JP2004066917A - 船舶用電源システム - Google Patents
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Abstract
【課題】省エネ性および経済性と共に環境保全性に優れる船舶用電源システムを提供する。
【解決手段】主機関の動力を水中回転翼の駆動力として船舶10の推進力を得ると共に、船舶用の主駆動発電装置13としての補助機関14、15を備えた船舶用電源システムにおいて、前記船舶用の発電装置13として、前記内燃機関14、15と共に燃料電池1を備え、この燃料電池1の発電電力を停泊中船舶の電力源として使用する。また、発電中に当該燃料電池1より排出される水蒸気を冷却して船舶内に貯留される清水の補充用として使用する。また、排気ガス中の二酸化炭素は海水中に溶解して船外に排出する。
【選択図】 図3
【解決手段】主機関の動力を水中回転翼の駆動力として船舶10の推進力を得ると共に、船舶用の主駆動発電装置13としての補助機関14、15を備えた船舶用電源システムにおいて、前記船舶用の発電装置13として、前記内燃機関14、15と共に燃料電池1を備え、この燃料電池1の発電電力を停泊中船舶の電力源として使用する。また、発電中に当該燃料電池1より排出される水蒸気を冷却して船舶内に貯留される清水の補充用として使用する。また、排気ガス中の二酸化炭素は海水中に溶解して船外に排出する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶用電源システムに関し、特に、ディーゼルエンジン等の内燃機関を用いた発電機と共に燃料電池を搭載して構成した船舶用電源システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、タンカー、輸送船等の大型船舶においては、燃料タンクから供給されるガソリン、軽油、灯油、重油(A重油、B重油、C重油)等を燃料とする蒸気タービンやガスタービン等の機関、ディーゼルエンジン等の内燃機関(主内燃機関)を備え、その回転駆動力を水中回転翼(プロペラ)に伝達して船舶の推進力を得るようにした形式、或いは、プロペラを駆動する原動機として電動機を用いた形式が一般的である。
【0003】
また、航行中における機関用補機器や雑用補機器(各種潤滑ポンプや給水ポンプ、清浄機、加熱器、冷凍機、ブロワ等)の駆動電力源を始めとして、停泊時の照明、空調等、或いは荷役設備の駆動、出港時のウインチ駆動等、船舶内で消費される電力量も膨大であり、これらは全て上記同様の補助内燃機関を用いた発電装置により供給されている。また、通常運航時や出入港時、或いは急速前進後退時等の出力上昇や減少等といったように、一般的に航行中船舶の発電装置に対する負荷変動は極めて大きいとされている。
【0004】
勿論、上記した船舶推進用の主内燃機関についても同様であるが、従来より、発電装置に用いる燃料の種類としては、専ら重油を用いたディーゼルエンジン発電機が使用されている。これは、ディーゼルエンジンが上記した蒸気タービンやガスタービンに比べて熱効率の良い機関であり、よって燃料消費量の節約ができ、燃料経済性の面から運航コストにメリットを生じるからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記各発電方式による発電効率を見ると、ガスタービンや蒸気タービンを用いる方式では精々25〜30%程度、また、比較的熱効率が良いとされるディーゼルエンジンを用いる方式で精々35〜45%程度と何れも低効率であり、加えて、発電時の燃焼により発生する排気ガス中にスモーク、パーティクル、二酸化炭素(CO2 )、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の環境汚染が懸念される有害物質が多く含まれており、極めて環境負荷の大きい発電システムとなっていた。
特に、二酸化炭素(CO2 )は、温室効果による地球温暖化の一つの要因といわれており、近年、その排出量の規制が厳しさを増している。
【0006】
加えて、これらの発電機は、上記環境汚染の問題の他、発電の際にシリンダー内から発生する機械的な振動や騒音が極めて大きいといった欠点もあり、特に、船舶の場合では、入港・停泊中であっても電力を得るために発電機の作動を停止しないのが常であるから、上記環境汚染問題に加え、船舶からの騒音や振動が近隣各所に与える影響は大きいものであった。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題に鑑みて成されたもので、省エネ性および経済性と共に環境保全性に優れる船舶用電源システムを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、主機関の動力を水中回転翼の駆動力として船舶の推進力を得ると共に、船舶用の駆動発電装置としての補助機関を備えた船舶用電源システムにおいて、前記船舶用の発電装置として、前記補助機関と共に燃料電池を備え、当該燃料電池が、船舶停泊中における最小必要電力を賄うに十分な発電量を有することを特徴としている。
【0009】
