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JP2004325497A - 調光体及び合わせガラス - Google Patents

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JP2004325497A JP2003115808A JP2003115808A JP2004325497A JP 2004325497 A JP2004325497 A JP 2004325497A JP 2003115808 A JP2003115808 A JP 2003115808A JP 2003115808 A JP2003115808 A JP 2003115808A JP 2004325497 A JP2004325497 A JP 2004325497A
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JP2003115808A
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Yuichi Yano
祐一 矢野
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Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Abstract

【課題】液晶物質を有する調光体及び該調光体を備える合わせガラスに関し、特に、視野制御可能な調光体及び該調光体を備える合わせガラスに関する。
【解決手段】調光体100は、一層の液晶層104と、間に液晶層104を有する一対の透明導電膜106a,bと、該一対の透明導電膜の外面に夫々接着された一対のPETフィルム105a,bとからなり、液晶層104は多数の空孔を有し且つラテックスからなる透明なポリマーフィルム101を備え、当該空孔の各々はネマティック液晶の棒状分子102が封入されることによって液晶カプセル103を形成し、調光体100の非透明時に、入射光の透過率が380nm〜780nmの波長域において急激に上昇することがなく、その変化量が3%の範囲にある。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、液晶物質を有する調光体及び該調光体を備える合わせガラスに関し、特に、視野制御可能な調光体及び該調光体を備える合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、調光体等の透過率を任意に調節する調光機能を有する素子(以下「調光素子」という)として、エレクトロクロミック素子(以下「EC素子」という)が知られている。このEC素子は、酸化タングステン、プルシアンブルー等の電気化学的な酸化還元反応によるスペクトル変化を伴う材料等から構成され、光を吸収することによって透過光量の制御を行っているが、EC素子は電流駆動型であるため、大面積化した場合に大きな電圧降下が発生して応答速度が著しく低下し、長時間通電中に生じる構成材料の電気化学的変化等に起因した劣化が発生し、耐久性を必要とする調光体に適用することができない。
【0003】
そこで、近年、上述した電流駆動型のEC素子に代わり、電圧駆動型の調光素子が合わせガラスに適用されている。例えば、このような電圧駆動型の調光素子として、曲線的な配列相のネマティック(NCAP:Nematic Curviliner Aligned Phase)液晶調光体が知られており、このネマティック液晶調光体は、液晶物質により構成され、耐久性に優れると共に、大面積化が容易である(例えば、特許文献1)。
【0004】
通常、このような調光体は、複数の空孔に液晶が封入された調光機能を有する液晶層と、間に当該液晶層を挟持する一対のPETフィルムとから成り、透明導電膜が当該液晶層に接着するべく各々のPETフィルムの対向面に配設され、この一対の透明導電膜を介して液晶層に電圧を印加する。そして、液晶層は多数の空孔を有する透明なポリマーフィルムからなり、当該空孔の各々は液晶が封入されることによって液晶カプセルを形成する。
【0005】
この調光体では、電圧無印加時、液晶分子が液晶カプセルの壁の曲面に沿って整列し、すなわち、液晶カプセルを透過する透過光の進行方向に沿って配列しないので、当該透過光の光路を曲折させ、液晶カプセル及びポリマーフィルムの境界層において入射光を散乱させて液晶層を乳白色にする。一方、この調光体では、電圧印加時、液晶分子は発生する電界方向に沿って整列するが、このとき、ポリマーフィルムの屈折率npと液晶分子の常光線屈折率noが一致するような材料から液晶層が構成されることによって液晶カプセル及びポリマーフィルムの境界層が光学的に存在しない状態となり、液晶層に入射した透過光をそのまま透過させることができ、これにより液晶層を透明にする。
【0006】
以上のような原理から、当該調光体は、電圧無印加時では入射光の散乱により視野を遮断し、電圧印加時では入射光をそのままの状態で透過することにより視野を確保するという視野制御機能を有する。
