JP2004345321A - 導電性インクジェットインク受容層形成用インクおよびそれを用いた導電回路を有するシート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】沸点100℃以上のグリコール系溶剤を主成分として含むビヒクルに対して、導電性微粒子を配合した導電性インクジェットインク受容層形成用インクを用いる。このインクを用いて基材の少なくとも一方の面の所定部にインクジェットインク受容層を形成し、その上に導電性インクジェットインクを用いて導電回路を形成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性インクジェットインク受容層形成用インクおよびそれを用いた導電回路を有するシートに関し、さらに詳しくは、導電性インクジェットインクを用いて導電性および接着性に優れた導電回路を形成できる導電性インク受容層を基材上に形成するためのインクおよびそれを用いた導電回路を有するシートであって、非接触ICタグなどの薄形の情報送受信型記録メディアなどのRF−ID(RadioFrequency IDentification)メデイア、ペーパーコンピュータなどに適用可能な導電回路を有するシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、IC、LSIなどの微細な導電回路を作成するには、導電層が積層されたシート基材の前記導電層上にレジスト剤を用いてレジスト層を形成し、導電回路パターンを有するホトマスクを用いて光照射し、例えば導電回路パターン状に形成されたレジスト層以外の導電層を除去して導電回路を形成し、必要に応じて不要のレジスト層を除去するホトリソグラフによる方法が行われているが、ホトマスクを用いて光照射するなど多数の工程を要するので煩雑であるという問題があった。
【0003】
一方、シート基材上にアルミニウム粉末、銀粉末などの導電性微粒子を含む導電性ペーストを印刷して導電回路を作成する方法があるが、印刷機を用いて印刷するため製版が必要であり、大量生産に適するが、オンデマンドで少量・多種類の注文に応じることが困難である上、導電性ペースト中の導電性微粒子同士の接触により導電性が付与されるため接触不足により導電性が不十分となる場合があるという問題があった。
【0004】
電子写真方式で用いられるトナーないし現像剤をレジスト剤として利用して導電回路を作成する導電回路の製法が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、この導電回路の製法は、一旦剥離(転写)シートにトナーないし現像剤を用いて電子写真方式により導電回路形成用パターンを形成し、この面と、導電層が積層されたシート基材の導電層が積層された面を接着剤を介して重ね合わせ、導電層面に前記導電回路形成用パターンを転写させるもので、このような電子写真方式では、剥離シート面への感光ドラムからのトナー定着の調整が難しいという問題があった。
【0005】
一方、金属コロイドを含有するインクジェットインクを用いて基材面の所定部に導電回路形成用パターンを形成し、加熱乾燥して導電回路を製造する導電回路の製法が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特願2002−251308
【特許文献2】
特願2003−38203
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この導電回路の製法は、導電回路の導電性や導電回路と基材面との接着性にいまだ改良の余地がある。
本発明の第1の目的は、製版の必要がなく、大量生産に応じることもできる上オンデマンドで少量・多種類の注文にも応じることもでき、しかも、大きさや形状などを自由に変えた導電性および接着性に優れた導電回路を形成できる導電性インク受容層を基材上に形成するためのインクを提供することであり、
本発明の第2の目的は、そのインクを用いた導電回路を有するシートであって、非接触ICタグなどの薄形の情報送受信型記録メディアなどのRF−IDメデイア、ペーパーコンピュータなどに適用可能な導電回路を有するシートを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の請求項1は、沸点100℃以上のグリコール系溶剤を主成分として含むビヒクルに対して、導電性微粒子を配合したことを特徴とする導電性インクジェットインク受容層形成用インクである。
【0009】
