JP2004197210A - 電気ブリキの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数種類の電気ブリキを製造する場合において生産能率を低下させることなく木目模様の発生も防止できる電気ブリキの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】鋼ストリップSの表面に電気錫めっきを施した後、離間して配置された通電ロール8,9を介して鋼ストリップSに電流を流し、離間して配置された通電ロール8,9間の鋼ストリップSを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融し、その後、溶融した錫を冷却、凝固させるに際し、離間して配置された通電ロール8,9間に設けたロール13により、離間して配置された通電ロール8,9間の鋼ストリップ長を可変とするとともに鋼ストリップSの昇温速度を調整する。
【選択図】 図1
【解決手段】鋼ストリップSの表面に電気錫めっきを施した後、離間して配置された通電ロール8,9を介して鋼ストリップSに電流を流し、離間して配置された通電ロール8,9間の鋼ストリップSを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融し、その後、溶融した錫を冷却、凝固させるに際し、離間して配置された通電ロール8,9間に設けたロール13により、離間して配置された通電ロール8,9間の鋼ストリップ長を可変とするとともに鋼ストリップSの昇温速度を調整する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電気ブリキ、特に薄めっき電気ブリキ表面にあらわれる木目状の模様(以下、木目模様と称する)の発生を防止する電気ブリキの製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電気ブリキは、鋼板表面に錫をめっきした後、耐食性の向上と光沢の良い表面を得るために、加熱して錫を溶融させ、冷却凝固させる。錫の加熱方法には、一般的に、抵抗加熱方法と高周波加熱方法とがあり、場合によっては両方法が併用される。ここで、前者の抵抗加熱方法にあっては、錫を溶融、凝固した際に、表面の錫の光沢にむらができ、「木目模様」が発生することがある。この木目模様の発生は、鋼板表面積あたりの錫めっき量によって大きく左右され、5.6g/ mm2 以上ではほとんど発生しないが、2.8g/ mm2 以下ではしばしば発生し、鋼板全表面に対し、部分的にダル目残りがあるような不均一な光沢を呈する。このため、均一光沢面に比べ外観の美麗さにおいて劣り商品価値をそこなっていた。
【0003】
この木目模様は、図10に示すように帯状に長く延びる方向に搬送される鋼ストリップ表面の幅方向に定ピッチで生じ、搬送速度や通電する交流の周波数を変化させると、そのピッチも変化することが経験的に知られており、その発生機構については、非特許文献1に詳しい調査結果があり、抵抗加熱に使用する交流電流の脈動が原因とされている。
【0004】
この木目模様を防止する方法としては、加熱方法を変えることが最も有効であり、具体的には高周波加熱方法を採用することにより、木目模様は全く発生しなくなる。しかしながら、既存の設備を高周波加熱方式に変更するには多額の投資を必要とし、現実的でない。
そこで、従来から、加熱方法を変えずに(抵抗加熱方式のままで)、木目模様を防止する種々の提案がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1においては、電気錫鍍金鋼板をフラックシング(以降、フラックス処理という)した後交流を使用して抵抗加熱で表層錫をフローメルトする(鋼板表面に錫を電着した後、耐食性の向上と光沢の良い表面を得るために、加熱して錫を溶融させ、冷却凝固する)電気ブリキの製造方法において、フラックス中に界面活性剤を添加し、フラックス処理の効果を強化し電気ブリキの表面光沢を改善するとともに木目模様を防止するようにしている。
【0006】
また、特許文献2においては、溶接性に優れた薄錫めっき鋼板の製造方法として、鋼板表面にNiめっきし、その上にSnめっきして、その後リフロー処理(前出のフローメルトと同じ)する薄錫めっき鋼板の製造方法において、Niめっきの片面あたりの付着量を3〜30mg/ m2 、Snめっきの片面あたりの付着量を200〜1200mg/ m2 とし、リフロー処理の昇温速度を30℃/ 秒〜40℃/ 秒の範囲とし、錫めっき層の最終到達温度を280℃以下として、急冷するようにしている。
【0007】
ところで、電気ブリキは、大別すると、
▲1▼光沢、耐食性を重視したブリキと、
▲2▼溶接性を重視した主に飲料用缶用途として用いられる薄めっきブリキと、がある。
ここで、特許文献1に開示の技術は、前記▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを得ることを目的としており、図6に示すように、鋼板の表面に錫(Sn)めっきを施し、その後、錫めっき層を均一、平坦に凝固させるために鋼板の表面にめっきした錫めっき層の上にフラックス処理を施し、その後、錫のリフロー処理をするものである。
【0008】
また、特許文献2に開示の技術は、前記▲2▼の溶接性を重視したブリキを得ることを目的としており、図7に示すように、鋼板(Fe)の表面にニッケル(Ni)めっきを施し、その上に錫(Sn)めっきをして、その後、錫の溶融、凝固処理(リフロー処理)をするものであって、このリフロー処理において、「錫はじき」ができるという特徴がある。この電気ブリキにあっては、リフロー処理前のフラックス処理は省略されるとともに、錫めっき量は、2.8g/ mm2 以下と少ない。ここで、「錫はじき」とは、図7に示すように、錫めっき層における純錫の凹凸の凸部分のことをさす。錫はじき部は金属特性から、鉄、鉄ー錫合金層に比較し、軟質で融点が低いため、シーム溶接時に、母材の溶接性向上に寄与するのである。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された技術にあっては、前述の▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する際の木目模様を防止するものとしては有効であるが、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する際の木目模様を防止するものとしては有効ではない。
一方、特許文献2に開示された技術にあっては、前述の▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する際の木目模様を防止するものとしては有効であるが、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する際の木目模様を防止するものとしては有効ではない。
【0010】
そこで、従来にあっては、以下の方法で、▲1▼及び▲2▼のブリキの双方について木目模様を防止することとしていた。
図8は従来の電気ブリキの製造ラインの概略構成図である。図8における電気ブリキの製造ラインにおいて、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合、洗浄、酸洗を終えた鋼ストリップSは、複数のめっき層102及び通電ロール103を備えためっき装置101によって鋼ストリップSの表面に錫めっきが施される。図中の矢印は、鋼ストリップSの搬送方向を示す。そして、めっきが施された鋼ストリップSは、複数のフラックス処理タンク105、鋼ストリップSをフラックス処理タンク105に浸漬させるデフレクタロール106を有するフラックス処理装置104を通過する。この際に、デフレクタロール106は実線で示すように下降しており、鋼ストリップSはフラックス処理タンク105内でフラックス処理される。そして、鋼ストリップSはドライヤー107により乾燥させられた後、リフロー処理がなされる。このリフロー処理においては、錫めっきが施された鋼ストリップSに離間して配置された通電ロール108,109を介して電流が流され、前記離間して配置された通電ロール108,109間の鋼ストリップSが直接抵抗加熱される。この際に、鋼ストリップSの表層の錫は、加熱時間の経過とともに、一方の通電ロール108、上部のデフレクタロール110,111を順次通過した後、溶融する。その後、鋼ストリップSは、クエンチ装置112に入り、表層の錫が冷却、凝固されるのである。リフロー処理前にフラックス処理がなされているので、得られた錫めっき層は均一、平坦になっている。
【0011】
また、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合、洗浄、酸洗を終えた鋼ストリップSは、複数のめっき層102及び通電ロール103を備えためっき装置101によって鋼ストリップSの表面にニッケルめっきが施され、さらにその上に錫めっきが施される。そして、めっきが施された鋼ストリップSは、複数のフラックス処理タンク105、鋼ストリップSをフラックス処理タンク105に浸漬させるデフレクタロール106を有するフラックス処理装置104を通過する。この際に、デフレクタロール106は一点鎖線で示すように上昇しており、鋼ストリップSはフラックス処理タンク105上を通過し、鋼ストリップSにフラックス処理は行われない。そして、ドライヤー107により乾燥させられた後、鋼ストリップSにはリフロー処理が行われる。このリフロー処理においては、錫めっきが施された鋼ストリップSに離間して配置された通電ロール108,109を介して電流が流され、前記離間して配置された通電ロール108,109間の鋼ストリップSが直接抵抗加熱される。この間、鋼ストリップSの表層の錫は、加熱時間の経過とともに、一方の通電ロール108、上部のデフレクタロール110,111を順次通過した後、溶融する。その後、鋼ストリップSは、クエンチ装置112に入り、表層の錫が冷却、凝固されるのである。
【0012】
ここで、リフロー処理においては、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合及び▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合の双方の場合において、めっき被膜の表面に木目模様が発生する場合があるが、この木目模様の発生は、通電ロール108直後のリフローゾーンZ(鋼ストリップS表層の錫が直接抵抗加熱により次第に昇温するゾーン)入側のA点における鋼ストリップSの温度T1 からクエンチ装置112の直前のリフローゾーンZ出側のB点における鋼ストリップSの温度T2 (錫の融点)に至るまでの昇温速度VT に強く影響を受けると考えられている。
昇温速度VT は次の(1)式によって表される。
【0013】
【数1】
【0014】
ここで、T1 :リフローゾーン入側のA点における鋼ストリップの温度(℃)T2 :リフローゾーン出側のB点における鋼ストリップの温度(℃)
VL :ライン速度(mpm)
L:A点からB点までの鋼ストリップ長(m)
即ち、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合にあっては、昇温速度VT が速いほど木目模様の発生が少なく、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合にあっては、昇温速度VT が遅いほど木目模様の発生が少ない。この理由は、図9に示すように、昇温速度VT が速いと融点(温度T2 )近傍の通過時間Sが短く、一方、昇温速度VT が遅いと通過時間S’が長いところ、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合にあっては融点近傍の通過時間が短いほど木目模様発生防止に有利で、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合にあっては融点近傍の通過時間が長いほど木目模様発生防止に有利だからである。図9において、T1 はリフローゾーンZ入側のA点における鋼ストリップの温度、T2 はリフローゾーンZ出側のB点における鋼ストリップの温度(錫の融点)、t1 は鋼ストリップSがリフローゾーンZ入側のA点に到達した時刻、t2 は昇温速度VT が速い場合の鋼ストリップSがリフローゾーンZ出側のB点に到達した時刻、t3 は昇温速度VT が遅い場合の鋼ストリップSがリフローゾーンZ出側のB点に到達した時刻である。
