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JP2004244701A - 缶胴用アルミニウム合金冷間圧延板およびその素材として用いられるアルミニウム合金熱間圧延板 - Google Patents

缶胴用アルミニウム合金冷間圧延板およびその素材として用いられるアルミニウム合金熱間圧延板 Download PDF

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JP2004244701A
JP2004244701A JP2003037681A JP2003037681A JP2004244701A JP 2004244701 A JP2004244701 A JP 2004244701A JP 2003037681 A JP2003037681 A JP 2003037681A JP 2003037681 A JP2003037681 A JP 2003037681A JP 2004244701 A JP2004244701 A JP 2004244701A
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Katsura Kajiwara
桂 梶原
Kenji Tokuda
健二 徳田
Kenji Kuroda
健司 黒田
Hitoshi Arimura
仁 有村
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

【課題】中間焼鈍を用いることなく製造することができ、DI成形性に優れ、耳率が低く、しかもネック部の耐裂け性にも優れた缶胴用アルミニウム合金冷間圧延板およびその素材として好適な熱間圧延板を提供する。
【解決手段】本発明の熱延板は、mass%で、Mn:0.8〜1.5%、Mg:0.5〜1.5%、Fe:0.1〜0.7%、Si:0.05〜0.5%を含有し、残部実質的にAlからなり、板厚方向の断面におけるCube方位の結晶粒が面積率で5%〜70%存在し、かつ前記断面において板表面から板厚中心に至る領域を3等分したとき、3等分された各領域に存在するCube方位の結晶粒の面積率の最大値と最小値との差が40%以下である。また、本発明の冷延板は前記熱延板を中間焼鈍を施すことなく冷間圧延することによってを得られたものである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、飲料缶などに使用されるDI加工(深絞り加工及びしごき加工)による2ピースアルミニウム缶、ボトル缶などの缶胴の成形に使用される缶胴用アルミニウム合金冷間圧延板およびその素材として好適なアルミニウム合金熱間圧延板に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム系飲料缶として、缶胴と缶蓋(缶エンド)とをシーミング加工(巻締め加工)することによって密閉容器とした2ピースアルミニウム缶が広く用いられている。前記缶蓋が取り付けられる前の缶胴は、一般的にアルミニウム合金冷間圧延板(缶胴素材)に対してDI成形を施し、成形された有底筒形状の缶体に所定サイズのトリミングを施し、その後脱脂・洗浄処理を行ない、さらに塗装および印刷を行なって焼付け(ベーキング)を行ない、その後、缶体の端縁部にネッキング加工、フランジ加工(口拡げ加工)が施されたものである。前記ネッキング加工により、缶体の外径より縮径されたネック部が形成され、前記フランジ加工によりネック部の先端部が、缶蓋をシーミング加工するためのフランジ部に成形される。
【0003】
前記アルミニウム合金板としては、しごき加工性に優れ、また冷間圧延性にも優れたJIS3004合金の冷間圧延板が広く使用されている。この板材は、DC鋳造法などによって鋳造された鋳塊に対し均熱処理(均質化処理)が施され、さらに熱間圧延および冷間圧延が施されて所定の板厚に製造される。通常、前記冷間圧延の前あるいは中途において中間焼純が施される。
【0004】
前記缶胴の製造過程では、DI成形により缶端部の周縁に凹凸が生じる。この凹部と凸部との高さの差を缶体(カップ)の高さで除した比率を耳率というが、この耳率が高いと、トリミング量が増えたり、缶蓋の巻締め不良が発生するなどのために製造歩留まりが低下する。このため、缶胴の素材となるアルミニウム合金冷間圧延板には耳率が低いことが要求される。また、その製造過程において、製造コストの低減のためには中間焼鈍を省略することが有効である。
【0005】
そこで、近年、耳率を低くし、しかも中間焼鈍を省略することができる種々の技術が検討、開発されてきた。このような技術として、例えば下記のものがある。
特開平9−268355号公報(特許文献1)には、従来の熱間圧延条件では、熱間圧延終了後において、耳率を低下させる立方体方位が優先した集合組織が十分に生じていないとの知見の下(段落番号0003)、特に熱間仕上圧延条件を詳細に規定した缶胴用アルミニウム合金板の製造方法が提案されている。
【0006】
