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JP2004257418A - トリポード型等速自在継手 - Google Patents

トリポード型等速自在継手 Download PDF

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JP2004257418A
JP2004257418A JP2003045955A JP2003045955A JP2004257418A JP 2004257418 A JP2004257418 A JP 2004257418A JP 2003045955 A JP2003045955 A JP 2003045955A JP 2003045955 A JP2003045955 A JP 2003045955A JP 2004257418 A JP2004257418 A JP 2004257418A
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Abstract

【課題】トリポード型等速自在継手のトラニオンジャーナル首下の強度を確保したまま、軽量コンパクト・低コストを達成する。
【解決手段】内側ローラ22とトラニオンジャーナル16bとの間のすきまを小さく確保したまま球面嵌合する高耐久タイプのトリポード型等速自在継手において、トリポードジャーナル16bの付け根部を、継手円周方向の径が継手軸方向の径より大きい非円形断面とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係るトリポード型等速自在継手は、たとえば自動車の駆動系に組み込み、非直線上に存在する回転軸同士の間で、等角速度で回転力の伝達を行う場合に利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の駆動系に組み込む等速自在継手の一種としてトリポード型等速自在継手が広く使用されている。たとえば特開昭62−233522号公報には、図17および図18に示すようなトリポード型の等速自在継手が記載されている。このトリポード型等速自在継手1は、駆動軸等の第一の回転軸2の端部に固定される中空筒状のハウジング3と、車輪側の回転軸等の第二の回転軸4の端部に固定されるトリポード5とから構成される。
【0003】
ハウジング3の内周面には、円周方向三等分位置に、ハウジング3の軸方向に延びる凹溝6が形成されている。一方、トリポード5は、第二の回転軸4の端部に固定するためのボス7と、ボス7の円周方向三等分位置から半径方向に突出した円柱状のトラニオンジャーナル8とから構成される。各トラニオンジャーナル8は、ローラ9を、ニードルローラ10を介して回転自在に、かつ、軸方向にわたる若干の変位自在に支持している。そして、これらのローラ9をハウジング3の凹溝6にはめ込むことにより、トリポード型等速自在継手1を構成している。なお、各凹溝6を構成する一対のガイド面6aはそれぞれ円弧状凹面で、各ローラ9はこれら一対のガイド面6a間に、転動および揺動自在に支持される。
【0004】
上述のように構成されたトリポード型等速自在継手1の使用時、たとえば第一の回転軸2が回転するとこの回転力は、ハウジング3からローラ9、ニードルローラ10、トラニオンジャーナル8を介してトリポード5のボス7に伝わり、第二の回転軸4を回転させる。また、図18のように第一の回転軸2の中心軸と第二の回転軸4の中心軸とが不一致の場合、つまりトリポード型等速自在継手1が作動角をとった場合には、両回転軸2,4の回転に伴って各トラニオンジャーナル8が対応する凹溝6のガイド面6aに対して、図17および図18に示すように、トリポード5を中心として揺動する方向に変位する。この際、各トラニオンジャーナル8に支承されたローラ9が、凹溝6のガイド面6a上を転動するとともに、トラニオンジャーナル8の軸方向に変位する。これらの動きにより、周知のように、第一、第二の回転軸2,4間で等速性が確保される。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−233522号公報
(第1頁右下欄第14行〜第2頁左下欄第17行、図7、図8)
【特許文献2】
フランス特許第2752890号明細書
