対して30重量部未満である場合には、加硫前のゴム組成物の粘度が増大し、製造過程における加工性が低下することに加え、加硫後のゴム組成物の耐摩耗性が不良となるので好ましくない。逆に、上記ゴム成分に配合されるポリブタジエンゴム(BR)の配合量がゴム成分100重量部に対して80重量部を超える場合には、加硫後のゴム組成物の破断物性(例えば、破断伸び)が不十分となるので好ましくない。
【0024】
本発明に係るゴム組成物における充填材成分として配合されるカーボンブラックは、耐摩耗性を向上させる観点から、HAF級カーボンブラックよりも粒径が小さいカーボンブラック、好ましくはISAF級カーボンブラックよりも粒径が小さいカーボンブラックを配合するのが望ましい。
【0025】
上記カーボンブラックの配合量は、上記ゴム成分100重量部に対して60〜90重量部、好ましくは65〜80重量部であるのが望ましい。カーボンブラックの配合量がゴム成分100重量部に対して60重量部未満である場合には、加硫後のゴム組成物における硬さ及び耐摩耗性が不十分となるので好ましくない。
逆に、カーボンブラックの配合量がゴム成分100重量部に対して90重量部を超える場合には、未加硫のゴム組成物の粘度が増大するために加工性が低下し、加硫後のゴム組成物における発熱性が悪化するので好ましくない。
【0026】
上記の如く、本発明に係るゴム組成物においては、架橋剤成分として、硫黄及びアルキルフェノールジスルフィドが配合される。上記硫黄としては、ゴム配合技術分野において周知のものを使用することができ、例えば、油処理硫黄及び粉末硫黄等を例として挙げることができる。上記アルキルフェノールジスルフィドもまたゴム配合技術分野において周知のものを使用することができる。
【0027】
前述の如く、本発明に係るゴム組成物においては、硫黄の配合量が、上記ゴム成分100重量部に対して、1〜2重量部、好ましくは1.2〜1.8重量部であるのが望ましい。硫黄の配合量がゴム成分100重量部に対して1重量部未満である場合には、加硫によるゴム組成物において所望の架橋度を達成することができず、加硫後のゴム組成物の破断物性(例えば、破断伸び)及び耐摩耗性が不十分となるので好ましくない。逆に、硫黄の配合量がゴム成分100重量部に対して2重量部を超える場合には、モジュラスが過大となり、破断伸びが低下したり、老化による物性変化(破断物性の低下)が顕著になったりするので好ましくない。
【0028】
また、本発明に係るゴム組成物においては、アルキルフェノールジスルフィドの配合量が、上記ゴム成分100重量部に対して、0.2〜1重量部、好ましくは0.3〜0.9重量部であるのが望ましい。アルキルフェノールジスルフィドの配合量がゴム成分100重量部に対して0.2重量部未満である場合には、加硫後及び/又は老化後のゴム組成物における破断物性の改良効果が不十分となるので好ましくない。逆に、アルキルフェノールジスルフィドの配合量がゴム成分100重量部に対して1重量部を超える場合には、加硫によるゴム組成物において所望の架橋度を達成することができず、加硫後のゴム組成物の破断物性(例えば、破断伸び)及び耐摩耗性が不十分となるので好ましくない。
【0029】
本発明に係るゴム組成物には、上記各種構成成分に加えて、充填材(例えば、シリカ)、プロセスオイル、可塑剤、軟化剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫活性化剤、老化防止剤等、及び/又はゴム配合技術分野において一般的に使用される他の各種添加剤を更に配合することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0030】
本発明に係るゴム組成物は、公知のゴム用混練機械(例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等)を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0031】
もう1つの態様において、本発明は、タイヤ軸方向の左右に位置するビードワイヤー束の周りにカーカスプライ層の両端が各々巻き回されているビード部構造を有すること、及び上記ビード部のタイヤ軸方向の内側から外側にかけて表面を覆うチェーファーゴムにおいて上述のゴム組成物が使用されていること、を特徴とする空気入りタイヤに関する。
【0032】
以下に記載する標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7によって本発明を更に詳しく説明するけれども、本発明の技術的範囲は、これらの例に限定されるものではない。
【0033】
【実施例】
標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7
後述する各種ゴム組成物、各種試験片、及び各種試験タイヤの調製において使用される各種配合成分を、以下に列記する。
【0034】
配合成分
天然ゴム(NR):RSS 3号
ポリブタジエンゴム(BR−1):日本ゼオン株式会社製「Nipol BR−1220」(25℃における5%トルエン溶液粘度=56 mPa・s )
ポリブタジエンゴム(BR−2):日本ゼオン株式会社製「Nipol BR−1220L」(25℃における5%トルエン溶液粘度=35 mPa・s )
ポリブタジエンゴム(BR−3):日本ゼオン株式会社製「Nipol BRX3000」(25℃における5%トルエン溶液粘度=82 mPa・s )
【0035】
カーボンブラック(CB):東海カーボン株式会社製「シースト N」(HAF級)
アロマチックオイル(オイル):共同石油株式会社製「プロセスオイル X−140」
老化防止剤(6PPD):Flexsys社製「SANTOFLEX 6PPD」(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン)
亜鉛華:正同化学工業株式会社製「酸化亜鉛 3種」
ステアリン酸:日本油脂株式会社製「ビーズステアリン酸」
加硫促進剤(TBBS):大内新興化学工業(株)製「ノクセラー NS−F」(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリル−スルフェンアミド)
硫黄:鶴見化学工業株式会社製「金華印微粉硫黄」
アルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 ):PENWALT Chemicals Company 製「Vultac(商標)7 」(アミルフェノールジスルフィド重合物/硫黄含有量=30.5%)
【0036】
サンプルの調製
(1)各種ゴム組成物の調製
硫黄、アルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )、及び加硫促進剤(TBBS)を除くすべての上記成分を、以下の表Iに示す配合量で、1.8リットルの密閉型ミキサーに入れて、3〜5分間混練し、165±5℃に達したときにマスターバッチを放出した。このマスターバッチに、以下の表Iに示す配合量の硫黄、アルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )、及び加硫促進剤(TBBS)を添加し、8インチのオープンロールで混練して、標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7のための各種ゴム組成物を得た。
【0037】
【表1】
【0038】
(2)各種試験片の調製
上記各種ゴム組成物を、15×15×0.2cmの金型中で150℃において30分間プレス加硫して、各種ゴム組成物についての加硫物性評価用試験片を調製した。
【0039】
(3)各種試験タイヤの調製
