JP2016094615A - 熱伝導性で寸法安定性の液晶性ポリマー組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱伝導率、寸法安定性、機械的強度、靱性、高流動性(低粘度)、およびコスト競争力に優れたハロゲン非含有樹脂組成物の提供。【解決手段】(c)に対する(b)の比が重量パーセントで30:70〜80:20であり、組成物が少なくとも約3W/m・Kの熱伝導率を有する、下記に示される、熱伝導性のポリマー組成物。(a)44重量パーセント未満の少なくとも1種の液晶性ポリマー、(b)約10〜約40重量パーセントのグラファイトフレーク、(c)約10〜約35重量パーセントの、10〜100μmの平均粒径を有するタルク、(d)約6〜約25重量パーセントの、3〜20のアスペクト比を有する繊維充填材【選択図】なし
Description
本発明は、熱伝導性で寸法安定性の液晶性ポリマー組成物に関する。
多くの電気および電子装置は作動時に熱を発生し、そしてマイクロプロセッサの処理速度がより速くなるにつれて、半導体素子がより小さくなっていき、より高密度に実装されるようになってきている。この結果、装置が発生する熱の量が増大するため、装置の故障や耐用年数の短縮につながることがある。したがって、半導体部材を冷却するより効率的な方法が求められている。
熱源から熱を移動させるのに、ヒートシンク、熱伝導性シート、ヒートパイプ、ウォータークーラー、およびファンなどの冷却用部材が使用されることが多い。例えばヒートシンクは、高い熱伝導率を有する金属もしくはセラミックから製造されていることが多いが、これらは大きくて扱いにくいことがある。
冷却用部材は、ポリマー材料から製造するのが望ましいと思われる。このような材料の多くは、容易に種々の形状物に造り上げることができるからである。さらに、回路基板や他の部材のためのハウジングはポリマー材料から造られるので、熱伝導性のポリマー材料からハウジングを製造するのが望ましいと思われる。こうしたハウジングは、電気部材もしくは電子部材が発生する熱を放散させることができ、したがって大きくて扱いにくいヒートシンクを追加する必要が無くなるからである。
例えば、光ディスク装置における光ピックアップベースは、材料の熱伝導性により半導体レーザーからの発熱を放散させる必要がある。光ピックアップベースはさらに、レーザーを使用する読み取りと書き込みが正確になされるように寸法安定性、すなわち、流れ方向と横断方向における線熱膨張率(CLTE)の差が小さいことを必要とする。落下の衝撃に耐えるように、靱性と機械的強度も必要とされる。
米国特許第6,685,855号明細書は、ポリフェニレンスルフィドとグラファイトを含む樹脂組成物を使用するディスクプレイヤーにおける、光ヘッド装置用の熱伝導性ケーシングの製造方法を開示している。しかしながら、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物はバーリング加工を必要とし、そしてポリフェニレンスルフィドは、ポリマー鎖の末端に塩素を有するので、電気および電子業界において要求が高まっているハロゲン非含有材料というニーズを満たさない。
国際公開第03/029352号と米国特許第6,995,205号明細書は、高い熱伝導率と良好な成形適性を有する高熱伝導性の樹脂組成物、および該樹脂組成物で成形された光ピックアップベースを開示している。樹脂組成物は、少なくとも40容量%のマトリックス樹脂、10〜55容量%の熱伝導性フィラー、および熱伝導性のフィラー粒子を結びつける、500℃以下の融点を有する金属合金を含む。金属合金と熱伝導性フィラーとの容積比は1:30〜3:1の範囲である(de OEMのハロゲン含量に関する米国特許第6,995,205号明細書)。しかしながら、液晶性ポリマー組成物は開示されておらず、樹脂組成物に金属合金を加えることは材料コストの増大を招き、樹脂組成物の機械的特性を低下させる。
米国特許第5,428,100号明細書は、100重量部の液晶ポリエステル、5μm〜50μmの平均粒径を有する45〜80重量部のグラファイト、および5μm〜50μ
mの平均粒径を有する0〜140重量部のタルクからなり、グラファイトとタルクの合計量が55〜185重量部である液晶ポリエステル樹脂組成物を開示している。しかしながら、該特許に開示されている組成物の機械的特性はあまりにも低品位なので、光ピックアップベース用に利用することができない。
mの平均粒径を有する0〜140重量部のタルクからなり、グラファイトとタルクの合計量が55〜185重量部である液晶ポリエステル樹脂組成物を開示している。しかしながら、該特許に開示されている組成物の機械的特性はあまりにも低品位なので、光ピックアップベース用に利用することができない。