停泊時、船内の電力消費源は、主に照明や空調、各種電子機器等に限られており、運航中に比べて極めて小容量であり、且つ、負荷変動は極めて少ないことから、これらの駆動電力を燃料電池の発電で賄うことができることに着目した。これにより、従来は停泊中も停止されなかったディーゼルエンジンによる発電を停止することができるため、環境汚染や振動、騒音等の問題を解消することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の船舶用電源システムにおいて、前記燃料電池の発電時に当該燃料電池より排出される水蒸気を冷却して船舶内に貯留される清水の補充用として使用することを特徴としている。
【0011】
所謂、清水(真水)は船内の所定部位に設置した清水タンク内に貯留されて、飲料水、ボイラー用の水(ボイラーは各種加熱器の熱源としての蒸気を送る他、厨房や暖房、燃料タンク等の加熱に使用する蒸気を供給する)、冷却水、その他船室サービス用水等として大量に使用される。この際に消費された清水は別途購入したり、船内に造水器(海水より真水を生成する)を設けてその都度補充しているのが現状で、清水タンクの占める容積は極めて大きいものである。通常、清水の貯留量は数十トン程になる。
そこで、本発明では、発電の際に燃料電池より排出される大量の水をこの清水タンクに逐次補充するようにしている。これにより、清水タンクを小型化でき、その分のスペースを貨物等の積載場所に当てることができる。因みに、燃料電池では、燃料にメタンを用いた場合、燃料1リットルに対し、水2〜3リットルを得ることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2の何れかに記載の船舶用電源システムにおいて、前記燃料電池の発電時に当該燃料電池より排出される排気ガスをシーチェスト(海水吸入口)に噴出して当該シーチェストの洗浄に使用すると共に、この噴出により前記排気ガス中の二酸化炭素を海水中に溶解して船外に排出することを特徴としている。
【0013】
船内の洗浄用や主機関、補助機関、各種補機器の冷却用等に使用する海水の吸入口として船舶の左舷、右舷の適所にシーチェストが装備されているが、長期航海中に、その海藻やゴミ等の侵入防止構造に貝類や海藻が付着する。従来はこれに海水を噴出して付着物を除去するようにしている。
本発明では、燃料電池より発生する高温の排気ガス(二酸化炭素)を付着物の洗浄に使用する。この洗浄の際に排気ガス中の二酸化炭素が海水中に溶解・固定されて船外に排出される。特に、海水は弱アルカリ性であるから熔解し易く、好都合である。これにより、少なくとも、燃料電池より発生する二酸化炭素の排出量を低減でき、クリーンな電源システムの実現に貢献できる。
【0014】
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1から請求項3までの何れかに記載の船舶用電源システムにおいて、前記補助機関と共に前記燃料電池と二次電池を併用した発電装置を備えることを特徴としている。
【0015】
一般的に、燃料電池の発電効率は高効率であるが、特に、固体酸化物形燃料電池の場合、反応温度は700〜1000℃と高いため、起動前の昇温に時間を要し(例えば、冷状態から700℃への昇温で約4H)起動性に劣るというデメリットもある。そこで、燃料電池と二次電池を併用して燃料電池の余剰電力を二次電池に充電しておき、その電力を燃料電池の起動時に使用することにより、このような起動性の問題は解消できる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4までの何れかに記載の船舶用電源システムにおいて、前記燃料電池が、固体酸化物形燃料電池であることを特徴としている。
【0017】
固体酸化物形燃料電池は、発電効率も良く、且つ、反応温度も高いことから、高温の排熱が得られる。よって、この排熱を船内の各所で使用する熱源に有効利用することが可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図3に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
ここで、図1は船舶の左舷を示す図、図2は船尾より見た内部構造図、図3は電源システム構成図である。
【0019】
図1によれば、船舶10の後方部にプロペラ11の駆動源として主内燃機関12(例えば、ディーゼルエンジン)と、この内燃機関用の補機器や雑用補機器等に駆動電力を供給する発電装置13が設置されている。また、右舷や左舷の高位、低位の適所に、船内での洗浄用、冷却用、冷房用等に使用するための海水の取り入れ口となる複数のシーチェスト22(格子状の海水吸入口)が設けてある。
【0020】
図2に示すように、本実施形態では、上記した発電装置13として、従来、船舶10が装備している補助内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)による発電機24、25の2基と、燃料電池1およびこの燃料電池1に併設された二次電池2とを備え、本船舶10の電源システムを構成している。
【0021】
更に、図2によれば、船内の上部中央にボイラー3が設置されている。このボイラー3は、機関部に各種加熱器の熱源としての蒸気を送る他、厨房や暖房、船体タンク(例えば、後述する燃料タンク)の加熱などに使用される蒸気を供給するもので、重油を燃料とする重油炊きボイラーや、ディーゼル機関の排気ガスを有効利用する廃熱ボイラー等がある。
