JP2004284375A - 高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】低発熱性及び高破壊強度を保持しながら、耐摩耗性及び耐久性を向上させた航空機用ラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】ベルトプライが、芳香族ポリアミド系繊維と脂肪族ポリアミド系繊維を混合して撚糸した繊維からなり、被覆ゴムが、(1)天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムの70〜100部、(2)溶液重合により得られ分子内にスズ原子を有し、結合スチレン量が3〜10%であり、且つポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が40%以下であるスチレン−ブタジエン共重合体ゴムの30〜0部、及び(3)窒素吸着比表面積が65〜92m2/gでDBP吸油量が70〜132×10−5m3/kgであるカーボンブラックの40〜65部、からなるゴム組成物であって、100%モジュラスが5.0〜10.0MPa、伸びが300%以上であるタイヤ。
【選択図】 なし
【解決手段】ベルトプライが、芳香族ポリアミド系繊維と脂肪族ポリアミド系繊維を混合して撚糸した繊維からなり、被覆ゴムが、(1)天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムの70〜100部、(2)溶液重合により得られ分子内にスズ原子を有し、結合スチレン量が3〜10%であり、且つポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が40%以下であるスチレン−ブタジエン共重合体ゴムの30〜0部、及び(3)窒素吸着比表面積が65〜92m2/gでDBP吸油量が70〜132×10−5m3/kgであるカーボンブラックの40〜65部、からなるゴム組成物であって、100%モジュラスが5.0〜10.0MPa、伸びが300%以上であるタイヤ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高速重荷重用ラジアルタイヤに関し、特に、高内圧で高速走行時の径成長を抑制し、抗破壊特性及び耐久寿命を向上させた航空機用に好適な空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の高速重荷重用ラジアルタイヤ、特に航空機用ラジアルタイヤは、高い使用内圧及び高速回転時の遠心力の作用によって、トレッド面の径方向のせり出しが大きい。この様にトレッド面が径方向にせり出すと、これに伴ってトレッドゴムがタイヤ周方向に引き伸ばされた状態となり、タイヤが異物を乗り越える際にトレッドを損傷しない性質、所謂「包み込み(エンベロープ)性」に乏しく、踏み付けた異物がトレッドゴム内に容易に侵入し、タイヤを損傷し易いという問題がある。また、この径方向のせり出しは、タイヤ幅方向中央部において、タイヤ幅方向両端部(ショルダー)付近よりも大きくなることによって生じる径差が、回転中のタイヤの接地面で引きずり現象を起こし、トレッド肩領域(ショルダー部)付近がタイヤ中央部よりも早く摩耗してタイヤの寿命を短縮させる、所謂、「偏摩耗現象」が起こるという問題もある。
【0003】
上記偏摩耗を改善する従来手法として、タイヤのトレッド部のクラウン形状を変更して、タイヤ踏面の接地形状を、タイヤ中央部よりショルダー部付近で大きくする、所謂「蝶々型」とすることが考案されている。このクラウン形状により、
タイヤショルダー部付近での接地圧が高まり、引き摺り現象は緩和され耐摩耗性は改善されるが、タイヤショルダー部での発熱が非常に大きくなり、タイヤの耐久寿命を低下させるという好ましくない結果を齎している。
【0004】
上記のトレッドの膨出変形を抑制してトレッドの摩耗特性を改善し、併せて、エンベロープ性を向上させる従来の手法としては、図2の横断面図で例示する様に、カーカス層16のクラウン域とトレッドゴム層30との間に配設されるベルト層20を、広幅ベルトプライからなる従来一般の主ベルト層26と、この主ベルト層26の外周側に付加した、狭幅ベルトプライからなる副ベルト層28とで構成し、これにより、主ベルト層26の中央部に配設した上記副ベルト層28をもってベルト剛性を高め、特に、トレッド中央域の膨出変形を拘束する技術から生まれた空気入りラジアルタイヤ(102)が考えられている。
【0005】
また、タイヤの幅方向中央部の内圧によるせり出しを抑制するために、従来より用いられる手法としては、プライコードを比較的弾性率の高い芳香族ポリアミド系のコードに置き換えることがある(例えば、特許文献1参照)。この芳香族ポリアミド系コードは、これまで航空機用タイヤに一般に用いられてきた脂肪族ポリアミドと比較して低伸び率領域においても高い張力を発揮して内圧を保持するため、タイヤのせり出しを効果的に抑制することができるとされている。
【0006】
尚、タイヤの幅方向中央部のせり出しを抑制するための従来法として、例えば、ベルトに狭幅強化層(コードはスチール)を追加して配置した空気入りラジアルタイヤが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、その他の従来例として、有機繊維からなるベルトの最外層にガラス、金属、アラミドの様な高強度コードで補強したコードによって構成された補強層を設けた空気入りラジアルタイヤが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
これらの従来の発明は、張力の大きいベルトを更に追加するものであった。しかしながら、図2に示す従来技術に依れば、ベルト層の総厚みが最も厚くなるトレッド中央域に所要のゴム厚みH(ゴムのみの厚みであり、コードは除く)を確保することにより、トレッド側部域のゴム厚みH0が厚くなり過ぎるためタイヤ重量の増加が余儀なくされる他、トレッド側部域の発熱量が増大するため、高速耐久性が低下するという問題があった。
【0008】
また、従来のベルト構造において、ベルトプライに比較的高弾性なコードを使用するだけでは、存分にそのコード特性を活かした性能を発揮できず、また、使用する部材量を極小化しなければならないという軽量化の課題との両立が困難であった。そもそも航空機用タイヤは、元々ベルト枚数が多いために枚数を増やす構成は避けたく、また転動する際に大きな遠心力がかかることからトレッド部の質量は軽くしたい要求がある。
【0009】
従って、これらを克服するためには、コードの特性を活かせる無駄のない新たなベルト配置及び構造を採用することが必要となる。本発明は上記事実を考慮して、トレッド面の径方向成長を抑制し、異物等のカットに対する耐久性を向上させ、同時に軽量化も達成することのできる航空機に好適な空気入りラジアルタイヤのベルト配置構造を提供することが目的である。
【0010】
更に、航空機に用いられる重荷重用空気入りタイヤにおいて、耐摩耗性を向上させ、タイヤの寿命を長くするには、トレッドの剛性を向上させると共に、外傷による寿命の低下を抑制することと、走行により繰り返し加わる歪によるトレッドゴムの温度上昇を抑制することも重要である。従来、剛性を向上させるためには、例えば、カーボンブラックの充填量の増加、樹脂の添加量の増加、硫黄などの加硫剤や加硫促進剤の増量などの処置が採用されている。しかしながら、カーボンブラックの充填量を増加すると、耐摩耗性は向上するものの、低発熱性能及び抗破壊性が悪化するのを免れない。また、硫黄などの加硫剤や加硫促進剤の増量は、低発熱性能や耐摩耗性はあまり変わらず、むしろ抗破壊性が低下し、樹脂の添加量の増加は、抗破壊性は向上するものの、耐摩耗性及び低発熱性能が低下するという問題があった。
【0011】
そこで、重荷重用空気入りタイヤのトレッドゴムには、耐摩耗性と低発熱性能を高いレベルで両立させるために、一般に、天然ゴムなどのイソプレン系ゴムをベースとし、補強用充填材としてカーボンブラック/シリカ併用系を配合することが行われている。しかしながら、ゴム成分としてイソプレン系ゴムを主体とするものは、過加硫による加硫戻りに起因して弾性率が低下し、低発熱性能が悪化しやすく、耐摩耗性も低下するなど、好ましくない事態を招来する。
また、重荷重用タイヤの低発熱性能を改良するために、前記配合において、更に5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリンに代表される低ロス化剤(低発熱性付与剤)を加えることが行われている。しかしながら、これらの低ロス化剤では、加硫度依存性を有し、発生する過加硫によって、弾性率が低下し、低発熱性能の改良効果が充分に発揮されにくいという問題があった。
【0012】
以上の問題を解決する手法として、天然ゴムやイソプレンゴムからなるゴム成分に、溶液重合により得られる変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、及びヒドラジド化合物を配合してなるトレッド用ゴム組成物が開示され、トラックやバス用のタイヤにおいて、耐摩耗性や低発熱性能及び抗破壊性を向上させる効果が得られたと記載されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、特に航空機用の重荷重用ラジアルタイヤにおいては、上記ゴム組成物のみでの改善の効果には限界があり、更なる高性能材料と該材料の特徴を生かしたベルト層構造の開発が強く要望されている。
【0013】
【特許文献1】
特開昭61−178204号公報
【特許文献2】
特開平8−58310号公報
【特許文献3】
USP4216813号明細書
【特許文献4】
特開2002−146102号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な状況下で、抗破壊特性及び低発熱性能を向上させ、更に耐摩耗性、特に耐偏摩耗性を改良した、トレッドゴムとして好適なゴム組成物を適用してなる重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ゴム成分として、溶液重合により得られ且つ分子内に少なくとも一つのスズ原子を有する特定の変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含み、且つ特定の窒素吸着比表面積及びDBP吸油量を有するカーボンブラックで補強されたゴム組成物であって、更にそのモジュラス(M100)及び破断伸び(Eb)を特定することにより、上記目的に適合し得ることを見出し、本発明を完成したものである。即ち、本発明は、
【0016】
<1> ベルト層を構成する少なくとも1枚のベルトプライが、芳香族ポリアミド系繊維と脂肪族ポリアミド系繊維を混合して撚糸した有機繊維をゴム被覆したコードからなり、該ベルト被覆ゴムが、(1)天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムの70〜100質量部、(2)溶液重合により得られ分子内に少なくとも一つのスズ原子を有し、分子内の結合スチレン含量が3〜10質量%であり、且つポリブタジエン鎖部の1,2−ビニル結合量が40質量%以下である変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの30〜0質量部、及び(3)窒素吸着比表面積が65〜92m2/gで且つDBP吸油量が70〜132×10−5m3/kgであるカーボンブラックの40〜65質量部、からなるゴム組成物であって、そのタイヤ周方向における100%伸長時のモジュラス(M100)が5.0〜10.0MPaの範囲にあり且つ破断伸び(Eb)が300%以上であることを特徴とする高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<2> 前記ゴム組成物を、少なくとも、ベルト層を構成するベルトプライの2枚以上からなる主ベルト層の被覆ゴムに適用したことを特徴とする上記<1>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<3> 前記ゴム組成物の100%伸長時のモジュラス(M100)が、ベルト層のタイヤ半径方向外側に所定のゴム厚みを隔てて配設された有機繊維コードからなる保護ベルトの被覆ゴムの100%伸長時のモジュラス(M100)より1.2〜1.5倍高いことを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<4> 前記ラジアルタイヤが、一対のビードコアと、一方のビードコアから他方のビードコアに向けてトロイド状に延びる少なくとも1枚以上のカーカスプライからなるカーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向外側のクラウン域外周面に有機繊維コードを含む少なくとも1枚以上のベルトプライからなるベルト層と、該ベルト層のタイヤ半径方向外側に踏面部を構成するトレッドゴム層と、を備えた空気入りラジアルタイヤであって、タイヤ赤道面位置P0での単位幅当りにおける上記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK0、タイヤ赤道面を中心として上記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での単位幅当りにおける上記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK2とした時に、K2<K0を満足する、ことを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<5> 前記ベルト層において、0.2≦K2/K0≦0.8を満足する、ことを特徴とする上記<4>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<6> 前記ベルト層において、前記有機繊維コードの積層厚みを前記タイヤ赤道面位置P0で最も厚くし、前記タイヤ赤道面位置P0での前記有機繊維コードの積層厚みをG0、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での前記有機繊維コードの積層厚みをG2としたときに、G2<G0を満足する、ことを特徴とする上記<4>又は<5>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<7> 前記ベルト層において、0.35≦G2/G0≦0.85を満足することを特徴とする上記<6>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<8> 前記ベルト層において、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での前記有機繊維コードの積層厚みをG2とした時に、前記ベルト層には、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2よりもタイヤ幅方向外側の領域において、前記積層厚みG2よりも積層厚みの厚い部分が設けられている、ことを特徴とする上記<4>〜<7>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<9> 前記ベルト層は、引張破断強度が6.3cN/dtex以上、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜9.3%とされた有機繊維コードを含むベルトプライの少なくとも2枚以上で構成された主ベルト層を有する、ことを特徴とする上記<4>〜<8>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<10> 前記主ベルト層のタイヤ幅方向端部では、少なくとも前記ベルトプライが2層以上積層されている、ことを特徴とする上記<9>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<11> 前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系の繊維から構成され、下撚り係数が0.12〜0.85、上撚り係数が0.40〜0.80とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする上記<9>又は<10>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<12> 前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とを含み、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維との質量比が100:10〜170とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする上記<9>〜<11>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<13> 前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系のコードと脂肪族ポリアミド系のコードとが撚り合わされ、かつ前記芳香族ポリアミド系のコードの下撚り係数が0.12〜0.85とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする上記<12>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<14> 前記主ベルト層は、タイヤ赤道面に対して略0°の角度で螺旋状に巻回された有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする上記<9>〜<13>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<15> 前記主ベルト層は、タイヤ赤道面に対して2〜25°の角度で傾斜し、それぞれのプライ端で反対方向に傾斜するように同一面内で屈曲されてタイヤ周方向にジグザグ状に延びる有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする上記<9>〜<14>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【0017】
