JP2004307302A - 溶融ガラス用スターラー、溶融ガラス用撹拌装置及び溶融ガラスの均質化方法 - Google Patents
溶融ガラス用スターラー、溶融ガラス用撹拌装置及び溶融ガラスの均質化方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】溶融ガラス中に浸漬した状態で長期間、高温状態で高速回転で稼働させても、翼に大きな負荷を掛けることなく溶融ガラスの均質化を実現する溶融ガラス用スターラー、撹拌装置及び均質化方法を提供する。
【解決手段】回転軸11に翼が取り付けられ溶融ガラスG中で回転する溶融ガラス用スターラー10は、回転軸11に取り付けられた複数本の支柱12と、該支柱12を介して取り付けられた1枚の羽根13によって一つの翼ユニットとして構成され、該羽根13が回転軸11への支柱12取り付け箇所の中心位置に対して回転方向Kに所定の位相のずれを生じさせた表面を具備し、該表面の抵抗係数が0.70〜0.05である。またこのスターラー10を溶融ガラスGに浸漬して回転させる撹拌装置で溶融ガラスGの均質化を行うことが可能となる。
【選択図】 図1
【解決手段】回転軸11に翼が取り付けられ溶融ガラスG中で回転する溶融ガラス用スターラー10は、回転軸11に取り付けられた複数本の支柱12と、該支柱12を介して取り付けられた1枚の羽根13によって一つの翼ユニットとして構成され、該羽根13が回転軸11への支柱12取り付け箇所の中心位置に対して回転方向Kに所定の位相のずれを生じさせた表面を具備し、該表面の抵抗係数が0.70〜0.05である。またこのスターラー10を溶融ガラスGに浸漬して回転させる撹拌装置で溶融ガラスGの均質化を行うことが可能となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス製造業における溶融ガラス用スターラーとそのスターラーを使用した溶融ガラス用撹拌装置及び溶融ガラスの均質化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス製造業では、無機酸化物や無機塩類等の各種ガラス原料を加熱溶融して生成した溶融ガラスを所望の形状に成形することによって、所望の性質、形状を有し、各種の用途に利用されるガラス製品を製造している。ガラス製造業において、ガラス製品を均質化するために溶融ガラスの中に浸漬した溶融ガラス用スターラーを回転させる方法が従来から採用されてきている。
【0003】
そこで、撹拌操作を司るこのようなスターラーとしては、非常に多くの形状が提案されてきた。そして、流体が低レイノルズ数となる溶融ガラスの撹拌操作であって、しかも800℃以上の高温環境下で均質混合を行うという過酷な状況で使用されるスターラーについては、ガラスの用途や要求される特性等に応じて、これまでにいくつかの典型的な形状のスターラーが採用されてきた。有機化学工業等では、アンカー翼が使われるケースもあるが、溶融ガラスで使用する場合には、耐火物等の周辺の容器を構成する材料の高温状態での耐久性等に支障の発生する場合があるため、採用事例が少ない。このように、溶融ガラスに利用されてきたスターラーの形状は限定される傾向があり、代表的なスターラーの翼形状による分類を行えば、スパイラル翼、パドル翼、プロペラ翼、ヘリカルリボン翼等が知られている。
【0004】
例えば、スパイラル翼を有する溶融ガラス用スターラーとしては、特許文献1の図4に表したような形状のものがある。この溶融ガラス用のスターラー30は、耐熱性回転軸31にスパイラル形状を有する翼32を巻着したものであって、スパイラル翼32と溶融ガラスとの接触面積が大きいため、強い撹拌力を有している。そしてスターラー30は、例えば、回転軸31を右回りに回転させた場合、スパイラル翼32が周囲の溶融ガラスに上向きの強い流れを生じさせて、周囲の溶融ガラス生地を強制的に混合するものである。さらに撹拌能力を向上させるため、スパイラル翼を2枚配設した形態のスターラーも特許文献1に開示されている。
【0005】
また、図5に表したように、特許文献2では、パドル翼を有するスターラーとして、回転軸に対して多段の翼取り付け箇所を有する例の記載がある。ここに示した様に、回転軸41の長手方向に一定間隔で配設された複数枚の羽根42を有するスターラー40は、特に光学ガラス等の製造でその屈折率を均一に調整する場合に多用されている。このパドル翼については、翼そのものを回転軸に対して傾斜させて回転軸に直接配設した傾斜パドル翼が採用される場合もある。この傾斜パドル翼にねじりを加えたものがプロペラ翼となる。
【0006】
さらに、特許文献3にあるようなヘリカルリボン翼を有するスターラーは、図6に示した様な形状である。このスターラーは、複数本の支柱で連結したリボン状の羽根を利用して撹拌を行うものであって、図6に示したのは、2枚の羽根を有するダブルヘリカルリボン翼スターラーである。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−034539号公報(第2−7頁、第2図)
【特許文献2】
特開2002−253942号公報(第2−4頁、第1−2図)
【特許文献3】
特開平11−276872号公報(第2−6頁、第14図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、溶融ガラスの均質化を行うための各種の撹拌装置が利用されてきた。しかし、上記のスパイラル翼については、スターラー先端近傍に混合不十分な溶融ガラスが停滞するといった問題等も指摘され、このためスターラーの先端形状についてのさらなる改良等が行われている。また、パドル翼は混合効果が大きいが、それに伴ってスターラーの翼先端の劣化が激しく、高い粘性を有する溶融ガラスの撹拌を行う場合には、スターラーの翼先端部の剥離によって発生した異物を防止するといった別の問題が発生する場合もある。このように、ただ単純にガラスを強制的に混合できればそれで良いというばかりでなく、スターラーそのものにも過度な負荷が掛からないような対応も必要となっている。さらに、ヘリカルリボン翼については、その欠点としてスターラーの軸を中心としたドーナツ状の混合不十分な領域が溶融ガラス中に発生するといった問題も指摘されており、対策としてこのヘリカルリボン翼を有するスターラーを直列に接続するという工夫も開示されている。
【0009】
上記のように溶融ガラス用スターラーに関連する技術については、依然として発展途上であって、これまで以上に均質性の向上が求められる溶融ガラスに対して、今後もさらに改良が必要なものとなっている。本発明者らは、このような状況に鑑み、溶融ガラス用スターラーに求められる構造を追求していくことによって、極めて均質度の高い溶融ガラスを製造することが可能であって、しかも溶融ガラス中にスターラー等から発生した異物が混入せず、翼に大きな負荷を掛けることなく効率的な撹拌が可能となる溶融ガラス用スターラー、撹拌装置及び均質化方法を発明し、ここに溶融ガラスの均質化を実現する新しい技術内容を開示するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の溶融ガラス用スターラーは、回転軸に翼が取り付けられ溶融ガラス中で回転する溶融ガラス用スターラーにおいて、前記翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されており、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備し、該表面の抵抗係数が0.70〜0.05であることを特徴とする。
【0011】
ここで、翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と、該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されているとは、回転軸の周囲に取り付ける1枚の羽根を直接回転軸に取り付けるのではなく、2本以上の支柱によって取り付けるということであって、1枚の羽根と2本以上の支柱の組み合わせによる構成体の名称を本件では、翼ユニットと呼称することを意味している。そして1本の回転軸に取り付けられる複数の翼ユニットは、必ずしも同じ形状である必要性はなく、異なる形状を有する翼ユニットが複数配設されていても支障はない。ただし、異なる形状の翼ユニットを配設することによって、回転時のスターラーの重心位置が回転軸上から外れないように注意する必要がある。
【0012】
また、ここで羽根と呼ぶ部位は、必ずしも薄板状の構造物である必要性はなく、必要に応じて柱状体や球体のような立体形状となるもの、厚みを持ち複雑な表面形状を有するもの、さらに多数の単純形状を繰り返すような構造物についても採用することが可能であって、支柱を介して回転軸に取り付けられ、溶融ガラスを混合する機能を担う部位としての総称的な意味を有する。そして、羽根を構成する材料は、500℃以上の高温に耐える耐火性と溶融ガラスに対する化学的な耐久性を有する材料であれば、特に限定されるものではない。ただし、その重量については、なるべく軽量であることが好ましいが、どうしても重量が問題となる場合には、必要に応じて中空構造とすることで対応可能である。
【0013】
また、支柱についても、羽根を堅牢に回転軸に固定し、スターラーの回転運動に十分に耐え、高い耐火性を有する材料によって構成されているならば、羽根と同様に特にどのような材料を使用しても支障はない。そしてその形状についても、スターラー全体の構造において、溶融ガラスに浸漬した状態で回転運動中に発生する最大の局所的な応力発生箇所が十分な耐久性を持ち、過負荷によって損傷することがないような形状であれば支障はない。また、支柱の回転軸に対する固定方法と羽根に対する固定方法については、溶接や鋳造さらにボルト止め等があるが、どのような固定方法を採用しても、充分な強度を維持できるならば採用することが可能である。
【0014】
さらに、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備するとは、1つの翼ユニットを構成する1枚の羽根と2本以上の支柱について、2本以上の支柱の回転軸上の取り付け位置の回転軸上の座標中心位置に対してスターラーの回転中心について回転する場合の回転位相のずれた表面によって構成される表面を羽根の一部に持つことを意味している。
【0015】
また、羽根の表面の抵抗係数が0.7〜0.05であることとは、上述の回転位相のずれた表面を有する羽根の表面の抵抗係数が0.7から0.05の範囲内にあることを意味している。
【0016】
ここで、表面の抵抗係数とは、羽根の表面が溶融ガラスによって受ける摩擦による抵抗の大きさを表す尺度であって、この値は流体密度、翼面積そして翼の回転速度の二乗に反比例し、羽根の形状すなわち傾斜角や羽根の表面性状等によって決まる係数である。そして、この値が大きい程溶融ガラス用スターラーの翼ユニットを構成する羽根の表面が溶融ガラスによって受ける摩擦力が大きくなり、その結果溶融ガラス用スターラーの翼ユニットを構成する羽根の表面が経時的に劣化して剥離していくことで、溶融ガラス中に放逸された羽根表面の破片が溶融ガラス中の均質度を損なう異物となる。一方この値が小さすぎると溶融ガラスを撹拌する羽根の混合能力が低下して、不均質な溶融ガラスを混合して均質化する機能が低下する結果、溶融ガラスを撹拌するスターラーそのものの性能を低下させる。