(第3頁第29行〜第6頁第11行、図2、図3B)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来のトリポード型等速自在継手1の場合、作動角をとった状態で第一、第二の回転軸2,4を回転させると、各ローラ9が複雑な運動を行う。すなわち、各ローラ9は、ガイド面6aに沿ってハウジング3の軸方向に向きを変えながら移動し、しかも、トラニオンジャーナル8の軸方向に変位する。各ローラ9がこのような複雑な動きをすると、各ローラ9の外周面とガイド面6aとの間の相対変位が必ずしも円滑に行なわれなくなって、これら両面間に比較的大きな摩擦が発生する。その結果、図17および図18に示すような構造のトリポード型等速自在継手の場合には、1回転3次の軸力が発生する。そして、自動車に組み込まれて大きな作動角をとった状態で大きなトルクを伝達する際など、著しい場合にはジャダーと呼ばれる振動が発生することが知られている。
【0007】
上記問題点を解決する手段として、フランス特許第2752890号明細書には、図19に示すような構造が提案されている。図19の構造は、ローラ(9a,9b)をハウジング凹溝に平行にガイドする構造とし、内側ローラ9aの球形内周面とトラニオンジャーナル8の球形外周面との間で調心および揺動が可能な球面嵌合構造としてある。トラニオンジャーナル8の母線の曲率半径rTをトラニオンジャーナル8の半径Rより小さくして、図19(a)のようにトラニオンジャーナル8に対しローラ(9a,9b)を継手円周方向に傾けたときφA<φBの関係が成り立つようにし、かつ、平面部8aを設けることによって、球面嵌合を可能としている。
【0008】
しかしながら、この場合、互いに球面嵌合する内側ローラ9aの内球面の曲率に対し、トラニオンジャーナル8の曲率rTを小さくする必用があり、面圧が大きくなるという問題がある。トラニオンジャーナル8の曲率rTを小さくしなくても、球面嵌合すきまを大きく設定することにより、組付け可能となるが、この場合、ジョイントの回転方向ガタが大きくなるという問題がある。また、トルク負荷を受ける継手円周方向のトラニオンジャーナル付け根部とローラとの干渉を避ける必要があるため、トラニオンジャーナルの首下径を大きくすることには限界がある。しかも、小型軽量化を目的として限界設計を施す場合、トルク負荷を受ける継手円周方向のトラニオンジャーナル付け根部はトラニオンジャーナルの強度最弱部になる可能性が高く、高強度確保が困難である。
【0009】
本発明の目的は上に述べたような問題点を解消することにある。すなわち、本発明は、球面嵌合する内側ローラとトラニオンジャーナルとの間のすきまを小さくして回転方向ガタを小さく保ったまま、球面嵌合により面圧を低減させた高耐久タイプのトリポード型等速自在継手において、トラニオンジャーナル首下の強度を確保しつつ、軽量コンパクト・低コストをも達成することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のトリポード型等速自在継手は、軸方向一端側にて開口し内周面の円周方向三等分位置に軸方向に延びる凹溝14aを形成した、第一の回転軸12の端部に固定される中空円筒状のハウジング14と、
第二の回転軸13の端部に固定されるボス16aと、ボス16aの円周方向三等分位置から半径方向に突出した端部が球状のトラニオンジャーナル16bとからなるトリポード16と、
内周面をトラニオンジャーナル16bの球状外周面に首振り自在にはめ込んだ内側ローラ22と、内側ローラ22の外周面にニードルローラ24を介して回転および軸方向移動可能に支持された外側ローラ26とからなるローラアセンブリ20とを有し、
外側ローラ26をハウジング14の凹溝14aに収容させてハウジング軸方向に転動自在とし、凹溝14aが、外側ローラ26の外周面と接して負荷を受けるガイド面14bと外側ローラ26をハウジング軸方向に案内する案内肩面14cとからなり、
ローラアセンブリをトラニオンジャーナルに組み込む際、ローラアセンブリを継手軸方向に傾けて組み付けるトリポード型等速自在継手11において、
トリポードジャーナル16bの付け根部が、継手円周方向の径が継手軸方向の径より大きい非円形断面であることを特徴とするものである。
【0011】
継手円周方向の径が継手軸方向の径より大きい非円形としては、たとえば、短軸を継手軸方向に向けた楕円形(図1(b)参照)を挙げることができる。ローラアセンブリを、継手軸方向を含む平面内で傾けてトラニオンジャーナルに組み付けることにより、ジャーナル首下部とローラとの組付け用干渉逃げは、ジャーナル首下部の継手軸方向側にのみ存在すればよいため、継手円周方向側には組付け用の干渉逃げが不要となる。このような仕様の場合、トルク負荷を受ける際の最大応力位置となりやすい首下円周方向位置の干渉逃げがないため、強度向上が可能となり、よりコンパクトな継手とすることが可能となる。