【発明の実施の形態】
(ゴム組成物)
本発明の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤのベルト層を構成する少なくとも1枚のベルトプライは、芳香族ポリアミド系繊維と脂肪族ポリアミド系繊維を混合して撚糸した有機繊維をゴム被覆したコードからなり、該ベルト被覆ゴムに適用されるゴム組成物は、(1)天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムの70〜100質量部、(2)溶液重合により得られ分子内に少なくとも一つのスズ原子を有し、分子内の結合スチレン含量が3〜10質量%であり、且つポリブタジエン鎖部の1,2−ビニル結合量が40質量%以下である変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの30〜0質量部、及び(3)窒素吸着比表面積が65〜92m2/gで且つDBP吸油量が70〜132×10−5m3/kgであるカーボンブラックの40〜65質量部、からなるゴム組成物であって、そのタイヤ周方向における100%伸長時のモジュラス(M100)が5.0〜10.0MPaの範囲にあり且つ破断伸び(Eb)が300%以上であることを特徴とする。
【0018】
上記(1)の天然ゴムとしては、シートゴムでもブロックゴムでもよく、RSS#1〜#5の総て及びTSRの総てのグレードを用いることができる。上記(1)の合成イソプレンゴム(IR)は、イソプレンモノマーの重合により得られたものであり、中でもシス1,4−結合が98%前後のIRは、天然ゴムに極めて類似の分子構造を有するため、天然ゴムと同等の物性を示し好ましい。
【0019】
上記(2)の変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムは、溶液重合により得られ、且つ分子鎖の重合開始末端又は重合活性末端の少なくとも一方の末端、又は分子鎖中にスズ原子を導入し、変性したSBR系ゴムである。この様な変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムは、例えば、以下に示す方法により好ましく製造することができる。即ち、
その第1及び第2の方法は、原料として1,3−ブタジエン及びスチレンを用い、アルカリ金属化合物好ましくはリチウム化合物を重合開始剤とし、溶液重合(アニオン重合)させることにより、末端が重合活性末端であるスチレン−ブタジエン共重合体からなるベースポリマーが得られる。この様にして得られたベースポリマーはスズ化合物で変性することにより、所望の変性スチレン−ブタジエン共重合体を得ることができる。
【0020】
第3の方法は、原料として1,3−ブタジエン及びスチレンを用い、スズ原子を有するアルカリ金属化合物好ましくはリチウム化合物を重合開始剤とし、溶液重合(アニオン重合)させることにより、末端が重合活性末端であるスチレン−ブタジエン共重合体からなるベースポリマーが得られる。続いて、この活性末端は、スズ化合物、アルコキシシラン化合物、窒素含有化合物などの変性剤により変性される。この場合、変性剤を使用せずに反応を停止してもよい。
【0021】
第4の方法は、原料として1,3−ブタジエン及びスチレンを用い、スズ原子と窒素原子とを有するアルカリ金属化合物好ましくはリチウム化合物を重合開始剤とし、溶液重合(アニオン重合)させることにより、分子中にスズ原子と窒素原子とを導入したスチレン−ブタジエン共重合体が得られる。
第5の方法は、原料として1,3−ブタジエン、スチレン及びスズ原子含有化合物(モノマー)を用い、アルカリ金属化合物好ましくはリチウム化合物を重合開始剤とし、溶液重合(アニオン重合)させることにより、末端が重合活性末端であるスチレン−ブタジエン共重合体からなるベースポリマーが得られる。続いて、この活性末端は、スズ化合物、アルコキシシラン化合物、窒素含有化合物などの変性剤により変性される。この場合、変性剤を使用せずに反応を停止してもよい。
上記の方法は適宜組み合わせて行うことができる。また、上記第3から第5の方法においては、変性剤による末端変性工程を行うことなく、スズ原子が導入された共重合体を得ることができる。
【0022】
上記第1、第2及び第5の方法において、重合開始剤のリチウム化合物としては、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端がヒドロカルビル基であるスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン又はブタジエンのモノマー単位中にスズ原子を導入した共重合体を含む)のベースポリマーが得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有するスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン又はブタジエンのモノマー単位中にスズ原子を導入した共重合体を含む)のベースポリマーが得られる。ここで、ベースポリマーとは、反応停止前の活性末端を有する共重合体を意味する。
【0023】
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられるが、これらの中でも、n−ブチルリチウムが好ましい。
【0024】
一方、リチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムビス−2−エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。これらの中で、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが好適である。
【0025】
また、前記第3の方法において、重合開始剤に用いられるリチウム化合物としては、トリブチルスズリチウム、トリオクチルスズリチウムなどのトリオルガノスズリチウム化合物が好ましく用いられる。更に、前記第4の方法において、重合開始剤に用いられるスズ原子と窒素原子とを有するリチウム化合物としては、下記一般式(I)で表されるトリオルガノアミドスズリチウム、又は下記一般式(II)で表されるトリオルガノイミドスズリチウムが好ましく用いられる。
【0026】
【化1】
〔式(I)中、R1とR2は炭素数1〜20の脂肪族、脂環族、芳香族の炭化水素基から選ばれる基を表し、該基は同一であっても異なっていてもよい。〕
【0027】
【化2】
〔式(II)中、Xは次の構造基から選ばれる。X−I:(CR3R4)nからなる飽和型環状構造基、X−II:(R5R6)m−Y−(R5R6)l(但し、該YはNR7、O、又は炭素−炭素2重結合を有するイミン化合物である)。ここで、R3〜R6は水素及び炭素数1〜10の脂肪族、炭素数3〜10の脂環族、炭素数6〜10の芳香族の炭化水素基から選ばれる基を表し、また、R7は炭素数1〜10の脂肪族、炭素数3〜10の脂環族、炭素数5〜10の芳香族の炭化水素基から選ばれる基を表し、該基は同一であっても異なっていてもよい。nは3〜10の整数を表し、mとlの合計は2〜9の整数である。〕
【0028】
これらの中でも、好ましいトリオルガノアミドスズリチウムとしては、例えば、トリピロリジドスズリチウム、トリヘキサメチレンイミドスズリチウム、トリジエチルアミドスズリチウム、及びトリ(ジプロピルアミド)スズリチウム等が挙げられる。
【0029】
尚、上記において、トリオルガノアミドスズリチウムについては米国特許第5502129号明細書に記載されており、トリオルガノアミドスズリチウム及びトリオルガノイミドスズリチウムについては米国特許第5463003号明細書に記載されている。また、前記第5の方法として、目的とするスチレン−ブタヂエン共重合体は、スズ原子を有する第3モノマーを導入することによっても得ることができる。ここで、スチレンやブタヂエンと共重合される第3モノマーとしては、下記の一般式(III)又は(IV)で表される化合物が好適に用いられる。
【0030】
【化3】
〔式(III)中、R8〜R10は炭素数1〜30の脂肪族、脂環族又は芳香族の炭化水素基を表し、該基は同一であっても異なっていてもよい。〕
【0031】
【化4】
〔式(IV)中、R11(R12)C=CR13−、R14〜R17はベンゼン環に結合する基であり、R11〜R22は、水素原子又は炭素数1〜30の脂肪族、脂環族又は芳香族の炭化水素基を表し、該基は同一であっても異なっていてもよい。但し、R20〜R22はは水素原子を含まない。〕
【0032】
具体的には、前記一般式(III)で表される化合物としては、2−トリブチルスタニル−1,3−ブタジエン、2−トリオクチルスタニル−1,3−ブタジエン、2−トリシクロヘキシルスタニル−1,3−ブタジエン、2−トリフェニルスタニル−1,3−ブタジエン、2−ジブチルフェニルスタニル−1,3−ブタジエン、2−ジフェニルオクチルスタニル−1,3−ブタジエン等が挙げらる。また、前記一般式(IV)で表わされる化合物としては、m−ビニルベンジルトリブチルスズ、m−ビニルベンジルトリオクチルスズ、m−ビニルベンジルトリフェニルスズ、m−(1−フェニルビニル)ベンヂルトリブチルスズ、及びこれらのp−体、m−体/p−体の混合物などが好適に挙げられる。
【0033】
前記リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によってスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン又はブタジエンのモノマー単位中にスズ原子を導入した共重合体を含む)を製造する方法としては特に制限はなく、従来より公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、スチレンと1,3−ブタジエンを、前記有機リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的のスチレン−ブタジエン共重合体が得られる。この重合反応における温度は、通常−80〜150℃、好ましくは−20〜100℃の範囲で適宜に選定される。上記重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つ十分な圧力で操作することが望ましい。所望ならば更に高い圧力を用いることができ、この様な圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0034】
この様にして得られた、重合開始末端にヒドロカルビル基又は窒素含有基を有し、且つ他方の末端が重合活性である変性前のスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン又はブタジエンのモノマー単位中にスズ原子を導入した共重合体を含む)の該重合活性末端に、スズ化合物を反応させることにより、所望の変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムが得られる。
上記のスズ化合物としては、例えば、四塩化スズ、トリブチルスズクロリド、トリオクチルスズクロリド、ジオクチルスズジクロリド、ジブチルスズジクロリド、塩化トリフェニルスズなどが挙げられる。また、変性剤を使用せず反応を停止しても分子中にスズ原子が導入されている。
【0035】
本発明のゴム組成物に用いられる溶液重合SBRは、分子内に少なくとも1個のスズ原子を有し、分子内の結合スチレン含量が3〜10質量%であり、且つポリブタジエン鎖部の1,2−ビニル結合量が40質量%以下である変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムである。結合スチレン含量が上記範囲未満では、ゴムの硬度が不足となり、また上記範囲を越えると破断伸び及び発熱特性が悪化する。また、1,2−ビニル結合量が上記範囲を越えると破断伸び及び発熱特性の低下を招く。
【0036】
本発明のゴム組成物においては、前記成分(3)の補強材ないし充填材として、上述のゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積が65〜92m2/gで且つDBP吸油量が70〜132×10−5m3/kgであるカーボンブラックの40〜65質量部が配合される。上記特性のカーボンブラックを上記範囲で配合することにより、抗破壊物性や耐亀裂成長性及びモジュラス等を向上できる。尚、該カーボンブラックの配合量は、上記効果を高める為に、45〜60質量部の範囲がより好ましい。該カーボンブラックの配合量が40質量部に満たないと、上記改善効果が不十分であり、一方、該配合量が65質量部を越えて配合すると、抗破壊物性や耐亀裂成長性及び発熱特性の低下を来たす。
【0037】
本発明に用いるカーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積及びDBP吸油量が上記範囲を満足する物であれば特に制限はなく、具体的には、例えば、S315、N326(ISAF−LS)、N330(HAF)、N335、N339、N343、N347(HAF−HS)、N351、N356、N358、N375、N539、N550(FEF)、N582等のカーボンブラック等を挙げることができる。これらのカーボンブラックの中でも、高モジュラスと高破壊特性を両立させて向上させる観点より、N326(ISAF−LS)、N330(HAF)、N335、N339、N343、N347(HAF−HS)カーボンが好ましく、特にN330(HAF)とN326(ISAF−LS)カーボンがより好ましい。上記のカーボンブラックは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0038】
本発明のゴム組成物においては、所望により、更にシリカを配合することもできる。このシリカは、窒素吸着比表面積(N2SA)が160〜260m2/gの範囲にあり、且つジブチルフタレート吸油量(DBP)が180〜260mL/100gの範囲にあるものが好適である。この(N2SA)が160m2/g未満や(DBP)が180mL/100g未満では耐摩耗性が不充分になる恐れがあり、一方、(N2SA)が260m2/gを超えたり、(DBP)が260mL/100gを超えると分散不良を引き起こし、低発熱性能及び耐摩耗性が低下する原因となることがある。ここで、上記(N2SA)は、300℃で1時間乾燥した後、ASTM D4820−93に準拠して測定した値であり、(DBP)は、ASTM D2414−93に準拠して測定した値である。
【0039】
上記シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられるが、これらの中で、特に湿式シリカが好適である。本発明においては、このシリカは、前記(A)或いは(A)のゴム成分100質量部に対し、30質量部以下の範囲で配合されることが好ましい。この配合量が30質量部を超えると低発熱性能が低下する恐れがある。更に好ましいシリカの配合量は20質量部以下の範囲である。
【0040】
本発明のゴム組成物には、前記(1)及び(2)のゴム成分と(3)のカーボンブラックの他に、目的及び必要に応じて、更に、通常の工業用ゴム配合に常用される加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、酸化防止剤、プロセス油、軟化剤、その他ゴム配合剤を適宜に配合することができる。特に、100%伸長時の弾性率もしくはモジュラスを高めるために、ゴム成分100質量部に対して、加硫剤としての硫黄及び/又は含硫黄化合物を1〜8質量部、好ましくは2〜6質量部、より好ましくは2.5〜5質量部を配合することが望ましい。尚、上記の様に硫黄の配合量が多くてブルームの恐れがある場合には、使用する硫黄の一部或いは全部を不溶性硫黄(高分子タイプ)に置き換えることも望ましい。
【0041】
また、本発明のゴム組成物には、耐熱性や耐熱老化性及び動的貯蔵弾性率(E′)等を向上させる為に、ビスマレイミド化合物を配合するができる。該ビスマレイミド化合物としては、例えば、N,N′−1,2−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N′−(4,4′−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2、2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル]メタン等を挙げることができる。これらの中でも、N,N′−1,2−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンジマレイミドが好ましく、特にN,N′−(4,4′−ジフェニルメタン)ビスマレイミドが効果が顕著な点で更に好ましい。ビスマレイミド化合物の配合量は、ゴム成分100質量部に対して1〜3質量部が好ましく、また、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0042】
