JP2004115354A - 炭素質物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ナノメータ(nm)サイズのフィブリルで構成された炭素質物質(グラファイト状物質など)をより低い温度で安価に製造できる方法を提供する。
【解決手段】らせん状構造を有する糸状体で、同心円状又は渦巻き状の構造に形成された前駆体有機高分子(ポリアセチレン系高分子など)を熱処理又は熱分解し、前駆体に由来する構造を有するナノサイズ炭素質物質を製造する。前駆体は、同心円状又は渦巻き状の構造を有する複数のドメインを有していてもよい。前記構造の有機高分子は、キラルネマチック液晶場を利用して調製でき、生成した前駆体を、真空中又は不活性ガス雰囲気中、500℃〜1800℃程度で熱処理することにより得ることができる。前駆体有機高分子の形態は、フィルム状、薄膜状、シート状、粉末状などであってもよい。
【選択図】 なし
【解決手段】らせん状構造を有する糸状体で、同心円状又は渦巻き状の構造に形成された前駆体有機高分子(ポリアセチレン系高分子など)を熱処理又は熱分解し、前駆体に由来する構造を有するナノサイズ炭素質物質を製造する。前駆体は、同心円状又は渦巻き状の構造を有する複数のドメインを有していてもよい。前記構造の有機高分子は、キラルネマチック液晶場を利用して調製でき、生成した前駆体を、真空中又は不活性ガス雰囲気中、500℃〜1800℃程度で熱処理することにより得ることができる。前駆体有機高分子の形態は、フィルム状、薄膜状、シート状、粉末状などであってもよい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グラファイト状炭素物質などの炭素質物質、より詳細には、同心円状の構造を有する有機高分子前駆体からナノサイズの炭素質物質を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
グラファイトは、熱伝導性、耐熱性、耐薬品性、電気伝導性等の点で優れた性質を有するため、熱伝導体、電極、発熱体、断熱材、電界シールド材、スパッター用ターゲット材料、その他の電子材料として広く工業的に利用されている。
【0003】
グラファイトに関し、分子軌道(MO)の計算などにおいて、グラファイト端を有する炭素材料が、機能性を発揮することが予測されている(例えば、M.Fujita, K.Wakabayashi, K.Nakada, K.Kusakabe, J.Phys.Soc.Jpn.65, 1920 , 1996,and K.Wakabayashi, Mol Cryst Liq Cryst, 340, 379, 2000など)。
【0004】
さらに、グラファイトに関し、近年、電子機器への応用が進み、電子材料としての利用が注目されている。特に、冷陰極電子源としてカーボンナノチューブの電子容易放出性が発見されて以来、電子機器の電子源への応用、例えば、電界放出型冷陰極への応用、光源ランプ電子源への応用、平面パネル電子源への応用などが注目されている。例えば、特開2000−123712号公報には、電子放出部と、この電子放出部に電圧を印加するための電極とで構成された電解放射冷陰極において、前記電子放出部が、導電性カーボン材料と、電子を放出するカーボン材料との混合物で構成されている電界放射型冷陰極が開示されている。この文献には、電子放出性カーボン材料が、フラーレン、カーボンナノチューブであることも開示されている。
【0005】
このようなグラファイトの製造法として、出発原料としての高分子材料を熱処理することによりグラファイト質フィルムを得る方法が知られている。具体的には、特開昭61−275114号公報には、高分子材料として、ポリフェニレンオキサジアゾール(POD)を1600℃以上(好ましくは1800℃以上、さらに好ましくは2000℃以上)の温度で熱処理してグラファイトに転換する方法が開示されている。この文献には、PODをキャストした被膜が高い結晶性、配向性を有していることが記載されている。特開昭61−275115号公報には、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾールから選択された少なくとも一種の高分子を1800℃以上(好ましくは2000℃以上、さらに好ましくは2500℃以上)の温度で加熱し、グラファイトに転換する方法が開示されている。この文献には、前記高分子のキャスト又は紡糸により得られる被膜や繊維が高い結晶性を有しており、この結晶性を反映して炭素材料は配向性を有することも記載されている。特開2000−169125号公報には、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドおよびポリオキサジアゾールから選択されたシート形態のポリマー材料を、不活性雰囲気下、400〜800℃の加熱を1〜10℃/分の昇温速度で行い、最終的に少なくとも2400℃まで加熱し、膨張グラファイト材料を製造する方法が開示されている。
【0006】
しかし、これらの方法は主に大面積化乃至結晶の大きいグラファイトを得ることを主目的としているため、いずれも大面積化に適した多環芳香族化合物などで構成された高分子材料を出発物質としている。また、これらの文献では、ナノサイズのグラファイトなどについて特に注目していない。さらに、これらの多環芳香族化合物などで構成された高分子材料をグラファイト化するには、ヘテロ原子の脱離により炭素縮合環を形成するため、高温(例えば、2000℃以上)での熱処理が必要である。
【0007】
なお、「液晶」Vol.2, No.3 ,173−186(1998)、Synthetic Metals 102 (1999) 1406−1409、Current Applied Physics 1, (2001) 121−123およびPolym. Adv. Technol., 11, 826−829 (2000)には、ネマチック液晶場でアセチレンを重合すると、捻れた螺旋構造を有するヘリカルポリアセチレンが得られることが報告されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ナノメータ(nm)サイズのフィブリルで構成された炭素質物質(グラファイト状物質など)をより低い温度で安価に製造できる方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、フィブリルの一次構造又は高次構造を反映したナノメータサイズの炭素質物質(グラファイト状物質)を効率よく製造できる方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、湾曲した複数のナノメータサイズのフィブリルで構成されたグラファイト状物質をより効率よく製造できる方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記炭素質物質(グラファイトなど)の製造方法について、鋭意検討した結果、有機高分子の配向構造を同心円状又は渦巻き状に制御し、この同心円状又は渦巻き状の固体構造を有する有機高分子(例えば、非芳香族又は非ヘテロ環式の線状共役系有機高分子)を前駆体高分子として熱処理すると、熱処理温度が低くても、グラファイトに転換し、前記構造を反映したナノサイズの炭素状物質又はグラファイト状炭素物質が効率よく生成することを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の方法では、同心円状又は渦巻き状の構造を有する有機高分子で構成された前駆体を熱処理又は熱分解し、前駆体の同心円状の構造に由来又は対応する構造(又は前記構造を反映した構造)を有する炭素質物質を製造する。