【0017】
そして、この表面の抵抗係数が0.7を越えると上述のような表面の剥離を引き起こすため、羽根の破片に起因する溶融ガラス中の異物数が増加するため、溶融ガラスの均質度が低下し好ましくない。そしてより異物の発生数を減らした状態を実現し、さらに均質度の高い溶融ガラスとするためには、0.6をその上限とする方がより好ましい。一方この表面の抵抗係数が0.05より小さくなると羽根の撹拌性能が低下して、溶融ガラス用スターラーを使用しても溶融ガラスの十分な混合が行えなくなる。よって表面の抵抗係数は少なくとも0.05以上であることが好ましく、さらに高い混合性能を確保するためには、0.1以上の表面の抵抗係数が必要である。
【0018】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、上述に加え翼ユニットが2〜100個回転軸に取り付けられていることを特徴とする。
【0019】
ここで、翼ユニットが2〜100個回転軸に取り付けられているとは、前述した2本以上の支柱と羽根によって構成される翼ユニットの数が2以上で100以下とすることを意味している。
【0020】
翼ユニットの数を1としても、回転軸を頑強なものとすれば使用することは可能であるが、撹拌効果は小さく、スターラーの重心位置も回転軸上から外れることになるため、2以上の数の翼ユニットとする方が好ましい。また翼ユニットの上限数を100としたのは、翼ユニットの数を増加させればそれだけ溶融ガラス用スターラーの構造は複雑となり、メンテナンスに支障をきたす虞がある。またそれぞれの翼ユニットの構造は、溶融ガラス中で相応の機能を発揮する必要性から、それなりの容積は必要であって、翼ユニットの全体の構造等に留意したとしても、翼ユニット数が増加するほどスターラー重量が重くなり、重いスターラーを回転するために必要となるエネルギーに見合うだけの撹拌効果が得られないという問題もあるためである。
【0021】
また、この翼ユニットは、1本の回転軸に種々の接合方法によって配設することができるものであるが、1本の回転軸に配設される翼ユニットはすべて同じ構成であってもよく、一方それぞれの翼ユニットが異なる構成であっても差し支えない。すなわち、例えば4つの翼ユニットが1本の回転軸に溶接された構造である場合、対向する2つづつがそれぞれ別種の形状を有する翼ユニットであっても差し支えない。そして翼ユニットの回転軸に対しての接合方法については、溶接に限らず経時的に支障の発生するような方法でなければ、どのような方法を採用しても差し支えない。
【0022】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、上述に加え前記羽根の表面の回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対する回転方向の位相ずれが1°〜180°の範囲であることを特徴とする。
【0023】
ここで、羽根の表面の回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対しする回転方向の位相ずれが1°〜180°の範囲であるとは、前述の回転軸に配設した翼ユニットの羽根の一部を構成する表面の位相角度のずれの大きさが、回転軸上のその翼ユニットの支柱取り付け位置の中心に対してずれ角度で表して1°から180°の範囲内であることを意味している。
【0024】
この回転方向への位相ずれ角度の大きさは、回転軸の回転によって溶融ガラスから翼ユニットの羽根に働く回転軸の円周方向に作用する溶融ガラスの流れ方向を軸の上方あるいは下方に変化させ、回転によって溶融ガラスの流れ方向を変えるものである。そしてこの角度が小さすぎると、溶融ガラスの流れがスターラーの翼ユニットの羽根の回転方向の後方からはがれてしまった様な状態となる。すなわちそれぞれの羽根の端辺部の後方域では、層流が乱れて乱流によって発生する渦が多数生じやすい形状となっており、その結果羽根の端辺部等での経時的な表面の劣化が速やかに進行する傾向が認められる。そのため、この回転位相のずれは1°以上であることが好ましく、5°以上とする方がさらに好ましい。一方、この回転位相のずれを大きくしすぎると、羽根の表側と裏側で分離された溶融ガラスの流れは、それぞれ分離されたままの状態で、合流して混合されることなく回転軸に沿ってまとまったまま運動することとなるため、充分な混合効果を得られがたくなる傾向が認められる。そしてこの上限は、180°であって、より好ましくは170°とする方がよい。
【0025】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、上述に加え複数の翼ユニットが回転軸に対して360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12)の角度で配設されていることを特徴とする。
【0026】
ここで、複数の翼ユニットが回転軸に対して360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12、18、20)の角度で配設されているとは、前述のように1本の回転軸の周囲に配設された任意の2つの翼ユニットのそれぞれの重心位置の相対的な位置関係が360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12、18、20)の角度をなすものであることを意味している。
【0027】
任意の2つの翼ユニットを選択した場合にその2つの翼ユニットがなす角度が360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12、18、20)の角度からはずれていても、スターラーを作り上げることは可能である。ただし、その場合には、スターラー全体の重心位置が回転軸上からわずかであっても外れることになるため、回転運動中にスターラーの回転軸の偏心が生じやすくなる、つまり回転ぶれが生じやすくなるため、効果的な混合が行いにくい現象が発生する虞がある。また、このように重心位置が回転軸上から外れる場合には、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端の周囲にわずかなクリアランスで溶融ガラスを保持するための均質化槽容器の内壁がある場合には、その器壁を物理的に損傷してしまうという様な危険性もあるため好ましくない。
【0028】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、上述に加え溶融ガラス用スターラーが白金を含む材料によって構成されていることを特徴とする。
【0029】
ここで、溶融ガラス要スターラーが白金を含む材料によって構成されていることとは、溶融ガラス用スターラーの一部が白金(Pt)であって、それ以外にロジウムやジルコニウム、オスミウム等の高融点成分を含有し、その材料の融点が少なくとも1000℃以上である構成材料となってことを意味している。
【0030】
そして、一部が白金を含むとは、すべてが白金によって構成されていてもよく、また白金を1〜2%程度しか含まない場合であっても差し支えないことを意味している。またその構成上、スターラーについての羽根、回転軸、支柱、翼ユニットといった特定部位にのみ白金が使用されている場合も可能であって、それぞれの部位の特定箇所、すなわち翼ユニットの支柱表面のみ、羽根の片面のみ等の限定的な利用であってもよい。
【0031】
さらに、白金以外の構成材料の構成成分について、特に限定するものではないが、溶融ガラスに対する十分な化学的耐久性を持ち、高温状態での使用時に十分な強度を実現できる材料であって、融点が充分に高い成分により構成されていれば問題はない。利用できるものとしては、例えばロジウム(Rh)、金(Au)、Pd、オスミウム(Os)、ジルコニウム(Zr)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)等の金属、酸化物、炭化物、窒化物等がある。すなわち、白金以外の材料としては、ロジウム等の白金族系の金属、あるいはその合金以外に、ジルコニアなどの強度補強成分を添加した白金属類の金属、アルミナ、ジルコニア等の酸化物、窒化物、炭化物あるいは複数のセラミックス成分を混合したファインセラミックス、炭素粒子あるいは炭素繊維、金属添加炭素材料、繊維強化金属(FRM)、繊維強化炭素(FRC)、また傾斜機能材料等を構成部材として複数を選択することもでき、高温部位と低温部位について異材料を使用したり、耐蝕性の必要となる部位や高強度を特に必要とする部位で異材料を必要に応じて使い分けることも可能である。
【0032】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーの羽根の形状について、上述に加えてさらに好ましい形状を限定するならば、羽根の軸方向の一端側の一部または全部と羽根の軸方向の他端側の一部または全部とが、羽根の軸方向長さの中央における回転軸中心に対しての回転位相とずれた角度を有していることが好ましいものである。そしてこの場合の位相のずれ角度については、5°から50°の範囲内であることが、好適である。
【0033】
この場合の位相ずれ角度について、5°より小さくなれば、撹拌時の摩擦抵抗が大きくなりすぎ、一方50°を越えれば、撹拌による混合力が低くなる傾向が認められることから、50°以下である方がよく、さらに好ましくは8°以上で45°以下とするべきである。
【0034】
また、本発明の溶融ガラス撹拌装置は、上述の溶融ガラス用スターラーと、該溶融ガラス用スターラーを収納する耐熱性容器からなる均質化槽とを具備し、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス用スターラーを収納する均質化槽の内壁とのクリアランスが、回転軸を中心としたスターラーの回転直径より小さいことを特徴とする。
【0035】
ここで、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス用スターラーを収納する均質化槽の内壁とのクリアランスが回転軸を中心としたスターラーの直径より小さいとは、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラスと溶融ガラス用スターラーとを収納する耐火性の均質化槽容器の内壁との間隔の寸法が大きくとも溶融ガラス用スターラーの回転時の回転軸を中心とした直径の大きさ以下の寸法であることを意味している。
【0036】
