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JP2004315776A - レーザー溶着用樹脂組成物およびそれを用いた複合成形体 - Google Patents

レーザー溶着用樹脂組成物およびそれを用いた複合成形体 Download PDF

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JP2004315776A
JP2004315776A JP2003160555A JP2003160555A JP2004315776A JP 2004315776 A JP2004315776 A JP 2004315776A JP 2003160555 A JP2003160555 A JP 2003160555A JP 2003160555 A JP2003160555 A JP 2003160555A JP 2004315776 A JP2004315776 A JP 2004315776A
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laser welding
acid
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weight
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JP2003160555A
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Hideyuki Umetsu
秀之 梅津
Takahiro Kobayashi
隆弘 小林
Akira Kojima
彰 小島
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Abstract

【課題】耐熱性、寸法安定性、低そり性、レーザー溶着性が均衡して優れたレーザー溶着用樹脂組成物およびそれを用いた複合成形体を得る。
【解決手段】(A)液晶性樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂から選択される少なくとも1種と(B)ガラス転移温度(℃)が130℃以上の非晶性樹脂を含有してなり、その合計100重量%に対して(A)成分が30〜99重量%、(B)成分が70〜1重量%であるレーザー溶着用樹脂組成物。レーザー溶着工法の成形体に使用される。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、寸法安定性、低そり性、レーザー溶着性が均衡して優れたレーザー溶着用樹脂組成物およびそれを用いた複合成形体に関し、さらには他の物品にレーザー溶着して得られる複合成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶性樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性および薄肉流動性をバランスよく備えているため、電気・電子部品および自動車部品などに広く用いられている。
【0003】
従来から、製品形状の複雑化に伴う各パーツの接合においては、接着剤による接合、ボルトなどによる機械的接合などが行われてきた。しかしながら、接着剤ではその接着強度が、また、ボルトなどによる機械的接合では、費用、締結の手間、重量増が問題となっている。一方、レーザー溶着、熱板溶着などの外部加熱溶着、振動溶着、超音波溶着などの摩擦熱溶着に関しては短時間で接合が可能であり、また、接着剤や金属部品を使用しないので、それにかかるコストや重量増、環境汚染等の問題が発生しないことから、これらの方法による組立が増えてきている。
【0004】
外部加熱溶着のひとつであるレーザー溶着は、例えば、特許文献1に開示されているように重ね合わせた樹脂成形体にレーザー光を照射し、照射した一方を透過させてもう一方で吸収させ溶融、融着させる工法であり、三次元接合が可能、非接触加工、バリ発生が無いなどの利点を利用して、幅広い分野に広がりつつある工法である。
【0005】
当工法において、レーザー光線透過側成形体に適用する樹脂材料においては、レーザー光線を透過する特徴が必須となり、レーザ光線透過率の低い成形体をレーザー光線透過側成形体に用いた場合、レーザー光線入射表面で溶融、発煙するなどの不具合を生じる可能性が十分に考えられる。
【0006】
各種用途に金属代替を目指し、数多く使用されているポリアリーレンサルファイドおよび液晶性樹脂をはじめとする結晶性の熱可塑性樹脂においては、レーザー光線透過率が非常に低く、熱可塑性樹脂をレーザー光線透過側の成形品として用い、レーザー溶着工法を適用する際には、そのレーザー光線透過率の低さから厚み制限が非常に厳しく、レーザー光線透過率の向上のために薄肉化による対応が必要となり、製品設計自由度が小さかった。
【0007】
特許文献2には、レーザー溶着工法においてポリブチレンテレフテレート系共重合体を用いることによる融点のコントロールによって、溶着条件幅を広くすると記載されているが、融点のコントロールだけでは、レーザー光線透過性の大きな向上は望めず、従って成形体の肉厚設計の自由度向上も望めず、またポリブチレンテレフタレート系樹脂の成形性を損なう問題点があった。
【0008】
特許文献3には、ポリアミドに対し、フィラー強化により、レーザー光線透過性を保持しながら、耐熱性などの他の特性との均衡を試みており、確かにレーザー溶着性は満足するが、金属との複合化を考慮した場合、寸法安定性が十分とは言えず、成形品の変形・割れなどの問題を生じる場合がある。
【0009】
特許文献4には、ポリカーボネート等の非晶性樹脂に液晶性樹脂を添加することで寸法精度の要求が高い用途への展開を試みているが、レーザー溶着性についての記載が無く、また、耐熱性に関しても十分とは言えない。
【0010】
【特許文献1】
特開昭60−214931号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】
特開2001−26656号公報([0008]〜[0024]段落)
【特許文献3】
特開2002−348371号公報(第2頁、実施例)
【特許文献4】