【0015】
従って、従来にあっては、(1)式から理解されるように、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合、昇温速度VT を速くするためにライン速度VL を速くし、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合、昇温速度VT を遅くするためにライン速度VL を遅くするように調整していた。
尚、直接抵抗加熱するための電流は、これら2つのライン速度の水準ごとに、鋼ストリップSの厚さと幅の積で決まる断面積の平方根に比例して、図示しない制御装置により制御していた。
【0016】
【特許文献1】
特公昭57−26354号公報
【特許文献2】
特開平4−41694号公報
【非特許文献1】
「PLATING」、1960年11月、p. 1255〜1261
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の電気ブリキの製造方法にあっては、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合及び▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合、双方において、めっき被膜の表面に木目模様が発生するのを防止できるものの、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合において、昇温速度VT を遅くするためにライン速度VL を遅くすることになるため、電気ブリキの生産能率が低下してしまうという問題があった。
【0018】
従って、本発明はこの問題を解決すべくなされたものであり、その目的は、複数種類の電気ブリキを製造する場合においてライン速度を低下させることなく高生産能率での製造が可能な電気ブリキの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明のうち請求項1に係る電気ブリキの製造方法は、鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施した後、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融し、その後、溶融した錫を冷却、凝固する電気ブリキの製造方法において、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を可変にするとともに前記鋼ストリップの昇温速度を調整することを特徴としている。
【0020】
本発明のうち請求項2に係る電気ブリキの製造方法は、請求項1記載の発明において、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を2水準で可変としたことを特徴としている。
本発明のうち請求項3に係る電気ブリキの製造方法は、鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施した後、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融し、その後、溶融した錫を冷却、凝固する電気ブリキの製造方法において、前記離間して配置された通電ロール間に配置される1本又は複数本のロールを通電ロールとして計3本以上の通電ロールを配置し、鋼ストリップの搬送方向最も下流側の通電ロールを除く複数本の通電ロールを切り換えることによって加熱する鋼ストリップ長を可変にするとともに、前記鋼ストリップの昇温速度を調整することを特徴としている。
【0021】
また、本発明のうち請求項4に係る電気ブリキの製造装置は、鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施すめっき装置と、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融する加熱装置と、溶融した錫を冷却、凝固するクエンチ装置とを具備した電気ブリキの製造装置において、前記離間して配置された通電ロール間に、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を可変とするロールを設けたことを特徴としている。
【0022】
更に、本発明のうち請求項5に係る電気ブリキの製造装置は、鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施すめっき装置と、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融する加熱装置と、溶融した錫を冷却、凝固するクエンチ装置とを具備した電気ブリキの製造装置において、前記離間して配置された通電ロール間に配置される1本又は複数本のロールを通電ロールとして計3本以上の通電ロールを配置すると共に、鋼ストリップの搬送方向最も下流側の通電ロールを除く複数本の通電ロールを切り換えることによって加熱する鋼ストリップ長を可変にするとともに、前記鋼ストリップの昇温速度を調整する切換装置を設けたことを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明に係る電気ブリキの製造装置の第1実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの概略説明図である。図2は鋼ストリップ長が最短の場合と最長の場合の昇温速度の変化を示すグラフである。
【0024】
図1における電気ブリキ製造ラインにおいて、電気ブリキ製造装置は、めっき装置1と、フラックス処理装置4と、ドライヤー7と、通電ロール8,9と、電源(図示せず)及び制御装置(図示せず)を備えた加熱装置と、クエンチ装置12とを具備している。
ここで、めっき装置1は、複数のめっき槽2及び通電ロール3を備え、洗浄、酸洗を終えた鋼ストリップSの表面に錫めっきあるいはさらにニッケルめっきを施すようになっている。めっき装置1は、前述の▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSの表面に錫めっきを、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSの表面にニッケルめっき及び錫めっきを施す。
【0025】
また、フラックス処理装置4は、めっき装置1の下流側に配置され、めっきされた鋼ストリップSをフラックス処理するものであって、複数のフラックス処理タンク5及び鋼ストリップSをフラックス処理タンク5に浸漬させるデフレクタロール6を備えている。デフレクタロール6は、実線で示す鋼ストリップSをフラックス処理タンク5に浸漬させる浸漬位置と、一点鎖線で示す退避位置との間を移動可能となっている。フラックス処理装置4は、前述の▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSにフラックス処理を行い、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSにフラックス処理を行わない。
【0026】
さらに、ドライヤー7は、フラックス処理装置4の下流側に配置され、鋼ストリップSを乾燥するようになっている。
加熱装置は、ドライヤー7の下流側に配置された通電ロール8,9及びこれら通電ロール8,9を介して鋼ストリップSに電流を流す図示しない電源と、それに、これも図示しない制御装置とを備え、めっきが施された鋼ストリップSの表面錫をリフロー処理するようになっている。即ち、加熱装置は、鋼ストリップSに通電ロール8,9を介して電流を流し通電ロール8,9間の鋼ストリップSを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融する。
【0027】
また、クエンチ装置12は、鋼ストリップSの搬送方向下流側の通電ロール9の直前に配置され、タンク内に貯留された冷却液にて、リフロー処理により溶融した錫を冷却、凝固する。
そして、通電ロール8,9間には、互いに所定間隔を置いて2本のデフレクタロール10,11が通電ロール8,9よりも上方に設置され、それら2本のデフレクタロール10,11間には、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長を可変とするロール13が設けられている。このロール13は、図1に示すように、2本のデフレクタロール10,11よりも上方に位置する第1位置P1と、前記デフレクタロール10,11よりも下方に位置する第2位置P2との間を移動装置(図示せず)により移動可能となっている。ロール13が第1位置P1に位置する場合には、図1の実線で示すように、鋼ストリップSは2本のデフレクタロール10,11間の長さが最短となり、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点までの鋼ストリップ長(リフローパス長)が最短となる。また、ロール13が第2位置P2に位置する場合には、図1の一点鎖線で示すように、2本のデフレクタロール10,11間の長さは最長となり、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点までの鋼ストリップ長(リフローパス長)が最長となる。前述した▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、ロール13を第1位置P1に位置させて通電ロール8,9間の鋼ストリップ長を短くし、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、ロール13を第2位置P2に位置させて前記鋼ストリップ長を長くする。
【0028】
本実施形態にあっては、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキ及び▲2▼の溶接性を重視したブリキの2種類の電気ブリキを製造するために、ロール13は、第1位置P1と第2位置P2との2位置に停止し、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長は2水準で可変となっている。しかし、ロール13を、第1位置P1及び第2位置P2以外に、第1位置P1と第2位置P2との間の任意の位置で停止可能として通電ロール8,9間の鋼ストリップ長を3水準以上に可変としてもよい。これにより、3種類以上の電気ブリキを製造するのにも対応することができる。
【0029】
このように、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長を、何水準かに変化させることで、鋼ストリップの搬送速度を変化させなくても、通電ロール8,9間のリフローゾーンZを鋼ストリップ上の定点が通過するのに要する時間を何水準かに変化させることができるのである。この水準数に応じ、直接抵抗加熱するための電流を、鋼ストリップSの厚さと幅の積で決まる断面積の平方根に比例して、図示しない制御装置により制御するようにするのである。
【0030】
次に、図1における電気ブリキの製造装置により前述した▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキ及び▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する方法についてそれぞれ説明する。
先ず、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、洗浄、酸洗を終えた鋼ストリップSは、複数のめっき層2及び通電ロール3を備えためっき装置1によって鋼ストリップSの表面に錫めっきが施される。そして、めっきが施された鋼ストリップSは、複数のフラックス処理タンク5、鋼ストリップSをフラックス処理タンク5に浸漬させるデフレクタロール6を有するフラックス処理装置4を通過する。この際に、デフレクタロール6は実線で示すように下降しており、鋼ストリップSはフラックス処理タンク5によりフラックス処理される。
【0031】