当然のことではあるが、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス用スターラーを収納する耐熱性容器の内壁とのクリアランスが、スターラー直径より大きい場合でも、溶融ガラスの撹拌は可能である。しかし、このクリアランスが大きくなればなるほど、溶融ガラス用スターラーによって混合されて均質化される溶融ガラスの量は減少することとなる。よってこの溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス撹拌スターラーを収納する耐熱性の均質化槽容器の内壁とのクリアランスは、大きくとも溶融ガラス用スターラーの直径を越えないことが好ましい。より確実にスターラーによる混合操作を行って、溶融ガラスの均質度を向上させるためには、そのクリアランスは、回転時のスターラー直径の8割以下の寸法とする方がよい。
【0037】
また、本発明の溶融ガラスの均質化の方法は、溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させることによりガラス溶融炉中の無機酸化物ガラスを撹拌する溶融ガラスの均質化方法において、前記溶融ガラス用スターラーは、その翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と、該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されており、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備するものであり、(該表面の抵抗係数が0.70〜0.05である)該溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させることを特徴とするものである。
【0038】
ここで、溶融ガラス用スターラーは、その翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と、該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成され、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備するものであり、(該表面の抵抗係数が0.70〜0.05である)該溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させるとは、上述のように支柱の取り付け位置の中心に対して位相ずれを有する羽根に2本以上の支柱を介して接続した翼ユニットを回転軸に配設した溶融ガラス用スターラーであり、このスターラーを溶融ガラス中に浸漬しつつ回転軸を中心に回転することを意味しており、それによって溶融ガラス中に存在する不均質で、しかも異質なガラスを混合撹拌して均質化をおこなうことが可能となるものである。
【0039】
そして、溶融ガラス用スターラーの溶融ガラス中への浸漬の角度や浸漬の深さは、溶融条件に応じて適宜選択して設定すれば良いが、撹拌操作によって溶融ガラス用スターラーを収納している均質化槽内の耐熱性の炉床や炉壁等のスターラー周囲の構造部材に経時的な損傷等の発生することのない様に充分な注意が必要である。
【0040】
そして溶融ガラス用スターラーの回転速度についても特に限定されるものではないが、その回転操作については、溶融ガラスの温度やガラスの生産量、さらに問題となるガラスの均質度のレベルによって随時調節することが可能であって、種々の計測結果に見合った操作条件を採用することによって、最適な均質化を実現することができる。
【0041】
また、本発明の溶融ガラスの均質化の方法は、上述に加え耐火物製容器及び/または白金含有材質容器からなる溶融槽内で溶解した溶融ガラスを脱泡し、その後に該溶融ガラスを白金含有材質製の均質化槽内に流入させ、該均質化槽内で溶融ガラス用スターラーを回転させて撹拌することを特徴とする。
【0042】
ここで、耐火物製容器及び/または白金含有材質容器からなる溶融槽内で溶解した溶融ガラスを脱泡し、その後該溶融ガラスを白金含有材質製の均質化槽内に流入させ、該均質化槽内で溶融ガラス用スターラーを回転させて撹拌するとは、無機原料を加熱して溶融し、化学反応によって発生した泡等を放出させる操作を耐火物製容器及び/または白金含有材質容器から溶融槽内で行った後、溶融ガラスを白金を含む材質の容器によって構成される均質化槽内に流入させ、その槽内において溶融ガラス用スターラーを回転させて撹拌することによって、溶融ガラスの均質化を実現することを意味している。
【0043】
ここで、耐火物製容器及び/または白金含有材質容器は、高温状態の溶融ガラスを保持するに十分な耐火性と強度を有し、溶融するガラスに均質度の低下につながる異物やノット、脈理の発生原因となるような化学的な脆弱性が認められない様な材料で構成するものであるならば支障はない。また、耐火物製容器及び/または白金含有材質容器は1つである必要性はなく、2以上の容器を経た後に均質化槽中に流れ込む場合であってもよい。また耐火物製容器及び/または白金含有材質容器の形状は、回転体を収納するものであるため側面部は円筒形であることが一般的であるが、必要に応じて回転軸に対する断面形状が楕円形や多角形であってもよく、また容器底の形状についても半球形状や逆円錐形状等を採用することも可能である。
【0044】
本発明を適用するガラスは、無機酸化物のガラス組成物であれば、差し支えない。そして特に表示デバイスを構成する無アルカリガラス、高屈折率を必要とする光学ガラス等の溶融ガラスを光学的品位で均質化する方法として好適である。
【0045】
【作用】
以上のように本発明の溶融ガラス用スターラーは、回転軸に翼が取り付けられ溶融ガラス中で回転する溶融ガラス用スターラーにおいて、前記翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されており、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備し、該表面の抵抗係数が0.70〜0.05であるため、スターラーを高温溶融ガラス中で使用することによってスターラー表面の剥離が原因となって発生する異物の量を最小限に抑制することが可能であり、かつ溶融ガラスを効率的に混合することが可能であって、均質なガラス製品の製造を長期間行うことが可能である。
【0046】
さらに、本発明の溶融ガラス用スターラーは、翼ユニットが2〜100個回転軸に取り付けられているため、溶融ガラスの材質やガラスの適応される用途に応じて最適な構造設計をおこなうことで、高い光学性能を有する各種の用途に利用される高機能ガラスの溶融を効率的におこなうことが可能であって、多くのガラス製品の均質性を格段に向上させることが可能となる優秀な機能を有するものである。
【0047】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、前記羽根の表面の位相ずれが1°〜180°の範囲であるため、回転速度が高くなくとも高い撹拌効果を溶融ガラスにもたらすことができるものであって、ガラス製品の製造をエネルギー効率の高い状態で実現可能な溶融ガラス製造設備を構築し得るものである。
【0048】
さらに、本発明の溶融ガラス用スターラーは、複数の翼ユニットが回転軸に対して360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12、18、20)の角度で配設されているため、均質操作のための駆動時においても回転軸の偏心を起こすことなく溶融ガラスの均質化をおこなうことができ、回転軸に過度な負荷が加わるようなことがないため、溶融ガラス用スターラーの長期的な耐用年数を充分に確保することが可能なものである。
【0049】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、溶融ガラス用スターラーが白金を含む材料によって構成されているため、高温状態における溶融ガラスの粘度の高いガラス材質に対しても効果的な撹拌を行うことが可能であって、製品1つ当たりの容積が大きく、しかも高度な均質性を要求されるガラス製品の製造に重用できる性能を有するものである。
【0050】
また、本発明の溶融ガラス撹拌装置は、溶融ガラス用スターラーと、該溶融ガラス用スターラーを収納する耐熱性容器からなる均質化槽とを具備し、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス用スターラーを収納する均質化槽の内壁とのクリアランスが、回転軸を中心としたスターラーの回転直径より小さいため、溶融ガラス用スターラーを収納した均質化槽内に流入した溶融ガラスについては、スターラーの回転半径内に流入できない溶融ガラス量を最小限に抑制しつつ、均質化を行うことで、均質化操作の確実性を向上させることが可能となるものである。
【0051】
また、本発明の溶融ガラスの均質化方法は、溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させることによりガラス溶融炉中の無機酸化物ガラスを撹拌する溶融ガラスの均質化方法において、前記溶融ガラス用スターラーはその翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と、該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されており、該羽根が回転軸への支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備するものであり、(該表面の抵抗係数が0.70〜0.05である)該溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させるものであるため、溶融ガラス中の高粘性異質ガラスをスターラーの回転によってもたらされる融液の混合・分散運動に巻き込むことによって、高速に均質化することが可能であり、それでいて高粘性異質ガラスによるスターラーそのものの損傷を極力抑制する事ができるという長所を併せ持つ方法である。
【0052】
さらに、本発明の溶融ガラスの均質化方法は、上述に加え耐火物製容器及び/または白金含有材質容器からなる溶融槽で溶解した溶融ガラスを脱泡し、その後該溶融ガラスを白金含有材質製の均質化槽内に流入させ、該均質化槽内で溶融ガラス用スターラーを回転させて撹拌するものであるため、溶融ガラス中に存在する脈理、ノット等のガラスの光学特性や強度特性に影響を及ぼす欠陥の発生数を減らし、成形時における外観不良発生率を低減する高い性能を有するものである。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の溶融ガラス用スターラーと、これを用いた溶融ガラス撹拌装置及びこのスターラー等による溶融ガラスの均質化方法について、具体的な説明を行う。
【0054】
(実施例1)