また、特開平10−310837号公報(特許文献2)には、耳は圧延材の結晶学的異方性に起因して生じるものであり、その高低は熱延終了後に進行する再結晶により形成される立方体方位の結晶粒の集合組織成分(主に0°−90°耳)と、冷間圧延により形成される圧延集合組織成分(45°耳)とのバランスによって決まるが、缶径の縮小に伴う、より厳しい耳率の低減を実現するには、熱間圧延条件に加え、その上工程の均質化処理条件についても検討することが必要であるとし(段落番号0004)、熱延条件および均質化処理条件を厳密に規定した缶胴用アルミニウム合金板(冷間圧延板)の製造方法が提案されている。なお、この技術において、中間焼純を省略する場合には熱間粗圧延の終了温度は320〜420°程度と低く設定されている。
【0007】
また、特開平11−140576号公報(特許文献3)には、缶胴体の薄肉化に対応して冷間加工率を大きくして缶強度を高めると圧延集合組織成分が増加するため、立方体方位再結晶粒を優先的に成長させる必要があり、また缶の縮径化に伴い、フランジ長さのばらつきを小さくすることが必要となっており(段落番号0004)、これらの要求に対し、熱間圧延後のコイルの自己発熱或いは焼鈍加熱により析出物を起点としてR方位の再結晶粒が成長し、これが立方体方位の再結晶粒の成長を阻害しているとの知見の下(段落番号0005)、析出物が析出し難い、均質化条件、熱間圧延条件等およびそれによって得られた導電率が38〜46%IACSである缶胴用アルミニウム合金板(冷間圧延板)が開示されている。前記導電率は、SiやCuなどの合金元素の固溶量、引いては析出量を間接的に規定するものである。
【0008】
なお、缶胴用アルミニウム合金板とは用途が異なるが、特開2001−348638号公報(特許文献4)には板厚中央部における集合組織について特定の結晶方位の方位密度を粉末サンプルによって規定されるランダム方位を基準として詳細に規定した缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法が、また特開2001−214248号公報(特許文献5)には特定条件の熱間圧延により板厚表層部における結晶粒のキューブ方位の方位密度がランダム方位の5倍以上である熱間圧延板を得て、これを冷間圧延する缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−268355号公報(特許請求の範囲、段落番号0003)
【特許文献2】
特開平10−310837号公報(特許請求の範囲、段落番号0004)
【特許文献3】
特開平11−140576号公報(特許請求の範囲、段落番号0005)
【特許文献4】
特開2001−348638号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開2001−214248号公報(特許請求の範囲)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の中間焼鈍を省略した製造方法によって製造された缶胴用アルミニウム合金板では、先端部が胴部の缶径より縮径されたネック部の耐裂け性が不足する傾向があり、ネック部が裂け、缶に充填した飲料液等が漏れ出るという問題があり、製造歩留まりの低下を余儀なくされている。
【0011】
特に、従来の2ピースアルミニウム缶に加え、ネック部の先端部が胴部の缶径より大きく縮径された口部として成形されたボトル形状の缶胴を有するアルミニウム缶では、ボトル形状の缶胴をネッキング加工する際、缶体には従来と比較して厳しい加工が施されるため、DI成形性に加え、ネック部成形時の耐裂け性がますます重要になってきている。なお、ボトル形状の缶胴のネック部の口部には雄ネジが成形され、これに係合する雌ネジが形成された缶蓋によって口部が密閉される。
【0012】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、中間焼鈍を用いることなく製造することができ、DI成形性に優れ、耳率が低く、しかもネック部の耐裂け性に優れた缶胴用アルミニウム合金冷間圧延板およびその素材として好適な熱間圧延板を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、中間焼鈍を省略した従来の製造方法によって製造されたアルミニウム合金冷間圧延板を用いて、先端部が胴部缶径より縮径されたネック部を有する缶胴を成形し、ネック部が裂けたアルミニウム合金板を子細に観察しとところ、板厚方向においてCube(立方体)方位の結晶が表層領域ほど発達しており、中心領域では十分に発達していない不均一な分布を呈していることを見出した。このため、従釆の冷間圧延板では、耳率の低減を確保することができても、ネック部の耐裂け性に劣るものと推察された。本発明者は、かかる知見を基に、ネック部の耐裂け性を向上させるためには、冷間圧延板の素材となる熱間圧延板の板厚方向における集合組織成分、特にCube方位結晶粒の分布の均一性を図ることが重要であるとの着想を得て、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明のアルミニウム合金熱間圧延板は、mass%で、