【0012】
トリポード16のボス16aの、第二の回転軸13の端部側の外径を大きく面取り(16c)してもよく、そうすることにより、ローラアセンブリ20を傾けてトラニオンジャーナル16bに組み付ける際にローラアセンブリ20をより大きく傾けることが可能となり、組付時のトリポード16と第二の回転軸13との間のトルク伝達は、ボス16aにおいて第二の回転軸非端部側で大半を受け持つため、ボス16aの、第二の回転軸13の端部側は大きく面取りしてもボス部の強度低下を招くことがない。
【0013】
トラニオンジャーナル16bの鍛造パーティングライン16dに沿って、パーティングライン凸高さがトラニオンジャーナル16bの球面径以下になるように、部分的に逃げ16e(図6、図8)を設けてもよい。逃げ16eを設けることにより、鍛造パーティングライン16dの隆起部がトラニオンジャーナル16bの球面径よりも内側に後退するため、鍛造パーティングライン16dの隆起部の除去加工なしに、内側ローラ22とトラニオンジャーナル16bとを小さなすきまで球面嵌合させることが可能となり、面圧が低減する。したがって、本発明によれば、車両に組み付けた際のジャダー低減と高耐久性および低コストを両立させたトリポード型等速自在継手を提供することができる。
【0014】
トルク負荷域におけるトラニオンジャーナル16bの断面形状を略二球面形状(図9)としてもよい。その場合、トラニオンジャーナル16bのパーティングライン位置は内側ローラ22の内球面よりも小径側に退避しているため、別段の手段を講じなくとも逃げ16eが形成される。トルク負荷状態では、トラニオンジャーナル16bと内側ローラ22との接触部は、トラニオンジャーナル16bの鍛造パーティングライン16dを挟んで対称な二箇所に位置することとなるが、球面で当たることからエッジロードの心配もない。
【0015】
上記略二球面形状の具体的な態様としては、内側ローラ22の球状内周面の曲率半径をrとしたとき、トラニオンジャーナル16bの二球面の半径Rをr/2<R<rの範囲に設定したものを挙げることができる。
【0016】
ローラアセンブリ20がトラニオンジャーナル16bから分離し始める角度をθ1としたとき、トリポードキット(16,20)に回転軸(13,13a)を装着した後、ローラアセンブリ20を角度θ2(θ2<θ1)まで傾けると回転軸(13,13a)と干渉するように設定することができる(図12)。ここで、トリポード16とローラアセンブリ20とからなるユニットをトリポードキットと呼ぶこととする。また、回転軸とは、回転軸13自体のみならず、止め輪13aのように回転軸13に取り付けた別部材をも含むものとする。このような構成を採用することにより、トリポード16とローラアセンブリ20とからなるユニットすなわちトリポードキットの状態でトリポード16を第二の回転軸13に組み付け、一旦止め輪13aを装着すると、止め輪13aまたは回転軸13と干渉して内側ローラ22がトラニオンジャーナル16bから分離する角度θ1まで傾くことができず、トリポードキット(16,20)と回転軸4とがユニットハンドリング状態となって取り扱いが非常に容易になる。
【0017】
外側ローラ26の内周面の少なくとも一方の端部にニードルリテーナ(26aまたは26b)を一体に設けることができる(図13)。内側ニードルリテーナ26aおよび外側ニードルリテーナ26b共に外側ローラ26に一体的に形成することによって、内側ローラ22とニードルローラ24と外側ローラ26の三体のみでローラアセンブリを構成することができ、部品点数を削減できる。
【0018】
内側ローラ22の外周面の少なくとも一方の端部にニードルリテーナ(22aまたは22b)を一体に設けることができる(図14)。内側ニードルリテーナ22aおよび外側ニードルリテーナ22b共に内側ローラ22に一体的に形成することによって、内側ローラ22とニードルローラ24と外側ローラ26の三体のみでローラアセンブリを構成することができ、部品点数を削減できる。
【0019】
外側ローラ26の円筒形内周面の継手内径側端部の内径Diを内側ローラ22の外径doよりも小さくする(Di<do)ことができる(図15)。このような構成を採用することにより、トリポードキット(16,20)の状態で、外側ローラ26が内側ローラ22から分解しにくくなるため、取り扱いが容易になる。
【0020】