高い熱伝導率、寸法安定性、高い機械的強度、靱性、高い流動性(低粘度)、およびコスト競争力を有する本質的にハロゲン非含有の樹脂組成物が求められている。
本明細書に開示されているのは、
(a)44重量パーセント未満の少なくとも1種の液晶性ポリマー;
(b)約10重量パーセント〜約40重量パーセントのグラファイト;
(c)約10重量パーセント〜約35重量パーセントの、10μm〜100μmの範囲内の平均粒径を有するタルク;
(d)約6重量パーセント〜約25重量パーセントの、3〜20の範囲内のアスペクト比を有する繊維充填材;を含む熱可塑性組成物であって、
(c)に対する(b)の比が重量パーセントで30:70〜80:20であり、重量パーセントが組成物の全量を基準としており、組成物が少なくとも約3W/m・Kの熱伝導率を有する、前記熱可塑性組成物である。
(a)44重量パーセント未満の少なくとも1種の液晶性ポリマー;
(b)約10重量パーセント〜約40重量パーセントのグラファイト;
(c)約10重量パーセント〜約35重量パーセントの、10μm〜100μmの範囲内の平均粒径を有するタルク;
(d)約6重量パーセント〜約25重量パーセントの、3〜20の範囲内のアスペクト比を有する繊維充填材;を含む熱可塑性組成物であって、
(c)に対する(b)の比が重量パーセントで30:70〜80:20であり、重量パーセントが組成物の全量を基準としており、組成物が少なくとも約3W/m・Kの熱伝導率を有する、前記熱可塑性組成物である。
“液晶性ポリマー”(LCP)とは、米国特許第4,118,372号明細書(該特許明細書を参照により本明細書に含める)に記載のように、TOT試験もしくはその適切なバリエーションを使用して試験したときに異方性を示すポリマーを意味している。有用なLCPとしては、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)、および、ポリ(エステル−イミド)などがある。LCPの1つの好ましい形態は、“全体的に芳香族(all aromatic)”であることである。すなわち、ポリマー主鎖中の基の全てが芳香族であるが(エステル基等の連結基を除いて)、芳香族ではない側基が存在してよい。
LCPは通常、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、および芳香族ジアミンを含むモノマーから誘導される。LCPは、例えば、1種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させることによって得られる芳香族ポリエステル;芳香族ジカルボン酸、1種以上の脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジオール、および1種以上の脂肪族ジオールを重合させることによって得られるか、または芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させることによって得られる芳香族ポリエステル;芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジオール、および脂肪族ジオールを含む群から選ばれる1種以上のモノマーを重合させることによって得られる芳香族ポリエステル;芳香族ヒドロキシアミン、1種以上の芳香族ジアミン、および1種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させることによって得られる芳香族ポリエステルアミド;芳香族ヒドロキシアミン、1種以上の芳香族ジアミン、1種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、および1種以上の脂肪族カ
ルボン酸を重合させることによって得られる芳香族ポリエステルアミド;ならびに、芳香族ヒドロキシアミン、1種以上の芳香族ジアミン、1種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、1種以上の脂肪族カルボン酸、芳香族ジオール、および1種以上の脂肪族ジオールを重合させることによって得られる芳香族ポリエステルアミド;であってよい。