特開2001−272573号公報(第2頁、実施例)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来の問題点を解消し、熱可塑性樹脂の特徴である射出成形による製品設計自由度を低下させることなく、かつ、レーザー光線透過側成形体として適用することのできる耐熱性、寸法安定性、低そり性に優れたレーザー溶着用樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
【0013】
すなわち本発明は、
(1)(A)液晶性樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂から選択される少なくとも1種と(B)ガラス転移温度が130℃以上の非晶性樹脂を含有してなり、その合計100重量%に対して(A)成分が30〜99重量%、(B)成分が70〜1重量%であるレーザー溶着用樹脂組成物、
(2)さらに(C)フィラーを、(A)、(B)の合計100重量部に対し、1〜200重量部添加配合してなる請求項1記載のレーザー溶着用樹脂組成物、
(3)(B)ガラス転移温度が130℃以上の非晶性樹脂が(B1)ポリアミドイミド樹脂、(B2)ポリアリレート樹脂、(B3)ポリエーテルサルフォン樹脂、(B4)ポリエーテルイミド樹脂、(B5)ポリサルフォン樹脂から選択される1種以上である請求項1または2記載のレーザー溶着用樹脂組成物、
(4)(C)フィラーが(C1)単繊維径が12μm以上であるガラス繊維、(C2)平均粒子径が30μm以上である非繊維状フィラーから選択される1種以上である請求項2または3記載のレーザー溶着用樹脂組成物。
(5)(C)フィラーの屈折率が1.6〜1.8である請求項2〜4のいずれか記載のレーザー溶着用樹脂組成物、
(6)さらに(D)酸化防止剤を、(A)、(B)の合計100重量部に対し、0.01〜5重量部添加配合してなる請求項1〜5のいずれか記載のレーザー溶着用樹脂組成物、
(7)さらに(E)エラストマーを(A)、(B)の合計100重量部に対し、0.5〜20重量部添加配合してなる請求項1〜6のいずれか記載のレーザー溶着用樹脂組成物、
(8)請求項1〜7のいずれか記載のレーザー溶着用樹脂組成物からなるレーザー光線透過側の成形体であって、溶着部位の透過部厚みが5mm以下であることを特徴とするレーザー溶着用の成形体、
(9)請求項1〜7のいずれか記載のレーザー溶着用樹脂組成物からなる成形体をレーザー溶着した複合成形体である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0015】
本発明において(a)液晶性樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂から選択される1種以上の熱可塑性樹脂について説明する。
【0016】
まず、液晶性樹脂とは、異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、エステル結合を有するものが好ましい。例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられ、具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボンから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなど、また液晶性ポリエステルアミドとしては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位以外にさらにp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドである。上記した液晶性樹脂のうち、液晶性ポリエステルが好ましく、なかでもp−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルを特に好ましく用いることができる。
【0017】
上記液晶性ポリエステルのうち、好ましい構造の具体例としては、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、または、(I)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0018】
特に好ましいのは(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルである。
【0019】
【化1】
Figure 2004315776
【0020】
(ただし式中のR1は
【0021】
【化2】
Figure 2004315776
【0022】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0023】
【化3】
Figure 2004315776
【0024】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
【0025】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、および1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【0026】
【化4】
Figure 2004315776
【0027】
であり、R2が
【0028】
【化5】
Figure 2004315776
【0029】
であるものが特に好ましい。
【0030】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記したように、構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体および上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体から選択される1種以上であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0031】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜15モル%がより好ましい。また、構造単位(I)の(II)に対するモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0032】
