JP2004250627A - フルオロポリマーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フルオロモノマーを管型反応器内で重合してフルオロポリマーを製造する方法であって、流路の断面積が1.0×10−5〜0.8cm2である管型反応器を用い、該フルオロモノマーを含む重合原料混合物を管型反応器に連続的に供給し、該フルオロポリマーを含む重合生成物を管型反応器から連続的に取り出すフルオロポリマーの製造方法。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、管型反応器を用いたフルオロポリマーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フルオロポリマーは、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、耐燃料油性、耐候性、絶縁性、非粘着性等に優れる特性を活かして、電子・電気工業、自動車工業、化学工業等の幅広い産業分野において不可欠な材料となっている。
【0003】
従来、フルオロポリマーは、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の方法を用いて、フルオロモノマーをラジカル重合して製造されている。これらの方法においては、槽型撹拌反応器を用いた回分操作が採用されている。
【0004】
一般に、回分操作は、連続操作に比較して、工業的製造方法として有利であるとはいえない。特に、種々の製品の大量生産には、生成物の品質が安定することから連続操作が採用されている。
【0005】
フルオロポリマーの製造においては、フルオロモノマーの重合時の発熱量が大きく、槽型撹拌反応器のように、反応器の内外に熱交換器を設置して除熱するだけでは精密な重合温度制御が困難となる場合があった。また、反応槽内の混合状態が不均一になると、局部的な高温状態が発生し、フルオロポリマーの品質に大きな影響を与える場合もあった。
【0006】
また、乳化重合法においては、水性媒体にフルオロモノマーを分散させるため、又は気体状態のフルオロモノマーを水性媒体中に吸収させるために高いせん断力で撹拌する必要があり、生成したフルオロポリマーのエマルションが破壊される問題もあった。
【0007】
フルオロモノマーを連続重合法として、静的混合部を有する断面積が13.8cm2の管型反応器を用いる方法が知られている(特許文献1を参照。)。しかし、静的混合部による圧力損失が大きく、重合圧力を安定的に保持するのが困難になるうえ、生成したポリマーが静的混合部に付着し、管型反応器が閉塞する問題もある。また、断面積が大きいため、反応器内部に温度分布が生じ、均質なフルオロポリマーを製造するのが困難である場合があるとわかった。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−86602号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような問題点を解決し、除熱性に優れ、大量生産性に優れ、生成するフルオロポリマーの品質に優れるフルオロポリマーの製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フルオロモノマーを管型反応器内で重合してフルオロポリマーを製造する方法であって、流路の断面積が1.0×10−5〜0.8cm2である管型反応器を用い、該フルオロモノマーを含む重合原料混合物を管型反応器に連続的に供給し、該フルオロポリマーを含む重合生成物を管型反応器から連続的に取り出すことを特徴とするフルオロポリマーの製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明における管型反応器の流路の断面積は1.0×10−5〜0.8cm2である。好ましくは2.0×10−5〜0.2cm2であり、より好ましくは、8.0×10−5〜3.1×10−2cm2である。流路の断面積がこの範囲にあると、反応器単位体積あたりの壁面積が大きくなり、除熱効率が上がるうえ、重合原料混合物が拡散のみで均一に混合され、品質の優れるフルオロポリマーが得られる。
【0012】
該管型反応器の流路の断面形状は、特に限定されず、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、台形等の四角形、五角形、六角形等の多角形等の形状が採用される。好ましくは、円形、楕円形、正方形、長方形であり、より好ましくは、円形である。流路の断面形状を表す指標として、管型反応器断面に内接する最大円の半径(rS)及び管型反応器断面に外接する最小円の半径(rL)を用いることも好ましい。rSは7.07×10−3〜5.05mmが好ましく、9.90×10−3〜2.50mmがより好ましく、5.00×10−2〜2.03mmであることが最も好ましい。そして、rL/rSの比は1〜10が好ましく、1〜7がより好ましく、1〜4が最も好ましい。
【0013】
管型反応器としては、フルオロモノマー、重合溶媒等の反応媒体の供給及び排出が同時に可能な反応器であれば特に制限を受けるものではないが、例えば、ジャケット部での昇温・冷却が可能な構造を有し、重合開始剤、フルオロモノマー等を均一に連続添加させることのできる構造を有するものが好ましい。
【0014】
管型反応器の形状としては、特に限定されず、直管状、曲管状、円形コイル状、楕円形コイル状、正方形、長方形等の四角形コイル状等の形状が挙げられる。好ましくは、直管状、曲管状、円形コイル状である。また、管型反応器の設置方法としては、特に限定されず、鉛直、水平、斜め等のいずれの設置方法も採用される。
