JP2004263138A - 塗料用組成物および塗料 - Google Patents
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Abstract
【課題】旧塗膜や下塗り塗膜を痛めることなく上塗り塗装でき、硬度の高い塗膜を形成できる塗料用組成物および塗料を提供すること。
【解決手段】パラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a1)、および炭素数9以上の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a2)からなる混合溶剤(A)と、水酸基を含有し、溶剤(a1)に不溶であり且つ混合溶剤(A)に可溶または分散可能な含フッ素共重合体(B)とを含有する塗料用組成物および塗料。
【選択図】 なし
【解決手段】パラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a1)、および炭素数9以上の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a2)からなる混合溶剤(A)と、水酸基を含有し、溶剤(a1)に不溶であり且つ混合溶剤(A)に可溶または分散可能な含フッ素共重合体(B)とを含有する塗料用組成物および塗料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料用組成物および塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐候性に優れる塗膜を与える塗料用樹脂としてフッ素樹脂が知られている。該フッ素樹脂を含む塗料は、重防食トップコートとして用いられたり、セメント系基材へのトップコートとして用いられている。
しかし、該塗料は、トルエン、キシレン等のいわゆる強溶剤を含むため、該塗料を経年変化した合成樹脂調合ペイント、塩化ゴム系塗料、他のラッカー類等の旧塗膜に直接塗装すると、チヂミやふくれが生じたり、良好な密着性が得られない問題があった。
【0003】
一方、近年、硬化剤と、該硬化剤と架橋可能な樹脂を含有する溶液とを使用時に混合して用いる二液タイプの塗料が用いられている。二液タイプの塗料は、樹脂と硬化剤とが架橋して3次元の網目構造を構成するため、硬度が高く、耐汚染性に優れた塗膜が得られる。該二液タイプの塗料としては、例えばイソシアネート系硬化剤と、該硬化剤との架橋反応性部位として水酸基を有する樹脂とを用いるものが知られており、樹脂中の水酸基の含有量(水酸基価)が多いほど、硬度の高い塗膜が得られる。
しかし、二液タイプの塗料に用いられる樹脂は、水酸基を有しているため極性が高く、弱溶剤には溶解しにくい。そのため、二液タイプの塗料には、通常、溶解力の強い強溶剤が用いられており、上記と同様、旧塗膜等を補修する際に旧塗膜を痛めるなどの問題を有していた。
【0004】
このような問題に対し、強溶剤よりも溶解力の弱い弱溶剤を用いる弱溶剤形塗料が開発されている。例えば特許文献1には、弱溶剤であるミネラルスピリットに可溶性の含フッ素共重合体を含む塗料用組成物が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特公平8−32847号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1記載の含フッ素共重合体は、硬化剤を含まない一液タイプの塗料として用いられており、塗膜硬度が充分ではない。また、該含フッ素共重合体を二液タイプの塗料に用いるために該含フッ素共重合体の水酸基価を高めると、弱溶剤に対する溶解性が低下し、塗装が困難になる。そのため、強溶剤を用いる必要があり、旧塗膜や下塗り塗膜を痛めるなどの問題が生じる。
したがって、本発明は、旧塗膜や下塗り塗膜を痛めることなく上塗り塗装が可能であり、硬度の高い塗膜を形成可能な塗料用組成物および塗料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、溶剤として、特定の混合溶剤を用いることにより上記課題を解決できることを見い出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、パラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a1)、および炭素数9以上の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a2)からなる混合溶剤(A)と、水酸基を含有し、溶剤(a1)に不溶であり且つ混合溶剤(A)に可溶または分散可能な含フッ素共重合体(B)とを含有する塗料用組成物を提供する。
また、本発明は、前記塗料用組成物および硬化剤を含有する塗料を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
≪塗料用組成物≫
本発明の塗料用組成物は、混合溶剤(A)と含フッ素共重合体(B)とを含有する。
まず、混合溶剤(A)について説明する。混合溶剤(A)は、パラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a1)、および炭素数9以上の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a2)からなる混合溶剤(A)を含有する。
溶剤(a1)および溶剤(a2)は、一般に塗料および塗装業界において「弱溶剤」と称される、複層塗膜や塗り替え時の重ね塗りをする際、旧塗膜や下塗り塗膜を侵すことの少ない、溶解力の弱い溶剤に含まれる。
【0010】
溶剤(a1)のパラフィン系炭化水素の具体例としては、例えばn−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、n−オクタン、2−メチルヘプタン、n−ノナン、2−メチルオクタン、2,3,4−トリメチルペンタン、n−デカン、2−メチルノナン、2−メチルデカン、およびこれらの混合物などが挙げられる。
溶剤(a1)のナフテン系炭化水素の具体例としては、例えばシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、およびこれらの混合物などが挙げられる。
これらのパラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、これらパラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素の混合物として知られるミネラルスピリット、またはミネラルターペンと称される溶剤が好ましく用いられる。
【0011】
これらのパラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素は、JIS K2201−1985に規定されるところのJIS分類「工業ガソリン−4号」および「工業ガソリン−5号」に該当する。
上記ミネラルスピリットは、一般に「工業ガソリン−4号」に相当するが、成分組成の違いによる引火点や蒸留範囲の違いにより、「工業ガソリン−5号」に含まれるものもある。
【0012】
溶剤(a1)に相当する溶剤は多数市販されており、本発明においては市販品を用いてもよい。
溶剤(a1)として使用できる市販品としては、新日本石油社製のミネラルスピリットA、Aソルベント、ハイアロム2S;シェルケミカルズ社製のLAWS、HAWS;エクソンモービル社製のペガソール3040、ペガソールAN45;および塗料、塗装業界で一般に用いられている、いわゆる「塗料用シンナー」等が挙げられる。
【0013】
溶剤(a2)は、炭素数9以上、好ましくは9〜10の芳香族炭化水素である。
炭素数9以上の芳香族炭化水素の具体例としては、例えばイソプロピルベンゼン、n−プロピルベンゼン、1−メチル−3−エチルベンゼン、1−メチル−4−エチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1−メチル−2−エチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、イソブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、1−メチル−3−イソプロピルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1−メチル−4−イソプロピルベンゼン、インダン、1−メチル−2−イソプロピルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1−メチル−3−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、1−メチル−4−プロピルベンゼン、1,2−ジエチルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ジメチル−5−エチルベンゼン、1−メチル−2−プロピルベンゼン、1,4−ジメチル−2−エチルベンゼン、2−メチルインダン、1−メチルインダン、1,2−ジメチル−4−エチルベンゼン、1,3−ジメチル−2−エチルベンゼン、1,2−ジメチル−3−エチルベンゼン、4−メチルインダン、5−メチルインダン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,3−ジメチル−4−エチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、テトラリン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン等が挙げられる。
