JP2004122611A - 帯電防止ハードコートフィルム及びそれを用いた表示部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも基材となる基材(A)に、粒子径100nm以下の酸化錫インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アンチモン酸亜鉛、酸化アンチモンのいずれか一種類あるいは二種類以上の混合物からなる金属酸化物(C)と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)と、分子内にフッ素原子を含むアクリル化合物(E)とを含むハードコート層(B)を設けてなる帯電防止ハードコートフィルムであって、該金属酸化物(C)5〜50重量部に対して、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)20〜90重量部と、分子内にフッ素原子を含むアクリル化合物(E)5〜30重量部含むことを特徴とする帯電防止ハードコートフィルムを提供するものである。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い永久帯電防止性を示し、干渉縞の発生を抑え、且つ透明性、表面硬度、基材との密着性、擦傷性に優れた帯電防止ハードコートフィルム及びそれを用いた表示部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にプラスティックやフィルムなどの高分子材料の表面は比較的柔軟であることから、表面硬度を得る為に、物品表面にアクリル多官能化合物を重合させ、ハードコート層を設けるという手法がなされる。このようにして得られたハードコート層は、アクリル樹脂特有の性質である高い表面硬度、光沢性、透明性、擦傷性を有する。その一方で、絶縁特性に優れる為に帯電しやすく、ハードコート層を設けた製品表面への埃等の付着による汚れや、精密機械に使用された場合に、帯電してしまうことにより障害が発生するといった問題を抱えていた。
【0003】
これらの問題は、通常製品とハードコート層の間やハードコート層上に表面硬度を落とさない程度にきわめて薄く帯電防止層を設ける手法や、ハードコート層に種々の帯電防止剤を練り混むことにより解消することができる(特許文献1特許文献2、特許文献3など参照)。しかしながら新たに帯電防止層を設けることにより、ハードコート層と帯電防止層の界面での密着性が低下し剥離現象が起きたり、層間の屈折率の差による干渉縞の発生したり、帯電防止剤練り込み型ハードコートの場合は、帯電防止剤のブリードアウトや、着色による透過率の低下等が新たに問題となることがある。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−231444号公報
【特許文献1】
特開平11−115087号公報
【特許文献1】
特開平10−235807号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記課題を解消し、特に高い永久帯電防止性を示し、干渉縞の発生を抑え、且つ密着性、透明性、表面硬度、擦傷性に優れた帯電防止性ハードコートフィルム及びそれを用いた表示部材を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、少なくとも基材となる基材(A)に、粒子径100nm以下の酸化錫インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アンチモン酸亜鉛、酸化アンチモンのいずれか一種類あるいは二種類以上の混合物からなる金属酸化物(C)と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)と、分子内にフッ素原子を含むアクリル化合物(E)を含むハードコート層(B)を設けてなる帯電防止ハードコートフィルムであって、該金属酸化物(C)5〜50重量部に対して、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)20〜90重量部と、分子内にフッ素原子を含むアクリル化合物(E)5〜30重量部含むことを特徴とする帯電防止ハードコートフィルムである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1のハードコートフィルムを、表面保護フィルムとして用いたことを特徴とする表示部材である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明では、少なくとも基材となる基材(A)に、粒子径100nm以下の酸化錫インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アンチモン酸亜鉛、酸化アンチモンのいずれか一種類あるいは二種類以上の混合物からなる金属酸化物(C)と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)と、分子内にフッ素原子を含むアクリル化合物(E)を含むハードコート層(B)を設けることにより、フィルム最表面に帯電防止層を保持するために、少ない帯電防止剤の配合により、ハードコート性能の低下を伴うことなく、帯電防止性能を効率よく発揮させることができる。
【0009】
本発明では、基材(A)は特に限定されることはないが、セルロース系のフィルムを用いると、透明性と干渉縞の抑制の点から、光学フィルム応用した時に好ましい。セルロース系のフィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、モノアセチルセルロースフィルムなどを用いることができる。好ましくは、トリアセチルセルロースフィルムを用いた場合には、高い透明性と、干渉縞の発生を抑えることができる。
【0010】
本発明の金属酸化物(C)は、ハードコート層(B)に配合することにより、ハードコート層に導通パスを形成し、層に導電性を付与する、いわゆる帯電防止剤である。
金属酸化物(C)は特に限定されるものではなく、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アンチモン酸亜鉛、酸化アンチモン等が挙げられる。
【0011】
また金属酸化物(C)は、平均粒径100nm以下が好適である。100nmを越える粒径の金属酸化物を用いた場合には、光の散乱が発生し、透過率の低下、あるいは着色による透明性が減少するため好ましくない。
また金属酸化物(C)の配合量は5〜50重量部とすると良い。5重量部より少ないと十分な帯電防止効果が得られず、50重量部を越えると、白化などによる透過率低下あるいはヘイズが発生するためである。
【0012】