【0007】
この調光体は上述した視野制御機能により、単独で若しくは複数の板ガラスに挟まれた合わせガラスの形態でパーティションとして好適に用いられているが、近年、スクリーンとして用いられる事例が増えている。
【0008】
この調光体をスクリーンとして用いる例としては、内側にリアプロジェクションが配設されたショーウィンドウ等があり、この調光体は、液晶層への電圧の印加により透明となるとき、当該ショーウィンドウの内側に展示された商品を可視状態におき、液晶層へ電圧の無印加により乳白色(非透明)となるとき、ショーウィンドウ内側に配設されたリアプロジェクタから当該窓に投写された商品の宣伝映像等を映し出す。
【0009】
ここで、透明時の調光体に僅かに残る散乱度合いをヘイズ(haze)というが、上述したショーウィンドウに用いられる場合、透明時の低ヘイズ化が求められている。さらに、ショーウィンドウは開口面積が大きいため、透明時の低ヘイズ化と共に、ヘイズの視野角依存性が小さいことが求められている。
【0010】
また、この調光体が、リアプロジェクション等から投写された映像を映し出すスクリーンとして機能するためには、非透明時において、スクリーンに入射する入射光の透過光量における波長依存性を低減することが求められている。
【0011】
そして、複屈折率(以下「Δn」という)の低い液晶を用いることにより、正弦波電源にて透明時のヘイズの視野角依存性を低減できることが知られている(例えば、特許文献2)。
【0012】
【特許文献1】
特表昭58−501631号公報
【特許文献2】
特開平3−116019号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、調光体において、上述した複屈折率Δnの低い液晶を用いることによって透明時のヘイズの視野角依存性を低減することが可能であっても、非透明時において、入射光の透過光量における波長依存性を低減することができないという問題がある。
【0014】
本発明は、電圧無印加時の入射光の透過光量における波長依存性を低減することができる調光体及び合わせガラスを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の調光体は、複数の空孔を有し且つ当該空孔の各々に液晶材料が封入された液晶層と、間に前記液晶層を挟持する少なくとも一方が透明の一対の基板と、該基板の各々における対向面に配設された透明導電膜とを備える調光体において、前記調光体に入射する入射光の所定の波長領域における透過率の変化量が一定範囲以内に設定されていることを特徴とする。
【0016】
請求項1記載の調光体によれば、調光体に入射する入射光の所定の波長領域における透過率の変化量が一定範囲以内に設定されているので、非透明時の入射光の透過光量における波長依存性を低減することができ、当該調光体をスクリーンに用いた場合、スクリーンが赤みを帯びるのを防止することができ、もって当該調光体をスクリーンに好適なものとすることができる。
【0017】
請求項2記載の調光体は、請求項1記載の調光体において、前記所定の波長領域は380nm以上且つ780nm以下であり、前記一定範囲は3%であることを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の調光体によれば、所定の波長領域は380nm以上且つ780nm以下であり、一定範囲は3%であるので、入射光の波長領域の大部分を占める380nm以上且つ780nmの波長領域において入射光の透過率の変化量を実用上問題のない範囲に押さえ込むことができ、もって当該調光体をスクリーンにより好適なものとすることができる。
【0019】
請求項3記載の調光体は、請求項1又は2記載の調光体において、前記液晶材料の複屈折率Δnが0.12以上であり且つ前記空孔と同体積の真球体における平均直径D1及び前記複屈折率Δnの積が0.24μm≦D1*Δn≦0.32μmの範囲にあることを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の調光体によれば、液晶材料の複屈折率Δnが0.12以上であり且つ空孔と同体積の真球体における平均直径D1及び複屈折率Δnの積が0.24μm≦D1*Δn≦0.32μmの範囲にあるので、非透明時の入射光の透過光量における波長依存性を確実に低減することができると共に、散乱光の透過光量における散乱角依存性を低減することができ、当該調光体をスクリーンに用いた場合、スクリーンが赤みを帯びるのを確実に防止することができ、且つスクリーンの端において映像がぼやけるのを防止することができ、もって当該調光体をスクリーンにより好適なものとすることができる。
【0021】
請求項4記載の合わせガラスは、前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調光体を有することを特徴とする。
【0022】