Mn:0.8〜1.5%、
Mg:0.5〜1.5%、
Fe:0.1〜0.7%、
Si:0.05〜0.5%
を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、板厚方向および圧延方向を含む断面の全領域におけるCube方位の結晶粒が面積率で5%〜70%存在し、かつ前記断面において板表面から板厚中心に至る領域を3等分したとき、3等分された各領域に存在するCube方位の結晶粒の面積率の最大値と最小値との差が40%以下とされたものである。
【0015】
このアルミニウム合金熱間圧延板において、組織的には、さらに前記断面の全領域におけるGoss方位の結晶粒が面積率で0.5%〜30%存在することができる。また、組成的には、さらにCu:0.05〜0.5%、Cr:0.001〜0.3%、Zn:0.05〜0.5%の一種または二種以上、あるいはさらに、Ti:0.005〜0.20%を単独で、あるいは前記TiとB:0.0001〜0.05%とを複合して含有することができる。
【0016】
また、本発明に係る缶胴用アルミニウム合金冷間圧延板は、前記アルミニウム合金熱間圧延板を用いて冷間圧延された冷間圧延板であって、板表面から板厚の1/4深さの1/4板厚部および板表面から板厚の1/2深さの1/2板厚部の各々についてCube方位の結晶粒が面積率で2%以上、20%以下存在するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の缶胴用アルミニウム合金熱間圧延板(熱延板)および冷間圧延板(冷延板)の化学成分(単位:mass%)について説明する。
【0018】
Mn:0.8〜1.5%
Mnは強度の向上に寄与し、さらには成形性の向上にも寄与する有効な元素である。特に本発明の用途としている缶胴材では、DI成形時にしごき加工が行われるため、Mnは極めて重要である。MnはMn系金属間化合物(晶出物)として主としてAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物相(α相)を形成し、このα相を適正分布させることによってしごき加工性を向上させることができる。すなわちアルミニウム板のしごき加工においては、通常エマルジョンタイプの潤滑剤が用いられるが、前記α相晶出量が少ない場合には、同程度の強度を有していても、エマルジョンタイプの潤滑剤を使用するだけでは潤滑性が不足し、ゴーリングと称される擦り痕や焼付きなどの外観不良が発生するおそれがある。Mnが0.8%未満では上記効果が過少であり、一方1.5%超ではMnAlの巨大金属間化合物が初晶として晶出し、成形性が劣化する。従って、Mn量の下限を0.8%とし、上限を1.5%とする。
【0019】
Mg:0.5〜1.5%
Mgは単独で固溶強化により強度を向上させるとともに、Cuを添加した場合にはAl−Cu−Mg系析出物により製缶時のベーキング(焼付け印刷)の際の軟化防止に効果がある。Mgが0.5%未満ではそれらの効果が過少であり、一方1.5%を超えると加工硬化が大きくなり、成形性が低下する。このため、Mg量の下限を0.5%、上限を1.5%とする。
【0020】
Fe:0.1〜0.7%
Feは結晶粒の微細化に効果があるほか、前記α相の晶出や析出を促進して、アルミニウム基地中のMn固溶量の制御やα相の分散状態を制御するために必要な元素である。適切な分散状態を得るためには、Mn添加量に応じてFeを添加することが必要であり、前記Mn量の範囲では、Fe量が0.1%未満では適切な分散状態を得ることが困難であり、一方Fe量が0.7%を越えれば、Mn添加に伴なって初晶として巨大金属間化合物が生成しやすくなり、成形性を著しく損なう。このため、Fe量の下限を0.1%、上限を0.7%とする。
【0021】
Si:0.05〜0.5%
Siは金属間化合物(主にα相)を生成して、その分散状態を適正に制御するために必要な元素であり、成形性の向上に寄与する。Si量が0.05%未満では前記効果が過少であり、一方0.5%を越えると時効硬化により材料が硬くなり過ぎて成形性を阻害する。このため、Si量の下限を0.05%、上限を0.5%とする。
【0022】
本発明の板材は、上記合金成分のほか、残部Alおよび不可避的不純物よりなるが、上記各元素の作用効果を損なわず、機械的特性を向上させる元素として、必要に応じて下記の成分範囲で、Cu、Cr、Znの一種あるいは二種以上を複合して添加することができる。また、前記Cu、Cr、Znと共に、あるいはこれらの元素とは別に、Tiを単独あるいはBと組み合わせて添加することができる。
【0023】
Cu:0.05〜0.5%
CuはCr、Znと同様、強度向上に寄与する。Cuは塗装焼付処理時にAl−Cu−Mg系金属間化合物として析出し、析出硬化により強度を向上させる。Cu量が0.05%未満ではその効果が過少であり、一方0.5%を越えて添加した場合には、時効硬化は容易に得られるものの、硬くなり過ぎて成形性を阻害し、また耐食性も劣化する。このため、Cu量の下限を0.05%、上限を0.5%とする。
【0024】