本発明のインクを用いて公知の印刷法などによりシート基材などの基材面の所定部に導電性インクジェットインク受容層を容易に形成でき、そして導電性インクジェットインクを用いることにより、導電回路形成用パターンを電子信号画像信号にて形成し、形成した電子信号画像信号に基づいてインクジェットプリンタにより、形成した受容層上に導電性および接着性に優れた導電回路を容易にシャープに形成できる。形成された前記受容層中には導電性微粒子が存在するが導電性微粒子相互は離れており絶縁性を有する。そして、前記受容層上に導電回路を形成した後、加熱することにより受容層中の導電性微粒子と導電回路との接触が向上するなどの相互作用により導電回路の導電性が一層向上し、より導電性に優れた導電回路とすることができる。
【0010】
本発明の請求項2は、請求項1記載のインクにおいて、インク全体に対して導電性微粒子を10〜40質量%配合したことを特徴とする。
【0011】
導電性微粒子の配合量を上記範囲内とすることにより、インク塗工性および受容層の強度や接着性を損なうことなくより導電性に優れた導電回路を得ることができる。
【0012】
本発明の請求項3は、基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1あるいは請求項2記載のインクを用いて形成されたインクジェットインク受容層上に導電性インクジェットインクを用いて導電回路が形成されてなることを特徴とする導電回路を有するシートである。
【0013】
本発明のシートは、構成が簡単で安価であり、大量生産に応じることもできる上オンデマンドで少量・多種類の注文にも応じることもでき、しかも、大きさや形状などを自由に変えた導電性および接着性に優れた導電回路を有するので、非接触ICタグなどの薄形の情報送受信型記録メディアなどのRF−IDメデイア、ペーパーコンピュータなどに適用可能である。
【0014】
本発明の請求項4は、請求項3記載のシートにおいて、導電性インクジェットインクが金属ナノコロイドを含有する導電性インクジェットインクであることを特徴とする。
【0015】
金属ナノコロイド含有導電性インクジェットインクを用いることにより、インクジェットプリンタのノズルを詰まらせることなく、連続して安定して容易によりシャープに導電回路を形成できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1(A)〜(F)は、本発明の導電回路を有するシートを製造する工程を説明する説明図である。
図2(A)〜(B)は、図1(B)のX−X断面説明図であり、(A)は導電性インクインクジェットインクを用いてインクジェットプリンタにより印刷してアンテナ部2を形成した後の状態を摸式的に示し、(B)は加熱後の状態を摸式的に示す。
【0017】
(A)工程で、紙などの基材1を用意する。基材1の上面の所定部に導電性微粒子8を配合した本発明の導電性インクジェットインク受容層形成用インクを公知の印刷法により塗布して、必要に応じて加熱乾燥して導電性インクジェットインク受容層7を形成する。導電性インクジェットインク受容層7中には導電性微粒子8が存在するが導電性微粒子8相互は離れており絶縁性を有する。
【0018】
(B)工程で、導電性インクジェットインク受容層7面の所定部に、金属ナノコロイド含有導電性インクインクジェットインクを用いてインクジェットプリンタにより印刷してアンテナ部2(導電回路)を形成した後(図2(A)参照)、例えば加熱乾燥炉、熱風乾燥炉などを利用したり、赤外線照射などの光を用いたりなどの公知の方法により適宜の条件下で加熱することにより、図2(B)に示すようにアンテナ部2が受容層7中に沈み込み導電性微粒子8とアンテナ部2との接触が向上するなどの相互作用によりアンテナ部2の導電性が向上する。もちろん導電率を向上できる理由はこれに限定されるものではない。
アンテナ部2を有する基材1は本発明の導電回路を有するシートの一実施形態であり、この状態で使用に供することもできる。
【0019】
(C)工程で、アンテナ部2の所定部に本発明の導電性インクジェットインク受容層形成用インクを塗布して絶縁部3を形成する。
(D)工程で、絶縁部3を形成後、この絶縁部3の上に金属ナノコロイド含有導電性インクジェットインクを用いて前記と同様にしてジャンパ部4を形成して、図中の2つのアンテナ部2間を導通して接続する。
この状態のアンテナ部2を有する基材1は本発明の導電回路を有するシートの他の実施形態であり、この状態で使用に供することができる。
【0020】
