JP2004087459A - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】正極、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む負極、並びに非水溶媒とリチウム塩とを含有する非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、前記非水電解液が、式(1):
SiFxR1 lR2 mR3 n ・・・式(1)
{化学式(1)中、R1〜R3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜12の有機基であって、xは1〜3,l,m,nは0〜3で、1≦l+m+n≦3 である。}
で表されるケイ素化合物を含有することを特徴とする非水電解液二次電池。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解液二次電池及びそれに用いる非水電解液に関する。詳しくは特定の非水電解液を用いた、入出力及びサイクル特性に優れた非水電解液二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報関連機器、通信機器の分野では、パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等の小型化に伴い、これらの機器に用いる電源として、高エネルギー密度である点から、リチウム二次電池が実用化され、広く普及するに至っている。
近年では、上記の分野に加えて、自動車の分野においても、特に、環境問題、資源問題を背景に開発が急がれている電気自動車用の電源として、リチウム二次電池が検討されている。
【0003】
リチウム二次電池のうち、金属リチウムを負極とする二次電池は、高容量化を達成できる電池として古くから盛んに研究が行われている。しかし、これらの電池には、金属リチウムが充放電の繰り返しによりデンドライト状に成長し、最終的には正極に達して電池内部において短絡が生じてしまうという問題があり、この問題は、金属リチウム二次電池を実用化する際の最大の技術的な課題となっている。
【0004】
そこで負極に、例えばコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等のリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な炭素質材料を用いた非水電解液二次電池が提案されている。このような非水電解液二次電池では、リチウムが金属状態で存在しないため、デンドライトの形成が抑制され、電池寿命と安全性を向上することができる。特に、人造黒鉛や天然黒鉛等の黒鉛系炭素質材料は、単位体積当たりのエネルギー密度を向上させることができる材料として期待されている。
【0005】
しかしながら、黒鉛系の種々の電極材料を単独で、あるいはリチウムを吸蔵及び放出することが可能な他の負極材料と混合して負極とした非水電解液二次電池に、リチウム一次電池で一般に好んで使用されるプロピレンカーボネートを主溶媒とする電解液を用いると、黒鉛電極表面で溶媒の分解反応が激しく進行し、黒鉛電極へのスムーズなリチウムの吸蔵及び放出が不可能になる。一方、エチレンカーボネートはこのような分解が少ないことから、非水電解液二次電池の電解液の主溶媒として多用されているが、エチレンカーボネートを主溶媒としても、充放電過程において、電極表面で電解液が分解するために充放電効率が低下したり、サイクル特性が低下するといった問題がある。
【0006】
更に、電気自動車用電源としてリチウム二次電池を使用する場合、電気自動車は発進、加速時に大きなエネルギーを要し、減速時に発生する大きなエネルギーを効率よく回生させなければならないため、リチウム二次電池には、高い出力特性、入力特性が要求される。また、電気自動車は屋外で使用されるため、寒冷時期においても電気自動車が速やかに発進、加速できるためには、リチウム二次電池には、特に、低温における高い入出力特性と、高温環境下で繰り返し充放電させた場合においても、その容量の劣化が少なく、内部抵抗の増加が少ないといった良好な高温サイクル特性が要求される。
【0007】
これまで、リチウム二次電池の入出力特性、高温サイクル特性を改善するための手段として、正極や負極の活物質を始めとする様々な電池の構成要素について、それぞれ数多くの技術が検討されている。非水電解液に関する技術としても、例えば、特開平11−354156号公報、特開平11−297354号公報等、種々の技術が存在し、それなりに効果は見られるものの、満足のいく電解液は現在まで提供されるに至っていない。また、電解液中にケイ素化合物を添加する検討も数多く行われており、例えば、有機ケイ素ヘテロ環化合物を添加して濡れ性を向上させる方法(特開平3−236171号公報)、Si−N結合を有する化合物を添加してサイクル特性を向上させる方法(特開平11−16602号公報)、シリコンオイルを添加してガス発生を抑制する方法(特開平11−273732号公報)、アルコキシシランを添加して初期充放電効率を向上させる方法(特開2000−348766号公報)、Si−H結合を有する化合物を添加して遊離酸を低減する方法(特開2001−167792号公報)、更に、電極表面をシラン系化合物でアルキル化処理しガス発生を抑制する方法(特開平08−180865号公報)等が存在するが、いずれも電気自動車電源等に必須である入出力特性について何ら示していない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電気自動車電源等、高い入出力特性と良好な高温サイクル特性との両者を要求される用途に好適な非水電解液二次電池、及びそれに用いる非水電解液を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために、種々の検討及び考察を重ねた結果、電池の入出力を向上させるためには、電極表面及び電極上に形成される固体電解質界面(SEI、Solid Electrolyte Interface)を改善することが必要であると結論するに至った。