ルボン酸を重合させることによって得られる芳香族ポリエステルアミド;ならびに、芳香族ヒドロキシアミン、1種以上の芳香族ジアミン、1種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、1種以上の脂肪族カルボン酸、芳香族ジオール、および1種以上の脂肪族ジオールを重合させることによって得られる芳香族ポリエステルアミド;であってよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の例としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、およびヒドロキシ安息香酸のハロゲン置換誘導体、アルキル置換誘導体、もしくはアリル置換誘導体などがある。
芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびアルキル置換もしくはハロゲン置換芳香族ジカルボン酸(例えば、t−ブチルテレフタル酸やクロロテレフタル酸等)などがある。
脂肪族ジカルボン酸の例としては、環状脂肪族ジカルボン酸(例えば、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、およびこれらの置換誘導体等)などがある。
芳香族ジオールの例としては、ヒドロキノン、ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールA、3,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,6’−ナフタレンジオール、1,6’−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルシラン、およびこれらのアルキル置換誘導体もしくはハロゲン置換誘導体などがある。
脂肪族ジオールの例としては、トランス−1,4−ヘキサンジオール、シス−1,4−ヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、およびシス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、およびこれらの置換誘導体などの、環状脂肪族ジオール、直鎖脂肪族ジオール、および分岐鎖脂肪族ジオールがある。
芳香族ヒドロキシアミンと芳香族ジアミンの例としては、4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、およびこれらの置換誘導体などがある。
LCPは、当業界に公知の任意の方法を使用して製造することができる。LCPは、例えば、標準的な重縮合法(溶融重合、溶液重合、および固相重合)によって製造することができる。LCPは、無水の条件下にて不活性ガス雰囲気で製造するのが望ましい。例えば、溶融酸分解法においては、必要な量の無水酢酸、4−ヒドロキシ安息香酸、およびテレフタル酸を撹拌し、次いでこの反応混合物を、窒素導入管と蒸留ヘッドもしくは冷却器との組み合わせを装備した反応容器中にて加熱する。酢酸などの副反応生成物を、蒸留ヘッドもしくは冷却器を介して除去した後に採集する。採集した副反応生成物の量が一定になり、重合がほぼ完了した後に、溶融塊を減圧下(通常は10mmHg以下)にて加熱し
、残留している副反応生成物を除去して重合を完了させる。
、残留している副反応生成物を除去して重合を完了させる。
液晶ポリマーは、一般には、約2,000〜約200,000の範囲、さらに好ましくは約5,000〜約50,000の範囲、さらに好ましくは約10,000〜約20,000の範囲の数平均分子量を有する。
これらの液晶ポリマーにおいて、ヒドロキノン、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、および4−ヒドロキシ安息香酸から誘導される繰り返し単位を含むポリエステルが、本発明において使用する上で好適である。具体的には、液晶ポリエステルは、下記の繰り返し単位を含み:
ここで、本質的に約3.8〜20モルパーセントのテレフタル酸残基(I)、および約15〜31モルパーセントの2,6−ナフタレンジカルボン酸残基(II)からなる二酸残基;本質的に約25〜40モルパーセントのヒドロキノン残基(III)からなるジオール残基;および約20〜51モルパーセントのp−ヒドロキシ安息香酸残基(IV)を含み、(I):(II)のモル比が約15:85〜50:50であり、(III)のモル数が(I)と(II)のモル数の合計に等しく、残基のモルパーセントの合計が100に等しい。
LCP(a)は、組成物中に、組成物の総重量を基準として44重量パーセント未満、好ましくは約30〜約43重量パーセント、さらに好ましくは約35〜約43重量パーセント存在する。
本発明の組成物中に使用されるグラファイトフレーク(b)は、合成により製造されるものであっても、天然に産するものであってもよく、フレーク形状を有する。