一方、上記構造単位(II) を含まない場合は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(III)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0033】
ここで実質的に等モルとは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットが等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0034】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0035】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0036】
本発明において使用する上記液晶性ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0037】
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0038】
本発明に使用する液晶性ポリエステルは、非晶性樹脂添加による流動性低下あるいは、フィラーを充填した場合の流動性低下を抑制するため、溶融粘度は0.5〜80Pa・sが好ましく、特に1〜50Pa・sがより好ましい。また、流動性がより優れた組成物を得ようとする場合には、溶融粘度を40Pa・s以下とすることが好ましい。
【0039】
なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0040】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0041】
また、ポリアリーレンサルファイド樹脂の代表例としては、ポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと略す場合もある)、ポリフェニレンサルファイドスルホン、ポリフェニレンサルファイドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられ、中でもポリフェニレンサルファイドが特に好ましく使用される。かかるポリフェニレンサルファイドは、下記構造式で示される繰り返し単位を有するものであり、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む重合体であり、上記繰り返し単位が70モル%以上の場合には、耐熱性が優れる点で好ましい。
【0042】
【化6】
Figure 2004315776
【0043】
また、かかるポリフェニレンサルファイド樹脂は、その繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位などで構成することが可能であり、ランダム共重合体、ブロック共重合体であってもよく、それらの混合物であってもよい。
【0044】
【化7】
Figure 2004315776
【0045】
かかるポリアリーレンサルファイド樹脂は、通常公知の方法、つまり特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。
【0046】
本発明においては、上記のようにして得られたポリアリーレンサルファイド樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用することも、もちろん可能である。
【0047】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。この場合の加熱処理温度としては、好ましくは150〜280℃、より好ましくは200〜270℃の範囲が選択して使用され、処理時間としては、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは2〜50時間の範囲が選択されるが、この両者をコントロールすることによって、目標とする粘度レベルを得ることができる。かかる加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0048】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧(好ましくは7,000Nm−2以下)下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間の条件で加熱処理する方法を例示することができる。かかる加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0049】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合に、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリアリーレンサルファイド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限なく使用することができる。例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが使用される。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましく使用される。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
【0050】
かかる有機溶媒による洗浄の具体的方法としては、有機溶媒中にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリアリーレンサルファイド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンサルファイド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。
【0051】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるポリアリーレンサルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンサルファイド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンサルファイド樹脂と水との割合は、水の多い方がよく、好ましくは水1リットルに対し、ポリアリーレンサルファイド樹脂200g以下の浴比で使用される。