図1に本発明の溶融ガラス用スターラー10とこのスターラー10を収納する耐火性の均質化槽の容器20を示す。溶融ガラスGは清澄槽(図示省略)で溶融ガラスG中の泡を除去された後に溶融ガラス供給管23を経て均質化槽の容器20内に流入し、この均質化槽内のほぼ中央位置に配設した白金(ロジウム15%を含有する合金)製の溶融ガラス用スターラー10を回転方向Kに回転させることによって混合され、均質化される。ここで、羽根13の外端と均質化槽の容器20の内側の側壁21との間のクリアランスはスターラー10の直径の20%である。そして、この溶融ガラス用スターラー10には、2本の支柱12を介して1枚の羽根13を有する翼ユニットを回転軸11に対して180°の位置に計4つ備えており、いずれの翼ユニットも溶接によって取付・配設されている。また均質化槽容器もスターラーと同様の材質で構成されている。
【0055】
図2には、溶融ガラス用スターラーを回転軸の先端方向から見た平面図を示す。このスターラー10の回転時の回転軸を中心とした直径Dに対して、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と均質化槽内壁との間のクリアランスLの比率は、17%であって、回転時の回転軸を中心としたスターラー直径Dより充分小さい値である。また、このスターラー10は、翼ユニットの羽根13の一部の表面が回転軸11への支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に位相ずれを生じさせる表面13aとなるように設計されており、その際の最大の回転位相ずれ角度αは24°である。
【0056】
この溶融ガラス用スターラー10を使用した場合を想定した溶融ガラスの流れ解析をシミュレーションによって行い、スターラー回転速度20rpm、ガラス流量400kg/hr、クリアランス15cm、回転時の温度1450℃の条件下において混合を実施した場合について、最大摩擦摩擦力を算出したところ、8KPa以下となることが確認できた。またこの羽根の抵抗係数は0.33であった。
【0057】
(実施例2)
次いで、実際の溶融ガラスを使用する場合の評価として、無アルカリガラスの製造設備を利用して、無アルカリガラスの均質化について本発明の溶融ガラス用スターラーの性能評価を実施した。表1に性能評価の結果と使用したスターラーのタイプを示す。また図3にこの調査に使用したスターラーの部分斜視図と軸方向からの平面図を示す。いずれのスターラーも白金−ロジウム15%の材質で、溶接によって組み立てたものである。図3でタイプ▲1▼のスターラーの部分斜視図は(A)、軸方向平面図は(B)である。このタイプ▲1▼のスターラーの特徴はV字状に曲げた羽根を2本の支柱を介して配設したことである。そしてタイプ▲2▼のスターラーの斜視図は(C)、軸方向平面図は(D)である。タイプ▲2▼のスターラーの特徴は3本の支柱によって1枚の羽根を保持し、高強度な構造を採用していることである。そしてタイプ▲3▼のスターラーの部分斜視図は(E)、軸方向平面図は(F)である。このタイプ▲3▼では、2本の板状の支柱で1枚の羽根を保持し、その羽根は平面板を溶接して羽根の側面を閉じたような形状とした点にある。いずれのタイプについても羽根の回転軸上の支柱取り付け位置に対する位相角度αを羽根の大きさや角度などを調節することによって変更できる。そしてこの角度について、それぞれのタイプのスターラーで表1に示したような角度を採用して、抵抗係数が本発明のスターラーの条件を満足できるようにしたものである。
【0058】
【表1】
【0059】
1400℃の温度で、それぞれのスターラーを24時間設置し、溶融ガラス用スターラーを25rpmで回転させた場合について、均質化槽から流出した溶融ガラス中に剥離によって溶融ガラス中に混入してくる白金異物の数を数え、スターラーとしての性能を比較した。その結果調査No.1〜9の各条件については、いずれも剥離する白金の数が非常に少なく、実使用に耐えるものであると判断できた。
【0060】
(比較例1)
一方、実施例2と同様のスターラー形状であって、しかも抵抗係数を大きくした場合と小さくした場合について、実施例2と同様の評価を実施した。その結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
調査No.10、No.12、No.13は、抵抗係数を0.7より大きくしたものであるが、剥離によって発生した白金異物が多数認められ、ガラスを実際に生産する設備として使用することは、困難なものであった。また調査No.11、No.14、No.15については、抵抗係数を0.05より低くしたものであるが、この場合には白金異物の発生は少なくなるものの、混合が充分行えないため、異質ガラスがそのまま均質化槽から流出し、脈理品位の劣悪なガラスとなることが確認できた。
【0063】
以上の調査結果から、本発明の溶融ガラス用スターラーを使用して溶融ガラスの撹拌による均質化操作を行うと、溶融ガラスの均質化を確実に行うことができるばかりでなく、スターラー自体の回転時に発生する剥離を原因とする異物の発生も低く抑制できることが判明した。
【0064】
【発明の効果】
上述のように本発明で開示した溶融ガラス用スターラーは、スターラーを高温溶融ガラス中で使用することによってスターラー表面の剥離が原因となって発生する異物の量を最小限に抑制し、かつ溶融ガラスを効率的に混合することができるので、均質なガラス製品の製造を長期間行うことが可能であるため、大量生産の必要となるガラス製品を途切れることなく潤沢に市場へ供給することを実現するものであって、しかもそれぞれのガラス製品の用途に応じた品質向上をもたらすことができるものである。
【0065】
さらに、本発明の溶融ガラス用スターラーは、溶融ガラスの材質や適応される用途に応じて最適な構造設計を行うことで、高い光学性能を有する各種の用途に利用される高機能性ガラスの溶融を効率的に行うことができ、多くのガラス製品の均質性を向上させることが可能となる優秀な機能を有するものであるため、非球面レンズや球レンズの様に微小光学部品に使用される高い均質性を必要とするガラス製品やフィルターや半導体素子を保護するカバーガラス用途のガラスを均質化する製造装置として特に好適なものである。
【0066】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、低い回転速度で高い撹拌効果を溶融ガラスにもたらすことができるので、エネルギー効率の高い溶融ガラス製造設備を構築し得るものであるため、要求に応じて多種多様な製造設備を作り上げることによって、従来均質化が容易でないため製造が困難であったような高い粘性を有するガラス材質でも迅速な均質化を実現することで、容易に製造できるものである。
【0067】
さらに、本発明の溶融ガラス用スターラーは、均質操作のための駆動時においても回転軸の偏心を起こすことなく溶融ガラスの均質化をおこなうことができ、回転軸に過負荷が加わるようなこともなく、溶融ガラス用スターラーの長期的な耐用年数を充分に確保することが可能なものであるため、安定した品質のガラス製品を長期間生産し続けることができ、ガラス製品の生産原価を低下させて、高い機能を有する高品位ガラスを安価な価格で供給することを可能とするものである。
【0068】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、高温状態における溶融ガラスの粘度が高いガラス材質に対しても効果的な撹拌が可能であり、容積が大きくて、しかも高度な均質性が要求されるガラス製品の製造に重用できる性能を有するので、液晶用板ガラス、FED用板ガラス、PDP用板ガラス等を含む高機能な表示デバイス用途に利用される板ガラスや大型の光学ガラス用途、さらに放射線遮蔽用ガラス、陰極線管用のファンネルガラス、フェースガラス等の製造を行う際に利用する溶融ガラス用スターラーとして好適なものである。
【0069】
さらに、本発明の溶融ガラス用スターラーは、溶融ガラス用スターラーを収納した均質化槽内に流入した溶融ガラスについては、スターラー回転半径内に流入できない溶融ガラス量を最小限に抑制しつつ均質化を行うことで、均質化操作の確実性を向上させることが可能となるものであるため、種々の産業分野におけるガラス製品の品質向上に大きく貢献し、ガラス製品の関与する産業自体をこれまで以上にいっそう興隆させるものである。
【0070】
そして、本発明の溶融ガラスの均質化方法は、溶融ガラス中の高粘性異質ガラスをスターラーの回転によってもたらされる融液の混合・分散運動に巻き込んで、高速に均質化することが可能であり、かつ高粘性異質ガラスによるスターラーそのものの損傷を極力抑制する事もできるという2つの長所を併せ持つ方法であるため、特に化学的耐久性の高い高歪点を有する多成分で構成されるガラス材質に関しての均質性の向上に大きく寄与するものである。
【0071】
また、本発明の溶融ガラスの均質化方法は、溶融ガラス中に存在する脈理、ノット等のガラスの光学特性や強度特性に影響を及ぼす欠陥の発生数を減らし、成形時における外観不良発生率を低減する高い性能を有するものであるため、ガラス製品の良品率を向上させるばかりでなく、成形装置等のメンテナンスや耐用年数を長寿命化させることが可能であって、製造設備の保守などに必要となる経費も削減することが可能となる卓越した均質化方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶融ガラス用スターラーの部分斜視図。
【図2】本発明の溶融ガラス用スターラーの軸方向からの平面図。
【図3】本発明の他の溶融ガラス用スターラー。(A)、(C)、(E)は部分斜視図を表し、(B)、(D)、(F)はそれぞれ(A)、(C)、(E)についての軸方向の平面図。
【図4】従来のスパイラル形状の羽根を有するスターラーの説明図。
【図5】従来のパドル形状の羽根を有するスターラーの説明図。
【図6】従来のヘリカルリボン形状の羽根を有するスターラーの説明図。
【符号の説明】
10 本発明の溶融ガラスの溶融ガラス用スターラー
11 溶融ガラス用スターラーの回転軸
12 溶融ガラス用スターラーの支柱
13 溶融ガラス用スラーラーの羽根
13a 羽根の表面
20 均質化槽容器
21 容器側壁
22 容器底
23 溶融ガラス
30、40、50 従来の溶融ガラス用スターラー
31、41、51 従来の溶融ガラス用スターラーの回転軸
32、42、52 従来の溶融ガラス用スターラーの羽根
G 溶融ガラス
K 回転方向
α 最大の回転位相ずれ角度
D スターラーの回転直径
L スターラーの羽根外端と均質化槽内壁とのクリアランス
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス製造業における溶融ガラス用スターラーとそのスターラーを使用した溶融ガラス用撹拌装置及び溶融ガラスの均質化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス製造業では、無機酸化物や無機塩類等の各種ガラス原料を加熱溶融して生成した溶融ガラスを所望の形状に成形することによって、所望の性質、形状を有し、各種の用途に利用されるガラス製品を製造している。ガラス製造業において、ガラス製品を均質化するために溶融ガラスの中に浸漬した溶融ガラス用スターラーを回転させる方法が従来から採用されてきている。