【0013】
前記前駆体において、同心円状又は渦巻き状の構造は、ナノメータサイズの複数のフィラメント又はフィブリルが螺旋状に絡み合った糸状体で形成してもよい。なお、同心円状又は渦巻き状の構造を形成する前記螺旋状糸状体は有機高分子ベースと一体に形成されていてもよい。さらに、前駆体において、同心円状又は渦巻き状の構造を有する複数のドメインが形成されていてもよい。前記有機高分子は、ポリアセチレン系高分子などの非芳香族又は非ヘテロ環式共役系有機高分子であってもよく、有機高分子の形態は、薄膜状(フィルム状、シート状を含む)、粒子状又は粉末状などであってもよい。本発明の方法では、種々の配向場、例えば、液晶場(ネマチック液晶又はキラルネマチック液晶場など)で同心円状又は渦巻き状の構造を有する有機高分子を構成された前駆体を調製し、この前駆体を熱処理してもよい。前記熱処理は、通常、真空中又は不活性ガス雰囲気中で行うことができ、熱処理するとともに高エネルギー線(電子線、レーザ光線などの光)を照射してもよい。熱処理温度は、例えば、500℃〜1800℃程度(特に600℃〜1500℃程度)の範囲から選択できる。
【0014】
本発明は、前記製造方法で得られる炭素質物質(グラファイト状物質など)も包含する。この炭素質物質(グラファイト状物質など)は、ナノサイズの炭素状物質又はグラファイト状炭素物質であってもよい。このような炭素質物質は、炭素質ベースの表面に、ナノサイズオーダーの炭素質フィラメント又はフィブリル状(特に、螺旋状構造、例えば、複数のフィラメントやフィブリルが互いに絡み合って形成された螺旋状構造)の糸状体で構成された炭素質物質(グラファイト状物質を含む)が一体に形成されており、前記糸状体が同心円状などの円形状に湾曲して配列し、多数のドメインの凝集又は集合体を形成しているようである。また、各ドメインでは、炭素質ベースの表面には、活性な炭素質糸状体(特にグラファイト状糸状体)のエッジ面が位置しているようである。さらに、各ドメインにおいて、前記糸状体の配列状態は均一かつ高密度に制御された構造を有するようである。
【0015】
本発明では、特定の形態に固体構造が制御された有機高分子物質(ポリアセチレン系高分子など)を前駆体物質として用いるため、少なくとも2000℃以上の高温処理を必要とする従来の製造方法に比べて、その熱処理温度を著しく低下することができるとともに、ナノサイズのグラファイト状物質を効率よく製造できる。本発明の炭素質物質は、前記形態で配列したフィラメント状炭素(グラファイト状構造)を表面に有する炭素質ベース(薄膜、フィルム、シートなどの二次元的ナノ炭素材、炭素質繊維などの一次元的ナノ炭素材や炭素質粒子(粉末)などのゼロ次元ナノ炭素材)であってもよい。
【0016】
なお、本明細書において「炭素質物質」とは、炭素状物質だけでなくグラファイト状物質も含む意味に用いる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明では、炭素前駆体(グラファイト前駆体など)として固体構造が制御された有機高分子(分子配向した有機高分子など)を用いる。有機高分子は、通常、加熱処理により炭素化又はグラファイト化が可能である。このような高分子としては、熱硬化性ポリマー(芳香族ポリイミドなど)、導電性ポリマー(ポリアセチレン系高分子、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンベンゾビスチアゾール、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾールなどのポリフェニレン系高分子、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリオキサジアゾールなどの複素環系高分子、ポリピロール、ポリアニリンなど)、液晶性ポリマー(芳香族ポリエステル系液晶性高分子、ポリエステルアミド系液晶性高分子など)、配向性成分(液晶、DNAなど)に結合させたポリマー、分子内に炭素/炭素二重結合を有するポリエン又は炭素/炭素三重結合を有するポリインなどの線状高分子(例えばポリアセチレン、ポリジアセチレンなどのポリアセチレン系重合体又はポリアセチレン系高分子など)などが挙げられる。有機高分子は、不溶融性ポリマー、熱硬化性ポリマーで構成してもよい。なお、液晶及び液晶性ポリマーは配向構造を有し、ポリマーに配向性成分(液晶ポリマー、DNA)を結合させるとポリマーの分子配向性を向上できる。液晶としては、スメクチック液晶、ネマチック液晶、コレステリック液晶(キラルネマチック液晶を含む)、ディスコチック液晶などが挙げられ、サーモトロピック液晶、リオトロピック液晶のいずれであってもよい。これらの前駆体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
これらの前駆体のうち、共役系有機高分子(例えば、線状共役系有機高分子、又は非芳香族又は非ヘテロ環式の線状共役系有機高分子)、特にポリエン又はポリイン構造を有する共役系有機高分子(比較的合成しやすいポリアセチレン系高分子)が好ましい。
【0019】
ポリアセチレン系高分子には、アセチレン系単量体の単独又は共重合体が含まれる。また、ポリアセチレン系高分子は、ポリアセチレンの他、置換基を有するポリアセチレン誘導体であってもよく、前記置換基としては、例えば、塩素、フッ素原子などのハロゲン原子、ヒドロキシル基、C1−4アルコキシ基、C1−4アルキル基、C3−10シクロアルキル基、フェニル基などのC6−12アリール基、ベンジル基などのアラルキル基などが例示できる。代表的なポリアセチレン誘導体としては、例えば、ポリフェニルアセチレン、ポリフェニルクロロアセチレン、ポリフルオロアセチレンなどが例示できる。
【0020】
なお、通常の線状熱可塑性高分子(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子)は、1000℃以下の温度での炭素化で、非晶状態となり、グラファイト構造を形成しない。
【0021】
同心円状又は渦巻き状の配向構造を有するナノメータサイズの有機高分子(前駆体)が形成される限り、固体構造の制御方法(らせん構造の形成や同心円状又は渦巻き状配列など)は、特に限定されず、種々の配向場、特にキラルネマチック液晶場又はコレステリック液晶場で有機高分子を合成することにより制御することができる。固体構造の制御方法(らせん構造の形成や同心円状又は渦巻き状配列など)としては、通常、種々のキラルネマチック液晶場での共役系線状高分子の合成などが例示できる。液晶場(液晶で構成される配向場)での有機高分子の分子配向は、例えば、キラルネマチック液晶が配向した前記液晶場で単量体を重合することにより有機高分子を液晶の配向に沿って配向させる方法、キラルネマチック液晶と有機高分子とを混合し、液晶の配向に伴って有機高分子を配向させる方法などが例示できる。これらの方法において、磁場を作用させて液晶を配向させてもよい。すなわち、液晶場に磁場を作用させることにより、配向性を有する螺旋構造を形成させることも可能である。磁場により有機高分子を分子配向させる方法としては、前記共役系有機高分子(特に溶液状などの粘度を低減した状態の有機高分子)に磁場を作用させて配向させる方法、磁場を作用させながら前記共役系有機高分子の単量体を重合する方法などが例示できる。好ましい方法では、磁場が作用する液晶場で有機高分子を分子配向させることができる。