Cr:0.001〜0.3%
Crも強度向上に寄与する元素であるが、0.001%未満ではその効果が過少であり、0.3%を越えると巨大な晶出物が生成し、成形性の低下を招く。このため、Cr量の下限を0.001%、上限を0.3%とする。
【0025】
Zn:0.05〜0.5%
ZnはAl−Mg−Zn系金属間化合物の時効析出により強度を向上させる。0.05%未満ではその効果が過少であり、一方0.5%を越えると耐食性が劣化する。このため、Zn量の下限を0.05%、上限を0.5%とする。
【0026】
Ti:0.005〜0.20%
通常のアルミニウム合金においては、鋳塊結晶粒微細化のためにTi、あるいはTiおよびBを微量添加することが行なわれており、この発明においても、必要に応じて微量のTiを単独で、あるいはBと組合せて添加してもよい。Ti量が0.005%未満ではその効果が得られず、一方0.20%を越えると巨大なAl−Ti系金属間化合物が晶出して成形性を阻害する。このため、Ti量の下限を0.005%、上限を0.20%とする。
【0027】
Tiと共にBを複合添加する場合、B:0.0001〜0.05%
Tiと共にBを添加すれば鋳塊結晶粒微細化の効果が向上するが、B量が0.0001%未満ではその効果がなく、一方0.05%を越えるとTi−B系化合物の粗大粒子が生成して成形性を害する。このため、Tiと共にBを添加する場合のB量の下限を0.0001%、上限を0.05%とする。
【0028】
次に、本発明のアルミニウム合金熱間圧延板の組織(集合組織)について説明するが、先ずアルミニウム合金の集合組織について簡単に説明する。通常のアルミニウム合金においては、例えば長島晋一編著「集合組織」(丸善株式会社発行)に記載されているように、下記の集合組織を形成することが知られている。集合組織のでき方は同じ結晶系でも加工法によって異なり、圧延による板材の場合には、圧延面と圧延方向で表され、例えば{001}<100>は、圧延面が{001}で、圧延方向が<100>であることを示す。かかる表現方法を用いると集合組織を形成する結晶系は下記のように表現される。
Cube(立方体)方位:{001}<100>
Goss方位:{011}<100>
Brass方位:{011}<211>
Cu方位:{112}<111>
D方位:{4 4 11}<11 11 8>
S方位:{123}<634>
【0029】
なお、本発明においては、基本的にこれらの結晶面から±15°以内の結晶方位のずれは、同一の結晶面に属するものとする。またBrass方位、Cu方位、D方位、S方位に関しては、各方位間で連続的に変化するファイバー集合組織(βファイバー)として存在することが知られている。これらの方位は圧延によって形成が促進されるため圧延集合組織と呼ばれることがある。また、再結晶集合組織においては、Cube方位が形成されると共に、上記Brass方位、Cu方位、D方位およびS方位に近い再結晶方位が形成されることも知られている。本発明では、熱間圧延板の再結晶集合組織において、前記Brass方位、Cu方位、D方位およびS方位に近い各再結晶方位についてもそれぞれBrass方位、Cu方位、D方位およびS方位と表現するものとする。
【0030】
熱間圧延板の板厚方向における圧延集合組織の均一性、特にCube方位結晶粒の分布の均一性は、最終製品である冷間圧延板の板厚方向におけるCube方位結晶粒の分布の均一性に寄与する。本発明者が種々の実験から得た結論は、板厚方向の断面(板厚方向および圧延方向を含む断面)において、板表面から板厚中心に至る断面領域を3等分したとき、各領域におけるCube方位結晶粒の面積率(存在率)の最大値と最小値の差(最大最小差)を40%以下とすることにより、ネック部における耐裂け性が大きく改善されることが分かった。板厚方向のCube方位結晶粒の面積率の最大最小差が40%を超えると、冷間圧延板において板厚方向の断面においてCube方位結晶粒の分布が不均一になり、成形加工中に板厚方向の塑性変形にムラが生じ易く、引いてはネック部の裂けが生じやすくなる。このため、本発明では板厚方向において3等分に分けた各領域におけるCube方位結晶粒の面積率の最大最小差を40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下とする。
【0031】
もっとも、冷間圧延板をDI成形した際の低耳率を実現するには、板厚方向の断面(板厚方向および圧延方向を含む断面)の全領域においてCube方位結晶粒が面積率で5%〜70%存在することが必要である。Cube方位結晶粒の面積率が5%未満では、圧延集合組織が優勢となって圧延方向に対して45°方向の耳が高くなる。一方、70%を超えると、圧延集合組織に対してCube方位結晶粒量が多くなり、圧延方向に対して同方向および90°方向の耳が高くなり、耳率が上昇する。このため、板厚方向断面の全領域におけるCube方位結晶粒の面積率の下限を5%、好ましくは10%とし、その上限を70%、好ましくは60%とする。
【0032】
