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JP2005088665A - 車両の運動制御装置 - Google Patents

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JP2005088665A JP2003322506A JP2003322506A JP2005088665A JP 2005088665 A JP2005088665 A JP 2005088665A JP 2003322506 A JP2003322506 A JP 2003322506A JP 2003322506 A JP2003322506 A JP 2003322506A JP 2005088665 A JP2005088665 A JP 2005088665A
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Abstract

【課題】 操舵角調整装置の状態に応じてアンチスキッド制御装置を適切に制御することにより、車両の安定性を確保しつつ制動距離を最短とする。
【解決手段】 車両の最適挙動制御を行うための制御目標として操舵角及び車体速度に基づき目標ヨー指標(目標ヨーレイト)を設定し、これと実ヨー指標の偏差が略零となるように、車輪の舵角を操舵角調整装置SAによって調整する。ヨー偏差に対する操舵角調整装置による車輪の舵角調整状態に基づき、操舵角調整装置のアンチスキッド制御に対する不適合度を判定し、その判定結果に基づき車両安定化指向パラメータと制動指向パラメータとの間の所定のパラメータを設定する。このパラメータに基づき、アンチスキッド制御装置ABによって車両の各車輪に対する制動力を制御する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車両の前方又は後方の車輪の舵角を調整する操舵角調整装置と、各車輪に対する制動力を制御するアンチスキッド制御装置とを備えた車両の運動制御装置に係る。
操舵角調整装置とアンチスキッド制御装置を備えた車両に関し、両者を適宜制御する装置が提案されている。例えば、後掲の特許文献1(特開平5−105055)には、スプリット路面においても左右両輪とも独立に最短距離で制動できるよう制御するとともに、車両の不本意なヨーモーメントの発生も抑制することを目的とし、ヨーレイト偏差を零にするよう車輪の舵角を調整する車輪操舵装置と、左右輪独立に車輪の制動力を調整するアンチスキッド制御装置を備えた制動時の走行制御装置が提案されている。
特開平5−105055号公報
前掲の特許文献1においては、最短制動距離と安定性確保の両立が企図されているが、車輪操舵装置はヨーレイト偏差に基づいて制御されるものであるので、車両の挙動発生後の対応となり、急激な挙動変化への対応が困難である。一方、アンチスキッド制御装置は左右輪独立の制動力制御を基本に構成されているが、操舵角調整が不能となったとき等、車輪操舵装置側の状態によっては、安定性を確保しつつ制動距離を最短とすることは容易ではなく、別途対策を講ずる必要も生じ得る。
そこで、本発明は、操舵角調整装置とアンチスキッド制御装置を備えた車両において、操舵角調整装置の状態に応じてアンチスキッド制御装置を適切に制御することにより、車両の安定性を確保しつつ制動距離を最短とし得る運動制御装置を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明の車両の運動制御装置は、請求項1に記載のように、車両の最適挙動制御を行うための制御目標として操舵角及び車体速度に基づき目標ヨー指標を設定する目標ヨー指標設定手段と、前記車両の実ヨー指標を検出する実ヨー指標検出手段と、前記目標ヨー指標設定手段が設定した目標ヨー指標と前記実ヨー指標検出手段が検出した実ヨー指標の偏差を演算するヨー偏差演算手段と、該ヨー偏差演算手段が演算したヨー偏差を略零とするように前記車両の前方及び後方の少なくとも一方の車輪の舵角を調整する操舵角調整装置と、前記ヨー偏差演算手段の演算結果に対する前記操舵角調整装置による前記車輪の舵角調整状態に基づき、前記操舵角調整装置のアンチスキッド制御に対する不適合度を判定する不適合度判定手段と、該不適合度判定手段の判定結果に基づき車両安定化指向パラメータと制動指向パラメータとの間の所定のパラメータを設定するパラメータ設定手段と、該パラメータ設定手段が設定したパラメータに基づき、前記車両の各車輪に対する制動力を制御するアンチスキッド制御装置とを備えることとしたものである。