該芳香族炭化水素は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、一般に混合物として市販されているものを使用してもよい。
溶剤(a2)として使用できる混合物の市販品としては、丸善石油化学社製のスワゾール1000;エクソンモービル社製のソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200;シェルケミカルズ社製のシェルゾールA100、シェルゾールA150;新日本石油化学社製のスーパーゾール1500、スーパーゾール1800等が挙げられる。
【0014】
混合溶剤(A)中の溶剤(a1)の割合は、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは50〜70質量%である。溶剤(a1)の割合が30質量%以上であると、旧塗膜や下塗り塗膜を侵すことなく上塗り塗装することができ、溶剤(a1)の割合が90質量%以下、すなわち溶剤(a2)の割合が10質量%より多いと、混合溶剤(A)の溶解力が、含フッ素共重合体(B)を溶解または分散させるのに充分なものとなる。
【0015】
塗料用組成物における混合溶剤(A)の含有量は、含フッ素共重合体(B)の溶解性、塗料として塗装する際の適度な粘度、塗装方法などを考慮して適宜決定される。
【0016】
なお、本発明の塗料用組成物は、溶剤として、混合溶剤(A)のほか、キシレン、トルエン等の溶解力の強い強溶剤を、全溶剤の5質量%以下であれば含有してもよいが、全溶剤が混合溶剤(A)であることが好ましい。ここで、強溶剤とは、労働安全衛生法による有機溶剤の分類における第2種有機溶剤に相当する溶剤である。
【0017】
次に、含フッ素共重合体(B)について説明する。本発明の塗料用組成物に含まれる含フッ素共重合体(B)は、水酸基を含有し、溶剤(a1)に不溶であり且つ混合溶剤(A)に可溶または分散可能であれば特に制限はなく、混合溶剤(A)の溶解力に応じて適宜公知の塗料用含フッ素共重合体を選択して用いることができる。
この含フッ素共重合体(B)として具体的には、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が30〜70質量%であり、ビニル系モノマーのうち、20〜50モル%が水酸基を含有し、10〜40モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有する含フッ素共重合体(以下、含フッ素共重合体(b1)という。)が好ましい。
【0018】
・含フッ素共重合体(b1)
フルオロオレフィンとしては、フッ素付加数は3以上が好ましく、3〜4がより好ましい。フッ素付加数が3以上であると、耐候性が充分であり好ましい。
フルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン等を挙げることができ、特にテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンが好ましい。
【0019】
ビニル系モノマーは、フルオロオレフィンと共重合可能であり、フルオロオレフィン以外のビニル系モノマーが好ましく使用される。該ビニル系モノマーとは、CH2 =CH−で表される炭素−炭素二重結合を有する化合物である。該ビニル系モノマーとしては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を含有するアルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル等が挙げられる。
【0020】
本発明において、ビニル系モノマーは、水酸基を含有するビニル系モノマー(以下、水酸基含有モノマーという。)と、炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有するビニル系モノマー(以下、分岐アルキル基含有モノマーという。)の両方を含む。なお、水酸基含有モノマーが炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有していてもよく、分岐アルキル基含有モノマーが水酸基を含有していてもよい。
本発明におけるビニル系モノマーのうち、20〜50モル%が水酸基を含有する水酸基含有モノマーが好ましく、20〜35モル%がより好ましい。
水酸基含有モノマーの使用量が20モル%以上であると、硬度の高い塗膜を得るために充分な量の水酸基が含フッ素共重合体中に導入されるため好ましい。
また、水酸基含有モノマーの含有量が50モル%以下であると、混合溶剤(A)に対し、塗料用として充分に可溶または分散可能となるため好ましい。
【0021】
水酸基含有モノマーの炭素数は、特に制限はないが、2〜10が好ましく、4〜6がより好ましい。
水酸基含有モノマーとしては、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類、ヒドロキシエチルアリルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類等が挙げられる。共重合性に優れ、形成される塗膜の耐候性が良好であることからヒドロキシアルキルビニルエーテル類が好ましい。
該水酸基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明におけるビニル系モノマーのうち、10〜40モル%が炭素数3以上の分岐アルキル基含有モノマーが好ましく、20〜30モル%がより好ましい。
分岐アルキル基含有モノマーが10〜40モル%であることにより、上記の量の水酸基含有モノマーを使用しても、混合溶剤(A)に対する溶解性または分散性を確保できる。
【0023】
分岐アルキル基含有モノマーにおける分岐アルキル基の炭素数は、3以上であれば特に制限はなく、4〜15が好ましく、4〜10がより好ましい。
分岐アルキル基含有モノマーとしては、分岐アルキル基を含有するビニルエーテル類、アリルエーテル類または(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基等が挙げられる。分岐アルキル基含有モノマーとしては、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2−EHVE)、tert−ブチルビニルエーテル(t−BuVE)等のビニルエーテル類が共重合性に優れるため好ましく、特に2−EHVEが好ましい。
該分岐アルキル基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明においては、ビニル系モノマーとして、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、水酸基含有モノマー、分岐アルキル基含有モノマー以外の他のビニル系モノマーを使用することが好ましい。
他のビニル系モノマーとしては、アルキル基を含有するモノマーが好ましく、該アルキル基としては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられる。該アルキル基の炭素数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
特に、環状アルキル基を含有するビニル系モノマーを用いると、含フッ素共重合体(b1)のガラス転移温度(Tg)が上がり、塗膜の硬度がさらに高まるため好ましい。
該環状アルキル基を含有するビニル系モノマーとしては、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル等の環状アルキルビニルエーテル類、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル類等が挙げられる。
該他のビニル系モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系モノマーの全量における他のビニル系モノマーの割合は、10〜70モル%であり、35〜60モル%が好ましい。
【0025】