本発明の熱間圧延板におけるCube方位の結晶粒の存在率、板厚方向の分布は上記のように規定されるが、さらに板厚方向の断面の全領域におけるGoss方位の結晶粒の面積率(存在率)についても0.5%〜30%(0.5%以上、30%以下)とすることが好ましい。
冷間圧延板における圧延集合組織成分は、熱間圧延板の圧延集合組織成分から発達したものと、Goss方位結晶粒の冷間圧延加工による結晶回転によって形成されるものからなる。Goss方位結晶粒が0.5%未満と過少な場合、冷間圧延板の圧延集合組織成分はその大部分が熱間圧延板の圧延集合組織成分から発達したものからなるため、冷間圧延板の圧延集合組織が強く現れ、圧延方向に対して45°方向の耳(+耳)が強く現れる傾向が生じる。一方、Goss方位結晶粒が30%超になると、冷間圧延の際にGoss方位結晶粒から派生した圧延集合組織成分が生じるものの、冷間圧延板におけるGoss方位が強くなり、圧延方向の0°/180°の耳(−耳)が強く現れるようになる。Goss方位結晶粒を0.5〜30%とすることにより、冷間圧延板における圧延集合組織がCube方位結晶粒とバランスよく形成されるようになり、耳率をより低下させることができる。より好ましい範囲は1〜25%である。
【0033】
上記均一組織を有する熱間圧延板を冷間圧延することにより、缶胴素材となる冷間圧延板が得られる。この場合、熱間圧延後あるいは冷間圧延の途中に中間焼鈍を施さない場合であっても、冷間圧延板の板厚方向の組織の均一性は保持され、板厚方向にCube方位結晶粒の所定量が均一に分布するようになり、低耳率を達成しつつ、アルミニウム缶胴におけるネック部の耐裂け性を向上させることができる。
【0034】
前記冷間圧延板の好ましい組織は、板表面から板厚の1/4深さの1/4板厚部および板表面から板厚の1/2深さの1/2板厚部の各々におけるCube方位結晶粒が面積率で2〜20%存在することである。
【0035】
Cube方位の結晶粒の面積率(存在率)は耳率に影響を与える因子であり、これが前記1/4板厚部および1/2板厚部において各々2%未満では圧延方向に対して45°方向の耳が高くなる傾向が生じ、一方20%を超えると圧延方向に対して0°又は90°方向の耳が高くなる傾向が生じるため、いずれの場合も好ましくない。このため、各部においてCube方位の結晶粒の面積率の下限を2%、好ましくは3%とし、その上限を20%、好ましくは15%とする。また、1/4板厚部および1/2板厚部におけるCube方位の結晶粒の面積率を共に2〜20%、好ましくは3〜15%とすることにより、板厚方向のCube方位の結晶粒を均一に分布させることができ、ネック部の耐裂け性を向上させることができる。
【0036】
次に、本発明のアルミニウム合金熱間圧延板、および冷間圧延板の製造方法について説明する。
本発明のアルミニウム合金熱間圧延板は、前記組成のアルミニウム合金を溶製し、その溶湯をDC鋳造法などによって鋳造して鋳塊(スラブ)を得た後、その鋳塊を均熱処理(均質化処理)し、その後熱間圧延することによって製造される。本発明の冷間圧延板は、前記熱間圧延板を素材として、熱間圧延後または冷間圧延途中に入るバッチ焼鈍あるいは連続焼鈍による中間焼鈍を施すことなく、缶胴素材として要求される板厚を得るように冷間圧延が施されることによって加工される。さらに冷間圧延後、DI成形性を向上させるために必要に応じて再結晶温度よりも低い温度で最終焼鈍(仕上焼鈍)を施してもよい。板厚方向に沿って集合組織を均一化、特にCube方位の結晶粒を均一に分散生成させるためには、上記各工程の内、特に均熱から熱間粗圧延、熱間仕上圧延に至る製造条件を精緻に制御することが重要である。以下、各工程における推奨される製造条件を順次説明する。
【0037】
均熱処理の処理条件(保持温度および時間)は、保持温度を600〜620℃程度とし、保持時間を2〜8hr程度とすることが望ましい。かかる条件で均質化を行うことにより、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物相(α相)と、熱間圧延工程でCube方位の結晶粒の核を提供する無析出帯(PFZ:Precipitation Free Zone)とを均一に分布させることができる。600℃未満、2hr未満では、均質化を十分に行うことができず、微細なα相の占める領域が多くなって無析出帯の領域が少なくなると共にα相と無析出帯との分布が不均一になり、引いては熱間圧延板における板厚方向のCube方位結晶粒の分布も不均一になりやすい。一方、620℃超、8hr超では先の条件の場合とは逆に無析出帯の割合が多くなり、やはり熱間圧延板におけるCube方位結晶粒の分布が不均一になりやすい。また、鋳塊表面に膨れが生じ易くなり、表面性状を損なう。なお、上記均熱処理(第1均熱処理)後、鋳塊表面を面削し、熱間粗圧延開始温度と同等あるいはやや高い温度で数時間程度保持する第2均熱処理を施してもよい。これによって、熱間圧延板の表面性状をより向上させることができる。
【0038】