【0052】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸としては、ポリアリーレンサルファイド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが用いられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンサルファイド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によるポリアリーレンサルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
【0053】
本発明で用いられるポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は、300℃、剪断速度1000/秒の条件下で80Pa・s以下であることが好ましく、60Pa・s以下がより好ましく、40Pa・s以下であることが更に好ましい。溶融粘度の下限については特に制限はないが、5Pa・s以上であることが好ましい。また溶融粘度の異なる2種以上のポリアリーレンサルファイド樹脂を併用してもよい。
【0054】
ポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度が上記の範囲である場合に、溶融流動性が良好である点で好ましい。
【0055】
なお、ポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機(株)社製)装置を用い、ダイス長10mm、ダイス孔直径1.0mmの条件により測定することができる。
【0056】
本発明において(B)ガラス転移温度が130℃以上の非晶性樹脂の具体例としては、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等が挙げられ、中でも耐熱性、相溶性点からポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリサルフォンが好ましく、(B1)ポリアミドイミド、(B2)ポリアリレート、(B3)ポリエーテルサルフォン、(B4)ポリエーテルイミド、(B5)ポリサルフォンが特に好ましい。また、これら(B1)ポリアミドイミド、(B2)ポリアリレート、(B3)ポリエーテルサルフォン、(B4)ポリエーテルイミド、(B5)ポリサルフォンは特にPPS樹脂に相溶した際にとりわけ優れたレーザー透過性が得られる点で特に好ましい。
【0057】
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物における(A)成分の液晶性樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂から選択される少なくとも1種と(B)成分のガラス転移温度が130℃以上の非晶性樹脂の配合割合は、(A)、(B)の合計量を100重量%とした場合、(A)成分30〜99重量%および(B)成分70〜1重量%であり、(A)成分30〜95重量%および(B)成分70〜5重量%であることが好ましい。より好ましくは(A)成分40〜90重量%および(B)成分60〜10重量%、さらに好ましくは、(A)成分50〜90重量%および(B)成分50〜10重量%、特に好ましくは(A)成分50〜80重量%および(B)成分50〜20重量%である。
【0058】
また、上記非晶性樹脂はレーザー透過性と成形品そりのバランスを得るために2種以上を併用して使用することもできる。
【0059】
上記において、(A)成分が多すぎる場合、本発明の効果のうち、レーザー透過性が低いためにレーザー溶着強度が得られず、また、低そり性が得られない。(B)成分が多すぎる場合、耐熱性および流動性が得られない。
【0060】
本発明にさらに耐熱性、機械強度等の特性を向上させるために(C)フィラーを添加することが可能である。添加する(C)フィラーの具体例としては、繊維状もしくは、板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、アルミナ水和物(ウィスカー・板状)、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、タルク、カオリン、シリカ(破砕状・球状)、石英、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、破砕状・不定形状ガラス、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化アルミニウム(破砕状)、酸化チタン(破砕状)、酸化亜鉛などの金属酸化物、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、窒化アルミニウム、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。ガラス繊維あるいは炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。本発明においては、上記フィラーのうち、レーザー溶着性に必須である赤外光の透過性から、単繊維径が12μm以上であるガラス繊維、平均粒子径が30μm以上の非繊維状フィラーであることが好ましい。なかでも単繊維径が15μm以上のガラス繊維、平均粒子径が50μm以上の非繊維状フィラーであることが好ましい。また、このようなガラス繊維の単繊維径の上限としては、強化材としての観点から35μm以下であることが好ましく、非繊維状フィラーの平均粒子径の上限としては成形時のゲート詰まりのトラブル回避の観点から上限としては1000μm以下であることが好ましい。なお、上記における単繊維径は、JIS−R3420 5,6に基づく試験法により測定される値であり、平均粒子径は試料0.70gにエタノールを加え、3分間超音波分散させたものにレーザー光を照射させるマイクロトラック法により求めた数平均である。また、透光性フィラーであることが好ましく、具体的な材質としては、Eガラス、Cガラス、Hガラス、アルミナ水和物、透光性アルミナ、酸化亜鉛、透光性窒化アルミニウム、シリカ、天然石英ガラス、合成石英ガラス、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物などが挙げられ、これらの形状としては例えば、繊維状もしくは、板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状のものなどが挙げられる。上記透光性フィラーの中では、屈折率が1.6〜1.8のものがレーザー透過率の点から特に好ましく、具体的にはHガラス、アルミナ水和物が特に好ましい。なお、ここでいう屈折率は同じ組成からなる10mm角の立方体状の試験片を用いて、プルフリッヒ屈折計により、全反射の臨界角による方法に基づいて測定されるものである