【0022】
これらの制御方法のうち、均一に分子レベルで配向制御するためには、少なくともキラルネマチック液晶場(特にキラルネマチック液晶場)又は少なくともキラルネマチック液晶場(特にキラルネマチック液晶場)と磁場との組合せによる配向が好ましい。例えば、磁場を作用させながらキラルネマチック液晶場(配向した液晶の存在下)で、共役系有機高分子(ポリアセチレン系高分子など)の単量体を重合することにより、配向した螺旋構造を有する有機高分子(螺旋状糸状体)を効率よく生成できる。なお、螺旋状糸状体は、一次構造(1本のフィラメント又はフィブリルの螺旋状体やこの螺旋状体が集合したフィブリルの螺旋状体)のみならず、高次構造(数本の螺旋状フィラメントやフィブリルが捻れながら形成されたマイクロフィブリル)などの各階層の螺旋状体を含む。また、有機高分子の調製に伴って、螺旋状糸状体は有機高分子ベースと一体に形成されていてもよい。
【0023】
特に、(R)−体や(S)−体などの光学活性体(キラル化合物)の添加などにより、キラルネマチック液晶により不斉異方性反応場(ヘリカル構造を有するキラルネマチック液晶場)を構築し、単量体を重合すると、ヘリカル構造(特に規則的な螺旋構造)を有するとともに、複数のヘリカル状フィラメント又はフィブリルが捻れながら絡まった糸状体(マクロフィブリル)を効率よく形成できる。この糸状体では、反応場のヘリカル構造に対応して、複数のフィラメント又はフィブリルが所定方向に捻れた構造(左巻き又は右巻き構造など)を有していてもよい。さらに、前記糸状体(又は前記糸状体の構造)は、マクロ的に同心円状又は渦巻き状(若しくは指紋状)に配向して高次構造のドメイン又はモルホロジー(フィブリル又はバンドルが円形状や楕円形状などの同心円状又は渦巻き状に湾曲して配向し、凝集又は集合した特徴的なドメイン又はモルホロジーなど)を形成している。なお、前駆体は、単一のドメインで構成してもよいが、通常、複数のドメインで構成されており、複数のドメインは、凝集や集合などの形態で隣接して形成されていてもよい。
【0024】
このような方法では、フィラメント状有機高分子が規則的に配向したヘリカル構造を表面(フィルムやシート、薄膜などの二次元的構造物又は粉末などの粒子などの表面)に形成でき、ナノメータ(nm)サイズの炭素質物質を生成させるのに有用である。
【0025】
なお、フィラメント又はフィブリルのサイズ(繊維径)は、例えば、0.1μm以下(例えば、10〜500nm、好ましくは10〜250nm程度)であってもよく、螺旋状糸状体の径は、例えば、50〜1000nm(好ましくは100〜700nm)程度であってもよい。また、ドメインのサイズは、通常、例えば、大きくても200μm(特に100μm)程度である。
【0026】
前駆体を構成する有機高分子が分子配向すると、分子同士の結合が容易になり、炭素化、特にグラファイト化が促進される。そのため、より低温でのグラファイトの調製が可能になる。また、より低温での調製が可能であるため、エネルギー的に有利であると共に、炭素エッジ面を薄膜(フィルム又はシートを含む)や粒子(粉末)の表面に均一かつ高密度に配列して制御したナノサイズの炭素状物質又はグラファイト状炭素物質を製造することができる。しかも、高純度のナノグラファイトを得ることができる。なお、同じ加熱温度で、配向処理した高分子と配向処理をしていない高分子とを熱処理した場合、配向処理した高分子を原料に用いると、ナノグラファイトの結晶化度が高くなるとともに、グラファイトの特定方向のサイズを比較的大きくできる。
【0027】
前駆体(有機高分子)の形状は、特に限定されず、二次元的構造(フィルム状、薄膜状、シート状)、一次元的構造(繊維状)、粉末状又は粉粒状や無定形状などであってもよい。好ましい有機高分子の形態は、二次元的構造又は粉粒状であり、通常、薄膜状、シート状である。有機高分子のサイズは特に制限されず、前記形状に応じて適当に選択でき、例えば、二次元的構造を有する有機高分子では、厚さ500μm以下(例えば、10〜200μm、好ましくは10〜100μm程度)であってもよい。また、粉粒状の有機高分子では、平均粒径1〜500μm、好ましくは5〜100μm程度であってもよい。
【0028】
熱処理又は熱分解は、真空中(真空度200Pa以下)又は不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなど)雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で熱処理する場合、圧力に関して、常圧、減圧又は加圧でもよいが、熱処理系内への周囲からの気体の流入を防ぐために、常圧より多少高く(例えば、約0.1〜1MPa、特に0.1〜0.5MPa(例えば、0.11〜0.5MPa)程度の圧力に)するのが好ましい。
【0029】
本発明は、前記特有の原料を用いるため、従来のように2000℃以上の高温を必要とせず、熱処理温度(又はグラファイト化温度)を低減できるという特色がある。熱処理温度(又は熱分解温度)は、例えば、500℃〜1800℃、好ましくは600℃〜1500℃、さらに好ましくは700℃〜1400℃程度、特に800℃〜1200℃程度の温度範囲から選択できる。例えば、配向場により分子配向した共役系有機高分子(ポリアセチレン系高分子などの共役系線状高分子など)を500℃〜1800℃(例えば、750℃〜1300℃)程度の温度で熱処理することにより、ナノサイズの炭素状物質(特にグラファイト状物質)を製造できる。なお、昇温速度は特に制限されず、例えば、1〜25℃/分(例えば、3〜15℃/分)程度であってもよい。
【0030】
熱処理時間は、炭素質物質(特にグラファイト含有物)が生成する限り特に制限されず、加熱温度などに応じて適宜設定することができ、通常、所定の温度に達してから、1秒〜100時間程度の範囲から選択できる。熱処理時間は、通常、1分〜500分、好ましくは1分〜200分(例えば、10分〜200分)程度、さらに好ましくは20分〜180分程度である。
【0031】
また、炭素化温度(特にグラファイト化温)をさらに低減するため、高エネルギー線の作用又は照射と熱処理とを組み合わせるのが好ましい。高エネルギー線(又は電磁波線)としては、例えば、X線、電子線、レーザ光などが利用できる。電子線やレーザ光などの照射により、より低い加熱温度でのグラファイト化が可能となる。これらの高エネルギー線は組み合わせて照射してもよい。
【0032】
炭素質物質(グラファイト状物質)の調製において、熱処理と高エネルギー線の照射処理との順序は特に制限されず、高エネルギー線は、有機高分子に照射してもよく、有機高分子から生成した炭素質物質(グラファイト化した炭素物質を含む)に照射してもよい。例えば、上記原料有機高分子に対して、高エネルギー線を照射して又は照射しつつ熱処理してもよく、原料有機高分子からグラファイト状物質への熱処理過程で高エネルギー線を照射してもよく、有機高分子から生成した炭素物質(グラファイト化されていてもよい原料炭素物質)に対して、必要により加熱処理しつつ高エネルギー線を照射してもよい。通常、分子配向した有機高分子から生成した炭素物質(非グラファイト化原料炭素物質又はグラファイト化された原料炭素物質)に対して照射処理および加熱処理を施し、原料有機高分子内で反応させることによりグラファイト化が行われる。有機高分子から生成した炭素物質(特に所定の温度で所定時間熱処理されていない非グラファイト化原料炭素物質)では、照射処理および加熱処理の順序は特に制限されず、照射処理と加熱処理とを同時に又は並行して行ってもよい。