而して、不適合度判定手段により、例えば操舵角調整装置の作動状態や車両の状態から操舵角調整装置が目標としたヨーレイト偏差を零にできるか否かを判定した結果を、アンチスキッド制御装置の制御に適用し、操舵角調整装置が正常である限り制動力重視の制御を行うことができる。例えば、操舵角調整装置によってヨーレイト偏差を零とすることができるだけの横力を発生させつつ最大の制動力を発生するように制動力を制御することができるので、車両の安定性を確保できると共に、最短の制動距離とすることができる。
前記パラメータ設定手段は、請求項2に記載のように、前記操舵角調整装置による前記車輪の舵角調整が不可と前記不適合度判定手段が判定したときには、前記所定のパラメータを前記車両安定化指向パラメータ側の値に設定し、前記操舵角調整装置による前記車輪の舵角調整が可能と前記不適合度判定手段が判定したときには、前記所定のパラメータを前記制動指向パラメータ側の値に設定するように構成するとよい。
前記ヨー偏差演算手段は、請求項3に記載のように、ヨーレイト偏差、ヨー角偏差、及びヨーレイト偏差速度の少なくとも一つをヨー偏差として演算するように構成すると共に、前記不適合度判定手段は、前記ヨー偏差を所定の閾値と比較し、比較結果に応じて前記不適合度を判定するように構成するとよい。
また、前記不適合度判定手段は、請求項4に記載のように、前記操舵角調整装置によって調整された操舵角量を所定の閾値と比較し、比較結果に応じて前記不適合度を判定するように構成するとよい。
更に、前記不適合度判定手段は、請求項5に記載のように、前記車両の車体速度及び車体減速度の少なくとも一方に応じて前記所定の閾値を設定するように構成してもよい。
而して、請求項1に記載の運動制御装置によれば、操舵角調整装置のアンチスキッド制御に対する不適合度を判定する不適合度判定手段を備えているので、操舵角調整装置側の状態に応じたアンチスキッド制御を選択でき、常に安定性を確保した上で最短の制動距離とすることができる。例えば操舵角調整装置の故障時には、操舵制御による安定性の確保が期待できないことを前提とし、従来のアンチスキッド装置のみのシステムと同等の制御を行い、且つ、操舵角調整装置が正常時には操舵による安定性を確保しつつ制動力重視のアンチスキッド制御を行うことができる。また、高速走行時や低減速度の時には例えば閾値を下げることによって、小さな挙動変化によって運転者に対し不安感を与えるような状況を回避し、摩擦係数が低い路面での車両安定性を確保することができる。
また、請求項2に記載の運動制御装置によれば、制動中に不適合度判定結果が変化した場合でも、その時々の状況に対応するアンチスキッド制御により制動力と安定性を高次元でバランスさせることができる。
更に、請求項3に記載の運動制御装置によれば、ヨーレイト偏差、ヨー角偏差、ヨーレイト偏差速度の何れかを所定の閾値と比較することによって、操舵角調整装置が正常な場合でも安定化効果が望めない又は望めそうにない状態にあるときには安定性重視のアンチスキッド制御に切り換えることができる。
前記不適合度判定手段は、請求項4に記載のように構成すれば、前記操舵角調整装置により調整された操舵角量を所定の閾値と比較することによって操舵角の調整代(しろ)が残り少なくなり、もしくは調整代が無くなったことによって安定性を確保することができなくなることを予測し、安定性重視のアンチスキッド制御に切り換えることができる。更に、請求項5に記載のように構成すれば、車体速度等に応じて安定性重視のアンチスキッド制御に切り換えるように設定することができる。
尚、上記の制動力重視のアンチスキッド制御は、安定性重視の制御よりも車両としての減速度が向上する制御を意味し、例えば特定の車輪に関し、安定性重視の制御よりも車両としての前後力が増す方向に制御パラメータを変更することを意味する。一方、安定性重視のアンチスキッド制御は、制動力重視の制御よりも車両としての横力(サイドフォース)が増加する制御を意味し、例えば特定の車輪に関し、横力が増加する方向に制御パラメータを変更することを意味する。また、不安定なモーメントを打ち消す側に左右の車輪に対する制動力差を積極的に調整するような制御も安定性重視のアンチスキッド制御に包含されるが、更に具体的な態様については後述する。