そして、鋼ストリップSはドライヤー7により乾燥された後、リフロー処理が行われる。このリフロー処理においては、錫めっきが施された鋼ストリップSに通電ロール8,9を介して電流が流され、通電ロール8,9間の鋼ストリップSが直接抵抗加熱され、表層の錫が溶融する。この際に、鋼ストリップSの表層の錫は搬送方向最も上流側の通電ロール8、上部のデフレクタロール10,11を通過した後に、溶融する。ここで、ロール13は第1位置P1に位置しており、図1の実線で示すように、2本のデフレクタロール10,11間の長さは最短となっており、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点までの鋼ストリップ長(リフローパス長)は最短となっている。
【0032】
このリフロー処理において、鋼ストリップSの温度は、通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温する。
ここで、A点における温度T1 からB点における温度T2 までの鋼ストリップSの昇温速度VT は、前述の(1)式と同様に表される。
【0033】
【数2】
【0034】
ここで、T1 :リフローゾーン入側のA点における鋼ストリップの温度(℃)
T2 :リフローゾーン出側のB点における鋼ストリップの温度(℃)
VL :ライン速度(mpm)
L:A点からB点までの鋼ストリップ長(m)
鋼ストリップSの昇温速度VT を表す(1)式において、A点における鋼ストリップの温度T1 及びB点における鋼ストリップの温度T2 は、目標値として鋼ストリップSの鋼種や寸法等、属性によって予め決定されているものであり、ある鋼種、寸法のブリキの場合、例えば、T1 は約40℃、T2 は約230℃に設定されている。従って、昇温速度VT はライン速度VL とA点からB点までの鋼ストリップ長Lの値によって左右されることになる。ライン速度VL を変化させずに一定とすると、(1)式より昇温速度VT は鋼ストリップ長Lが長ければ遅くなり、鋼ストリップ長Lが短ければ速くなる。
【0035】
▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、図1の実線で示すように、2本のデフレクタロール10,11間の長さは最短となり、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ちA点からB点までの鋼ストリップ長が最短になっていることから、昇温速度VT は速く、図2に示すように、A点における鋼ストリップの温度T1 からB点における鋼ストリップの温度T2 までの所要時間がt5 −t4 と短い。この場合、短時間で温度T1 から温度T2 まで昇温しなければならないので、それに応じて当然に通電ロール8,9を介して鋼ストリップSに流す電流も大きくするよう、図示しない制御装置により制御する。もちろん、その電流は鋼ストリップSの厚さと幅の積で決まる断面積の平方根に比例させるようにも制御する。
【0036】
リフロー処理がなされた後、鋼ストリップSは、クエンチ装置12に入り、表層の溶融した錫が冷却、凝固される。
このように、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合において、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ちA点からB点までの鋼ストリップ長Lを短くし、昇温速度VT を速くすることにより、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を短くすることができ、木目模様を少なくすることができる
一方、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、洗浄、酸洗を終えた鋼ストリップSは、複数のめっき層2及び通電ロール3を備えためっき装置1によって鋼ストリップSの表面にニッケルめっきが施され、さらにその上に錫めっきが施される。そして、めっきが施された鋼ストリップSは、複数のフラックス処理タンク5、鋼ストリップSをフラックス処理タンク5に浸漬させるデフレクタロール6を有するフラックス処理装置4を通過する。この際に、デフレクタロール6は一点鎖線で示すように上昇しており、鋼ストリップSはフラックス処理タンク5上を通過し、フラックス処理は行われない。
【0037】
そして、鋼ストリップSはドライヤー7により乾燥された後、リフロー処理が行われる。このリフロー処理においては、錫めっきが施された鋼ストリップSに通電ロール8,9を介して電流が流され、通電ロール8,9間の鋼ストリップSが直接抵抗加熱され、表層の錫が溶融する。この際に、鋼ストリップSは入側の通電ロール8、上部のデフレクタロール10,11を通過した後、鋼ストリップSの表層の錫は溶融する。ここで、ロール13は図示しない移動装置により移動されて第2位置P2に位置し、図1の一点鎖線で示すように、2個のデフレクタロール10,11間の長さは最長となり、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点までの鋼ストリップ長は最長となっている。
【0038】
このリフロー処理において、鋼ストリップSの温度は、通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温する。
ここで、A点における温度T1 からB点における温度T2 までの鋼ストリップSの昇温速度VT は、前述の(1)式と同様に表される。
【0039】
鋼ストリップSの昇温速度VT を表す(1)式においては、昇温速度VT はライン速度VL とA点からB点までの鋼ストリップ長Lの値によって左右され、ライン速度VL を変化させずに一定とすると、(1)式より昇温速度VT は鋼ストリップ長Lが長ければ遅くなり、鋼ストリップ長Lが短ければ速くなる。
▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、図1の一点鎖線で示すように、2本のデフレクタロール10,11間の長さは最長となり、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ちA点からB点までの鋼ストリップ長は最長になっていることから、昇温速度VT は遅く、図2に示すように、鋼ストリップSはA点における温度T1 からB点における温度T2 までの所要時間はt6 −t4 と長い。この場合、比較的長時間かけて温度T1 から温度T2 まで昇温するので、それに応じて通電ロール8,9を介して鋼ストリップSに流す電流を小さくするよう、図示しない制御装置により制御する。もちろん、その電流は鋼ストリップSの厚さと幅の積で決まる断面積の平方根に比例させるようにも制御する。
【0040】
このように、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合において、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ちA点からB点までの鋼ストリップ長Lを長くし、昇温速度VT を遅くすることにより、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を長くすることができ、木目模様を少なくすることができる。そして、昇温速度VT を遅くするに際して、ライン速度VL を▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合と同等の速度とすればよいので、ライン速度VL を低下させる必要はなく、生産能率の低下を招くことはない。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る電気ブリキの製造装置の第2実施形態を図3を参照して説明する。図3は本発明に係る電気ブリキの製造装置の第2実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの一部の概略説明図である。
【0041】
図3に示した電気ブリキの製造装置は、図1に示した電気ブリキの製造装置と基本的構成は同様であるが、2本のデフレクタロール10,11間に設けられたロール14の構成が異なっている。
即ち、ロール14は、上下方向に移動可能に設置されておらず、2本のデフレクタロール10,11よりも下方の位置に固定設置されている。ロール14の設置位置は、図1におけるロール13の位置P2と上下方向において同一位置となっている。
【0042】
そして、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合、図3の実線で示すように、鋼ストリップSをロール14を介さずに2本のデフレクタロール10,11を通してクエンチ装置12に導くようにし、また、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合、図3の一点鎖線で示すように、鋼ストリップSをロール14を介して2本のデフレクタロール10,11を通してクエンチ装置12に導くようにし、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点までの鋼ストリップ長を2水準で可変とし、昇温速度を調整するようにしている。
【0043】
ここで、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSは通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温することになるが、A点からB点までの鋼ストリップ長は最短となっているため、(1)式における昇温速度VT は速く、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を短くすることができ、木目模様を少なくすることができる。
【0044】
一方、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSは通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温することになるが、A点からB点までの鋼ストリップ長は最長となっているため、(1)式における昇温速度VT は遅く、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を長くすることができ、木目模様を少なくすることができる。そして、この場合、ライン速度VL を低下させる必要はなく、生産能率の低下を招くことはない。
【0045】
なお、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造してから▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSをロール14を介して2本のデフレクタロール10,11を通してクエンチ装置12に導くようにつなぎかえる必要があり、その逆に▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造してから▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSを途中で切断して鋼ストリップSをロール14を介さずに2本のデフレクタロール10,11を通してクエンチ装置12に導くようにつなぎかえる必要がある。このつなぎかえは作業員の手作業やクレーンを使った作業が介在してもちろんよい。
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る電気ブリキの製造装置の第3実施形態を図4を参照して説明する。図4は本発明に係る電気ブリキの製造装置の第3実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの一部の概略説明図である。
【0046】
図4に示した電気ブリキの製造装置は、図3に示した電気ブリキの製造装置と基本構成は同様であるが、通電ロール8,9間に配置されるデフレクタロール10,11のうち鋼ストリップSの搬送方向上流側のデフレクタロール10を通電ロール10aとして計3本の通電ロール8,10a,9を配置すると共に、入側2本の通電ロール8,10aを切り換えることによって加熱される鋼ストリップSの長さを可変とする切換装置15を設けた点で相違している。