(E)工程で、基材1の図に示すチップ実装部位に位置しているアンテナ部2間にICチップ5の図示しない接続端子を突き刺さして導通するなどの方法によりICチップ5を実装する。
(F)工程で、実装したICチップ5にフェノール樹脂などのポリマー部材6を被覆した後、硬化させてICチップ5を封止して非接触ICメディア(RF−ID)を形成する。
この非接触ICメディア(RF−ID)は本発明の導電回路を有するシートの他の実施形態であり、非接触型ICカード、タグ、ラベルなどやペーパーコンピュータなどに適用可能である。
【0021】
この例では、導電回路としてアンテナの例を示して説明したが、導電回路はアンテナに限定されず、用途や目的に応じて設計されるどのような導電回路パターンであってもよく、基材も紙などに限定されない。
この例では、2次元的導電回路を示したが、重ね印刷、積層などにより3次元的導電回路を形成することもできる。
【0022】
本発明の導電性インクジェットインク受容層形成用インクはビヒクルとして沸点100℃以上のグリコール系溶剤を主成分として含むビヒクルを用いる。
本発明で用いるグリコール系溶剤は、水と混合可能な中沸点および高沸点溶剤(沸点が100℃以上のもの)であり、具体的には、例えばグリコール(グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール)やグリコール誘導体(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)など、およびこれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。
【0023】
本発明で用いる導電性微粒子の例としては、銀微粉末、金微粉末、白金微粉末、アルミニウム微粉末、パラジウム、ロジウムなどの微粉末、カーボン微粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子、導電性高分子微粒子、低温で分解する有機銀化合物と導電微粒子との混合物などを挙げることができる。これらは2種以上混合して使用することもできる。
【0024】
導電性微粒子の配合量は特に限定されないが、本発明のインク全体に対して導電性微粒子を10〜40質量%配合することが好ましく、15〜35質量%がさらに好ましく、20〜30質量%が特に好ましい。導電性微粒子が10質量%未満では、導電性に優れた導電回路を得ることができない恐れがあり、導電性微粒子が40質量%を超えると、インク塗工性および受容層の強度や接着性が損なわれる恐れがある。
【0025】
本発明の導電性インクジェットインク受容層形成用インクには、さらに微細粒子を配合できる。
本発明で用いる微細粒子は無機系微細粒子でも、有機系微細粒子でも、あるいは両者の混合物でもよく、特に限定されるものではない。中でも無機系微細粒子は好ましく使用できる。
本発明で用いる無機系微細粒子の具体例としては、例えば、シリカ微粒子では、ミズカシルP−526、P−801、P−527、P−603、P832、P−73、P−78A、P−78F、P−87、P−705、P−707、P−707D(水沢化学社製)、Nipsil E200、E220、SS−10F、SS−15、SS−50(日本シリカ工業社製)、SYLYSIA730、310(富士シリシア化学社製)など、炭酸カルシウム微粒子では、Brilliant−15、Brilliant−S15、Unibur−70、PZ、PX、ツネックスE、Vigot−10、Vigoto−15、Unifant−15FR、Brilliant−1500、ホモカルD、ゲルトン50(白石工業社製)などを、スルホ・アルミン酸カルシウム微粒子では、サチンホワイトSW、SW−B、SW−BL((白石工業社製)などを、アルミナ微粒子では、AL−41G、AL−41、AL−42、AL−43、AL−44、AL−41E、AL−42E、AL−M41、AL−M42、AL−M43、AL−M44、AL−S43、AM−21、AM−22、AM−25、AM−27(住友化学社製)、酸化アルミニウムC(日本アエロジル社製)などを、二酸化チタン微粒子では二酸化チタンT805、P25(日本アエロジル社製)などを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明で用いる微細粒子の配合量は特に限定されるものではないが、好ましくはビヒクル100質量部に対して、微細粒子を3〜10質量部配合することが望ましい。3質量部未満では導電性インクジェットインクの接着性を改善できない恐れがあり、10質量部を超えると粘度が高くなりインク塗工性が低下し、また受容層の強度や接着性が損なわれる恐れがある。
