JP2004054232A - 駆動装置、光量調節装置、および、レンズ駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マグネット部1a〜1dをもつロータと、マグネット部の外周面に対向する外側磁極部3aと、内側磁極部3bと、外側磁極部および内側磁極部を励磁するコイルとを有し、ロータを2箇所の停止位置で保持するものであって、マグネット部の着磁された1極あたりの中心角に対する外側磁極部1極あたりの中心角Aの比の値をY、マグネット部の径方向の厚みに対するマグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると、−0.3X+0.63>Yの条件を満たす構成にする。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタルカメラなどの撮像装置におけるシャッタ装置等に好適な駆動装置、光量調節装置、および、撮像装置のレンズ駆動に好適なレンズ駆動装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のレンズシャッタカメラのシャッタ装置としては、図16に示すものがある。
【0003】
同図において、101は永久磁石であるマグネット、102は駆動レバー、102aは駆動レバー102に設けられた駆動ピンである。駆動レバー102はマグネット101に固着され、マグネット101と一体的に回転する。103はコイル、104,105は軟磁性材料から成り、コイル103により励磁されるステータである。ステータ104とステータ105は104a部と105a部において接合されており、磁気回路上一体となっている。コイル103への通電により、ステータ104およびステータ105が励磁され、マグネット101は所定の角度内を回転駆動する。106,107はシャッタ羽根であり、108は地板である。シャッタ羽根106,107は地板108のピン108b,108cへ穴部106a,107aにおいて回転可能に取り付けられ、長穴106b,107bが駆動ピン102aに摺動可能に嵌合し、マグネット101とともに駆動レバー102が回転する事で、シャッタ羽根106,107は穴部106a,107aを中心として回転駆動され、地板の開口部108aを開閉する。コストアップを防ぐ為にマグネットをプラスチックマグネットで形成し、駆動ピンを一体的に成形したものもある。
【0004】
109はシャッタ羽根106,107を地板108との間で移動可能に保持する前地板であり、110はステータ104,105を保持し、マグネット101を回転可能に保持する後地板である(従来例1、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、撮像素子にCCDなどを用い、被写界像を光電変換して記憶媒体に静止画像の情報として記録するデジタルカメラが普及してきている。この種のデジタルカメラの露光に関する動作の一例について、以下に簡単に説明する。
【0006】
まず撮影に先立って主電源が投入され、撮像素子が動作状態になるとシャッタ羽根は撮像素子に露光可能な開位置に保持される。これにより撮像素子にて電荷の蓄積と放出転送が繰り返され、画像モニターによって被写界の観察が可能になる。
【0007】
その後、レリーズボタンが押されると、その時点での撮像素子の出力に応じて絞り値と露光時間が決定され、それに基づいて、露光開口の口径を絞る必要がある場合には、まず、絞り羽根が駆動されて所定の絞り値にセットされる。次に、蓄積電荷の放出がされている撮像素子に対して電荷の蓄積開始が指示され、それと同時にその蓄積開始信号をトリガー信号として露光時間制御回路が起動され、所定の露光時間の経過により、シャッタ羽根が撮像素子への露光を遮る閉位置へと駆動される。撮像素子への露光が遮られた後、蓄積された電荷の転送が行われ、画像書き込み装置を介して記録媒体に画像情報が記録される。電荷の転送中に撮像素子への露光を防ぐのは、電荷の転送中に余分な光によって電荷が変化してしまうことを防ぐためである。
【0008】
上記のようなシャッタ装置の他に、NDフィルターを進退させる機構を持つものや、小さな絞り径をもつ絞り規制部材を進退させる機構を持つものがある。
上記のシャッタ装置は、その厚みを薄くすることはできるが、コイルやステータが地板上において多くの範囲を占めてしまう。この点に鑑み、図17に示す光量調節装置が提案されている。