天然に産出するグラファイトが3種類あり、市販されている。これらは、天然に産出するグラファイトとしてのフレークグラファイト、非晶質グラファイト、および結晶脈状グラファイト(crystal vein graphite、塊状グラファイト)である。
天然に産出するグラファイトが3種類あり、市販されている。これらは、天然に産出するグラファイトとしてのフレークグラファイト、非晶質グラファイト、および結晶脈状グラファイト(crystal vein graphite、塊状グラファイト)である。
フレークグラファイトは、その名称が示すように、フレーク状の形態を有する。非晶質グラファイトは、その名称が示すように全く非晶質というわけではなく、実際には結晶質である。結晶脈状グラファイトは、外表面上に静脈状の外観を有しており、このことが名称の由来となっている。
合成グラファイトは、石油もしくは石炭から誘導されるコークス及び/又はピッチから製造することができる。合成グラファイトは、天然グラファイトより純度が高いが、結晶質グラファイトほどではない。
熱伝導率と寸法安定性の観点から、天然に産出するフレークグラファイト、および結晶鉱脈状グラファイトが好ましく、より好ましいのはフレークグラファイトである。
グラファイト(b)の平均粒径は約5μm〜約200μmの範囲、好ましくは約30μm〜約150μmの範囲、さらに好ましくは約50μm〜約100μmの範囲である。平均粒径が5μmより小さいと、グラファイト(b)は、マトリックス樹脂中に分散させるのが困難になることがあり、このため樹脂組成物の機械的強度と熱伝導率が低下する。平均粒径が200μmより大きいと、成形適性が悪化する。
グラファイト(b)の平均粒径は約5μm〜約200μmの範囲、好ましくは約30μm〜約150μmの範囲、さらに好ましくは約50μm〜約100μmの範囲である。平均粒径が5μmより小さいと、グラファイト(b)は、マトリックス樹脂中に分散させるのが困難になることがあり、このため樹脂組成物の機械的強度と熱伝導率が低下する。平均粒径が200μmより大きいと、成形適性が悪化する。
グラファイトフレーク(b)は、約2以上、好ましくは約4以上、さらに好ましくは約8以上のアスペクト比を有する。
グラファイトフレーク(b)は、組成物の総重量を基準として約10重量パーセント〜約40重量パーセント、好ましくは約12重量パーセント〜約33重量パーセント、さらに好ましくは約15重量パーセント〜約23重量パーセントにて存在する。
グラファイトフレーク(b)は、組成物の総重量を基準として約10重量パーセント〜約40重量パーセント、好ましくは約12重量パーセント〜約33重量パーセント、さらに好ましくは約15重量パーセント〜約23重量パーセントにて存在する。
本発明の樹脂組成物はタルク(c)を含む。タルクはケイ酸マグネシウムであって、組成物中のグラファイトと組み合わさって、熱伝導率と寸法安定性を高めるように機能する。
タルク(c)の使用量は、組成物の総重量を基準として約10重量パーセント〜約35重量パーセント、好ましくは約15重量パーセント〜約30重量パーセントである。タルク(c)は、公知の表面処理剤で前処理することができる。
本発明において使用されるタルク(c)は、いかなる特定の形態のタルクにも限定されない。粒状形態のタルクでも、板状形態のタルクでも使用することができる。タルク(c)の平均粒径は、約10μm〜約100μmの範囲、好ましくは約15μm〜約50μmの範囲、さらに好ましくは約20μm〜約40μmの範囲である。平均粒径が10μmより小さいと、樹脂組成物の機械的強度、熱伝導率、および寸法安定性が低下する。平均粒径が100μmより大きいと、成形適性が悪化する。
組成物中のタルク(c)に対するグラファイト(b)の比は30:70〜80:20、好ましくは40:60〜75:25、さらに好ましくは45:55〜75:25である。比が30:70より小さいと、樹脂組成物の熱伝導率が低くなりすぎて、放熱を必要とする用途に使用できなくなる。比が80:20より大きいと、電気抵抗が低くなり、コスト競争力が低下する。
本発明の組成物中のグラファイト(b)とタルク(c)の合計量は、組成物の総重量を基準として30重量%より多いのが好ましく、40重量%より多いのがさらに好ましい。(b)と(c)の合計量が、組成物の総重量を基準として30重量%より少ないと、等方的寸法安定性を得ることができない。
本発明の樹脂組成物は、機械的強度を高めるように機能する繊維質充填材(d)を含み
、これにより等方的寸法安定性が保持される。
本発明の樹脂組成物中に使用される繊維質充填材(d)のアスペクト比は3〜20、好ましくは4〜15、さらに好ましくは5〜10である。アスペクト比が3より小さいと、機械的強度が低下し、アスペクト比が20より大きいと、寸法安定性が悪化する。