【0033】
有機高分子物質に対して光照射を行う場合には、通常、レーザ光が使用できる。レーザ光の波長は、100〜1200nm、好ましくは300〜1200nm(例えば、400〜800nm)程度であり、出力は0.1〜10mJ/cm2程度、好ましくは0.5〜5mJ/cm2程度であってもよい。レーザ光の種類は、特に制限されず、慣用のレーザ光が利用でき、例えば、固体レーザ(Nd:YAGレーザ、Ti:Saレーザ)、気体レーザ(He−Neレーザ;Ar+レーザ、Kr+レーザなどの希ガスイオンレーザ)など)、エキシマーレーザ(Ar2レーザ,Kr2レーザ,Xe2レーザなどの希ガスエキシマーレーザ;ArFレーザ,KrFレーザ,KrClレーザ,XeFレーザ,XeClレーザなどの希ガスハライド系レーザ;窒素レーザなど)、色素レーザ、色素+SHGレーザなどが挙げられる。
【0034】
電子線照射は、通常、10−2〜10−7torr程度の減圧下に、加速電圧〜2000kV程度(好ましくは50〜1000kV程度)で行うことができる。X線照射は慣用の方法で行うことができる。
【0035】
高エネルギー線の照射時間は、グラファイト含有物が生成する限り特に制限されず、照射手段などに応じて適宜設定することができる。照射時間は、1秒〜100時間程度の範囲から選択でき、通常、1分〜200分(例えば、10分〜200分)、好ましくは20分〜150分程度である。
【0036】
照射処理と加熱処理とを組み合わせる場合、処理時間(照射時間及び加熱時間)は、グラファイト含有物が生成する限り特に制限されず、照射手段、加熱温度などに応じて、1秒〜50時間程度の範囲から選択でき、通常、1分〜200分(例えば、10分〜150分)程度である。
【0037】
このような方法では、効率よく炭素質物質(特にグラファイト状物)を得ることができる。特に、ナノサイズのグラファイト状炭素物質を得ることができる。特に、前記前駆体に対応した炭素質物質、例えば、前記前駆体の同心円状又は渦巻き状構造(前駆体の高次構造)が反映した構造の炭素質物質(高次構造を有する炭素質物質など)を効率よく生成できる。より具体的には、炭素質ベース(薄膜、フィルム、シート、炭素質繊維や炭素質粒子)の表面に、前記螺旋構造を有していてもよい炭素質ナノフィブリルが同心円状又は渦巻き状の構造に対応して形成された湾曲したナノサイズの炭素質物質を得ることができる。湾曲した炭素質ナノフィブリルは扇型の模様又は形態(扇状に近い凝集状態)を形成してもよい。また、湾曲した炭素質フィブリルは、通常、前記薄膜などのベースに均一かつ高密度に形成され、配列状態が制御されているようであり、炭素質フィブリルの炭素エッジ面により高い活性を得ることができる。なお、熱処理又は熱分解により生成した炭素質物質において、フィブリル状炭素で構成された同心円状又は渦巻き状構造は、前駆体の構造に完全に対応している必要はなく変形していてもよい。
【0038】
ナノサイズの炭素質物質(ナノサイズグラファイトなどのグラファイト状物質)の形態は特に制限されず、三次元的構造(中空であってもよい多角錐状又は円錐形状、隆起状など)、二次元的構造(リボン状、板状、中空であってもよい円状又は長円状、中空であってもよい多角形状など)、一次元的構造(中空であってもよい短い棒状(ナノチューブ状)など)、粒子状などの種々の形態であってもよく、これらの形態が混在していてもよい。炭素質物質(グラファイト状物質など)のナノサイズは特に制限されず、ナノサイズの炭素質物質(ナノサイズグラファイトなど)の平均直径は、例えば、平面形状において、0.7〜300nm、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm(例えば、5〜50nm)程度であってもよい。また、ナノサイズフィラメント又はフィブリルの繊維径は、例えば、0.5〜100nm、好ましくは1〜50nm程度であってもよい。
【0039】
なお、二次元的構造物や粒子などの表面にナノメータ(nm)サイズのフィラメント状炭素又はグラファイト状物質を湾曲させて配向させること、特にナノメータ(nm)サイズのフィラメント状炭素材の配列状態を均一(又は規則的)かつ高密度に制御することは困難である。しかし、本発明では、前記のように、フィラメント状有機高分子を特定の形態で表面に配向できるので、炭素質ベース(薄膜、フィルム、シート、粒子や粉体など)の表面にナノサイズの炭素(例えば、均一かつ高密度に配列方向が制御されたナノサイズの炭素)が形成された炭素質物質を製造できる。なお、ナノサイズ炭素(グラファイト状構造の炭素など)の湾曲面は、炭素六角網面の炭素エッジ面を含む。また、ナノサイズ炭素(グラファイト状構造の炭素など)の湾曲面は、炭素層間の出入口となるため、化学的反応、吸着などに対して非常に活性である。そのため、本発明により得られた炭素質物質は、種々の用途、例えば、電子デバイス(電子線放射エミッター、ナノデバイス)、吸着剤(メタン吸蔵材料、水素吸蔵材料など)、ダイヤモンド半導体、耐磨耗性材料、電池電極材料、磁気記録媒体、磁気流体、ナノ固体潤滑剤、濾過材(フィルター、分子フルイなど)、ナノフィルム又は薄膜、ナノ導電材料、触媒担体、その他の電子材料などに有用である。さらに、本発明の炭素材は、光電変換材料、電光変換材料、ナノ導電材料などとしても有用である。
【0040】
【発明の効果】
本発明では、特定の有機高分子を熱処理するので、ナノメータ(nm)サイズのフィブリルで構成された炭素質物質(グラファイト状物質など)をより低い温度で安価に製造できる。また、フィブリルの一次構造又は高次構造構造を反映したナノメータサイズの炭素質物質(グラファイト状物質)を効率よく製造できる。また、湾曲した複数のナノメータサイズのフィブリルで構成されたグラファイト状物質をより効率よく製造できる。例えば、炭素質ベースの表面にナノサイズグラファイト状構造の湾曲面が均一かつ高密度に配列して、配列状態が制御されたナノサイズの炭素又はグラファイト状炭素物質を製造できる。
【0041】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0042】
実施例1
チーグラー/ナッタ触媒を含有するキラルネマチック液晶場で、アセチレンガスからポリアセチレン(以下PAと記す)薄膜を合成した。このPA薄膜のSEM像を観察したところ、図1に示すように、PA薄膜はキラルネマチック液晶場の構造を反映して、PA薄膜を構成しているフィブリル(平均繊維径10nm程度)が、らせん状に捻れた構造であり、このらせん状フィブリルが同心円状に凝集した固体状態を有していた。このらせん状フィブリルが同心円状に凝集したPA薄膜を真空中(真空度100Pa程度)で約8℃/分の速度で1000℃に昇温し、この温度で1時間、熱分解し、PA薄膜の炭素化及びグラファイト化を行った。生成したナノ構造の炭素物質(黒色薄膜)を電子顕微鏡で調べた結果を図2に示す。図2に示すように、炭素化及びグラファイト化後も前駆体の形態を維持しており、同心円構造の一部が扇形に湾曲した湾曲部が認められる。さらに、電子線回折の結果、薄膜状炭素はグラファイト構造を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例1で用いた前駆体の透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は実施例1で得られたグラファイト状物質の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、グラファイト状炭素物質などの炭素質物質、より詳細には、同心円状の構造を有する有機高分子前駆体からナノサイズの炭素質物質を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