ここで、本発明に係る調光体が、非透明時において、入射光の透過光量における波長依存性(以下「入射光の波長依存性」という)及び散乱光の透過光量における散乱角依存性(以下「散乱光の散乱角依存性」という)を低減する手段について詳述する。
【0023】
まず、散乱光の散乱角依存性は以下の手段により低減される。
【0024】
非透明時の調光体では、液晶の複屈折率Δnが高いほど、散乱角度の大きい散乱光の透過光量と、入射光に平行な透過光の透過光量との差が少なくなる傾向がある。
【0025】
そのため、散乱光の散乱角依存性を低減するには、複屈折率Δnを所定値以上に設定する必要があり、このとき、当該複屈折率Δnを0.12以上とすれば、スクリーンの機能を確保するために十分なレベルまで当該散乱角依存性を低減することができる。
【0026】
従って、調光体において散乱光の散乱角依存性を低減するため、複屈折率Δnを0.12以上とするのがよい。
【0027】
また、入射光の波長依存性は以下の手段により低減する。
【0028】
非透明時の調光体では、液晶が封入された液晶カプセルと同体積である真球体の平均直径(以下「真球換算直径」という)D1の大きさが大きいほど、入射光は回折しにくい。その結果、真球換算直径D1が大きいほど、入射光は調光体を透過しにくくなる。
【0029】
そのため、調光体において入射光の波長依存性を低減するには、真球換算直径D1を所定値以上に設定して入射光の透過光量を一定に抑える必要がある。
【0030】
具体的には、真球換算直径D1が1.5μm以上であれば、380nm〜780nmの可視光領域において入射光の透過光量の変化量を3%以内に保つことができ、入射光の波長依存性を低減することができる。
【0031】
さらに、真球換算直径D1は複屈折率Δnと関連があり、複屈折率Δnを小さくするには、真球換算直径D1の設定値を大きくする必要があり、具体的には、複屈折率Δnが0.16の場合、真球換算直径D1は1.5μm〜2.0μmの間に設定されるのに対し、複屈折率Δnが0.12の場合、真球換算直径D1は2.0μm〜2.7μmの間に設定される必要がある。
【0032】
従って、入射光の波長依存性を低減するには、真球換算直径D1と複屈折率Δnの積を0.24μm〜0.32μmに設定する必要があり、これにより、スクリーンの機能を確保するために十分なレベルまで当該波長依存性を低減することができる。
【0033】
従って、調光体において入射光の波長依存性を低減するため、真球換算直径D1と複屈折率Δnの積を0.24μm〜0.32μmに設定するのがよい。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る調光体について図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施の形態に係る調光体の断面図である。
【0036】
図1において、調光体100は、複数の空孔を有するラテックスから成る透明なポリマーフィルム101、及び上記空孔の各々にネマティック液晶の棒状分子102が封入されることによって形成された液晶カプセル103から成る液晶層104と、間に液晶層104を挟持する一対のPETフィルム105a,bと、該一対のPETフィルム105a,bの各々の対向面に配設された透明導電膜106a,bとを備え、調光体100において一対の透明導電膜106a,bは液晶層104に電圧を印加する。
【0037】
この調光体100では、液晶層104への電圧無印加時、ネマティック液晶の棒状分子102が液晶カプセル103の壁の曲面に沿って整列し、すなわち、液晶カプセル103を透過する透過光の進行方向に沿って配列しないので、透過光の光路を曲折させ、液晶カプセル103及びポリマーフィルム101の境界層において入射光を散乱させて液晶層104を乳白色にする。一方、この調光体100では、液晶層104への電圧印加時、ネマティック液晶の棒状分子102が発生する電界方向に沿って整列するが、このとき、ポリマーフィルム101の屈折率npとネマティック液晶の棒状分子102の常光線屈折率noが一致するような材料から液晶層104が構成されることによって液晶カプセル103及びポリマーフィルム101の境界層が光学的に存在しない状態となり、液晶層104に入射した透過光をそのまま透過させることができ、これによって液晶層104を透明にする。
【0038】
以上のような原理から、当該調光体100は、電圧無印加時には入射光の散乱により視野を遮断し、電圧印加時には入射光をそのままの状態で透過することにより視野を確保するという視野制御機能を有する。
【0039】
そして、上述した調光体100において、ネマティック液晶は、その複屈折率Δnが0.12以上であり、また、液晶カプセル103の真球換算直径D1及びネマティック液晶の複屈折率Δnの積は0.24μm≦D1*Δn≦0.32μmの範囲にある。
【0040】
次に、調光体100の製造方法について説明する。
【0041】
図2は、図1の調光体100の製造処理のフローチャートである。
【0042】
図2において、まず、厚みが175μmであるPETフィルム105a,bの各々において、その片面上にITO膜からなる透明導電膜106a,bを形成する(ステップS20)。