【0015】
管型反応器の管長は0.5〜1000mが好ましく、0.5〜100mがより好ましい。管型反応器の管長が、あまりに短いと重合原料混合物の滞留時間が短くなり、フルオロポリマーの生産性が低下する。あまりに長いと重合原料混合物の供給口と重合生成物の取出し口の間の圧力損失が大きくなり、管型反応器内を重合原料混合物が安定して流れなくなる。
【0016】
本発明において、管型反応器は単独で用いてもよく、複数本を並列して用いることも好ましい。複数本を並列して用いる場合には、10〜1000本が好ましく、10〜300本がより好ましい。複数本を並列して用いることが、フルオロポリマーの生産量を適宜制御できるので好ましい。
【0017】
本発明において、管型反応器内で、フルオロモノマー、開始剤、媒体等からなる重合原料混合物は層流状態で流れることが好ましい。層流状態においては、重合原料混合物の混合は拡散によって行われると考えられる。
【0018】
重合原料混合物をあらかじめ充分混合した後、管型反応器に供給することも好ましい。該混合には、高圧乳化機、撹拌型ホモジナイザー、超音波乳化機等を使用することが好ましい。また、静的混合用構造部又は機械的撹拌混合部を1個以上組み込んだ管を使用することも好ましい。該静的混合用構造部としては、スタティックミキサー、スルザー式、ケニックス式、東レ式、ノリタケカンパニー式等の構造部が挙げられる。該機械的撹拌混合部としては、IKA多歯高剪断、又はCharles Ross&Son Company製シリーズ400インラインX−シリーズミキサー等が挙げられる。
【0019】
本発明のフルオロポリマーの製造方法において、フルオロモノマーを含む重合原料混合物を連続的供給し、該フルオロポリマーを含む重合生成物を連続的に取り出す。取り出されたフルオロポリマーを含む重合生成物を冷却し反応を停止した後、水、有機溶媒を添加して相分離する、また、金属塩を添加して凝集する等の方法でフルオロポリマーを単離し、乾燥した後、フルオロポリマーを得る。
【0020】
重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等が用いられる。好ましくは、乳化重合及び溶液重合である。
【0021】
本発明におけるポリマー製造方法の工程の概略を図を用いて、以下に説明するが、本発明はこれらに限定されない。図1は、本発明のフルオロポリマーの製造方法の工程の一例である。本装置を用いたフルオロポリマーの製造手順を以下に記載する。フルオロモノマー用タンク1内には、重合すべきフルオロモノマーを入れる。タンク1には、温度調節機構等が設けられている(図示せず)。また、媒体・開始剤・添加剤用のタンク2内には、媒体、開始剤等を入れる。ついで、フルオロモノマー用マスフローコントローラー3、媒体・開始剤・添加剤等用マスフローコントローラー4を用いて、フルオロモノマー及び媒体・開始剤・添加剤等用を管型反応器5に送液する。
【0022】
重合原料混合物は、管型反応器5に供給されると、温度調節機構を有する加熱・冷却器6により瞬時に昇温され、ラジカル開始剤が分解し、重合反応が進行する。ついで、フルオロポリマーを含む重合生成物は、管型反応器より取り出され、温度調節機構等(図示せず。)が設けられている製品回収タンク7に送られ、急冷することにより重合反応が停止され、重合生成物が製品回収タンク内に貯蔵される。フルオロモノマーが気体の場合、系内の重合圧力は、圧力コントロールバルブ8により一定圧に制御される。圧力コントロールバルブ8は管型反応器5と製品回収タンク7の間に設置することも好ましい。
【0023】
フルオロモノマーが2種類以上の場合は、タンク1及びマスフローコントローラー3を複数本準備し、管型反応器5に送液することも好ましい。溶媒・開始剤・添加剤等は、複数のタンク2及びマスフローコントローラー4を用いて供給することも好ましい。また、フルオロモノマー及び溶媒・開始剤・添加剤等を管型反応器へ供給する箇所を2以上にしてもよい。また、管型反応器5には、未反応モノマー及び溶媒等を回収するためのループ部を有することも好ましい。加熱・冷却器6は、重合速度を制御するために、2〜10台の複数の加熱・冷却器を並べて使用することも好ましい。
【0024】
本発明におけるフルオロモノマーとしては、フッ素原子を有し、ラジカル重合性モノマーであれば、限定することなく用いることができる。フルオロモノマーの具体例としては、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという。)、ビニリデンフルオライド(以下、VdFという。)、トリフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEという。)、3,3,3−トリフルオロプロペン、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、パーフルオロ(ブチルエチレン)等のフルオロオレフィン、
【0025】
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、PMVEという。)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル))(以下、PPVEという。)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)(以下、BVEという。)等のパーフルオロ(アルケニルビニルエーテル)、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(以下、PDDという。)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等のエーテル性酸素原子含有環状パーフルオロオレフィン、