また、上記フィラーは機械強度と成形品そりのバランスを得るために2種以上を併用して使用することもでき、例えば、ガラス繊維とマイカあるいはガラスフレークとアルミナ(酸化アルミニウム)(粉砕状)、ガラス繊維とガラスビーズ、シリカと破砕状ガラス、ミルドファイバーと破砕状ガラス等が挙げられる。
【0061】
なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0062】
本発明で用いられる(C)フィラーの配合量は、用いるフィラーの特性を発揮し、かつ溶融加工性とのバランスの点から、(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して通常、1〜200重量部、好ましくは5〜150重量部、より好ましくは10〜100重量部である。
【0063】
また、本発明においては酸化着色によるレーザー透過率低下を抑制するために(D)酸化防止剤を添加することが可能である。(D)酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジン)イソシアヌレート等のフェノール系化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ化合物、次亜リン酸カルシウム、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系化合物などが挙げられるが、なかでも次亜リン酸カルシウムが好ましい。(D)酸化防止剤の配合量は、(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。
【0064】
また、上記酸化防止剤は酸化着色によるレーザー透過率低下を抑制するために2種以上を併用して使用することもできる。
【0065】
さらに、本発明におけるレーザー溶着用樹脂組成物の耐衝撃性、および耐冷熱性を改良するために、(E)エラストマーを添加することが可能である。(E)エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、変性オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。オレフィン系エラストマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、イソブチレンなどのα−オレフィン単独または2種以上を重合して得られる(共)重合体、α−オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、などのα,β−不飽和酸およびそのアルキルエステルとの共重合体などが挙げられる。オレフィン系エラストマーの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体などが挙げられる。
【0066】
本発明において変性オレフィン系エラストマーを添加することは、レーザー溶着用樹脂組成物の耐衝撃性、および耐冷熱性をさらに改良するために有効である。変性オレフィン系エラストマーとしては、上記のようなオレフィン系エラストマーとエポキシ基、酸無水物基、アイオノマーなどの官能基を有する単量体成分(官能基含有成分)を導入して得られるものが挙げられ、上記の官能基を官能基含有成分の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ[2.2.1]5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ[2.2.1]5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などの酸無水物基を含有する単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体、カルボン酸金属錯体などのアイオノマーを含有する単量体が挙げられる。
【0067】
これら官能基含有成分を導入する方法は特に制限なく、前記したようなオレフィン系エラストマーの重合時に共重合せしめたり、オレフィン系エラストマーにラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。官能基含有成分の導入量は変性オレフィン重合体全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。
【0068】
特に有用な変性オレフィン系エラストマーの具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体の亜鉛錯体、エチレン/メタクリル酸共重合体のマグネシウム錯体、エチレン/メタクリル酸共重合体のナトリウム錯体などを挙げることができる。
【0069】
好ましいものとしては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0070】
とりわけ好ましいものとしては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。
【0071】
一方、スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/エチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体などが挙げられるが、なかでもスチレン/ブタジエン共重合体が好ましい。さらに好ましくは、スチレン/ブタジエン共重合体のエポキシ化物が挙げられる。