、これにより等方的寸法安定性が保持される。
本発明の樹脂組成物中に使用される繊維質充填材(d)のアスペクト比は3〜20、好ましくは4〜15、さらに好ましくは5〜10である。アスペクト比が3より小さいと、機械的強度が低下し、アスペクト比が20より大きいと、寸法安定性が悪化する。
繊維質充填材の使用量は、組成物の総重量を基準として約6重量パーセント〜約25重量パーセント、好ましくは約10重量パーセント〜約20重量パーセントである。繊維質充填材(d)の量が6重量パーセント未満であると、十分な機械的強度を得ることができない。繊維質充填材(d)の量が25重量パーセントより多いと、成形適性が悪化する。繊維質充填材(d)は、公知の表面処理剤で前処理することができる。
繊維質充填材(d)の例としては、ガラス繊維、珪灰石、二酸化チタン繊維、アルミナ繊維、ホウ素繊維、チタン酸カリウムホイスカー、チタン酸カルシウムホイスカー、ホウ酸アルミニウムホイスカーおよび酸化亜鉛ホイスカー、硫酸マグネシウムホイスカー、セピオライトホイスカー、ゾノトライト繊維、ならびに窒化ケイ素繊維などがある。成分(d)としては、ガラス繊維を使用するのが好ましい。
本発明の組成物はさらに、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、核形成剤、帯電防止剤、離型剤、着色剤(染料や顔料など)、難燃剤、可塑剤、強化剤、および他の樹脂などの追加の添加剤を含有してよい。このような添加剤は一般に、組成物の総重量を基準として、合計で最大約20重量パーセントまでの量にて存在する。
本発明の組成物は、成形品の面内方向(in−plane direction)において少なくとも約3W/m・Kの熱伝導率を有する。熱伝導率は、ASTM E1461に記載のレーザーフラッシュ法を使用して測定する。
本発明の組成物は、少なくとも約1×108Ωの表面抵抗率を有するのが好ましい。電気表面抵抗率は、JIS K6911に従って測定する。
本発明の組成物は溶融混合ブレンドの形態をとっている。ブレンドが一元的な全体(a
unified whole)を形成するよう、全てのポリマー成分が互いに十分に分散されており、そして全ての非ポリマー成分が分散されていて、ポリマーマトリックスによって結びつけられている。溶融混合ブレンドは、任意の溶融混合法を使用して成分材料を混合することによって得ることができる。メルトミキサー(例えば、一軸もしくは二軸スクリュー押出機、ブレンダー、ニーダー、ローラー、またはバンバリーミキサー等)を使用して成分材料を混合して、樹脂組成物を得ることができる。あるいは、材料の一部をメルトミキサー中にて混合し、次いで材料の残部を加えてさらに溶融混合することもできる。本発明の組成物の製造におけるミキシングの順序は、個々の成分をワンショットで溶融できるか、あるいはフィラー及び/又は他の成分をサイドフィーダーや類似の装置から供給できるような順序であってよい(当業者には周知のことである)。
本発明の組成物は溶融混合ブレンドの形態をとっている。ブレンドが一元的な全体(a
unified whole)を形成するよう、全てのポリマー成分が互いに十分に分散されており、そして全ての非ポリマー成分が分散されていて、ポリマーマトリックスによって結びつけられている。溶融混合ブレンドは、任意の溶融混合法を使用して成分材料を混合することによって得ることができる。メルトミキサー(例えば、一軸もしくは二軸スクリュー押出機、ブレンダー、ニーダー、ローラー、またはバンバリーミキサー等)を使用して成分材料を混合して、樹脂組成物を得ることができる。あるいは、材料の一部をメルトミキサー中にて混合し、次いで材料の残部を加えてさらに溶融混合することもできる。本発明の組成物の製造におけるミキシングの順序は、個々の成分をワンショットで溶融できるか、あるいはフィラー及び/又は他の成分をサイドフィーダーや類似の装置から供給できるような順序であってよい(当業者には周知のことである)。
溶融混合法に対して使用される処理温度は、ポリマーが溶融するような温度に選定される。
本発明の組成物は、当業者に公知の方法(例えば、射出成形法、押出法、ブロー成形法、射出ブロー成形法、圧縮成形法、発泡成形法、真空成形法、回転成形法、カレンダー成形法、または溶液流延法など)を使用して物品に形成することができる。
本発明の組成物は、当業者に公知の方法(例えば、射出成形法、押出法、ブロー成形法、射出ブロー成形法、圧縮成形法、発泡成形法、真空成形法、回転成形法、カレンダー成形法、または溶液流延法など)を使用して物品に形成することができる。