本発明のゴム組成物は、上述した配合からなるものであるが、更にその物性の内、特にタイヤ周方向における100%伸長時のモジュラス(M100)が5.0〜10.0MPaの範囲にあり且つ破断伸び(Eb)が300%以上であることを必要な要件とする。この100%伸長時のモジュラス(M100)が上記の範囲未満であると、高内圧で高速走行時のタイヤの径膨張を所定の値以下に抑制することができなくなり、また破断伸び(Eb)が300%未満であると、ベルト端部での亀裂の発生及び成長を抑制することができなくなる。
【0043】
尚、本発明の高速重荷重用ラジアルタイヤは、後述する様に、ベルト層のタイヤ半径方向外側に所定のゴム厚みを隔てて有機繊維コードからなる保護ベルトを配設することができるが、本発明の前記ゴム組成物の100%伸長時のモジュラス(M100)は、該保護ベルトの被覆ゴムの100%伸長時のモジュラス(M100)より1.2〜1.5倍ほど高いことが好ましい。上記モジュラス(M100)の比率が1.2倍未満では、保護ベルトの配設による緩衝効果が減少する懸念があり、また該比率が1.5倍を越えると、ベルト層と保護ベルトの間において剥離故障が生じる恐れがある。
【0044】
本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤは、この様なゴム組成物をベルト層のベルトプライ用の被覆ゴムとして用い、通常の加硫条件に従って加硫成形することにより、製造することができる。ここにおいて、本発明の前記ゴム組成物は、ベルト層を構成するベルトプライの総てに適用してもよいが、特に航空機用ラジアルタイヤにおいて、重量増及びコスト増を極力避けながら、高内圧で高速走行時の径成長を抑制し抗破壊特性及び耐久寿命を向上させる観点より、該ベルト層を構成するベルトプライの2枚以上からなる主ベルト層の被覆ゴムに適用することが好ましい。
尚、本発明の上記タイヤに充填される気体には、空気或いは窒素などの不活性なガスが用いられる。
【0045】
(高速重荷重用ラジアルタイヤ)
上述したゴム組成物をタイヤのベルトゴムに適用した、本発明の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤについて、以下に詳細に説明する。
本発明者等が、ベルト層の張力負担を詳細に調べた結果、図3のグラフに示すように、100%内圧(TRA規定内圧)の無負荷状態では1点鎖線の様な分布になっていた。尚、図3において、縦軸は張力、横軸はベルト幅方向の位置、SBWはベルト層の最大幅を示す。
ところで、航空機用タイヤの場合、無負荷状態において、規定内圧の400%の耐圧性が必要である。該400%内圧充填時の張力分布を調べた結果、実線の様になることが分かった。一方、荷重負荷状態では、ベルト層の張力分布は2点鎖線のようになることが分かった。このことから、該ベルト層は、両方の条件を満たす強度を有することが必要となることが分かる。
発明者等は種々の実験、調査から、無負荷時の張力に対し、赤道面の強力をベルト層の最大幅の2/3の位置の強力よりも大きく規定することで、径成長の抑制と質量減の両立を達成できることを見出した。
請求項4に記載の発明は上記事実に鑑みてなされたものであって、一対のビードコアと、一方ビードコアから他方のビードコアに向けてトロイド状に延びる少なくとも1枚以上のカーカスプライからなるカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ半径方向外側のクラウン域外周面に、有機繊維コードを含む少なくとも1枚以上のベルトプライからなるベルト層と、該ベルト層のタイヤ半径方向外側に踏面部を構成するトレッドゴム層と、を備えた空気入りラジアルタイヤであって、タイヤ赤道面位置P0での単位幅当りにおける前記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK0、タイヤ赤道面を中心として前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での単位幅当りにおける前記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK2としたときに、K2<K0を満足する、ことを特徴としている。
次に、請求項4に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
請求項4に記載の空気入りラジアルタイヤでは、タイヤ赤道面位置P0での単位幅当りにおけるベルト層のタイヤ周方向の総強力K0を、タイヤ赤道面を中心としてベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での単位幅当りにおけるベルト層のタイヤ周方向の総強力より大きく設定したので、ベルト層の材料使用量を抑えつつ、標準内圧の充填時及び高速回転時に、トレッド中央域でのトレッドゴムの周方向伸張量を抑制し、タイヤの径成長を抑制することができる。トレッドゴムの周方向伸張量が抑制されることでゴムの緊張度合いが低下するので、異物の進入に対する抵抗力が増大し、また、万一異物が刺さり込んだ場合であっても、亀裂の成長を抑えることが出来る。
尚、請求項4に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前述した本発明のゴム組成物は、ベルト層のベルトプライの全体に適用されてもよく、少なくとも主ベルトプライに適用されてもよい。
【0046】
(総強力の定義)ここでいう総強力とは、ベルト層の周方向の強力を指しており、1本のコードの強力に単位幅当り(ここでは10mm)の本数を掛けて算出したものである。なお、コードが周方向に対して角度θで傾斜している場合の総強力は、上記単位幅当りの総強力にcosθを掛けて算出してものとする。また、タイヤ内のコードがタイヤ周方向に波型(ジグザグ状)に伸びている場合は、真っ直ぐに伸ばして強力を算出するのではなく、タイヤに埋設されている形状、即ち、波状に型付けされたものを周方向に伸ばした時の強力を算出する。
【0047】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、0.2≦K2/K0≦0.8を満足する、ことを特徴としている。
次に、請求項5に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
強力の比(K2/K0)が0.2を下回ると、ショルダー部付近に位置する有機繊維コードに過大な張力が負担されることによる耐圧性能の低下を引き起こす虞がある。一方、強力の比(K2/K0)が0.8を上回ると、2/3点に配置したベルトプライの有機繊維コードが有効に活用されず、空気入りラジアルタイヤの質量増につながる。従って、強力の比(K2/K0)は、0.2≦K2/K0≦0.8を満足することが好ましい。
【0048】
請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層において、前記有機繊維コードの積層厚みを前記タイヤ赤道面位置P0で最も厚くし、前記タイヤ赤道面位置P0での前記有機繊維コードの積層厚みをG0、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での前記有機繊維コードの積層厚みをG2としたときに、G2<G0を満足する、ことを特徴としている。
次に、請求項6に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での有機繊維コードの積層厚みG2を、タイヤ赤道面位置P0での有機繊維コードの積層厚みG0よりも大きく設定することで、K2<K0を容易に達成することができる。尚、有機繊維コードの積層厚みとは、ベルト層をタイヤ径方向断面で見たときのタイヤ径方向に積層されている有機繊維コードの総径寸法である。例えば、直径がAの有機繊維コードが12本積層されている場合には、積層厚みはA×12となる。
【0049】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、0.35≦G2/G0≦0.85を満足することを特徴としている。
次に、請求項7に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
有機繊維コードの積層厚みの比G2/G0が、0.35を下回ると、ショルダー部付近に位置する有機繊維コードに過大な張力が負担されることによる耐圧性能の低下を引き起こす虞がある。一方、有機繊維コードの積層厚みの比G2/G0が0.85を上回ると、2/3点に配置したベルトプライの有機繊維コードが有効に活用されず、空気入りラジアルタイヤの質量増につながる。従って、有機繊維コードの積層厚みの比G2/G0は、0.35≦G2/G0≦0.85を満足することが好ましい。
【0050】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜請求項7の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層において、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での前記有機繊維コードの積層厚みをG2とした時に、前記ベルト層には、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2よりもタイヤ幅方向外側の領域において、前記積層厚みG2よりも積層厚みの厚い部分が設けられている、ことを特徴としている。
次に、請求項8に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2よりもタイヤ幅方向外側の領域において、積層厚みG2よりも積層厚みの厚い部分を設けると、高速走行時、特にタイヤ幅方向の外力に晒される様な場合に、タイヤ両側部の大きな張力変動を柔軟に吸収せしめることが可能となり、空気入りラジアルタイヤの寿命を著しく低下させ得るスタンディングウエーブの発生を効果的に抑制することができる。
【0051】
請求項9に記載の発明は、請求項4〜請求項8の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層は、引張破断強度が6.3cN/dtex以上、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜9.3%とされた有機繊維コードを含むベルトプライの少なくとも2枚以上で構成された主ベルト層を有する、ことを特徴としている。
次に、請求項9に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
本発明の様に、ベルト層の強度分布を規定することで、径成長抑制と質量減の両立を達成できるが、ナイロンの様な低弾性のコードを用いると、径成長を抑えるために多層にする必要があり、タイヤの質量増につながる。
【0052】
請求項9に記載の空気入りラジアルタイヤでは、主ベルト層を、引張破断強度が6.3cN/dtex以上とされた高弾性の有機繊維コードを含む少なくとも2枚以上のベルトプライで構成することにより、必要な耐圧性能を満足することができる。ここで、有機繊維コードの伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率を1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率を2.2〜9.3%とすることにより、目標の径成長の抑制を容易に達成することができた。
その理由は、航空機用の空気入りラジアルタイヤでは、標準状態の内圧負荷時におよそ2.1cN/dtexのコード張力が加わり、高速走行時におよそ3.2cN/dtexのコード張力が加わるが、有機繊維コードの伸び率が上記範囲を上回る場合、タイヤ内圧充填時においてタイヤ径方向の膨出を効果的に抑えられず、異物の刺さり込みに対する性能を期待できなくなるからである。
一方、有機繊維コードの伸び率が上記範囲を下回る場合、ベルトプライのタガ効果が大き過ぎるため、カーカスプライが必要以上にタイヤ幅方向に膨出する結果となり好ましくない。
更に、有機繊維コードの伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率を0.2〜2.0%とした理由は、以下に述べる通りである。先ず、空気入りラジアルタイヤを加硫するに当り、航空機用空気入りラジアルタイヤの場合、通常タイヤモールド内にて生タイヤが0.2〜2.0%ほど伸張する様にタイヤ外径が設定される。これは、加硫時に生タイヤ内部より負荷される圧力によってタイヤを均等に伸張せしめることによってコードの方向を揃え、コード打込みのばらつきを是正するためのものである。然る該工程においては、0.3cN/dtex程度の比較的小さい張力が有機繊維コードに作用するが、この時の有機繊維コードの伸び率が2.0%より大きいと、コード性状是正の効果が薄く、また、伸び率が0.2%より小さい場合には、加硫時の膨張時にコード張力が大となり、有機繊維コードがタイヤ径方向内側のゴムに食い込むなどの不都合が生じるからである。
【0053】
(標準状態の内圧負荷時の定義)ここでの内圧及び荷重は、TRA YEARBOOK(2002年度版)に規定されている内圧、及び荷重を採用している。例えば、航空機用ラジアルタイヤ1270×455R22 32PRの場合、規定内圧は1620kPa、規定荷重は24860kgである。
尚、有機繊維コードは、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜1.5%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜6.5%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜8.3%のものがより好ましい。
【0054】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層のタイヤ幅方向端部では、少なくとも前記ベルトプライが2層以上積層されている、ことを特徴としている。
次に、請求項10に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
主ベルト層のタイヤ幅方向端部において、ベルトプライを2層以上積層することで、タイヤ走行時、特に、タイヤ幅方向に外力が作用する場合のように、タイヤ接地面の幅方向両端付近の有機繊維コードに激しい張力変動を伴う様な条件下においても、その弾力性を持って衝撃を効果的に分散することが可能となり、苛酷な使用条件下におけるタイヤの信頼性向上に効果的である。
【0055】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系の繊維から構成され、下撚り係数が0.12〜0.85、上撚り係数が0.40〜0.80とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴としている。
次に、請求項11に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
主ベルト層を構成する有機繊維コードを芳香族ポリアミド系の繊維から構成し、下撚り係数を0.12〜0.85、好ましくは0.17〜0.51、上撚り係数を0.40〜0.80とすることで、有機繊維コードを請求項6に規定の物性、即ち、引張破断強度を6.3cN/dtex以上、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率を0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率を1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率を2.2〜9.3%に設定することができる。
【0056】
(撚り係数の定義)ここでいう撚り係数とは、以下の式から算出されるものである。
NT=N×(0.139×D/ρ)1/2×10−3
N:有機繊維コード100mm当りの撚り数
D:総表示デシテックス(dtex)数
ρ:有機繊維コードの比重(g/cm3)
【0057】
請求項12に記載の発明は、請求項9〜請求項11の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とを含み、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維との質量比が100:10〜170とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴としている。
次に、請求項12に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
主ベルト層を構成する有機繊維コードを芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とから構成し、かつ芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維との質量比を100:10〜170とすることで、有機繊維コードを請求項9に規定の物性、即ち、引張破断強度が6.3cN/dtex以上、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜9.3%に設定することができる。