【0022】
また、左舷には、航行中に飲料水、ボイラー用の水、冷却水、その他船室サービス用水等として使用される清水を貯留しておく清水タンク17が配設されている。通常、この清水は、立ち寄る港で別途購入したり、或いは、船内に設けた造水器(図示せず)により生成することにより常に大量に確保されており、その貯留量は通常の大型船舶においては数十トン程に上ると言われている。
【0023】
一方、右舷には、主内燃機関12や補助内燃機関14、15等の燃料を貯蔵する燃料タンク18が配設されている。本実施形態では、燃料としてC重油を使用している。重油は粘度の低い順にA重油、B重油、C重油に分けることができ、特に大型ディーセル機関等では、運航コストの軽減を図るため安価なC重が使用されている。また、船底に既述した船舶推進用の駆動力を得る主内燃機関12が設置されている。
【0024】
ところで、燃料電池1は、空気極側に酸素(空気)を、燃料極側に燃料ガス(H2 、CO2 、CH4 等)を供給して燃料を電気化学的に連続的に反応させ、燃料極に電子を放出することにより直流電気出力を得る次世代の発電装置である。
【0025】
燃料電池1としては、溶融炭酸塩形(MCFC)、燐酸形(PAFC)、固体高分子形(PEFC)、固体酸化物形(SOFC)等公知のものが利用可能であるが、本実施形態では、高い排熱が得られ、且つ、排ガス中に比較的濃度の高い二酸化炭素を含む固体酸化物形燃料電池を使用している。因みに、燃料にH2 を用いた場合の電極反応は次のようになる。
空気極: 1/2O2 + 2e− → O2−
燃料極: H2 + O2− → H2 O+2e−
全体 : H2 + 1/2 O2 → H2 O
【0026】
また、固体酸化物形燃料電池の場合、燃料極上でメタンが水素に分解する反応と上記燃料極の反応が同時に起こるので、メタンを直接的に燃料として使用する内部改質式の燃料電池とすることができる。この時の反応は次のようになる。
空気極: 1/2O2 +2e− → O2−
燃料極:メタンの分解: CH4 +2H2O → 4H2+CO2
:水素酸化反応: H2 +O2− → H2 O
:燃料極の反応: CH4 +4O2− → 4H2 O+CO2
全体 : CH4 +2O2 → 2H2 O+CO2
【0027】
このように、燃料電池は直流の発電出力と共に、反応生成物としてH2 O(高温水蒸気)とCO2 ガスのみを生じるクリーンな発電装置である。
【0028】
そこで、本発明では、船舶用の電源システムとして上記した発電用の補内燃機関24、25に加え、このクリーンな固体酸化物形燃料電池1を搭載して補助内燃機関による発電機と燃料電池の併用による新たな船舶用の電源システムを構成した。
【0029】
以下、本実施形態の船舶用電源システムの構成を図3に基づいて説明する。
【0030】
尚、図3では、主として燃料電池1で生じた電気エネルギー、熱エネルギー(排熱)や副生成物(H2 O(高温水蒸気)やCO2 )等の有効処理(コージェネレーション化)に係わる部分の構成について記載されている。
【0031】
即ち、図3に示す電源システムは、発電装置13と、例えば、清水タンク17〜清水ポンプ20〜ボイラー16〜燃料タンク18〜コンデンサー19〜清水タンク27に至る燃料タンク加熱用清水の循環系と、リザーバ24〜エジェクタ25〜シーチェスト22に至る洗浄用圧縮空気によるシーチェスト22の洗浄機構等を備えている。
【0032】
本実施形態の発電装置13は、ディーゼルエンジンを用いた発電機14、15と固体酸化物形燃料電池1を有し、その電気出力に二次電池2が接続されて、燃料電池1の余剰電力を逐次充電できるようになっている。また、燃料電池1や二次電池2の電気出力はインバータ4を介して交流に変換され、船内の各所に給電される。
【0033】
上記清水の循環系では、清水タンク17に貯留されている清水が清水ポンプ20によりボイラー16に供給される。ボイラー16では、C重油炊き、或いはディーゼル機関の排気ガス等を熱源として、ボイラー内の清水を加熱して高温蒸気に変える。配管を通して燃料タンク18の重油内を通過した高温蒸気は高粘度のC重油を加熱しその粘性を低下させる。低粘度となったC重油は主内燃機関12へ供給される。
C重油との熱交換を終えた蒸気は一旦コンデンサ19に貯留されて、シーチェスト22から海水ポンプ21にて吸入された海水により冷却されて水となり、再度清水タンク17に供給される。尚、冷却用の海水は熱交換後、海水中に排出される。
このように、タンク内の清水は常時船内各部を循環し、上記した用途やその他の様々な用途に使用されながら徐々に消費されていく。
【0034】
次に、シーチェスト22の洗浄機構においては、リザーバ24には圧縮空気が充填されている。充填圧力は、例えば、20〜30kg/cm2 程度であり、シーチェスト22から各所のリザーバに補給されるようになっている。
【0035】
船内の洗浄用や冷却用等に使用する海水の吸入口として船舶の左舷、右舷の適所にシーチェスト22が装備されていることは既述の通りである。このシーチェスト22は海水吸入時に海藻やゴミ等が船内に侵入するのを防止するために格子構造とされているが、長期航海中にあって、その格子構造に貝類や海藻類、或いはゴミ等が付着し、海水の船内取り入れに悪影響を及ぼすことになる。