タイヤサイズを11R22.5 14PRとして、図1に示されている構造を有するビード部のタイヤ軸方向の内側から外側にかけて表面を覆うチェーファーゴムにおいて上記各種ゴム組成物を使用して、当該技術分野において知られている従来の成形・加硫方法によって、所定本数の各種試験タイヤを製造した。
【0040】
但し、後に詳述するように、比較例1、6、及び7のゴム組成物については、試験片の目的とする各種物性のいずれかにおいて、改良効果の低下または悪化が認められたことからタイヤ性能における改良を期待することができないとの理由から、また、比較例2のゴム組成物については、未加硫時の粘度が大幅に増大したことからタイヤ製造時の押出加工が困難となり、所望の押出形状が得られなかったとの理由から、それぞれ、対応する試験タイヤを製造しなかった。
【0041】
サンプルの物性測定
(1)各種ゴム組成物の未加硫物性の測定
標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7において得られた各種ゴム組成物の未加硫物性を、以下の試験方法に従って測定した。
【0042】
1)ムーニー粘度:
未加硫の上記各種ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を、JIS K6300に準拠して測定し、標準例の測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、未加硫のゴム組成物の粘度が高く、加工性が低いことを意味する。
【0043】
(2)各種試験片の加硫物性の測定
標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7において得られた各種ゴム組成物からなる上記試験片の各種加硫物性を、以下の試験方法に従って測定した。
【0044】
2)硬度(デュロA硬さ):
未老化の上記各種試験片について、JIS K6251に準拠して測定した。硬度が高いほど、例えば、空気入りタイヤのリム接触部において使用される場合の変形が小さいことを意味する。
【0045】
3)老化前の破断伸び:
未老化の上記各種試験片(ダンベル状3号型とした)の破断伸び(老化前)をJIS K6251(旧JIS K6301)に準拠して測定し、標準例の測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど破断物性が高く、例えば、空気入りタイヤのリム接触部に使用される場合のプライ末端の剥離やビードトウ部の損傷等が少ない(耐トウ欠け性が高い)ことを意味する。
【0046】
4)老化後の破断伸び:
100℃において24時間保持することによって老化させた、老化後の上記各種試験片(ダンベル状3号型とした)の破断伸び(老化後)をJIS K6251(旧JIS K6301)に準拠して測定し、標準例の測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、加硫後のゴム組成物の耐熱老化性が高く、例えば、空気入りタイヤのリム接触部に使用される場合において、走行に伴う熱老化を受けた後のプライ末端の剥離やビードトウ部の損傷等が少ない(耐トウ欠け性が高い)ことを意味する。
【0047】
5)耐セット性:
上記各種ゴム組成物について、ショアD硬度測定用試料と同様の成型条件を使用して所定の形状を有する試料片を作成し、JIS K6262に準拠して、100℃において、25%の圧縮を72時間にわたって加えた後の圧縮永久歪(%)を測定し、測定値の逆数を算出し、標準例の逆数値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、耐セット性が良好であることを意味する。
【0048】
6)耐摩耗性:
未老化の上記各種試験片について、JIS K6264に準拠して、ピコ摩耗試験機を使用して、室温において、摩耗減量を測定し、標準例の測定値の逆数を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、加硫後のゴム組成物の耐摩耗性が良好であり、例えば、空気入りタイヤのリム接触部に使用される場合における、リム接触部とリムとの擦れによる、リム接触部の摩耗が少ない(耐リム擦れ性が高い)ことを意味する。
【0049】
(3)各種試験タイヤのタイヤ性能の測定
標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7において得られた各種ゴム組成物がチェーファーゴムにおいて使用されている上記試験タイヤの各種タイヤ性能を、以下の試験方法に従って測定した。
【0050】
7)耐リム擦れ性:
上記各種試験タイヤを積載量10トンのトラックに装着して実地走行試験を行い、10万km走行後にタイヤを回収し、タイヤをリムから取り外し、リムフランジ部のリム擦れ(チェーファーゴムの摩耗状況)を確認した。目視により5段階評価(5:良〜1:悪)した。
【0051】
8)耐ビードトウ欠け性:
上記各種試験タイヤについて、上記7)と同様の条件で実地走行試験を行い、ビードトウ部のゴムの欠損を確認し、更に、リムへの組み付け及びリムからの取り外しを行い、ビードトウ欠損に対する性能を確認した。目視により5段階評価(5:良〜1:悪)した。
【0052】
9)耐セット性:
上記各種試験タイヤについて、上記7)と同様の条件で実地走行試験を行い、ビードトウ部を切断し、図1において矢印によって示されている部分のチェーファーゴムのゲージを測定し、標準例の測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、走行後の上記ゲージの値が大きく、チェーファーゴムの上記部分における変形が小さい(耐セット性が高い)ことを意味する。
【0053】
10)ビード部耐久性:
上記各種試験タイヤについて、タイヤ踏面部を残溝0.5mmまでバフ切削し、当該タイヤを鋼鉄製ドラムの周上に内圧荷重をJIS規格の正規条件として押し付けながら走行させ、ビード部故障が起こるまでの走行距離を測定し、標準例の測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、ビード部故障が起こるまでの走行距離が長い(耐セット性が高い)ことを意味する。
【0054】
サンプルの評価
上記各種ゴム組成物、各種試験片、及び各種試験タイヤについての上記1)〜10)の各種物性測定の結果もまた、上記表Iに示されている。尚、上記表Iに示されているように、すべての例において、チェーファーゴム組成物におけるアロマチックオイル、老化防止剤(6PPD)、亜鉛華、ステアリン酸、及び加硫促進剤(TBBS)の配合量は同一である。
【0055】
標準例のゴム組成物は、天然ゴム(NR)50重量部及び56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)50重量部からなるゴム成分100重量部に対して、70重量部のカーボンブラック(CB)及び2.5重量部の硫黄を配合してなる、標準的な組成を有する、対照標準となるゴム組成物である。上述の如く、各種物性測定においては、標準例のゴム組成物についての測定結果を基準として、各種サンプルの物性を比較評価した。
【0056】
比較例1のゴム組成物は、56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)の代わりに相対的に低い溶液粘度(35 mPa・s )を有するポリブタジエンゴム(BR−2)をゴム成分におけるポリブタジエンゴムとして使用したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。溶液粘度が相対的に低いポリブタジエンゴム(BR−2)を使用した結果、未加硫時のムーニー粘度が低下し、良好な加工性が得られたけれども、試験片においては、老化前後での破断伸びが著しく低下し、耐セット性及び耐摩耗性も大幅に低下した。当該ゴム組成物については、試験タイヤによる評価は行わなかった。