【0027】
本発明においては、耐水性を向上させるためにビヒクルに対して微細粒子以外にカチオン性樹脂をさらに配合することができる。
本発明において用いるカチオン性樹脂は、水溶液あるいは水分散液の形態の1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩のオリゴマー、ポリマーでも、自体が粉末状あるいは液状である1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩のオリゴマー、ポリマーでもよい。
特に好ましいカチオン性樹脂の例として、具体的には、例えば、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン共重合物などあるいはこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。カチオン性樹脂としては市販のものを好適に利用できる。
【0028】
市販の水溶液あるいは水分散液の形態のカチオン性樹脂の具体例としては、例えば、水溶液としては、三洋化成工業(株)製サンフィックスPRO−100(ポリアミン系水溶液)、サンフィックス70(ジシアンジアミド系水溶液)、第一工業製薬(株)製カチオーゲンL(4級アンモニウム塩水溶液)、シャロールDC−303P(ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド水溶液)、シャロールDC−902P(ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド水溶液)、日本触媒(株)製エポミンP−1000(ポリエチレンイミン)、日東紡績(株)製PAA−HCI−3L(ポリアリルアミン塩酸塩)、PAA−HCI−10L(ポリアリルアミン塩酸塩)などを挙げることができる。
また、水分散液としては、三洋化成工業(株)製サンスタット1200(4級アンモニウム塩型)、日華化学(株)製ニッカシリコンAMZ(アミノ変性シリコンエマルジョン)、ニッカシリコンAM−202(アミノ変性シリコンエマルジョン)、ニッカシリコンAMZ−3(アミノ変性シリコンエマルジョン)などを挙げることができる。
【0029】
粉末状の市販のカチオン性樹脂の具体例としては、例えば、三洋化成工業(株)製ポリアミン系のサンフィクス555、サンフィクス555C、サンフィクス555NK、サンフィクス555US、第一工業製薬(株)製のレオックスAS(特殊カチオン樹脂)、シャロールDM−254P(メタクリル酸エステルクロライド4級塩ポリマー)、シャロールDM−283P(メタクリル酸エステルクロライド4級塩ポリマー)、日東紡績(株)製のPAA−HCI−3S(ポリアリルアミン塩酸塩)、PAA−HCI−10S(ポリアリルアミン塩酸塩)などを挙げることができ、液状のものでは、日本触媒(株)製のエポミンSP−012(ポリエチレンイミン)、エポミンSP−110(ポリエチレンイミン)、エポミンSP−200(ポリエチレンイミン)などを挙げることができる。
【0030】
ビヒクルに対するカチオン性樹脂の含有量は特に限定されるものではない。
しかしビヒクル100質量部に対して、カチオン性樹脂を5〜120質量部、好ましくは5〜60質量部、より好ましくは5〜50質量部、配合することが望ましい。カチオン性樹脂が下限値未満では耐水性を改善できない恐れがあり、上限値を超えると耐水性は改善されるが印刷インク適性が低下する恐れがあるので好ましくない。
【0031】
本発明においては、必要に応じてさらにバインダー樹脂を配合したビヒクルを用いることができる。さらにバインダー樹脂を配合することにより、形成された導電性インクジェットインク受容層が擦れに強くなり、OCRリーダーなどで擦られても微細粒子が離脱したり、導電性インクジェットインク受容層が剥離しなくなるので好ましい。
【0032】