【0009】
同図において、201は筒状のロータであって、201aがN極、201bがS極に着磁されている。201cはロータ201と一体に成形された腕であり、この腕201cから駆動ピン201dがロータ201の回転軸方向に延びている。202はコイルであり、ロータ201の軸方向に配置される。203は軟磁性材料から成り、コイル202によって励磁されるステータである。ステータ203はロータ201の外周面と対向する外側磁極部203aと、ロータ201の内部に挿入される内筒を有している。204は補助ステータであり、ステータ203の内筒に固定され、ロータ201の内周面と対向する。コイル202への通電により、外側磁極部203a、補助ステータ204が励磁され、ロータ201は所定の位置まで回転する。207,208はシャッタ羽根であり、205は地板である。シャッタ羽根207,208は地板205のピン205b,205cへ穴部207a,208aにおいて回転可能に取り付けられ、長穴207b,208bが駆動ピン201dに摺動可能に嵌合する。206はトーションバネであり、駆動ピン201dを長穴207b,208bの端部に押し付けるように弾性力をロータ201に付与している。コイル202へ通電し、トーションバネ206の弾性力に逆らってロータ201とともに駆動ピン201dを回転させることで、シャッタ羽根207,208は穴部207a,208aを中心として回転駆動され、地板の開口部205aの開閉駆動を行う(従来例2、特許文献2参照)。
【0010】
このような構成の光量調節装置とする事により、コンパクトな光量制御装置を構成することができる。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−75146号公報
【特許文献2】
特開2002−49076号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
図17に示す光量制御装置は図16に示すものよりも小型化に適した形状となっているが、トーションバネの弾性力に抗してシャッタ羽根を閉位置に移動させ、その位置を保持したいときは通電を続けなければならない。また、トーションバネを用いずに、コイルへの通電の向きによってシャッタ羽根を開位置および閉位置に保持する構成も考えられるが、この場合も被駆動部材を地板の長穴の端部に突き当たった位置で保持するためにはコイルへの通電を続けねばならない。
【0013】
(発明の目的)
本発明の目的は、コイルへの非通電時において、ロータのマグネット部が所定位置で安定的に保持されるようにし、一旦コイルへ通電を行っても駆動装置の出力部を所定位置に位置出した後は、コイルへの通電を断っても、所定位置を保持することができ、省電力化を達成することのできる駆動装置を提供しようとするものである。
【0014】
また、一旦コイルへ通電を行っても光量調節部材を開放或いは閉鎖状態にした後は、コイルへの通電を断っても、開放或いは閉鎖状態を保持することができ、省電力化を達成することのできる光量調節装置を提供しようとするものである。
【0015】
更には、一旦コイルへ通電を行ってもレンズを所定位置に位置出した後は、コイルへの通電を断っても、所定位置を保持することができ、省電力化を達成することのできるレンズ駆動装置を提供しようとするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、外周面が周方向に分割されて異なる極に着磁された円筒形状のマグネット部をもち、軸を中心に回転可能なロータと、軸と平行して延出することで形成されるとともにマグネット部の外周面に対向する少なくとも一つの外側磁極部と、外側磁極部に対向する位置であってマグネット部の内周面に対向する内側磁極部と、ロータの軸方向に配置され、外側磁極部および内側磁極部を励磁するコイルとを有し、ロータを2箇所の停止位置で保持する駆動装置であって、マグネット部の着磁された1極あたりの中心角に対する外側磁極部1極あたりの中心角の比の値をY、マグネット部の径方向の厚みに対するマグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると
−0.3X+0.63>Y
の条件を満たすことを特徴とするものである。
【0017】