グラファイトは、熱伝導性、耐熱性、耐薬品性、電気伝導性等の点で優れた性質を有するため、熱伝導体、電極、発熱体、断熱材、電界シールド材、スパッター用ターゲット材料、その他の電子材料として広く工業的に利用されている。
【0003】
グラファイトに関し、分子軌道(MO)の計算などにおいて、グラファイト端を有する炭素材料が、機能性を発揮することが予測されている(例えば、M.Fujita, K.Wakabayashi, K.Nakada, K.Kusakabe, J.Phys.Soc.Jpn.65, 1920 , 1996,and K.Wakabayashi, Mol Cryst Liq Cryst, 340, 379, 2000など)。
【0004】
さらに、グラファイトに関し、近年、電子機器への応用が進み、電子材料としての利用が注目されている。特に、冷陰極電子源としてカーボンナノチューブの電子容易放出性が発見されて以来、電子機器の電子源への応用、例えば、電界放出型冷陰極への応用、光源ランプ電子源への応用、平面パネル電子源への応用などが注目されている。例えば、特開2000−123712号公報には、電子放出部と、この電子放出部に電圧を印加するための電極とで構成された電解放射冷陰極において、前記電子放出部が、導電性カーボン材料と、電子を放出するカーボン材料との混合物で構成されている電界放射型冷陰極が開示されている。この文献には、電子放出性カーボン材料が、フラーレン、カーボンナノチューブであることも開示されている。
【0005】
このようなグラファイトの製造法として、出発原料としての高分子材料を熱処理することによりグラファイト質フィルムを得る方法が知られている。具体的には、特開昭61−275114号公報には、高分子材料として、ポリフェニレンオキサジアゾール(POD)を1600℃以上(好ましくは1800℃以上、さらに好ましくは2000℃以上)の温度で熱処理してグラファイトに転換する方法が開示されている。この文献には、PODをキャストした被膜が高い結晶性、配向性を有していることが記載されている。特開昭61−275115号公報には、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾールから選択された少なくとも一種の高分子を1800℃以上(好ましくは2000℃以上、さらに好ましくは2500℃以上)の温度で加熱し、グラファイトに転換する方法が開示されている。この文献には、前記高分子のキャスト又は紡糸により得られる被膜や繊維が高い結晶性を有しており、この結晶性を反映して炭素材料は配向性を有することも記載されている。特開2000−169125号公報には、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドおよびポリオキサジアゾールから選択されたシート形態のポリマー材料を、不活性雰囲気下、400〜800℃の加熱を1〜10℃/分の昇温速度で行い、最終的に少なくとも2400℃まで加熱し、膨張グラファイト材料を製造する方法が開示されている。
【0006】
しかし、これらの方法は主に大面積化乃至結晶の大きいグラファイトを得ることを主目的としているため、いずれも大面積化に適した多環芳香族化合物などで構成された高分子材料を出発物質としている。また、これらの文献では、ナノサイズのグラファイトなどについて特に注目していない。さらに、これらの多環芳香族化合物などで構成された高分子材料をグラファイト化するには、ヘテロ原子の脱離により炭素縮合環を形成するため、高温(例えば、2000℃以上)での熱処理が必要である。
【0007】
なお、「液晶」Vol.2, No.3 ,173−186(1998)、Synthetic Metals 102 (1999) 1406−1409、Current Applied Physics 1, (2001) 121−123およびPolym. Adv. Technol., 11, 826−829 (2000)には、ネマチック液晶場でアセチレンを重合すると、捻れた螺旋構造を有するヘリカルポリアセチレンが得られることが報告されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ナノメータ(nm)サイズのフィブリルで構成された炭素質物質(グラファイト状物質など)をより低い温度で安価に製造できる方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、フィブリルの一次構造又は高次構造を反映したナノメータサイズの炭素質物質(グラファイト状物質)を効率よく製造できる方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、湾曲した複数のナノメータサイズのフィブリルで構成されたグラファイト状物質をより効率よく製造できる方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記炭素質物質(グラファイトなど)の製造方法について、鋭意検討した結果、有機高分子の配向構造を同心円状又は渦巻き状に制御し、この同心円状又は渦巻き状の固体構造を有する有機高分子(例えば、非芳香族又は非ヘテロ環式の線状共役系有機高分子)を前駆体高分子として熱処理すると、熱処理温度が低くても、グラファイトに転換し、前記構造を反映したナノサイズの炭素状物質又はグラファイト状炭素物質が効率よく生成することを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の方法では、同心円状又は渦巻き状の構造を有する有機高分子で構成された前駆体を熱処理又は熱分解し、前駆体の同心円状の構造に由来又は対応する構造(又は前記構造を反映した構造)を有する炭素質物質を製造する。
【0013】
前記前駆体において、同心円状又は渦巻き状の構造は、ナノメータサイズの複数のフィラメント又はフィブリルが螺旋状に絡み合った糸状体で形成してもよい。なお、同心円状又は渦巻き状の構造を形成する前記螺旋状糸状体は有機高分子ベースと一体に形成されていてもよい。さらに、前駆体において、同心円状又は渦巻き状の構造を有する複数のドメインが形成されていてもよい。前記有機高分子は、ポリアセチレン系高分子などの非芳香族又は非ヘテロ環式共役系有機高分子であってもよく、有機高分子の形態は、薄膜状(フィルム状、シート状を含む)、粒子状又は粉末状などであってもよい。本発明の方法では、種々の配向場、例えば、液晶場(ネマチック液晶又はキラルネマチック液晶場など)で同心円状又は渦巻き状の構造を有する有機高分子を構成された前駆体を調製し、この前駆体を熱処理してもよい。前記熱処理は、通常、真空中又は不活性ガス雰囲気中で行うことができ、熱処理するとともに高エネルギー線(電子線、レーザ光線などの光)を照射してもよい。熱処理温度は、例えば、500℃〜1800℃程度(特に600℃〜1500℃程度)の範囲から選択できる。
【0014】