含フッ素共重合体(b1)におけるフルオロオレフィンに基づく重合単位とビニル系モノマーに基づく重合単位の割合は、フルオロオレフィンに基づく重合単位が30〜70モル%であることが好ましく、40〜60モル%であることがより好ましく、ビニル系モノマーに基づく重合単位が70〜30モル%であることが好ましく、60〜40モル%であることがより好ましい。フルオロオレフィンに基づく重合単位の割合が70モル%以下であると、含フッ素共重合体(b1)の弱溶剤への溶解性が充分となり、30モル%以上であると充分な耐候性が得られるため好ましい。
【0026】
含フッ素共重合体(b1)は、フルオロオレフィンと、水酸基含有モノマーおよび分岐アルキル基含有モノマーを所定割合含むビニル系モノマーとの混合物に、重合媒体の存在下または非存在下で、重合開始剤または電離性放射線などの重合開始源を作用せしめて共重合反応を行うことによって製造できる。
共重合反応における、フルオロオレフィンとビニル系モノマーとの使用量の割合は、上記の含フッ素共重合体におけるフルオロオレフィンに基づく重合単位とビニル系モノマーに基づく重合単位の割合と同じであることが好ましい。
重合媒体としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、キシレン、トルエン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサノン、ソルベントナフサ、ミネラルターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ等の脂肪族系溶剤、3−エトキシプロピオン酸エチル、メチルアミルケトン、酢酸tert−ブチル、4−クロロベンゾトリフルオリド、ベンゾトリフルオリド、モノクロロトルエン、3,4−ジクロロベンゾトリフルオリド等が挙げられる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカーボネートニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系開始剤;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、2,2−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、tert−ブチルパーオキシピバレイト等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート類等の過酸化物系開始剤;等が挙げられる。
【0027】
含フッ素共重合体(b1)におけるフルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量は、含フッ素共重合体(b1)の総質量に対して、好ましくは30〜70質量%である。フッ素の含有量が30質量%以上であると、塗膜の耐候性が充分となり、70質量%以下であると、混合溶剤(A)に対して充分に可溶または分散可能であるため好ましい。
また、含フッ素共重合体(b1)は、硬化剤との反応性部位として水酸基を含有する。含フッ素共重合体(b1)中の水酸基価(以下、OHVという。)は、水酸化カリウムの化学的反応当量に換算して、含フッ素共重合体(b1)の総固形分に対し、40〜90mgKOH/gが好ましく、45〜70mgKOH/gがより好ましい。
OHVが40mgKOH/g以上であると、硬度の高い塗膜を得ることができ、OHVが90mgKOH/g以下であると、混合溶剤(A)に対し、含フッ素共重合体(b1)が充分な溶解性または分散性を有するため好ましい。
【0028】
含フッ素共重合体(b1)は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される数平均分子量(Mn)が5000〜15000であることが好ましい。Mnが5000以上であると耐候性に優れ、Mnが15000以下であると混合溶剤(A)に対する溶解性または分散性に優れるため好ましい。
また、含フッ素共重合体(b1)のガラス転移点(以下、Tgという。)は、30℃以上が好ましく、35〜45℃がより好ましい。Tgが30℃以上であると、高硬度の塗膜が得られるため好ましい。
【0029】
含フッ素共重合体(b1)は、さらに、カルボキシ基を含有することが好ましい。カルボキシ基を含有することにより、例えば塗料として用いる際に顔料の分散性が向上する。含フッ素共重合体(b1)中のカルボキシ基の含有量(酸価(以下、AVという。))は、水酸化カリウムの化学的反応当量に換算して、含フッ素共重合体(b1)の総固形分に対し、1〜8mgKOH/gが好ましく、2〜5がより好ましい。
該カルボキシ基は、例えば、上述したフルオロオレフィンとビニル系モノマーとの重合反応後、含フッ素共重合体(b1)中の水酸基に多価カルボン酸またはその無水物を反応させることにより導入できる。また、カルボキシ基を有するビニル系モノマーの直接重合によっても導入できる。
【0030】
本発明の塗料用組成物は、混合溶剤(A)および含フッ素共重合体(B)のほか、塗膜の乾燥性を改善するために、CAB(セルロースアセテートブトレート)、NC(ニトロセルロース)等を含有していてもよく、塗膜の光沢、硬度、塗料の施工性を改良するために、アクリル酸またはそのエステルからなる重合体、ポリエステル等の塗料用樹脂を含有していてもよい。
【0031】
本発明の塗料用組成物においては、含フッ素共重合体(B)が、塗料用組成物中に含まれる総固形分の20質量%以上を占めることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が最も好ましい。
【0032】
本発明の塗料用組成物は、含有する固形分の全量が混合溶剤(A)に溶解していることが最も好ましいが、若干の不溶部を有し、混合溶剤(A)中に分散していてもよい。
【0033】
本発明の塗料用組成物は、二液タイプの塗料として、使用前に硬化剤と混合されて用いられる。
【0034】
≪塗料≫
本発明の塗料は、本発明の塗料用組成物および硬化剤を含有する。
該硬化剤としては、含フッ素共重合体中の水酸基と架橋可能な硬化剤、例えばイソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤、メラミン系硬化剤等の塗料用硬化剤等が挙げられる。
イソシアネート系硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の無黄変イソシアネート類が挙げられる。
ブロックイソシアネート系硬化剤としては、イソシアネート硬化剤のイソシアネート基をカプロラクタム、イソホロン、β−ジケトン等でブロックしたものが挙げられる。
メラミン系硬化剤としては、ブチル化メラミン等の低級アルコールによりエーテル化されたメラミン、エポキシ変性メラミン等が挙げられる。
【0035】
塗料における硬化剤の含有量は、塗料用組成物中の含フッ素共重合体(B)を含む樹脂成分の100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
硬化剤が1質量部以上であると、塗膜の耐溶剤性と硬度が充分となり、硬化剤が100質量部以下であると、加工性、耐衝撃性に優れるため好ましい。
【0036】
本発明の塗料は、必要に応じて、他の機能性配合剤を含有することが好ましい。他の機能性配合剤としては、着色顔料、染料、塗膜の付着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、つや消し剤等が挙げられる
着色顔料、染料としては、耐候性の良いカーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等の有機顔料、染料等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
硬化促進剤としては、イソシアネート系硬化剤用にジブチルスズジラウレート等、メラミン系硬化剤用にパラトルエンスルホン酸等の酸性触媒が挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられ、アデカスタブLA62、アデカスタブLA67(以上、アデカアーガス化学社製、商品名)、チヌビン292、チヌビン144、チヌビン123、チヌビン440(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。
つや消し剤としては、超微粉合成シリカ等が挙げられ、つや消し剤を使用した場合、優雅な半光沢、つや消し仕上げの塗膜を形成できる。
【0037】
本発明の塗料の製造は、本発明の塗料用組成物、硬化剤、必要に応じて添加される機能性配合剤を混合することにより行うことができる。
その混合順序は特に限定されず、本発明の塗料用組成物と添加剤を予め混合し、それに硬化剤を混合してもよく、本発明の塗料用組成物および硬化剤を混合し、次いで添加剤を混合してもよく、これらを同時に混合してもよい。