【0047】
即ち、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、切換装置15は、鋼ストリップSの搬送方向上流側2本の通電ロール8,10aのうち下流側の通電ロール10aを通電ロールとして機能するように制御し、通電ロール10a,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール10a直後のリフローゾーン入側のAa点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーン出側のB点までの鋼ストリップ長を最短にし、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、切換装置15は、鋼ストリップSの搬送方向上流側2本の通電ロール8,10aのうち上流側の通電ロール8を通電ロールとして機能するように制御し、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーン入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーン出側のB点までの鋼ストリップ長(リフローパス長)を最長にし、鋼ストリップ長を2水準で可変としている。
【0048】
ここで、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSは通電ロール10a直後のリフローゾーン入側のAa点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーン出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温することになるが、Aa点からB点までの鋼ストリップ長が最短となっているため、(1)式における昇温速度VT は速く、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を短くすることができ、木目模様を少なくすることができる。
【0049】
一方、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSは通電ロール8直後のリフローゾーン入側のA点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーン出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温することになるが、A点からB点までの鋼ストリップ長が最長となっているため、(1)式における昇温速度VT は遅く、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を長くすることができ、木目模様を少なくすることができる。そして、この場合、ライン速度VL を低下させる必要はなく、生産能率の低下を招くことはない。
【0050】
なお、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造してから▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合、あるいはその逆に▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造してから▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、切換装置15によって鋼ストリップSの搬送方向上流側2本の通電ロール8,10aを切り換えればよく、図3に示す製造装置と異なり、鋼ストリップSを途中で切断してつなぎ変える必要はない。このため、鋼ストリップSのつなぎ変えによる停止時間がなくなり、生産能率を一層向上させることができる。
【0051】
また、A点からB点までの鋼ストリップ長を2水準で可変とするのに、切換装置15によって鋼ストリップSの搬送方向上流側2本の通電ロール8,10aを切り換えればよく、簡単な方法及び構成で鋼ストリップ長を2水準に可変とすることができる。
また、本実施形態にあっては、通電ロール8,9間に配置されるデフレクタロール10,11のうち鋼ストリップSの搬送方向上流側のデフレクタロール10を通電ロール10aとして計3本の通電ロール8,10a,9を配置すると共に、鋼ストリップSの搬送方向上流側2本の通電ロール8,10aを切り換えることによって加熱される鋼ストリップSの長さを可変とする切換装置15を設けている。しかしながら、本発明は上記実施形態に限らず、例えば、通電ロール8,9間に配置される複数本のロールを通電ロールとして計4本以上の通電ロールを配置すると共に、切換装置15により、鋼ストリップSの搬送方向最も下流側の通電ロール9を除く複数本の通電ロールを切り換えることによって鋼ストリップ長を可変とするようにしてもよい。いずれにせよ、その切換の水準数に応じ、直接抵抗加熱するための電流を、鋼ストリップSの厚さと幅の積で決まる断面積の平方根に比例して、図示しない制御装置により制御するようにする。
【0052】
【実施例】
▲2▼の溶接性を重視したブリキを、従来の図8に示した電気ブリキの製造装置及び本発明の図3に示した電気ブリキの製造装置のそれぞれにより製造した。ここで、図8に示す製造装置にあっては、リフローゾーンZ入側のA点における鋼ストリップSの温度T1 は42(℃)、リフローゾーンZ出側のB点における鋼ストリップの温度T2 は229(℃)、A点からB点までの鋼ストリップ長Lは19.7(m)とした。一方、図3に示す製造装置にあっては、リフローゾーンZ入側のA点における鋼ストリップSの温度T1 は42(℃)、リフローゾーンZ出側のB点における鋼ストリップの温度T2 は229(℃)、A点からB点までの鋼ストリップ長Lは32.7(m)とした。
【0053】
従来の図8に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合と本発明の図3に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合とを比較した、昇温速度とライン速度の関係を図5に示す。
前述の▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合において、木目模様が許容範囲におさまる最高の昇温速度は図5より約48(℃/ sec)となっている。
【0054】
図5を参照すると、従来の図8に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合には、昇温速度VT を約48(℃/ sec)以下とするためには、ライン速度VL を約300(mpm)以下とする必要があるのに対して、本発明の図3に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合には、昇温速度VT を約48(℃/ sec)以下とするためには、ライン速度VL を約480(mpm)以下とする必要があることが理解される。従って、本発明によれば、従来、昇温速度を低速にする必要があった▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合であっても、ライン速度を従来よりも速くすることができ、生産能率を向上させることができる。
【0055】
尚、本発明は以上述べた実施形態だけでなく、要旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えてももちろんよい。例えば、鋼ストリップSのリフローゾーン入側のA点における温度T1 は季節に応じて変化することから、それに応じて電流を調整するなどすればよく、また、将来、融点の異なるめっき用錫が登場してきたような場合は、それに応じてやはり電流を調整すればよい。
【0056】
【発明の効果】
本発明のうち請求項1に係る電気ブリキの製造方法及び請求項4に係る電気ブリキの製造装置によれば、離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を可変にするとともに鋼ストリップの昇温速度を調整するので、複数種類の電気ブリキを製造する場合において生産能率を低下させることなく木目模様の発生も防止できる電気ブリキの製造方法及び製造装置を提供することができる。
【0057】
また、本発明のうち請求項2に係る電気ブリキの製造方法によれば、請求項1記載の発明において、通電ロール間の鋼ストリップ長を2水準で可変としたので、2種類の電気ブリキを製造する場合において生産能率を低下させることなく木目模様の発生も防止できる電気ブリキの製造方法を提供することができる。
さらに、本発明のうち請求項3に係る電気ブリキの製造方法及び請求項5に係る電気ブリキの製造装置によれば、離間して配置された通電ロール間に配置される1本又は複数本のロールを通電ロールとして計3本以上の通電ロールを配置し、鋼ストリップの搬送方向最も下流側の通電ロールを除く複数本の通電ロールを切り換えることによって加熱する鋼ストリップ長を可変にするとともに、前記鋼ストリップの昇温速度を調整するので、複数種類の電気ブリキを製造する場合において生産能率を低下させることなく木目模様の発生も防止できる電気ブリキの製造方法及び製造装置を簡単な方法及び構成で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電気ブリキの製造装置の第1実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの概略説明図である。
【図2】鋼ストリップ長が最短の場合と最長の場合の昇温速度の変化を示すグラフである。
【図3】本発明に係る電気ブリキの製造装置の第2実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの一部の概略説明図である。
【図4】本発明に係る電気ブリキの製造装置の第3実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの一部の概略説明図である。
【図5】▲2▼の溶接性を重視したブリキを、従来の図8に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合と本発明の図3に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合とを比較した、昇温速度とライン速度の関係を示すグラフである。
【図6】▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキの一部断面図である。
【図7】▲2▼の溶接性を重視したブリキの一部断面図である。
【図8】従来の電気ブリキの製造装置が適用される電気ブリキ製造ラインの概略説明図である。
【図9】昇温速度が速い場合の融点近傍の通過時間と昇温速度が遅い場合の融点近傍の通過時間とを比較して示したグラフである。
【図10】木目模様の発生のようすを示した図である。
【符号の説明】
1 めっき装置
2 めっき槽
3 通電ロール
4 フラックス処理装置
5 フラックス処理タンク
6 デフレクタロール
7 ドライヤー
8,9 通電ロール
10,11 デフレクタロール
10a 通電ロール
12 クエンチ装置
13 ロール
14 ロール
15 切換装置
S 鋼ストリップ
Z リフローゾーン
【産業上の利用分野】
本発明は、電気ブリキ、特に薄めっき電気ブリキ表面にあらわれる木目状の模様(以下、木目模様と称する)の発生を防止する電気ブリキの製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電気ブリキは、鋼板表面に錫をめっきした後、耐食性の向上と光沢の良い表面を得るために、加熱して錫を溶融させ、冷却凝固させる。錫の加熱方法には、一般的に、抵抗加熱方法と高周波加熱方法とがあり、場合によっては両方法が併用される。ここで、前者の抵抗加熱方法にあっては、錫を溶融、凝固した際に、表面の錫の光沢にむらができ、「木目模様」が発生することがある。この木目模様の発生は、鋼板表面積あたりの錫めっき量によって大きく左右され、5.6g/ mm2 以上ではほとんど発生しないが、2.8g/ mm2 以下ではしばしば発生し、鋼板全表面に対し、部分的にダル目残りがあるような不均一な光沢を呈する。このため、均一光沢面に比べ外観の美麗さにおいて劣り商品価値をそこなっていた。