ここで、芳香族ポリアミド系の繊維の質量100に対して脂肪族ポリアミド系の繊維の質量が10を下回ると、上記荷重を負荷したときに、コード伸張が小さくなるため請求項9に規定の物性を達成することが困難となる。一方、芳香族ポリアミド系の繊維の質量100に対して脂肪族ポリアミド系の繊維の質量が170を上回ると、上記荷重を負荷したときに、コード伸張が大きくなるため請求項9に規定の物性を達成することが困難となる。
【0058】
尚、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維との質量比は、より好ましくは100:17〜86である。ここで、脂肪族ポリアミド系の繊維とは、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン繊維等である。ここで、有機繊維コードは、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とから構成されていればよく、芳香族ポリアミド系有機繊維コードと脂肪族ポリアミド系有機繊維コードとを撚り合わせてもよく、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とを合わせてから撚りをかけてもよい。
また、芳香族ポリアミド系有機繊維コードをA、脂肪族ポリアミド系有機繊維コードをBとした場合、AまたはBを下撚り(Z撚り)後、引き揃えて、下撚りと逆方向に上撚り(S撚り)をかけることで主ベルト層を構成する有機繊維コードを得ることができる。尚、下撚り時は、AまたはBをそれぞれ単独で撚ってもよいし、AとBを併せた後撚ってもよい。下撚り又は上撚り時のA、B又はAB(合糸)の本数は1本ずつでも複数本ずつでもよい。A又はB原糸の太さは同じでもよいし異なっていてもよい。混撚糸の形態は、芯となる糸の回りにループを作ったものなどでもよい。
【0059】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系のコードと脂肪族ポリアミド系のコードとが撚り合わされ、且つ前記芳香族ポリアミド系のコードの下撚り係数が0.12〜0.85とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴としている。
次に、請求項13に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
芳香族ポリアミド系のコードの下撚り係数を0.12〜0.85とすることにより、請求項9に規定の物性を達成することが容易になる。尚、芳香族ポリアミド系のコードの下撚り係数を0.17〜0.51とすることが更に好ましい。
【0060】
請求項14に記載の発明は、請求項9〜請求項13の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層は、タイヤ赤道面に対して略0°の角度で螺旋状に巻回された有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴としている。
次に、請求項14に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
有機繊維コードのタイヤ赤道面に対する角度が略0°に設定することで、主ベルト層の周方向剛性を確保するために使用する有機繊維コードの強力を最大限に活用することが可能となり、空気入りラジアルタイヤの軽量化を図ることが出来る。尚、ここでいう略0°とは、2.0°以下を含むものとする。
【0061】
請求項15に記載の発明は、請求項4〜請求項14の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層は、タイヤ赤道面に対して2〜25°の角度で傾斜し、それぞれのプライ端で反対方向に傾斜するように同一面内で屈曲されてタイヤ周方向にジグザグ状に延びる有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴としている。
次に、請求項15に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
タイヤ赤道面に対して2〜25°の角度で傾斜し、それぞれのプライ端で反対方向に傾斜するように同一面内で屈曲されてタイヤ周方向にジグザグ状に延びる有機繊維コードを含むベルトプライを用いることで、主ベルト層の周方向剛性を大きく低下させることなくしてタイヤ幅方向の剛性を確保することができ、その結果、優れた耐摩耗性を実現することが可能となる。
【0062】
タイヤ幅方向の剛性を確保することで、優れた耐摩耗性が実現される理由は以下の通りである。一般に、内圧充填時のタイヤ形状において、クラウンセンター部とショルダー部との径差が大きいと、いわゆる「引きずり摩耗」を起こす可能性が高くなる。タイヤ回転中に接地したセンター部とショルダー部は、接地長の分だけ回転するが、一定の周長に対応するタイヤ回転角度は径の小さいショルダー部の方が大きくなる。このため、路面を離れるまでにショルダー部は回転方向後方に拘束された状態となり、トレッド接地面内にてセンター部とショルダー部とが剪断変形する。この変形を是正するためにショルダー部が路面に対して相対的に滑る現象が「引きずり摩耗」である。
上記周方向位置のずれの大きさは、上記センター部とショルダー部との径差、及びトレッド面内の周方向剪断剛性に依存し、径差が大きく剪断剛性が小さいほど引きずり摩耗の程度が大きくなる。スパイラルベルトは、コードがほぼ周方向を向いているため、上記剪断剛性が小さく、引きずり摩耗に関しては有効ではない。これを補うため、タイヤ周方向に対する角度が大きいコードを有するベルトを追加することで、タイヤ幅方向剛性を確保でき、摩耗特性の改善が図られる。
ここで、有機繊維コードのタイヤ赤道面に対する角度が2°を下回ると、幾何学的にジグザグ状にベルトを巻回することが困難となる(即ち、スパイラル状になってしまう。)。一方、有機繊維コードのタイヤ赤道面に対する角度が25°を上回ると、有機繊維コードがタイヤ周方向に発揮し得る張力が相対的に減少し、空気入りラジアルタイヤの内圧を負担する効率が悪化する。
【0063】
(1つの実施形態)
以下、本発明の航空機用空気入りラジアルタイヤの1つの実施形態を、添付した図1に基づいて説明する。
図1に示す様に、本実施形態の航空機用の空気入りラジアルタイヤ101(タイヤサイズ:1270×455R22 32PR)は、ビード部12に丸型断面を有するビードコア14を備えていて、ゴム被覆された有機繊維コードがラジアル方向に配列された6枚のカーカスプライよりなるカーカス層16がこのビードコア14に係留されている。
カーカス層16のタイヤ半径方向外側のクラウン域外周面には、ベルト層20、ベルト層20のタイヤ径方向外側にはトレッド部を構成するトレッドゴム層(31〜33)が設けられている。また、カーカス層のタイヤ幅方向外側には、サイドウォール部25を構成するサイドゴム層27が設けられている。尚、本実施の形態では、ベルト層20は、タイヤ径方向内側の主ベルト層26と、主ベルト層26のタイヤ径方向外側に設けられる副ベルト層28、副ベルト層28のタイヤ径方向外側に設けられる保護ベルト層22とから構成されている。
【0064】
主ベルト層26は、複数枚のベルトプライ、本実施形態では、8枚のベルトプライから構成されている。主ベルト層26を構成するこれらプライは、複数本の有機繊維コードをゴム被覆することにより形成されている。これらの有機繊維コードは、引張破断強度を6.3cN/dtex以上とすることが好ましく、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜9.3%であることが好ましい。
本実施形態の有機繊維コードは、芳香族ポリアミド系の繊維から構成されている。有機繊維コードを芳香族ポリアミド系の繊維から構成した場合、下撚り係数は0.12〜0.85、好ましくは0.17〜0.51、上撚り係数は0.40〜0.80に設定することが好ましい。本実施形態では、芳香族ポリアミド系の繊維、具体的にはデュポン社製ポリアミド繊維(商品タイプ名:KEVLAR(R)29、公称繊度3000デニール。以後、適宜ケブラーと呼ぶ。)からなる有機繊維コードを用いている。なお、本実施形態では、有機繊維コードの傾斜角度はタイヤ赤道面CLに対して略0°である。なお、ベルトプライにおいて、有機繊維コードの打込み数は、4〜10本/10mmの範囲内が好ましい。本実施形態では、ベルトプライ26において、有機繊維コードの打込み数が6.3本/10mmである。
【0065】
本実施形態のように副ベルト層28を設ける場合、その範囲は、タイヤ赤道面CLから主ベルト層26の幅BWの140%位置までの範囲内に設けることが好ましい。本実施形態では、副ベルト層28の幅SBWは主ベルト層26の幅BWの103%である。副ベルト層28は、本実施形態では1枚のベルトプライから構成されている。本実施形態のベルトプライは、1又は複数本の有機繊維コードをゴム被覆して構成した帯状の細長体を準備し、この細長体をほぼ1周する毎に両プライ端間を1度だけ往復させながらタイヤ赤道面に対して2〜25°の角度で傾斜させて周方向に巻き付けると共に、このような巻付けを細長体間に隙間が生じないよう周方向にほぼ細長体の幅だけずらして多数回巻回することで形成している(以後、適宜無端ジグザグ巻きベルトと呼ぶ。)。この結果、ベルトプライ内には両プライ端において折り曲げ方向を変えることによりジグザグしながらほぼ周方向に延びる有機繊維コードが、該ベルトプライの全領域においてほぼ均一に埋設されることになる。
【0066】
このベルトプライには、主ベルト層26に含まれる有機繊維コードに対して弾性率が同等、あるいは小さい有機繊維コード(主ベルト層26の有機繊維コードに対して2.1cN/dtex荷重時の伸び率が略同等以上である有機繊維コード)を用いることが好ましい。副ベルト層28を構成するベルトプライに用いる有機繊維コードとしては、ナイロン等の脂肪族ポリアミド系の繊維からなるコード、アラミド等の芳香族ポリアミド系の繊維とナイロン等の脂肪族ポリアミド系の繊維とを含むコード等が好ましく、本実施形態では、ナイロンコード(撚り数:1260D//2/3、打込み数7.3本/10mm)を用いている。また、無端ジグザグ巻きベルトである本実施形態のベルトプライにおいて、その有機繊維コードの傾斜角度はタイヤ赤道面CLに対して2〜45°の範囲内が好ましく、本実施形態では8°に設定されている。
【0067】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ここで用いたビスマレイミド、老化防止剤、加硫促進剤等のゴム用薬品は一例を示すものであって、目的に応じて他の任意の配合薬品に変更することができる。尚、本実施例中の「部数」及び「%」は全て、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0068】
[実施例1〜3及び比較例1〜2]
下記の表1に示す配合処方に従って、実施例1〜3及び比較例1〜2のゴム組成物を調合して、250mLのラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を用いて混練した後、3インチロールで各ゴム組成物のシート物を作製した。次いで、温度150℃で、加硫反応によるトルクの上昇が最高値の90%に達するまでの時間(t90)の1.5倍にあたる加硫時間で加硫して、下記の物性測定用の供試サンプルを得た。
【0069】
【表1】
【0070】
上記の表1に記載の配合成分は、下記の仕様(スペック)のものである。
・溶液重合SBR………JSR(株)製の溶液重合SBR(スチレン含量:3〜10質量%、ビニル結合量:40質量%以下)
・カーボンブラック(A)………旭カーボン(株)製の「HAF」(窒素吸着比表面積:71m2/g、DBP吸油量:103×10−5m3/kg)
・カーボンブラック(B)………旭カーボン(株)製の「N326」(窒素吸着比表面積:84m2/g、DBP吸油量:75×10−5m3/kg)
また、使用したビスマレイミド、老化防止剤、加硫促進剤は下記のものである。
・ビスマレイミド(PBM)………三井化学(株)製の商品名「BMI−S」(N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド)
・老化防止剤(6PPD)………N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
・加硫促進剤(TBBS)………N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
【0071】
上記で得られた各加硫ゴム試料につき、以下の様に評価試験を実施して、その結果を下記の表2に記入した。
(1)引張り試験
JIS K6301(1995)に準拠して、室温(25℃)において、ダンベル3号の打抜きサンプルを用いて引張り試験を行い、100%伸張時のモジュラス(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。
【0072】
更に、上記表1に示す各配合のゴム組成物を、図1に示す航空機用空気入りラジアルタイヤ(サイズ:APR 1270×455R22 32PR)の主ベルト層(図1の26で示す。)のベルトプライに適用して、通常の航空機用ラジアルタイヤの製造プロセスに従って、供試用タイヤを作製し、下記の評価試験を実施した。
(2)ベルト端亀裂の評価
各供試タイヤにつき、正規リム(46×17R20/30)に組み付け、最大空気圧(12.7kg/cm2)の内圧を充填し、最大負荷能力の80%の荷重を負荷して、速度64.5km/hで4分間のドラム走行を1時間サイクルで800回実施した後、試験タイヤを解剖してベルトプライ端部の亀裂の有無を観察した。
【0073】
(3)タイヤ径成長率の評価
各供試タイヤにつき、正規リム(46×17R20/30)に組み付け、最大空気圧(12.7kg/cm2)の内圧を充填した時の、該内圧充填の前後のトレッドセンターの外径の増加率(%)を測定した。この外径増加率が小さい程、タイヤの径成長が抑制され好ましいことを意味する。
【0074】
【表2】
【0075】
上記の表2の結果から明らかな様に、本発明のゴム組成物(実施例1〜3)は、比較例のものに比べて、モジュラス及び破断特性に優れていることが判明した。また、これらのゴム組成物を主ベルトのプライ被覆ゴムに適用した本発明の航空機用ラジアルタイヤ(実施例1〜3)は、比較例のタイヤに比べて、耐亀裂性及び径膨張抑制に優れていることが実証された。
【0076】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物及びタイヤ構造をベルト層に適用することに依って、タイヤの径膨張が抑制され耐亀裂性が改善され、耐久寿命に優れた重荷重用空気入りラジアルタイヤ、特に航空機用ラジアルタイヤを提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る本発明の航空機用空気入りラジアルタイヤ(101)の断面図である。
【図2】従来例に係る空気入りラジアルタイヤ(102)の断面図である。
【図3】ベルト層にかかる張力を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は高速重荷重用ラジアルタイヤに関し、特に、高内圧で高速走行時の径成長を抑制し、抗破壊特性及び耐久寿命を向上させた航空機用に好適な空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の高速重荷重用ラジアルタイヤ、特に航空機用ラジアルタイヤは、高い使用内圧及び高速回転時の遠心力の作用によって、トレッド面の径方向のせり出しが大きい。この様にトレッド面が径方向にせり出すと、これに伴ってトレッドゴムがタイヤ周方向に引き伸ばされた状態となり、タイヤが異物を乗り越える際にトレッドを損傷しない性質、所謂「包み込み(エンベロープ)性」に乏しく、踏み付けた異物がトレッドゴム内に容易に侵入し、タイヤを損傷し易いという問題がある。また、この径方向のせり出しは、タイヤ幅方向中央部において、タイヤ幅方向両端部(ショルダー)付近よりも大きくなることによって生じる径差が、回転中のタイヤの接地面で引きずり現象を起こし、トレッド肩領域(ショルダー部)付近がタイヤ中央部よりも早く摩耗してタイヤの寿命を短縮させる、所謂、「偏摩耗現象」が起こるという問題もある。
【0003】
上記偏摩耗を改善する従来手法として、タイヤのトレッド部のクラウン形状を変更して、タイヤ踏面の接地形状を、タイヤ中央部よりショルダー部付近で大きくする、所謂「蝶々型」とすることが考案されている。このクラウン形状により、
タイヤショルダー部付近での接地圧が高まり、引き摺り現象は緩和され耐摩耗性は改善されるが、タイヤショルダー部での発熱が非常に大きくなり、タイヤの耐久寿命を低下させるという好ましくない結果を齎している。
【0004】
上記のトレッドの膨出変形を抑制してトレッドの摩耗特性を改善し、併せて、エンベロープ性を向上させる従来の手法としては、図2の横断面図で例示する様に、カーカス層16のクラウン域とトレッドゴム層30との間に配設されるベルト層20を、広幅ベルトプライからなる従来一般の主ベルト層26と、この主ベルト層26の外周側に付加した、狭幅ベルトプライからなる副ベルト層28とで構成し、これにより、主ベルト層26の中央部に配設した上記副ベルト層28をもってベルト剛性を高め、特に、トレッド中央域の膨出変形を拘束する技術から生まれた空気入りラジアルタイヤ(102)が考えられている。