更に本発明者等が種々の検討を重ねた結果、非水電解液二次電池の電解液として、特定のケイ素化合物を含有する非水電解液を使用することにより、電極表面及び電極上に形成されるSEIが改善され、特に低温における入出力特性及び高温におけるサイクル特性の向上につながることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第一の要旨は、正極、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む負極、並びに非水溶媒とリチウム塩とを含有する非水電解液とから少なくとも構成される非水電解液二次電池であって、前記非水電解液が、式(1):
【0011】
【化4】
SiFxR1 lR2 mR3 n ・・・式(1)
{化学式(1)中、R1〜R3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜12の有機基であって、xは1〜3,l,m,nは0〜3で、1≦l+m+n≦3 である。}で表されるケイ素化合物を含有することを特徴とする非水電解液二次電池に存する。
【0012】
また、本発明の第二の要旨は、正極、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む負極、並びに非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、前記非水電解液が、非水溶媒、リチウム塩、及び上記式(1)で表されるケイ素化合物を含有するケイ素化合物含有電解液を用いて形成されたものであることを特徴とする非水電解液二次電池に存する。
【0013】
更に、本発明の第三の要旨は、正極、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む負極、並びに非水溶媒とリチウム塩とを含有する非水電解液を備えた非水電解液二次電池用の非水電解液であって、上記式(1)で表されるケイ素化合物含有することを特徴とする非水電解液に存する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の非水電解液二次電池は、正極、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む負極と、非水溶媒とリチウム塩とを含有する非水電解液とから少なくとも構成され、更に該非水電解液が式(1):
【0015】
【化5】
SiFxR1 lR2 mR3 n ・・・式(1)
{式(1)中、R1〜R3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜12の有機基であって、xは1〜3,l,m,nは0〜3で、1≦l+m+n≦3 である。}で表されるケイ素化合物を含有することを特徴とする。本発明において、式(1)で表されるケイ素化合物を非水電解液が含有するとは、非水電解液二次電池が、組立直後であって、非水電解液中の式(1)で表されるケイ素化合物がどのような物質とも未反応で消費されていない状態を指す。また、本発明は、上記の非水電解液二次電池を充放電して得られる電池にも関する。
【0016】
式(1)中、炭素数1〜12の有機基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−メチル−2−メチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、トリフルオロプロピル基、3−ピロリジノプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ノルボルナニル基、等の直鎖または分岐アルキル基、フェニル基、ナフチル基、o−,p−,m−位置をメチル基で置換したフェニル基、o−,p−,m−位置をエチル基で置換したフェニル基、o−,p−,m−位置をプロピル基で置換したフェニル基、o−,p−,m−位置をメトキシ基で置換したフェニル基、o−,p−,m−位置をエトキシ基で置換したフェニル基等のアリール基、エトキシカルボニルエチル基等ののカルボニル基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等のアルケニル基、アセトキシ基、アセトキシメチル基、トリフルオロアセトキシ基等のカルボキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、アリロキシ基等のオキシ基、エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基、アリルアミノ基等のアミノ基、ベンジル基、等を挙げることができる。
【0017】