本発明の分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)は、ハードコート層(B)のベースとなるアクリル樹脂であり、帯電防止剤をハードコート層に保持させるバインダー成分である。
【0013】
また、本発明の分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)は得に限定されることはなく、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)は単独あるいは二種類以上を同時に用いることもできる。更に、目的に応じてアクリル単官能及び二官能樹脂を配合することもできるが、表面硬度の低下等の問題も同時に発生することがある。
【0014】
また本発明の分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)の配合量は、金属酸化物(C)5〜50重量部に対して20〜90重量部とすると良く、20重量部より少ないと、十分なバインダー能を発揮することができずに、膜の硬度の低下、あるいは帯電防止剤の欠落を生じる。また90重量部を越えると、層の帯電防止剤量の含有量の低下により、十分な帯電防止効果が得られないためである。
【0015】
本発明の分子内にフッ素原子を含むアクリル化合物(E)は、金属酸化物(C)を配合することにより高くなるハードコート層(B)の屈折率を下げる、いわゆる屈折率調整剤である。
【0016】
また本発明の分子内にフッ素原子を含むアクリル化合物(E)は得に限定されるものではなく、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H、1H、5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H、1H、2H、2H−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等の単官能アクリル化合物、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロ−1,10−デカンジオール−ジエポキシ(メタ)アクリレート(商品名:16FEpA等)、ポリエチレンパーフルオライドジ(メタ)アクリレート(PEPFジ(メタ)アクリレート)等の2官能アクリル化合物等を用いることができる。
【0017】
また本発明の分子内にフッ素原子を含むアクリル化合物(E)の配合量は、金属酸化物(B)の配合量5〜50重量部に対して5〜30重量部とすると良く、5重量部より少ないと十分に屈折率を調整する事ができず干渉縞が発生し、30重量部を越えるとハードコート層(B)の表面硬度が大幅に低下するためである。
【0018】
また本発明のハードコート層(B)は基材に塗布する際、溶剤(F)で任意の濃度に希釈することができる。溶剤(F)はとくに限定されるものでではなく、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルイソブチルアセテートなどのエステル類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族性溶剤類等を用いることができる。得に好ましくは、メチルエチルケトン、酢酸メチル、ジクロロメタンを単独あるいは2種類以上混合して用いた場合に、基材となるセルロースフィルム表面を浸食することにより干渉縞の発生を効果的に抑えることが出来る。
【0019】
また、本発明のハードコート層(B)には、重合開始剤(G)を配合すると好ましい。重合開始剤(G)は特に限定されるものではなく、紫外線等の活性エネルギーを照射した際に、ラジカルを発生する化合物を用いることができる。例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルー1−フェニルプロパンー1−オン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパンー1−オン、2,2−ジメトキシー1,2−ジフェニルエタンー1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシー2−メチル1−プロパンー1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノー1−(4−モルフォリノフェニル)ブタンー1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が使用できる。
【0020】
本発明において重合開始剤(G)の配合量は、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)20〜90重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは1〜7重量部、更に好ましくは1〜5重量部とされる。0.1重量部未満の場合は、各層共に硬度が不十分となり、10重量部を越えると各層共にクラックが生じ易くなる場合がある。特に重合開始剤(G)の配合量を1〜5重量部に設定すると、各層共に効率よく硬化し、クラックの発生を防ぐことができ好ましい。
【0021】
ハードコート層(B)の基材への塗工方式は例えば、スロットコータ、スピンコータ、ロールコータ、カーテンコータ、スクリーン印刷等の従来の塗工方式により塗工することができる。
この時形成するハードコート層(B)の膜厚は通常0.1〜20μmであり、好ましくは0.5〜10μmである。0.1μm未満では十分な表面硬度は得られず、20μmを越えると、クラックが発生するためである。
【0022】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0023】
<実施例1>
基材(A)としてセルロースフィルム(フジタックTD80UF(富士フイルム社製、厚さ80μm))に、金属酸化物(C)としてアンチモン酸亜鉛20重量部(平均粒子径80nm)と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、DPHA)70重量部と、分子内にフッ素原子を有するアクリル化合物(E)としてビスコート3F(大阪有機化学工業社製)10重量部と、重合開始剤としてイルガキュア184(チバガイギー社製)3重量部とをメチルエチルケトン中に任意の濃度に混合溶解し、ロールコータにて5.0μmの厚さに塗布し、オーブンにて溶媒除去後紫外線照射により硬化させハードコート層(B)を得た。得られた帯電防止ハードコートフィルムは、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、擦傷性を測定し、干渉縞の評価を行った。
【0024】
<実施例2>