【0003】
この木目模様は、図10に示すように帯状に長く延びる方向に搬送される鋼ストリップ表面の幅方向に定ピッチで生じ、搬送速度や通電する交流の周波数を変化させると、そのピッチも変化することが経験的に知られており、その発生機構については、非特許文献1に詳しい調査結果があり、抵抗加熱に使用する交流電流の脈動が原因とされている。
【0004】
この木目模様を防止する方法としては、加熱方法を変えることが最も有効であり、具体的には高周波加熱方法を採用することにより、木目模様は全く発生しなくなる。しかしながら、既存の設備を高周波加熱方式に変更するには多額の投資を必要とし、現実的でない。
そこで、従来から、加熱方法を変えずに(抵抗加熱方式のままで)、木目模様を防止する種々の提案がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1においては、電気錫鍍金鋼板をフラックシング(以降、フラックス処理という)した後交流を使用して抵抗加熱で表層錫をフローメルトする(鋼板表面に錫を電着した後、耐食性の向上と光沢の良い表面を得るために、加熱して錫を溶融させ、冷却凝固する)電気ブリキの製造方法において、フラックス中に界面活性剤を添加し、フラックス処理の効果を強化し電気ブリキの表面光沢を改善するとともに木目模様を防止するようにしている。
【0006】
また、特許文献2においては、溶接性に優れた薄錫めっき鋼板の製造方法として、鋼板表面にNiめっきし、その上にSnめっきして、その後リフロー処理(前出のフローメルトと同じ)する薄錫めっき鋼板の製造方法において、Niめっきの片面あたりの付着量を3〜30mg/ m2 、Snめっきの片面あたりの付着量を200〜1200mg/ m2 とし、リフロー処理の昇温速度を30℃/ 秒〜40℃/ 秒の範囲とし、錫めっき層の最終到達温度を280℃以下として、急冷するようにしている。
【0007】
ところで、電気ブリキは、大別すると、
▲1▼光沢、耐食性を重視したブリキと、
▲2▼溶接性を重視した主に飲料用缶用途として用いられる薄めっきブリキと、がある。
ここで、特許文献1に開示の技術は、前記▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを得ることを目的としており、図6に示すように、鋼板の表面に錫(Sn)めっきを施し、その後、錫めっき層を均一、平坦に凝固させるために鋼板の表面にめっきした錫めっき層の上にフラックス処理を施し、その後、錫のリフロー処理をするものである。
【0008】
また、特許文献2に開示の技術は、前記▲2▼の溶接性を重視したブリキを得ることを目的としており、図7に示すように、鋼板(Fe)の表面にニッケル(Ni)めっきを施し、その上に錫(Sn)めっきをして、その後、錫の溶融、凝固処理(リフロー処理)をするものであって、このリフロー処理において、「錫はじき」ができるという特徴がある。この電気ブリキにあっては、リフロー処理前のフラックス処理は省略されるとともに、錫めっき量は、2.8g/ mm2 以下と少ない。ここで、「錫はじき」とは、図7に示すように、錫めっき層における純錫の凹凸の凸部分のことをさす。錫はじき部は金属特性から、鉄、鉄ー錫合金層に比較し、軟質で融点が低いため、シーム溶接時に、母材の溶接性向上に寄与するのである。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された技術にあっては、前述の▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する際の木目模様を防止するものとしては有効であるが、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する際の木目模様を防止するものとしては有効ではない。
一方、特許文献2に開示された技術にあっては、前述の▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する際の木目模様を防止するものとしては有効であるが、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する際の木目模様を防止するものとしては有効ではない。
【0010】
そこで、従来にあっては、以下の方法で、▲1▼及び▲2▼のブリキの双方について木目模様を防止することとしていた。
図8は従来の電気ブリキの製造ラインの概略構成図である。図8における電気ブリキの製造ラインにおいて、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合、洗浄、酸洗を終えた鋼ストリップSは、複数のめっき層102及び通電ロール103を備えためっき装置101によって鋼ストリップSの表面に錫めっきが施される。図中の矢印は、鋼ストリップSの搬送方向を示す。そして、めっきが施された鋼ストリップSは、複数のフラックス処理タンク105、鋼ストリップSをフラックス処理タンク105に浸漬させるデフレクタロール106を有するフラックス処理装置104を通過する。この際に、デフレクタロール106は実線で示すように下降しており、鋼ストリップSはフラックス処理タンク105内でフラックス処理される。そして、鋼ストリップSはドライヤー107により乾燥させられた後、リフロー処理がなされる。このリフロー処理においては、錫めっきが施された鋼ストリップSに離間して配置された通電ロール108,109を介して電流が流され、前記離間して配置された通電ロール108,109間の鋼ストリップSが直接抵抗加熱される。この際に、鋼ストリップSの表層の錫は、加熱時間の経過とともに、一方の通電ロール108、上部のデフレクタロール110,111を順次通過した後、溶融する。その後、鋼ストリップSは、クエンチ装置112に入り、表層の錫が冷却、凝固されるのである。リフロー処理前にフラックス処理がなされているので、得られた錫めっき層は均一、平坦になっている。
【0011】
また、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合、洗浄、酸洗を終えた鋼ストリップSは、複数のめっき層102及び通電ロール103を備えためっき装置101によって鋼ストリップSの表面にニッケルめっきが施され、さらにその上に錫めっきが施される。そして、めっきが施された鋼ストリップSは、複数のフラックス処理タンク105、鋼ストリップSをフラックス処理タンク105に浸漬させるデフレクタロール106を有するフラックス処理装置104を通過する。この際に、デフレクタロール106は一点鎖線で示すように上昇しており、鋼ストリップSはフラックス処理タンク105上を通過し、鋼ストリップSにフラックス処理は行われない。そして、ドライヤー107により乾燥させられた後、鋼ストリップSにはリフロー処理が行われる。このリフロー処理においては、錫めっきが施された鋼ストリップSに離間して配置された通電ロール108,109を介して電流が流され、前記離間して配置された通電ロール108,109間の鋼ストリップSが直接抵抗加熱される。この間、鋼ストリップSの表層の錫は、加熱時間の経過とともに、一方の通電ロール108、上部のデフレクタロール110,111を順次通過した後、溶融する。その後、鋼ストリップSは、クエンチ装置112に入り、表層の錫が冷却、凝固されるのである。
【0012】
ここで、リフロー処理においては、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合及び▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合の双方の場合において、めっき被膜の表面に木目模様が発生する場合があるが、この木目模様の発生は、通電ロール108直後のリフローゾーンZ(鋼ストリップS表層の錫が直接抵抗加熱により次第に昇温するゾーン)入側のA点における鋼ストリップSの温度T1 からクエンチ装置112の直前のリフローゾーンZ出側のB点における鋼ストリップSの温度T2 (錫の融点)に至るまでの昇温速度VT に強く影響を受けると考えられている。
昇温速度VT は次の(1)式によって表される。
【0013】
【数1】
【0014】
ここで、T1 :リフローゾーン入側のA点における鋼ストリップの温度(℃)T2 :リフローゾーン出側のB点における鋼ストリップの温度(℃)
VL :ライン速度(mpm)
L:A点からB点までの鋼ストリップ長(m)
即ち、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合にあっては、昇温速度VT が速いほど木目模様の発生が少なく、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合にあっては、昇温速度VT が遅いほど木目模様の発生が少ない。この理由は、図9に示すように、昇温速度VT が速いと融点(温度T2 )近傍の通過時間Sが短く、一方、昇温速度VT が遅いと通過時間S’が長いところ、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合にあっては融点近傍の通過時間が短いほど木目模様発生防止に有利で、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合にあっては融点近傍の通過時間が長いほど木目模様発生防止に有利だからである。図9において、T1 はリフローゾーンZ入側のA点における鋼ストリップの温度、T2 はリフローゾーンZ出側のB点における鋼ストリップの温度(錫の融点)、t1 は鋼ストリップSがリフローゾーンZ入側のA点に到達した時刻、t2 は昇温速度VT が速い場合の鋼ストリップSがリフローゾーンZ出側のB点に到達した時刻、t3 は昇温速度VT が遅い場合の鋼ストリップSがリフローゾーンZ出側のB点に到達した時刻である。
【0015】
従って、従来にあっては、(1)式から理解されるように、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合、昇温速度VT を速くするためにライン速度VL を速くし、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合、昇温速度VT を遅くするためにライン速度VL を遅くするように調整していた。
尚、直接抵抗加熱するための電流は、これら2つのライン速度の水準ごとに、鋼ストリップSの厚さと幅の積で決まる断面積の平方根に比例して、図示しない制御装置により制御していた。
【0016】
【特許文献1】
特公昭57−26354号公報
【特許文献2】
特開平4−41694号公報
【非特許文献1】
「PLATING」、1960年11月、p. 1255〜1261
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の電気ブリキの製造方法にあっては、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合及び▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合、双方において、めっき被膜の表面に木目模様が発生するのを防止できるものの、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合において、昇温速度VT を遅くするためにライン速度VL を遅くすることになるため、電気ブリキの生産能率が低下してしまうという問題があった。
【0018】
従って、本発明はこの問題を解決すべくなされたものであり、その目的は、複数種類の電気ブリキを製造する場合においてライン速度を低下させることなく高生産能率での製造が可能な電気ブリキの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明のうち請求項1に係る電気ブリキの製造方法は、鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施した後、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融し、その後、溶融した錫を冷却、凝固する電気ブリキの製造方法において、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を可変にするとともに前記鋼ストリップの昇温速度を調整することを特徴としている。