本発明に使用される化学式(1)で表されるケイ素化合物として、具体的には、トリメチルフルオロシラン、トリエチルフルオロシラン、トリプロピルフルオロシラン、トリブチルフルオロシラン、トリヘキシルフルオロシラン、トリフェニルフルオロシラン、ビニルジメチルフルオロシラン、ビニルジエチルフルオロシラン、ビニルジフェニルフルオロシラン、トリメトキシフルオロシラン、トリエトキシフルオロシラン、トリフェノキシフルオロシラン等のモノフルオロシラン、ジメチルジフルオロシラン、ジエチルジフルオロシラン、ジプロピルジフルオロシラン、ジブチルジフルオロシラン、ジヘキシルジフルオロシラン、ジシクロヘキシルフルオロシラン、ジフェニルジフルオロシラン、ジビニルジフルオロシラン、メチルフェニルジフルオロシラン、エチルフェニルジフルオロシラン、エチルビニルジフルオロシラン、ヘキシルビニルジフルオロシラン、フェニルビニルジフルオロシラン、ジエトキシジフルオロシラン等のジフルオロシラン、メチルトリフルオロシラン、エチルトリフルオロシラン、プロピルトリフルオロシラン、ブチルトリフルオロシラン、ペンチルトリフルオロシラン、ヘキシルトリフルオロシラン、フェニルトリフルオロシラン、ベンジルトリフルオロシラン、ビニルトリフルオロシラン、トリフルオロプロピルトリフルオロシラン、アリルトリフルオロシラン、p−トリルトリフルオロシラン、フェニルエチルトリフルオロシラン、ベンジルトリフルオロシラン、トリメチルシリルトリフルオロシラン、トリメチルシロキシトリフルオロシラン等のトリフルオロシランを挙げることができる。
【0018】
ケイ素化合物の沸点が低いと、揮発してしまうため電解液に所定量含有させるのが難しくなる。また、電解液に含有させた後も、充放電による電池の発熱や外部環境が高温になる様な条件下で揮発してしまう可能性がある。よって、式(1)で表されるケイ素化合物は常圧下で50℃以上の沸点を持つものが好ましい。さらに、常圧下で60℃以上の沸点をもつものが好ましい。沸点を上げるために、分子量が大きいフェニル基やヘキシル基を持つものが好ましい。これらのことからトリフェニルフルオロシラン、ジフェニルジフルオロシラン、フェニルトリフルオロシラン、ヘキシルトリフルオロシランは、沸点が高いので取り扱いしやすく好ましい。化学式(1)で表されるケイ素化合物を、2種類以上混合して使用しても良い。
【0019】
本発明に使用される式(1)で表されるケイ素化合物は、分子内に極性の高いSi−F結合を有する。式(1)で表されるケイ素化合物は、この特徴を活かして、電極表面及び電極上に形成されるSEIと反応または配位することにより、それらを改質せしめ、結果的に電池の出力を向上させる。更に、分子内のSi−F結合数は多い方が、上記作用が強化される場合があり、モノフルオロシランよりもジフルオロシランやトリフルオロシランを使用した方が高い電池性能が得られる場合がある。また、該ケイ素化合物が、分子内にフェニル基等のアリール基を有する場合は、このアリール基が充放電時電池内に発生するラジカルをトラップして、副反応を抑制し、結果的に電池の性能を向上させることができる。また、該ケイ素化合物が、分子内にビニル基等の不飽和結合を有する場合は、この不飽和結合が電解液やSEIと反応し、SEIが厚くなることにより、低温出力を低下させる場合がある。したがって、アリール基等の芳香族二重結合性の不飽和結合であれば問題ないが、ビニル基等の脂肪族系の不飽和結合を分子内に有さないものが好ましい。
【0020】
なお、式(1)で表されるケイ素化合物は、電池組立後に、初期充放電することにより速やかに、電極表面及び電極上に形成されるSEIと反応し、それ自身は、反応性の高さにもよるが、初期の段階(例えば、数回程度の充放電)で消失する場合がある。
本発明に使用される非水電解液中の式(1)で表されるケイ素化合物の含有量は、0.0001〜1mol/kgが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5mol/kg、更に好ましくは0.01〜0.2mol/kgである。式(1)のケイ素化合物がこの範囲であると、電池の入出力特性及びサイクル特性の向上効果が十分であり、また、電池性能及び電池の作動についても問題がない。
【0021】
本発明で使用される電解液の非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等の鎖状エーテル類、スルホラン、ジエチルスルホン等の含硫黄有機溶媒等が挙げられる。
これらの溶媒は、単独でも二種類以上混合してもよい。
【0022】
ここで非水溶媒は、アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレンカーボネートからなる群から選ばれた環状カーボネートと、アルキル基の炭素数が1〜4であるジアルキルカーボネートよりなる群から選ばれた鎖状カーボネートとをそれぞれ20容量%以上含有し、かつこれらのカーボネートが全体の70容量%以上を占める混合溶媒であるものが、充放電特性、電池寿命他電池性能全般を高めることから好ましい。ここで、非水溶媒の容積は、20℃ で測定した値とする。室温で固体のものは、融点まで加熱して溶融状態で測定した値を用いる。
【0023】
アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレンカーボネートの具体例としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等を挙げることができ、これらの中、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい。
アルキル基の炭素数が1〜4であるジアルキルカーボネートの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート等を挙げることができる。これらの中、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。なお混合非水溶媒中には、カーボネート以外の溶媒を含有してもよく、非水溶媒中に、通常、30重量%以下、中でも10重量%以下で、電池性能を低下させない範囲であれば、環状カーボネート、鎖状カーボネート等のカーボネート以外の溶媒を含んでいてもよい。
【0024】