本発明は、前記製造方法で得られる炭素質物質(グラファイト状物質など)も包含する。この炭素質物質(グラファイト状物質など)は、ナノサイズの炭素状物質又はグラファイト状炭素物質であってもよい。このような炭素質物質は、炭素質ベースの表面に、ナノサイズオーダーの炭素質フィラメント又はフィブリル状(特に、螺旋状構造、例えば、複数のフィラメントやフィブリルが互いに絡み合って形成された螺旋状構造)の糸状体で構成された炭素質物質(グラファイト状物質を含む)が一体に形成されており、前記糸状体が同心円状などの円形状に湾曲して配列し、多数のドメインの凝集又は集合体を形成しているようである。また、各ドメインでは、炭素質ベースの表面には、活性な炭素質糸状体(特にグラファイト状糸状体)のエッジ面が位置しているようである。さらに、各ドメインにおいて、前記糸状体の配列状態は均一かつ高密度に制御された構造を有するようである。
【0015】
本発明では、特定の形態に固体構造が制御された有機高分子物質(ポリアセチレン系高分子など)を前駆体物質として用いるため、少なくとも2000℃以上の高温処理を必要とする従来の製造方法に比べて、その熱処理温度を著しく低下することができるとともに、ナノサイズのグラファイト状物質を効率よく製造できる。本発明の炭素質物質は、前記形態で配列したフィラメント状炭素(グラファイト状構造)を表面に有する炭素質ベース(薄膜、フィルム、シートなどの二次元的ナノ炭素材、炭素質繊維などの一次元的ナノ炭素材や炭素質粒子(粉末)などのゼロ次元ナノ炭素材)であってもよい。
【0016】
なお、本明細書において「炭素質物質」とは、炭素状物質だけでなくグラファイト状物質も含む意味に用いる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明では、炭素前駆体(グラファイト前駆体など)として固体構造が制御された有機高分子(分子配向した有機高分子など)を用いる。有機高分子は、通常、加熱処理により炭素化又はグラファイト化が可能である。このような高分子としては、熱硬化性ポリマー(芳香族ポリイミドなど)、導電性ポリマー(ポリアセチレン系高分子、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンベンゾビスチアゾール、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾールなどのポリフェニレン系高分子、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリオキサジアゾールなどの複素環系高分子、ポリピロール、ポリアニリンなど)、液晶性ポリマー(芳香族ポリエステル系液晶性高分子、ポリエステルアミド系液晶性高分子など)、配向性成分(液晶、DNAなど)に結合させたポリマー、分子内に炭素/炭素二重結合を有するポリエン又は炭素/炭素三重結合を有するポリインなどの線状高分子(例えばポリアセチレン、ポリジアセチレンなどのポリアセチレン系重合体又はポリアセチレン系高分子など)などが挙げられる。有機高分子は、不溶融性ポリマー、熱硬化性ポリマーで構成してもよい。なお、液晶及び液晶性ポリマーは配向構造を有し、ポリマーに配向性成分(液晶ポリマー、DNA)を結合させるとポリマーの分子配向性を向上できる。液晶としては、スメクチック液晶、ネマチック液晶、コレステリック液晶(キラルネマチック液晶を含む)、ディスコチック液晶などが挙げられ、サーモトロピック液晶、リオトロピック液晶のいずれであってもよい。これらの前駆体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
これらの前駆体のうち、共役系有機高分子(例えば、線状共役系有機高分子、又は非芳香族又は非ヘテロ環式の線状共役系有機高分子)、特にポリエン又はポリイン構造を有する共役系有機高分子(比較的合成しやすいポリアセチレン系高分子)が好ましい。
【0019】
ポリアセチレン系高分子には、アセチレン系単量体の単独又は共重合体が含まれる。また、ポリアセチレン系高分子は、ポリアセチレンの他、置換基を有するポリアセチレン誘導体であってもよく、前記置換基としては、例えば、塩素、フッ素原子などのハロゲン原子、ヒドロキシル基、C1−4アルコキシ基、C1−4アルキル基、C3−10シクロアルキル基、フェニル基などのC6−12アリール基、ベンジル基などのアラルキル基などが例示できる。代表的なポリアセチレン誘導体としては、例えば、ポリフェニルアセチレン、ポリフェニルクロロアセチレン、ポリフルオロアセチレンなどが例示できる。
【0020】
なお、通常の線状熱可塑性高分子(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子)は、1000℃以下の温度での炭素化で、非晶状態となり、グラファイト構造を形成しない。
【0021】
同心円状又は渦巻き状の配向構造を有するナノメータサイズの有機高分子(前駆体)が形成される限り、固体構造の制御方法(らせん構造の形成や同心円状又は渦巻き状配列など)は、特に限定されず、種々の配向場、特にキラルネマチック液晶場又はコレステリック液晶場で有機高分子を合成することにより制御することができる。固体構造の制御方法(らせん構造の形成や同心円状又は渦巻き状配列など)としては、通常、種々のキラルネマチック液晶場での共役系線状高分子の合成などが例示できる。液晶場(液晶で構成される配向場)での有機高分子の分子配向は、例えば、キラルネマチック液晶が配向した前記液晶場で単量体を重合することにより有機高分子を液晶の配向に沿って配向させる方法、キラルネマチック液晶と有機高分子とを混合し、液晶の配向に伴って有機高分子を配向させる方法などが例示できる。これらの方法において、磁場を作用させて液晶を配向させてもよい。すなわち、液晶場に磁場を作用させることにより、配向性を有する螺旋構造を形成させることも可能である。磁場により有機高分子を分子配向させる方法としては、前記共役系有機高分子(特に溶液状などの粘度を低減した状態の有機高分子)に磁場を作用させて配向させる方法、磁場を作用させながら前記共役系有機高分子の単量体を重合する方法などが例示できる。好ましい方法では、磁場が作用する液晶場で有機高分子を分子配向させることができる。
【0022】
これらの制御方法のうち、均一に分子レベルで配向制御するためには、少なくともキラルネマチック液晶場(特にキラルネマチック液晶場)又は少なくともキラルネマチック液晶場(特にキラルネマチック液晶場)と磁場との組合せによる配向が好ましい。例えば、磁場を作用させながらキラルネマチック液晶場(配向した液晶の存在下)で、共役系有機高分子(ポリアセチレン系高分子など)の単量体を重合することにより、配向した螺旋構造を有する有機高分子(螺旋状糸状体)を効率よく生成できる。なお、螺旋状糸状体は、一次構造(1本のフィラメント又はフィブリルの螺旋状体やこの螺旋状体が集合したフィブリルの螺旋状体)のみならず、高次構造(数本の螺旋状フィラメントやフィブリルが捻れながら形成されたマイクロフィブリル)などの各階層の螺旋状体を含む。また、有機高分子の調製に伴って、螺旋状糸状体は有機高分子ベースと一体に形成されていてもよい。
【0023】