【0005】
また、タイヤの幅方向中央部の内圧によるせり出しを抑制するために、従来より用いられる手法としては、プライコードを比較的弾性率の高い芳香族ポリアミド系のコードに置き換えることがある(例えば、特許文献1参照)。この芳香族ポリアミド系コードは、これまで航空機用タイヤに一般に用いられてきた脂肪族ポリアミドと比較して低伸び率領域においても高い張力を発揮して内圧を保持するため、タイヤのせり出しを効果的に抑制することができるとされている。
【0006】
尚、タイヤの幅方向中央部のせり出しを抑制するための従来法として、例えば、ベルトに狭幅強化層(コードはスチール)を追加して配置した空気入りラジアルタイヤが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、その他の従来例として、有機繊維からなるベルトの最外層にガラス、金属、アラミドの様な高強度コードで補強したコードによって構成された補強層を設けた空気入りラジアルタイヤが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
これらの従来の発明は、張力の大きいベルトを更に追加するものであった。しかしながら、図2に示す従来技術に依れば、ベルト層の総厚みが最も厚くなるトレッド中央域に所要のゴム厚みH(ゴムのみの厚みであり、コードは除く)を確保することにより、トレッド側部域のゴム厚みH0が厚くなり過ぎるためタイヤ重量の増加が余儀なくされる他、トレッド側部域の発熱量が増大するため、高速耐久性が低下するという問題があった。
【0008】
また、従来のベルト構造において、ベルトプライに比較的高弾性なコードを使用するだけでは、存分にそのコード特性を活かした性能を発揮できず、また、使用する部材量を極小化しなければならないという軽量化の課題との両立が困難であった。そもそも航空機用タイヤは、元々ベルト枚数が多いために枚数を増やす構成は避けたく、また転動する際に大きな遠心力がかかることからトレッド部の質量は軽くしたい要求がある。
【0009】
従って、これらを克服するためには、コードの特性を活かせる無駄のない新たなベルト配置及び構造を採用することが必要となる。本発明は上記事実を考慮して、トレッド面の径方向成長を抑制し、異物等のカットに対する耐久性を向上させ、同時に軽量化も達成することのできる航空機に好適な空気入りラジアルタイヤのベルト配置構造を提供することが目的である。
【0010】
更に、航空機に用いられる重荷重用空気入りタイヤにおいて、耐摩耗性を向上させ、タイヤの寿命を長くするには、トレッドの剛性を向上させると共に、外傷による寿命の低下を抑制することと、走行により繰り返し加わる歪によるトレッドゴムの温度上昇を抑制することも重要である。従来、剛性を向上させるためには、例えば、カーボンブラックの充填量の増加、樹脂の添加量の増加、硫黄などの加硫剤や加硫促進剤の増量などの処置が採用されている。しかしながら、カーボンブラックの充填量を増加すると、耐摩耗性は向上するものの、低発熱性能及び抗破壊性が悪化するのを免れない。また、硫黄などの加硫剤や加硫促進剤の増量は、低発熱性能や耐摩耗性はあまり変わらず、むしろ抗破壊性が低下し、樹脂の添加量の増加は、抗破壊性は向上するものの、耐摩耗性及び低発熱性能が低下するという問題があった。
【0011】
そこで、重荷重用空気入りタイヤのトレッドゴムには、耐摩耗性と低発熱性能を高いレベルで両立させるために、一般に、天然ゴムなどのイソプレン系ゴムをベースとし、補強用充填材としてカーボンブラック/シリカ併用系を配合することが行われている。しかしながら、ゴム成分としてイソプレン系ゴムを主体とするものは、過加硫による加硫戻りに起因して弾性率が低下し、低発熱性能が悪化しやすく、耐摩耗性も低下するなど、好ましくない事態を招来する。
また、重荷重用タイヤの低発熱性能を改良するために、前記配合において、更に5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリンに代表される低ロス化剤(低発熱性付与剤)を加えることが行われている。しかしながら、これらの低ロス化剤では、加硫度依存性を有し、発生する過加硫によって、弾性率が低下し、低発熱性能の改良効果が充分に発揮されにくいという問題があった。
【0012】
以上の問題を解決する手法として、天然ゴムやイソプレンゴムからなるゴム成分に、溶液重合により得られる変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、及びヒドラジド化合物を配合してなるトレッド用ゴム組成物が開示され、トラックやバス用のタイヤにおいて、耐摩耗性や低発熱性能及び抗破壊性を向上させる効果が得られたと記載されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、特に航空機用の重荷重用ラジアルタイヤにおいては、上記ゴム組成物のみでの改善の効果には限界があり、更なる高性能材料と該材料の特徴を生かしたベルト層構造の開発が強く要望されている。
【0013】
【特許文献1】
特開昭61−178204号公報
【特許文献2】
特開平8−58310号公報
【特許文献3】
USP4216813号明細書
【特許文献4】
特開2002−146102号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な状況下で、抗破壊特性及び低発熱性能を向上させ、更に耐摩耗性、特に耐偏摩耗性を改良した、トレッドゴムとして好適なゴム組成物を適用してなる重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ゴム成分として、溶液重合により得られ且つ分子内に少なくとも一つのスズ原子を有する特定の変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含み、且つ特定の窒素吸着比表面積及びDBP吸油量を有するカーボンブラックで補強されたゴム組成物であって、更にそのモジュラス(M100)及び破断伸び(Eb)を特定することにより、上記目的に適合し得ることを見出し、本発明を完成したものである。即ち、本発明は、
【0016】
<1> ベルト層を構成する少なくとも1枚のベルトプライが、芳香族ポリアミド系繊維と脂肪族ポリアミド系繊維を混合して撚糸した有機繊維をゴム被覆したコードからなり、該ベルト被覆ゴムが、(1)天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムの70〜100質量部、(2)溶液重合により得られ分子内に少なくとも一つのスズ原子を有し、分子内の結合スチレン含量が3〜10質量%であり、且つポリブタジエン鎖部の1,2−ビニル結合量が40質量%以下である変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの30〜0質量部、及び(3)窒素吸着比表面積が65〜92m2/gで且つDBP吸油量が70〜132×10−5m3/kgであるカーボンブラックの40〜65質量部、からなるゴム組成物であって、そのタイヤ周方向における100%伸長時のモジュラス(M100)が5.0〜10.0MPaの範囲にあり且つ破断伸び(Eb)が300%以上であることを特徴とする高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<2> 前記ゴム組成物を、少なくとも、ベルト層を構成するベルトプライの2枚以上からなる主ベルト層の被覆ゴムに適用したことを特徴とする上記<1>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<3> 前記ゴム組成物の100%伸長時のモジュラス(M100)が、ベルト層のタイヤ半径方向外側に所定のゴム厚みを隔てて配設された有機繊維コードからなる保護ベルトの被覆ゴムの100%伸長時のモジュラス(M100)より1.2〜1.5倍高いことを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<4> 前記ラジアルタイヤが、一対のビードコアと、一方のビードコアから他方のビードコアに向けてトロイド状に延びる少なくとも1枚以上のカーカスプライからなるカーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向外側のクラウン域外周面に有機繊維コードを含む少なくとも1枚以上のベルトプライからなるベルト層と、該ベルト層のタイヤ半径方向外側に踏面部を構成するトレッドゴム層と、を備えた空気入りラジアルタイヤであって、タイヤ赤道面位置P0での単位幅当りにおける上記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK0、タイヤ赤道面を中心として上記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での単位幅当りにおける上記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK2とした時に、K2<K0を満足する、ことを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<5> 前記ベルト層において、0.2≦K2/K0≦0.8を満足する、ことを特徴とする上記<4>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<6> 前記ベルト層において、前記有機繊維コードの積層厚みを前記タイヤ赤道面位置P0で最も厚くし、前記タイヤ赤道面位置P0での前記有機繊維コードの積層厚みをG0、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での前記有機繊維コードの積層厚みをG2としたときに、G2<G0を満足する、ことを特徴とする上記<4>又は<5>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<7> 前記ベルト層において、0.35≦G2/G0≦0.85を満足することを特徴とする上記<6>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<8> 前記ベルト層において、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での前記有機繊維コードの積層厚みをG2とした時に、前記ベルト層には、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2よりもタイヤ幅方向外側の領域において、前記積層厚みG2よりも積層厚みの厚い部分が設けられている、ことを特徴とする上記<4>〜<7>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<9> 前記ベルト層は、引張破断強度が6.3cN/dtex以上、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜9.3%とされた有機繊維コードを含むベルトプライの少なくとも2枚以上で構成された主ベルト層を有する、ことを特徴とする上記<4>〜<8>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<10> 前記主ベルト層のタイヤ幅方向端部では、少なくとも前記ベルトプライが2層以上積層されている、ことを特徴とする上記<9>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<11> 前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系の繊維から構成され、下撚り係数が0.12〜0.85、上撚り係数が0.40〜0.80とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする上記<9>又は<10>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<12> 前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とを含み、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維との質量比が100:10〜170とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする上記<9>〜<11>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<13> 前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系のコードと脂肪族ポリアミド系のコードとが撚り合わされ、かつ前記芳香族ポリアミド系のコードの下撚り係数が0.12〜0.85とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする上記<12>に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<14> 前記主ベルト層は、タイヤ赤道面に対して略0°の角度で螺旋状に巻回された有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする上記<9>〜<13>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
<15> 前記主ベルト層は、タイヤ赤道面に対して2〜25°の角度で傾斜し、それぞれのプライ端で反対方向に傾斜するように同一面内で屈曲されてタイヤ周方向にジグザグ状に延びる有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする上記<9>〜<14>のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【0017】
【発明の実施の形態】
(ゴム組成物)
本発明の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤのベルト層を構成する少なくとも1枚のベルトプライは、芳香族ポリアミド系繊維と脂肪族ポリアミド系繊維を混合して撚糸した有機繊維をゴム被覆したコードからなり、該ベルト被覆ゴムに適用されるゴム組成物は、(1)天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムの70〜100質量部、(2)溶液重合により得られ分子内に少なくとも一つのスズ原子を有し、分子内の結合スチレン含量が3〜10質量%であり、且つポリブタジエン鎖部の1,2−ビニル結合量が40質量%以下である変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの30〜0質量部、及び(3)窒素吸着比表面積が65〜92m2/gで且つDBP吸油量が70〜132×10−5m3/kgであるカーボンブラックの40〜65質量部、からなるゴム組成物であって、そのタイヤ周方向における100%伸長時のモジュラス(M100)が5.0〜10.0MPaの範囲にあり且つ破断伸び(Eb)が300%以上であることを特徴とする。
【0018】
上記(1)の天然ゴムとしては、シートゴムでもブロックゴムでもよく、RSS#1〜#5の総て及びTSRの総てのグレードを用いることができる。上記(1)の合成イソプレンゴム(IR)は、イソプレンモノマーの重合により得られたものであり、中でもシス1,4−結合が98%前後のIRは、天然ゴムに極めて類似の分子構造を有するため、天然ゴムと同等の物性を示し好ましい。
【0019】
上記(2)の変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムは、溶液重合により得られ、且つ分子鎖の重合開始末端又は重合活性末端の少なくとも一方の末端、又は分子鎖中にスズ原子を導入し、変性したSBR系ゴムである。この様な変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムは、例えば、以下に示す方法により好ましく製造することができる。即ち、
その第1及び第2の方法は、原料として1,3−ブタジエン及びスチレンを用い、アルカリ金属化合物好ましくはリチウム化合物を重合開始剤とし、溶液重合(アニオン重合)させることにより、末端が重合活性末端であるスチレン−ブタジエン共重合体からなるベースポリマーが得られる。この様にして得られたベースポリマーはスズ化合物で変性することにより、所望の変性スチレン−ブタジエン共重合体を得ることができる。
【0020】
第3の方法は、原料として1,3−ブタジエン及びスチレンを用い、スズ原子を有するアルカリ金属化合物好ましくはリチウム化合物を重合開始剤とし、溶液重合(アニオン重合)させることにより、末端が重合活性末端であるスチレン−ブタジエン共重合体からなるベースポリマーが得られる。続いて、この活性末端は、スズ化合物、アルコキシシラン化合物、窒素含有化合物などの変性剤により変性される。この場合、変性剤を使用せずに反応を停止してもよい。
【0021】
第4の方法は、原料として1,3−ブタジエン及びスチレンを用い、スズ原子と窒素原子とを有するアルカリ金属化合物好ましくはリチウム化合物を重合開始剤とし、溶液重合(アニオン重合)させることにより、分子中にスズ原子と窒素原子とを導入したスチレン−ブタジエン共重合体が得られる。