【0043】
次いで、ネマティック液晶と水性相とを混合してエマルジョンを作製し、該作製されたエマルジョンをラテックスに添加するか、又は、ネマティック液晶とラテックスを直接混合してエマルジョンを作製する。このとき、安定した液晶粒子を形成するために、エマルジョンに界面活性剤を添加することが好ましい。また、ネマティック液晶と水性相又はラテックスとの混合は、ブレンダー、コロイドミル等のミキサーを行う(ステップS21)。このミキサーの回転数によって液晶カプセル103の真球換算直径(D1)を所望の値に制御することができ、このとき、真球換算直径D1は2.0μmに設定されるが、真球換算直径D1が2.0μmの場合、ネマティック液晶の複屈折率Δnは0.12〜0.16の値をとり得る。
【0044】
さらに、作製されたエマルジョン中のラテックスを架橋するため架橋剤を添加して媒体を形成する(ステップS22)。当該架橋剤の分量は、ラテックスの固形分量に対応して、この固形分量相当のラテックスの全てを架橋可能な分量に設定される。
【0045】
そして、形成された媒体をナイフブレード又は他の適当な手段によって透明導電膜106a上に塗布し、塗布された媒体を乾燥させることによって架橋剤によるラテックスの架橋を進行させて液晶層104を形成する(ステップS23)。
【0046】
次いで、形成された液晶層104に透明導電膜106bが接するようにPETフィルム105bを貼り合わせ(ステップS24)、本処理を終了する。
【0047】
本実施の形態によれば、ネマティック液晶は、その複屈折率Δnが0.12以上であり、また、液晶カプセル103の真球換算直径D1及びネマティック液晶の複屈折率Δnの積は0.24μm≦D1*Δn≦0.32μmの範囲にあるので、非透明時において、調光体100を使用するスクリーンの機能を確保するために十分なレベルまで入射光の波長依存性及び散乱光の散乱角依存性を低減することができる。
【0048】
本実施の形態に係る調光体100における液晶は、上述したようなネマティック液晶だけでなく、コレステリック液晶又はスメクティック液晶であってもよい。
【0049】
本実施の形態に係る調光体100では、PETフィルムの代わりに、ITO膜や錫酸化物(SnO)膜が表面に形成されたガラス板やプラスチックフィルム等を用いてもよい。
【0050】
本実施の形態に係る調光体100におけるポリマーフィルムは、その屈折率nとネマティック液晶分子の常光線屈折率noとが一致する材料であって、ネマティック液晶を複数のカプセル状に保持できるものであれば、無機及び有機の種類を問わずにいかなるものも用いることができる。
【0051】
【実施例】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0052】
実施例
液晶ZLI−1840(メルク社製、△n=0.143)に界面活性剤IGEPAL CO−610(GAF社製)を0.5wt%添加し、該界面活性剤が添加された液晶を液晶比率が0.62になるようにラテックス粒子40重量%を含むNeorez R―967(ゼネカ社製)に添加した後、ホモジナイザーを用い10000回転で10分間撹拌してエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり混ぜながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。
【0053】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは20μmであった。
【0054】
また、上記調光体では、液晶カプセルの真球換算直径D1は2.0μmであり、D1*Δn=0.286μmであった。
【0055】
そして、この調光体を用いて瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(28C)(大塚電子株式会社製)によって上記調光体の非透明時における380nm〜800nmの波長域における入射光の透過光量(透過率)を測定し、その結果を後述する図3のグラフに点線で記載した。
【0056】
また、−50deg〜50degの各散乱角度おける散乱光の透過光量(透過率)を測定し、入射光の透過率に対する各散乱角度おける散乱光の透過率の比(以下「散乱透過率比」という)を後述する図4のグラフに点線で記載した。
【0057】
比較例
上述した実施例の調光体と同じ製造方法で調光体を得た。但し、ホモジナイザーの回転数を実施例における回転数と異なる回転数に設定した。得られた調光体では、ネ液晶カプセルの真球換算直径D1が1.0μmであり、D1*Δn=0.143であった。
【0058】
この調光体を用いて上述した実施例と同様に、380nm〜800nmの波長域における入射光の透過率を測定し、その結果を後述する図3のグラフに実線で記載した。また、−50deg〜50degの各散乱角度おける散乱光の透過率を測定し、散乱透過率比を後述する図4のグラフに実線で記載した。
【0059】