【0072】
(E)エラストマーの配合量は、(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して通常、0.5〜20重量部、好ましくは0.8〜10重量部、より好ましくは1〜6重量部である。
【0073】
また、上記エラストマーは耐衝撃性、耐冷熱性、およびレーザー透過性のバランスを得るために2種以上を併用して使用することもできる。
【0074】
本発明におけるレーザー溶着用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0075】
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物の製造方法は、通常公知の方法で製造される。例えば、(A)成分、(B)成分中、その他の必要な添加剤、(C)フィラー、(D)酸化防止剤、(E)エラストマー等を予備混合して、またはせずに押出機などに供給して十分溶融混練することにより調製される。また、(C)フィラーを添加する場合、特に繊維状フィラーの繊維の折損を抑制するために好ましくは、(A)成分、(B)成分、その他必要な添加剤、(D)酸化防止剤、(E)エラストマー等を押出機の元から投入し、(C)フィラーをサイドフィーダーを用いて、押出機へ供給することにより調製される。
【0076】
レーザー溶着用樹脂組成物を製造するに際し、例えば“ユニメルト”(R)タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いて180〜350℃で溶融混練して組成物とすることができる。
【0077】
かくして得られたレーザー溶着用樹脂組成物は、射出あるいはプレスなどの溶融成形、なかでも射出成形方法(一般射出成形、射出圧縮成形、2色成形、サンドイッチ成形など、なかでも一般射出成形、射出圧縮成形が好ましい。)により、成形品を取得することが可能である。
【0078】
また、耐熱性をさらに向上させるためには、用いる非晶性樹脂のガラス転移温度−40℃以上で得られたレーザー溶着用樹脂組成物を熱処理することが好ましく、さらには、ガラス転移温度−30℃以上が好ましく、特にガラス転移温度−20℃以上が好ましい。上限としては、成形品の形状保持の観点から、用いる液晶性樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂の融点−10℃が好ましい。
【0079】
かくして得られる成形体は、レーザー溶着性を保持し、さらに耐熱性、寸法安定性、低そり性であることを活かし、レーザー溶着して用いられる成形品、好ましくはレーザー光線透過側の成形体に用いられ、他の部材とレーザー溶着することにより、実用的な複合成形体を与えることができる。例えば、電気・電子用途、自動車用途、一般雑貨用途、建築部材等に有用であり、具体的には、パソコン、液晶プロジェクター、モバイル機器、携帯電話等の電子部品ケースおよびスイッチ類のモジュール品、リモコン内部接合部品、電装部品のモジュール品、エンジンルーム内のモジュール部品、インテークマニホールド、アンダーフード部品、ラジエター部品、インパネなどに用いるコックピットモジュール部品、あるいは筐体、その他情報通信分野において電磁波などの遮蔽性を必要とする設置アンテナなどの部品、あるいは建築部材で高寸法精度を必要とする用途、特に軽量化等で金属代替が熱望されている自動車部品用途、電気・電子部品用途等のレーザー溶着して用いられる成形体に有用であり、特にレーザー溶着強度の観点から、各種用途の樹脂成形体のレーザ溶着接合のレーザー光線透過側の成形体に有用である。本発明のレーザー溶着用樹脂組成物はレーザー光線透過性に優れるため、レーザー光線による溶着部位のレーザー光線透過部の厚みが5mm以下の比較的厚い範囲であっても良好な接着力が得られ、なかでも4mm以下、特に3.5mm以下、さらには2.5mm以下であれば、より強い接着力が得られる。また、本発明の範囲で組成を適宜調整することで、4mmを超える厚みであっても良好な接着力を得ることが可能である。なお、実質的な成形体の強度および生産性を得るうえで下限厚みは0.1mmであることが好ましい。
【0080】
【実施例】
参考例1 熱可塑性樹脂
PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂):M3910(東レ社製)を使用した。
LCP(液晶性ポリエステル):p−ヒドロキシ安息香酸995重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部及び無水酢酸960重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、室温から150℃まで昇温しながら3時間反応させ、150℃から250℃まで2時間で昇温し、250℃から320℃まで1.5時間で昇温させた後、320℃、1.5時間で0.5mmHg(67Pa)に減圧し、さらに約0.25時間反応させ重縮合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位12.5モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなるペレットを得た。
【0081】
参考例2 非晶性樹脂
ポリアリレート(PAR):“Uポリマー”U−100(ユニチカ社製)ガラス転移温度(Tg)=195℃
ポリエーテルイミド(PEI):“ウルテム”1010(日本ジーイープラスチックス社製)ガラス転移温度(Tg)=215℃
ポリエーテルサルフォン(PES):“スミカエクセル”3600P(住友化学工業社製)ガラス転移温度(Tg)=220℃
ポリアミドイミド(PAI):N,N−ジメチルアセトアミドを重合溶媒とする酸クロリド法低温溶液重合法にて合成した。以下に詳細を示す。N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)65リットルにジアミノジフェニルエーテル(DDE)12kgおよびメタフェニレンジアミン(MPDA)2.0kgを溶解し、氷浴で冷却しながら、粉末状の無水トリメリット酸モノクロリド(TMAC)15kgを内温が30℃を超えないような速度で添加した。TMACを全て添加した後、無水トリメリット酸(TMA)1.7kgを添加し、30℃で2時間撹拌保持した。粘調となった重合液をカッターミキサーに張った100リットルの水中に投入し、高速撹拌することによりスラリー状にポリマを析出させた。得られたスラリーを遠心分離機で脱水処理した。脱水後のケークを60℃の水200リットルを用いて洗浄し、再度遠心分離機で脱水処理した。得られたケークを熱風乾燥機を用いて、220℃/5時間の条件で乾燥し、ガラス転移温度(Tg)=275℃の粉末状ポリマを得た。同様の操作を繰り返し、以下の実施例に供した。