【0038】
本発明の塗料を用いて塗装する方法としては、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコーター、フローコーター等の任意の方法を適用できる。
【0039】
塗装される物品材質としては、コンクリート、自然石、ガラス等の無機物、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタン等の金属、プラスチック、ゴム、接着剤、木材等の有機物が挙げられる。特に、すでに形成された塗膜の表面への塗装に適する。また有機無機複合材であるFRP、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリート等の塗装にも適する。
【0040】
また塗装される物品としては、自動車、電車、航空機等の輸送用機器、橋梁部材、鉄塔などの土木部材、防水材シート、タンク、パイプ等の産業機材、ビル外装、ドア、窓門部材、モニュメント、ポール等の建築部材、道路の中央分離帯、ガードレール、防音壁、ポリカーボネート製透光板等の道路部材、通信機材、電気および電子部品等が挙げられる。
【0041】
【実施例】
以下に発明をより詳細に説明するために実施例(例1〜2は実施例、例3〜6は比較例)を示す。本発明は、これらの例によって何ら制限されない。
【0042】
(含フッ素共重合体Bの製造)
内容積2000mLのステンレス製撹拌機付きオートクレーブに、組成がシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)の284g、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2−EHVE)の149gおよびヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)の131gであるビニル系モノマー混合物と、キシレンの670g、エタノールの189gおよび炭酸カリウムの9.5gを投入し、窒素により溶存酸素を除去した。
その後、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)の505gをオートクレーブ中に導入して徐々に昇温し、65℃に達した後、tert−ブチルパーオキシピバレートの50%キシレン溶液の7.0gを7時間かけてオートクレーブ中に導入し、その後さらに15時間撹拌した後に反応を停止した。
得られた含フッ素共重合体のキシレン溶液をエバポレーションしながら、ミネラルスピリットAおよびソルベッソ100の混合溶剤B(質量比4:6)への溶媒置換を行い、不揮発分を60質量%にした後、水素添加無水フタル酸の5.8gを添加し、さらにトリエチルアミンの0.05gを添加した後、フラスコを徐々に昇温した。フラスコ内の温度が70℃に達した後、その温度を2時間保持し、数平均分子量(Mn)が7000、水酸基価が55mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、Tgが32℃である含フッ素共重合体Bの混合溶剤B溶液(不揮発分60質量%)を得た。
【0043】
(含フッ素共重合体Cの製造)
含フッ素共重合体Bの製造において、ビニル系モノマーの組成をCHVEの241g、2−EHVEの163g、HBVEの161gとし、混合溶剤Bの代わりに、HAWSおよびソルベッソ100の混合溶剤C(質量比5:5)を用いた以外は含フッ素共重合体Bの製造と同様にして、Mnが7200、水酸基価が65mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、Tgが27℃である含フッ素共重合体Cの混合溶剤C溶液(不揮発分60質量%)を得た。
【0044】
(含フッ素共重合体Dの製造)
含フッ素共重合体Bの製造において、ビニル系モノマーの組成をCHVEの274g、2−EHVEの190g、HBVEの111gとし、混合溶剤Bの代わりに、ミネラルスピリットAおよびキシレンの混合溶剤D(質量比3:7)を用いた以外は含フッ素共重合体Bの製造と同様にして、Mnが10000、水酸基価が46mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、Tgが30℃である含フッ素共重合体Dの混合溶剤D溶液(不揮発分60質量%)を得た。
含フッ素共重合体Dは、混合溶剤Dに溶剤(a2)を用いず、キシレンを用いた点で、本発明に相当しない。
【0045】
(含フッ素共重合体Eの製造)
含フッ素共重合体Bの製造において、ビニル系モノマーの組成をCHVEの313g、2−EHVEの122g、エチルビニルエーテル(EVE)の57gとし、混合溶剤Bの代わりに、HAWSおよびソルベッソ100の混合溶剤E(質量比6:4)を用いた以外は含フッ素共重合体Bの製造と同様にして、Mnが4000、水酸基価が0mgKOH/g、酸価が0mgKOH/g、Tgが35℃である含フッ素共重合体Eの混合溶剤E溶液(不揮発分60質量%)を得た。
含フッ素共重合体Eは、水酸基を含有しない点で、本発明に相当しない。
【0046】
(含フッ素共重合体Fの製造)
含フッ素共重合体Bの製造において、ビニル系モノマーの組成をCHVEの285g、2−EHVEの285g、HBVEの30gとし、ミネラルスピリットAのみを溶剤として用いた以外は含フッ素共重合体Bと同様の操作を行い、Mnが7400、水酸基価が13mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、Tgが30℃である含フッ素共重合体Eのミネラルスピリット溶液(不揮発分60質量%)を得た。
含フッ素共重合体Fは、溶剤としてミネラルスピリットのみを用いた点で、本発明に相当しない。
【0047】
(含フッ素共重合体Gの製造)
含フッ素共重合体Bの製造において、ビニル系モノマーの組成をCHVEの274g、HBVEの111g、EVEの88gとし、溶媒置換を行わず、キシレン溶液とした以外は含フッ素共重合体Bの製造と同様にして、Mnが7500、水酸基価が46mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、Tgが30℃である含フッ素共重合体Gのキシレン溶液(不揮発分60質量%)を得た。
含フッ素共重合体Gは、溶剤にキシレンを用いた点で、本発明に相当しない。また、分岐アルキル基含有モノマーである2−EHVEを用いていない。
【0048】
表1に、含フッ素共重合体B〜Gのモノマー組成(モル%)、水酸基価、酸価、Mn、Tg、および用いた溶剤の種類と量(不揮発分60質量%の各溶液を100としたときの質量比)を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
<例1〜6>
含フッ素共重合体B〜Gの溶液(不揮発分60質量%)の100質量部に対し、「ミネラルスピリットA」、着色顔料として酸化チタン「Titone D−918」(堺化学社製)、ミネラルスピリット可溶型イソシアネート硬化剤「タケネートD−178N」(三井武田ケミカル社製)、硬化触媒としてジブチルスズジラウレートを表2に示す量(質量部)入れて均一に混合撹拌し、7種の塗料B〜Gを作製した。
塗料B〜Gを、塩化ゴム塗料塗装後10年経過後の鉄部材の表面に、乾燥塗膜が25μmとなるようにスプレー塗装し、塗膜を形成した。得られた塗装試験体を23℃恒温室中で2週間養生した後、以下の評価を行った。その結果を表2に併記する。
【0051】
1)塗膜の粘着性:塗装後、24時間室温(23℃)に放置した後、指触にて判定し、粘着性がなければ○、粘着性があれば×とした。
2)カーボン汚れ性:塗膜表面にカーボンブラック#5(デグサ社製商品名)を均一に振りかけた後で、払い落とし、汚れの程度を、振りかけていない場所とのΔL値で表した。ΔLが10以上であると汚染性があると判断できる。
3)施工性試験:塗装1日経過後、塗膜のリフティング(下層塗膜うき)が無ければ○、有れば×と判定した。
4)耐候性試験:サンシャインウェザーメーター試験機(スガ試験機製)にて4000時間曝露照射。曝露前後の光沢値を測定し、光沢保持率(%)をもって、塗膜の耐候性を評価した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2において、例1,2における塗料B,Cを用いた塗膜は、全ての項目で優れていた。
一方、例3,6における塗料D,Gを用いた塗膜は、溶剤にキシレン(溶解力が強い強溶剤)を用いているため、施工性が劣っていた。
例4,5における塗料E,Fを用いた塗膜は、粘着性に劣っていた。また、カーボン汚れ性に劣っていたことから、例4,5の塗膜の硬度が低かったと推測される。
【0054】
【発明の効果】