特に、(R)−体や(S)−体などの光学活性体(キラル化合物)の添加などにより、キラルネマチック液晶により不斉異方性反応場(ヘリカル構造を有するキラルネマチック液晶場)を構築し、単量体を重合すると、ヘリカル構造(特に規則的な螺旋構造)を有するとともに、複数のヘリカル状フィラメント又はフィブリルが捻れながら絡まった糸状体(マクロフィブリル)を効率よく形成できる。この糸状体では、反応場のヘリカル構造に対応して、複数のフィラメント又はフィブリルが所定方向に捻れた構造(左巻き又は右巻き構造など)を有していてもよい。さらに、前記糸状体(又は前記糸状体の構造)は、マクロ的に同心円状又は渦巻き状(若しくは指紋状)に配向して高次構造のドメイン又はモルホロジー(フィブリル又はバンドルが円形状や楕円形状などの同心円状又は渦巻き状に湾曲して配向し、凝集又は集合した特徴的なドメイン又はモルホロジーなど)を形成している。なお、前駆体は、単一のドメインで構成してもよいが、通常、複数のドメインで構成されており、複数のドメインは、凝集や集合などの形態で隣接して形成されていてもよい。
【0024】
このような方法では、フィラメント状有機高分子が規則的に配向したヘリカル構造を表面(フィルムやシート、薄膜などの二次元的構造物又は粉末などの粒子などの表面)に形成でき、ナノメータ(nm)サイズの炭素質物質を生成させるのに有用である。
【0025】
なお、フィラメント又はフィブリルのサイズ(繊維径)は、例えば、0.1μm以下(例えば、10〜500nm、好ましくは10〜250nm程度)であってもよく、螺旋状糸状体の径は、例えば、50〜1000nm(好ましくは100〜700nm)程度であってもよい。また、ドメインのサイズは、通常、例えば、大きくても200μm(特に100μm)程度である。
【0026】
前駆体を構成する有機高分子が分子配向すると、分子同士の結合が容易になり、炭素化、特にグラファイト化が促進される。そのため、より低温でのグラファイトの調製が可能になる。また、より低温での調製が可能であるため、エネルギー的に有利であると共に、炭素エッジ面を薄膜(フィルム又はシートを含む)や粒子(粉末)の表面に均一かつ高密度に配列して制御したナノサイズの炭素状物質又はグラファイト状炭素物質を製造することができる。しかも、高純度のナノグラファイトを得ることができる。なお、同じ加熱温度で、配向処理した高分子と配向処理をしていない高分子とを熱処理した場合、配向処理した高分子を原料に用いると、ナノグラファイトの結晶化度が高くなるとともに、グラファイトの特定方向のサイズを比較的大きくできる。
【0027】
前駆体(有機高分子)の形状は、特に限定されず、二次元的構造(フィルム状、薄膜状、シート状)、一次元的構造(繊維状)、粉末状又は粉粒状や無定形状などであってもよい。好ましい有機高分子の形態は、二次元的構造又は粉粒状であり、通常、薄膜状、シート状である。有機高分子のサイズは特に制限されず、前記形状に応じて適当に選択でき、例えば、二次元的構造を有する有機高分子では、厚さ500μm以下(例えば、10〜200μm、好ましくは10〜100μm程度)であってもよい。また、粉粒状の有機高分子では、平均粒径1〜500μm、好ましくは5〜100μm程度であってもよい。
【0028】
熱処理又は熱分解は、真空中(真空度200Pa以下)又は不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなど)雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で熱処理する場合、圧力に関して、常圧、減圧又は加圧でもよいが、熱処理系内への周囲からの気体の流入を防ぐために、常圧より多少高く(例えば、約0.1〜1MPa、特に0.1〜0.5MPa(例えば、0.11〜0.5MPa)程度の圧力に)するのが好ましい。
【0029】
本発明は、前記特有の原料を用いるため、従来のように2000℃以上の高温を必要とせず、熱処理温度(又はグラファイト化温度)を低減できるという特色がある。熱処理温度(又は熱分解温度)は、例えば、500℃〜1800℃、好ましくは600℃〜1500℃、さらに好ましくは700℃〜1400℃程度、特に800℃〜1200℃程度の温度範囲から選択できる。例えば、配向場により分子配向した共役系有機高分子(ポリアセチレン系高分子などの共役系線状高分子など)を500℃〜1800℃(例えば、750℃〜1300℃)程度の温度で熱処理することにより、ナノサイズの炭素状物質(特にグラファイト状物質)を製造できる。なお、昇温速度は特に制限されず、例えば、1〜25℃/分(例えば、3〜15℃/分)程度であってもよい。
【0030】
熱処理時間は、炭素質物質(特にグラファイト含有物)が生成する限り特に制限されず、加熱温度などに応じて適宜設定することができ、通常、所定の温度に達してから、1秒〜100時間程度の範囲から選択できる。熱処理時間は、通常、1分〜500分、好ましくは1分〜200分(例えば、10分〜200分)程度、さらに好ましくは20分〜180分程度である。
【0031】
また、炭素化温度(特にグラファイト化温)をさらに低減するため、高エネルギー線の作用又は照射と熱処理とを組み合わせるのが好ましい。高エネルギー線(又は電磁波線)としては、例えば、X線、電子線、レーザ光などが利用できる。電子線やレーザ光などの照射により、より低い加熱温度でのグラファイト化が可能となる。これらの高エネルギー線は組み合わせて照射してもよい。
【0032】
炭素質物質(グラファイト状物質)の調製において、熱処理と高エネルギー線の照射処理との順序は特に制限されず、高エネルギー線は、有機高分子に照射してもよく、有機高分子から生成した炭素質物質(グラファイト化した炭素物質を含む)に照射してもよい。例えば、上記原料有機高分子に対して、高エネルギー線を照射して又は照射しつつ熱処理してもよく、原料有機高分子からグラファイト状物質への熱処理過程で高エネルギー線を照射してもよく、有機高分子から生成した炭素物質(グラファイト化されていてもよい原料炭素物質)に対して、必要により加熱処理しつつ高エネルギー線を照射してもよい。通常、分子配向した有機高分子から生成した炭素物質(非グラファイト化原料炭素物質又はグラファイト化された原料炭素物質)に対して照射処理および加熱処理を施し、原料有機高分子内で反応させることによりグラファイト化が行われる。有機高分子から生成した炭素物質(特に所定の温度で所定時間熱処理されていない非グラファイト化原料炭素物質)では、照射処理および加熱処理の順序は特に制限されず、照射処理と加熱処理とを同時に又は並行して行ってもよい。
【0033】
有機高分子物質に対して光照射を行う場合には、通常、レーザ光が使用できる。レーザ光の波長は、100〜1200nm、好ましくは300〜1200nm(例えば、400〜800nm)程度であり、出力は0.1〜10mJ/cm2程度、好ましくは0.5〜5mJ/cm2程度であってもよい。レーザ光の種類は、特に制限されず、慣用のレーザ光が利用でき、例えば、固体レーザ(Nd:YAGレーザ、Ti:Saレーザ)、気体レーザ(He−Neレーザ;Ar+レーザ、Kr+レーザなどの希ガスイオンレーザ)など)、エキシマーレーザ(Ar2レーザ,Kr2レーザ,Xe2レーザなどの希ガスエキシマーレーザ;ArFレーザ,KrFレーザ,KrClレーザ,XeFレーザ,XeClレーザなどの希ガスハライド系レーザ;窒素レーザなど)、色素レーザ、色素+SHGレーザなどが挙げられる。
【0034】
電子線照射は、通常、10−2〜10−7torr程度の減圧下に、加速電圧〜2000kV程度(好ましくは50〜1000kV程度)で行うことができる。X線照射は慣用の方法で行うことができる。
【0035】
高エネルギー線の照射時間は、グラファイト含有物が生成する限り特に制限されず、照射手段などに応じて適宜設定することができる。照射時間は、1秒〜100時間程度の範囲から選択でき、通常、1分〜200分(例えば、10分〜200分)、好ましくは20分〜150分程度である。