このため、コンプレッサ23により前記リザーバ24に圧縮空気を充填しておき、エジェクタ25を介して高圧空気を噴出し、シーチェスト22の付着物を除去するといった洗浄作業が定期的に行われる。
【0036】
ところで、固体酸化物形燃料電池1から排出される排気ガス(高温度の水蒸気や空気、CO2 等)は一旦冷却凝縮器3に導入されて水とCO2 に分離される。
水はコンデンサー19に導入され、前記したボイラー16からの水蒸気と合流し、海水で冷却されながら清水タンク17に貯留される。因みに、燃料電池1の場合、燃料(例えば、メタン)1リットルに対し、水約2〜3リットルを得ることができる。
従って、常時運転の燃料電池にあっては絶えず相当量の清水を補充することが可能となる。このように、燃料電池1より排出される大量の水を清水タンク17に逐次補充することにより、従来、船内で相当容量を占める清水タンク17を小型化でき、その分のスペースを貨物等の積載場所等に当てることができる。
【0037】
また、冷却凝縮器3にて分離されたCO2 は、前記エジェクタ25に導入され、リザーバ24より供給される圧縮空気と共に海水中にバブリングされる。このバブリングによりCO2 が海水中に溶解・固定してシーチェスト22の洗浄作業と共に燃料電池1より発生するCO2 は船外に排出される。特に、海水はpH=8程度と弱アルカリ性であるからCO2 が海水中に溶け込み易く、好都合である。これにより、少なくとも、燃料電池1より排出されるCO2の約20〜50%を海水中に固定できることになり、クリーンな電源システムの実現に貢献できる。
【0038】
また、当然のことながら、燃料電池1の発電電力は船舶内での電力源として使用することができる。特に、停泊中船舶の主な電力負荷は船室の照明や空調、電子機器等であり、運航中に使用される電力に比べて極めて小容量で、しかも、負荷変動も極めて少ないため、燃料電池1の電力利用は船舶停泊時に最適である。
従来はこの小容量の電力を得るため、停泊中もディーゼルエンジンによる発電を停止することができなかったが、本実施形態では、少なくとも停泊中はディーゼルエンジンによる発電を停止し、燃料電池1からの電力で全てを賄うようにした。これにより、従来問題となった停泊中の環境汚染や振動、騒音等の問題を解消することができる。
さらに、燃料電池1と二次電池2を併用して、航行中等に燃料電池1の余剰電力を充電しておくことにより、燃料電池1の起動性の問題も解消できる。即ち、燃料電池1の立ち上げ時は二次電池2からの電力を使用すれば良い。
【0039】
特に、燃料電池1として固体酸化物形を使用することにより、50〜60%といった高い発電効率が得られ、且つ、燃料電池1の電気出力当たりのCO2 の排出量はディーゼルエンジンによる発電の場合に比べて約1/2に低減できる。
また、高温作動型の固定酸化物形燃料電池の反応温度は1000℃以上と極めて高いことから、その排熱を誘導してボイラー16等の熱源に利用することも勿論可能である。
【0040】
以上のように、燃料電池1の発電作用で生じた電気エネルギーや熱エネルギーを船内で有効に活用すると共に、燃料電池より排出される環境負荷の大きいCO2 についても、海水中に固定して破棄することにより、省エネ性、経済性と共に環境保全性に優れる船舶用電源システムを実現することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明によれば、燃料電池の発電電力を停泊中船舶の電力源として使用するようにしたので、従来は停止されなかったディーゼルエンジンによる発電を停止することができ、よって、停泊中の環境汚染や振動、騒音等の問題を解消することができる。
【0042】
また、請求項2に記載の本発明によれば、発電装置として内燃機関と共に燃料電池を備え、燃料電池より排出される水を清水タンクに逐次補充するようにしたので、清水タンクを小型化でき、その分、貨物の積載量を増やすことができる。
【0043】
また、請求項3に記載の本発明によれば、発電装置として、内燃機関と共に燃料電池を備え、燃料電池より排出されるCO2 を海水中に溶解して船外に排出するようにしたので、燃料電池より発生するCO2 の排出量を低減でき、クリーンな電源システムの実現に貢献できる。
【0044】
また、請求項4に記載の本発明によれば、燃料電池と二次電池を併用したので、燃料電池の余剰電力をこの二次電池に充電しておくことにより、燃料電池の起動性の問題を解消することができる。
【0045】
また、請求項5に記載の本発明によれば、燃料電池として固体酸化物形燃料電池を用いたので、高い発電効率が得られると共に、燃料電池からの高温排熱を船舶内の熱源として有効利用することができる。
【0046】
このような、燃料電池の排熱や生成水の利用、およびCO2 排出量の低減処理は船舶用電源システムのコージェネレーション化に大いに貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された船舶の左舷を示す図。
【図2】同、船舶の船尾より見た内部構造図。
【図3】船舶用電源システムの構成を示す図。
【符号の説明】
1 燃料電池( 固体酸化物形燃料電池)
10 船舶
11 水中回転翼(プロペラ)
12 主内燃機関(ディーゼルエンジン)
13 発電装置
14、15 補助内燃機関(ディーゼルエンジン)
22 シーチェスト