【0003】
そこで、撹拌操作を司るこのようなスターラーとしては、非常に多くの形状が提案されてきた。そして、流体が低レイノルズ数となる溶融ガラスの撹拌操作であって、しかも800℃以上の高温環境下で均質混合を行うという過酷な状況で使用されるスターラーについては、ガラスの用途や要求される特性等に応じて、これまでにいくつかの典型的な形状のスターラーが採用されてきた。有機化学工業等では、アンカー翼が使われるケースもあるが、溶融ガラスで使用する場合には、耐火物等の周辺の容器を構成する材料の高温状態での耐久性等に支障の発生する場合があるため、採用事例が少ない。このように、溶融ガラスに利用されてきたスターラーの形状は限定される傾向があり、代表的なスターラーの翼形状による分類を行えば、スパイラル翼、パドル翼、プロペラ翼、ヘリカルリボン翼等が知られている。
【0004】
例えば、スパイラル翼を有する溶融ガラス用スターラーとしては、特許文献1の図4に表したような形状のものがある。この溶融ガラス用のスターラー30は、耐熱性回転軸31にスパイラル形状を有する翼32を巻着したものであって、スパイラル翼32と溶融ガラスとの接触面積が大きいため、強い撹拌力を有している。そしてスターラー30は、例えば、回転軸31を右回りに回転させた場合、スパイラル翼32が周囲の溶融ガラスに上向きの強い流れを生じさせて、周囲の溶融ガラス生地を強制的に混合するものである。さらに撹拌能力を向上させるため、スパイラル翼を2枚配設した形態のスターラーも特許文献1に開示されている。
【0005】
また、図5に表したように、特許文献2では、パドル翼を有するスターラーとして、回転軸に対して多段の翼取り付け箇所を有する例の記載がある。ここに示した様に、回転軸41の長手方向に一定間隔で配設された複数枚の羽根42を有するスターラー40は、特に光学ガラス等の製造でその屈折率を均一に調整する場合に多用されている。このパドル翼については、翼そのものを回転軸に対して傾斜させて回転軸に直接配設した傾斜パドル翼が採用される場合もある。この傾斜パドル翼にねじりを加えたものがプロペラ翼となる。
【0006】
さらに、特許文献3にあるようなヘリカルリボン翼を有するスターラーは、図6に示した様な形状である。このスターラーは、複数本の支柱で連結したリボン状の羽根を利用して撹拌を行うものであって、図6に示したのは、2枚の羽根を有するダブルヘリカルリボン翼スターラーである。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−034539号公報(第2−7頁、第2図)
【特許文献2】
特開2002−253942号公報(第2−4頁、第1−2図)
【特許文献3】
特開平11−276872号公報(第2−6頁、第14図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、溶融ガラスの均質化を行うための各種の撹拌装置が利用されてきた。しかし、上記のスパイラル翼については、スターラー先端近傍に混合不十分な溶融ガラスが停滞するといった問題等も指摘され、このためスターラーの先端形状についてのさらなる改良等が行われている。また、パドル翼は混合効果が大きいが、それに伴ってスターラーの翼先端の劣化が激しく、高い粘性を有する溶融ガラスの撹拌を行う場合には、スターラーの翼先端部の剥離によって発生した異物を防止するといった別の問題が発生する場合もある。このように、ただ単純にガラスを強制的に混合できればそれで良いというばかりでなく、スターラーそのものにも過度な負荷が掛からないような対応も必要となっている。さらに、ヘリカルリボン翼については、その欠点としてスターラーの軸を中心としたドーナツ状の混合不十分な領域が溶融ガラス中に発生するといった問題も指摘されており、対策としてこのヘリカルリボン翼を有するスターラーを直列に接続するという工夫も開示されている。
【0009】
上記のように溶融ガラス用スターラーに関連する技術については、依然として発展途上であって、これまで以上に均質性の向上が求められる溶融ガラスに対して、今後もさらに改良が必要なものとなっている。本発明者らは、このような状況に鑑み、溶融ガラス用スターラーに求められる構造を追求していくことによって、極めて均質度の高い溶融ガラスを製造することが可能であって、しかも溶融ガラス中にスターラー等から発生した異物が混入せず、翼に大きな負荷を掛けることなく効率的な撹拌が可能となる溶融ガラス用スターラー、撹拌装置及び均質化方法を発明し、ここに溶融ガラスの均質化を実現する新しい技術内容を開示するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の溶融ガラス用スターラーは、回転軸に翼が取り付けられ溶融ガラス中で回転する溶融ガラス用スターラーにおいて、前記翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されており、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備し、該表面の抵抗係数が0.70〜0.05であることを特徴とする。
【0011】
ここで、翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と、該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されているとは、回転軸の周囲に取り付ける1枚の羽根を直接回転軸に取り付けるのではなく、2本以上の支柱によって取り付けるということであって、1枚の羽根と2本以上の支柱の組み合わせによる構成体の名称を本件では、翼ユニットと呼称することを意味している。そして1本の回転軸に取り付けられる複数の翼ユニットは、必ずしも同じ形状である必要性はなく、異なる形状を有する翼ユニットが複数配設されていても支障はない。ただし、異なる形状の翼ユニットを配設することによって、回転時のスターラーの重心位置が回転軸上から外れないように注意する必要がある。
【0012】
また、ここで羽根と呼ぶ部位は、必ずしも薄板状の構造物である必要性はなく、必要に応じて柱状体や球体のような立体形状となるもの、厚みを持ち複雑な表面形状を有するもの、さらに多数の単純形状を繰り返すような構造物についても採用することが可能であって、支柱を介して回転軸に取り付けられ、溶融ガラスを混合する機能を担う部位としての総称的な意味を有する。そして、羽根を構成する材料は、500℃以上の高温に耐える耐火性と溶融ガラスに対する化学的な耐久性を有する材料であれば、特に限定されるものではない。ただし、その重量については、なるべく軽量であることが好ましいが、どうしても重量が問題となる場合には、必要に応じて中空構造とすることで対応可能である。
【0013】
また、支柱についても、羽根を堅牢に回転軸に固定し、スターラーの回転運動に十分に耐え、高い耐火性を有する材料によって構成されているならば、羽根と同様に特にどのような材料を使用しても支障はない。そしてその形状についても、スターラー全体の構造において、溶融ガラスに浸漬した状態で回転運動中に発生する最大の局所的な応力発生箇所が十分な耐久性を持ち、過負荷によって損傷することがないような形状であれば支障はない。また、支柱の回転軸に対する固定方法と羽根に対する固定方法については、溶接や鋳造さらにボルト止め等があるが、どのような固定方法を採用しても、充分な強度を維持できるならば採用することが可能である。
【0014】
さらに、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備するとは、1つの翼ユニットを構成する1枚の羽根と2本以上の支柱について、2本以上の支柱の回転軸上の取り付け位置の回転軸上の座標中心位置に対してスターラーの回転中心について回転する場合の回転位相のずれた表面によって構成される表面を羽根の一部に持つことを意味している。
【0015】
また、羽根の表面の抵抗係数が0.7〜0.05であることとは、上述の回転位相のずれた表面を有する羽根の表面の抵抗係数が0.7から0.05の範囲内にあることを意味している。
【0016】
ここで、表面の抵抗係数とは、羽根の表面が溶融ガラスによって受ける摩擦による抵抗の大きさを表す尺度であって、この値は流体密度、翼面積そして翼の回転速度の二乗に反比例し、羽根の形状すなわち傾斜角や羽根の表面性状等によって決まる係数である。そして、この値が大きい程溶融ガラス用スターラーの翼ユニットを構成する羽根の表面が溶融ガラスによって受ける摩擦力が大きくなり、その結果溶融ガラス用スターラーの翼ユニットを構成する羽根の表面が経時的に劣化して剥離していくことで、溶融ガラス中に放逸された羽根表面の破片が溶融ガラス中の均質度を損なう異物となる。一方この値が小さすぎると溶融ガラスを撹拌する羽根の混合能力が低下して、不均質な溶融ガラスを混合して均質化する機能が低下する結果、溶融ガラスを撹拌するスターラーそのものの性能を低下させる。
【0017】
そして、この表面の抵抗係数が0.7を越えると上述のような表面の剥離を引き起こすため、羽根の破片に起因する溶融ガラス中の異物数が増加するため、溶融ガラスの均質度が低下し好ましくない。そしてより異物の発生数を減らした状態を実現し、さらに均質度の高い溶融ガラスとするためには、0.6をその上限とする方がより好ましい。一方この表面の抵抗係数が0.05より小さくなると羽根の撹拌性能が低下して、溶融ガラス用スターラーを使用しても溶融ガラスの十分な混合が行えなくなる。よって表面の抵抗係数は少なくとも0.05以上であることが好ましく、さらに高い混合性能を確保するためには、0.1以上の表面の抵抗係数が必要である。
【0018】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、上述に加え翼ユニットが2〜100個回転軸に取り付けられていることを特徴とする。
【0019】
ここで、翼ユニットが2〜100個回転軸に取り付けられているとは、前述した2本以上の支柱と羽根によって構成される翼ユニットの数が2以上で100以下とすることを意味している。
【0020】
翼ユニットの数を1としても、回転軸を頑強なものとすれば使用することは可能であるが、撹拌効果は小さく、スターラーの重心位置も回転軸上から外れることになるため、2以上の数の翼ユニットとする方が好ましい。また翼ユニットの上限数を100としたのは、翼ユニットの数を増加させればそれだけ溶融ガラス用スターラーの構造は複雑となり、メンテナンスに支障をきたす虞がある。またそれぞれの翼ユニットの構造は、溶融ガラス中で相応の機能を発揮する必要性から、それなりの容積は必要であって、翼ユニットの全体の構造等に留意したとしても、翼ユニット数が増加するほどスターラー重量が重くなり、重いスターラーを回転するために必要となるエネルギーに見合うだけの撹拌効果が得られないという問題もあるためである。