【0057】
比較例2のゴム組成物は、上記比較例1のゴム組成物の場合とは逆に、56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)の代わりに相対的に高い溶液粘度(82 mPa・s )を有するポリブタジエンゴム(BR−3)をゴム成分におけるポリブタジエンゴムとして使用したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。溶液粘度が相対的に高いポリブタジエンゴム(BR−3)を使用した結果、試験片においては、すべての評価項目において良好な結果が得られたけれども、未加硫時のムーニー粘度が大幅に増大し、加工性が不十分な結果となったので、当該ゴム組成物についても、試験タイヤによる評価は行わなかった。
【0058】
実施例1のゴム組成物は、硫黄の配合量をゴム成分100重量部に対して2.5重量部から1.5重量部に減らし、これに対応して、ゴム成分100重量部に対して0.4重量部のアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )を新たに配合したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する本発明に係るゴム組成物である。当該ゴム組成物における各種構成成分の配合量はいずれも本発明の規定を満足するものである。その結果、未加硫時のムーニー粘度の増大を伴うこと無く、試験片においても、標準例のゴム組成物と同等の硬度(デュロA硬さ)及び耐摩耗性を維持しつつ、老化前後での破断伸び及び耐セット性を大幅に改善することに成功した。また、当該ゴム組成物をチェーファーゴムとして使用した試験タイヤについても、耐リム擦れ性、耐ビードトウ欠け性、耐セット性、及びビード部耐久性のすべての評価項目において大幅な改良が認められた。
【0059】
実施例2のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、天然ゴム(NR)の配合量を50重量部から30重量部に減らし、これに対応して、56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)の配合量を50重量部から70重量部に増やし、更にアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )の配合量を0.4重量部から0.6重量部に増やしたことを除き、実施例1のゴム組成物と同じ組成を有する本発明に係るゴム組成物である。当該ゴム組成物における各種構成成分の配合量もまた、本発明の規定を満足するものである。その結果、未加硫時のムーニー粘度が低下し、試験片においても、標準例のゴム組成物と同等の硬度(デュロA硬さ)を維持しつつ、老化前後での破断伸び、耐セット性、及び耐摩耗性を大幅に改善することに成功した。特に、試験片における耐摩耗性については、実施例1のゴム組成物を使用した場合に勝る著しい改良が認められた。また、当該ゴム組成物をチェーファーゴムとして使用した試験タイヤについても、実施例1のゴム組成物を使用した場合と同様に、すべての評価項目において大幅な改良が認められた。すなわち、本発明の規定を満足する組成とすることにより、従来技術において見られるようなポリブタジエンゴムの配合量の増大に伴う破断物性及び耐セット性の低下を生ずること無く、すべての評価項目において同時に良好な結果を得ることができた。
【0060】
比較例3のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、天然ゴム(NR)の配合量を30重量部から15重量部に減らし、これに対応して、56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)の配合量を70重量部から85重量部に増やしたことを除き、実施例2のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。当該ゴム組成物のゴム成分における天然ゴム(NR)及びポリブタジエンゴム(BR)の配合量は、それぞれ、本発明の規定の下限及び上限を超えて逸脱している。その結果、未加硫時のムーニー粘度は大幅に低下し、試験片における耐摩耗性及び試験タイヤにおける耐リム擦れ性は向上したものの、試験片においては、老化前後での破断伸び及び耐セット性が悪化し、試験タイヤにおいても、耐ビードトウ欠け性、耐セット性、及びビード部耐久性が大幅に悪化した。
【0061】
比較例4のゴム組成物は、比較例3のゴム組成物とは逆に、ゴム成分100重量部に対して、天然ゴム(NR)の配合量を30重量部から85重量部に増やし、これに対応して、56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)の配合量を70重量部から15重量部に減らしたことを除き、実施例2のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。当該ゴム組成物のゴム成分における天然ゴム(NR)及びポリブタジエンゴム(BR)の配合量は、それぞれ、本発明の規定の上限及び下限を超えて逸脱している。その結果、未加硫時のムーニー粘度が大幅に増大し、試験片における耐摩耗性並びに試験タイヤにおける耐リム擦れ性が大幅に悪化した。
【0062】
比較例5のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、カーボンブラック(CB)の配合量を70重量部から55重量部に減らすと同時に、硫黄の配合量を2.5重量部から2.0重量部に減らし、これに対応して、ゴム成分100重量部に対して0.9重量部のアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )を新たに配合したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。当該ゴム組成物のゴム成分における硫黄及びアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )の配合量は本発明の規定を満足するものの、カーボンブラック(CB)の配合量は本発明の規定の下限を超えて逸脱している。その結果、試験片における硬度(デュロA硬さ)が低下し、試験片における耐摩耗性並びに試験タイヤにおける耐リム擦れ性が大幅に悪化し、ビード部耐久性も著しく低下した。
【0063】
比較例6のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、硫黄の配合量を2.5重量部から2.3重量部に減らし、これに対応して、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部のアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )を新たに配合したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。当該ゴム組成物のゴム成分における硫黄及びアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )の配合量は、それぞれ、本発明の規定の上限及び下限を超えて逸脱している。その結果、試験片についてのいずれの評価項目においても、標準例のゴム組成物と同等の結果しか得られず、所望の改良効果は認められなかった。従って、当該ゴム組成物については、試験タイヤによる評価は行わなかった。