ポリサルフォン(PSU):“ユーデル”P−1700(アモコエンジニアリングポリマーズ社製)ガラス転移温度(Tg)=190℃
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC7:パーキンエルマー社製)を用いて昇温速度20℃で求めた。
【0082】
参考例3 フィラー
ガラス繊維(GF1):EPDM70M10A(繊維状フィラー、日本電気ガラス社製)Eガラス、ミルドファイバー、単繊維径9μm、屈折率(n)1.55、平均繊維長70μm
ガラス繊維(GF2):T−187N(繊維状フィラー、日本電気ガラス社製)Eガラス、単繊維径17μm、屈折率(n)1.55
ガラスフレーク(GFL):REFG311(板状フィラー、SNGペトロテックス)Eガラス、JIS−K0069に基づく篩分け試験法により測定した数平均粒子径60μm、同GFLをマイクロトラック法により平均粒子径を求めると58μmとなった。屈折率(n)1.55
Eガラス粉砕品(EG):Eガラス(日本電気ガラス社製)をヘンシェルミキサーで粉砕後、63μmパス、9.5μmアンダーカットで篩分けをし、平均粒子径20μm(マイクロトラック法)のEGを得た。屈折率(n)1.55
Hガラス粉砕品(HG1):Hガラス(日本電気ガラス社製)をヘンシェルミキサーで粉砕後、63μmパス、9.5μmアンダーカットで篩分けをし、平均粒子径20μm(マイクロトラック法)のHG1を得た。屈折率(n)1.74
Hガラス粉砕品(HG2):Hガラス(日本電気ガラス社製)をヘンシェルミキサーで粉砕後、355μmパス、45μmアンダーカットで篩分けをし、平均粒子径150μm(マイクロトラック法)のHG2を得た。屈折率(n)1.74
アルミナ水和物(BM):“テラセス”BMP(大塚化学社製)板状、平均粒子径5μm(マイクロトラック法)、屈折率(n)1.66
なお、単繊維径はJIS−R3420 5,6に基づく試験法により測定した値である。屈折率(n)は10mm角の立方体状の試験片を作製し、プルフリッヒ屈折計を用いて、全反射の臨界角による方法に基づいて測定されるものである。マイクロトラック法による平均粒子径は試料0.70gにエタノールを加え、3分間超音波分散させたものにレーザー光を照射させるマイクロトラック法により求めた数平均である。上記において355μmパスとは相当する篩を通過したことを意味し、45μmアンダーカットとは、相当する篩を通過しなかったことを意味する。
【0083】
参考例4 酸化防止剤
酸化防止剤:“次亜リン酸カルシウム”(太平化学産業社製)
参考例5 エラストマー
エラストマー−1:“BF−E”(住友化学工業社製)エチレン/グリシジルメタクリレート=97.6/2.4(モル%)共重合体。
オレフィン−2:“タフマーA4085”(三井化学社製)エチレン/ブテン−1=90.8/9.2(モル%)共重合体。
【0084】
実施例1〜8、13〜30、比較例1〜3、5
参考例1の熱可塑性樹脂、参考例2に示した非晶性樹脂、参考例3に示したフィラー、参考例4に示した酸化防止剤、および参考例5に示したエラストマーをリボンブレンダーで表1に示す量でブレンドし、3ホールストランドダイヘッド付きPCM30(2軸押出機;池貝鉄鋼社製)にて表1〜3に示す樹脂温で溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風オーブンで4時間乾燥した後、以下に示す評価を行った。
【0085】
実施例9〜12、比較例4
実施例1、3、4、8および比較例3で得られた成形品をさらに表1に示す熱処理温度で2時間熱処理を行い、以下に示す評価を行った。
【0086】
(1)耐熱性
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表1に示す樹脂温度、金型温度で12.7mm×127mm×3.2mm厚の試験片を作成し、ASTM D648に従い、0.46MPa荷重下の荷重たわみ温度を評価した。
【0087】
(2)線膨張率(寸法安定性)
寸法安定性について成形品の中央部から長さ10mm×幅1mm×2mm厚の角柱成形品を切り出し、TMA(セイコー電子社製)を用い、30℃〜70℃(5℃/分)で測定した。
【0088】
(3)低そり性
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表1に示す樹脂温度、金型温度で70mm×70mm×1mm厚の角板を成形し、130℃で1時間熱処理した時のそり性を評価した。
【0089】
評価は、角板の四辺のいずれか1カ所を抑え、そり量が◎:0.8mm未満、○:1mm未満、△:3mm未満、×:3mm以上とした。
【0090】
(4)レーザー溶着強度評価(3mm厚)
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表1に示す樹脂温度、金型温度で80mm×80mm×3mm厚のレーザー光線透過性評価試験片を作成し、さらに試験片を24mm×70mm×3mm厚にそれぞれ加工し、透過用試料と吸収側試料を重ね合わせ長さLを30mmとし、レーザー溶着距離Yは20mmとして、レーザー溶着を行い、引張破断強度を測定した。
【0091】
なお、溶着条件および溶着強度測定条件は以下の通りである。
【0092】
ライスター社のMODULAS Cを用い、レーザー溶着条件は、出力15〜35W範囲および、レーザ走査速度1〜50mm/secの範囲で最も良好な溶着強度が得られる条件で行った。尚、焦点距離は38mm、焦点径は0.6mm固定で実施した。また、溶着強度測定には一般的な引張試験器(AG−500B)を用い、該試験片の両端を固定し、溶着部位には引張剪断応力が発生するように引張試験を行った。強度測定時の引張速度は1mm/min、スパンは40mmである。溶着強度は溶着部位が破断したときの応力とした。尚、レーザ光線透過試料へは本発明の熱可塑性樹脂組成物を用い、レーザ光線吸収側試料には、それぞれ透過側試料に更にカーボンブラックを0.4部添加した材料を用いた。