第5の方法は、原料として1,3−ブタジエン、スチレン及びスズ原子含有化合物(モノマー)を用い、アルカリ金属化合物好ましくはリチウム化合物を重合開始剤とし、溶液重合(アニオン重合)させることにより、末端が重合活性末端であるスチレン−ブタジエン共重合体からなるベースポリマーが得られる。続いて、この活性末端は、スズ化合物、アルコキシシラン化合物、窒素含有化合物などの変性剤により変性される。この場合、変性剤を使用せずに反応を停止してもよい。
上記の方法は適宜組み合わせて行うことができる。また、上記第3から第5の方法においては、変性剤による末端変性工程を行うことなく、スズ原子が導入された共重合体を得ることができる。
【0022】
上記第1、第2及び第5の方法において、重合開始剤のリチウム化合物としては、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端がヒドロカルビル基であるスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン又はブタジエンのモノマー単位中にスズ原子を導入した共重合体を含む)のベースポリマーが得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有するスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン又はブタジエンのモノマー単位中にスズ原子を導入した共重合体を含む)のベースポリマーが得られる。ここで、ベースポリマーとは、反応停止前の活性末端を有する共重合体を意味する。
【0023】
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられるが、これらの中でも、n−ブチルリチウムが好ましい。
【0024】
一方、リチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムビス−2−エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。これらの中で、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが好適である。
【0025】
また、前記第3の方法において、重合開始剤に用いられるリチウム化合物としては、トリブチルスズリチウム、トリオクチルスズリチウムなどのトリオルガノスズリチウム化合物が好ましく用いられる。更に、前記第4の方法において、重合開始剤に用いられるスズ原子と窒素原子とを有するリチウム化合物としては、下記一般式(I)で表されるトリオルガノアミドスズリチウム、又は下記一般式(II)で表されるトリオルガノイミドスズリチウムが好ましく用いられる。
【0026】
【化1】
〔式(I)中、R1とR2は炭素数1〜20の脂肪族、脂環族、芳香族の炭化水素基から選ばれる基を表し、該基は同一であっても異なっていてもよい。〕
【0027】
【化2】
〔式(II)中、Xは次の構造基から選ばれる。X−I:(CR3R4)nからなる飽和型環状構造基、X−II:(R5R6)m−Y−(R5R6)l(但し、該YはNR7、O、又は炭素−炭素2重結合を有するイミン化合物である)。ここで、R3〜R6は水素及び炭素数1〜10の脂肪族、炭素数3〜10の脂環族、炭素数6〜10の芳香族の炭化水素基から選ばれる基を表し、また、R7は炭素数1〜10の脂肪族、炭素数3〜10の脂環族、炭素数5〜10の芳香族の炭化水素基から選ばれる基を表し、該基は同一であっても異なっていてもよい。nは3〜10の整数を表し、mとlの合計は2〜9の整数である。〕
【0028】
これらの中でも、好ましいトリオルガノアミドスズリチウムとしては、例えば、トリピロリジドスズリチウム、トリヘキサメチレンイミドスズリチウム、トリジエチルアミドスズリチウム、及びトリ(ジプロピルアミド)スズリチウム等が挙げられる。
【0029】
尚、上記において、トリオルガノアミドスズリチウムについては米国特許第5502129号明細書に記載されており、トリオルガノアミドスズリチウム及びトリオルガノイミドスズリチウムについては米国特許第5463003号明細書に記載されている。また、前記第5の方法として、目的とするスチレン−ブタヂエン共重合体は、スズ原子を有する第3モノマーを導入することによっても得ることができる。ここで、スチレンやブタヂエンと共重合される第3モノマーとしては、下記の一般式(III)又は(IV)で表される化合物が好適に用いられる。
【0030】
【化3】
〔式(III)中、R8〜R10は炭素数1〜30の脂肪族、脂環族又は芳香族の炭化水素基を表し、該基は同一であっても異なっていてもよい。〕
【0031】
【化4】
〔式(IV)中、R11(R12)C=CR13−、R14〜R17はベンゼン環に結合する基であり、R11〜R22は、水素原子又は炭素数1〜30の脂肪族、脂環族又は芳香族の炭化水素基を表し、該基は同一であっても異なっていてもよい。但し、R20〜R22はは水素原子を含まない。〕
【0032】
具体的には、前記一般式(III)で表される化合物としては、2−トリブチルスタニル−1,3−ブタジエン、2−トリオクチルスタニル−1,3−ブタジエン、2−トリシクロヘキシルスタニル−1,3−ブタジエン、2−トリフェニルスタニル−1,3−ブタジエン、2−ジブチルフェニルスタニル−1,3−ブタジエン、2−ジフェニルオクチルスタニル−1,3−ブタジエン等が挙げらる。また、前記一般式(IV)で表わされる化合物としては、m−ビニルベンジルトリブチルスズ、m−ビニルベンジルトリオクチルスズ、m−ビニルベンジルトリフェニルスズ、m−(1−フェニルビニル)ベンヂルトリブチルスズ、及びこれらのp−体、m−体/p−体の混合物などが好適に挙げられる。
【0033】
前記リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によってスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン又はブタジエンのモノマー単位中にスズ原子を導入した共重合体を含む)を製造する方法としては特に制限はなく、従来より公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、スチレンと1,3−ブタジエンを、前記有機リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的のスチレン−ブタジエン共重合体が得られる。この重合反応における温度は、通常−80〜150℃、好ましくは−20〜100℃の範囲で適宜に選定される。上記重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つ十分な圧力で操作することが望ましい。所望ならば更に高い圧力を用いることができ、この様な圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0034】
この様にして得られた、重合開始末端にヒドロカルビル基又は窒素含有基を有し、且つ他方の末端が重合活性である変性前のスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン又はブタジエンのモノマー単位中にスズ原子を導入した共重合体を含む)の該重合活性末端に、スズ化合物を反応させることにより、所望の変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムが得られる。
上記のスズ化合物としては、例えば、四塩化スズ、トリブチルスズクロリド、トリオクチルスズクロリド、ジオクチルスズジクロリド、ジブチルスズジクロリド、塩化トリフェニルスズなどが挙げられる。また、変性剤を使用せず反応を停止しても分子中にスズ原子が導入されている。
【0035】
本発明のゴム組成物に用いられる溶液重合SBRは、分子内に少なくとも1個のスズ原子を有し、分子内の結合スチレン含量が3〜10質量%であり、且つポリブタジエン鎖部の1,2−ビニル結合量が40質量%以下である変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムである。結合スチレン含量が上記範囲未満では、ゴムの硬度が不足となり、また上記範囲を越えると破断伸び及び発熱特性が悪化する。また、1,2−ビニル結合量が上記範囲を越えると破断伸び及び発熱特性の低下を招く。
【0036】
本発明のゴム組成物においては、前記成分(3)の補強材ないし充填材として、上述のゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積が65〜92m2/gで且つDBP吸油量が70〜132×10−5m3/kgであるカーボンブラックの40〜65質量部が配合される。上記特性のカーボンブラックを上記範囲で配合することにより、抗破壊物性や耐亀裂成長性及びモジュラス等を向上できる。尚、該カーボンブラックの配合量は、上記効果を高める為に、45〜60質量部の範囲がより好ましい。該カーボンブラックの配合量が40質量部に満たないと、上記改善効果が不十分であり、一方、該配合量が65質量部を越えて配合すると、抗破壊物性や耐亀裂成長性及び発熱特性の低下を来たす。
【0037】
本発明に用いるカーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積及びDBP吸油量が上記範囲を満足する物であれば特に制限はなく、具体的には、例えば、S315、N326(ISAF−LS)、N330(HAF)、N335、N339、N343、N347(HAF−HS)、N351、N356、N358、N375、N539、N550(FEF)、N582等のカーボンブラック等を挙げることができる。これらのカーボンブラックの中でも、高モジュラスと高破壊特性を両立させて向上させる観点より、N326(ISAF−LS)、N330(HAF)、N335、N339、N343、N347(HAF−HS)カーボンが好ましく、特にN330(HAF)とN326(ISAF−LS)カーボンがより好ましい。上記のカーボンブラックは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0038】
本発明のゴム組成物においては、所望により、更にシリカを配合することもできる。このシリカは、窒素吸着比表面積(N2SA)が160〜260m2/gの範囲にあり、且つジブチルフタレート吸油量(DBP)が180〜260mL/100gの範囲にあるものが好適である。この(N2SA)が160m2/g未満や(DBP)が180mL/100g未満では耐摩耗性が不充分になる恐れがあり、一方、(N2SA)が260m2/gを超えたり、(DBP)が260mL/100gを超えると分散不良を引き起こし、低発熱性能及び耐摩耗性が低下する原因となることがある。ここで、上記(N2SA)は、300℃で1時間乾燥した後、ASTM D4820−93に準拠して測定した値であり、(DBP)は、ASTM D2414−93に準拠して測定した値である。
【0039】
上記シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられるが、これらの中で、特に湿式シリカが好適である。本発明においては、このシリカは、前記(A)或いは(A)のゴム成分100質量部に対し、30質量部以下の範囲で配合されることが好ましい。この配合量が30質量部を超えると低発熱性能が低下する恐れがある。更に好ましいシリカの配合量は20質量部以下の範囲である。
【0040】
本発明のゴム組成物には、前記(1)及び(2)のゴム成分と(3)のカーボンブラックの他に、目的及び必要に応じて、更に、通常の工業用ゴム配合に常用される加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、酸化防止剤、プロセス油、軟化剤、その他ゴム配合剤を適宜に配合することができる。特に、100%伸長時の弾性率もしくはモジュラスを高めるために、ゴム成分100質量部に対して、加硫剤としての硫黄及び/又は含硫黄化合物を1〜8質量部、好ましくは2〜6質量部、より好ましくは2.5〜5質量部を配合することが望ましい。尚、上記の様に硫黄の配合量が多くてブルームの恐れがある場合には、使用する硫黄の一部或いは全部を不溶性硫黄(高分子タイプ)に置き換えることも望ましい。
【0041】
また、本発明のゴム組成物には、耐熱性や耐熱老化性及び動的貯蔵弾性率(E′)等を向上させる為に、ビスマレイミド化合物を配合するができる。該ビスマレイミド化合物としては、例えば、N,N′−1,2−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N′−(4,4′−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2、2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル]メタン等を挙げることができる。これらの中でも、N,N′−1,2−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンジマレイミドが好ましく、特にN,N′−(4,4′−ジフェニルメタン)ビスマレイミドが効果が顕著な点で更に好ましい。ビスマレイミド化合物の配合量は、ゴム成分100質量部に対して1〜3質量部が好ましく、また、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0042】
本発明のゴム組成物は、上述した配合からなるものであるが、更にその物性の内、特にタイヤ周方向における100%伸長時のモジュラス(M100)が5.0〜10.0MPaの範囲にあり且つ破断伸び(Eb)が300%以上であることを必要な要件とする。この100%伸長時のモジュラス(M100)が上記の範囲未満であると、高内圧で高速走行時のタイヤの径膨張を所定の値以下に抑制することができなくなり、また破断伸び(Eb)が300%未満であると、ベルト端部での亀裂の発生及び成長を抑制することができなくなる。
【0043】
尚、本発明の高速重荷重用ラジアルタイヤは、後述する様に、ベルト層のタイヤ半径方向外側に所定のゴム厚みを隔てて有機繊維コードからなる保護ベルトを配設することができるが、本発明の前記ゴム組成物の100%伸長時のモジュラス(M100)は、該保護ベルトの被覆ゴムの100%伸長時のモジュラス(M100)より1.2〜1.5倍ほど高いことが好ましい。上記モジュラス(M100)の比率が1.2倍未満では、保護ベルトの配設による緩衝効果が減少する懸念があり、また該比率が1.5倍を越えると、ベルト層と保護ベルトの間において剥離故障が生じる恐れがある。
【0044】
本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤは、この様なゴム組成物をベルト層のベルトプライ用の被覆ゴムとして用い、通常の加硫条件に従って加硫成形することにより、製造することができる。ここにおいて、本発明の前記ゴム組成物は、ベルト層を構成するベルトプライの総てに適用してもよいが、特に航空機用ラジアルタイヤにおいて、重量増及びコスト増を極力避けながら、高内圧で高速走行時の径成長を抑制し抗破壊特性及び耐久寿命を向上させる観点より、該ベルト層を構成するベルトプライの2枚以上からなる主ベルト層の被覆ゴムに適用することが好ましい。
尚、本発明の上記タイヤに充填される気体には、空気或いは窒素などの不活性なガスが用いられる。
【0045】
(高速重荷重用ラジアルタイヤ)
上述したゴム組成物をタイヤのベルトゴムに適用した、本発明の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤについて、以下に詳細に説明する。
本発明者等が、ベルト層の張力負担を詳細に調べた結果、図3のグラフに示すように、100%内圧(TRA規定内圧)の無負荷状態では1点鎖線の様な分布になっていた。尚、図3において、縦軸は張力、横軸はベルト幅方向の位置、SBWはベルト層の最大幅を示す。
ところで、航空機用タイヤの場合、無負荷状態において、規定内圧の400%の耐圧性が必要である。該400%内圧充填時の張力分布を調べた結果、実線の様になることが分かった。一方、荷重負荷状態では、ベルト層の張力分布は2点鎖線のようになることが分かった。このことから、該ベルト層は、両方の条件を満たす強度を有することが必要となることが分かる。
発明者等は種々の実験、調査から、無負荷時の張力に対し、赤道面の強力をベルト層の最大幅の2/3の位置の強力よりも大きく規定することで、径成長の抑制と質量減の両立を達成できることを見出した。
請求項4に記載の発明は上記事実に鑑みてなされたものであって、一対のビードコアと、一方ビードコアから他方のビードコアに向けてトロイド状に延びる少なくとも1枚以上のカーカスプライからなるカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ半径方向外側のクラウン域外周面に、有機繊維コードを含む少なくとも1枚以上のベルトプライからなるベルト層と、該ベルト層のタイヤ半径方向外側に踏面部を構成するトレッドゴム層と、を備えた空気入りラジアルタイヤであって、タイヤ赤道面位置P0での単位幅当りにおける前記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK0、タイヤ赤道面を中心として前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での単位幅当りにおける前記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK2としたときに、K2<K0を満足する、ことを特徴としている。