【0064】
比較例7のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、硫黄の配合量を2.5重量部から0.9重量部に減らし、これに対応して、ゴム成分100重量部に対して1.2重量部のアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )を新たに配合したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。当該ゴム組成物のゴム成分における硫黄及びアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )の配合量は、比較例6のゴム組成物とは逆に、それぞれ、本発明の規定の下限及び上限を超えて逸脱している。その結果、試験片における老化前の破断伸び及び耐摩耗性が低下した。当該ゴム組成物についても、試験タイヤによる評価は行わなかった。
【0065】
以上の結果から、本発明の規定に従って、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)を70〜20重量部、並びに50〜75 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴム(BR)を30〜80重量部、含んでなる、合計で100重量部のゴム成分に対して、HAF級よりも粒径が小さいカーボンブラックを60〜90重量部、硫黄を1〜2重量部、及びアルキルフェノールジスルフィドを0.2〜1重量部、配合することにより、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物を提供することが可能であることが明らかとなった。
【0066】
【発明の効果】
本発明により、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物が提供される。上述の如く、本発明に係るゴム組成物は、例えば、空気入りタイヤにおけるリム接触部(ビード部)の表面を覆うチェーファーゴムとして使用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴム組成物をチェーファーゴムに使用した空気入りタイヤのビード部の構造を示す子午線方向断面図である。
【符号の説明】
1…ビード部の構造
2…チェーファーゴム
3…ホイールリムフランジ
4…ビードトウ部
5…プライ末端
6…ワイヤーチェーファー層
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物に関する。より詳細には、本発明は、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物に関する。本発明に係るゴム組成物は、例えば、空気入りタイヤにおけるリム接触部(ビード部)の表面を覆うチェーファーゴムとして使用するのに好適である。好ましい態様において、本発明は、上述のゴム組成物が上記チェーファーゴムとして使用されている空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤ、特にトラックやバス等の重荷重用タイヤにおいては、タイヤ走行時の応力歪が集中する箇所としてビード部がある。このビード部において発生する故障としては、(1)リム擦れによるチェーファーゴムの摩耗、(2)発熱に起因するゴム硬化によるビードトウ部のゴム欠損、及び(3)チェーファーゴムの変形によるプライ剥離等が挙げられる。
【0003】
従来、チェーファーゴムにおける摩耗や発熱を考慮して、上記チェーファーゴムにポリブタジエンゴム(BR)を多量に配合することが一般に行われているけれども、これに伴い、チェーファーゴムが変形し易くなり、かつ破断物性が低下するため、上記(1)〜(3)等の故障を同時に防止することは困難であった。
【0004】
例えば、特開平7−266813号公報には、チェーファーゴムの基本配合にスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)又は特殊なポリブタジエンゴム(VC−BR(商品名))等を混入することにより、100%モジュラスおよび熱老化後の破断伸びを改良し、耐リム摩耗を損なうことなくプライ末端の剥離、ビートトウ部の損傷を防止することが開示されている。
【0005】
また、特開平7−81335号公報には、チェーファーゴムのヒール側ゴム並びにトウ側ゴムのクリープ性及び老化後切断伸びを規定したゴム組成物を使用することにより、耐リム擦性を損なうこと無く、プライ端の耐剥離性を向上し、かつビードトウ部の損傷欠落を防止することが開示されている。
【0006】
更に、特開平4−369533号公報には、チェーファーゴムに高シスでかつ分子量の異なるポリブタジエンゴム(BR)を2種以上ブレンドしたものを使用することにより、耐候性、亀裂成長性、耐外傷性、発熱性を損なうこと無く、スウェルを改良することが開示されている。
【0007】
また更に、特開平11−59142号公報には、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)と特定のポリブタジエンゴム(BR)との配合物に特定のカーボンブラックを配合することにより、チェーファーゴムの摩耗、ビードトウ部の欠損、及び変形を防止し、ビード部の耐久性を高めることが開示されている。
【0008】
更にまた、特開平10−236115号公報には、特定のヤング率を有する熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなり、特定の幅及び高さを有するビードトウ補強部を設けることにより、タイヤ重量の増加、乗り心地性の悪化、又はリムに対する嵌合性の悪化を招くこと無く、高速走行時の操縦安定性を高めることが開示されている。
【0009】
上記の如く、従来技術においては、リム接触部に使用されるゴム組成物において、カーボンブラックの配合量を増大させたり、高分子量のポリブタジエンゴム(BR)及び/又はスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を使用したり、異なる分子量を有する2種類以上のポリブタジエンゴム(BR)を配合したりすることによって、上記(1)〜(3)等の問題を解消しようとする試みがなされてきたけれども、これらの手法によっては、上記問題のすべてを満足のいくレベルで解消することは困難であり、一方では、加硫前のゴム組成物の粘度が増大し、製造過程における加工性が低下するという新たな問題が発生した。
【0010】
一方、低粘度のポリブタジエンゴム(BR)を使用することによって加硫前のゴム組成物の加工性を改良しようとすると、加硫前のゴム組成物の粘度が低下し、製造過程における加工性は向上するものの、耐リム擦れ性、耐セット性、耐トウ欠け性等が悪化する。
【0011】
以上のように、当該技術分野においては、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物に対する継続的な要求が存在している。
【0012】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】
特開昭7−266813号公報
【特許文献2】
特開平7−81335号公報
【特許文献3】
特開平4−369533号公報
【特許文献4】
特開平11−59142号公報
【特許文献5】