【0093】
実施例31〜40、比較例6〜10
参考例1の熱可塑性樹脂、参考例2に示した非晶性樹脂、参考例3に示したフィラー、参考例4に示した酸化防止剤をリボンブレンダーで表2に示す量でブレンドし、3ホールストランドダイヘッド付きPCM30(2軸押出機;池貝鉄鋼社製)にて表2に示す樹脂温で溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風オーブンで4時間乾燥した後、以下に示す評価を行った。
【0094】
(5)レーザー溶着強度評価(4.5mm厚)
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表2に示す樹脂温度、金型温度で80mm×80mm×4.5mm厚のレーザー光線透過性評価試験片を作成し、さらに試験片を24mm×70mm×4.5mm厚にそれぞれ加工し、透過用試料と吸収側試料を重ね合わせ長さLを30mmとし、レーザー溶着距離Yは20mmとして、レーザー溶着を行い、引張破断強度を測定した。
【0095】
なお、溶着条件および溶着強度測定条件は以下の通りである。
【0096】
ライスター社のMODULAS Cを用い、レーザー溶着条件は、出力15〜35W範囲および、レーザ走査速度1〜50mm/secの範囲で最も良好な溶着強度が得られる条件で行った。尚、焦点距離は38mm、焦点径は0.6mm固定で実施した。また、溶着強度測定には一般的な引張試験器(AG−500B)を用い、該試験片の両端を固定し、溶着部位には引張剪断応力が発生するように引張試験を行った。強度測定時の引張速度は1mm/min、スパンは40mmである。溶着強度は溶着部位が破断したときの応力とした。尚、レーザ光線透過試料へは本発明の熱可塑性樹脂組成物を用い、レーザ光線吸収側試料には、それぞれ透過側試料に更にカーボンブラックを0.4部添加した材料を用いた。
【0097】
実施例41〜45、比較例11〜15
参考例1の熱可塑性樹脂、参考例2に示した非晶性樹脂、参考例3に示したフィラー、参考例4に示した酸化防止剤、および参考例5に示したエラストマーをリボンブレンダーで表3に示す量でブレンドし、3ホールストランドダイヘッド付きPCM30(2軸押出機;池貝鉄鋼社製)にて表3に示す樹脂温で溶融混練を行い、ペレットを得た(これらは実施例26〜30と同組成を有するものである。)。ついで130℃の熱風オーブンで4時間乾燥した後、以下に示す評価を行った。
【0098】
(6)耐冷熱性
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表3に示す樹脂温度、金型温度で縦47.0mm×横47.0mm×高さ28.6mmの金属片を金型内に固定して、当該金属片の外周に厚み1.5mmの樹脂をオーバーモールドし、耐冷熱性評価試験片を作製した。評価はTHERMAL SHOCK CHANBER TSA−100S−W型(タバイ社製)を用い、130℃(高温側)、−40℃(低温側)を各1時間ごとさらして、これを1サイクルとし、クラックが発生するまでのサイクル数を目視で判定し、n=3のサイクル数の平均値が◎:1000サイクル以上、○:300サイクル以上、△:30サイクル以上、×:30サイクル未満とした。
【0099】
【表1】
Figure 2004315776
【0100】
【表2】
Figure 2004315776
【0101】
【表3】
Figure 2004315776
【0102】
【発明の効果】
上述したように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来得られなかったレーザー溶着接合性と耐熱性、寸法安定性、低そり性が均衡して優れる成形体の取得が可能となり、また、得られた成形品を熱処理を行うことでさらに特性が向上することから、この利点を活かして、電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品、建材、包装材、家具、日用雑貨などの各種用途の樹脂成形体のレーザー溶着接合に有用である。

Claims (9)

  1. (A)液晶性樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂から選択される少なくとも1種と(B)ガラス転移温度が130℃以上の非晶性樹脂を含有してなり、その合計100重量%に対して(A)成分が30〜99重量%、(B)成分が70〜1重量%であるレーザー溶着用樹脂組成物。
  2. さらに(C)フィラーを、(A)、(B)の合計100重量部に対し、1〜200重量部添加配合してなる請求項1記載のレーザー溶着用樹脂組成物。
  3. (B)ガラス転移温度が130℃以上の非晶性樹脂が(B1)ポリアミドイミド樹脂、(B2)ポリアリレート樹脂、(B3)ポリエーテルサルフォン樹脂、(B4)ポリエーテルイミド樹脂、(B5)ポリサルフォン樹脂から選択される1種以上である請求項1または2記載のレーザー溶着用樹脂組成物。
  4. (C)フィラーが(C1)単繊維径が12μm以上であるガラス繊維、(C2)平均粒子径が30μm以上である非繊維状フィラーから選択される1種以上である請求項2または3記載のレーザー溶着用樹脂組成物。
  5. (C)フィラーの屈折率が1.6〜1.8である請求項2〜4のいずれか記載のレーザー溶着用樹脂組成物。
  6. さらに(D)酸化防止剤を、(A)、(B)の合計100重量部に対し、0.01〜5重量部添加配合してなる請求項1〜5のいずれか記載のレーザー溶着用樹脂組成物。
  7. さらに(E)エラストマーを(A)、(B)の合計100重量部に対し、0.5〜20重量部添加配合してなる請求項1〜6のいずれか記載のレーザー溶着用樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか記載のレーザー溶着用樹脂組成物からなるレーザー光線透過側の成形体であって、溶着部位の透過部厚みが5mm以下であることを特徴とするレーザー溶着用の成形体。
  9. 請求項1〜7のいずれか記載のレーザー溶着用樹脂組成物からなる成形体をレーザー溶着した複合成形体。
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