次に、請求項4に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
請求項4に記載の空気入りラジアルタイヤでは、タイヤ赤道面位置P0での単位幅当りにおけるベルト層のタイヤ周方向の総強力K0を、タイヤ赤道面を中心としてベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での単位幅当りにおけるベルト層のタイヤ周方向の総強力より大きく設定したので、ベルト層の材料使用量を抑えつつ、標準内圧の充填時及び高速回転時に、トレッド中央域でのトレッドゴムの周方向伸張量を抑制し、タイヤの径成長を抑制することができる。トレッドゴムの周方向伸張量が抑制されることでゴムの緊張度合いが低下するので、異物の進入に対する抵抗力が増大し、また、万一異物が刺さり込んだ場合であっても、亀裂の成長を抑えることが出来る。
尚、請求項4に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前述した本発明のゴム組成物は、ベルト層のベルトプライの全体に適用されてもよく、少なくとも主ベルトプライに適用されてもよい。
【0046】
(総強力の定義)ここでいう総強力とは、ベルト層の周方向の強力を指しており、1本のコードの強力に単位幅当り(ここでは10mm)の本数を掛けて算出したものである。なお、コードが周方向に対して角度θで傾斜している場合の総強力は、上記単位幅当りの総強力にcosθを掛けて算出してものとする。また、タイヤ内のコードがタイヤ周方向に波型(ジグザグ状)に伸びている場合は、真っ直ぐに伸ばして強力を算出するのではなく、タイヤに埋設されている形状、即ち、波状に型付けされたものを周方向に伸ばした時の強力を算出する。
【0047】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、0.2≦K2/K0≦0.8を満足する、ことを特徴としている。
次に、請求項5に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
強力の比(K2/K0)が0.2を下回ると、ショルダー部付近に位置する有機繊維コードに過大な張力が負担されることによる耐圧性能の低下を引き起こす虞がある。一方、強力の比(K2/K0)が0.8を上回ると、2/3点に配置したベルトプライの有機繊維コードが有効に活用されず、空気入りラジアルタイヤの質量増につながる。従って、強力の比(K2/K0)は、0.2≦K2/K0≦0.8を満足することが好ましい。
【0048】
請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層において、前記有機繊維コードの積層厚みを前記タイヤ赤道面位置P0で最も厚くし、前記タイヤ赤道面位置P0での前記有機繊維コードの積層厚みをG0、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での前記有機繊維コードの積層厚みをG2としたときに、G2<G0を満足する、ことを特徴としている。
次に、請求項6に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での有機繊維コードの積層厚みG2を、タイヤ赤道面位置P0での有機繊維コードの積層厚みG0よりも大きく設定することで、K2<K0を容易に達成することができる。尚、有機繊維コードの積層厚みとは、ベルト層をタイヤ径方向断面で見たときのタイヤ径方向に積層されている有機繊維コードの総径寸法である。例えば、直径がAの有機繊維コードが12本積層されている場合には、積層厚みはA×12となる。
【0049】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、0.35≦G2/G0≦0.85を満足することを特徴としている。
次に、請求項7に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
有機繊維コードの積層厚みの比G2/G0が、0.35を下回ると、ショルダー部付近に位置する有機繊維コードに過大な張力が負担されることによる耐圧性能の低下を引き起こす虞がある。一方、有機繊維コードの積層厚みの比G2/G0が0.85を上回ると、2/3点に配置したベルトプライの有機繊維コードが有効に活用されず、空気入りラジアルタイヤの質量増につながる。従って、有機繊維コードの積層厚みの比G2/G0は、0.35≦G2/G0≦0.85を満足することが好ましい。
【0050】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜請求項7の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層において、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での前記有機繊維コードの積層厚みをG2とした時に、前記ベルト層には、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2よりもタイヤ幅方向外側の領域において、前記積層厚みG2よりも積層厚みの厚い部分が設けられている、ことを特徴としている。
次に、請求項8に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2よりもタイヤ幅方向外側の領域において、積層厚みG2よりも積層厚みの厚い部分を設けると、高速走行時、特にタイヤ幅方向の外力に晒される様な場合に、タイヤ両側部の大きな張力変動を柔軟に吸収せしめることが可能となり、空気入りラジアルタイヤの寿命を著しく低下させ得るスタンディングウエーブの発生を効果的に抑制することができる。
【0051】
請求項9に記載の発明は、請求項4〜請求項8の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層は、引張破断強度が6.3cN/dtex以上、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜9.3%とされた有機繊維コードを含むベルトプライの少なくとも2枚以上で構成された主ベルト層を有する、ことを特徴としている。
次に、請求項9に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
本発明の様に、ベルト層の強度分布を規定することで、径成長抑制と質量減の両立を達成できるが、ナイロンの様な低弾性のコードを用いると、径成長を抑えるために多層にする必要があり、タイヤの質量増につながる。
【0052】
請求項9に記載の空気入りラジアルタイヤでは、主ベルト層を、引張破断強度が6.3cN/dtex以上とされた高弾性の有機繊維コードを含む少なくとも2枚以上のベルトプライで構成することにより、必要な耐圧性能を満足することができる。ここで、有機繊維コードの伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率を1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率を2.2〜9.3%とすることにより、目標の径成長の抑制を容易に達成することができた。
その理由は、航空機用の空気入りラジアルタイヤでは、標準状態の内圧負荷時におよそ2.1cN/dtexのコード張力が加わり、高速走行時におよそ3.2cN/dtexのコード張力が加わるが、有機繊維コードの伸び率が上記範囲を上回る場合、タイヤ内圧充填時においてタイヤ径方向の膨出を効果的に抑えられず、異物の刺さり込みに対する性能を期待できなくなるからである。
一方、有機繊維コードの伸び率が上記範囲を下回る場合、ベルトプライのタガ効果が大き過ぎるため、カーカスプライが必要以上にタイヤ幅方向に膨出する結果となり好ましくない。
更に、有機繊維コードの伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率を0.2〜2.0%とした理由は、以下に述べる通りである。先ず、空気入りラジアルタイヤを加硫するに当り、航空機用空気入りラジアルタイヤの場合、通常タイヤモールド内にて生タイヤが0.2〜2.0%ほど伸張する様にタイヤ外径が設定される。これは、加硫時に生タイヤ内部より負荷される圧力によってタイヤを均等に伸張せしめることによってコードの方向を揃え、コード打込みのばらつきを是正するためのものである。然る該工程においては、0.3cN/dtex程度の比較的小さい張力が有機繊維コードに作用するが、この時の有機繊維コードの伸び率が2.0%より大きいと、コード性状是正の効果が薄く、また、伸び率が0.2%より小さい場合には、加硫時の膨張時にコード張力が大となり、有機繊維コードがタイヤ径方向内側のゴムに食い込むなどの不都合が生じるからである。
【0053】
(標準状態の内圧負荷時の定義)ここでの内圧及び荷重は、TRA YEARBOOK(2002年度版)に規定されている内圧、及び荷重を採用している。例えば、航空機用ラジアルタイヤ1270×455R22 32PRの場合、規定内圧は1620kPa、規定荷重は24860kgである。
尚、有機繊維コードは、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜1.5%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜6.5%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜8.3%のものがより好ましい。
【0054】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層のタイヤ幅方向端部では、少なくとも前記ベルトプライが2層以上積層されている、ことを特徴としている。
次に、請求項10に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
主ベルト層のタイヤ幅方向端部において、ベルトプライを2層以上積層することで、タイヤ走行時、特に、タイヤ幅方向に外力が作用する場合のように、タイヤ接地面の幅方向両端付近の有機繊維コードに激しい張力変動を伴う様な条件下においても、その弾力性を持って衝撃を効果的に分散することが可能となり、苛酷な使用条件下におけるタイヤの信頼性向上に効果的である。
【0055】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系の繊維から構成され、下撚り係数が0.12〜0.85、上撚り係数が0.40〜0.80とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴としている。
次に、請求項11に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
主ベルト層を構成する有機繊維コードを芳香族ポリアミド系の繊維から構成し、下撚り係数を0.12〜0.85、好ましくは0.17〜0.51、上撚り係数を0.40〜0.80とすることで、有機繊維コードを請求項6に規定の物性、即ち、引張破断強度を6.3cN/dtex以上、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率を0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率を1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率を2.2〜9.3%に設定することができる。
【0056】
(撚り係数の定義)ここでいう撚り係数とは、以下の式から算出されるものである。
NT=N×(0.139×D/ρ)1/2×10−3
N:有機繊維コード100mm当りの撚り数
D:総表示デシテックス(dtex)数
ρ:有機繊維コードの比重(g/cm3)
【0057】
請求項12に記載の発明は、請求項9〜請求項11の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とを含み、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維との質量比が100:10〜170とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴としている。
次に、請求項12に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
主ベルト層を構成する有機繊維コードを芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とから構成し、かつ芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維との質量比を100:10〜170とすることで、有機繊維コードを請求項9に規定の物性、即ち、引張破断強度が6.3cN/dtex以上、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜9.3%に設定することができる。
ここで、芳香族ポリアミド系の繊維の質量100に対して脂肪族ポリアミド系の繊維の質量が10を下回ると、上記荷重を負荷したときに、コード伸張が小さくなるため請求項9に規定の物性を達成することが困難となる。一方、芳香族ポリアミド系の繊維の質量100に対して脂肪族ポリアミド系の繊維の質量が170を上回ると、上記荷重を負荷したときに、コード伸張が大きくなるため請求項9に規定の物性を達成することが困難となる。
【0058】
尚、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維との質量比は、より好ましくは100:17〜86である。ここで、脂肪族ポリアミド系の繊維とは、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン繊維等である。ここで、有機繊維コードは、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とから構成されていればよく、芳香族ポリアミド系有機繊維コードと脂肪族ポリアミド系有機繊維コードとを撚り合わせてもよく、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とを合わせてから撚りをかけてもよい。
また、芳香族ポリアミド系有機繊維コードをA、脂肪族ポリアミド系有機繊維コードをBとした場合、AまたはBを下撚り(Z撚り)後、引き揃えて、下撚りと逆方向に上撚り(S撚り)をかけることで主ベルト層を構成する有機繊維コードを得ることができる。尚、下撚り時は、AまたはBをそれぞれ単独で撚ってもよいし、AとBを併せた後撚ってもよい。下撚り又は上撚り時のA、B又はAB(合糸)の本数は1本ずつでも複数本ずつでもよい。A又はB原糸の太さは同じでもよいし異なっていてもよい。混撚糸の形態は、芯となる糸の回りにループを作ったものなどでもよい。
【0059】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系のコードと脂肪族ポリアミド系のコードとが撚り合わされ、且つ前記芳香族ポリアミド系のコードの下撚り係数が0.12〜0.85とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴としている。
次に、請求項13に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
芳香族ポリアミド系のコードの下撚り係数を0.12〜0.85とすることにより、請求項9に規定の物性を達成することが容易になる。尚、芳香族ポリアミド系のコードの下撚り係数を0.17〜0.51とすることが更に好ましい。
【0060】
請求項14に記載の発明は、請求項9〜請求項13の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層は、タイヤ赤道面に対して略0°の角度で螺旋状に巻回された有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴としている。
次に、請求項14に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
有機繊維コードのタイヤ赤道面に対する角度が略0°に設定することで、主ベルト層の周方向剛性を確保するために使用する有機繊維コードの強力を最大限に活用することが可能となり、空気入りラジアルタイヤの軽量化を図ることが出来る。尚、ここでいう略0°とは、2.0°以下を含むものとする。
【0061】
請求項15に記載の発明は、請求項4〜請求項14の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記主ベルト層は、タイヤ赤道面に対して2〜25°の角度で傾斜し、それぞれのプライ端で反対方向に傾斜するように同一面内で屈曲されてタイヤ周方向にジグザグ状に延びる有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴としている。
次に、請求項15に記載の空気入りラジアルタイヤの作用を説明する。
タイヤ赤道面に対して2〜25°の角度で傾斜し、それぞれのプライ端で反対方向に傾斜するように同一面内で屈曲されてタイヤ周方向にジグザグ状に延びる有機繊維コードを含むベルトプライを用いることで、主ベルト層の周方向剛性を大きく低下させることなくしてタイヤ幅方向の剛性を確保することができ、その結果、優れた耐摩耗性を実現することが可能となる。