以下、本発明の望ましい実施形態を説明する。本発明の一実施形態に係る運動制御装置の概要を図1に示すように、車両後方の車輪RL,RRの舵角調整用の操舵角調整装置SAと、各車輪に対する制動力を制御するアンチスキッド制御装置ABを備えている。ここで、車輪FL,FR,RL,RRには夫々ホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrが装着されており、これらのホイールシリンダWfl等にアンチスキッド制御装置ABが接続されている。このアンチスキッド制御装置ABは複数の電磁弁から成る従前の一般的な装置と同様であり、また本発明は特に液圧制御を特徴とするものではないので、図示は省略する。尚、車輪FLは運転席からみて前方左側の車輪を示し、以下車輪FRは前方右側、車輪RLは後方左側、車輪RRは後方右側の車輪を示している。
車両前方の車輪FL,FRは運転者によるステアリングホイールSWの操作によって操舵され、その操舵角が操舵角センサSSによって検出される。また、車体速度センサVSが設けられており、車体速度が検出され、これを微分すれば車体減速度が求められるが、もちろん、各車輪に設けられた車輪速度センサ(図示せず)の検出車輪速度に基づき車体速度を推定演算することとしてもよい。更に、車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサYSが設けられており、ヨー指標たるヨーレイトが直接検出される。即ち、ヨー指標には、車両重心を通る鉛直軸回りの回転角であるヨー角、そのヨー角速度であるヨーレイトが含まれるが、本実施形態ではヨー指標としてヨーレイトが用いられる。尚、車両の前後加速度を検出する前後加速度センサ(図示せず)、車両の横加速度を検出する横加速度センサ(図示せず)等を配設することとしてもよい。そして、これらの検出信号は電子制御ユニットECUに入力されるように構成されている。電子制御ユニットECUは、上記の操舵角調整及びアンチスキッド制御のほか、トラクション制御、車両の安定性維持制御等を行なうもので、これらの制御用のCPU、ROM及びRAM(図示せず)を備えている。
電子制御ユニットECU内においては、図1に示すように、車両の最適挙動制御を行うための制御目標として操舵角及び車体速度に基づき目標ヨー指標(目標ヨーレイト)を設定する目標ヨー指標設定手段MTと、車両の実ヨー指標(実ヨーレイト)を検出する実ヨー指標検出手段MAと、目標ヨー指標設定手段が設定した目標ヨー指標と前記実ヨー指標検出手段が検出した実ヨー指標の偏差を演算するヨー偏差演算手段MDが構成されており、このヨー偏差演算手段で演算されたヨー偏差(ヨーレイト偏差)が略零となるように、前方及び後方の少なくとも一方の車輪の舵角が前述の操舵角調整装置SAによって調整される。
更に、電子制御ユニットECU内には、ヨー偏差演算手段MDの演算結果に対する操舵角調整装置SAによる車輪の舵角調整状態に基づき、操舵角調整装置SAのアンチスキッド制御に対する不適合度を判定する不適合度判定手段MUと、不適合度判定手段MUの判定結果に基づき車両安定化指向パラメータと制動指向パラメータとの間の所定のパラメータを設定するパラメータ設定手段MPが構成されており、このパラメータ設定手段MPで設定されたパラメータに基づき、前述のアンチスキッド制御装置ABによって車両の各車輪に対する制動力が制御される。尚、電子制御ユニットECUは必ずしも単一である必要はなく、操舵用の電子制御ユニット(図示せず)もしくは制動用の電子制御ユニット(図示せず)内に前記各手段を構成し、あるいは前記各手段を両ユニットとは別の電子制御ユニットで構成し、ユニット相互を通信手段を介して接続することとしてもよい。
上記のパラメータ設定手段MPにおいては、不適合度判定手段MUにて、操舵角調整装置SAによる車輪の舵角調整が不可と判定されたときには、上記所定のパラメータが車両安定化指向パラメータ側の値に設定され、不適合度判定手段MUにて、操舵角調整装置SAによる車輪の舵角調整が可能と判定されたときには、上記所定のパラメータが制動指向パラメータ側の値に設定されるように構成されている。上記所定のパラメータは、種々の条件に応じて種々の値に設定されるが、これらについては、後述の処理に係るフローチャートの中で説明する。