【0021】
また、この翼ユニットは、1本の回転軸に種々の接合方法によって配設することができるものであるが、1本の回転軸に配設される翼ユニットはすべて同じ構成であってもよく、一方それぞれの翼ユニットが異なる構成であっても差し支えない。すなわち、例えば4つの翼ユニットが1本の回転軸に溶接された構造である場合、対向する2つづつがそれぞれ別種の形状を有する翼ユニットであっても差し支えない。そして翼ユニットの回転軸に対しての接合方法については、溶接に限らず経時的に支障の発生するような方法でなければ、どのような方法を採用しても差し支えない。
【0022】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、上述に加え前記羽根の表面の回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対する回転方向の位相ずれが1°〜180°の範囲であることを特徴とする。
【0023】
ここで、羽根の表面の回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対しする回転方向の位相ずれが1°〜180°の範囲であるとは、前述の回転軸に配設した翼ユニットの羽根の一部を構成する表面の位相角度のずれの大きさが、回転軸上のその翼ユニットの支柱取り付け位置の中心に対してずれ角度で表して1°から180°の範囲内であることを意味している。
【0024】
この回転方向への位相ずれ角度の大きさは、回転軸の回転によって溶融ガラスから翼ユニットの羽根に働く回転軸の円周方向に作用する溶融ガラスの流れ方向を軸の上方あるいは下方に変化させ、回転によって溶融ガラスの流れ方向を変えるものである。そしてこの角度が小さすぎると、溶融ガラスの流れがスターラーの翼ユニットの羽根の回転方向の後方からはがれてしまった様な状態となる。すなわちそれぞれの羽根の端辺部の後方域では、層流が乱れて乱流によって発生する渦が多数生じやすい形状となっており、その結果羽根の端辺部等での経時的な表面の劣化が速やかに進行する傾向が認められる。そのため、この回転位相のずれは1°以上であることが好ましく、5°以上とする方がさらに好ましい。一方、この回転位相のずれを大きくしすぎると、羽根の表側と裏側で分離された溶融ガラスの流れは、それぞれ分離されたままの状態で、合流して混合されることなく回転軸に沿ってまとまったまま運動することとなるため、充分な混合効果を得られがたくなる傾向が認められる。そしてこの上限は、180°であって、より好ましくは170°とする方がよい。
【0025】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、上述に加え複数の翼ユニットが回転軸に対して360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12)の角度で配設されていることを特徴とする。
【0026】
ここで、複数の翼ユニットが回転軸に対して360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12、18、20)の角度で配設されているとは、前述のように1本の回転軸の周囲に配設された任意の2つの翼ユニットのそれぞれの重心位置の相対的な位置関係が360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12、18、20)の角度をなすものであることを意味している。
【0027】
任意の2つの翼ユニットを選択した場合にその2つの翼ユニットがなす角度が360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12、18、20)の角度からはずれていても、スターラーを作り上げることは可能である。ただし、その場合には、スターラー全体の重心位置が回転軸上からわずかであっても外れることになるため、回転運動中にスターラーの回転軸の偏心が生じやすくなる、つまり回転ぶれが生じやすくなるため、効果的な混合が行いにくい現象が発生する虞がある。また、このように重心位置が回転軸上から外れる場合には、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端の周囲にわずかなクリアランスで溶融ガラスを保持するための均質化槽容器の内壁がある場合には、その器壁を物理的に損傷してしまうという様な危険性もあるため好ましくない。
【0028】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、上述に加え溶融ガラス用スターラーが白金を含む材料によって構成されていることを特徴とする。
【0029】
ここで、溶融ガラス要スターラーが白金を含む材料によって構成されていることとは、溶融ガラス用スターラーの一部が白金(Pt)であって、それ以外にロジウムやジルコニウム、オスミウム等の高融点成分を含有し、その材料の融点が少なくとも1000℃以上である構成材料となってことを意味している。
【0030】
そして、一部が白金を含むとは、すべてが白金によって構成されていてもよく、また白金を1〜2%程度しか含まない場合であっても差し支えないことを意味している。またその構成上、スターラーについての羽根、回転軸、支柱、翼ユニットといった特定部位にのみ白金が使用されている場合も可能であって、それぞれの部位の特定箇所、すなわち翼ユニットの支柱表面のみ、羽根の片面のみ等の限定的な利用であってもよい。
【0031】
さらに、白金以外の構成材料の構成成分について、特に限定するものではないが、溶融ガラスに対する十分な化学的耐久性を持ち、高温状態での使用時に十分な強度を実現できる材料であって、融点が充分に高い成分により構成されていれば問題はない。利用できるものとしては、例えばロジウム(Rh)、金(Au)、Pd、オスミウム(Os)、ジルコニウム(Zr)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)等の金属、酸化物、炭化物、窒化物等がある。すなわち、白金以外の材料としては、ロジウム等の白金族系の金属、あるいはその合金以外に、ジルコニアなどの強度補強成分を添加した白金属類の金属、アルミナ、ジルコニア等の酸化物、窒化物、炭化物あるいは複数のセラミックス成分を混合したファインセラミックス、炭素粒子あるいは炭素繊維、金属添加炭素材料、繊維強化金属(FRM)、繊維強化炭素(FRC)、また傾斜機能材料等を構成部材として複数を選択することもでき、高温部位と低温部位について異材料を使用したり、耐蝕性の必要となる部位や高強度を特に必要とする部位で異材料を必要に応じて使い分けることも可能である。
【0032】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーの羽根の形状について、上述に加えてさらに好ましい形状を限定するならば、羽根の軸方向の一端側の一部または全部と羽根の軸方向の他端側の一部または全部とが、羽根の軸方向長さの中央における回転軸中心に対しての回転位相とずれた角度を有していることが好ましいものである。そしてこの場合の位相のずれ角度については、5°から50°の範囲内であることが、好適である。
【0033】
この場合の位相ずれ角度について、5°より小さくなれば、撹拌時の摩擦抵抗が大きくなりすぎ、一方50°を越えれば、撹拌による混合力が低くなる傾向が認められることから、50°以下である方がよく、さらに好ましくは8°以上で45°以下とするべきである。
【0034】
また、本発明の溶融ガラス撹拌装置は、上述の溶融ガラス用スターラーと、該溶融ガラス用スターラーを収納する耐熱性容器からなる均質化槽とを具備し、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス用スターラーを収納する均質化槽の内壁とのクリアランスが、回転軸を中心としたスターラーの回転直径より小さいことを特徴とする。
【0035】
ここで、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス用スターラーを収納する均質化槽の内壁とのクリアランスが回転軸を中心としたスターラーの直径より小さいとは、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラスと溶融ガラス用スターラーとを収納する耐火性の均質化槽容器の内壁との間隔の寸法が大きくとも溶融ガラス用スターラーの回転時の回転軸を中心とした直径の大きさ以下の寸法であることを意味している。
【0036】
当然のことではあるが、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス用スターラーを収納する耐熱性容器の内壁とのクリアランスが、スターラー直径より大きい場合でも、溶融ガラスの撹拌は可能である。しかし、このクリアランスが大きくなればなるほど、溶融ガラス用スターラーによって混合されて均質化される溶融ガラスの量は減少することとなる。よってこの溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス撹拌スターラーを収納する耐熱性の均質化槽容器の内壁とのクリアランスは、大きくとも溶融ガラス用スターラーの直径を越えないことが好ましい。より確実にスターラーによる混合操作を行って、溶融ガラスの均質度を向上させるためには、そのクリアランスは、回転時のスターラー直径の8割以下の寸法とする方がよい。
【0037】
また、本発明の溶融ガラスの均質化の方法は、溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させることによりガラス溶融炉中の無機酸化物ガラスを撹拌する溶融ガラスの均質化方法において、前記溶融ガラス用スターラーは、その翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と、該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されており、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備するものであり、(該表面の抵抗係数が0.70〜0.05である)該溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させることを特徴とするものである。
【0038】