金属酸化物(C)として酸化錫インジウム5重量部(平均粒子径80nm)と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)としてペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートPE−3A)90重量部と、分子内にフッ素原子を有するアクリル化合物(E)としてビスコート8F(大阪有機化学工業社製)5重量部と、重合開始剤(G)としてダロキュア1173(チバガイギー社製)10重量部とした以外は実施例1と同様にして帯電防止ハードコートフィルムを得た。
【0025】
<実施例3>
金属酸化物(C)として酸化アンチモン50重量部(平均粒子径80nm)と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)としてペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートPE−4A)20重量部と、分子内にフッ素原子を有するアクリル化合物(E)としてART−3(共栄社化学社製)30重量部と、重合開始剤(G)としてイルガキュア907(チバガイギー社製)0.1重量部とした以外は実施例1と同様にして帯電防止ハードコートフィルムを得た。
【0026】
<実施例4>
金属酸化物(C)として酸化錫インジウム20重量部(平均粒子径80nm)と、アンチモン酸亜鉛20重量部(平均粒子径80nm)と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)としてDPHA20重量部と、PE−3A10重量部と、PE−4A5重量部と、分子内にフッ素原子を有するアクリル化合物(E)として16FEpA(共栄社化学社製)25重量部と、重合開始剤(G)としてイルガキュア184を1重量部とした以外は実施例1と同様にして帯電防止ハードコートフィルムを得た。
【0027】
<実施例5>
金属酸化物(C)として酸化錫インジウム10重量部(平均粒子径80nm)と、アンチモン酸亜鉛10重量部(平均粒子径80nm)と、酸化アンチモン10重量部(平均粒子径80nm)と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)としてDPHA40重量部と、分子内にフッ素原子を有するアクリル化合物(E)としてビスコート3F15重量部と、ART―3を15重量部と、重合開始剤(G)としてイルガキュア907を5重量部とした以外は実施例1と同様にして帯電防止ハードコートフィルムを得た。
【0028】
<比較例1>
金属酸化物(C)として酸化錫インジウム30重量部と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)としてDPHA70重量部と、重合開始剤(G)としてイルガキュア184を5重量部とした以外は実施例1と同様にして帯電防止ハードコートフィルムを得た。
【0029】
<比較例2>
金属酸化物(C)としてアンチモン酸亜鉛25重量部と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)としてPE−3A25重量部と、分子内にフッ素原子を有するアクリル化合物(E)としてビスコートー4F(大阪有機化学工業社製)50重量部と、重合開始剤(G)としてダロキュア1173を0.5重量部とした以外は実施例1と同様にして帯電防止ハードコートフィルムを得た。
【0030】
<比較例3>
金属酸化物(C)として酸化アンチモン2重量部と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)としてDPHA45重量部と、PE−4A45重量部と、分子内にフッ素原子を有するアクリル化合物(E)として16FEpAと、重合開始剤(G)としてイルガキュア907を7重量部とした以外は実施例1と同様にして帯電防止ハードコートフィルムを得た。
【0031】
<比較例4>
金属酸化物(C)として酸化錫インジウム80重量部と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)としてDPHA10重量部と、分子内にフッ素原子を有するアクリル化合物(E)としてビスコートー17F(大阪有機化学工業社製)10重量部と、重合開始剤(G)としてイルガキュア184を0.2重量部とした以外は実施例1と同様にして帯電防止ハードコートフィルムを得た。
【0032】
上記の実施例、比較例で評価した表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、擦傷性、全光透過率、Hazeは以下の方法で測定した。
(表面抵抗値)
JIS K6911に準拠して行った
(密着性)
ハードコート層を碁盤目上に切断後、テープにより180℃剥離を行い残存率(%)を測定した。
(鉛筆硬度)
JIS K5400に準拠して行った。
(擦傷性)
スチールウール(#0000)250gにて10往復擦傷し、傷の有無を目視にて確認した。
(全光透過率)
ASTM D 1003−61に準拠して行った。
(干渉縞)
干渉縞の有無を目視にて確認した。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、金属酸化物を含むアクリル化合物からなる屈折率を調節したハードコート層を設けることにより、高い帯電防止性を示し、更に密着性、表面硬度、擦傷性、透明性に優れた帯電防止ハードコートフィルムを、干渉縞が発生することなく得ることができる。また本帯電防止性ハードコートフィルムは、各種製品に用いることができるが、特にディスプレイ製品の保護フィルムとして好適に使用することができる。
Claims (2)
- 少なくとも基材となる基材(A)に、粒子径100nm以下の酸化錫インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アンチモン酸亜鉛、酸化アンチモンのいずれか一種類あるいは二種類以上の混合物からなる金属酸化物(C)と、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)と、分子内にフッ素原子を含むアクリル化合物(E)とを含むハードコート層(B)を設けてなる帯電防止ハードコートフィルムであって、該金属酸化物(C)5〜50重量部に対して、分子内に3個以上のアクリル基を有する化合物(D)20〜90重量部と、分子内にフッ素原子を含むアクリル化合物(E)5〜30重量部含むことを特徴とする帯電防止ハードコートフィルム。
- 請求項1のハードコートフィルムを、表面保護フィルムとして用いたことを特徴とする表示部材。
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