上記のように構成された本実施形態においては、電子制御ユニットECUにより、図2に示すようにアンチスキッド制御が行なわれる。先ず、ステップ101にて初期化が行なわれた後、ステップ102にて入力処理として各種センサ信号が入力され車輪舵角、車両速度、ヨーレイト等が読み込まれ、適宜フィルタ処理され、順次メモリに格納される。次に、ステップ103において操舵角調整との適合性判定が行われ、ステップ104にてアンチスキッド制御開始判定が行われた後、ステップ105に進み、アンチスキッド制御中であるか否か、即ち後述するアンチスキッド制御中フラグがセットされているか否かが判定される。アンチスキッド制御中である場合にはステップ106に進み、アンチスキッド制御パラメータが設定され、このパラメータに基づきステップ107にて各車輪のホイールシリンダの液圧制御が行われ、ステップ108にて終了判定が行われ、終了条件を充足していなければ、ステップ102に戻る。而して、ステップ102乃至107の処理が所定の周期で繰り返されるが、ステップ103、104及び106の処理については図3等を参照して詳細に後述する。
図3は、上記ステップ103で行われる操舵角調整との適合性判定の具体例を示すもので、操舵角調整装置SAによる操舵角調整状態に応じてアンチスキッド制御に対する不適合度が設定される。即ち、本実施形態においては、図2に示すように、不適合度判定手段MUによって操舵角調整装置SAのアンチスキッド制御に対する不適合度が判定されるように構成されており、この不適合度の判定が、図3に示す適合性判定において行われる。
図3において、先ずステップ201において操舵角調整装置SAによる操舵角調整の作動可否が判定される。即ち、機械的故障、電源系の異常、電子制御ユニットの異常、センサ類の異常等に基づき、操舵角調整装置SAが正常か否かについて判定され、否(異常)の場合には目標とする操舵角調整を行うことができない状態であるので、ステップ202に進み、不適合度(否のレベル)が最大値のL5に設定される。例えばアンチスキッド制御中に不適合度L5と判定された場合には、直ちに、安定性重視のアンチスキッド制御として、スリップ率の浅い制御に切替えられ、あるいは、左右の車輪間の制動力差を無くすことによって車両安定化を図る所謂ローセレクト制御に切替えられる。この場合のアンチスキッド制御としては、例えば操舵角調整装置SAを備えていない車両におけるアンチスキッド制御装置と同様の制御が行われる。また、アンチスキッド制御の開始前に不適合度L5に設定された場合には、例えば、各車輪のアンチスキッド制御の開始条件として、当該車輪(自輪)に係る開始条件以外に、他の車輪がアンチスキッド制御中であることを開始条件として付加するように設定する等、アンチスキッド制御の開始直後から車両安定性を確保し得るように設定するとよい。
ステップ201において操舵角調整装置SAが正常と判定された場合には、更にステップ203において目標操舵角が調整可能範囲内か否か、換言すれば、ヨーレイト偏差を打消すための舵角調整量が物理的に可能か否かが判定される。ここで、現在操舵角は操舵角調整装置SAによる調整後の実際の操舵角であり、目標操舵角調整量はヨーレイト偏差を零にするときの現在操舵角からの操舵量である。そして、現在操舵角と目標操舵角調整量の和が目標操舵角とされ、この目標操舵角が、調整可能範囲、即ち機械的および電気的制約で決まる最大操舵角と比較される。ステップ203において、操舵角調整が最大舵角まで行われても、計算上、ヨーレイト偏差を零にできないと判定された場合には、ステップ204に進み不適合度L4とされる。この場合も、車両安定性を確保することはほぼできないと予測されるので、不適合度L5と同等の安定化指向の制御に切替えられる。
一方、ステップ203において目標操舵角が調整可能範囲内とされた場合には、更にステップ205に進み、ヨーレイト偏差が所定の閾値Kaと比較される。ヨーレイト偏差が所定の閾値Ka以上、即ち車両の安定性が損なわれている状態であると判定された場合には、ステップ206に進み不適合度L3とされる。この状態では操舵角調整による車両の安定化制御の可能性があるので、上記の不適合度L4及びL5に比べ、制動指向のアンチスキッド制御パラメータに設定される。尚、この閾値Kaは、図6に示すように、車体速度に応じた変数とすることにより、不本意なヨーレイト変化に起因して運転者がより危険を感じ易い高車速領域において、より不適合と判定し得るように設定するとよい。更に、図7に示すように、車体減速度に応じた補正係数を閾値Kaに乗ずることとしてもよい。これにより、低μ路走行時等、より車両安定性が損なわれ易い状況において、更に不適合と判定し得る。