ここで、溶融ガラス用スターラーは、その翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と、該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成され、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備するものであり、(該表面の抵抗係数が0.70〜0.05である)該溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させるとは、上述のように支柱の取り付け位置の中心に対して位相ずれを有する羽根に2本以上の支柱を介して接続した翼ユニットを回転軸に配設した溶融ガラス用スターラーであり、このスターラーを溶融ガラス中に浸漬しつつ回転軸を中心に回転することを意味しており、それによって溶融ガラス中に存在する不均質で、しかも異質なガラスを混合撹拌して均質化をおこなうことが可能となるものである。
【0039】
そして、溶融ガラス用スターラーの溶融ガラス中への浸漬の角度や浸漬の深さは、溶融条件に応じて適宜選択して設定すれば良いが、撹拌操作によって溶融ガラス用スターラーを収納している均質化槽内の耐熱性の炉床や炉壁等のスターラー周囲の構造部材に経時的な損傷等の発生することのない様に充分な注意が必要である。
【0040】
そして溶融ガラス用スターラーの回転速度についても特に限定されるものではないが、その回転操作については、溶融ガラスの温度やガラスの生産量、さらに問題となるガラスの均質度のレベルによって随時調節することが可能であって、種々の計測結果に見合った操作条件を採用することによって、最適な均質化を実現することができる。
【0041】
また、本発明の溶融ガラスの均質化の方法は、上述に加え耐火物製容器及び/または白金含有材質容器からなる溶融槽内で溶解した溶融ガラスを脱泡し、その後に該溶融ガラスを白金含有材質製の均質化槽内に流入させ、該均質化槽内で溶融ガラス用スターラーを回転させて撹拌することを特徴とする。
【0042】
ここで、耐火物製容器及び/または白金含有材質容器からなる溶融槽内で溶解した溶融ガラスを脱泡し、その後該溶融ガラスを白金含有材質製の均質化槽内に流入させ、該均質化槽内で溶融ガラス用スターラーを回転させて撹拌するとは、無機原料を加熱して溶融し、化学反応によって発生した泡等を放出させる操作を耐火物製容器及び/または白金含有材質容器から溶融槽内で行った後、溶融ガラスを白金を含む材質の容器によって構成される均質化槽内に流入させ、その槽内において溶融ガラス用スターラーを回転させて撹拌することによって、溶融ガラスの均質化を実現することを意味している。
【0043】
ここで、耐火物製容器及び/または白金含有材質容器は、高温状態の溶融ガラスを保持するに十分な耐火性と強度を有し、溶融するガラスに均質度の低下につながる異物やノット、脈理の発生原因となるような化学的な脆弱性が認められない様な材料で構成するものであるならば支障はない。また、耐火物製容器及び/または白金含有材質容器は1つである必要性はなく、2以上の容器を経た後に均質化槽中に流れ込む場合であってもよい。また耐火物製容器及び/または白金含有材質容器の形状は、回転体を収納するものであるため側面部は円筒形であることが一般的であるが、必要に応じて回転軸に対する断面形状が楕円形や多角形であってもよく、また容器底の形状についても半球形状や逆円錐形状等を採用することも可能である。
【0044】
本発明を適用するガラスは、無機酸化物のガラス組成物であれば、差し支えない。そして特に表示デバイスを構成する無アルカリガラス、高屈折率を必要とする光学ガラス等の溶融ガラスを光学的品位で均質化する方法として好適である。
【0045】
【作用】
以上のように本発明の溶融ガラス用スターラーは、回転軸に翼が取り付けられ溶融ガラス中で回転する溶融ガラス用スターラーにおいて、前記翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されており、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備し、該表面の抵抗係数が0.70〜0.05であるため、スターラーを高温溶融ガラス中で使用することによってスターラー表面の剥離が原因となって発生する異物の量を最小限に抑制することが可能であり、かつ溶融ガラスを効率的に混合することが可能であって、均質なガラス製品の製造を長期間行うことが可能である。
【0046】
さらに、本発明の溶融ガラス用スターラーは、翼ユニットが2〜100個回転軸に取り付けられているため、溶融ガラスの材質やガラスの適応される用途に応じて最適な構造設計をおこなうことで、高い光学性能を有する各種の用途に利用される高機能ガラスの溶融を効率的におこなうことが可能であって、多くのガラス製品の均質性を格段に向上させることが可能となる優秀な機能を有するものである。
【0047】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、前記羽根の表面の位相ずれが1°〜180°の範囲であるため、回転速度が高くなくとも高い撹拌効果を溶融ガラスにもたらすことができるものであって、ガラス製品の製造をエネルギー効率の高い状態で実現可能な溶融ガラス製造設備を構築し得るものである。
【0048】
さらに、本発明の溶融ガラス用スターラーは、複数の翼ユニットが回転軸に対して360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12、18、20)の角度で配設されているため、均質操作のための駆動時においても回転軸の偏心を起こすことなく溶融ガラスの均質化をおこなうことができ、回転軸に過度な負荷が加わるようなことがないため、溶融ガラス用スターラーの長期的な耐用年数を充分に確保することが可能なものである。
【0049】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、溶融ガラス用スターラーが白金を含む材料によって構成されているため、高温状態における溶融ガラスの粘度の高いガラス材質に対しても効果的な撹拌を行うことが可能であって、製品1つ当たりの容積が大きく、しかも高度な均質性を要求されるガラス製品の製造に重用できる性能を有するものである。
【0050】
また、本発明の溶融ガラス撹拌装置は、溶融ガラス用スターラーと、該溶融ガラス用スターラーを収納する耐熱性容器からなる均質化槽とを具備し、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス用スターラーを収納する均質化槽の内壁とのクリアランスが、回転軸を中心としたスターラーの回転直径より小さいため、溶融ガラス用スターラーを収納した均質化槽内に流入した溶融ガラスについては、スターラーの回転半径内に流入できない溶融ガラス量を最小限に抑制しつつ、均質化を行うことで、均質化操作の確実性を向上させることが可能となるものである。
【0051】
また、本発明の溶融ガラスの均質化方法は、溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させることによりガラス溶融炉中の無機酸化物ガラスを撹拌する溶融ガラスの均質化方法において、前記溶融ガラス用スターラーはその翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と、該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されており、該羽根が回転軸への支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備するものであり、(該表面の抵抗係数が0.70〜0.05である)該溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させるものであるため、溶融ガラス中の高粘性異質ガラスをスターラーの回転によってもたらされる融液の混合・分散運動に巻き込むことによって、高速に均質化することが可能であり、それでいて高粘性異質ガラスによるスターラーそのものの損傷を極力抑制する事ができるという長所を併せ持つ方法である。
【0052】
さらに、本発明の溶融ガラスの均質化方法は、上述に加え耐火物製容器及び/または白金含有材質容器からなる溶融槽で溶解した溶融ガラスを脱泡し、その後該溶融ガラスを白金含有材質製の均質化槽内に流入させ、該均質化槽内で溶融ガラス用スターラーを回転させて撹拌するものであるため、溶融ガラス中に存在する脈理、ノット等のガラスの光学特性や強度特性に影響を及ぼす欠陥の発生数を減らし、成形時における外観不良発生率を低減する高い性能を有するものである。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の溶融ガラス用スターラーと、これを用いた溶融ガラス撹拌装置及びこのスターラー等による溶融ガラスの均質化方法について、具体的な説明を行う。
【0054】
(実施例1)
図1に本発明の溶融ガラス用スターラー10とこのスターラー10を収納する耐火性の均質化槽の容器20を示す。溶融ガラスGは清澄槽(図示省略)で溶融ガラスG中の泡を除去された後に溶融ガラス供給管23を経て均質化槽の容器20内に流入し、この均質化槽内のほぼ中央位置に配設した白金(ロジウム15%を含有する合金)製の溶融ガラス用スターラー10を回転方向Kに回転させることによって混合され、均質化される。ここで、羽根13の外端と均質化槽の容器20の内側の側壁21との間のクリアランスはスターラー10の直径の20%である。そして、この溶融ガラス用スターラー10には、2本の支柱12を介して1枚の羽根13を有する翼ユニットを回転軸11に対して180°の位置に計4つ備えており、いずれの翼ユニットも溶接によって取付・配設されている。また均質化槽容器もスターラーと同様の材質で構成されている。
【0055】
図2には、溶融ガラス用スターラーを回転軸の先端方向から見た平面図を示す。このスターラー10の回転時の回転軸を中心とした直径Dに対して、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と均質化槽内壁との間のクリアランスLの比率は、17%であって、回転時の回転軸を中心としたスターラー直径Dより充分小さい値である。また、このスターラー10は、翼ユニットの羽根13の一部の表面が回転軸11への支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に位相ずれを生じさせる表面13aとなるように設計されており、その際の最大の回転位相ずれ角度αは24°である。
【0056】
この溶融ガラス用スターラー10を使用した場合を想定した溶融ガラスの流れ解析をシミュレーションによって行い、スターラー回転速度20rpm、ガラス流量400kg/hr、クリアランス15cm、回転時の温度1450℃の条件下において混合を実施した場合について、最大摩擦摩擦力を算出したところ、8KPa以下となることが確認できた。またこの羽根の抵抗係数は0.33であった。
【0057】
(実施例2)