特開平10−236115号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)を70〜20重量部、並びに50〜75 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴム(BR)を30〜80重量部、含んでなる、合計で100重量部のゴム成分に対して、HAF級よりも粒径が小さいカーボンブラックを60〜90重量部、硫黄を1〜2重量部、及びアルキルフェノールジスルフィドを0.2〜1重量部、配合してなるゴム組成物によって達成される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)と特定のポリブタジエンゴム(BR)とを特定の配合比で配合してなるゴム成分に対して、特定の配合量のカーボンブラック、硫黄、及びアルキルフェノールジスルフィドを配合することにより、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物を提供することが可能であることを見出したことに基づくものである。
【0016】
すなわち、本発明に係るゴム組成物は、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)を70〜20重量部、並びに50〜75 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴム(BR)を30〜80重量部、含んでなる、合計で100重量部のゴム成分に対して、HAF級よりも粒径が小さいカーボンブラックを60〜90重量部、硫黄を1〜2重量部、及びアルキルフェノールジスルフィドを0.2〜1重量部、配合してなるゴム組成物である。
【0017】
本発明に係るゴム組成物において使用されるゴム成分は、主たる構成成分としての天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)並びに50〜75 mPa・s 、好ましくは50〜65 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴム(BR)を含んでなる。
【0018】
上記天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)としては、当該技術分野において既知のいずれの天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)を使用することもでき、これら両者の比率も、特に限定されるものではない。
【0019】
一方、上記ゴム成分に配合されるポリブタジエンゴム(BR)の5%トルエン溶液粘度が25℃において75 mPa・s を超える場合には、加硫前のゴム組成物の粘度が増大し、製造過程における加工性が低下するので好ましくない。逆に、上記ゴム成分に配合されるポリブタジエンゴム(BR)の5%トルエン溶液粘度が25℃において50 mPa・s 未満である場合には、加硫後のゴム組成物の破断物性(例えば、老化後の破断伸び)や耐摩耗性が不十分となるので好ましくない。
【0020】
尚、上記25℃における5%トルエン溶液粘度は、2.28gのポリブタジエンゴム(BR)を50mLのトルエンに溶解させた後、粘度計較正用標準液(JIS−Z8809に準拠)を標準液として用いて、キャノン−フェンスケ粘度計 No. 400を使用して、25℃において測定される値である。
【0021】
また、本発明に係るゴム組成物において使用されるゴム成分は、ゴム成分100重量部のうち、70〜20重量部、好ましくは60〜25重量部を天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)が占め、30〜80重量部、好ましくは40〜75重量部を上述のポリブタジエンゴム(BR)が占めるゴム成分である。
【0022】
本発明に係るゴム組成物においては、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)の配合量がゴム成分100重量部に対して70重量部を超える場合には、加硫前のゴム組成物の粘度が増大し、製造過程における加工性が低下することに加え、加硫後のゴム組成物の耐摩耗性が不良となるので好ましくない。逆に、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)の配合量がゴム成分100重量部に対して20重量部未満である場合には、加硫後のゴム組成物の破断物性(例えば、破断伸び)が不十分となるので好ましくない。
【0023】
従って、本発明に係るゴム組成物においては、上記ゴム成分に配合されるポリブタジエンゴム(BR)の配合量がゴム成分100重量部に対して30重量部未満である場合には、加硫前のゴム組成物の粘度が増大し、製造過程における加工性が低下することに加え、加硫後のゴム組成物の耐摩耗性が不良となるので好ましくない。逆に、上記ゴム成分に配合されるポリブタジエンゴム(BR)の配合量がゴム成分100重量部に対して80重量部を超える場合には、加硫後のゴム組成物の破断物性(例えば、破断伸び)が不十分となるので好ましくない。
【0024】
本発明に係るゴム組成物における充填材成分として配合されるカーボンブラックは、耐摩耗性を向上させる観点から、HAF級カーボンブラックよりも粒径が小さいカーボンブラック、好ましくはISAF級カーボンブラックよりも粒径が小さいカーボンブラックを配合するのが望ましい。
【0025】
上記カーボンブラックの配合量は、上記ゴム成分100重量部に対して60〜90重量部、好ましくは65〜80重量部であるのが望ましい。カーボンブラックの配合量がゴム成分100重量部に対して60重量部未満である場合には、加硫後のゴム組成物における硬さ及び耐摩耗性が不十分となるので好ましくない。
逆に、カーボンブラックの配合量がゴム成分100重量部に対して90重量部を超える場合には、未加硫のゴム組成物の粘度が増大するために加工性が低下し、加硫後のゴム組成物における発熱性が悪化するので好ましくない。
【0026】
上記の如く、本発明に係るゴム組成物においては、架橋剤成分として、硫黄及びアルキルフェノールジスルフィドが配合される。上記硫黄としては、ゴム配合技術分野において周知のものを使用することができ、例えば、油処理硫黄及び粉末硫黄等を例として挙げることができる。上記アルキルフェノールジスルフィドもまたゴム配合技術分野において周知のものを使用することができる。
【0027】
前述の如く、本発明に係るゴム組成物においては、硫黄の配合量が、上記ゴム成分100重量部に対して、1〜2重量部、好ましくは1.2〜1.8重量部であるのが望ましい。硫黄の配合量がゴム成分100重量部に対して1重量部未満である場合には、加硫によるゴム組成物において所望の架橋度を達成することができず、加硫後のゴム組成物の破断物性(例えば、破断伸び)及び耐摩耗性が不十分となるので好ましくない。逆に、硫黄の配合量がゴム成分100重量部に対して2重量部を超える場合には、モジュラスが過大となり、破断伸びが低下したり、老化による物性変化(破断物性の低下)が顕著になったりするので好ましくない。
【0028】
また、本発明に係るゴム組成物においては、アルキルフェノールジスルフィドの配合量が、上記ゴム成分100重量部に対して、0.2〜1重量部、好ましくは0.3〜0.9重量部であるのが望ましい。アルキルフェノールジスルフィドの配合量がゴム成分100重量部に対して0.2重量部未満である場合には、加硫後及び/又は老化後のゴム組成物における破断物性の改良効果が不十分となるので好ましくない。逆に、アルキルフェノールジスルフィドの配合量がゴム成分100重量部に対して1重量部を超える場合には、加硫によるゴム組成物において所望の架橋度を達成することができず、加硫後のゴム組成物の破断物性(例えば、破断伸び)及び耐摩耗性が不十分となるので好ましくない。
【0029】