本発明の塗料用組成物および塗料は、特定の混合溶剤を媒体としているため、旧塗膜や下塗り塗膜を痛めることなく上塗り塗装でき、硬度の高い塗膜を形成できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料用組成物および塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐候性に優れる塗膜を与える塗料用樹脂としてフッ素樹脂が知られている。該フッ素樹脂を含む塗料は、重防食トップコートとして用いられたり、セメント系基材へのトップコートとして用いられている。
しかし、該塗料は、トルエン、キシレン等のいわゆる強溶剤を含むため、該塗料を経年変化した合成樹脂調合ペイント、塩化ゴム系塗料、他のラッカー類等の旧塗膜に直接塗装すると、チヂミやふくれが生じたり、良好な密着性が得られない問題があった。
【0003】
一方、近年、硬化剤と、該硬化剤と架橋可能な樹脂を含有する溶液とを使用時に混合して用いる二液タイプの塗料が用いられている。二液タイプの塗料は、樹脂と硬化剤とが架橋して3次元の網目構造を構成するため、硬度が高く、耐汚染性に優れた塗膜が得られる。該二液タイプの塗料としては、例えばイソシアネート系硬化剤と、該硬化剤との架橋反応性部位として水酸基を有する樹脂とを用いるものが知られており、樹脂中の水酸基の含有量(水酸基価)が多いほど、硬度の高い塗膜が得られる。
しかし、二液タイプの塗料に用いられる樹脂は、水酸基を有しているため極性が高く、弱溶剤には溶解しにくい。そのため、二液タイプの塗料には、通常、溶解力の強い強溶剤が用いられており、上記と同様、旧塗膜等を補修する際に旧塗膜を痛めるなどの問題を有していた。
【0004】
このような問題に対し、強溶剤よりも溶解力の弱い弱溶剤を用いる弱溶剤形塗料が開発されている。例えば特許文献1には、弱溶剤であるミネラルスピリットに可溶性の含フッ素共重合体を含む塗料用組成物が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特公平8−32847号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1記載の含フッ素共重合体は、硬化剤を含まない一液タイプの塗料として用いられており、塗膜硬度が充分ではない。また、該含フッ素共重合体を二液タイプの塗料に用いるために該含フッ素共重合体の水酸基価を高めると、弱溶剤に対する溶解性が低下し、塗装が困難になる。そのため、強溶剤を用いる必要があり、旧塗膜や下塗り塗膜を痛めるなどの問題が生じる。
したがって、本発明は、旧塗膜や下塗り塗膜を痛めることなく上塗り塗装が可能であり、硬度の高い塗膜を形成可能な塗料用組成物および塗料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、溶剤として、特定の混合溶剤を用いることにより上記課題を解決できることを見い出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、パラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a1)、および炭素数9以上の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a2)からなる混合溶剤(A)と、水酸基を含有し、溶剤(a1)に不溶であり且つ混合溶剤(A)に可溶または分散可能な含フッ素共重合体(B)とを含有する塗料用組成物を提供する。
また、本発明は、前記塗料用組成物および硬化剤を含有する塗料を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
≪塗料用組成物≫
本発明の塗料用組成物は、混合溶剤(A)と含フッ素共重合体(B)とを含有する。
まず、混合溶剤(A)について説明する。混合溶剤(A)は、パラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a1)、および炭素数9以上の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a2)からなる混合溶剤(A)を含有する。
溶剤(a1)および溶剤(a2)は、一般に塗料および塗装業界において「弱溶剤」と称される、複層塗膜や塗り替え時の重ね塗りをする際、旧塗膜や下塗り塗膜を侵すことの少ない、溶解力の弱い溶剤に含まれる。
【0010】
溶剤(a1)のパラフィン系炭化水素の具体例としては、例えばn−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、n−オクタン、2−メチルヘプタン、n−ノナン、2−メチルオクタン、2,3,4−トリメチルペンタン、n−デカン、2−メチルノナン、2−メチルデカン、およびこれらの混合物などが挙げられる。
溶剤(a1)のナフテン系炭化水素の具体例としては、例えばシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、およびこれらの混合物などが挙げられる。
これらのパラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、これらパラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素の混合物として知られるミネラルスピリット、またはミネラルターペンと称される溶剤が好ましく用いられる。
【0011】
これらのパラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素は、JIS K2201−1985に規定されるところのJIS分類「工業ガソリン−4号」および「工業ガソリン−5号」に該当する。
上記ミネラルスピリットは、一般に「工業ガソリン−4号」に相当するが、成分組成の違いによる引火点や蒸留範囲の違いにより、「工業ガソリン−5号」に含まれるものもある。
【0012】
溶剤(a1)に相当する溶剤は多数市販されており、本発明においては市販品を用いてもよい。
溶剤(a1)として使用できる市販品としては、新日本石油社製のミネラルスピリットA、Aソルベント、ハイアロム2S;シェルケミカルズ社製のLAWS、HAWS;エクソンモービル社製のペガソール3040、ペガソールAN45;および塗料、塗装業界で一般に用いられている、いわゆる「塗料用シンナー」等が挙げられる。
【0013】
溶剤(a2)は、炭素数9以上、好ましくは9〜10の芳香族炭化水素である。
炭素数9以上の芳香族炭化水素の具体例としては、例えばイソプロピルベンゼン、n−プロピルベンゼン、1−メチル−3−エチルベンゼン、1−メチル−4−エチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1−メチル−2−エチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、イソブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、1−メチル−3−イソプロピルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1−メチル−4−イソプロピルベンゼン、インダン、1−メチル−2−イソプロピルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1−メチル−3−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、1−メチル−4−プロピルベンゼン、1,2−ジエチルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ジメチル−5−エチルベンゼン、1−メチル−2−プロピルベンゼン、1,4−ジメチル−2−エチルベンゼン、2−メチルインダン、1−メチルインダン、1,2−ジメチル−4−エチルベンゼン、1,3−ジメチル−2−エチルベンゼン、1,2−ジメチル−3−エチルベンゼン、4−メチルインダン、5−メチルインダン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,3−ジメチル−4−エチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、テトラリン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン等が挙げられる。
該芳香族炭化水素は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、一般に混合物として市販されているものを使用してもよい。
溶剤(a2)として使用できる混合物の市販品としては、丸善石油化学社製のスワゾール1000;エクソンモービル社製のソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200;シェルケミカルズ社製のシェルゾールA100、シェルゾールA150;新日本石油化学社製のスーパーゾール1500、スーパーゾール1800等が挙げられる。