次いで、実際の溶融ガラスを使用する場合の評価として、無アルカリガラスの製造設備を利用して、無アルカリガラスの均質化について本発明の溶融ガラス用スターラーの性能評価を実施した。表1に性能評価の結果と使用したスターラーのタイプを示す。また図3にこの調査に使用したスターラーの部分斜視図と軸方向からの平面図を示す。いずれのスターラーも白金−ロジウム15%の材質で、溶接によって組み立てたものである。図3でタイプ▲1▼のスターラーの部分斜視図は(A)、軸方向平面図は(B)である。このタイプ▲1▼のスターラーの特徴はV字状に曲げた羽根を2本の支柱を介して配設したことである。そしてタイプ▲2▼のスターラーの斜視図は(C)、軸方向平面図は(D)である。タイプ▲2▼のスターラーの特徴は3本の支柱によって1枚の羽根を保持し、高強度な構造を採用していることである。そしてタイプ▲3▼のスターラーの部分斜視図は(E)、軸方向平面図は(F)である。このタイプ▲3▼では、2本の板状の支柱で1枚の羽根を保持し、その羽根は平面板を溶接して羽根の側面を閉じたような形状とした点にある。いずれのタイプについても羽根の回転軸上の支柱取り付け位置に対する位相角度αを羽根の大きさや角度などを調節することによって変更できる。そしてこの角度について、それぞれのタイプのスターラーで表1に示したような角度を採用して、抵抗係数が本発明のスターラーの条件を満足できるようにしたものである。
【0058】
【表1】
【0059】
1400℃の温度で、それぞれのスターラーを24時間設置し、溶融ガラス用スターラーを25rpmで回転させた場合について、均質化槽から流出した溶融ガラス中に剥離によって溶融ガラス中に混入してくる白金異物の数を数え、スターラーとしての性能を比較した。その結果調査No.1〜9の各条件については、いずれも剥離する白金の数が非常に少なく、実使用に耐えるものであると判断できた。
【0060】
(比較例1)
一方、実施例2と同様のスターラー形状であって、しかも抵抗係数を大きくした場合と小さくした場合について、実施例2と同様の評価を実施した。その結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
調査No.10、No.12、No.13は、抵抗係数を0.7より大きくしたものであるが、剥離によって発生した白金異物が多数認められ、ガラスを実際に生産する設備として使用することは、困難なものであった。また調査No.11、No.14、No.15については、抵抗係数を0.05より低くしたものであるが、この場合には白金異物の発生は少なくなるものの、混合が充分行えないため、異質ガラスがそのまま均質化槽から流出し、脈理品位の劣悪なガラスとなることが確認できた。
【0063】
以上の調査結果から、本発明の溶融ガラス用スターラーを使用して溶融ガラスの撹拌による均質化操作を行うと、溶融ガラスの均質化を確実に行うことができるばかりでなく、スターラー自体の回転時に発生する剥離を原因とする異物の発生も低く抑制できることが判明した。
【0064】
【発明の効果】
上述のように本発明で開示した溶融ガラス用スターラーは、スターラーを高温溶融ガラス中で使用することによってスターラー表面の剥離が原因となって発生する異物の量を最小限に抑制し、かつ溶融ガラスを効率的に混合することができるので、均質なガラス製品の製造を長期間行うことが可能であるため、大量生産の必要となるガラス製品を途切れることなく潤沢に市場へ供給することを実現するものであって、しかもそれぞれのガラス製品の用途に応じた品質向上をもたらすことができるものである。
【0065】
さらに、本発明の溶融ガラス用スターラーは、溶融ガラスの材質や適応される用途に応じて最適な構造設計を行うことで、高い光学性能を有する各種の用途に利用される高機能性ガラスの溶融を効率的に行うことができ、多くのガラス製品の均質性を向上させることが可能となる優秀な機能を有するものであるため、非球面レンズや球レンズの様に微小光学部品に使用される高い均質性を必要とするガラス製品やフィルターや半導体素子を保護するカバーガラス用途のガラスを均質化する製造装置として特に好適なものである。
【0066】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、低い回転速度で高い撹拌効果を溶融ガラスにもたらすことができるので、エネルギー効率の高い溶融ガラス製造設備を構築し得るものであるため、要求に応じて多種多様な製造設備を作り上げることによって、従来均質化が容易でないため製造が困難であったような高い粘性を有するガラス材質でも迅速な均質化を実現することで、容易に製造できるものである。
【0067】
さらに、本発明の溶融ガラス用スターラーは、均質操作のための駆動時においても回転軸の偏心を起こすことなく溶融ガラスの均質化をおこなうことができ、回転軸に過負荷が加わるようなこともなく、溶融ガラス用スターラーの長期的な耐用年数を充分に確保することが可能なものであるため、安定した品質のガラス製品を長期間生産し続けることができ、ガラス製品の生産原価を低下させて、高い機能を有する高品位ガラスを安価な価格で供給することを可能とするものである。
【0068】
また、本発明の溶融ガラス用スターラーは、高温状態における溶融ガラスの粘度が高いガラス材質に対しても効果的な撹拌が可能であり、容積が大きくて、しかも高度な均質性が要求されるガラス製品の製造に重用できる性能を有するので、液晶用板ガラス、FED用板ガラス、PDP用板ガラス等を含む高機能な表示デバイス用途に利用される板ガラスや大型の光学ガラス用途、さらに放射線遮蔽用ガラス、陰極線管用のファンネルガラス、フェースガラス等の製造を行う際に利用する溶融ガラス用スターラーとして好適なものである。
【0069】
さらに、本発明の溶融ガラス用スターラーは、溶融ガラス用スターラーを収納した均質化槽内に流入した溶融ガラスについては、スターラー回転半径内に流入できない溶融ガラス量を最小限に抑制しつつ均質化を行うことで、均質化操作の確実性を向上させることが可能となるものであるため、種々の産業分野におけるガラス製品の品質向上に大きく貢献し、ガラス製品の関与する産業自体をこれまで以上にいっそう興隆させるものである。
【0070】
そして、本発明の溶融ガラスの均質化方法は、溶融ガラス中の高粘性異質ガラスをスターラーの回転によってもたらされる融液の混合・分散運動に巻き込んで、高速に均質化することが可能であり、かつ高粘性異質ガラスによるスターラーそのものの損傷を極力抑制する事もできるという2つの長所を併せ持つ方法であるため、特に化学的耐久性の高い高歪点を有する多成分で構成されるガラス材質に関しての均質性の向上に大きく寄与するものである。
【0071】
また、本発明の溶融ガラスの均質化方法は、溶融ガラス中に存在する脈理、ノット等のガラスの光学特性や強度特性に影響を及ぼす欠陥の発生数を減らし、成形時における外観不良発生率を低減する高い性能を有するものであるため、ガラス製品の良品率を向上させるばかりでなく、成形装置等のメンテナンスや耐用年数を長寿命化させることが可能であって、製造設備の保守などに必要となる経費も削減することが可能となる卓越した均質化方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶融ガラス用スターラーの部分斜視図。
【図2】本発明の溶融ガラス用スターラーの軸方向からの平面図。
【図3】本発明の他の溶融ガラス用スターラー。(A)、(C)、(E)は部分斜視図を表し、(B)、(D)、(F)はそれぞれ(A)、(C)、(E)についての軸方向の平面図。
【図4】従来のスパイラル形状の羽根を有するスターラーの説明図。
【図5】従来のパドル形状の羽根を有するスターラーの説明図。
【図6】従来のヘリカルリボン形状の羽根を有するスターラーの説明図。
【符号の説明】
10 本発明の溶融ガラスの溶融ガラス用スターラー
11 溶融ガラス用スターラーの回転軸
12 溶融ガラス用スターラーの支柱
13 溶融ガラス用スラーラーの羽根
13a 羽根の表面
20 均質化槽容器
21 容器側壁
22 容器底
23 溶融ガラス
30、40、50 従来の溶融ガラス用スターラー
31、41、51 従来の溶融ガラス用スターラーの回転軸
32、42、52 従来の溶融ガラス用スターラーの羽根
G 溶融ガラス
K 回転方向
α 最大の回転位相ずれ角度
D スターラーの回転直径
L スターラーの羽根外端と均質化槽内壁とのクリアランス
Claims (8)
- 回転軸に翼が取り付けられ溶融ガラス中で回転する溶融ガラス用スターラーにおいて、
前記翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と、該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根とを有する一つの翼ユニットとして構成されており、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備し、該表面の抵抗係数が0.70〜0.05であることを特徴とする溶融ガラス用スターラー。 - 翼ユニットが2〜100個回転軸に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の溶融ガラス用スターラー。
- 前記羽根の表面の位相ずれが1°〜180°の範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融ガラス用スターラー。
- 複数の翼ユニットが回転軸に対して360°/n(n=2、3、4、6、8、10、12、18、20)の角度で配設されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶融ガラス用スターラー。
- 白金を含む材料によって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の溶融ガラス用スターラー。
- 請求項1から請求項5の何れかに記載の溶融ガラス用スターラーと、該溶融ガラス用スターラーを収納する耐熱性容器からなる均質化槽とを具備し、溶融ガラス用スターラーの羽根の外端と溶融ガラス用スターラーを収納する均質化槽の内壁とのクリアランスが、回転軸を中心としたスターラーの回転直径より小さいことを特徴とする溶融ガラス撹拌装置。
- 溶融ガラス用スターラー溶融ガラス中に浸漬して回転させることによりガラス溶融炉中の無機酸化物ガラスを撹拌する溶融ガラスの均質化方法において、
前記溶融ガラス用スターラーは、その翼が回転軸に取り付けられた複数本の支柱と該支柱を介して取り付けられた1枚の羽根によって一つの翼ユニットとして構成されており、該羽根が回転軸の支柱取り付け箇所の中心位置に対して回転方向に所定の位相ずれを生じさせた表面を具備するものであり、該溶融ガラス用スターラーを溶融ガラス中に浸漬して回転させることを特徴とする溶融ガラスの均質化方法。 - 耐火物製容器及び/または白金含有材質容器からなる溶融槽内で溶解した溶融ガラスを脱泡し、その後に該溶融ガラスを白金含有材質製の均質化槽内に流入させ、該均質化槽内で溶融ガラス用スターラーを回転させて撹拌することを特徴とする請求項7に記載の溶融ガラスの均質化方法。
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