図3は、調光体が呈する380nm〜800nmの波長域における入射光の透過率を表したグラフである。
【0060】
図3において、横軸は入射光の波長であり、縦軸は各波長における入射光の透過率である。
【0061】
図3のグラフより、比較例の調光体は長波長域において入射光の透過率が上昇し、特に波長が800nm以上では入射光の透過率が8%を超えるため、比較例の調光体をスクリーンとして用いた場合、このスクリーンは赤みを帯びる一方、実施例の調光体は長波長域、特に380nm〜780nmの波長域において入射光の透過率が急激に上昇することがなく、その変化量が3%の範囲に押さえ込まれているため、入射光の透過率の変化量が実用上問題のない範囲に押さえ込まれ、入射光の波長依存性が低減されていることが確認された。すなわち、実施例の調光体を用いたスクリーンでは、このスクリーンが赤みを帯びることがなく、これにより、実施例の調光体はスクリーン用途に好適であることが分かった。
【0062】
図4は、調光体が呈する−50deg〜50degの各散乱角度おける散乱光の透過率と、入射光の透過率との関係を表したグラフである。
【0063】
図4において、横軸は散乱光の散乱角度であり、縦軸は散乱透過率比である。
【0064】
図4のグラフより、実施例の調光体における散乱透過率比の値が、−50deg〜50degの散乱角の範囲において比較例の調光体における散乱透過率比の値を上回り、散乱光の散乱角依存性が低減されていることが確認された。すなわち、実施例の調光体を用いたスクリーンでは、リアプロジェクション等の光源から映像が投写されたとき、スクリーンの端における映像の乱れの発生を防止できることが分かった。
【0065】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、請求項1記載の調光体によれば、調光体に入射する入射光の所定の波長領域における透過率の変化量が一定範囲以内に設定されているので、非透明時の入射光の透過光量における波長依存性を低減することができ、当該調光体をスクリーンに用いた場合、スクリーンが赤みを帯びるのを防止することができ、もって当該調光体をスクリーンに好適なものとすることができる。
【0066】
請求項2記載の調光体によれば、所定の波長領域は380nm以上且つ780nm以下であり、一定範囲は3%であるので、入射光の波長領域の大部分を占める380nm以上且つ780nmの波長領域において入射光の透過率の変化量を実用上問題のない範囲に押さえ込むことができ、もって当該調光体をスクリーンにより好適なものとすることができる。
【0067】
請求項3記載の調光体によれば、液晶材料の複屈折率Δnが0.12以上であり且つ空孔と同体積の真球体における平均直径D1及び複屈折率Δnの積が0.24μm≦D1*Δn≦0.32μmの範囲にあるので、非透明時の入射光の透過光量における波長依存性を確実に低減することができると共に、散乱光の透過光量における散乱角依存性を低減することができ、当該調光体をスクリーンに用いた場合、スクリーンが赤みを帯びるのを確実に防止することができ、且つスクリーンの端において映像がぼやけるのを防止することができ、もって当該調光体をスクリーンにより好適なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る調光体の断面図である。
【図2】図1の調光体100の製造処理のフローチャートである。
【図3】調光体が呈する380nm〜800nmの波長域における入射光の透過率を表したグラフである。
【図4】調光体が呈する−50deg〜50degの各散乱角度おける散乱光の透過率と、入射光の透過率との関係を表したグラフである。
【符号の説明】
100 調光体
101 ポリマーフィルム
102 ネマティック液晶
103 液晶カプセル
104 液晶層
105 PETフィルム
106 透明導電膜

Claims (4)

  1. 複数の空孔を有し且つ当該空孔の各々に液晶材料が封入された液晶層と、間に前記液晶層を挟持する少なくとも一方が透明の一対の基板と、該基板の各々における対向面に配設された透明導電膜とを備える調光体において、
    前記調光体に入射する入射光の所定の波長領域における透過率の変化量が一定範囲以内に設定されていることを特徴とする調光体。
  2. 前記所定の波長領域は380nm以上且つ780nm以下であり、前記一定範囲は3%であることを特徴とする請求項1記載の調光体。
  3. 前記液晶材料の複屈折率Δnが0.12以上であり且つ前記空孔と同体積の真球体における平均直径D1及び前記複屈折率Δnの積が0.24μm≦D1*Δn≦0.32μmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の調光体。
  4. 前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調光体を有することを特徴とする合わせガラス。
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