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶用電源システムに関し、特に、ディーゼルエンジン等の内燃機関を用いた発電機と共に燃料電池を搭載して構成した船舶用電源システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、タンカー、輸送船等の大型船舶においては、燃料タンクから供給されるガソリン、軽油、灯油、重油(A重油、B重油、C重油)等を燃料とする蒸気タービンやガスタービン等の機関、ディーゼルエンジン等の内燃機関(主内燃機関)を備え、その回転駆動力を水中回転翼(プロペラ)に伝達して船舶の推進力を得るようにした形式、或いは、プロペラを駆動する原動機として電動機を用いた形式が一般的である。
【0003】
また、航行中における機関用補機器や雑用補機器(各種潤滑ポンプや給水ポンプ、清浄機、加熱器、冷凍機、ブロワ等)の駆動電力源を始めとして、停泊時の照明、空調等、或いは荷役設備の駆動、出港時のウインチ駆動等、船舶内で消費される電力量も膨大であり、これらは全て上記同様の補助内燃機関を用いた発電装置により供給されている。また、通常運航時や出入港時、或いは急速前進後退時等の出力上昇や減少等といったように、一般的に航行中船舶の発電装置に対する負荷変動は極めて大きいとされている。
【0004】
勿論、上記した船舶推進用の主内燃機関についても同様であるが、従来より、発電装置に用いる燃料の種類としては、専ら重油を用いたディーゼルエンジン発電機が使用されている。これは、ディーゼルエンジンが上記した蒸気タービンやガスタービンに比べて熱効率の良い機関であり、よって燃料消費量の節約ができ、燃料経済性の面から運航コストにメリットを生じるからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記各発電方式による発電効率を見ると、ガスタービンや蒸気タービンを用いる方式では精々25〜30%程度、また、比較的熱効率が良いとされるディーゼルエンジンを用いる方式で精々35〜45%程度と何れも低効率であり、加えて、発電時の燃焼により発生する排気ガス中にスモーク、パーティクル、二酸化炭素(CO2 )、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の環境汚染が懸念される有害物質が多く含まれており、極めて環境負荷の大きい発電システムとなっていた。
特に、二酸化炭素(CO2 )は、温室効果による地球温暖化の一つの要因といわれており、近年、その排出量の規制が厳しさを増している。
【0006】
加えて、これらの発電機は、上記環境汚染の問題の他、発電の際にシリンダー内から発生する機械的な振動や騒音が極めて大きいといった欠点もあり、特に、船舶の場合では、入港・停泊中であっても電力を得るために発電機の作動を停止しないのが常であるから、上記環境汚染問題に加え、船舶からの騒音や振動が近隣各所に与える影響は大きいものであった。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題に鑑みて成されたもので、省エネ性および経済性と共に環境保全性に優れる船舶用電源システムを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、主機関の動力を水中回転翼の駆動力として船舶の推進力を得ると共に、船舶用の駆動発電装置としての補助機関を備えた船舶用電源システムにおいて、前記船舶用の発電装置として、前記補助機関と共に燃料電池を備え、当該燃料電池が、船舶停泊中における最小必要電力を賄うに十分な発電量を有することを特徴としている。
【0009】
停泊時、船内の電力消費源は、主に照明や空調、各種電子機器等に限られており、運航中に比べて極めて小容量であり、且つ、負荷変動は極めて少ないことから、これらの駆動電力を燃料電池の発電で賄うことができることに着目した。これにより、従来は停泊中も停止されなかったディーゼルエンジンによる発電を停止することができるため、環境汚染や振動、騒音等の問題を解消することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の船舶用電源システムにおいて、前記燃料電池の発電時に当該燃料電池より排出される水蒸気を冷却して船舶内に貯留される清水の補充用として使用することを特徴としている。
【0011】
所謂、清水(真水)は船内の所定部位に設置した清水タンク内に貯留されて、飲料水、ボイラー用の水(ボイラーは各種加熱器の熱源としての蒸気を送る他、厨房や暖房、燃料タンク等の加熱に使用する蒸気を供給する)、冷却水、その他船室サービス用水等として大量に使用される。この際に消費された清水は別途購入したり、船内に造水器(海水より真水を生成する)を設けてその都度補充しているのが現状で、清水タンクの占める容積は極めて大きいものである。通常、清水の貯留量は数十トン程になる。
そこで、本発明では、発電の際に燃料電池より排出される大量の水をこの清水タンクに逐次補充するようにしている。これにより、清水タンクを小型化でき、その分のスペースを貨物等の積載場所に当てることができる。因みに、燃料電池では、燃料にメタンを用いた場合、燃料1リットルに対し、水2〜3リットルを得ることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2の何れかに記載の船舶用電源システムにおいて、前記燃料電池の発電時に当該燃料電池より排出される排気ガスをシーチェスト(海水吸入口)に噴出して当該シーチェストの洗浄に使用すると共に、この噴出により前記排気ガス中の二酸化炭素を海水中に溶解して船外に排出することを特徴としている。