【0026】
(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(以下、FHAという。)、(パーフルオロヘプチル)メチルアクリレート、(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(以下、FOAという。)等の(パーフルオロアルキル)エチルアクリレート、(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(以下、FHMAという。)、(パーフルオロヘプチル)メチルメタクリレート、(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(以下、FOMAという。)等の(パーフルオロアルキル)エチルメタクリレート、
【0027】
α−フルオロスチレン、β−フルオロスチレン、α,β−ジフルオロスチレン、β,β−ジフルオロスチレン、α,β,β−トリフルオロスチレン、α−トリフルオロメチルスチレン、2,4,6−トリ(トリフルオロメチル)スチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、パーフルオロ(スチレン)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−α−メチルスチレン等のフルオロスチレン等が挙げられる。
【0028】
フルオロモノマーとしては、官能基を有するものであることも好ましい。官能基を有するフルオロモノマーとしては、下記化1に示すモノマー等が挙げられる。
【0029】
【化1】
【0030】
ここで、ZはCH2OH、COOH、SO2F、CH2OCN又はCH2PO3H、X及びYはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子、Rfは炭素数1〜20のポリフルオロアルキレン基であり、エーテル性の酸素原子を含有してもよい。
【0031】
フルオロモノマーとしては、TFE、VdF、HFP、PMVE、PPVE、CTFE、BVE、PDD、FHA、FOA、FHMA及びFOMAがより好ましく、TFE、HFP、PPVE、BVE及びPDDが最も好ましい。フルオロモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、本発明において、前記フルオロモノマーと非フッ素系モノマーを共重合することも好ましい。非フッ素系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、酢酸ビニル等のビニルエステル、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート等の(メタ)アクリレート等が挙げられる。非フッ素系モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。全モノマーに対するフルオロモノマーの割合は、30モル%以上が好ましく、45モル%以上がより好ましく、50モル%以上が最も好ましい。
【0033】
本発明の製造方法で製造されるフルオロポリマーの具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル、ポリパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)、TFE/HFP共重合体(HFP)、TFE/PPVE共重合体(PFA)、TFE/エチレン共重合体(ETFE)、TFE/VdF/HFP共重合体(THV)、TFE/PMVE共重合体、TFE/プロピレン共重合体、VdF/HFP共重合体、等が挙げられる。
【0034】
本発明において、フルオロモノマーの重合が、ラジカル重合であることが好ましい。ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤を用いて実施することが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物、過硫酸アンモニウム−硫酸第一鉄、過硫酸アンモニウム−亜硫酸水素アンモニウム等のレドックス系開始剤、過硫酸ジサクシノイル等の水溶性有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ビスベンゾイルパーオキシド、ジペンタフルオロプロピオニルパーオキシド等のジアシルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド、コハク酸パーオキシド等の酸パーオキシド、ビスパーフルオロプロピオニルパーオキシド、ビスパーフルオロベンゾイルパーオキシド等のパーフルオロパーオキシド等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー100質量部に対し、10−6〜10質量部が好ましく、10−5〜2質量部がより好ましい。
【0035】
本発明において、フルオロモノマーの重合は、重合溶媒の存在下に実施することが好ましい。重合溶媒としては、アルコール、ケトン、エーテル、アルカン、含フッ素溶媒、水等が挙げられる。好ましくは含フッ素溶媒及び水であり、より好ましくは連鎖移動係数が小さい含フッ素溶媒である。
【0036】
含フッ素溶媒の具体例としては、炭素数3〜10のパーフルオロカーボン、炭素数3〜10のハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜10のハイドロクロロフルオロカーボンからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0037】