本発明に係るゴム組成物には、上記各種構成成分に加えて、充填材(例えば、シリカ)、プロセスオイル、可塑剤、軟化剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫活性化剤、老化防止剤等、及び/又はゴム配合技術分野において一般的に使用される他の各種添加剤を更に配合することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0030】
本発明に係るゴム組成物は、公知のゴム用混練機械(例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等)を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0031】
もう1つの態様において、本発明は、タイヤ軸方向の左右に位置するビードワイヤー束の周りにカーカスプライ層の両端が各々巻き回されているビード部構造を有すること、及び上記ビード部のタイヤ軸方向の内側から外側にかけて表面を覆うチェーファーゴムにおいて上述のゴム組成物が使用されていること、を特徴とする空気入りタイヤに関する。
【0032】
以下に記載する標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7によって本発明を更に詳しく説明するけれども、本発明の技術的範囲は、これらの例に限定されるものではない。
【0033】
【実施例】
標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7
後述する各種ゴム組成物、各種試験片、及び各種試験タイヤの調製において使用される各種配合成分を、以下に列記する。
【0034】
配合成分
天然ゴム(NR):RSS 3号
ポリブタジエンゴム(BR−1):日本ゼオン株式会社製「Nipol BR−1220」(25℃における5%トルエン溶液粘度=56 mPa・s )
ポリブタジエンゴム(BR−2):日本ゼオン株式会社製「Nipol BR−1220L」(25℃における5%トルエン溶液粘度=35 mPa・s )
ポリブタジエンゴム(BR−3):日本ゼオン株式会社製「Nipol BRX3000」(25℃における5%トルエン溶液粘度=82 mPa・s )
【0035】
カーボンブラック(CB):東海カーボン株式会社製「シースト N」(HAF級)
アロマチックオイル(オイル):共同石油株式会社製「プロセスオイル X−140」
老化防止剤(6PPD):Flexsys社製「SANTOFLEX 6PPD」(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン)
亜鉛華:正同化学工業株式会社製「酸化亜鉛 3種」
ステアリン酸:日本油脂株式会社製「ビーズステアリン酸」
加硫促進剤(TBBS):大内新興化学工業(株)製「ノクセラー NS−F」(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリル−スルフェンアミド)
硫黄:鶴見化学工業株式会社製「金華印微粉硫黄」
アルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 ):PENWALT Chemicals Company 製「Vultac(商標)7 」(アミルフェノールジスルフィド重合物/硫黄含有量=30.5%)
【0036】
サンプルの調製
(1)各種ゴム組成物の調製
硫黄、アルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )、及び加硫促進剤(TBBS)を除くすべての上記成分を、以下の表Iに示す配合量で、1.8リットルの密閉型ミキサーに入れて、3〜5分間混練し、165±5℃に達したときにマスターバッチを放出した。このマスターバッチに、以下の表Iに示す配合量の硫黄、アルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )、及び加硫促進剤(TBBS)を添加し、8インチのオープンロールで混練して、標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7のための各種ゴム組成物を得た。
【0037】
【表1】
【0038】
(2)各種試験片の調製
上記各種ゴム組成物を、15×15×0.2cmの金型中で150℃において30分間プレス加硫して、各種ゴム組成物についての加硫物性評価用試験片を調製した。
【0039】
(3)各種試験タイヤの調製
タイヤサイズを11R22.5 14PRとして、図1に示されている構造を有するビード部のタイヤ軸方向の内側から外側にかけて表面を覆うチェーファーゴムにおいて上記各種ゴム組成物を使用して、当該技術分野において知られている従来の成形・加硫方法によって、所定本数の各種試験タイヤを製造した。
【0040】
但し、後に詳述するように、比較例1、6、及び7のゴム組成物については、試験片の目的とする各種物性のいずれかにおいて、改良効果の低下または悪化が認められたことからタイヤ性能における改良を期待することができないとの理由から、また、比較例2のゴム組成物については、未加硫時の粘度が大幅に増大したことからタイヤ製造時の押出加工が困難となり、所望の押出形状が得られなかったとの理由から、それぞれ、対応する試験タイヤを製造しなかった。
【0041】
サンプルの物性測定
(1)各種ゴム組成物の未加硫物性の測定
標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7において得られた各種ゴム組成物の未加硫物性を、以下の試験方法に従って測定した。
【0042】
1)ムーニー粘度:
未加硫の上記各種ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を、JIS K6300に準拠して測定し、標準例の測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、未加硫のゴム組成物の粘度が高く、加工性が低いことを意味する。
【0043】
(2)各種試験片の加硫物性の測定
標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7において得られた各種ゴム組成物からなる上記試験片の各種加硫物性を、以下の試験方法に従って測定した。
【0044】
2)硬度(デュロA硬さ):
未老化の上記各種試験片について、JIS K6251に準拠して測定した。硬度が高いほど、例えば、空気入りタイヤのリム接触部において使用される場合の変形が小さいことを意味する。
【0045】
3)老化前の破断伸び:
未老化の上記各種試験片(ダンベル状3号型とした)の破断伸び(老化前)をJIS K6251(旧JIS K6301)に準拠して測定し、標準例の測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど破断物性が高く、例えば、空気入りタイヤのリム接触部に使用される場合のプライ末端の剥離やビードトウ部の損傷等が少ない(耐トウ欠け性が高い)ことを意味する。
【0046】
4)老化後の破断伸び:
100℃において24時間保持することによって老化させた、老化後の上記各種試験片(ダンベル状3号型とした)の破断伸び(老化後)をJIS K6251(旧JIS K6301)に準拠して測定し、標準例の測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、加硫後のゴム組成物の耐熱老化性が高く、例えば、空気入りタイヤのリム接触部に使用される場合において、走行に伴う熱老化を受けた後のプライ末端の剥離やビードトウ部の損傷等が少ない(耐トウ欠け性が高い)ことを意味する。
【0047】
5)耐セット性:
上記各種ゴム組成物について、ショアD硬度測定用試料と同様の成型条件を使用して所定の形状を有する試料片を作成し、JIS K6262に準拠して、100℃において、25%の圧縮を72時間にわたって加えた後の圧縮永久歪(%)を測定し、測定値の逆数を算出し、標準例の逆数値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、耐セット性が良好であることを意味する。
【0048】
6)耐摩耗性:
未老化の上記各種試験片について、JIS K6264に準拠して、ピコ摩耗試験機を使用して、室温において、摩耗減量を測定し、標準例の測定値の逆数を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、加硫後のゴム組成物の耐摩耗性が良好であり、例えば、空気入りタイヤのリム接触部に使用される場合における、リム接触部とリムとの擦れによる、リム接触部の摩耗が少ない(耐リム擦れ性が高い)ことを意味する。
【0049】
(3)各種試験タイヤのタイヤ性能の測定
標準例、実施例1及び2、並びに比較例1〜7において得られた各種ゴム組成物がチェーファーゴムにおいて使用されている上記試験タイヤの各種タイヤ性能を、以下の試験方法に従って測定した。
【0050】
7)耐リム擦れ性:
上記各種試験タイヤを積載量10トンのトラックに装着して実地走行試験を行い、10万km走行後にタイヤを回収し、タイヤをリムから取り外し、リムフランジ部のリム擦れ(チェーファーゴムの摩耗状況)を確認した。目視により5段階評価(5:良〜1:悪)した。
【0051】
8)耐ビードトウ欠け性:
上記各種試験タイヤについて、上記7)と同様の条件で実地走行試験を行い、ビードトウ部のゴムの欠損を確認し、更に、リムへの組み付け及びリムからの取り外しを行い、ビードトウ欠損に対する性能を確認した。目視により5段階評価(5:良〜1:悪)した。
【0052】
9)耐セット性:
上記各種試験タイヤについて、上記7)と同様の条件で実地走行試験を行い、ビードトウ部を切断し、図1において矢印によって示されている部分のチェーファーゴムのゲージを測定し、標準例の測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、走行後の上記ゲージの値が大きく、チェーファーゴムの上記部分における変形が小さい(耐セット性が高い)ことを意味する。
【0053】
10)ビード部耐久性:
上記各種試験タイヤについて、タイヤ踏面部を残溝0.5mmまでバフ切削し、当該タイヤを鋼鉄製ドラムの周上に内圧荷重をJIS規格の正規条件として押し付けながら走行させ、ビード部故障が起こるまでの走行距離を測定し、標準例の測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、ビード部故障が起こるまでの走行距離が長い(耐セット性が高い)ことを意味する。
【0054】
サンプルの評価
上記各種ゴム組成物、各種試験片、及び各種試験タイヤについての上記1)〜10)の各種物性測定の結果もまた、上記表Iに示されている。尚、上記表Iに示されているように、すべての例において、チェーファーゴム組成物におけるアロマチックオイル、老化防止剤(6PPD)、亜鉛華、ステアリン酸、及び加硫促進剤(TBBS)の配合量は同一である。
【0055】
標準例のゴム組成物は、天然ゴム(NR)50重量部及び56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)50重量部からなるゴム成分100重量部に対して、70重量部のカーボンブラック(CB)及び2.5重量部の硫黄を配合してなる、標準的な組成を有する、対照標準となるゴム組成物である。上述の如く、各種物性測定においては、標準例のゴム組成物についての測定結果を基準として、各種サンプルの物性を比較評価した。
【0056】
比較例1のゴム組成物は、56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)の代わりに相対的に低い溶液粘度(35 mPa・s )を有するポリブタジエンゴム(BR−2)をゴム成分におけるポリブタジエンゴムとして使用したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。溶液粘度が相対的に低いポリブタジエンゴム(BR−2)を使用した結果、未加硫時のムーニー粘度が低下し、良好な加工性が得られたけれども、試験片においては、老化前後での破断伸びが著しく低下し、耐セット性及び耐摩耗性も大幅に低下した。当該ゴム組成物については、試験タイヤによる評価は行わなかった。
【0057】
比較例2のゴム組成物は、上記比較例1のゴム組成物の場合とは逆に、56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)の代わりに相対的に高い溶液粘度(82 mPa・s )を有するポリブタジエンゴム(BR−3)をゴム成分におけるポリブタジエンゴムとして使用したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。溶液粘度が相対的に高いポリブタジエンゴム(BR−3)を使用した結果、試験片においては、すべての評価項目において良好な結果が得られたけれども、未加硫時のムーニー粘度が大幅に増大し、加工性が不十分な結果となったので、当該ゴム組成物についても、試験タイヤによる評価は行わなかった。
【0058】
実施例1のゴム組成物は、硫黄の配合量をゴム成分100重量部に対して2.5重量部から1.5重量部に減らし、これに対応して、ゴム成分100重量部に対して0.4重量部のアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )を新たに配合したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する本発明に係るゴム組成物である。当該ゴム組成物における各種構成成分の配合量はいずれも本発明の規定を満足するものである。その結果、未加硫時のムーニー粘度の増大を伴うこと無く、試験片においても、標準例のゴム組成物と同等の硬度(デュロA硬さ)及び耐摩耗性を維持しつつ、老化前後での破断伸び及び耐セット性を大幅に改善することに成功した。また、当該ゴム組成物をチェーファーゴムとして使用した試験タイヤについても、耐リム擦れ性、耐ビードトウ欠け性、耐セット性、及びビード部耐久性のすべての評価項目において大幅な改良が認められた。
【0059】
実施例2のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、天然ゴム(NR)の配合量を50重量部から30重量部に減らし、これに対応して、56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)の配合量を50重量部から70重量部に増やし、更にアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )の配合量を0.4重量部から0.6重量部に増やしたことを除き、実施例1のゴム組成物と同じ組成を有する本発明に係るゴム組成物である。当該ゴム組成物における各種構成成分の配合量もまた、本発明の規定を満足するものである。その結果、未加硫時のムーニー粘度が低下し、試験片においても、標準例のゴム組成物と同等の硬度(デュロA硬さ)を維持しつつ、老化前後での破断伸び、耐セット性、及び耐摩耗性を大幅に改善することに成功した。特に、試験片における耐摩耗性については、実施例1のゴム組成物を使用した場合に勝る著しい改良が認められた。また、当該ゴム組成物をチェーファーゴムとして使用した試験タイヤについても、実施例1のゴム組成物を使用した場合と同様に、すべての評価項目において大幅な改良が認められた。すなわち、本発明の規定を満足する組成とすることにより、従来技術において見られるようなポリブタジエンゴムの配合量の増大に伴う破断物性及び耐セット性の低下を生ずること無く、すべての評価項目において同時に良好な結果を得ることができた。