本発明で用いるバインダー樹脂は、前記グリコール系溶剤とともに使用可能なものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、アラビアゴム、アルギン酸ソーダなどの天然樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリフェニルアセトアセタール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジウムハライド、メラミン樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリエステル、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸エステル共重合体などの合成樹脂、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン共重合物、ジシアンジアミド、ジメチル・ジアリル・アンモニウムクロライドを主成分とする化合物あるいはこれらの2種以上の混合物などのカチオン性樹脂、その他、電子線硬化型インク、紫外線硬化型インク、スルホン酸基、カルボキシル基、硫酸エステル基、燐酸エステル基などのアニオン性基を有する例えばロジン変成マレイン酸などのアニオン性樹脂などを挙げることができる。
【0033】
本発明の導電性インクジェットインク受容層形成用インクには、必要に応じ公知の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、粘度調整剤、老化防止剤、pH調節剤、消泡剤、各種安定剤、着色剤などを挙げることができる。
本発明の導電性インクジェットインク受容層形成用インクは、例えば上記の成分をホモジナイザーなどの攪拌機で均一に混合した後、3本ロールあるいはニーダーなどの混練機でさらに均一に分散することにより製造されるが、製法はこの方法に限定されるものではない。
【0034】
本発明の導電性インクジェットインク受容層形成用インクは、グラビアコーター、フレキソ、エアナイフコーター、バーコーター、スプレーなどの公知の塗工手段により基材の少なくとも一方の面の所定部に塗工し、必要に応じて加熱、乾燥して導電性インクジェットインク受容層を有するシートを形成することができる。
【0035】
本発明で用いる導電性インクジェットインクは、インクジェットプリンタにより導電性インクジェットインク受容層上に印刷して導電性および接着性に優れた導電回路を形成できるものであればよく、特に限定されるものではない。しかし金属ナノコロイド含有導電性インクジェットインクを用いることにより、インクジェットプリンタのノズルを詰まらせることなく、連続して安定して容易によりシャープに導電性および接着性に優れた導電回路を形成できるので本発明において好ましく使用できる。
【0036】
本発明において用いる金属ナノコロイドは、公知の固体ゾルあるいはそれを溶媒に分散させたものであり、金属の種類は特に限定されない。しかし、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、ニッケル、アルミニウムなどは好ましく使用できる。
【0037】
これらの金属ナノコロイドは発色する。金属ナノコロイドによる発色は電子のプラズマ振動に起因し、プラズモン吸収とよばれる発色機構によるものである。
このプラズモン吸収による発色は金属中の自由電子が光電場により揺さぶられ粒子表面に電荷が現れ、非線形分極が生じるためであると考えられている。この金属ナノコロイドによる発色は、彩度や光線透過率が高く、耐久性に優れている。
例えば、金ナノコロイドは粒径に応じて青、青紫、赤紫、金色などを示す。製造法としては、例えば金属化合物を溶媒に溶解し、高分子量顔料分散剤を添加した後、金属に還元して前記高分子量顔料分散剤で保護されたナノコロイド粒子を形成し、その後前記溶媒を除去して固体ゾルとする方法を挙げることができる。
【0038】
本発明において用いる金属ナノコロイド含有導電性インクジェットインクは、熱硬化型、光硬化型、電子線硬化型などのバインダを用いたインクでもよく、また金属ナノコロイドを適当な分散安定剤により溶媒あるいはバインダに分散させたインクでもよい。このような溶媒としては通常のインクジェットインクに使用する水、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。この他に、pH調整剤、粘度調剤、表面張力調整剤(界面活性剤)、金属封鎖剤、防菌防カビ剤、分散剤などを含有させることができる。
【0039】
本発明において用いる前記水溶性有機溶媒としては、例えば具体的には、本発明の導電性インクジェットインク受容層形成用インクのビヒクルとして使用する前記沸点100℃以上のグリコール系溶剤あるいはこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
【0040】