また、上記課題を解決するため、本発明は、外周面が周方向に分割されて異なる極に着磁された円筒形状のマグネット部をもち、軸を中心に回転可能なロータと、ロータの回転に応じて作動する出力部材と、軸と平行して延出することで形成されるとともにマグネット部の外周面に対向する少なくとも一つの外側磁極部と、外側磁極部に対向する位置であってマグネット部の内周面に対向する内側磁極部と、ロータの軸方向に配置され、外側磁極部および内側磁極部を励磁するコイルと、開口部を備えた地板と、出力部材により駆動されて地板の開口部に進退することで開口部を通過する光量を変化させる光量調節部材とを有し、光量調節部材を2箇所の停止位置で保持する光量調節装置であって、マグネット部の着磁された1極あたりの中心角に対する外側磁極部1極あたりの中心角の比の値をY、マグネット部の径方向の厚みに対するマグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると
−0.3X+0.63>Y
の条件を満たすことを特徴とするものである。
【0018】
また、上記課題を解決するため、本発明は、外周面が周方向に分割されて異なる極に着磁された円筒形状のマグネット部をもち、軸を中心に回転可能なロータと、ロータの回転に応じて作動する出力部材と、軸と平行して延出することで形成されるとともにマグネット部の外周面に対向する少なくとも一つの外側磁極部と、外側磁極部に対向する位置であってマグネット部の内周面に対向する内側磁極部と、ロータの軸方向に配置され、外側磁極部および内側磁極部を励磁するコイルと、開口部を備えた地板と、出力部材により駆動されて地板の開口部に進退することで開口部を通過する光束の焦点距離を変化させるレンズとを有し、レンズを2箇所の停止位置で保持するレンズ駆動装置であって、マグネット部の着磁された1極あたりの中心角に対する外側磁極部1極あたりの中心角の比の値をY、マグネット部の径方向の厚みに対するマグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると
−0.3X+0.63>Y
の条件を満たすことを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(実施の第1の形態)
図1〜図4は本発明の実施の第1の形態に係る光量調節装置を示す図であり、そのうち、図1は光量調節装置に具備されるシャッタ羽根駆動機構の分解斜視図、図2はその断面図、図3はシャッタ閉鎖時の図2のB−B断面図、図4はシャッタ開放時の図2のB−B断面図である。
【0021】
これらの図において、1は概略円筒形状のマグネット部をもつプラスチックマグネット材料から成るロータであり、マグネット部は外周面を円周方向に4分割して交互にS極とN極に着磁されている。詳しくは図3に示すように、着磁部1a,1cは外周面がN極に、着磁部1b,1dは外周面がS極に、それぞれ着磁されている。この実施の第1の形態では、着磁極数は4極であるが、2極以上であればよい。2は円筒形状のコイルであり、コイル2はロータ1と同心でかつ、ロータ1と軸方向であってロータ1と隣り合う位置に配置され、コイル2はその外径がロータ1のマグネット部の外径とほぼ同じ寸法である。この駆動機構は1相駆動であり、用いるコイルも1つで足りる。
【0022】
3は軟磁性材料から成るステータであり、ステータ3は、先端部に歯形状の外側磁極部3aが形成された外筒および円柱形状の内筒3bから成る。外側磁極部3aはステータ3の外筒からマグネット1の回転軸と平行に板状に延出した形状で形成されるとともに、ロータ1の外周面に所定の隙間を持って所定の角度で対向するように構成(図3参照)されている。ここでの角度とは、外側磁極部3aとマグネット1の回転中心位置とで構成される扇型の中心角を指す。この実施の第1の形態における所定の角度に関しては後述する。4は補助ステータであり、内径部4a(図2参照)がステータ3の内筒3bに嵌合して固着されている。また、補助ステータ4の外径部には、ステータ3の外側磁極部3aに対向した位相に図3に示すように対向部4bが形成されている。
【0023】
ステータ3の円柱形状の内筒3bと補助ステータ4とで、内側磁極部を構成している。内側磁極部は対向部4bが外側磁極部3aに向かう出っ張りとして形成されているが単に円筒形状であっても構わないし内筒3bのみで内側磁極を構成しても構わない。ただし図3に示す対向部4bを設けた方が、設けない場合と比較してロータ1の回転トルクは大きくなる。
【0024】