【0013】
船内の洗浄用や主機関、補助機関、各種補機器の冷却用等に使用する海水の吸入口として船舶の左舷、右舷の適所にシーチェストが装備されているが、長期航海中に、その海藻やゴミ等の侵入防止構造に貝類や海藻が付着する。従来はこれに海水を噴出して付着物を除去するようにしている。
本発明では、燃料電池より発生する高温の排気ガス(二酸化炭素)を付着物の洗浄に使用する。この洗浄の際に排気ガス中の二酸化炭素が海水中に溶解・固定されて船外に排出される。特に、海水は弱アルカリ性であるから熔解し易く、好都合である。これにより、少なくとも、燃料電池より発生する二酸化炭素の排出量を低減でき、クリーンな電源システムの実現に貢献できる。
【0014】
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1から請求項3までの何れかに記載の船舶用電源システムにおいて、前記補助機関と共に前記燃料電池と二次電池を併用した発電装置を備えることを特徴としている。
【0015】
一般的に、燃料電池の発電効率は高効率であるが、特に、固体酸化物形燃料電池の場合、反応温度は700〜1000℃と高いため、起動前の昇温に時間を要し(例えば、冷状態から700℃への昇温で約4H)起動性に劣るというデメリットもある。そこで、燃料電池と二次電池を併用して燃料電池の余剰電力を二次電池に充電しておき、その電力を燃料電池の起動時に使用することにより、このような起動性の問題は解消できる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4までの何れかに記載の船舶用電源システムにおいて、前記燃料電池が、固体酸化物形燃料電池であることを特徴としている。
【0017】
固体酸化物形燃料電池は、発電効率も良く、且つ、反応温度も高いことから、高温の排熱が得られる。よって、この排熱を船内の各所で使用する熱源に有効利用することが可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図3に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
ここで、図1は船舶の左舷を示す図、図2は船尾より見た内部構造図、図3は電源システム構成図である。
【0019】
図1によれば、船舶10の後方部にプロペラ11の駆動源として主内燃機関12(例えば、ディーゼルエンジン)と、この内燃機関用の補機器や雑用補機器等に駆動電力を供給する発電装置13が設置されている。また、右舷や左舷の高位、低位の適所に、船内での洗浄用、冷却用、冷房用等に使用するための海水の取り入れ口となる複数のシーチェスト22(格子状の海水吸入口)が設けてある。
【0020】
図2に示すように、本実施形態では、上記した発電装置13として、従来、船舶10が装備している補助内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)による発電機24、25の2基と、燃料電池1およびこの燃料電池1に併設された二次電池2とを備え、本船舶10の電源システムを構成している。
【0021】
更に、図2によれば、船内の上部中央にボイラー3が設置されている。このボイラー3は、機関部に各種加熱器の熱源としての蒸気を送る他、厨房や暖房、船体タンク(例えば、後述する燃料タンク)の加熱などに使用される蒸気を供給するもので、重油を燃料とする重油炊きボイラーや、ディーゼル機関の排気ガスを有効利用する廃熱ボイラー等がある。
【0022】
また、左舷には、航行中に飲料水、ボイラー用の水、冷却水、その他船室サービス用水等として使用される清水を貯留しておく清水タンク17が配設されている。通常、この清水は、立ち寄る港で別途購入したり、或いは、船内に設けた造水器(図示せず)により生成することにより常に大量に確保されており、その貯留量は通常の大型船舶においては数十トン程に上ると言われている。
【0023】
一方、右舷には、主内燃機関12や補助内燃機関14、15等の燃料を貯蔵する燃料タンク18が配設されている。本実施形態では、燃料としてC重油を使用している。重油は粘度の低い順にA重油、B重油、C重油に分けることができ、特に大型ディーセル機関等では、運航コストの軽減を図るため安価なC重が使用されている。また、船底に既述した船舶推進用の駆動力を得る主内燃機関12が設置されている。
【0024】
ところで、燃料電池1は、空気極側に酸素(空気)を、燃料極側に燃料ガス(H2 、CO2 、CH4 等)を供給して燃料を電気化学的に連続的に反応させ、燃料極に電子を放出することにより直流電気出力を得る次世代の発電装置である。
【0025】
燃料電池1としては、溶融炭酸塩形(MCFC)、燐酸形(PAFC)、固体高分子形(PEFC)、固体酸化物形(SOFC)等公知のものが利用可能であるが、本実施形態では、高い排熱が得られ、且つ、排ガス中に比較的濃度の高い二酸化炭素を含む固体酸化物形燃料電池を使用している。因みに、燃料にH2 を用いた場合の電極反応は次のようになる。