通常のインクジェットインクには、着色成分として、アントラキノン系、ベンゾキノン系、ナフトキシキノン系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、キノリン系、インジゴイド系、アジン系、オキサジン系、チアジン系およびメチン系染料からなる群から選ばれた少なくとも1種のアニオン性インクが用いられている。
これらの着色成分を本発明で用いる金属ナノコロイド含有インクジェットインクに添加することができる。
【0041】
本発明において用いる導電性インクジェットインク中に配合する金属ナノコロイドの量は特に限定されるものではないが、加熱後の導電回路の抵抗が、加熱前の導電回路の抵抗の1/50,000〜1/100,000となるように所定量の金属ナノコロイドを配合することが好ましい。
【0042】
金属ナノコロイドの平均粒子径は通常およそ1〜1000nmであり本発明においてはいずれも使用できる。平均粒子径が小さいものは導電性がよく好ましいが1nm未満のものは作成が難しく、一方、平均粒子径が50nmを超えるとインクジェットプリンタのノズルが詰まる恐れがあり、金属ナノコロイドの平均粒子径が1〜50nmであるとインクジェットプリンタのノズルが詰まることなく、連続して安定して導電性に優れた導電回路を基材面に形成できるので好ましく使用できる。
【0043】
本発明で用いる基材の素材は、導電回路を形成できる絶縁性平面および/または絶縁性曲面を有する無機物および/または有機物を挙げることができる。
これらの基材の中でも、シート基材(フィルム基材を含む)は本発明において好ましく使用できる。シート基材の素材としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの無機または有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙(例えば、上質紙、中質紙、合成紙、各種再生紙、アート紙、コート紙、ミラーコート紙、コンデンサー紙、パラフィン紙、その他の紙の他に、それにオーバーコート層(保護層)をもつ用紙など)あるいはこれらを組み合わせたもの、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した複合シート、ポリアミド系樹脂シート、ポリエステル系樹脂シート、ポリオレフィン系樹脂シート、ポリイミド系樹脂シート、エチレン・ビニルアルコール共重合体シート、ポリビニルアルコール系樹脂シート、ポリ塩化ビニル系樹脂シート、ポリ塩化ビニリデン系樹脂シート、ポリスチレン系樹脂シート、ポリカーボネート系樹脂シート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂シート、ポリエーテルスルホン系樹脂シートなどのプラスチックシート、あるいはこれらにコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理およびオゾン処理などの表面処理を施したものなどを挙げることができる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0045】
(導電性インクジェットインクAの調製)
金ナノコロイド分散液(30質量%、固形分;15質量%)50質量部とエチレングリコールモノメチルエーテル15質量部、グリセリン5質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.5質量部、イソプロピルアルコール3質量部、それに蒸留水26.5質量部を混合撹拌して、金属ナノコロイド含有導電性インクジェットインクを得た。このインクは、粘度4.5mPa・s、表面張力46×10−3N/m、pH9.5、金属ナノコロイドの平均粒子径は10nmであった。
【0046】
(導電性インクジェットインクBの調製)
銀ナノコロイド分散液(30質量%、固形分;15質量%)50質量部とグリセリン/エチレングリコール50/50質量比で混合した液25質量部と、ヘキシレングリコール0.5質量部、テトラヒドロフルフリールアルコール3質量部、それに蒸留水21.5質量部を混合撹拌して、金属ナノコロイド含有導電性インクジェットインクを得た。このインクは、粘度3.1mPa・s、表面張力45×10−3N/m、pH9.3、金属ナノコロイドの平均粒子径は10nmであった。
【0047】
(浸透乾燥型導電性インクジェットインク受理層形成用インクAの調製)