本発明の組成物は、複合品における部材として使用することができる。複合品は、例えば、他の物品(例えば、ポリマー物品や他の材料から造られた物品)上に本発明の組成物をオーバーモールドすることによって製造することができる。複合品は、他の材料で構成される追加の層を含んでなる多層構造にすることができ、本発明の組成物を2つ以上の層
もしくは部材に接合することができる。
もしくは部材に接合することができる。
複合品は、電子部品のためのハウジング、ヒートシンク、ファン、および電子部材から熱を移送するのに使用される他のデバイスを含んでよい。複合品は、光ピックアップベース(光ピックアップ中の半導体レーザーを封入する熱輻射体);半導体素子のための包装材料およびヒートシンク材料;ファンモーターのケーシング;モーターコアハウジング;二次電池ケーシング;パーソナルコンピュータおよび携帯電話ハウジングなどを含んでよい。
本発明の組成物は、驚くべきことに、優れた熱伝導性、温度変化に対する等方的寸法安定性、優れた機械的強度、靱性、優れた成形適性(低粘度)、コスト競争力、および高い電気抵抗率を有することが見出された。
方法
実施例1〜4および比較例C−1〜C−6の組成物は、表1に示す成分を混練押出機中にて約350〜370℃の温度で溶融ブレンドすることによって製造した。押出機を出た後に、組成物を冷却し、ペレット化させた。こうして得られた組成物を、機械的特性の測定用に射出成型機によりISO試験片に成形し、熱伝導率の測定用に0.4mm×50mm×50mmの寸法を有する試験片プレートに成形し、そしてCLTEの測定用に0.8mm×127mm×13mmの寸法を有するバーに成形した。
実施例1〜4および比較例C−1〜C−6の組成物は、表1に示す成分を混練押出機中にて約350〜370℃の温度で溶融ブレンドすることによって製造した。押出機を出た後に、組成物を冷却し、ペレット化させた。こうして得られた組成物を、機械的特性の測定用に射出成型機によりISO試験片に成形し、熱伝導率の測定用に0.4mm×50mm×50mmの寸法を有する試験片プレートに成形し、そしてCLTEの測定用に0.8mm×127mm×13mmの寸法を有するバーに成形した。
熱伝導率は、ASTM E1461に記載のレーザーフラッシュ法を使用して、平面内方向にて測定した。得られた結果を表1に示す。
引張強度と伸びは、ISO 527−1/2標準法を使用して測定した。曲げ強度と曲げ弾性率は、ISO 178−1/2標準法を使用して測定した。ノッチ付シャルピー衝撃強さは、ISO 179/1eA標準法を使用して測定した。これらの試験は23℃にて行った。
引張強度と伸びは、ISO 527−1/2標準法を使用して測定した。曲げ強度と曲げ弾性率は、ISO 178−1/2標準法を使用して測定した。ノッチ付シャルピー衝撃強さは、ISO 179/1eA標準法を使用して測定した。これらの試験は23℃にて行った。
温度変化に対する等方的寸法安定性を評価するために、型流れ方向(MD)のCLTEと横断方向(TD)のCLTEとの差を、プレートのほぼ中央部分に対し、ASTM D696法を使用して−20℃〜80℃の温度範囲で測定した。等方的寸法安定性はMD−TD項を使用して評価した。MDとTDの値が低いほうがより望ましく、またMD/TD比の値が低い方がより望ましい。例えば、MD/TD比の値が高いということは、CLTEが極めて異方性であって、これは望ましい特性ではないことを示している。
材料
LCP Aは、米国デラウェア州ウィルミントンのデュポン社から市販のZenite(登録商標)5000を表わす。
LCP Aは、米国デラウェア州ウィルミントンのデュポン社から市販のZenite(登録商標)5000を表わす。
LCP Bは、米国デラウェア州ウィルミントンのデュポン社から市販のZenite(登録商標)6000を表わす。
グラファイトは、日本グラファイト工業(株)から市販の、40μmの平均粒径を有するグラファイトフレークCB−150を表わす。
グラファイトは、日本グラファイト工業(株)から市販の、40μmの平均粒径を有するグラファイトフレークCB−150を表わす。
タルクAは、富士タルク工業(株)から市販の、26μmの平均粒径を有するタルクNK−48を表わす。
タルクBは、富士タルク工業(株)から市販の、5μmの平均粒径を有するタルクLMS−200を表わす。
タルクBは、富士タルク工業(株)から市販の、5μmの平均粒径を有するタルクLMS−200を表わす。
ガラスフレークは、日本シートガラス(株)製造のFLEKA(登録商標)REFG302を表わす。
GF−1は、日東紡績(株)製造の、10μmの直径と70μmの平均繊維長を有する粉砕ガラス繊維であるPF70E001を表わす。
GF−1は、日東紡績(株)製造の、10μmの直径と70μmの平均繊維長を有する粉砕ガラス繊維であるPF70E001を表わす。