前記均熱処理後、熱間粗圧延が施される。熱間粗圧延の開始温度の確保は、均熱処理後の鋳塊の自己発熱を利用するのがよく、粗圧延開始温度は450〜550℃程度とするのがよい。450℃未満では析出物の数密度が急激に増加してCube方位の再結晶粒の成長が抑制され、一方550℃を超えると熱間圧延板の表面に酸化や焼き付きが生じたり、再結晶粒が粗大化して、表面性状の悪化、成形性の低下、成形後の肌荒れが生じるおそれがある。粗圧延終了温度は440〜500℃とするのがよい。440℃未満では仕上圧延後に再結晶するのに十分な自己熱が不足し、結晶粒径が小さくなり、また次の熱間仕上圧延での圧延温度が低くなるため、エッジ割れが生じるおそれがある。一方、500℃を超えると、次の熱間仕上圧延でCube方位の結晶粒の成長駆動力となる歪みが十分蓄積されなくなる。なお、熱間圧延での板幅方向の耳率の安定化のためには、例えば端部にエッジヒーターを配備することにより、板幅方向における温度の安定化を図るとよい。
【0039】
熱間粗圧延後に行われる熱間仕上圧延は、通常、3〜6段程度のスタンドを備えたタンデム式の圧延機によって実施される。圧延板は仕上圧延により所定寸法に仕上げられ、仕上圧延終了後、その組織は自己発熱により再結晶組織となる。特に仕上圧延における最終パスの圧下率、スタンド間の張力が板厚方向の集合組織分布を決定する上で重要な因子である。
【0040】
熱間仕上圧延の最終パスの圧下率は、Cube方位の結晶粒の生成、後述のスタンド間の張力と関連して板厚方向のCube方位の結晶粒の分布に影響を与え、30〜60%とすることが望ましい。30%未満では、板厚方向の組織分布の均一化にとっては有効であるが、ひずみ蓄積が不十分となり、再結晶化、Cube方位結晶粒の量的発達が不足する。一方、60%を越えると板厚方向の表層部に大きな歪みが生じ、板厚方向の再結晶集合組織の分布が不均一になり易い。
【0041】
スタンド間の張力は、特に板厚方向の集合組織を制御する上で効果があり、全スタンド間におけるスタンド間張力の平均値を5〜20MPaと低張力制御することが必要である。スタンド間張力の平均値が20MPa超では、圧延による相当ひずみが表層付近で高く、板厚中心部では低くなる。圧延による相当ひずみが高いほど、再結晶後のCube方位結晶粒が多く生成するので、熱間圧延板の板厚方向における集合組織、Cube方位の結晶粒の分布が不均一になりやすい。また、Goss方位粒も十分に発達しないようになる。一方、5MPa未満では、板厚中心部の相当ひずみが高くなり、圧延率、加工温度条件にもよるが、板厚全体のCube方位結晶粒の量が多くなり過ぎる。また、複数のタンデム圧延とコイル巻取を行うため、5MPa未満の張力では圧延噛み込み不良、圧延板の蛇行やコイル巻取不良(疵発生など)が生じやすくなり、圧延操業上の問題が生じる。なお、スタンドmとスタンドnとの間のスタンド間張力は、主としてスタンドm、nにおける圧下率およびロールの回転速度によって制御される。また、通常の仕上圧延におけるスタンド間張力は組織制御の観点からは特に制御されておらず、全スタンド間におけるスタンド間張力の平均値は25〜35MPa程度である。
【0042】
熱間仕上圧延での圧延終了温度は300〜360℃とすることが望ましい。300℃未満では室温まで冷却したあとの再結晶率が90%未満となって不十分であり、Cube方位の再結晶粒が不足するようになる。一方、360℃を超えると焼付きや肌荒れが生じて熱延板の表面性状が悪化する。
【0043】
熱間仕上圧延での総圧下率は、通常、80%以上に設定される。80%未満では歪みの蓄積が不十分となり、仕上圧延後のコイルアップ時にCube方位粒を得るための駐動力が不足し耳率が増大し易くなる。熱間仕上圧延の終了後の板厚は、通常、1.8〜3.0mm程度である。
【0044】
熱間仕上圧延後、中間焼鈍が施されることなく、冷間圧延が行われる。冷間圧延の途中においても中間焼鈍を施す必要はない。冷間圧延によって、缶胴として必要な強度が付与される。この冷間圧延での圧延率は80〜90%とすることが望ましい。80%未満では冷間圧延板の耐圧強度が不足し、一方90%を超えるとDI成形時に45°方向の耳率が大きくなり、また強度が高くなり過ぎて、DI成形性時にカッピング割れや缶底割れが高頻度に発生するようになる。冷間圧延での終了板厚は、通常、0.28〜0.35mm程度である。
【0045】
冷間圧延後は、必要に応じて仕上焼鈍を施すことができる。この仕上焼鈍により加工組織が回復し、DI成形性や缶底成形性が向上する。仕上焼鈍温度は100〜150℃、好ましくは115〜145℃程度とされる。100℃未満では回復効果が十分に得られず、150℃を超えると固溶元素が析出し過ぎてDI成形性やフランジ成形性が低下する。焼鈍時間は数十分〜数hr程度でよい。なお、仕上焼鈍よっては、冷間圧延板の集合組織(結晶方位、粒径)は変化しない。
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【0047】
【実施例】