予めロジン変性マレイン酸(商品名:テスポール1154(日立化成ポリマー社製))7.5質量部を溶解させたプロピレングリコール液65質量部に、シリカ微粒子(商品名:サイシリア310P(富士シリシア化学社製))5質量部を混練する。さらにこの液に、フレーク銀粉(商品名:FA−8−1(銅和鉱業社製))20質量部を混練する。これにロール転写性向上剤としてジエチレングリコール6質量部とグリセリン4質量部を加え三本ロールミルを使用して、混練して浸透乾燥型導電性インクジェットインク受理層形成用インクAを得た。
【0048】
(浸透乾燥型導電性インクジェットインク受理層形成用インクBの調製)
予めロジン変性マレイン酸(商品名:テスポール1154(日立化成ポリマー社製))5質量部を溶解させたジエチレングリコール液70質量部に、シリカ微粒子(商品名:NIPSIL(日本シリカ工業社製))7質量部を混練する。さらにこの液に、フレーク銀粉(商品名:FA−8−1(銅和鉱業社製))20質量部を混練する。これにロール転写性向上剤としてグリセリン3質量部を加え三本ロールミルを使用して、混練して浸透乾燥型導電性インクジェットインク受理層形成用インクBを得た。
【0049】
(実施例1)
浸透乾燥型導電性インクジェットインク受理層形成用インクAを用いて、樹脂凸版を使用し上質紙(70kg連量)上に2.5g/m2 (固形分)になるようにオフセット印刷を行い、絶縁性のある導電性インクジェットインク受容層を形成した。この受容層上に導電性インクジェットインクAを、キャノン製インクカートリッジ 型番:BCI21(バブルジェット(登録商標)方式のインクジェットプリンタ 型番:BJC−430C用)に充填し、3〜5g/m2 (固形分)になるように幅1mm×長さ100mmのパターン(導電回路)を印刷した。パターン両末端の抵抗値は120kΩであった。これを空気を循環させた100℃のオーブン内にて30秒間加熱した。加熱後のパターン両末端の抵抗値は2.0Ωであった。この抵抗値であれば非接触ICタグやRF−IDなどの非接触型データ送受信体(アンテナ)としての利用が可能である。
【0050】
(実施例2)
実施例1で使用した導電性インクジェットインクAの代わりに導電性インクジェットインクBを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。パターン(導電回路)両末端の抵抗値は当初は145kΩであった。これを、空気を循環させた100℃のオーブン内にて30秒間加熱した。加熱後のパターン両末端の抵抗値は2.9Ωであった。この抵抗値であれば非接触ICタグやRF−IDなどの非接触型データ送受信体(アンテナ)としての利用が可能である。
【0051】
(実施例3)
実施例1で使用した浸透乾燥型導電性インクジェットインク受理層形成用インクAの代わりに浸透乾燥型導電性インクジェットインク受理層形成用インクBを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。パターン(導電回路)両末端の抵抗値は当初は105kΩであった。これを、空気を循環させた100℃のオーブン内にて30秒間加熱した。加熱後のパターン両末端の抵抗値は1.8Ωであった。この抵抗値であれば非接触ICタグやRF−IDなどの非接触型データ送受信体(アンテナ)としての利用が可能である。
【0052】
(実施例4)
実施例3で使用した導電性インクジェットインクAの代わりに導電性インクジェットインクBを用いた以外は実施例3と同様の操作を行った。パターン(導電回路)両末端の抵抗値は当初は134kΩであった。これを、空気を循環させた100℃のオーブン内にて30秒間加熱した。加熱後のパターン両末端の抵抗値は2.4Ωであった。この抵抗値であれば非接触ICタグやRF−IDなどの非接触型データ送受信体(アンテナ)としての利用が可能である。
【0053】
(比較例1)
実施例1で使用した浸透乾燥型導電性インクジェットインク受理層形成用インクAで使用したフレーク銀粉の代わりにシリカ微粒子(商品名:サイシリア310P(富士シリシア化学社製))25質量部に変更した浸透乾燥型導電性インクジェットインク受理層形成用インクを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。パターン(導電回路)両末端の抵抗値は当初は7076kΩであった。これを、空気を循環させた100℃のオーブン内にて30秒間加熱した。加熱後のパターン両末端の抵抗値は106Ωであった。この抵抗値では非接触ICタグやRF−IDなどの非接触型データ送受信体(アンテナ)としての利用が不可能である。
【0054】
(比較例2)