【0014】
混合溶剤(A)中の溶剤(a1)の割合は、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは50〜70質量%である。溶剤(a1)の割合が30質量%以上であると、旧塗膜や下塗り塗膜を侵すことなく上塗り塗装することができ、溶剤(a1)の割合が90質量%以下、すなわち溶剤(a2)の割合が10質量%より多いと、混合溶剤(A)の溶解力が、含フッ素共重合体(B)を溶解または分散させるのに充分なものとなる。
【0015】
塗料用組成物における混合溶剤(A)の含有量は、含フッ素共重合体(B)の溶解性、塗料として塗装する際の適度な粘度、塗装方法などを考慮して適宜決定される。
【0016】
なお、本発明の塗料用組成物は、溶剤として、混合溶剤(A)のほか、キシレン、トルエン等の溶解力の強い強溶剤を、全溶剤の5質量%以下であれば含有してもよいが、全溶剤が混合溶剤(A)であることが好ましい。ここで、強溶剤とは、労働安全衛生法による有機溶剤の分類における第2種有機溶剤に相当する溶剤である。
【0017】
次に、含フッ素共重合体(B)について説明する。本発明の塗料用組成物に含まれる含フッ素共重合体(B)は、水酸基を含有し、溶剤(a1)に不溶であり且つ混合溶剤(A)に可溶または分散可能であれば特に制限はなく、混合溶剤(A)の溶解力に応じて適宜公知の塗料用含フッ素共重合体を選択して用いることができる。
この含フッ素共重合体(B)として具体的には、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が30〜70質量%であり、ビニル系モノマーのうち、20〜50モル%が水酸基を含有し、10〜40モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有する含フッ素共重合体(以下、含フッ素共重合体(b1)という。)が好ましい。
【0018】
・含フッ素共重合体(b1)
フルオロオレフィンとしては、フッ素付加数は3以上が好ましく、3〜4がより好ましい。フッ素付加数が3以上であると、耐候性が充分であり好ましい。
フルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン等を挙げることができ、特にテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンが好ましい。
【0019】
ビニル系モノマーは、フルオロオレフィンと共重合可能であり、フルオロオレフィン以外のビニル系モノマーが好ましく使用される。該ビニル系モノマーとは、CH2 =CH−で表される炭素−炭素二重結合を有する化合物である。該ビニル系モノマーとしては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を含有するアルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル等が挙げられる。
【0020】
本発明において、ビニル系モノマーは、水酸基を含有するビニル系モノマー(以下、水酸基含有モノマーという。)と、炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有するビニル系モノマー(以下、分岐アルキル基含有モノマーという。)の両方を含む。なお、水酸基含有モノマーが炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有していてもよく、分岐アルキル基含有モノマーが水酸基を含有していてもよい。
本発明におけるビニル系モノマーのうち、20〜50モル%が水酸基を含有する水酸基含有モノマーが好ましく、20〜35モル%がより好ましい。
水酸基含有モノマーの使用量が20モル%以上であると、硬度の高い塗膜を得るために充分な量の水酸基が含フッ素共重合体中に導入されるため好ましい。
また、水酸基含有モノマーの含有量が50モル%以下であると、混合溶剤(A)に対し、塗料用として充分に可溶または分散可能となるため好ましい。
【0021】
水酸基含有モノマーの炭素数は、特に制限はないが、2〜10が好ましく、4〜6がより好ましい。
水酸基含有モノマーとしては、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類、ヒドロキシエチルアリルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類等が挙げられる。共重合性に優れ、形成される塗膜の耐候性が良好であることからヒドロキシアルキルビニルエーテル類が好ましい。
該水酸基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明におけるビニル系モノマーのうち、10〜40モル%が炭素数3以上の分岐アルキル基含有モノマーが好ましく、20〜30モル%がより好ましい。
分岐アルキル基含有モノマーが10〜40モル%であることにより、上記の量の水酸基含有モノマーを使用しても、混合溶剤(A)に対する溶解性または分散性を確保できる。
【0023】
分岐アルキル基含有モノマーにおける分岐アルキル基の炭素数は、3以上であれば特に制限はなく、4〜15が好ましく、4〜10がより好ましい。
分岐アルキル基含有モノマーとしては、分岐アルキル基を含有するビニルエーテル類、アリルエーテル類または(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基等が挙げられる。分岐アルキル基含有モノマーとしては、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2−EHVE)、tert−ブチルビニルエーテル(t−BuVE)等のビニルエーテル類が共重合性に優れるため好ましく、特に2−EHVEが好ましい。
該分岐アルキル基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明においては、ビニル系モノマーとして、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、水酸基含有モノマー、分岐アルキル基含有モノマー以外の他のビニル系モノマーを使用することが好ましい。
他のビニル系モノマーとしては、アルキル基を含有するモノマーが好ましく、該アルキル基としては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられる。該アルキル基の炭素数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
特に、環状アルキル基を含有するビニル系モノマーを用いると、含フッ素共重合体(b1)のガラス転移温度(Tg)が上がり、塗膜の硬度がさらに高まるため好ましい。
該環状アルキル基を含有するビニル系モノマーとしては、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル等の環状アルキルビニルエーテル類、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル類等が挙げられる。
該他のビニル系モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系モノマーの全量における他のビニル系モノマーの割合は、10〜70モル%であり、35〜60モル%が好ましい。
【0025】
含フッ素共重合体(b1)におけるフルオロオレフィンに基づく重合単位とビニル系モノマーに基づく重合単位の割合は、フルオロオレフィンに基づく重合単位が30〜70モル%であることが好ましく、40〜60モル%であることがより好ましく、ビニル系モノマーに基づく重合単位が70〜30モル%であることが好ましく、60〜40モル%であることがより好ましい。フルオロオレフィンに基づく重合単位の割合が70モル%以下であると、含フッ素共重合体(b1)の弱溶剤への溶解性が充分となり、30モル%以上であると充分な耐候性が得られるため好ましい。
【0026】
含フッ素共重合体(b1)は、フルオロオレフィンと、水酸基含有モノマーおよび分岐アルキル基含有モノマーを所定割合含むビニル系モノマーとの混合物に、重合媒体の存在下または非存在下で、重合開始剤または電離性放射線などの重合開始源を作用せしめて共重合反応を行うことによって製造できる。
共重合反応における、フルオロオレフィンとビニル系モノマーとの使用量の割合は、上記の含フッ素共重合体におけるフルオロオレフィンに基づく重合単位とビニル系モノマーに基づく重合単位の割合と同じであることが好ましい。