【0062】
タイヤ幅方向の剛性を確保することで、優れた耐摩耗性が実現される理由は以下の通りである。一般に、内圧充填時のタイヤ形状において、クラウンセンター部とショルダー部との径差が大きいと、いわゆる「引きずり摩耗」を起こす可能性が高くなる。タイヤ回転中に接地したセンター部とショルダー部は、接地長の分だけ回転するが、一定の周長に対応するタイヤ回転角度は径の小さいショルダー部の方が大きくなる。このため、路面を離れるまでにショルダー部は回転方向後方に拘束された状態となり、トレッド接地面内にてセンター部とショルダー部とが剪断変形する。この変形を是正するためにショルダー部が路面に対して相対的に滑る現象が「引きずり摩耗」である。
上記周方向位置のずれの大きさは、上記センター部とショルダー部との径差、及びトレッド面内の周方向剪断剛性に依存し、径差が大きく剪断剛性が小さいほど引きずり摩耗の程度が大きくなる。スパイラルベルトは、コードがほぼ周方向を向いているため、上記剪断剛性が小さく、引きずり摩耗に関しては有効ではない。これを補うため、タイヤ周方向に対する角度が大きいコードを有するベルトを追加することで、タイヤ幅方向剛性を確保でき、摩耗特性の改善が図られる。
ここで、有機繊維コードのタイヤ赤道面に対する角度が2°を下回ると、幾何学的にジグザグ状にベルトを巻回することが困難となる(即ち、スパイラル状になってしまう。)。一方、有機繊維コードのタイヤ赤道面に対する角度が25°を上回ると、有機繊維コードがタイヤ周方向に発揮し得る張力が相対的に減少し、空気入りラジアルタイヤの内圧を負担する効率が悪化する。
【0063】
(1つの実施形態)
以下、本発明の航空機用空気入りラジアルタイヤの1つの実施形態を、添付した図1に基づいて説明する。
図1に示す様に、本実施形態の航空機用の空気入りラジアルタイヤ101(タイヤサイズ:1270×455R22 32PR)は、ビード部12に丸型断面を有するビードコア14を備えていて、ゴム被覆された有機繊維コードがラジアル方向に配列された6枚のカーカスプライよりなるカーカス層16がこのビードコア14に係留されている。
カーカス層16のタイヤ半径方向外側のクラウン域外周面には、ベルト層20、ベルト層20のタイヤ径方向外側にはトレッド部を構成するトレッドゴム層(31〜33)が設けられている。また、カーカス層のタイヤ幅方向外側には、サイドウォール部25を構成するサイドゴム層27が設けられている。尚、本実施の形態では、ベルト層20は、タイヤ径方向内側の主ベルト層26と、主ベルト層26のタイヤ径方向外側に設けられる副ベルト層28、副ベルト層28のタイヤ径方向外側に設けられる保護ベルト層22とから構成されている。
【0064】
主ベルト層26は、複数枚のベルトプライ、本実施形態では、8枚のベルトプライから構成されている。主ベルト層26を構成するこれらプライは、複数本の有機繊維コードをゴム被覆することにより形成されている。これらの有機繊維コードは、引張破断強度を6.3cN/dtex以上とすることが好ましく、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜9.3%であることが好ましい。
本実施形態の有機繊維コードは、芳香族ポリアミド系の繊維から構成されている。有機繊維コードを芳香族ポリアミド系の繊維から構成した場合、下撚り係数は0.12〜0.85、好ましくは0.17〜0.51、上撚り係数は0.40〜0.80に設定することが好ましい。本実施形態では、芳香族ポリアミド系の繊維、具体的にはデュポン社製ポリアミド繊維(商品タイプ名:KEVLAR(R)29、公称繊度3000デニール。以後、適宜ケブラーと呼ぶ。)からなる有機繊維コードを用いている。なお、本実施形態では、有機繊維コードの傾斜角度はタイヤ赤道面CLに対して略0°である。なお、ベルトプライにおいて、有機繊維コードの打込み数は、4〜10本/10mmの範囲内が好ましい。本実施形態では、ベルトプライ26において、有機繊維コードの打込み数が6.3本/10mmである。
【0065】
本実施形態のように副ベルト層28を設ける場合、その範囲は、タイヤ赤道面CLから主ベルト層26の幅BWの140%位置までの範囲内に設けることが好ましい。本実施形態では、副ベルト層28の幅SBWは主ベルト層26の幅BWの103%である。副ベルト層28は、本実施形態では1枚のベルトプライから構成されている。本実施形態のベルトプライは、1又は複数本の有機繊維コードをゴム被覆して構成した帯状の細長体を準備し、この細長体をほぼ1周する毎に両プライ端間を1度だけ往復させながらタイヤ赤道面に対して2〜25°の角度で傾斜させて周方向に巻き付けると共に、このような巻付けを細長体間に隙間が生じないよう周方向にほぼ細長体の幅だけずらして多数回巻回することで形成している(以後、適宜無端ジグザグ巻きベルトと呼ぶ。)。この結果、ベルトプライ内には両プライ端において折り曲げ方向を変えることによりジグザグしながらほぼ周方向に延びる有機繊維コードが、該ベルトプライの全領域においてほぼ均一に埋設されることになる。
【0066】
このベルトプライには、主ベルト層26に含まれる有機繊維コードに対して弾性率が同等、あるいは小さい有機繊維コード(主ベルト層26の有機繊維コードに対して2.1cN/dtex荷重時の伸び率が略同等以上である有機繊維コード)を用いることが好ましい。副ベルト層28を構成するベルトプライに用いる有機繊維コードとしては、ナイロン等の脂肪族ポリアミド系の繊維からなるコード、アラミド等の芳香族ポリアミド系の繊維とナイロン等の脂肪族ポリアミド系の繊維とを含むコード等が好ましく、本実施形態では、ナイロンコード(撚り数:1260D//2/3、打込み数7.3本/10mm)を用いている。また、無端ジグザグ巻きベルトである本実施形態のベルトプライにおいて、その有機繊維コードの傾斜角度はタイヤ赤道面CLに対して2〜45°の範囲内が好ましく、本実施形態では8°に設定されている。
【0067】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ここで用いたビスマレイミド、老化防止剤、加硫促進剤等のゴム用薬品は一例を示すものであって、目的に応じて他の任意の配合薬品に変更することができる。尚、本実施例中の「部数」及び「%」は全て、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0068】
[実施例1〜3及び比較例1〜2]
下記の表1に示す配合処方に従って、実施例1〜3及び比較例1〜2のゴム組成物を調合して、250mLのラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を用いて混練した後、3インチロールで各ゴム組成物のシート物を作製した。次いで、温度150℃で、加硫反応によるトルクの上昇が最高値の90%に達するまでの時間(t90)の1.5倍にあたる加硫時間で加硫して、下記の物性測定用の供試サンプルを得た。
【0069】
【表1】
【0070】
上記の表1に記載の配合成分は、下記の仕様(スペック)のものである。
・溶液重合SBR………JSR(株)製の溶液重合SBR(スチレン含量:3〜10質量%、ビニル結合量:40質量%以下)
・カーボンブラック(A)………旭カーボン(株)製の「HAF」(窒素吸着比表面積:71m2/g、DBP吸油量:103×10−5m3/kg)
・カーボンブラック(B)………旭カーボン(株)製の「N326」(窒素吸着比表面積:84m2/g、DBP吸油量:75×10−5m3/kg)
また、使用したビスマレイミド、老化防止剤、加硫促進剤は下記のものである。
・ビスマレイミド(PBM)………三井化学(株)製の商品名「BMI−S」(N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド)
・老化防止剤(6PPD)………N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
・加硫促進剤(TBBS)………N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
【0071】
上記で得られた各加硫ゴム試料につき、以下の様に評価試験を実施して、その結果を下記の表2に記入した。
(1)引張り試験
JIS K6301(1995)に準拠して、室温(25℃)において、ダンベル3号の打抜きサンプルを用いて引張り試験を行い、100%伸張時のモジュラス(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。
【0072】
更に、上記表1に示す各配合のゴム組成物を、図1に示す航空機用空気入りラジアルタイヤ(サイズ:APR 1270×455R22 32PR)の主ベルト層(図1の26で示す。)のベルトプライに適用して、通常の航空機用ラジアルタイヤの製造プロセスに従って、供試用タイヤを作製し、下記の評価試験を実施した。
(2)ベルト端亀裂の評価
各供試タイヤにつき、正規リム(46×17R20/30)に組み付け、最大空気圧(12.7kg/cm2)の内圧を充填し、最大負荷能力の80%の荷重を負荷して、速度64.5km/hで4分間のドラム走行を1時間サイクルで800回実施した後、試験タイヤを解剖してベルトプライ端部の亀裂の有無を観察した。
【0073】
(3)タイヤ径成長率の評価
各供試タイヤにつき、正規リム(46×17R20/30)に組み付け、最大空気圧(12.7kg/cm2)の内圧を充填した時の、該内圧充填の前後のトレッドセンターの外径の増加率(%)を測定した。この外径増加率が小さい程、タイヤの径成長が抑制され好ましいことを意味する。
【0074】
【表2】
【0075】
上記の表2の結果から明らかな様に、本発明のゴム組成物(実施例1〜3)は、比較例のものに比べて、モジュラス及び破断特性に優れていることが判明した。また、これらのゴム組成物を主ベルトのプライ被覆ゴムに適用した本発明の航空機用ラジアルタイヤ(実施例1〜3)は、比較例のタイヤに比べて、耐亀裂性及び径膨張抑制に優れていることが実証された。
【0076】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物及びタイヤ構造をベルト層に適用することに依って、タイヤの径膨張が抑制され耐亀裂性が改善され、耐久寿命に優れた重荷重用空気入りラジアルタイヤ、特に航空機用ラジアルタイヤを提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る本発明の航空機用空気入りラジアルタイヤ(101)の断面図である。
【図2】従来例に係る空気入りラジアルタイヤ(102)の断面図である。
【図3】ベルト層にかかる張力を示すグラフである。
Claims (15)
- ベルト層を構成する少なくとも1枚のベルトプライが、芳香族ポリアミド系繊維と脂肪族ポリアミド系繊維を混合して撚糸した有機繊維をゴム被覆したコードからなり、該ベルト被覆ゴムが、(1)天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムの70〜100質量部、(2)溶液重合により得られ分子内に少なくとも一つのスズ原子を有し、分子内の結合スチレン含量が3〜10質量%であり、且つポリブタジエン鎖部の1,2−ビニル結合量が40質量%以下である変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの30〜0質量部、及び(3)窒素吸着比表面積が65〜92m2/gで且つDBP吸油量が70〜132×10−5m3/kgであるカーボンブラックの40〜65質量部、からなるゴム組成物であって、そのタイヤ周方向における100%伸長時のモジュラス(M100)が5.0〜10.0MPaの範囲にあり且つ破断伸び(Eb)が300%以上であることを特徴とする高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ゴム組成物を、少なくとも、ベルト層を構成するベルトプライの2枚以上からなる主ベルト層の被覆ゴムに適用したことを特徴とする請求項1に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ゴム組成物の100%伸長時のモジュラス(M100)が、ベルト層のタイヤ半径方向外側に所定のゴム厚みを隔てて配設された有機繊維コードからなる保護ベルトの被覆ゴムの100%伸長時のモジュラス(M100)より1.2〜1.5倍高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ラジアルタイヤが、一対のビードコアと、一方のビードコアから他方のビードコアに向けてトロイド状に延びる少なくとも1枚以上のカーカスプライからなるカーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向外側のクラウン域外周面に有機繊維コードを含む少なくとも1枚以上のベルトプライからなるベルト層と、該ベルト層のタイヤ半径方向外側に踏面部を構成するトレッドゴム層と、を備えた空気入りラジアルタイヤであって、タイヤ赤道面位置P0での単位幅当りにおける上記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK0、タイヤ赤道面を中心として上記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での単位幅当りにおける上記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK2とした時に、K2<K0を満足する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ベルト層において、0.2≦K2/K0≦0.8を満足する、ことを特徴とする請求項4に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ベルト層において、前記有機繊維コードの積層厚みを前記タイヤ赤道面位置P0で最も厚くし、前記タイヤ赤道面位置P0での前記有機繊維コードの積層厚みをG0、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での前記有機繊維コードの積層厚みをG2としたときに、G2<G0を満足する、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ベルト層において、0.35≦G2/G0≦0.85を満足することを特徴とする請求項6に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ベルト層において、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2での前記有機繊維コードの積層厚みをG2とした時に、前記ベルト層には、前記ベルト層の最大幅の2/3の幅位置P2よりもタイヤ幅方向外側の領域において、前記積層厚みG2よりも積層厚みの厚い部分が設けられている、ことを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ベルト層は、引張破断強度が6.3cN/dtex以上、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜9.3%とされた有機繊維コードを含むベルトプライの少なくとも2枚以上で構成された主ベルト層を有する、ことを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記主ベルト層のタイヤ幅方向端部では、少なくとも前記ベルトプライが2層以上積層されている、ことを特徴とする請求項9に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系の繊維から構成され、下撚り係数が0.12〜0.85、上撚り係数が0.40〜0.80とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維とを含み、芳香族ポリアミド系の繊維と脂肪族ポリアミド系の繊維との質量比が100:10〜170とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記主ベルト層は、芳香族ポリアミド系のコードと脂肪族ポリアミド系のコードとが撚り合わされ、かつ前記芳香族ポリアミド系のコードの下撚り係数が0.12〜0.85とされた有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする請求項12に記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記主ベルト層は、タイヤ赤道面に対して略0°の角度で螺旋状に巻回された有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記主ベルト層は、タイヤ赤道面に対して2〜25°の角度で傾斜し、それぞれのプライ端で反対方向に傾斜するように同一面内で屈曲されてタイヤ周方向にジグザグ状に延びる有機繊維コードを含むベルトプライを有する、ことを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の高速重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
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