【0060】
比較例3のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、天然ゴム(NR)の配合量を30重量部から15重量部に減らし、これに対応して、56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)の配合量を70重量部から85重量部に増やしたことを除き、実施例2のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。当該ゴム組成物のゴム成分における天然ゴム(NR)及びポリブタジエンゴム(BR)の配合量は、それぞれ、本発明の規定の下限及び上限を超えて逸脱している。その結果、未加硫時のムーニー粘度は大幅に低下し、試験片における耐摩耗性及び試験タイヤにおける耐リム擦れ性は向上したものの、試験片においては、老化前後での破断伸び及び耐セット性が悪化し、試験タイヤにおいても、耐ビードトウ欠け性、耐セット性、及びビード部耐久性が大幅に悪化した。
【0061】
比較例4のゴム組成物は、比較例3のゴム組成物とは逆に、ゴム成分100重量部に対して、天然ゴム(NR)の配合量を30重量部から85重量部に増やし、これに対応して、56 mPa・s の溶液粘度を有するポリブタジエンゴム(BR−1)の配合量を70重量部から15重量部に減らしたことを除き、実施例2のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。当該ゴム組成物のゴム成分における天然ゴム(NR)及びポリブタジエンゴム(BR)の配合量は、それぞれ、本発明の規定の上限及び下限を超えて逸脱している。その結果、未加硫時のムーニー粘度が大幅に増大し、試験片における耐摩耗性並びに試験タイヤにおける耐リム擦れ性が大幅に悪化した。
【0062】
比較例5のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、カーボンブラック(CB)の配合量を70重量部から55重量部に減らすと同時に、硫黄の配合量を2.5重量部から2.0重量部に減らし、これに対応して、ゴム成分100重量部に対して0.9重量部のアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )を新たに配合したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。当該ゴム組成物のゴム成分における硫黄及びアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )の配合量は本発明の規定を満足するものの、カーボンブラック(CB)の配合量は本発明の規定の下限を超えて逸脱している。その結果、試験片における硬度(デュロA硬さ)が低下し、試験片における耐摩耗性並びに試験タイヤにおける耐リム擦れ性が大幅に悪化し、ビード部耐久性も著しく低下した。
【0063】
比較例6のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、硫黄の配合量を2.5重量部から2.3重量部に減らし、これに対応して、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部のアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )を新たに配合したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。当該ゴム組成物のゴム成分における硫黄及びアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )の配合量は、それぞれ、本発明の規定の上限及び下限を超えて逸脱している。その結果、試験片についてのいずれの評価項目においても、標準例のゴム組成物と同等の結果しか得られず、所望の改良効果は認められなかった。従って、当該ゴム組成物については、試験タイヤによる評価は行わなかった。
【0064】
比較例7のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、硫黄の配合量を2.5重量部から0.9重量部に減らし、これに対応して、ゴム成分100重量部に対して1.2重量部のアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )を新たに配合したことを除き、標準例のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物である。当該ゴム組成物のゴム成分における硫黄及びアルキルフェノールジスルフィド(Vultac(商標)7 )の配合量は、比較例6のゴム組成物とは逆に、それぞれ、本発明の規定の下限及び上限を超えて逸脱している。その結果、試験片における老化前の破断伸び及び耐摩耗性が低下した。当該ゴム組成物についても、試験タイヤによる評価は行わなかった。
【0065】
以上の結果から、本発明の規定に従って、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)を70〜20重量部、並びに50〜75 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴム(BR)を30〜80重量部、含んでなる、合計で100重量部のゴム成分に対して、HAF級よりも粒径が小さいカーボンブラックを60〜90重量部、硫黄を1〜2重量部、及びアルキルフェノールジスルフィドを0.2〜1重量部、配合することにより、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物を提供することが可能であることが明らかとなった。
【0066】
【発明の効果】
本発明により、良好な加工性、高い耐摩耗性、老化前後での高い破断物性、及び高い耐セット性を兼備するゴム組成物が提供される。上述の如く、本発明に係るゴム組成物は、例えば、空気入りタイヤにおけるリム接触部(ビード部)の表面を覆うチェーファーゴムとして使用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴム組成物をチェーファーゴムに使用した空気入りタイヤのビード部の構造を示す子午線方向断面図である。
【符号の説明】
1…ビード部の構造
2…チェーファーゴム
3…ホイールリムフランジ
4…ビードトウ部
5…プライ末端
6…ワイヤーチェーファー層
Claims (2)
- 天然ゴム及び/又はポリイソプレンゴムを70〜20重量部、並びに50〜75 mPa・s の5%トルエン溶液粘度を25℃において有するポリブタジエンゴムを30〜80重量部、含んでなる、合計で100重量部のゴム成分に対して、
HAF級よりも粒径が小さいカーボンブラックを60〜90重量部、
硫黄を1〜2重量部、及び
アルキルフェノールジスルフィドを0.2〜1重量部、配合してなるゴム組成物。 - タイヤ軸方向の左右に位置するビードワイヤー束の周りにカーカスプライ層の両端が各々巻き回されているビード部構造を有すること、及び上記ビード部のタイヤ軸方向の内側から外側にかけて表面を覆うチェーファーゴムにおいて請求項1に記載のゴム組成物が使用されていること、を特徴とする空気入りタイヤ。
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