内側ローラ22の円筒形外周面の継手外径側端縁の外径doを外側ローラ26の内径Diより大きくする(do>Di)ことができる(図16)。このような構成を採用することにより、トリポードキット(16,20)の状態で、外側ローラ26が内側ローラ22から分解しにくくなるため、取り扱いが容易になる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面に従って本発明の実施の形態を説明する。まず、図2および図3に従って基本的構成を説明すると、トリポード型等速自在継手11は、駆動軸等の第一の回転軸12の端部に固定される中空筒状のハウジング14と、車輪側の回転軸等の第二の回転軸13の端部に固定されるトリポード16とから構成される。
【0022】
ハウジング14は第一の回転軸12と一体的に形成され、内周面の円周方向三等分位置に、軸方向に延びる凹溝14aを持っている。各凹溝14aは、ハウジング14の内周面から半径方向外方に向けて凹入しており、円周方向に向かい合った一対のガイド面14bと、ハウジングの半径方向外側に位置して両ガイド面14bを接続する底面とで構成されている。一対のガイド面14bは、後述する外側ローラ26をハウジング軸方向に案内して転動させるための軌道を提供し、外側ローラ26との間でトルクを伝達する。また、凹溝14aの底面の一部には外側ローラ26の転動を案内する案内肩面14cが形成されている。この案内肩面14cは、外側ローラ26が凹溝14a内を移動する際にハウジング軸方向と平行な姿勢を維持させ、円滑に転動させる役割を果たす。
【0023】
トリポード16はボス16aとトラニオンジャーナル16bとから構成される。ボス16aは第二の回転軸13の端部に固定される。たとえば、第二の回転軸13に形成されたスプライン軸とボス16aに形成されたスプライン孔とを嵌合させ、止め輪13aで位置決めする。トラニオンジャーナル16bはボス16aの円周方向三等分位置から半径方向に突出している。各トラニオンジャーナル16bの端部は球状を呈している。
【0024】
各トラニオンジャーナル16bはローラアセンブリ20を支持している。ローラアセンブリ20は、ニードルローラ24を介して相対回転自在の内側ローラ22と外側ローラ26とからなるダブルローラタイプである。内側ローラ22の内周面はトラニオンジャーナル16bの球状外周面と略同一の曲率半径の球状で、内側ローラ22とトラニオンジャーナル16bとが球面嵌合している。このようにして、内側ローラ22の球状内周面がトラニオンジャーナル16bの球状外周面の周囲に首振り自在に支持されている。
【0025】
内側ローラ22の円筒形外周面と外側ローラ26の円筒形内周面との間にニードルローラ24が介在している。したがって、内側ローラ22と外側ローラ26は相対的に回転および軸方向変位が可能である。ニードルローラ24の抜け出しを防止するため、ニードルローラ24の両端側に環状のニードルリテーナ25aを配置し、外側ローラ26の両端部内周面に形成した止め輪溝に止め輪25bを装着してニードルリテーナ25aの抜け止めをしてある(図4参照)。
【0026】
外側ローラ26はハウジング14の凹溝14aに収容される。各凹溝14aを構成する一対のガイド面14bは、ハウジング14の横断面(図2)において、外側ローラ26の外周面の母線と略同一の円弧状である。したがって、外側ローラ26はこれら一対のガイド面14b間に転動自在に支持される。
【0027】
上述のように構成されたトリポード型等速自在継手の使用時、たとえば第一の回転軸12が回転するとこの回転力は、ハウジング14からローラアセンブリ20とトラニオンジャーナル16bを介してトリポード16のボス16aに伝わり、第二の回転軸13を回転させる。また、図3のように第一の回転軸12の中心軸と第二の回転軸13の中心軸とが不一致の場合、言い換えれば作動角をとった状態では、両回転軸の回転に伴って各トラニオンジャーナル16bが対応する凹溝14aのガイド面14bに対して、トリポード16を中心として揺動する方向に変位する。その際、トラニオンジャーナル16bに支承された外側ローラ26が、凹溝14aのガイド面14b上を転動するとともにトラニオンジャーナル16bの軸方向に変位する。これらの動きにより、周知のように、第一、第二の回転軸12,13の間で等速性が確保される。
【0028】
図1に示すように、トリポードジャーナル16bの付け根部は継手円周方向の径が継手軸方向の径より大きい非円形断面である。図1(b)は、継手円周方向の径が継手軸方向の径より大きい非円形の代表例として、短軸を継手軸方向に向けた楕円形を示している。
【0029】