本発明で使用される非水電解液には、リチウム塩が使用される。リチウム塩については、溶質として使用し得るものであれば特に限定はされないが、その具体例として例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6から選ばれる無機リチウム塩、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2 、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3等の含フッ素有機リチウム塩が挙げられる。また、Li[PF5(CF2CF2CF3)]、Li[PF4(CF2CF2CF3)2]、Li[PF3(CF2CF2CF3)3]、Li[PF5(CF2CF2CF2CF3)]、Li[PF4(CF2CF2CF2CF3)2]、Li[PF3(CF2CF2CF2CF3)3]等のフルオロアルキルフッ化リン酸リチウムを使用することもできる。これらの中、LiPF6、LiBF4が好ましい。なおこれらの溶質は、単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。
【0025】
本発明で使用される非水電解液中のリチウム塩の濃度は、0.5〜2モル/リットルであることが好ましい。0.5モル/リットル未満若しくは2モル/リットルを超えると、電解液の電気伝導率が低くなりやすく、電池の性能が低下することがある。
本発明に係る電池を構成する負極の活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出し得るものであれば特に限定されない。例えば、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物や、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素質材料、金属酸化物材料、更にはリチウム金属や種々のリチウム合金が用いられる。
これらのうち、炭素質材料としては、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチの高温熱処理によって製造された人造黒鉛及び精製天然黒鉛、又はこれらの黒鉛にピッチその他で表面処理を施したものが好ましい。
【0026】
黒鉛材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、通常0.335〜0.34nm、好ましくは0.335〜0.337nmである。また、黒鉛材料の灰分は、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下である。学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上である。
【0027】
黒鉛材料のレーザー回折・散乱法によるメジアン径は、通常1μm〜100μm、好ましくは3μm〜50μm、より好ましくは5μm〜40μm、更に好ましくは7μm〜30μmである。
黒鉛材料のBET法比表面積は、0.5m2/g〜25.0m2/gであり、好ましくは0.7m2/g〜20.0m2/g、より好ましくは1.0m2/g〜15.0m2/g、更に好ましくは1.5m2/g〜10.0m2/gである。
【0028】
黒鉛材料は、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において、1580〜1620cm−1の範囲にピークPA(ピーク強度IA)及び1350〜1370cm−1の範囲にピークPB(ピーク強度IB)の強度比R=IB/IAが0〜0.5、1580〜1620cm−1の範囲のピークの半値幅が26cm−1以下、1580〜1620cm−1の範囲のピークの半値幅は25cm−1以下がより好ましい。
【0029】
また、これらの炭素質材料に、リチウムを吸蔵及び放出可能な他の負極材を混合して用いることもできる。
炭素質材料以外のリチウムを吸蔵及び放出可能な負極材としては、Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Cu、Ni、Sr、Ba等の金属とLiの合金、又はこれら金属の酸化物等の金属酸化物材料、リチウム金属が挙げられる。このうち、Sn酸化物、Si酸化物、Al酸化物、Sn、Si、Alのリチウム合金、金属リチウムが好ましい。
これらの負極材は2種類以上混合して用いてもよい。
【0030】
本発明の非水電解液二次電池を構成する正極の材料としては特に限定されないが、好ましくはリチウム遷移金属複合酸化物を使用する。リチウム遷移金属複合酸化物としては、LiCoO2等のリチウムコバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウムニッケル複合酸化物、LiMnO2等のリチウムマンガン複合酸化物等を挙げることができるが、本発明は特に、正極の活物質としてリチウム含有量の大きいコバルト系及びニッケル系のリチウム遷移金属複合酸化物、例えば、リチウムコバルト複合酸化物及びリチウムニッケル複合酸化物を用いる場合に効果的である。これらリチウム遷移金属複合酸化物は、主体となる遷移金属元素の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属種で置き換えることにより安定化させることもでき、また好ましい。これらの正極材料は、単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。
【0031】