ステップ205においてヨーレイト偏差が所定の閾値Ka未満と判定された場合には、更にステップ207に進み、ヨーレイト偏差速度が所定の閾値Kbと比較される。ここでヨーレイト偏差速度が閾値Kb以上、即ち車両の安定性が損なわれる方向に向かっていると判定された場合には、ステップ208に進み不適合度L2に設定される。この場合には、実際に車両の安定性が損なわれてはおらず今後不安定になる可能性があるという程度であるので、不適合度L3に比べ制動指向の(より制動力重視の)アンチスキッド制御パラメータが設定される。尚、閾値Kbは、図8に示すように、ヨーレイト偏差に応じた変数とすることにより、現在の不安定度合いによってその後の不安定度が増すことを考慮した閾値とすることができる。また、図9に示すように、車体速度に応じた変数としても良いし、更に、閾値Kaと同様、車体減速度に応じた補正係数を閾値Kbに乗ずることとしてもよい。
更に、ステップ207においてヨーレイト偏差速度が所定の閾値Kb未満と判定された場合にはステップ209に進み、現在の操舵角が所定の閾値Kcと比較される。ここで現在の操舵角が閾値Kc以上、即ち操舵角調整可能領域が少なく安定性確保の余裕度が小さいと判断された場合には、ステップ210に進み不適合度L1に設定される。この場合には、単に余裕度によって不適合とされるものであるので、不適合度L2に比べて更に制動指向側のアンチスキッド制御パラメータが設定される。而して、ステップ209において現在の操舵角が所定の閾値Kc未満と判定されると、最終的に安定した車両挙動を実現可能な操舵角調整が可能と判定され、制動力を最も重視したアンチスキッド制御パラメータに設定される。例えば、四つの各車輪が、路面摩擦係数相当の制動力を発生するように独立に制御される。
尚、上記の閾値Kcは、図10に示すように、車体速度に応じた変数とすることにより、閾値Kaと同様の効果を奏することができる。また、図11に示すように、単に現在の操舵角とするのではなく現在の操舵角と最大可能操舵角の差、及び、車体速度から演算されるヨーレイト偏差余裕を用いることとしてもよい。更には、閾値Kaと同様、車体減速度に応じた補正係数を閾値Kcに乗ずることとしてもよい。
ヨーレイト偏差余裕={(θmax−θn)・Vs/(n・L)}・{1/(1+K・Vs2)}
ここで、θmaxは最大可能操舵角、θnは現在操舵角、nはステアリングギア比、Lはホイールベース、Kはスタビリティファクタ、そして、Vsは車体速度である。
図4は、図2のステップ104で行われるアンチスキッド制御開始判定の処理を示すもので、ステップ301においてアンチスキッド制御開始前と判定されると、ステップ302以降に進み開始判定が行われる。ステップ302においては前述の不適合度が判定され、L3以下であればステップ303に進み、アンチスキッド制御の開始条件が制動力重視の条件に設定される。不適合度がL3を上回っていると判定されるとステップ304に進み、安定性重視の開始条件に設定される。而して、操舵角調整によって安定性を確保し得る場合には、制動力を重視したアンチスキッド制御とすることにより、アンチスキッド制御開始時、即ち高速領域で大きな制動力を付与することができるので、制動距離を大幅に短縮することができる。
そして、ステップ305において、上記のステップ303又は304で設定された開始条件を充足しているか否かが判定され、充足している場合にはステップ306にてアンチスキッド制御中フラグがセット(1)され、図2のメインルーチンに戻る。尚、本実施形態では、不適合度L3を開始条件の切替判定基準としたが、より安定性を重視する場合にはより低いレベルに設定すればよく、多段階で切替えるように設定してもよい。
図2のステップ105にてアンチスキッド制御中と判定されると、ステップ106に進みアンチスキッド制御パラメータが設定されるが、具体的には図5に示すように処理される。即ち、図5のステップ401において今回設定された不適合度がL1乃至L5であるか否かが判定され、今回設定されていない場合にはステップ402に進み前回の不適合度がL2乃至L5であるか否かが判定される。この結果、今回設定された不適合度がL1乃至L5である場合にはステップ403に進み、前回の不適合度がL2乃至L5である場合にはステップ404に進み、前回の不適合度がL1である場合にはステップ405に進み、夫々の場合に応じたアンチスキッド制御パラメータが設定される。