図5は、トリポードジャーナル16bにローラアセンブリ20を組み付ける際の要領を示す。同図に符号16cで示すように、トリポード16のボス16aの、第二の回転軸13の端部側(図3の右側、図5では左側)のみに大きな面取りを設けてある。この大きな面取りがトラニオンジャーナル16bとローラアセンブリ20との干渉逃げとして機能し、トラニオンジャーナル16bにローラアセンブリ20を組み付ける際に、図5に想像線で示すようにローラアセンブリ20を大きく傾けることを可能にする。そして、ローラアセンブリ20(の内側ローラ22)とトラニオンジャーナル16bとが干渉するのは、トルク負荷が作用する方向(図5の紙面に垂直な方向)における対向二箇所のみとなるため、内側ローラ22を弾性変形させながら押し込むことにより組み付けが可能となる。
【0030】
なお、トラニオンジャーナル16bとローラアセンブリ20との干渉逃げは、継手軸方向のトラニオンジャーナル首下部に存在すればよく、継手円周方向のトラニオンジャーナル首下部には不要である。この仕様の場合、トルク負荷を受ける際の最大応力位置となりやすい首下円周方向位置の干渉逃げが不要なため、強度向上が可能となり、よりコンパクトなトリポード型等速自在継手とすることが可能となる。さらに、トラニオンジャーナル16bのトルク負荷を受ける位置と直角方向二箇所(負荷範囲外)に平面を設けて逃げてもよい。
【0031】
上記構造によれば、高性能タイプのトリポード型等速自在継手において、内側ローラ22の球状内周面と球状トラニオンジャーナル16bとの間でトルクを伝達するため、接触面圧が低く抑えられ、強度・耐久性に有利であるとともに、トラニオンジャーナル16bの首下強度も向上するため、高性能と高強度・高耐久性・コンパクトのすべてを満足するトリポード型等速自在継手を提供することが可能となる。
【0032】
図6に示す実施の形態では、トラニオンジャーナル16bの外周面は内側ローラ22の球状内周面と球面嵌合する球状であるが、鍛造パーティングライン16dの隆起部が図6(c)に破線で示す球面径よりも内側に後退してそこから突出しないように、鍛造パーティングライン16dに沿って部分的に逃げ16eを設けてある。このため、鍛造パーティングライン16dの隆起部除去工程を省くことが可能となり、冷間成形面のまま使用可能で、低コスト化が図れる。この場合、逃げ16e部分は負荷を受けることができないため負荷面積が小さくなるが、トラニオンジャーナル16bと内側ローラ22とが球面嵌合により広範囲で負荷を受けるタイプであるため、一部負荷範囲を削減しても十分な負荷要領を保持することができる。また、逃げ16eを設けた場合、逃げ16eのない場合と比較して内側ローラ22をトラニオンジャーナル16bに組み付ける際の干渉しろを少なくする効果が得られ、内側ローラ22の弾性変形量を少なく、または無くすることができる。
【0033】
逃げ16eの具体的な態様としては種々考えられる。最も単純な例としては、図7(a)に示すように球面の一部を切除して平坦面を形成することが挙げられる。しかしながら、単に球面の一部を削除することによって逃げ部を設けた場合、逃げ部の幅寸法Aが大きくなり、負荷を受ける面積が小さくなる。そこで、たとえば図8(a)〜(c)に示すように、トラニオンジャーナル16bの縦断面において、円弧状を呈する逃げ16eとすることもできる。この実施の形態の場合、逃げ部幅寸法Bが小さく、負荷を受ける面積が大きくなる有利さがある。しかしながら、どちらの実施例も図7(b)に示すような接触状態となり、エッジ部に応力集中が発生して早期剥離を起こしてしまう。エッジ部に隅Rを設定しても十分な効果が得られないことがある。
【0034】
図9に示す実施の形態は、トラニオンジャーナル16bのトルク負荷域の外形形状を略二球面形状としたものである。具体的には、内側ローラ22の球状内周面の曲率半径をrとしたとき、トラニオンジャーナル16bの二球面の半径Rをr/2<R<rの範囲に設定する。この場合、パーティングライン位置は内側ローラの内球面よりも小径側に退避しているため、別段の手段を講じなくとも逃げ16eが形成される。トルク負荷状態では、トラニオンジャーナル16bと内側ローラ22との接触部は、トラニオンジャーナル16bの鍛造パーティングライン16dを挟んで対称な二箇所に位置する。
【0035】
図10に示す実施の形態は、ローラアセンブリ20(の内側ローラ22)をトラニオンジャーナル16bに組み付ける際に傾ける角度をθとしたとき、鍛造パーティングライン16dの隆起部最外形部を含めたトラニオンジャーナル16bの角度θ方向からの投影最大径φDを、内側ローラ22の嵌合挿入側内径φdより小さく設定したものである。
【0036】