【0036】
照射処理と加熱処理とを組み合わせる場合、処理時間(照射時間及び加熱時間)は、グラファイト含有物が生成する限り特に制限されず、照射手段、加熱温度などに応じて、1秒〜50時間程度の範囲から選択でき、通常、1分〜200分(例えば、10分〜150分)程度である。
【0037】
このような方法では、効率よく炭素質物質(特にグラファイト状物)を得ることができる。特に、ナノサイズのグラファイト状炭素物質を得ることができる。特に、前記前駆体に対応した炭素質物質、例えば、前記前駆体の同心円状又は渦巻き状構造(前駆体の高次構造)が反映した構造の炭素質物質(高次構造を有する炭素質物質など)を効率よく生成できる。より具体的には、炭素質ベース(薄膜、フィルム、シート、炭素質繊維や炭素質粒子)の表面に、前記螺旋構造を有していてもよい炭素質ナノフィブリルが同心円状又は渦巻き状の構造に対応して形成された湾曲したナノサイズの炭素質物質を得ることができる。湾曲した炭素質ナノフィブリルは扇型の模様又は形態(扇状に近い凝集状態)を形成してもよい。また、湾曲した炭素質フィブリルは、通常、前記薄膜などのベースに均一かつ高密度に形成され、配列状態が制御されているようであり、炭素質フィブリルの炭素エッジ面により高い活性を得ることができる。なお、熱処理又は熱分解により生成した炭素質物質において、フィブリル状炭素で構成された同心円状又は渦巻き状構造は、前駆体の構造に完全に対応している必要はなく変形していてもよい。
【0038】
ナノサイズの炭素質物質(ナノサイズグラファイトなどのグラファイト状物質)の形態は特に制限されず、三次元的構造(中空であってもよい多角錐状又は円錐形状、隆起状など)、二次元的構造(リボン状、板状、中空であってもよい円状又は長円状、中空であってもよい多角形状など)、一次元的構造(中空であってもよい短い棒状(ナノチューブ状)など)、粒子状などの種々の形態であってもよく、これらの形態が混在していてもよい。炭素質物質(グラファイト状物質など)のナノサイズは特に制限されず、ナノサイズの炭素質物質(ナノサイズグラファイトなど)の平均直径は、例えば、平面形状において、0.7〜300nm、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm(例えば、5〜50nm)程度であってもよい。また、ナノサイズフィラメント又はフィブリルの繊維径は、例えば、0.5〜100nm、好ましくは1〜50nm程度であってもよい。
【0039】
なお、二次元的構造物や粒子などの表面にナノメータ(nm)サイズのフィラメント状炭素又はグラファイト状物質を湾曲させて配向させること、特にナノメータ(nm)サイズのフィラメント状炭素材の配列状態を均一(又は規則的)かつ高密度に制御することは困難である。しかし、本発明では、前記のように、フィラメント状有機高分子を特定の形態で表面に配向できるので、炭素質ベース(薄膜、フィルム、シート、粒子や粉体など)の表面にナノサイズの炭素(例えば、均一かつ高密度に配列方向が制御されたナノサイズの炭素)が形成された炭素質物質を製造できる。なお、ナノサイズ炭素(グラファイト状構造の炭素など)の湾曲面は、炭素六角網面の炭素エッジ面を含む。また、ナノサイズ炭素(グラファイト状構造の炭素など)の湾曲面は、炭素層間の出入口となるため、化学的反応、吸着などに対して非常に活性である。そのため、本発明により得られた炭素質物質は、種々の用途、例えば、電子デバイス(電子線放射エミッター、ナノデバイス)、吸着剤(メタン吸蔵材料、水素吸蔵材料など)、ダイヤモンド半導体、耐磨耗性材料、電池電極材料、磁気記録媒体、磁気流体、ナノ固体潤滑剤、濾過材(フィルター、分子フルイなど)、ナノフィルム又は薄膜、ナノ導電材料、触媒担体、その他の電子材料などに有用である。さらに、本発明の炭素材は、光電変換材料、電光変換材料、ナノ導電材料などとしても有用である。
【0040】
【発明の効果】
本発明では、特定の有機高分子を熱処理するので、ナノメータ(nm)サイズのフィブリルで構成された炭素質物質(グラファイト状物質など)をより低い温度で安価に製造できる。また、フィブリルの一次構造又は高次構造構造を反映したナノメータサイズの炭素質物質(グラファイト状物質)を効率よく製造できる。また、湾曲した複数のナノメータサイズのフィブリルで構成されたグラファイト状物質をより効率よく製造できる。例えば、炭素質ベースの表面にナノサイズグラファイト状構造の湾曲面が均一かつ高密度に配列して、配列状態が制御されたナノサイズの炭素又はグラファイト状炭素物質を製造できる。
【0041】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0042】
実施例1
チーグラー/ナッタ触媒を含有するキラルネマチック液晶場で、アセチレンガスからポリアセチレン(以下PAと記す)薄膜を合成した。このPA薄膜のSEM像を観察したところ、図1に示すように、PA薄膜はキラルネマチック液晶場の構造を反映して、PA薄膜を構成しているフィブリル(平均繊維径10nm程度)が、らせん状に捻れた構造であり、このらせん状フィブリルが同心円状に凝集した固体状態を有していた。このらせん状フィブリルが同心円状に凝集したPA薄膜を真空中(真空度100Pa程度)で約8℃/分の速度で1000℃に昇温し、この温度で1時間、熱分解し、PA薄膜の炭素化及びグラファイト化を行った。生成したナノ構造の炭素物質(黒色薄膜)を電子顕微鏡で調べた結果を図2に示す。図2に示すように、炭素化及びグラファイト化後も前駆体の形態を維持しており、同心円構造の一部が扇形に湾曲した湾曲部が認められる。さらに、電子線回折の結果、薄膜状炭素はグラファイト構造を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例1で用いた前駆体の透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は実施例1で得られたグラファイト状物質の透過型電子顕微鏡写真である。
Claims (10)
- 同心円状又は渦巻き状の構造を有する有機高分子で構成された前駆体を熱処理し、前駆体の同心円状の構造に由来する構造を有する炭素質物質を製造する方法。
- 前駆体において、同心円状又は渦巻き状の構造が、ナノメータサイズの複数のフィラメントが螺旋状に絡み合った糸状体で形成されている請求項1記載の方法。
- 前駆体において、同心円状又は渦巻き状の構造を有する複数のドメインが形成されている請求項1又は2記載の方法。
- 液晶場で同心円状又は渦巻き状の構造を有する有機高分子で構成された前駆体を調製し、この前駆体を熱処理、又は熱処理とともに高エネルギー線を照射する請求項1〜3のいずれかの項に記載の方法。
- 有機高分子物質が、ポリアセチレン系高分子である請求項1〜4のいずれかの項に記載の方法。
- 有機高分子物質が、薄膜状又は粒子状の形態である請求項1〜5のいずれかの項に記載の方法。
- 真空中又は不活性ガス雰囲気中で熱処理する請求項1〜6のいずれの項に記載の方法。
- 500℃〜1800℃の温度で熱処理し、ナノサイズの炭素質物質を製造する請求項1〜7のいずれかの項に記載の方法。
- 請求項1〜8のいずれかの項に記載の製造方法で得られる炭素質物質。
- ナノサイズの炭素状物質又はグラファイト状炭素物質である請求項9記載の炭素質物質。
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