先ず、ステップ403において、不適合度がL1であるときにはアンチスキッド制御パラメータ(以下、単にパラメータという)として制動指向度B4に設定され、以下、不適合度がL2であれば制動指向度B3、不適合度がL3であれば制動指向度B2、不適合度がL4又はL5であれば制動指向度B1に設定され、ステップ406以降に進む。一方、ステップ404においては前回の制動指向度(Bxとする)の一段上の値、即ちB(x+1)に設定され、ステップ405においては制動指向度B5に設定されて、図2のメインルーチンに戻る。
上記ステップ403においてパラメータが設定された後ステップ406に進み、今回のパラメータが前回のパラメータと比較され、同一であればステップ407に進み、今回設定された値(Bnとする)がパラメータとされて、図2のメインルーチンに戻る。一方、今回のパラメータが前回のパラメータと相違する場合には、ステップ408に進み、両パラメータの大小比較が行われる。今回のパラメータが前回のパラメータより大きい場合にはステップ410に進み、今回の設定値(Bn)と前回の制動指向度(Bx)の一段上の値B(x+1)のうちの、小さい方の値が今回のパラメータとされて、図2のメインルーチンに戻る。今回のパラメータが前回のパラメータ以下の場合にはステップ409に進み、今回の設定値(Bn)と前回の制動指向度(Bx)の一段下の値B(x−1)のうちの、大きい方の値が今回のパラメータとされて、図2のメインルーチンに戻る。
以上のように、本実施形態では、アンチスキッド制御パラメータとして5段階の制動指向度が設定されているので、精緻なチューニングが可能となり、運転状態に応じて適切なアンチスキッド制御を行うことができると共に、レベルが異なる制動指向度が段階的に選択されるように構成されているので、円滑な制動特性を確保することができる。更に高い制動性と安定性の確保を必要とする場合には、リアルタイムで制御し得るように即座にレベルを切替えるように構成してもよい。
尚、制動力重視のパラメータとしては、図12のマップに示すように制動指向度(Bx)の増大に応じて増加するように設定するスリップ率補正係数がある。また、図13のマップに示すように制動指向度(Bx)の増大に応じて増加するように設定する増圧時間補正係数、あるいは図14のマップに示すように制動指向度(Bx)の増大に応じて減少するように設定する減圧時間補正係数がある。逆に、不適合度がL5又はL4のように安定性重視のアンチスキッド制御が望ましい場合には、左右の制動力差が生じないようなローセレクト制御やヨーレイト制御を行うこととしてもよい。更に、不適合度のレベルに応じてアンチスキッド制御形態を切り替えるように構成してもよい。
尚、本実施形態においては、アンチスキッド制御の切換判定サイクル毎にアンチスキッド制御における制動指向度を変更することとしているが、図15に示すように所定のアンチスキッド制御サイクルの経過後や、所定時間の経過後に制動指向度を変更することとしてもよい。これによればアンチスキッド制御の切換判定サイクルとは無関係に、時間設定で制動指向度を変更することができる。即ち、図15のステップ501において、今回のパラメータが前回のパラメータと比較され、同一であればステップ502に進み、前回の要求設定値がパラメータとされて、図2のメインルーチンに戻る。一方、今回のパラメータが前回のパラメータと相違する場合には、ステップ503に進み、所定時間以上経過したか否かが判定され、経過していなければステップ502に進むが、所定時間以上経過している場合にはステップ504に進み、今回の設定値がパラメータとされて、図2のメインルーチンに戻る。
また、アンチスキッド制御における安定化制御手段としては、スリップ率制御、ヨーレイト制御のキャンセル、増減圧勾配制御、所謂リヤローセレクト制御(後輪については低速側を基準に制御)等を行い、あるいはこれらを適宜組み合わせて行う手段がある。更に、車体速度や減速度に応じた所定の時間範囲内のみ安定化制御を行うこととし、あるいは所定の制御サイクル範囲内のみ安定化制御を行うこととしてもよい。