パーフルオロカーボンの具体例としては、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(ジプロピルエーテル)、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等が挙げられる。ハイドロフルオロカーボンの具体例としては、CH3OC2F5、CH3OC3F7、C5F10H2、C6F13H、C6F12H2等が挙げられる。ハイドロクロロフルオロカーボンの具体例としては、CHClFCF2CF2Cl等が挙げられる。
【0038】
本発明において、連鎖移動剤を使用し、生成するフルオロポリマーの分子量や物理的又は化学的性質を制御することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール等のアルコール類、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン等のメルカプタン、ヨウ化アルキル、ヨウ化パーフルオロアルキル、臭化アルキル、臭化パーフルオロアルキル、四塩化炭素、クロロホルム、塩化スルフリル等のハロゲン含有化合物、メタン、エタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のアルカン等が挙げられるが、これに限定されない。連鎖移動剤は1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
該連鎖移動剤の使用量は、溶媒に対して0.001質量%〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.001質量%〜20質量%である。使用量があまりに少ないと、分子量を調整する機能が発現せず、添加量があまりに多いと高分子量のフルオロポリマーが得られない。この範囲にあると、強度等の物理的特性に優れる、適切な分子量のフルオロポリマーが得られる。
【0040】
フルオロポリマーの製造に乳化重合法を適用する場合、乳化剤を使用することが好ましい。特に、生成するフルオロポリマーのエマルションを安定化効果に優れる含フッ素乳化剤の使用が好ましい。
【0041】
含フッ素乳化剤としては、パーフルオロアルキル基を含有する乳化剤が好ましい。具体例としては、パーフルオロアルカンカルボン酸又はパーフルオロアルカンスルホン酸及びそれらのアンモニウム塩、カリウム塩又はナトリウム塩、パーフルオロポリエール鎖を有するカルボン酸又はスルホン酸及びそれらのアンモニウム塩、カリウム塩又はナトリウム塩が好ましい。含フッ素乳化剤の具体例としては、C6F13COONH4、C7F15COONH4、C8F17COONH4等のパーフルオロカルボン酸型乳化剤がより好ましい。含フッ素乳化剤の使用量は、通常は水性媒体中0.001〜5質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましい。
【0042】
本発明における重合条件として、重合温度は20〜100℃が好ましい。あまりに高温では、溶媒として用いる水又は含フッ素溶媒が気化し重合反応が進行し難くなり、あまりに低温では重合開始剤の分解速度が遅くなる。より好ましくは30〜80℃である。重合時間は1.0×10−3〜1.5×105秒が好ましく、1.0×10−2〜1.0×104秒がより好ましい。あまりに短時間では、重合が進行せず、フルオロポリマーの生成量が少なくなり、あまりに長時間では、生産性が低く工業的に不利である。
【0043】
本発明において、管型反応器内を流れる重合原料混合物の流速は0.01〜100ml/secが好ましく、0.01〜50ml/secがより好ましい。流速があまりに遅いと単位時間当たりのポリマーの生産量が低く、流速があまりに速いと重合原料混合物の流れが不安定になり、均質なフルオロポリマーが得られない。この範囲にあると生産性が高く、均質なフルオロポリマーが得られる。
【0044】
本発明において、管型反応器を流れる重合原料混合物のレイノルズ数は2300以下が好ましい。すなわち、重合原料混合物が層流で流れる状態で重合を進行させることが好ましい。レイノルズ数がこれより大きいと、重合原料混合物の流れが乱流となり、重合反応が不安定になることから均質なフルオロポリマーが得られにくい。また、乳化重合法を適用する場合には、乱流状態では渦が発生しやすく、渦の剪断力により、エマルションの安定性が低下する。
【0045】
【実施例】
以下に、実施例を用いて本願発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下において、FTIRはフーリエ変換赤外分光光度計を、DSCは、走査型示差熱量分析を意味する。数平均分子量は、ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマーサイエンス、17、3253(1973)に記載のT.Suwaらの方法を用いて求めた。
【0046】
[実施例1]
図1に示したような装置を使用し、タンク1にTFEを、タンク2にパーフルオロベンゾイルパーオキシドの100ppmCHClFCF2CF2Cl溶液からなる開始剤溶液を充填した。マスフローコントローラー3及び4を用いて、TFEを0.9ml/s、開始剤を溶解したCHClFCF2CF2Cl(以下、AK225cbという。)を0.08ml/sの流速で管型反応器5に送入した。
【0047】