重合媒体としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、キシレン、トルエン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサノン、ソルベントナフサ、ミネラルターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ等の脂肪族系溶剤、3−エトキシプロピオン酸エチル、メチルアミルケトン、酢酸tert−ブチル、4−クロロベンゾトリフルオリド、ベンゾトリフルオリド、モノクロロトルエン、3,4−ジクロロベンゾトリフルオリド等が挙げられる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカーボネートニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系開始剤;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、2,2−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、tert−ブチルパーオキシピバレイト等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート類等の過酸化物系開始剤;等が挙げられる。
【0027】
含フッ素共重合体(b1)におけるフルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量は、含フッ素共重合体(b1)の総質量に対して、好ましくは30〜70質量%である。フッ素の含有量が30質量%以上であると、塗膜の耐候性が充分となり、70質量%以下であると、混合溶剤(A)に対して充分に可溶または分散可能であるため好ましい。
また、含フッ素共重合体(b1)は、硬化剤との反応性部位として水酸基を含有する。含フッ素共重合体(b1)中の水酸基価(以下、OHVという。)は、水酸化カリウムの化学的反応当量に換算して、含フッ素共重合体(b1)の総固形分に対し、40〜90mgKOH/gが好ましく、45〜70mgKOH/gがより好ましい。
OHVが40mgKOH/g以上であると、硬度の高い塗膜を得ることができ、OHVが90mgKOH/g以下であると、混合溶剤(A)に対し、含フッ素共重合体(b1)が充分な溶解性または分散性を有するため好ましい。
【0028】
含フッ素共重合体(b1)は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される数平均分子量(Mn)が5000〜15000であることが好ましい。Mnが5000以上であると耐候性に優れ、Mnが15000以下であると混合溶剤(A)に対する溶解性または分散性に優れるため好ましい。
また、含フッ素共重合体(b1)のガラス転移点(以下、Tgという。)は、30℃以上が好ましく、35〜45℃がより好ましい。Tgが30℃以上であると、高硬度の塗膜が得られるため好ましい。
【0029】
含フッ素共重合体(b1)は、さらに、カルボキシ基を含有することが好ましい。カルボキシ基を含有することにより、例えば塗料として用いる際に顔料の分散性が向上する。含フッ素共重合体(b1)中のカルボキシ基の含有量(酸価(以下、AVという。))は、水酸化カリウムの化学的反応当量に換算して、含フッ素共重合体(b1)の総固形分に対し、1〜8mgKOH/gが好ましく、2〜5がより好ましい。
該カルボキシ基は、例えば、上述したフルオロオレフィンとビニル系モノマーとの重合反応後、含フッ素共重合体(b1)中の水酸基に多価カルボン酸またはその無水物を反応させることにより導入できる。また、カルボキシ基を有するビニル系モノマーの直接重合によっても導入できる。
【0030】
本発明の塗料用組成物は、混合溶剤(A)および含フッ素共重合体(B)のほか、塗膜の乾燥性を改善するために、CAB(セルロースアセテートブトレート)、NC(ニトロセルロース)等を含有していてもよく、塗膜の光沢、硬度、塗料の施工性を改良するために、アクリル酸またはそのエステルからなる重合体、ポリエステル等の塗料用樹脂を含有していてもよい。
【0031】
本発明の塗料用組成物においては、含フッ素共重合体(B)が、塗料用組成物中に含まれる総固形分の20質量%以上を占めることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が最も好ましい。
【0032】
本発明の塗料用組成物は、含有する固形分の全量が混合溶剤(A)に溶解していることが最も好ましいが、若干の不溶部を有し、混合溶剤(A)中に分散していてもよい。
【0033】
本発明の塗料用組成物は、二液タイプの塗料として、使用前に硬化剤と混合されて用いられる。
【0034】
≪塗料≫
本発明の塗料は、本発明の塗料用組成物および硬化剤を含有する。
該硬化剤としては、含フッ素共重合体中の水酸基と架橋可能な硬化剤、例えばイソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤、メラミン系硬化剤等の塗料用硬化剤等が挙げられる。
イソシアネート系硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の無黄変イソシアネート類が挙げられる。
ブロックイソシアネート系硬化剤としては、イソシアネート硬化剤のイソシアネート基をカプロラクタム、イソホロン、β−ジケトン等でブロックしたものが挙げられる。
メラミン系硬化剤としては、ブチル化メラミン等の低級アルコールによりエーテル化されたメラミン、エポキシ変性メラミン等が挙げられる。
【0035】
塗料における硬化剤の含有量は、塗料用組成物中の含フッ素共重合体(B)を含む樹脂成分の100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
硬化剤が1質量部以上であると、塗膜の耐溶剤性と硬度が充分となり、硬化剤が100質量部以下であると、加工性、耐衝撃性に優れるため好ましい。
【0036】
本発明の塗料は、必要に応じて、他の機能性配合剤を含有することが好ましい。他の機能性配合剤としては、着色顔料、染料、塗膜の付着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、つや消し剤等が挙げられる
着色顔料、染料としては、耐候性の良いカーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等の有機顔料、染料等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
硬化促進剤としては、イソシアネート系硬化剤用にジブチルスズジラウレート等、メラミン系硬化剤用にパラトルエンスルホン酸等の酸性触媒が挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられ、アデカスタブLA62、アデカスタブLA67(以上、アデカアーガス化学社製、商品名)、チヌビン292、チヌビン144、チヌビン123、チヌビン440(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。
つや消し剤としては、超微粉合成シリカ等が挙げられ、つや消し剤を使用した場合、優雅な半光沢、つや消し仕上げの塗膜を形成できる。
【0037】
本発明の塗料の製造は、本発明の塗料用組成物、硬化剤、必要に応じて添加される機能性配合剤を混合することにより行うことができる。
その混合順序は特に限定されず、本発明の塗料用組成物と添加剤を予め混合し、それに硬化剤を混合してもよく、本発明の塗料用組成物および硬化剤を混合し、次いで添加剤を混合してもよく、これらを同時に混合してもよい。
【0038】
本発明の塗料を用いて塗装する方法としては、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコーター、フローコーター等の任意の方法を適用できる。
【0039】
塗装される物品材質としては、コンクリート、自然石、ガラス等の無機物、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタン等の金属、プラスチック、ゴム、接着剤、木材等の有機物が挙げられる。特に、すでに形成された塗膜の表面への塗装に適する。また有機無機複合材であるFRP、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリート等の塗装にも適する。
【0040】
また塗装される物品としては、自動車、電車、航空機等の輸送用機器、橋梁部材、鉄塔などの土木部材、防水材シート、タンク、パイプ等の産業機材、ビル外装、ドア、窓門部材、モニュメント、ポール等の建築部材、道路の中央分離帯、ガードレール、防音壁、ポリカーボネート製透光板等の道路部材、通信機材、電気および電子部品等が挙げられる。
【0041】
【実施例】
以下に発明をより詳細に説明するために実施例(例1〜2は実施例、例3〜6は比較例)を示す。本発明は、これらの例によって何ら制限されない。