GF−2は、OCV社製造の、10μmの直径と3mmのチョップト繊維長を有するガラス繊維であるVetrotex(登録商標)910EC10を表わす。
実施例1〜4および比較例C−1〜C−6
表1に記載の組成物を製造し、上記の方法に従って試験した。実施例1〜4の組成物は、優れた引張強度、ノッチ付シャルピー衝撃強さ、熱伝導性、および等方的寸法安定性を含む特性の組み合わせを有することを示した。比較例C−1〜C−6の組成物は、実施例と比較したときに、少なくとも1つの点において望ましくない特性を示した。
実施例1〜4および比較例C−1〜C−6
表1に記載の組成物を製造し、上記の方法に従って試験した。実施例1〜4の組成物は、優れた引張強度、ノッチ付シャルピー衝撃強さ、熱伝導性、および等方的寸法安定性を含む特性の組み合わせを有することを示した。比較例C−1〜C−6の組成物は、実施例と比較したときに、少なくとも1つの点において望ましくない特性を示した。
5μm(本明細書に開示の10μm〜100μmより小さい)の平均粒径を有するタルクを含む比較例C−1は、実施例2と比較してかなり低い引張強度とノッチ付シャルピー衝撃強さを示した。
タルクAの代わりにガラスフレークを含む比較例C−2は、実施例2(5.0W/m・K)より大幅に低い熱伝導率(3.7W/m・K)を示し、また実施例2(78MPa)より低い引張強度(67Mpa)を示した。
タルクAが存在しない比較例C−3は、実施例2における9のTD−MD値に対して、12のTD−MD値を示した。
したがって、タルクの存在は、寸法安定性と熱伝導性に好ましい態様で寄与する。
したがって、タルクの存在は、寸法安定性と熱伝導性に好ましい態様で寄与する。
比較例C−6は、約300のアスペクト比(直径10μm:長さ3mm)を有する従来のガラス繊維(GF−2)が存在することで、実施例2の場合の9のTD−MD値に対して、11という好ましくない高TD−MD値を、そして実施例2の場合の2.1のTD/MD値に対して、12という好ましくない高TD/MD値を示した。
本明細書に開示のLCP、グラファイトフレーク、タルク、および繊維充填材を組み合わせると、高い熱伝導率、引張強度、ノッチ付シャルピー衝撃強さ、および優れた等方的寸法安定性を含めた予想外の特性を示す。
Claims (8)
- 熱伝導性のポリマー組成物であって、
(a)44重量パーセント未満の少なくとも1種の液晶性ポリマー、
(b)約10重量パーセント〜約40重量パーセントのグラファイトフレーク、
(c)約10重量パーセント〜約35重量パーセントの、10μm〜100μmの平均粒径を有するタルク、
(d)約6重量パーセント〜約25重量パーセントの、3〜20のアスペクト比を有する繊維充填材を含み、
(c)に対する(b)の比が重量パーセントで30:70〜80:20であり、重量パーセントが組成物の全量を基準としており、組成物が少なくとも約3W/m・Kの熱伝導率を有する、前記ポリマー組成物。 - 繊維質充填材(d)が、ガラス繊維、珪灰石、二酸化チタン繊維、アルミナ繊維、ホウ素繊維、チタン酸カリウムホイスカー、チタン酸カルシウムホイスカー、ホウ酸アルミニウムホイスカーおよび酸化亜鉛ホイスカー、硫酸マグネシウムホイスカー、セピオライトホイスカー、ゾノトライト繊維、ならびに窒化ケイ素繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の組成物。
- 繊維質充填材(d)が、ガラス繊維である、請求項1に記載の組成物。
- グラファイトフレーク(b)が、少なくとも30μmの平均粒径を有する、請求項1に記載の組成物。
- グラファイトフレーク(b)が、少なくとも50μmの平均粒径を有する、請求項1に記載の組成物。
- 液晶性ポリマー(a)が、
(1)本質的に、約3.8〜20モルパーセントのテレフタル酸(T)残基、および約15〜31モルパーセントの2,6−ナフタレンジカルボン酸(N)残基からなる二酸残基;
(2)本質的に、約25〜40モルパーセントのヒドロキノン(HQ)残基からなるジオール残基;および
約20〜51モルパーセントのp−ヒドロキシ安息香酸(PHB)残基;
から誘導される液晶性ポリマーを含み、
T/(T+N)モル比が約15:85〜50:50であり、HQのモル数がTとNのモル数の合計に等しく、残基のモルパーセントの合計が100に等しい、請求項1に記載の組成物。 - 請求項1に記載の組成物を含む、製品。
- 光ディスク装置における光ピックアップベースの形態の、請求項7に記載の製品。
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