管型反応器5としては、長さ2m、管内径0.79mmであり、管断面積0.49mm2であるコイル状管型反応器を用いた。管型反応器5は、加熱・冷却器6によって60℃に保持した。重合圧力は圧力コントロールバルブ8により、1.3MPaに保持した。TFE及び開始剤溶液を前記速度で連続的に供給し、製品回収タンク7に重合生成物を回収した。20分間後に原料の供給を停止した。製品回収タンク7の中には白色紛体の分散液が得られた。
【0048】
該白色粉体を乾燥させて得られた0.362gの白色固体は、FTIRによりPTFEであることが確認された。収率は7.5%であった。PTFEは、DSC分析により、融点が320.2℃、結晶化温度が311.5℃、結晶化熱が−61.9J/g、であった。これらに測定値から推定される数平均分子量は1.4×104であった。
【0049】
[実施例2]
TFEの流速を10.0ml/s、開始剤溶液の流速を0.08ml/sにした以外は実施例1と同様にして重合を行った。得られた白色固体は1.02gで、収率は1.9%であり、FTIRからPTFEであることが確認された。DSC分析から、融点が323.6℃、結晶化温度が308.8℃、結晶化熱が−53.8J/g、であった。推定される数平均分子量は4.0×104であった。
【0050】
[実施例3]
図1に示したような装置を使用し、タンク1にTFEを、タンク2にパーフルオロベンゾイルパーオキシドの500ppmパーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)溶液からなる開始剤溶液を充填した。マスフローコントローラー3及び4を用いて、TFEを15.2ml/s、開始剤溶液を0.17ml/sの流速で管型反応器5に送入した。
【0051】
管型反応器5としては、長さ2m、管内径0.79mmであり、管断面積0.49mm2であるコイル状管型反応器を用いた。管型反応器5は、加熱・冷却器6によって65℃に保持した。重合圧力は圧力コントロールバルブ8により、1.5MPaに保持した。TFE及び開始剤溶液を前記速度で連続的に供給し、製品回収タンク7に重合生成物を回収した。23分間後に原料の供給を停止した。製品回収タンク7の中には白色紛体の分散液が得られた。
【0052】
該白色粉体を乾燥させて得られた2.30gの白色固体は、FTIRによりPTFEであることが確認された。収率は5.6%であった。PTFEは、DSC分析により、融点が319.3℃、結晶化温度が307.8℃、結晶化熱が−56.1J/g、であった。これらに測定値から推定される数平均分子量は3.7×104であった。
【0053】
[実施例4]
図1に示したような装置を使用し、タンク1にTFE、タンク2に開始剤のコハク酸パーオキシドの100ppm、乳化剤のC7F15COONH4の0.5質量%を含有するイオン交換からなる開始剤・乳化剤水溶液を充填した。マスフローコントローラー3及び4を用いて、TFEを1.0ml/s、開始剤・乳化剤水溶液を0.1ml/sの流速で管型反応器5に送入した。
【0054】
管型反応器5としては、長さ2m、管内径0.8mmであり、管断面積0.50mm2であるコイル状管型反応器を用いた。管型反応器5は、加熱・冷却器6によって70℃に保持した。重合圧力は圧力コントロールバルブ8により、1.3MPaに保持した。TFE及び開始剤・乳化剤水溶液を連続的に供給し、重合生成物を製品回収タンク7に回収した。30分間後、原料の供給を停止した。生成した乳白色の水溶液を乾燥させたところ、白色固体が0.550g得られた。FTIRによりPTFEであることが確認された。収率は6.9%であった。PTFEのDSC分析から、融点が336.8℃、結晶化温度が315.5℃、結晶化熱が−25.0J/g、であった。これらの測定値から推定される数平均分子量は2.1×106であった。
【0055】
[実施例5]
TFEの流速を1.5ml/s、開始剤・乳化剤水溶液の流速を0.1ml/sにした以外は実施例2と同様にして重合を行った。得られたPTFEの白色固体は0.813gであり、収率は6.8%であった。PTFEのDSC分析から、融点が332.8℃、結晶化温度が312.0℃、結晶化熱が−66.7J/g、であった。推定される数平均分子量は1.3×105であった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、除熱性に優れ、大量生産性に優れ、生成するフルオロポリマーの品質に優れるフルオロポリマーが得られるので、工業的価値が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフルオロポリマーの製造方法の工程の一例を示す図
【符号の説明】
1:フルオロモノマー用タンク
2:溶媒・開始剤・その他添加剤用タンク
3:フルオロモノマー用マスフローコントローラー
4:溶媒・開始剤・その他添加剤用マスフローコントローラー
5:管型反応器
6:加熱・冷却器
7:製品回収タンク
8:圧力コントロールバルブ
Claims (3)
- フルオロモノマーを管型反応器内で重合してフルオロポリマーを製造する方法であって、流路の断面積が1.0×10−5〜0.8cm2である管型反応器を用い、該フルオロモノマーを含む重合原料混合物を管型反応器に連続的に供給し、該フルオロポリマーを含む重合生成物を管型反応器から連続的に取り出すことを特徴とするフルオロポリマーの製造方法。
- 管型反応器を流れる重合原料混合物のレイノルズ数が2300以下である請求項1に記載のフルオロポリマーの製造方法。
- 前記フルオロモノマーの重合が、ラジカル重合である請求項1又は2に記載のフルオロポリマーの製造方法。
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