正極及び負極を製造する方法については、特に限定されない。例えば、活物質に、必要に応じて結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、集電体の基板に塗布し、乾燥することにより製造することができるし、また、該活物質をそのままロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極とすることもできる。結着剤については、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安定な材料であれば、特に限定されず、具体例として、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等を挙げることができる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。導電材としては、銅やニッケル等の金属材料、グラファイト、カーボンブラック等のような炭素質材料が挙げられる。特に正極については導電剤を含有させるのが好ましい。
【0032】
正極及び負極に使用される集電体については特に限定されない。正極用集電体として、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属又はその合金を用いることができる。特にアルミニウム又はその合金が軽量であるためエネルギー密度の点で好ましい。負極用集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス等の金属又はその合金を用いることができ、薄膜に加工しやすいという点とコストの点から銅が特に好ましい。
【0033】
二次電池においては、通常、正極と負極との間にセパレータが介装される。本発明の電池に使用するセパレータの材質や形状については、特に限定されないが、電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等を用いるのが好ましい。
【0034】
少なくとも負極、正極及び非水電解液を有する本発明の二次電池を製造する方法については、特に限定されず、通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
また、電池の形状については特に限定されず、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が使用可能である。
【0035】
本発明は別の態様において、正極、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む負極、非水電解液とから少なくとも構成される非水電解液二次電池であって、非水電解液が、非水溶媒とリチウム塩と式(1):
【0036】
【化6】
SiFxR1 lR2 mR3 n ・・・式(1)
{化学式(1)中、R1〜R3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜12の有機基であって、xは1〜3,l,m,nは0〜3で、1≦l+m+n≦3 である。}
で表されるケイ素化合物を含有するケイ素化合物含有電解液を用いて形成されるものであることを特徴とする非水電解液二次電池に関する。非水電解液は、上記のケイ素化合物含有電解液を用いて形成したものであれば、特に限定されず、形成された後、ケイ素化合物が分解、反応等したものであってもよい。例えば、ケイ素化合物含有電解液を用いて組み立てた非水電解液二次電池について、初期充放電を行い、式(1)のケイ素化合物が消失した状態の非水電解液を備えた非水電解液二次電池が含まれる。
【0037】
ケイ素含有電解液中の式(1)で表されるケイ素化合物の含有量は、0.0001〜1mol/kgが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5mol/kg、更に好ましくは0.01〜0.2mol/kgである。非水溶媒、リチウム塩については上記に記載したものが適用される。
【0038】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって制限されるものではない。
【0039】
実施例1
[正極の作製]
正極は、正極活物質としてのニッケル酸リチウム(LiNiO2)90重量%と、導電剤としてのアセチレンブラック5重量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した後、20μmのアルミ箔の片面に塗布して乾燥し、更にプレス機で圧延したものを直径12.5mmの打ち抜きポンチで打ち抜いて作製した。
【0040】
[負極の作製]
X線回折における格子面(002面)のd値が0.336nm、晶子サイズ(Lc)が、100nm以上(264nm)、灰分が0.04重量%、レーザー回折・散乱法によるメジアン径が17μm、BET法比表面積が8.9m2/g、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において1580〜1620cm−1の範囲のピークPA(ピーク強度IA)および1350〜1370cm−1の範囲のピークPB(ピーク強度IB)の強度比R=IB/IAが0.15、1580〜1620cm−1の範囲のピークの半値幅が22.2cm−1である人造黒鉛粉末KS−44(ティムカル社製、商品名) 94重量部に、蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を固形分で6重量部となるように加え、ディスパーザーで混合し、スラリー状としたものを負極集電体である厚さ18μmの銅箔上に均一に塗布し、乾燥後、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて電極を作製し負極とした。
【0041】
[電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下で、精製したエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びジエチルカーボネート(DEC)の体積比3:3:4の混合溶媒に、1モル/リットルの濃度で、充分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させ、更にトリフェニルフルオロシランを、非水混合溶媒とリチウム塩との合計重量に対し、0.02mol/kgの割合で添加し調製した。