実施例1で形成した導電性インクジェットインク受容層を形成しなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。空気を循環させた100℃のオーブン内にて30秒間加熱した後のパターン(導電回路)両末端は通電しなかった。パターン(導電回路)をCCDカメラ型実体顕微鏡(型番:VH7000(キーエンス社製))で観察すると(倍率200倍)、インジェットされたドット同士が連結されていなかった。これでは非接触ICタグやRF−IDなどの非接触型データ送受信体(アンテナ)としての利用が不可能である。
【0055】
【発明の効果】
本発明の請求項1は、沸点100℃以上のグリコール系溶剤を主成分として含むビヒクルに対して、導電性微粒子を配合したことを特徴とする導電性インクジェットインク受容層形成用インクに関するものであり、本発明のインクを用いて公知の印刷法などによりシート基材などの基材面の所定部に導電性インクジェットインク受容層を容易に形成でき、そして導電性インクジェットインクを用いることにより、導電回路形成用パターンを電子信号画像信号にて形成し、形成した電子信号画像信号に基づいてインクジェットプリンタにより、形成した受容層上に導電性および接着性に優れた導電回路を容易にシャープに形成できるという顕著な効果を奏する。
形成された前記受容層中には導電性微粒子が存在するが導電性微粒子相互は離れており絶縁性を有する。そして、前記受容層上に導電回路を形成した後、加熱することにより受容層中の導電性微粒子と導電回路との接触が向上するなどの相互作用により導電回路の導電性が一層向上し、より導電性に優れた導電回路とすることができる。
【0056】
本発明の請求項2は、請求項1記載のインクにおいて、インク全体に対して導電性微粒子を10〜40質量%配合したことを特徴とするものであり、導電性微粒子の配合量を上記範囲内とすることにより、インク塗工性および受容層の強度や接着性を損なうことなくより導電性に優れた導電回路を得ることができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0057】
本発明の請求項3は、基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1あるいは請求項2記載のインクを用いて形成されたインクジェットインク受容層上に導電性インクジェットインクを用いて導電回路が形成されてなることを特徴とする導電回路を有するシートであり、構成が簡単で安価であり、大量生産に応じることもできる上オンデマンドで少量・多種類の注文にも応じることもでき、しかも、大きさや形状などを自由に変えた導電性および接着性に優れた導電回路を有するので、非接触ICタグなどの薄形の情報送受信型記録メディアなどのRF−IDメデイア、ペーパーコンピュータなどに適用可能であるという顕著な効果を奏する。
【0058】
本発明の請求項4は、請求項3記載のシートにおいて、導電性インクジェットインクが金属ナノコロイドを含有する導電性インクジェットインクであることを特徴とするものであり、インクジェットプリンタのノズルを詰まらせることなく、連続して安定して容易によりシャープに導電回路を形成できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(F)は、本発明の導電回路を有するシートを製造する工程を説明する説明図である。
【図2】(A)〜(B)は、図1(B)のX−X断面説明図であり、(A)は導電性インクインクジェットインクを用いてインクジェットプリンタにより印刷してアンテナ部2を形成した後の状態を摸式的に示し、(B)は加熱後の状態を摸式的に示す。
【符号の説明】
1 基材
2 アンテナ部
3 絶縁部
4 ジャンパ部
5 ICチップ
6 ポリマー部材
7 導電性インクジェットインク受容層
8 導電性微粒子
Claims (4)
- 沸点100℃以上のグリコール系溶剤を主成分として含むビヒクルに対して、導電性微粒子を配合したことを特徴とする導電性インクジェットインク受容層形成用インク。
- インク全体に対して導電性微粒子を10〜40質量%配合したことを特徴とする請求項1記載のインク。
- 基材の少なくとも一方の面の所定部に請求項1あるいは請求項2記載のインクを用いて形成されたインクジェットインク受容層上に導電性インクジェットインクを用いて導電回路が形成されてなることを特徴とする導電回路を有するシート。
- 導電性インクジェットインクが金属ナノコロイドを含有する導電性インクジェットインクであることを特徴とする請求項3記載のシート。
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