【0020】
本発明のうち請求項2に係る電気ブリキの製造方法は、請求項1記載の発明において、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を2水準で可変としたことを特徴としている。
本発明のうち請求項3に係る電気ブリキの製造方法は、鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施した後、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融し、その後、溶融した錫を冷却、凝固する電気ブリキの製造方法において、前記離間して配置された通電ロール間に配置される1本又は複数本のロールを通電ロールとして計3本以上の通電ロールを配置し、鋼ストリップの搬送方向最も下流側の通電ロールを除く複数本の通電ロールを切り換えることによって加熱する鋼ストリップ長を可変にするとともに、前記鋼ストリップの昇温速度を調整することを特徴としている。
【0021】
また、本発明のうち請求項4に係る電気ブリキの製造装置は、鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施すめっき装置と、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融する加熱装置と、溶融した錫を冷却、凝固するクエンチ装置とを具備した電気ブリキの製造装置において、前記離間して配置された通電ロール間に、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を可変とするロールを設けたことを特徴としている。
【0022】
更に、本発明のうち請求項5に係る電気ブリキの製造装置は、鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施すめっき装置と、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融する加熱装置と、溶融した錫を冷却、凝固するクエンチ装置とを具備した電気ブリキの製造装置において、前記離間して配置された通電ロール間に配置される1本又は複数本のロールを通電ロールとして計3本以上の通電ロールを配置すると共に、鋼ストリップの搬送方向最も下流側の通電ロールを除く複数本の通電ロールを切り換えることによって加熱する鋼ストリップ長を可変にするとともに、前記鋼ストリップの昇温速度を調整する切換装置を設けたことを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明に係る電気ブリキの製造装置の第1実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの概略説明図である。図2は鋼ストリップ長が最短の場合と最長の場合の昇温速度の変化を示すグラフである。
【0024】
図1における電気ブリキ製造ラインにおいて、電気ブリキ製造装置は、めっき装置1と、フラックス処理装置4と、ドライヤー7と、通電ロール8,9と、電源(図示せず)及び制御装置(図示せず)を備えた加熱装置と、クエンチ装置12とを具備している。
ここで、めっき装置1は、複数のめっき槽2及び通電ロール3を備え、洗浄、酸洗を終えた鋼ストリップSの表面に錫めっきあるいはさらにニッケルめっきを施すようになっている。めっき装置1は、前述の▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSの表面に錫めっきを、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSの表面にニッケルめっき及び錫めっきを施す。
【0025】
また、フラックス処理装置4は、めっき装置1の下流側に配置され、めっきされた鋼ストリップSをフラックス処理するものであって、複数のフラックス処理タンク5及び鋼ストリップSをフラックス処理タンク5に浸漬させるデフレクタロール6を備えている。デフレクタロール6は、実線で示す鋼ストリップSをフラックス処理タンク5に浸漬させる浸漬位置と、一点鎖線で示す退避位置との間を移動可能となっている。フラックス処理装置4は、前述の▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSにフラックス処理を行い、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSにフラックス処理を行わない。
【0026】
さらに、ドライヤー7は、フラックス処理装置4の下流側に配置され、鋼ストリップSを乾燥するようになっている。
加熱装置は、ドライヤー7の下流側に配置された通電ロール8,9及びこれら通電ロール8,9を介して鋼ストリップSに電流を流す図示しない電源と、それに、これも図示しない制御装置とを備え、めっきが施された鋼ストリップSの表面錫をリフロー処理するようになっている。即ち、加熱装置は、鋼ストリップSに通電ロール8,9を介して電流を流し通電ロール8,9間の鋼ストリップSを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融する。
【0027】
また、クエンチ装置12は、鋼ストリップSの搬送方向下流側の通電ロール9の直前に配置され、タンク内に貯留された冷却液にて、リフロー処理により溶融した錫を冷却、凝固する。
そして、通電ロール8,9間には、互いに所定間隔を置いて2本のデフレクタロール10,11が通電ロール8,9よりも上方に設置され、それら2本のデフレクタロール10,11間には、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長を可変とするロール13が設けられている。このロール13は、図1に示すように、2本のデフレクタロール10,11よりも上方に位置する第1位置P1と、前記デフレクタロール10,11よりも下方に位置する第2位置P2との間を移動装置(図示せず)により移動可能となっている。ロール13が第1位置P1に位置する場合には、図1の実線で示すように、鋼ストリップSは2本のデフレクタロール10,11間の長さが最短となり、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点までの鋼ストリップ長(リフローパス長)が最短となる。また、ロール13が第2位置P2に位置する場合には、図1の一点鎖線で示すように、2本のデフレクタロール10,11間の長さは最長となり、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点までの鋼ストリップ長(リフローパス長)が最長となる。前述した▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、ロール13を第1位置P1に位置させて通電ロール8,9間の鋼ストリップ長を短くし、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、ロール13を第2位置P2に位置させて前記鋼ストリップ長を長くする。
【0028】
本実施形態にあっては、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキ及び▲2▼の溶接性を重視したブリキの2種類の電気ブリキを製造するために、ロール13は、第1位置P1と第2位置P2との2位置に停止し、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長は2水準で可変となっている。しかし、ロール13を、第1位置P1及び第2位置P2以外に、第1位置P1と第2位置P2との間の任意の位置で停止可能として通電ロール8,9間の鋼ストリップ長を3水準以上に可変としてもよい。これにより、3種類以上の電気ブリキを製造するのにも対応することができる。
【0029】
このように、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長を、何水準かに変化させることで、鋼ストリップの搬送速度を変化させなくても、通電ロール8,9間のリフローゾーンZを鋼ストリップ上の定点が通過するのに要する時間を何水準かに変化させることができるのである。この水準数に応じ、直接抵抗加熱するための電流を、鋼ストリップSの厚さと幅の積で決まる断面積の平方根に比例して、図示しない制御装置により制御するようにするのである。
【0030】
次に、図1における電気ブリキの製造装置により前述した▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキ及び▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する方法についてそれぞれ説明する。
先ず、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、洗浄、酸洗を終えた鋼ストリップSは、複数のめっき層2及び通電ロール3を備えためっき装置1によって鋼ストリップSの表面に錫めっきが施される。そして、めっきが施された鋼ストリップSは、複数のフラックス処理タンク5、鋼ストリップSをフラックス処理タンク5に浸漬させるデフレクタロール6を有するフラックス処理装置4を通過する。この際に、デフレクタロール6は実線で示すように下降しており、鋼ストリップSはフラックス処理タンク5によりフラックス処理される。
【0031】
そして、鋼ストリップSはドライヤー7により乾燥された後、リフロー処理が行われる。このリフロー処理においては、錫めっきが施された鋼ストリップSに通電ロール8,9を介して電流が流され、通電ロール8,9間の鋼ストリップSが直接抵抗加熱され、表層の錫が溶融する。この際に、鋼ストリップSの表層の錫は搬送方向最も上流側の通電ロール8、上部のデフレクタロール10,11を通過した後に、溶融する。ここで、ロール13は第1位置P1に位置しており、図1の実線で示すように、2本のデフレクタロール10,11間の長さは最短となっており、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点までの鋼ストリップ長(リフローパス長)は最短となっている。
【0032】
このリフロー処理において、鋼ストリップSの温度は、通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温する。
ここで、A点における温度T1 からB点における温度T2 までの鋼ストリップSの昇温速度VT は、前述の(1)式と同様に表される。
【0033】
【数2】
【0034】
ここで、T1 :リフローゾーン入側のA点における鋼ストリップの温度(℃)
T2 :リフローゾーン出側のB点における鋼ストリップの温度(℃)
VL :ライン速度(mpm)
L:A点からB点までの鋼ストリップ長(m)
鋼ストリップSの昇温速度VT を表す(1)式において、A点における鋼ストリップの温度T1 及びB点における鋼ストリップの温度T2 は、目標値として鋼ストリップSの鋼種や寸法等、属性によって予め決定されているものであり、ある鋼種、寸法のブリキの場合、例えば、T1 は約40℃、T2 は約230℃に設定されている。従って、昇温速度VT はライン速度VL とA点からB点までの鋼ストリップ長Lの値によって左右されることになる。ライン速度VL を変化させずに一定とすると、(1)式より昇温速度VT は鋼ストリップ長Lが長ければ遅くなり、鋼ストリップ長Lが短ければ速くなる。
【0035】
▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、図1の実線で示すように、2本のデフレクタロール10,11間の長さは最短となり、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ちA点からB点までの鋼ストリップ長が最短になっていることから、昇温速度VT は速く、図2に示すように、A点における鋼ストリップの温度T1 からB点における鋼ストリップの温度T2 までの所要時間がt5 −t4 と短い。この場合、短時間で温度T1 から温度T2 まで昇温しなければならないので、それに応じて当然に通電ロール8,9を介して鋼ストリップSに流す電流も大きくするよう、図示しない制御装置により制御する。もちろん、その電流は鋼ストリップSの厚さと幅の積で決まる断面積の平方根に比例させるようにも制御する。
【0036】
リフロー処理がなされた後、鋼ストリップSは、クエンチ装置12に入り、表層の溶融した錫が冷却、凝固される。
このように、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合において、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ちA点からB点までの鋼ストリップ長Lを短くし、昇温速度VT を速くすることにより、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を短くすることができ、木目模様を少なくすることができる
一方、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、洗浄、酸洗を終えた鋼ストリップSは、複数のめっき層2及び通電ロール3を備えためっき装置1によって鋼ストリップSの表面にニッケルめっきが施され、さらにその上に錫めっきが施される。そして、めっきが施された鋼ストリップSは、複数のフラックス処理タンク5、鋼ストリップSをフラックス処理タンク5に浸漬させるデフレクタロール6を有するフラックス処理装置4を通過する。この際に、デフレクタロール6は一点鎖線で示すように上昇しており、鋼ストリップSはフラックス処理タンク5上を通過し、フラックス処理は行われない。
【0037】
そして、鋼ストリップSはドライヤー7により乾燥された後、リフロー処理が行われる。このリフロー処理においては、錫めっきが施された鋼ストリップSに通電ロール8,9を介して電流が流され、通電ロール8,9間の鋼ストリップSが直接抵抗加熱され、表層の錫が溶融する。この際に、鋼ストリップSは入側の通電ロール8、上部のデフレクタロール10,11を通過した後、鋼ストリップSの表層の錫は溶融する。ここで、ロール13は図示しない移動装置により移動されて第2位置P2に位置し、図1の一点鎖線で示すように、2個のデフレクタロール10,11間の長さは最長となり、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点までの鋼ストリップ長は最長となっている。
【0038】
このリフロー処理において、鋼ストリップSの温度は、通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温する。
ここで、A点における温度T1 からB点における温度T2 までの鋼ストリップSの昇温速度VT は、前述の(1)式と同様に表される。
【0039】
鋼ストリップSの昇温速度VT を表す(1)式においては、昇温速度VT はライン速度VL とA点からB点までの鋼ストリップ長Lの値によって左右され、ライン速度VL を変化させずに一定とすると、(1)式より昇温速度VT は鋼ストリップ長Lが長ければ遅くなり、鋼ストリップ長Lが短ければ速くなる。
▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、図1の一点鎖線で示すように、2本のデフレクタロール10,11間の長さは最長となり、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ちA点からB点までの鋼ストリップ長は最長になっていることから、昇温速度VT は遅く、図2に示すように、鋼ストリップSはA点における温度T1 からB点における温度T2 までの所要時間はt6 −t4 と長い。この場合、比較的長時間かけて温度T1 から温度T2 まで昇温するので、それに応じて通電ロール8,9を介して鋼ストリップSに流す電流を小さくするよう、図示しない制御装置により制御する。もちろん、その電流は鋼ストリップSの厚さと幅の積で決まる断面積の平方根に比例させるようにも制御する。
【0040】
このように、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合において、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ちA点からB点までの鋼ストリップ長Lを長くし、昇温速度VT を遅くすることにより、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を長くすることができ、木目模様を少なくすることができる。そして、昇温速度VT を遅くするに際して、ライン速度VL を▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合と同等の速度とすればよいので、ライン速度VL を低下させる必要はなく、生産能率の低下を招くことはない。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る電気ブリキの製造装置の第2実施形態を図3を参照して説明する。図3は本発明に係る電気ブリキの製造装置の第2実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの一部の概略説明図である。
【0041】
図3に示した電気ブリキの製造装置は、図1に示した電気ブリキの製造装置と基本的構成は同様であるが、2本のデフレクタロール10,11間に設けられたロール14の構成が異なっている。
即ち、ロール14は、上下方向に移動可能に設置されておらず、2本のデフレクタロール10,11よりも下方の位置に固定設置されている。ロール14の設置位置は、図1におけるロール13の位置P2と上下方向において同一位置となっている。
【0042】
そして、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合、図3の実線で示すように、鋼ストリップSをロール14を介さずに2本のデフレクタロール10,11を通してクエンチ装置12に導くようにし、また、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合、図3の一点鎖線で示すように、鋼ストリップSをロール14を介して2本のデフレクタロール10,11を通してクエンチ装置12に導くようにし、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点までの鋼ストリップ長を2水準で可変とし、昇温速度を調整するようにしている。
【0043】
ここで、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSは通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温することになるが、A点からB点までの鋼ストリップ長は最短となっているため、(1)式における昇温速度VT は速く、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を短くすることができ、木目模様を少なくすることができる。
【0044】
一方、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSは通電ロール8直後のリフローゾーンZ入側のA点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーンZ出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温することになるが、A点からB点までの鋼ストリップ長は最長となっているため、(1)式における昇温速度VT は遅く、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を長くすることができ、木目模様を少なくすることができる。そして、この場合、ライン速度VL を低下させる必要はなく、生産能率の低下を招くことはない。
【0045】
なお、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造してから▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSをロール14を介して2本のデフレクタロール10,11を通してクエンチ装置12に導くようにつなぎかえる必要があり、その逆に▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造してから▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSを途中で切断して鋼ストリップSをロール14を介さずに2本のデフレクタロール10,11を通してクエンチ装置12に導くようにつなぎかえる必要がある。このつなぎかえは作業員の手作業やクレーンを使った作業が介在してもちろんよい。
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る電気ブリキの製造装置の第3実施形態を図4を参照して説明する。図4は本発明に係る電気ブリキの製造装置の第3実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの一部の概略説明図である。
【0046】
図4に示した電気ブリキの製造装置は、図3に示した電気ブリキの製造装置と基本構成は同様であるが、通電ロール8,9間に配置されるデフレクタロール10,11のうち鋼ストリップSの搬送方向上流側のデフレクタロール10を通電ロール10aとして計3本の通電ロール8,10a,9を配置すると共に、入側2本の通電ロール8,10aを切り換えることによって加熱される鋼ストリップSの長さを可変とする切換装置15を設けた点で相違している。
【0047】
即ち、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、切換装置15は、鋼ストリップSの搬送方向上流側2本の通電ロール8,10aのうち下流側の通電ロール10aを通電ロールとして機能するように制御し、通電ロール10a,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール10a直後のリフローゾーン入側のAa点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーン出側のB点までの鋼ストリップ長を最短にし、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、切換装置15は、鋼ストリップSの搬送方向上流側2本の通電ロール8,10aのうち上流側の通電ロール8を通電ロールとして機能するように制御し、通電ロール8,9間の鋼ストリップ長、即ち通電ロール8直後のリフローゾーン入側のA点からクエンチ装置12の直前のリフローゾーン出側のB点までの鋼ストリップ長(リフローパス長)を最長にし、鋼ストリップ長を2水準で可変としている。
【0048】
ここで、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSは通電ロール10a直後のリフローゾーン入側のAa点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーン出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温することになるが、Aa点からB点までの鋼ストリップ長が最短となっているため、(1)式における昇温速度VT は速く、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を短くすることができ、木目模様を少なくすることができる。
【0049】