ロータ1には外側磁極部3aと対向していない位置に腕1gが一体的に形成されており、腕1gの先端にはロータの出力部材である駆動ピン1hが形成されている。また駆動ピン1hは後述の地板5の開口部5aの中心に向かう或いは離れる方向、すなわち、ガイド溝5eに案内されて地板5のおよそ半径方向に移動するように配置されている。
【0025】
5は光量調節装置の地板であり、地板5は開口部5aを備えている。ロータ1は、図2に示すように、その軸部1eが地板5の凹部5dに回転可能に嵌合し、軸部1fがステータ3の内側磁極部先端の穴3cに回転可能に嵌合するように取り付けられている。ステータ3は外側磁極部3aにおいて地板5に固定されている。ロータ1は軸部1fが穴3cに回転可能に嵌合しているので、内側磁極部、外側磁極部とロータ1とのギャップに関して部品の積み重ねによる誤差は非常に少なく構成でき、量産時の性能が安定する。
【0026】
コイル2はロータ1と軸方向に隣り合う位置に配置され、またロータ1はその回転の中心位置が地板5の開口部5aの外側(軸1eと凹部5dの位置)であって、その回転軸の向きが開口部5aの光軸と並行になるように配置されている。
【0027】
6は地板5との間に所定の空間を保ち、空間に後述の光量調節用のシャッタ羽根7,8を移動可能に保持する地板であり、開口部6aを備えている。7,8は光量調節部材であるところのシャッタ羽根であり、穴7a,8aがそれぞれ地板5のピン5b,5cに回転可能に嵌合している。また、長穴7b,8bはロータ1の駆動ピン1hに摺動可能に嵌合しており、ロータ1の回転に応じてシャッタ羽根7,8が駆動されて地板5の開口部5aの開口量を変化させる。
【0028】
図3におけるロータ1の回転位置は、シャッタ羽根7,8により開口5aを閉じた状態であり、図4におけるロータ1の回転位置は、シャッタ羽根7,8が開口5aより待避した位置であって、開口部5aを開放状態にしている状態である。
【0029】
図3の状態からコイル2に通電を行い、ステータ3の外側磁極部3aをS極に、内側磁極部の一部である補助ステータ4をN極に、それぞれ励磁すると、ロータ1は時計回りに回転して図4の状態となり、開口部5aが開放される。この図4の状態からコイル2に逆方向の通電を行い、ステータ3の外側磁極部3aをN極に、内側磁極部の一部である補助ステータ4をS極に、それぞれ励磁すると、ロータ1は図4において反時計回りに回転し、図3に示す開口部5aが閉じた状態になる。このようにコイル2への通電の向きを切り換えることで、駆動ピン1hが図3に示す位置と図4に示す位置とで往復運動を行う。
【0030】
ロータ1に設けられる駆動ピン1hはロータ1を挟んで外側磁極部3aの反対側に配置され、外側磁極部3aとは離れているため、駆動ピン1hをマグネットの材料で構成して着磁したとしても、駆動ピン1hに発生する電磁力は非常に小さく、マグネット全体の出力特性にはほとんど影響を及ぼさない。したがって動作特性の安定した駆動装置とする事ができる。
【0031】
また、駆動ピン1hはプラスチックマグネット材料から成るロータ1と一体的に成形されるので、別部品で構成される場合に比べ、低コストで少ない組み立て誤差とすることができる。また、外側磁極部3aと駆動ピン1hを有する腕1gとはロータ1の軸方向における位置が重複しており、概略円筒形状の本駆動装置の軸方向の長さL(図2参照) を抑えることもできる。
【0032】
さらに、ステータ3の外側磁極部3aをロータ1の軸方向と平行方向に延出する歯形状(外側磁極部が複数で構成される場合は櫛歯形状)により構成しているので、ステータ3の直径はロータ1のマグネット部の直径に磁気ギャップと自らの肉厚を加えた最小限の寸法に抑える事ができ、非常に小径の駆動装置とする事ができる。
【0033】
上記構成において、コイル2はロータ1の軸方向に配置されるので、最も幅のある部位でも上記のステータ3の直径に腕1gの長さを足しただけ大きさに抑えることができる。この結果、図3から明らかなように地板5に配置される部品の面積が非常に小さく、コンパクトな駆動装置となる。
【0034】
また、ロータ1の外周面と内周面に対向する外側磁極部と内側磁極部とでロータ1を挟む磁路となるので、磁気抵抗が少ない磁路を構成することができるとともに、コイル2に通電することにより一方の磁極部から出る磁力線が他方の磁極部へと流れ込むので、発生する磁力線の多くが磁極部間に挟まれたロータ1に作用する。そのために、回転出力の高い駆動装置となり、結果的に小型化が容易になる。また、コイル2は一つで足りるため、通電の制御回路も単純になり、コストも安く構成できる。