空気極: 1/2O2 + 2e− → O2−
燃料極: H2 + O2− → H2 O+2e−
全体 : H2 + 1/2 O2 → H2 O
【0026】
また、固体酸化物形燃料電池の場合、燃料極上でメタンが水素に分解する反応と上記燃料極の反応が同時に起こるので、メタンを直接的に燃料として使用する内部改質式の燃料電池とすることができる。この時の反応は次のようになる。
空気極: 1/2O2 +2e− → O2−
燃料極:メタンの分解: CH4 +2H2O → 4H2+CO2
:水素酸化反応: H2 +O2− → H2 O
:燃料極の反応: CH4 +4O2− → 4H2 O+CO2
全体 : CH4 +2O2 → 2H2 O+CO2
【0027】
このように、燃料電池は直流の発電出力と共に、反応生成物としてH2 O(高温水蒸気)とCO2 ガスのみを生じるクリーンな発電装置である。
【0028】
そこで、本発明では、船舶用の電源システムとして上記した発電用の補内燃機関24、25に加え、このクリーンな固体酸化物形燃料電池1を搭載して補助内燃機関による発電機と燃料電池の併用による新たな船舶用の電源システムを構成した。
【0029】
以下、本実施形態の船舶用電源システムの構成を図3に基づいて説明する。
【0030】
尚、図3では、主として燃料電池1で生じた電気エネルギー、熱エネルギー(排熱)や副生成物(H2 O(高温水蒸気)やCO2 )等の有効処理(コージェネレーション化)に係わる部分の構成について記載されている。
【0031】
即ち、図3に示す電源システムは、発電装置13と、例えば、清水タンク17〜清水ポンプ20〜ボイラー16〜燃料タンク18〜コンデンサー19〜清水タンク27に至る燃料タンク加熱用清水の循環系と、リザーバ24〜エジェクタ25〜シーチェスト22に至る洗浄用圧縮空気によるシーチェスト22の洗浄機構等を備えている。
【0032】
本実施形態の発電装置13は、ディーゼルエンジンを用いた発電機14、15と固体酸化物形燃料電池1を有し、その電気出力に二次電池2が接続されて、燃料電池1の余剰電力を逐次充電できるようになっている。また、燃料電池1や二次電池2の電気出力はインバータ4を介して交流に変換され、船内の各所に給電される。
【0033】
上記清水の循環系では、清水タンク17に貯留されている清水が清水ポンプ20によりボイラー16に供給される。ボイラー16では、C重油炊き、或いはディーゼル機関の排気ガス等を熱源として、ボイラー内の清水を加熱して高温蒸気に変える。配管を通して燃料タンク18の重油内を通過した高温蒸気は高粘度のC重油を加熱しその粘性を低下させる。低粘度となったC重油は主内燃機関12へ供給される。
C重油との熱交換を終えた蒸気は一旦コンデンサ19に貯留されて、シーチェスト22から海水ポンプ21にて吸入された海水により冷却されて水となり、再度清水タンク17に供給される。尚、冷却用の海水は熱交換後、海水中に排出される。
このように、タンク内の清水は常時船内各部を循環し、上記した用途やその他の様々な用途に使用されながら徐々に消費されていく。
【0034】
次に、シーチェスト22の洗浄機構においては、リザーバ24には圧縮空気が充填されている。充填圧力は、例えば、20〜30kg/cm2 程度であり、シーチェスト22から各所のリザーバに補給されるようになっている。
【0035】
船内の洗浄用や冷却用等に使用する海水の吸入口として船舶の左舷、右舷の適所にシーチェスト22が装備されていることは既述の通りである。このシーチェスト22は海水吸入時に海藻やゴミ等が船内に侵入するのを防止するために格子構造とされているが、長期航海中にあって、その格子構造に貝類や海藻類、或いはゴミ等が付着し、海水の船内取り入れに悪影響を及ぼすことになる。
このため、コンプレッサ23により前記リザーバ24に圧縮空気を充填しておき、エジェクタ25を介して高圧空気を噴出し、シーチェスト22の付着物を除去するといった洗浄作業が定期的に行われる。
【0036】
ところで、固体酸化物形燃料電池1から排出される排気ガス(高温度の水蒸気や空気、CO2 等)は一旦冷却凝縮器3に導入されて水とCO2 に分離される。
水はコンデンサー19に導入され、前記したボイラー16からの水蒸気と合流し、海水で冷却されながら清水タンク17に貯留される。因みに、燃料電池1の場合、燃料(例えば、メタン)1リットルに対し、水約2〜3リットルを得ることができる。
従って、常時運転の燃料電池にあっては絶えず相当量の清水を補充することが可能となる。このように、燃料電池1より排出される大量の水を清水タンク17に逐次補充することにより、従来、船内で相当容量を占める清水タンク17を小型化でき、その分のスペースを貨物等の積載場所等に当てることができる。
【0037】
また、冷却凝縮器3にて分離されたCO2 は、前記エジェクタ25に導入され、リザーバ24より供給される圧縮空気と共に海水中にバブリングされる。このバブリングによりCO2 が海水中に溶解・固定してシーチェスト22の洗浄作業と共に燃料電池1より発生するCO2 は船外に排出される。特に、海水はpH=8程度と弱アルカリ性であるからCO2 が海水中に溶け込み易く、好都合である。これにより、少なくとも、燃料電池1より排出されるCO2の約20〜50%を海水中に固定できることになり、クリーンな電源システムの実現に貢献できる。