【0042】
[電池の組立]
アルゴン雰囲気のドライボックス内で、正極導電体を兼ねるステンレス鋼製の缶体に上記正極を収容し、その上に上記電解液を含浸させたセパレータを介して上記負極を配置した。この缶体と負極導電体を兼ねる封口板とを、絶縁用のガスケットを介してかしめて密封し、コイン型電池を作製した。
【0043】
[電池の評価]
1)初期充放電 実際の充放電サイクルを経ていない新たな電池に対して、25℃ で充放電を行い、この時の充電量を100%として、リチウム二次電池の充電状態を40%に調整した。
2)初期出力評価 −30℃ の低温環境下で、1)の状態の電池を、1/8C、1/4C、1/2C、1.5C、2.5C、3.5C、5C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする。以下同様とする)の各電流値で10秒間定電流放電させ、各々の条件の放電における2秒後の電池電圧の降下を測定し、それらの測定値から放電下限電圧を3.0Vとした際に、2秒間に流すことのできる電流値Iを算出し、3.0×I(W)という式で計算される値をそれぞれの電池の初期出力とした。結果を表1に示す。
【0044】
3)高温サイクル試験 高温サイクル試験は、リチウム二次電池の実使用上限温度と目される60℃ の高温環境下にて行った。2)で出力評価の終了した電池に対し、充電上限電圧4.1Vまで2Cの定電流定電圧法で充電した後、放電終止電圧3.0Vまで2Cの定電流で放電する充放電サイクルを1サイクルとし、このサイクルを100サイクルまで繰り返した。
【0045】
4)サイクル後充放電 3)でサイクル試験の終了した電池について、25℃ で充放電を行い、この時の充電量を100%として、リチウム二次電池の充電状態を40%に調整した。
5)サイクル後出力評価 4)の状態の電池を2)と同様に評価し、サイクル後出力とした。−30℃ の結果を表1に示す。
【0046】
実施例2
実施例1において、電解液調製の際、トリフェニルフルオロシランの代わりにジフェニルジフルオロシランを非水混合溶媒とリチウム塩との合計重量に対し、0.02mol/kgの割合で添加したこと以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0047】
実施例3
実施例1において、電解液調製の際、トリフェニルフルオロシランの代わりにフェニルトリフルオロシランを非水混合溶媒とリチウム塩との合計重量に対し0.02mol/kgの割合で添加したこと以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0048】
実施例4
実施例1において、電解液調製の際、トリフェニルフルオロシランの代わりにヘキシルトリフルオロシランを非水混合溶媒とリチウム塩との合計重量に対し0.02mol/kgの割合で添加したこと以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0049】
比較例1
実施例1において、電解液調製の際、トリフェニルフルオロシランを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0050】
比較例2
実施例1において、電解液調製の際、トリフェニルフルオロシランの代わりにトリエチルフルオロシランを非水混合溶媒とリチウム塩との合計重量に対し、0.02mol/kgの割合で添加したこと以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0051】
特開2001−68153号公報では、フッ酸抽出剤としてシラン類が電池の充放電容量サイクル特性に効果的であり、例えばトリエチルシランを用いた場合のフッ酸抽出の反応が式(2)で表されるとしている。
【0052】
【化7】
Et3SiH + HF → Et3SiF + H2 ・・・式(2)
前公報は、式(2)の生成物とされるトリエチルフルオロシランについては全く記載がなく、さらに表1から明らかなように、いくらトリエチルシランを使用したところで、本発明で我々が主目的とする入出力特性に対し、全く効果がないことから、我々が前公報から本発明の化合物の効果を予想できなかったことは明らかである。
【0053】
表1から、化学式(1)で表されるケイ素化合物を適量含有する非水電解液を用いた二次電池は、低温における入出力特性に優れ、高温下におけるサイクル後もその特性が維持される。
【0054】
【発明の効果】
本発明により、電気自動車電源等、高い入出力特性と良好な高温サイクル特性との両者を要求される用途に好適な非水電解液二次電池及び非水電解液を提供することができる。
【0055】
【表1】
Claims (8)
- 請求項1に記載の非水電解液二次電池を、充放電することにより得られる非水電解液二次電池。
- ケイ素化合物含有電解液中の前記ケイ素化合物の含有量が、0.0001〜1mol/kgである、請求項3に記載の非水電解液二次電池。
- 式(1)で表されるケイ素化合物が、常圧下で沸点が50℃以上であることを特徴とする請求項1又は3に記載の非水電解液二次電池。
- 式(1)で表されるケイ素化合物が、常圧下で沸点が50℃以上であることを特徴とする請求項5に記載の非水電解液。
- 非水電解液中の式(1)で表されるケイ素化合物の含有量が0.0001〜1mol/kgである、請求項5〜7のいずれかに記載の非水電解液。
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