【0035】
次に、外側磁極部3aの詳細な形状について説明する。
【0036】
ロータ1はコイル2への無通電時にシャッタ開放もしくは閉鎖の状態でその回転位置が保持される。この様子を図5および図6を用いて説明する。
【0037】
図5において、縦軸はロータ1に作用する外側磁極部と内側磁極部との間で発生する磁力を示し、横軸はロータ1の回転位相を示す。
【0038】
E1点,E2点で示されるところは、正回転しようとすると逆回転しようとする力が働いて元の位置に戻ろうとし、逆回転しようとすると正回転しようとする力が働いて元の位置に戻される。すなわち、マグネットと外側磁極部の間の磁力によってロータ1がE1点或いはE2点に安定的に位置決めされようとするコギングの位置である。F1点,F2点,F3点はマグネットの位相が少しでもずれると前後のE1点、或いは、E2点の位置に回転する力が働く不安定な均衡状態にある停止位置である。コイル2への通電がなされない状態では、振動や姿勢の変化によってF1点,F2点,F3点に停止していることはなく、E1点或いはE2点の位置で停止する。
【0039】
E1点,E2点のようなコギング安定点はマグネットの着磁極数をnとすると、(360/n)度の周期で存在し、その中間位置がF1点,F2点,F3点のような不安定点になる。
【0040】
有限要素法による数値シミュレーションの結果、マグネットの着磁される1極あたりの角度(マグネットの着磁部の中心角)と外側磁極部のマグネットに対向する対向角度(図3においてAで示すものであり、外側磁極部3aとマグネットの回転中心位置とで構成される扇型の中心角)との関係に応じて、コイルへの通電がなされていない状態での外側磁極部とマグネットとの吸引状態の様子が変化することが明らかになった。
【0041】
それによると、外側磁極部のマグネットに対向する角度によりマグネットのコギング位置が変化する。すなわち、外側磁極部のマグネットに対向する角度が所定値以下の場合には、マグネットの極の中心が外側磁極部の中心に対向する位置で安定的に保持される。つまり、図5で述べたE1点およびE2点がこの状態である。逆に、外側磁極部のマグネットに対向する角度が先の所定値よりも大きな別の所定値を超える場合には、マグネットの極と極の境界が外側磁極部の中心に対向する位置で安定的に保持され、この位置が図5で述べたE1点およびE2点となる。その様子を図6を用いて説明する。
【0042】
図6は、外側磁極部の幅寸法とコギングトルク、マグネット寸法の関係を示す図である。
【0043】
図6において、横軸は「マグネットの厚み/ロータ1極あたりの外周長さ」、縦軸は「外側磁極部1つあたりのマグネットに対する対向角度/ロータ1極あたりの角度」(言い換えれば、外側磁極部1つあたりの中心角/マグネットの1極あたりの中心角)である。
【0044】
例えば、マグネットの外径寸法が10mm、内径寸法が9mmで極数が16極の場合、マグネットの厚みは「(10−9)/2」、着磁された1極あたりの外周長さは「10×π/16」であるから、横軸の「マグネットの厚み/ロータ1極あたりの外周長さ」の値は0.255となる。また、外側磁極部1つあたりのマグネットに対する対向角度を13度とすると、ロータ1極あたりの角度は22.5度であるから、縦軸の「外側磁極部1つあたりのマグネットに対する対向角度/ロータ1極あたりの角度」は0.578となる。
【0045】
図6中の各ポイントはコギングトルクがほぼ0、或いは最小となるときの、モータの「外側磁極部1つあたりのマグネットに対する対向角度/ロータ1極あたりの角度」および「マグネットの厚み/ロータ1極あたりの外周長さ」をプロットしたものであり、図7に示す9種類のモータについてグラフ化したものである。
【0046】
図6の縦軸を「Y=外側磁極部1つあたりのマグネットに対する対向角度/ロータ1極あたりの角度」、横軸を「X=マグネットの厚み/ロータ1極あたりの外周長さ」とすると、これらのポイントは「Y=−0.3X+0.63」の式で近似した直線1と、「Y=−0.3X+0.72」の式で近似した直線2とに囲まれた領域に存在する。
【0047】