【0038】
また、当然のことながら、燃料電池1の発電電力は船舶内での電力源として使用することができる。特に、停泊中船舶の主な電力負荷は船室の照明や空調、電子機器等であり、運航中に使用される電力に比べて極めて小容量で、しかも、負荷変動も極めて少ないため、燃料電池1の電力利用は船舶停泊時に最適である。
従来はこの小容量の電力を得るため、停泊中もディーゼルエンジンによる発電を停止することができなかったが、本実施形態では、少なくとも停泊中はディーゼルエンジンによる発電を停止し、燃料電池1からの電力で全てを賄うようにした。これにより、従来問題となった停泊中の環境汚染や振動、騒音等の問題を解消することができる。
さらに、燃料電池1と二次電池2を併用して、航行中等に燃料電池1の余剰電力を充電しておくことにより、燃料電池1の起動性の問題も解消できる。即ち、燃料電池1の立ち上げ時は二次電池2からの電力を使用すれば良い。
【0039】
特に、燃料電池1として固体酸化物形を使用することにより、50〜60%といった高い発電効率が得られ、且つ、燃料電池1の電気出力当たりのCO2 の排出量はディーゼルエンジンによる発電の場合に比べて約1/2に低減できる。
また、高温作動型の固定酸化物形燃料電池の反応温度は1000℃以上と極めて高いことから、その排熱を誘導してボイラー16等の熱源に利用することも勿論可能である。
【0040】
以上のように、燃料電池1の発電作用で生じた電気エネルギーや熱エネルギーを船内で有効に活用すると共に、燃料電池より排出される環境負荷の大きいCO2 についても、海水中に固定して破棄することにより、省エネ性、経済性と共に環境保全性に優れる船舶用電源システムを実現することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明によれば、燃料電池の発電電力を停泊中船舶の電力源として使用するようにしたので、従来は停止されなかったディーゼルエンジンによる発電を停止することができ、よって、停泊中の環境汚染や振動、騒音等の問題を解消することができる。
【0042】
また、請求項2に記載の本発明によれば、発電装置として内燃機関と共に燃料電池を備え、燃料電池より排出される水を清水タンクに逐次補充するようにしたので、清水タンクを小型化でき、その分、貨物の積載量を増やすことができる。
【0043】
また、請求項3に記載の本発明によれば、発電装置として、内燃機関と共に燃料電池を備え、燃料電池より排出されるCO2 を海水中に溶解して船外に排出するようにしたので、燃料電池より発生するCO2 の排出量を低減でき、クリーンな電源システムの実現に貢献できる。
【0044】
また、請求項4に記載の本発明によれば、燃料電池と二次電池を併用したので、燃料電池の余剰電力をこの二次電池に充電しておくことにより、燃料電池の起動性の問題を解消することができる。
【0045】
また、請求項5に記載の本発明によれば、燃料電池として固体酸化物形燃料電池を用いたので、高い発電効率が得られると共に、燃料電池からの高温排熱を船舶内の熱源として有効利用することができる。
【0046】
このような、燃料電池の排熱や生成水の利用、およびCO2 排出量の低減処理は船舶用電源システムのコージェネレーション化に大いに貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された船舶の左舷を示す図。
【図2】同、船舶の船尾より見た内部構造図。
【図3】船舶用電源システムの構成を示す図。
【符号の説明】
1 燃料電池( 固体酸化物形燃料電池)
10 船舶
11 水中回転翼(プロペラ)
12 主内燃機関(ディーゼルエンジン)
13 発電装置
14、15 補助内燃機関(ディーゼルエンジン)
22 シーチェスト
Claims (5)
- 主機関の動力を水中回転翼の駆動力として船舶の推進力を得ると共に、船舶用の駆動発電装置としての補助機関を備えた船舶用電源システムにおいて、
前記船舶用の発電装置として前記補助機関と共に燃料電池を備え、当該燃料電池が、船舶停泊中における最小必要電力を賄うに十分な発電量を有することを特徴とする船舶用電源システム。 - 前記燃料電池の発電時に当該燃料電池より排出される水蒸気を冷却して船舶内に貯留される清水の補充用として使用することを特徴とする請求項1に記載の船舶用電源システム。
- 前記燃料電池の発電時に当該燃料電池より排出される排気ガスをシーチェスト(海水吸入口)に噴出して当該シーチェストの洗浄に使用すると共に、この噴出により前記排気ガス中の二酸化炭素を海水中に溶解して船外に排出することを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の船舶用電源システム。
- 前記補助機関と共に前記燃料電池と二次電池を併用した発電装置を備えることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の船舶用電源システム。
- 前記燃料電池が、固体酸化物形燃料電池であることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の船舶用電源システム。
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