本発明の車両の運動制御装置の一実施形態の概要を示す構成図である。 本発明の一実施形態におけるアンチスキッド制御の処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態における操舵角調整との適合性判定の処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態におけるアンチスキッド制御開始判定の処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態におけるアンチスキッド制御開始パラメータ設定の処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態において車体速度とヨーレイト偏差との関係に応じて不適合度を判定するためのマップを示すグラフである。 本発明の一実施形態において閾値に対する補正係数を車体減速度に応じて設定する一例を示すグラフである。 本発明の一実施形態においてヨーレイト偏差とヨーレイト偏差速度との関係に応じて不適合度を判定するためのマップを示すグラフである。 本発明の一実施形態において車体速度とヨーレイト偏差速度との関係に応じて不適合度を判定するためのマップを示すグラフである。 本発明の一実施形態において車体速度と現在の操舵角との関係に応じて不適合度を判定するためのマップを示すグラフである。 本発明の一実施形態において車体速度とヨーレイト偏差余裕との関係に応じて不適合度を判定するためのマップを示すグラフである。 本発明の一実施形態における制動力重視のパラメータとして、制動指向度に応じて設定するスリップ率補正係数のマップを示すグラフである。 本発明の一実施形態における制動力重視のパラメータとして、制動指向度に応じて設定する増圧時間補正係数のマップを示すグラフである。 本発明の一実施形態における制動力重視のパラメータとして、制動指向度に応じて設定する減圧時間補正係数のマップを示すグラフである。 本発明の一実施形態におけるアンチスキッド制御パラメータ設定の他の例を示すフローチャートである。
符号の説明
SW ステアリングホイール
FL,FR,RL,RR 車輪
SS 操舵角センサ
YS ヨーレイトセンサ
VS 車体速度センサ
AB アンチスキッド制御装置
SA 操舵角調整装置
ECU 電子制御ユニット
MT 目標ヨー指標設定手段
MA 実ヨー指標検出手段
MD ヨー偏差演算手段
ECU 電子制御ユニット
MD ヨー偏差演算手段
MU 不適合度判定手段
MP パラメータ設定手段

Claims (5)

  1. 車両の最適挙動制御を行うための制御目標として操舵角及び車体速度に基づき目標ヨー指標を設定する目標ヨー指標設定手段と、前記車両の実ヨー指標を検出する実ヨー指標検出手段と、前記目標ヨー指標設定手段が設定した目標ヨー指標と前記実ヨー指標検出手段が検出した実ヨー指標の偏差を演算するヨー偏差演算手段と、該ヨー偏差演算手段が演算したヨー偏差を略零とするように前記車両の前方及び後方の少なくとも一方の車輪の舵角を調整する操舵角調整装置と、前記ヨー偏差演算手段の演算結果に対する前記操舵角調整装置による前記車輪の舵角調整状態に基づき、前記操舵角調整装置のアンチスキッド制御に対する不適合度を判定する不適合度判定手段と、該不適合度判定手段の判定結果に基づき車両安定化指向パラメータと制動指向パラメータとの間の所定のパラメータを設定するパラメータ設定手段と、該パラメータ設定手段が設定したパラメータに基づき、前記車両の各車輪に対する制動力を制御するアンチスキッド制御装置とを備えたことを特徴とする車両の運動制御装置。
  2. 前記パラメータ設定手段は、前記操舵角調整装置による前記車輪の舵角調整が不可と前記不適合度判定手段が判定したときには、前記所定のパラメータを前記車両安定化指向パラメータ側の値に設定し、前記操舵角調整装置による前記車輪の舵角調整が可能と前記不適合度判定手段が判定したときには、前記所定のパラメータを前記制動指向パラメータ側の値に設定するように構成したことを特徴とする請求項1記載の車両の運動制御装置。
  3. 前記ヨー偏差演算手段が、ヨーレイト偏差、ヨー角偏差、及びヨーレイト偏差速度の少なくとも一つをヨー偏差として演算し、前記不適合度判定手段が、前記ヨー偏差を所定の閾値と比較し、比較結果に応じて前記不適合度を判定するように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両の運動制御装置。
  4. 前記不適合度判定手段が、前記操舵角調整装置によって調整された操舵角量を所定の閾値と比較し、比較結果に応じて前記不適合度を判定するように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両の運動制御装置。
  5. 前記不適合度判定手段が、前記車両の車体速度及び車体減速度の少なくとも一方に応じて前記所定の閾値を設定するように構成したことを特徴とする請求項3又は4記載の車両の運動制御装置。
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