直線1より図中下の範囲、即ち、「Y<−0.3X+0.63」の範囲はマグネットの極の中心が外側磁極部の中心に対向する位置で安定的に保持され、「Y>−0.3X+0.72」ならば、マグネットの極と極の境界が外側磁極部の中心に対向する位置で安定的に保持される。直線1と直線2とに囲まれた領域、即ち、「−0.3X+0.63≦Y≦−0.3X+0.72」ならば、コギングトルクが極めて小さく構成される。
【0048】
ここで、外側磁極部3aの軸方向のマグネット(ロータ1)に対する各対向角度Aは、マグネットの軸方向の位置によって徐々に変化するような場合であれば、平均的な対向角度が上記の条件式を満たしていれば良い。即ち、マグネットの端面部付近の対向角度Aが例えば15度であって、外側磁極部の先端部付近の対向角度Aが13度程度なら、それらの平均値である14度を上記条件式に当てはめればよい。
【0049】
図8,図9,図10に、実験結果を示す。
【0050】
図8,図9,図10ともに、図5と同様、縦軸はロータ1に作用する外側磁極部と内側磁極部とで発生する磁力によるトルクを示し、横軸はロータ1の回転位相を示す。コイルに無通電時のトルク、即ちコキングトルクとコイル端子間に3Vの電圧を印加した時の発生トルクを示している。
【0051】
このモデルとなるモータは
・マグネットは、外径φ10.6mm、内径φ9.8mm、着磁極数16極
・コイルは、巻き数が112ターン、抵抗10Ω
・ステータの外側磁極部は、外径φ11.6mm、内径φ11.1mm
・ステータの内側磁極部は、外径φ9.3mm、内径φ8.8mm
で構成されたものである。モータの形状は図1から図4に示したものと同様である。
【0052】
図8は、外側磁極部のマグネットに対する各対向角度Aは10.35度のものである。X,Yの値は、X=0.192、Y=0.46となる。
【0053】
図9は、外側磁極部のマグネットに対する各対向角度Aは13.45度のものである。この場合が無通電時の発生するトルク、即ちコキングトルクが一番小さくなっているのである。X,Yの値は、X=0.192、Y=0.60となる。
【0054】
図10は、外側磁極部のマグネットに対する各対向角度Aは15.52度のものである。X,Yの値は、X=0.192、Y=0.69となる。
【0055】
上記図8,図9,図10の構成のものを、図6で求めた直線を示した図11上において、それぞれa,b,cで示す。
【0056】
図8に特性を示した構成のもの、つまり外側磁極部のマグネットに対する対向角度Aが10.35度のものは、X=0.192、Y=0.46で、「Y<−0.3X+0.63」の条件に当てはまり、マグネットの安定位置は着磁部の極の中心が外側磁極部の中心に対向する位置であった。
【0057】
図9に特性を示した構成のもの、つまり外側磁極部のマグネットに対する対向角度Aが13.45度のものは、X=0.192、Y=0.60で、「−0.3X+0.63≦Y≦−0.3X+0.72」の条件に当てはまり、コキングトルクが極めて小さくなっている。
【0058】
図10に特性を示した構成のもの、つまり外側磁極部のマグネットに対する対向角度Aが15.52度のものは、X=0.192、Y=0.69で、「Y>−0.3X+0.72」の条件に当てはまり、マグネットの安定位置は着磁部の極の境界が外側磁極部の中心に対向する位置であった。
【0059】
本実施の形態では、「Y<−0.3X+0.63」となるように寸法が設定されており、コイル2への通電がなされていない状態では、図5に示した上記E1点およびE2点が、ロータ1の極の中心がステータ3の外側磁極部3aの中心に対向する位置となり、ロータ1の極の中心が外側磁極部3aの中心に対向する位置で安定して停止するようになっている。
【0060】
しかし、ロータ1の極の中心と外側磁極部3aの中心とが対向した状態からコイル2へ通電を行って外側磁極部3aを励磁しても、両方の回転方向に均等な力が加わってしまうためロータ1に回転力が生じない。
【0061】
そこで、本実施の形態では、地板5のガイド溝5eとロータ1の駆動ピン1hの関係を以下のように設定し、ロータ1の極の中心と外側磁極部3aの中心とが対向する位置までロータ1が回転しないようにしている。
【0062】
図3に示すように、駆動ピン1hがガイド溝5eの一方の端面に当接するときに、ロータ1のマグネット部の極、即ち着磁部1bの中心Q1とステータ3の外側磁極部3aの中心R1とのなす角度がα度(≠0度)になるように設定してある。図3の状態からコイル2へ通電して外側磁極部3aをS極に励磁すると、ロータ1に時計回りの回転力が生じて、図4に示す開口を開放する状態になる。
【0063】