【0042】
(含フッ素共重合体Bの製造)
内容積2000mLのステンレス製撹拌機付きオートクレーブに、組成がシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)の284g、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2−EHVE)の149gおよびヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)の131gであるビニル系モノマー混合物と、キシレンの670g、エタノールの189gおよび炭酸カリウムの9.5gを投入し、窒素により溶存酸素を除去した。
その後、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)の505gをオートクレーブ中に導入して徐々に昇温し、65℃に達した後、tert−ブチルパーオキシピバレートの50%キシレン溶液の7.0gを7時間かけてオートクレーブ中に導入し、その後さらに15時間撹拌した後に反応を停止した。
得られた含フッ素共重合体のキシレン溶液をエバポレーションしながら、ミネラルスピリットAおよびソルベッソ100の混合溶剤B(質量比4:6)への溶媒置換を行い、不揮発分を60質量%にした後、水素添加無水フタル酸の5.8gを添加し、さらにトリエチルアミンの0.05gを添加した後、フラスコを徐々に昇温した。フラスコ内の温度が70℃に達した後、その温度を2時間保持し、数平均分子量(Mn)が7000、水酸基価が55mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、Tgが32℃である含フッ素共重合体Bの混合溶剤B溶液(不揮発分60質量%)を得た。
【0043】
(含フッ素共重合体Cの製造)
含フッ素共重合体Bの製造において、ビニル系モノマーの組成をCHVEの241g、2−EHVEの163g、HBVEの161gとし、混合溶剤Bの代わりに、HAWSおよびソルベッソ100の混合溶剤C(質量比5:5)を用いた以外は含フッ素共重合体Bの製造と同様にして、Mnが7200、水酸基価が65mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、Tgが27℃である含フッ素共重合体Cの混合溶剤C溶液(不揮発分60質量%)を得た。
【0044】
(含フッ素共重合体Dの製造)
含フッ素共重合体Bの製造において、ビニル系モノマーの組成をCHVEの274g、2−EHVEの190g、HBVEの111gとし、混合溶剤Bの代わりに、ミネラルスピリットAおよびキシレンの混合溶剤D(質量比3:7)を用いた以外は含フッ素共重合体Bの製造と同様にして、Mnが10000、水酸基価が46mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、Tgが30℃である含フッ素共重合体Dの混合溶剤D溶液(不揮発分60質量%)を得た。
含フッ素共重合体Dは、混合溶剤Dに溶剤(a2)を用いず、キシレンを用いた点で、本発明に相当しない。
【0045】
(含フッ素共重合体Eの製造)
含フッ素共重合体Bの製造において、ビニル系モノマーの組成をCHVEの313g、2−EHVEの122g、エチルビニルエーテル(EVE)の57gとし、混合溶剤Bの代わりに、HAWSおよびソルベッソ100の混合溶剤E(質量比6:4)を用いた以外は含フッ素共重合体Bの製造と同様にして、Mnが4000、水酸基価が0mgKOH/g、酸価が0mgKOH/g、Tgが35℃である含フッ素共重合体Eの混合溶剤E溶液(不揮発分60質量%)を得た。
含フッ素共重合体Eは、水酸基を含有しない点で、本発明に相当しない。
【0046】
(含フッ素共重合体Fの製造)
含フッ素共重合体Bの製造において、ビニル系モノマーの組成をCHVEの285g、2−EHVEの285g、HBVEの30gとし、ミネラルスピリットAのみを溶剤として用いた以外は含フッ素共重合体Bと同様の操作を行い、Mnが7400、水酸基価が13mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、Tgが30℃である含フッ素共重合体Eのミネラルスピリット溶液(不揮発分60質量%)を得た。
含フッ素共重合体Fは、溶剤としてミネラルスピリットのみを用いた点で、本発明に相当しない。
【0047】
(含フッ素共重合体Gの製造)
含フッ素共重合体Bの製造において、ビニル系モノマーの組成をCHVEの274g、HBVEの111g、EVEの88gとし、溶媒置換を行わず、キシレン溶液とした以外は含フッ素共重合体Bの製造と同様にして、Mnが7500、水酸基価が46mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、Tgが30℃である含フッ素共重合体Gのキシレン溶液(不揮発分60質量%)を得た。
含フッ素共重合体Gは、溶剤にキシレンを用いた点で、本発明に相当しない。また、分岐アルキル基含有モノマーである2−EHVEを用いていない。
【0048】
表1に、含フッ素共重合体B〜Gのモノマー組成(モル%)、水酸基価、酸価、Mn、Tg、および用いた溶剤の種類と量(不揮発分60質量%の各溶液を100としたときの質量比)を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
<例1〜6>
含フッ素共重合体B〜Gの溶液(不揮発分60質量%)の100質量部に対し、「ミネラルスピリットA」、着色顔料として酸化チタン「Titone D−918」(堺化学社製)、ミネラルスピリット可溶型イソシアネート硬化剤「タケネートD−178N」(三井武田ケミカル社製)、硬化触媒としてジブチルスズジラウレートを表2に示す量(質量部)入れて均一に混合撹拌し、7種の塗料B〜Gを作製した。
塗料B〜Gを、塩化ゴム塗料塗装後10年経過後の鉄部材の表面に、乾燥塗膜が25μmとなるようにスプレー塗装し、塗膜を形成した。得られた塗装試験体を23℃恒温室中で2週間養生した後、以下の評価を行った。その結果を表2に併記する。
【0051】
1)塗膜の粘着性:塗装後、24時間室温(23℃)に放置した後、指触にて判定し、粘着性がなければ○、粘着性があれば×とした。
2)カーボン汚れ性:塗膜表面にカーボンブラック#5(デグサ社製商品名)を均一に振りかけた後で、払い落とし、汚れの程度を、振りかけていない場所とのΔL値で表した。ΔLが10以上であると汚染性があると判断できる。
3)施工性試験:塗装1日経過後、塗膜のリフティング(下層塗膜うき)が無ければ○、有れば×と判定した。
4)耐候性試験:サンシャインウェザーメーター試験機(スガ試験機製)にて4000時間曝露照射。曝露前後の光沢値を測定し、光沢保持率(%)をもって、塗膜の耐候性を評価した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2において、例1,2における塗料B,Cを用いた塗膜は、全ての項目で優れていた。
一方、例3,6における塗料D,Gを用いた塗膜は、溶剤にキシレン(溶解力が強い強溶剤)を用いているため、施工性が劣っていた。
例4,5における塗料E,Fを用いた塗膜は、粘着性に劣っていた。また、カーボン汚れ性に劣っていたことから、例4,5の塗膜の硬度が低かったと推測される。
【0054】
【発明の効果】
本発明の塗料用組成物および塗料は、特定の混合溶剤を媒体としているため、旧塗膜や下塗り塗膜を痛めることなく上塗り塗装でき、硬度の高い塗膜を形成できる。
Claims (5)
- パラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a1)、および炭素数9以上の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(a2)からなる混合溶剤(A)と、水酸基を含有し、溶剤(a1)に不溶であり且つ混合溶剤(A)に可溶または分散可能な含フッ素共重合体(B)とを含有する塗料用組成物。
- 混合溶剤(A)中の溶剤(a1)の含有量が30〜90質量%である請求項1に記載の塗料用組成物。
- 含フッ素共重合体(B)が、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が30〜70質量%であり、ビニル系モノマーのうち、20〜50モル%が水酸基を含有し、10〜40モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有する請求項1または2に記載の塗料用組成物。
- 含フッ素共重合体(B)の水酸基価が40〜90mgKOH/gである請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料用組成物および硬化剤を含有する塗料。
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