図11に示す実施の形態は、内側ローラ22の挿入側内径に部分的に切り欠きを設け、その切り欠き部の内径をφd2、トラニオンジャーナル16b(鍛造パーティングライン16dを含む)の角度θ方向の投影最大径をφD2としたとき、φD2<φd2に設定したものである。これにより、トラニオンジャーナル16bにローラアセンブリ20を組み付ける際に内側ローラ22を弾性変形させることなく組み付けることが可能となる。したがって、この実施の形態によれば、鍛造パーティングライン除去工程と、トラニオンジャーナル16bにローラアセンブリ20を組み付ける際の圧入工程を省くことが可能となる。
【0037】
図12に示す実施の形態は、トラニオンジャーナル16bに対してローラアセンブリ20を傾けていって内側ローラ22がトラニオンジャーナル16bから外れ出す角度をθ1としたとき、内側ローラ22の角度がθ1よりも僅かに小さい角度θ2になった時点で、外側ローラ26が第二の回転軸13または止め輪13aに干渉するように、寸法設定したものである。このような構成を採用することにより、トリポード16とローラアセンブリ20とからなるユニットすなわちトリポードキットの状態でトリポード16を第二の回転軸13に組み付け、一旦止め輪13aを装着すると、止め輪13aまたは第二の回転軸13と干渉して内側ローラ22がトラニオンジャーナル16bから分離する角度θ1まで傾くことができず、トリポードキット(16,20)と回転軸13とが分解してしまうことのないユニットハンドリング状態となり、取り扱いが容易になる。
【0038】
図13に示す実施の形態は、外側ローラ26の円筒形内周面の両端部に円周にわたり突起を設けてニードルリテーナ26a,26bを一体形成したものである。ニードルリテーナ26a,26bは、図示するように両方とも外側ローラ26と一体とするほか、内側または外側のどちらか一方のみ外側ローラ26と一体とし、他方は別体とすることも可能である。
【0039】
図14に示す実施の形態は、内側ローラ22の円筒形外周面の両端部に全周にわたり突起を設けてニードルリテーナ22a,22bを一体形成したものである。ニードルリテーナ22a,22bは、図示するように両方とも内側ローラ22と一体とするほか、内側または外側のどちらか一方のみ外側ローラ22と一体とし、他方は別体とすることも可能である。
【0040】
図15に示す実施の形態は、外側ローラ26の内側ニードルリテーナ26aの内径をφDi、内側ローラ22の外径をφdoとしたとき、φDi<φdoなる関係に設定したものである。この実施の形態では、φDi<φdoの関係に設定しているため、トリポードキット(16,20)の状態で、外側ローラ26が内側ローラ22から分解しにくくなる。また、図15において外側ローラ26が下に下がった場合でもトリポード16のボス16a部に干渉してニードルローラ24が分解しないように設定することにより、一層取り扱いが容易になる。
【0041】
図16に示す実施の形態は、内側ローラ22の外側ニードルリテーナ22bの外径をφdo、外側ローラ26の内径をφDiとしたとき、φDi<φdoなる関係に設定したものである。この実施の形態では、φDi<φdoの関係に設定しているため、トリポードキット(16,20)の状態で、外側ローラ26が内側ローラ22から分離しにくくなるため、取り扱いが容易になる。
【0042】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、車両の振動を低減できるとともに、高強度、高耐久性、軽量コンパクト・低コストをすべて満足するトリポード型等速自在継手を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】aはトリポードの正面図、
bは図1aのb−b断面図である。
【図2】トリポード型等速自在継手の横断面図である。
【図3】トリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図4】図2におけるトリポードキットの部分拡大図である。
【図5】トリポードキットの組立て要領を説明するための断面図である。
【図6】aはトラニオンジャーナルの側面図、
bは図6aのトラニオンジャーナルの横断面図、
cは図6bの部分拡大図である。
【図7】aはトラニオンジャーナルの側面図、
bはトラニオンジャーナルと内側ローラとの接触部の横断面拡大図である。
【図8】aはトラニオンジャーナルの正面図、
bはトラニオンジャーナルの側面図、
cは図8(a)のc部拡大図である。
【図9】トラニオンジャーナルと内側ローラとの接触部の横断面線図である。
【図10】図5と類似の断面図である。
【図11】aは内側ローラの断面図、
bは図11aに示される内側ローラの下面図である。