また、図3の状態を図5に当てはめると、G点の位置となる。この位置でのコギングトルク(ロータ1に作用するステータ3との間で発生する吸引力)はT2であり、これは、E1点に戻ろうとする回転方向にマイナスの力(図3において反時計方向の力)が働くことになる。すなわち、ロータ1の駆動ピン1hが地板5のガイド溝5eの一方の端面に当接する位置でのロータ1のマグネット部の保持力がT2となる。よって、図3の状態においてコイル2への通電を切ってもロータ1のマグネット部は安定的にこの位置(図3の位置)に停止する。
【0064】
同様に、ロータ1の時計方向の回転に関しては、駆動ピン1hがガイド溝5eの他方の端面に当接するときに、ロータ1のマグネット部の極、即ち着磁部1bの中心Q2とステータ3の外側磁極部3aの中心R1とのなす角度がβ度(≠0度)になるように設定してある。図3と同様に、図4に示す開口を開放する状態で通電を断っても、ロータ1は安定的にこの位置(図4の位置)に停止する。
【0065】
図4の状態を図5に当てはめると、H点の位置となる。この位置でのコギングトルク(ロータ1に作用するステータ3との間で発生する吸引力)はT1であり、これは、E2点に進もうとする回転方向にプラスの力(図4において時計方向の力)が働くことになる。すなわち、地板5のガイド溝5eの他方の端面がロータ1の駆動ピン1hに当接する位置の保持力がT1となる。よって、コイル2への無通電時には、ロータ1は安定的にこの位置(図4の位置)に停止する。図3の状態と図4の状態とではロータ1はθ度回転したことになるように設定してある。
【0066】
図4の状態からコイル2へ逆方向に通電してステータ3の外側磁極部3aをN極に励磁すると、ロータ1のマグネット部に反時計方向の回転力が生じて、図3に示す開口を閉じる状態になる。この図3に示す状態になるとコイル2への通電を断ってもそのままの状態が保持されるのは前述した通りである。
【0067】
以上のように、コイル2への通電方向を切り換えることにより、ロータ1のマグネット部は図3の状態から図4の状態、或いは、図4の状態から図3の状態に切り換わる。
【0068】
このように、外側磁極部の形状を上記の条件を満たすように設定するとともに、ロータ1の回転角度を、ロータ1のマグネット部に作用するコギング力が反対向きとなる範囲を含み、かつ、ロータ1の着磁部の中心位置と外側磁極部の中心位置とが対向する範囲を含まないように設定することにより、無通電の状態で2つの停止位置にロータ1を保持できる駆動装置を構成することができる。
【0069】
シャッタ羽根7およびシャッタ羽根8はロータ1に連動して回転する。上述したようにロータ1のマグネット部が図4の状態にある時、シャッタ羽根7およびシャッタ羽根8はそれぞれ地板5の開口部5bから退避する位置にある。一方、ロータ1のマグネット部が図3の状態にある時、シャッタ羽根7およびシャッタ羽根8により地板5の開口部5bは閉鎖される。よって、コイル2への通電方向を切り換えることにより、シャッタ羽根7およびシャッタ羽根8の位置を開放位置と閉鎖位置とに制御可能となり、地板6の開口部6aおよび地板5の開口部5bの通過光量を制御できる。
【0070】
さらに、コイル2への無通電時には、ロータ1のマグネット部と磁極部との吸引力により、それぞれの位置が保持される。よって、通電していなくても振動等によりシャッタ羽根7およびシャッタ羽根8の位置が変化することはなく、シャッタの信頼性が向上するとともに、省エネルギーになる。
【0071】
したがって、本実施の形態における光量調節装置は開き位置でも閉じ位置でも無通電で安定して保持できるシャッタ装置や絞り装置として作用する。本実施の形態では外側磁極部を1箇所の歯形状としたが、後述するように複数個設けても良い。
【0072】
(実施の第2の形態)
図12は本発明の実施の第2の形態に係る光量調節装置を示す図であり、図1から図4に記載されたシャッタ羽根に代えて、撮像素子に入る光量を調節する絞り部材を駆動するための例である。詳しくは、NDフィルター板をロータ1で駆動し、開口内に進退させ透過光量を調節する機能を有する光量調節装置である。図1と同じ部分(形状やその材質を含めて)は同一符号を付してある。
【0073】