下記表1に示す化学成分のアルミニウム合金を溶製し、その溶湯をDC鋳造して板厚600mm、幅2100mmの鋳塊を得た。この鋳塊を均熱均熱処理し、その後熱間粗圧延および熱間仕上圧延した後、中間焼鈍を一切施すことなく冷間圧延を行った。これらの工程における製造条件を表2および表3に示す。なお、熱間仕上圧延におけるスタンド数は4段であり、全スタンド間(3箇所)におけるスタンド間張力の平均値は、第1スタンドと第2スタンドとの間のスタンド間張力をσ1、第2スタンドと第3スタンドとの間のスタンド間張力をσ2、第3スタンドと第4スタンドとの間のスタンド間張力をσ3としたとき、(σ1+σ2+σ3)/3によって求めた。
【0048】
【表1】
Figure 2004244701
【0049】
【表2】
Figure 2004244701
【0050】
【表3】
Figure 2004244701
【0051】
上記製造過程において、熱間仕上圧延後の圧延板の幅方向中央部から組織観察試験片を採取して板厚方向の断面(圧延方向に沿った断面)における集合組織成分(Cube方位、Goss方位の結晶粒)の存在率およびCube方位結晶粒については更に断面における分布状態を以下の要領で求めた。これらの測定結果を表4および表5に示す。
【0052】
組織観察試験片の測定面を機械研磨、バフ研磨を行い、その後電解研磨して表面を調整した。この試験片を用いて、板厚方向の長さが板表面から板厚中心部に渡り、圧延方向の長さが500μm とされた方形領域に対して、測定間隔を2μm として日本電子社製SEM(型番:JEOL JSM 5410)、EBSP測定・解析システム(TSL(TexSEM Laboratories, Inc.)社製、型番:OIM)を用いて、SEM−EBSP(Electron Back Scattering Pattern)を測定し、その後同システムの解析ソフトにより所期の方位の結晶粒と他の方位の結晶粒とを区別して描画した結晶粒分布図を求めた。
Cube方位、Goss方位の結晶粒の断面における存在率は、結晶粒分布図を画像解析することにより、板表面から中心に至る半断面における面積率として求めた。一方、Cube方位結晶粒の板厚方向の分布は、板表面から中心にかけて板厚方向に3等分(板厚全体では6等分)し、各領域でのCube方位粒の存在率を面積率で求めた。板厚方向のCube方位結晶粒の分布の均一性は、それらの最大値と最小値の差によって評価した。この最大最小差は集合組織の他の方位の結晶粒の均一性をも示すものと考えることができる。なお、結晶粒分布図の一例として試料No. 1(発明例)およびNo. 6(比較例)のCube方位結晶粒分布図を図2に示す。図中、黒色部がCube方位粒を示し、白色部が圧延集合組織を形成する結晶粒を示す。
【0053】
また、熱間圧延板の幅方向中央部から成形試験板(長さ200mm、幅100mm)を採取し、この試験板から加工したブランク材(直径66.7mm)を用いて下記の要領にて有底筒状カップを成形し、このカップから平均耳率を求めた。測定結果を表4および表5に併せて示す。
【0054】
前記カップは、ブランク材に潤滑油(D.A.Stuar社製、ナルコ147)を塗布してエリクセン試験機によって成形された。成形に用いられたポンチの直径は40mm、ダイス肩部のRは6.5mm、ポンチの肩Rは3.0mmであり、しわ押さえ圧は400kgf (3920N)とした。
【0055】
前記平均耳率は以下の要領により求めた。図1は、有底筒状カップの展開図であり、この展開図で示したようにカップの開口周縁部の8方向(圧延方向を0°として、0°方向、45°方向、90°方向、135°方向、180°方向、225°方向、270°方向および315°方向)に生じた耳の高さ(カップ底からの高さ)を測定し、下記式に基づいて平均耳率(%)を算出する。なお、0°方向、90°方向、180°方向、270°方向に生じる耳(高さT1〜T4)を−(マイナス)耳と呼び、45°方向、135°方向、225°方向、315°方向に生じる耳(高さY1〜Y4)を+(プラス)耳と呼ぶ。
Figure 2004244701
【0056】
また、仕上焼鈍後の冷間圧延板の幅方向中央部から組織観察試験片を採取して1/4板厚部および1/2板厚部におけるCube方位の結晶粒の存在率(面積率)を以下のようにして求め、板厚方向におけるCube方位粒の分布状態を評価した。組織観察試験片を板表面から板厚の1/4深さ、あるいは1/2深さまで削り、削り出した1/4板厚部の面および1/2板厚部の面を調整して、その面上の500μm ×500μm の方形領域に対し、前記熱間圧延板の断面観察と同様、前記SEM、EBSP測定・解析システム、解析ソフトを用いて、Cube方位の結晶粒と他の方位の結晶粒とを区別して描画した結晶粒分布図を求めた。このとき、SEMによるEBSPの測定間隔は1μm とした。得られた結晶粒分布図を画像解析することにより1/4板厚部、1/2板厚部のCube方位結晶粒の面積率を求めた。
【0057】
また、熱間圧延板と同様にして、仕上焼鈍後の冷間圧延板から成形試験板を採取し、この試験板から加工したブランク材を用いてエリクセン試験機によって有底筒状カップを成形し、このカップから平均耳率を求めた。但し、ダイス側肩部のRは2.0mmとした。これらの測定結果を表4および表5に併せて示す。
【0058】