【図12】回転軸に固定した状態のトリポードキットの断面図である。
【図13】トリポードキットの部分断面図である。
【図14】トリポードキットの部分断面図である。
【図15】トリポードキットの部分断面図である。
【図16】トリポードキットの部分断面図である。
【図17】従来の技術を示すトリポード型等速自在継手の斜視図である。
【図18】図17のトリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図19】aは別の従来の技術を示す断面図、
bは図19aにおけるトラニオンジャーナルの横断面図である。
【符号の説明】
11 トリポード型等速自在継手
14 ハウジング
14a 凹溝
14b ガイド面
14c 案内肩面
16 トリポード
16a ボス
16c 逃げ(面取り)
16b トラニオンジャーナル
16d 鍛造パーティングライン
16e 逃げ
20 ローラアセンブリ
22 内側ローラ
22a 内側ニードルリテーナ
22b 外側ニードルリテーナ
24 ニードルローラ
25a 内側ニードルリテーナ
25b 外側ニードルリテーナ
26 外側ローラ
26a 内側ニードルリテーナ
26b 外側ニードルリテーナ

Claims (10)

  1. 軸方向一端側にて開口し内周面の円周方向三等分位置に軸方向に延びる凹溝を形成した、第一の回転軸の端部に固定される中空円筒状のハウジングと、
    第二の回転軸の端部に固定されるボスと、ボスの円周方向三等分位置から半径方向に突出した端部が球状のトラニオンジャーナルとからなるトリポードと、
    内周面をトラニオンジャーナルの球状外周面に首振り自在にはめ込んだ内側ローラと、内側ローラの外周面にニードルローラを介して回転および軸方向移動可能に支持された外側ローラとからなるローラアセンブリとを有し、
    外側ローラをハウジングの凹溝に収容させてハウジング軸方向に転動自在とし、凹溝が外側ローラの外周面と接して負荷を受けるガイド面と外側ローラをハウジング軸方向に案内する案内肩面とからなり、
    ローラアセンブリをトラニオンジャーナルに組み込む際、ローラアセンブリを継手軸方向に傾けて組み付けるトリポード型等速自在継手において、
    トリポードジャーナルの付け根部が、継手円周方向の径が継手軸方向の径より大きい非円形断面であることを特徴とするトリポード型等速自在継手。
  2. トリポードのボスの、第二の回転軸の端部側の外径を大きく面取りしたことを特徴とする請求項1に記載のトリポード型等速自在継手。
  3. トラニオンジャーナルの鍛造パーティングラインに沿って、パーティングライン凸高さが球面径以下になるように部分的に逃げを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のトリポード型等速自在継手。
  4. トルク負荷域におけるトラニオンジャーナルの断面形状を略二球面形状としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のトリポード型等速自在継手。
  5. 内側ローラの球状内周面の曲率半径をrとしたとき、トラニオンジャーナルの二球面の半径Rをr/2<R<rの範囲に設定したことを特徴とする請求項4に記載のトリポード型等速自在継手。
  6. ローラアセンブリがトラニオンジャーナルから分離し始める角度をθ1としたとき、トリポードキットに回転軸を装着した後、ローラアセンブリを角度θ2(θ2<θ1)まで傾けると回転軸と干渉するように設定したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のトリポード型等速自在継手。
  7. 外側ローラの内周面の少なくとも一方の端部にニードルリテーナを一体に設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のトリポード型等速自在継手。
  8. 内側ローラの外周面の少なくとも一方の端部にニードルリテーナを一体に設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のトリポード型等速自在継手。
  9. 外側ローラの円筒形内周面の継手内径側端部の内径を内側ローラの外径よりも小さくしたことを特徴とする請求項7に記載のトリポード型等速自在継手。
  10. 内側ローラの円筒形外周面の継手外径側端部の外径を外側ローラの内径より大きくしたことを特徴とする請求項8に記載のトリポード型等速自在継手。
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