一方、▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合には、鋼ストリップSは通電ロール8直後のリフローゾーン入側のA点における温度T1 からクエンチ装置12の直前のリフローゾーン出側のB点における温度T2 (錫の融点)まで昇温することになるが、A点からB点までの鋼ストリップ長が最長となっているため、(1)式における昇温速度VT は遅く、錫の融点(温度T2 )近傍の通過時間を長くすることができ、木目模様を少なくすることができる。そして、この場合、ライン速度VL を低下させる必要はなく、生産能率の低下を招くことはない。
【0050】
なお、▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造してから▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合、あるいはその逆に▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造してから▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキを製造する場合には、切換装置15によって鋼ストリップSの搬送方向上流側2本の通電ロール8,10aを切り換えればよく、図3に示す製造装置と異なり、鋼ストリップSを途中で切断してつなぎ変える必要はない。このため、鋼ストリップSのつなぎ変えによる停止時間がなくなり、生産能率を一層向上させることができる。
【0051】
また、A点からB点までの鋼ストリップ長を2水準で可変とするのに、切換装置15によって鋼ストリップSの搬送方向上流側2本の通電ロール8,10aを切り換えればよく、簡単な方法及び構成で鋼ストリップ長を2水準に可変とすることができる。
また、本実施形態にあっては、通電ロール8,9間に配置されるデフレクタロール10,11のうち鋼ストリップSの搬送方向上流側のデフレクタロール10を通電ロール10aとして計3本の通電ロール8,10a,9を配置すると共に、鋼ストリップSの搬送方向上流側2本の通電ロール8,10aを切り換えることによって加熱される鋼ストリップSの長さを可変とする切換装置15を設けている。しかしながら、本発明は上記実施形態に限らず、例えば、通電ロール8,9間に配置される複数本のロールを通電ロールとして計4本以上の通電ロールを配置すると共に、切換装置15により、鋼ストリップSの搬送方向最も下流側の通電ロール9を除く複数本の通電ロールを切り換えることによって鋼ストリップ長を可変とするようにしてもよい。いずれにせよ、その切換の水準数に応じ、直接抵抗加熱するための電流を、鋼ストリップSの厚さと幅の積で決まる断面積の平方根に比例して、図示しない制御装置により制御するようにする。
【0052】
【実施例】
▲2▼の溶接性を重視したブリキを、従来の図8に示した電気ブリキの製造装置及び本発明の図3に示した電気ブリキの製造装置のそれぞれにより製造した。ここで、図8に示す製造装置にあっては、リフローゾーンZ入側のA点における鋼ストリップSの温度T1 は42(℃)、リフローゾーンZ出側のB点における鋼ストリップの温度T2 は229(℃)、A点からB点までの鋼ストリップ長Lは19.7(m)とした。一方、図3に示す製造装置にあっては、リフローゾーンZ入側のA点における鋼ストリップSの温度T1 は42(℃)、リフローゾーンZ出側のB点における鋼ストリップの温度T2 は229(℃)、A点からB点までの鋼ストリップ長Lは32.7(m)とした。
【0053】
従来の図8に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合と本発明の図3に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合とを比較した、昇温速度とライン速度の関係を図5に示す。
前述の▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合において、木目模様が許容範囲におさまる最高の昇温速度は図5より約48(℃/ sec)となっている。
【0054】
図5を参照すると、従来の図8に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合には、昇温速度VT を約48(℃/ sec)以下とするためには、ライン速度VL を約300(mpm)以下とする必要があるのに対して、本発明の図3に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合には、昇温速度VT を約48(℃/ sec)以下とするためには、ライン速度VL を約480(mpm)以下とする必要があることが理解される。従って、本発明によれば、従来、昇温速度を低速にする必要があった▲2▼の溶接性を重視したブリキを製造する場合であっても、ライン速度を従来よりも速くすることができ、生産能率を向上させることができる。
【0055】
尚、本発明は以上述べた実施形態だけでなく、要旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えてももちろんよい。例えば、鋼ストリップSのリフローゾーン入側のA点における温度T1 は季節に応じて変化することから、それに応じて電流を調整するなどすればよく、また、将来、融点の異なるめっき用錫が登場してきたような場合は、それに応じてやはり電流を調整すればよい。
【0056】
【発明の効果】
本発明のうち請求項1に係る電気ブリキの製造方法及び請求項4に係る電気ブリキの製造装置によれば、離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を可変にするとともに鋼ストリップの昇温速度を調整するので、複数種類の電気ブリキを製造する場合において生産能率を低下させることなく木目模様の発生も防止できる電気ブリキの製造方法及び製造装置を提供することができる。
【0057】
また、本発明のうち請求項2に係る電気ブリキの製造方法によれば、請求項1記載の発明において、通電ロール間の鋼ストリップ長を2水準で可変としたので、2種類の電気ブリキを製造する場合において生産能率を低下させることなく木目模様の発生も防止できる電気ブリキの製造方法を提供することができる。
さらに、本発明のうち請求項3に係る電気ブリキの製造方法及び請求項5に係る電気ブリキの製造装置によれば、離間して配置された通電ロール間に配置される1本又は複数本のロールを通電ロールとして計3本以上の通電ロールを配置し、鋼ストリップの搬送方向最も下流側の通電ロールを除く複数本の通電ロールを切り換えることによって加熱する鋼ストリップ長を可変にするとともに、前記鋼ストリップの昇温速度を調整するので、複数種類の電気ブリキを製造する場合において生産能率を低下させることなく木目模様の発生も防止できる電気ブリキの製造方法及び製造装置を簡単な方法及び構成で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電気ブリキの製造装置の第1実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの概略説明図である。
【図2】鋼ストリップ長が最短の場合と最長の場合の昇温速度の変化を示すグラフである。
【図3】本発明に係る電気ブリキの製造装置の第2実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの一部の概略説明図である。
【図4】本発明に係る電気ブリキの製造装置の第3実施形態が適用される電気ブリキ製造ラインの一部の概略説明図である。
【図5】▲2▼の溶接性を重視したブリキを、従来の図8に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合と本発明の図3に示した電気ブリキの製造装置により製造する場合とを比較した、昇温速度とライン速度の関係を示すグラフである。
【図6】▲1▼の光沢、耐食性を重視したブリキの一部断面図である。
【図7】▲2▼の溶接性を重視したブリキの一部断面図である。
【図8】従来の電気ブリキの製造装置が適用される電気ブリキ製造ラインの概略説明図である。
【図9】昇温速度が速い場合の融点近傍の通過時間と昇温速度が遅い場合の融点近傍の通過時間とを比較して示したグラフである。
【図10】木目模様の発生のようすを示した図である。
【符号の説明】
1 めっき装置
2 めっき槽
3 通電ロール
4 フラックス処理装置
5 フラックス処理タンク
6 デフレクタロール
7 ドライヤー
8,9 通電ロール
10,11 デフレクタロール
10a 通電ロール
12 クエンチ装置
13 ロール
14 ロール
15 切換装置
S 鋼ストリップ
Z リフローゾーン
Claims (5)
- 鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施した後、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融し、その後、溶融した錫を冷却、凝固する電気ブリキの製造方法において、
前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を可変にするとともに前記鋼ストリップの昇温速度を調整することを特徴とする電気ブリキの製造方法。 - 前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を2水準で可変としたことを特徴とする請求項1記載の電気ブリキの製造方法。
- 鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施した後、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融し、その後、溶融した錫を冷却、凝固する電気ブリキの製造方法において、
前記離間して配置された通電ロール間に配置される1本又は複数本のロールを通電ロールとして計3本以上の通電ロールを配置し、鋼ストリップの搬送方向最も下流側の通電ロールを除く複数本の通電ロールを切り換えることによって加熱する鋼ストリップ長を可変にするとともに、前記鋼ストリップの昇温速度を調整することを特徴とする電気ブリキの製造方法。 - 鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施すめっき装置と、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融する加熱装置と、溶融した錫を冷却、凝固するクエンチ装置とを具備した電気ブリキの製造装置において、
前記離間して配置された通電ロール間に、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップ長を可変とするロールを設けたことを特徴とする電気ブリキの製造装置。 - 鋼ストリップの表面に電気錫めっきを施すめっき装置と、離間して配置された通電ロールを介して前記鋼ストリップに電流を流し、前記離間して配置された通電ロール間の鋼ストリップを直接抵抗加熱することにより表面錫を溶融する加熱装置と、溶融した錫を冷却、凝固するクエンチ装置とを具備した電気ブリキの製造装置において、
前記離間して配置された通電ロール間に配置される1本又は複数本のロールを通電ロールとして計3本以上の通電ロールを配置すると共に、鋼ストリップの搬送方向最も下流側の通電ロールを除く複数本の通電ロールを切り換えることによって加熱する鋼ストリップ長を可変にするとともに、前記鋼ストリップの昇温速度を調整する切換装置を設けたことを特徴とする電気ブリキの製造装置。
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JP2010159451A (ja) * | 2009-01-07 | 2010-07-22 | Nippon Steel Engineering Co Ltd | 連続錫めっき設備のリフロー加熱電力制御方法 |
CN105543922A (zh) * | 2015-12-17 | 2016-05-04 | 天津市富仁板带有限公司 | 一种钢带镀锡工艺 |
CN112430794A (zh) * | 2020-10-31 | 2021-03-02 | 张家港扬子江冷轧板有限公司 | 一种提高镀锡板表面耐蚀性的自软熔装置及方法 |
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