さらに、仕上焼鈍後の冷間圧延板を用いて、DI成形によって有底円筒状カップ(内径66mmφ、側壁中間部板厚103μm 、側壁先端部板厚165μm )を成形し、成形個数5万個当たりの破胴缶の個数を調べ、これによってDI成形性を評価した。DI成形は製缶速度300缶/分の速さで成形し、最終第3しごき率は40%とした。
【0059】
また、前記DI成形後、さらにネック加工、フランジ加工を行い、液の充填、缶蓋の巻締めを施して充填缶を製造し、缶ネック部から液漏れを調べ、5万缶当たりの漏れ缶の発生率を調べ、ネック部の耐裂け性を評価した。ネック成形条件は、缶胴外径66.2mm、ネック部を4段で形成し、最上部のネック外径60.3mmとした。DI成形性、ネック部の耐裂け性の測定結果を表4および表5に併せて示す。
【0060】
【表4】
Figure 2004244701
【0061】
【表5】
Figure 2004244701
【0062】
表4および表5から、本発明にかかる試料No. 1〜5は、成分および製造条件、組織条件が適正であり、冷間圧延板の平均耳率は0〜+1.0%以下と低耳率でありであり、DI成形性およびネック部の耐裂け性にも優れている。
一方、試料No. 6〜9(比較例)は、成分は本発明範囲を満足するものの、均熱条件、あるいはさらに仕上圧延条件が不適切であるため、熱間圧延板および冷間圧延板の組織条件が本発明範囲外となり、−耳が形成されたり、大きな+耳が形成され、ネック部の耐裂け性も総じて良くなかった。また、成分が本発明範囲を外れる試料No. 10〜19は製造条件が適正でも、やはり平均耳率、DI成形性、ネック部の耐裂け性が良くない。なお、−耳は、外見上、0°、90°、180°および270°の方向に突出した大きな形であり、DI成形後、缶胴の横断面が楕円形になりやすく、真円度が低下して好ましくない。このため、通常、0%から+2%程度の耳率が成形上の要求水準とされる。
また、試料No. 21〜33(比較例)は、成分は本発明範囲を満足するものの、均熱条件、あるいはさらに仕上圧延条件(特に仕上圧延におけるスタンド間張力平均値)が不適切であるため、熱間圧延板および冷間圧延板における板厚方向のCube方位結晶粒の分布が不均一になり、DI成形性は概ね良好であるものの、ネック部の耐裂け性の低下が著しい。
【0063】
【発明の効果】
本発明にかかるアルミニウム合金熱間圧延板によれば、所定成分の下、板厚方向および圧延方向を含む断面の全領域のCube方位結晶粒を5〜70%存在させるとともに板厚方向の同結晶粒の分布を最大最小差が40%以下となるように均一化したので、熱間圧延後に中間焼鈍を施すことなく冷間圧延を行うことにより、板厚方向の断面の1/4板厚部および1/2板厚部におけるCube方位結晶粒を共に2〜20%に均一化することができる。かかる板厚方向の組織均一性を有する本発明の缶胴用アルミニウム合金冷間圧延板によれば、耳率の低減を図るとともに2ピース缶あるいはボトル形状缶の缶胴のネック部の耐裂け性を大きく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は平均耳率の算出方法を説明するための図であり、成形後のカップ展開図を示す。
【図2】実施例(試料No. 1および6)における熱間圧延板のCube方位結晶粒の板厚方向の生成状態を示す分布図である。

Claims (5)

  1. mass%で、
    Mn:0.8〜1.5%、
    Mg:0.5〜1.5%、
    Fe:0.1〜0.7%、
    Si:0.05〜0.5%
    を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、板厚方向および圧延方向を含む断面の全領域におけるCube方位の結晶粒が面積率で5%〜70%存在し、かつ前記断面において板表面から板厚中心に至る領域を3等分したとき、3等分された各領域に存在するCube方位の結晶粒の面積率の最大値と最小値との差が40%以下であるアルミニウム合金熱間圧延板。
  2. さらに、前記断面の全領域におけるGoss方位の結晶粒が面積率で0.5%〜30%存在する請求項1に記載したアルミニウム合金熱間圧延板。
  3. さらに、Cu:0.05〜0.5%、Cr:0.001〜0.3%、Zn:0.05〜0.5%の一種または二種以上を含有する請求項1または2に記載したアルミニウム合金熱間圧延板。
  4. さらに、Ti:0.005〜0.20%を単独で、あるいは前記TiとB:0.0001〜0.05%とを複合して含有する請求項1から3のいずれか1項に記載したアルミニウム合金熱間圧延板。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載したアルミニウム合金熱間圧延板を用いて冷間圧延された冷間圧延板であって、
    板表面から板厚の1/4深さの1/4板厚部および板表面から板厚の1/2深さの1/2板厚部の各々についてCube方位の結晶粒が面積率で2%以上、20%以下存在する缶胴用アルミニウム合金冷間圧延板。
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