同図において、10は光量調節部材であるところのNDフィルター板であり、穴10aが地板5の突起5bに回転可能に嵌合している。10bはNDフィルター板10に設けられた長穴であり、長穴10bは上記実施の第1の形態におけるシャッタ羽根8或いは9と同様に、ロータ1の駆動ピン1hの摺動可能に嵌合する。ロータ1の駆動ピン1hの回転により、NDフィルター板10は地板5の開口部5a内に進入して透過光量を減少させる位置と、開口部5aから退避した位置へと移動可能である。それにより、開口部5aを通過する光量を調節する。
【0074】
もちろんこのNDフィルター板10の代わりに、小さい口径の開口部をもつ開口調節板を進退させても良い。
【0075】
(実施の第3の形態)
図13は本発明の実施の第3の形態に係る光量調節装置を示す図であり、図1と同じ部分(形状やその材質を含めて)は同一符号を付してある。
【0076】
同図において、20は光量調節部材であるところの絞り口径板であり、遮光性のあるプラスチック或いは金属で構成され、穴部20aが地板5の突起5bに回転可能に嵌合している。20cは地板5の開口部5aよりも口径が小さい開口部であり、開口部以外は遮光性を有する材料から構成されている。絞り口径板20は長穴20bが上記実施の第2の形態におけるNDフィルター板10と同様に、ロータ1の駆動ピン1hの摺動可能に嵌合し、ロータ1の駆動ピン1hの回転位置により地板5の開口部5a内に進入し、開口径を小さくする位置と開口部5aから退避した位置へと移動可能である。それにより、開口部5aを通過する光量を調節する。この方法によっても、光量を調節した位置状態で通電を断ったとしてもその状態を保持する事ができる。
【0077】
以上の実施の第2および3の形態でもマグネット部の極数を4極としたが、極数は限定されない。
【0078】
また、上記実施の各形態では外側磁極部を1箇所にしたが、マグネットの着磁極数の半分或いは半分以下としても良い。即ち、マグネットは4極に着磁されているのでその半分の2箇所に外側磁極部を設けてもよい。その場合、外側磁極部はロータ1の回転中心を中心として、お互いに720/n度の整数倍(nは着磁極数、上記の実施の各形態ではn=4)ずれて配置されることになる。図14にその場合の断面平面図を示している。着磁極数が8極の場合は720/8度の整数倍、例えば、90度或いは180度離れて4個所、3箇所、2箇所にあっても良い。
【0079】
図14において、33はステータであり、マグネットの着磁極数は4極であるから180度離れて外側磁極部33a,33cが2箇所にある。33bは内筒である。
【0080】
外側磁極部33a,33cは上記実施の各形態と同様、ロータ1のマグネット部の軸方向と平行方向に延出する歯形状である。この場合、複数あるので櫛歯形状になっている。nを着磁極数とすると、ステータ33の外側磁極部33a,33cは720/n度位相がずれて形成されている。マグネットの着磁極数はn=4であるから、180度である。補助ステータ4の外径部にはステータ33の外側磁極部33a,33cに対向した位相に対向部4b,4cが形成されている。
【0081】
(実施の第4の形態)
図15は本発明の実施の第4の形態に係るレンズ駆動装置を示す図であり、図1と同じ部分(形状やその材質を含めて)は同一符号を付してある。
【0082】
上記の各実施形態ではシャッタ羽根や絞り部材を駆動していたが、勿論、他の部材を駆動する構成であってもよい。図15に示すレンズ駆動装置は、上述した光量調節装置のシャッタ羽根や絞り部材に代えて、レンズを駆動するためのものである。
【0083】
40はレンズホルダー、41はレンズホルダーに取り付けられたレンズである。レンズホルダー40の穴部40aが地板5の突起5bに回転可能に嵌合している。40bはレンズホルダー40に設けられた長穴であり、長穴40bは上記実施の第1の形態におけるシャッタ羽根8或いは9と同様に、ロータ1の駆動ピン1hに摺動可能に嵌合している。レンズホルダー40はロータ1の駆動ピン1hの回転位置により地板5の開口部5a内にレンズ41を進入させたり、開口部5aからレンズ41を退避させたりして、開口部5aを通過する光の焦点を調節を行う。
【0084】
ロータ1、コイル2、ステータ3、および、補助ステータ4は上記の実施の第1の形態と同様の構成であるため、コイル2への無通電時には、ロータ1のマグネット部と磁極部との吸引力により、レンズ4はその位置が保持される。よって、通電していなくても振動等によりレンズ41の位置が変化することはなく、レンズ駆動装置の信頼性が向上するとともに、省エネルギーにもなる。
【0085】
以上の実施の第1乃至第4の形態における効果を、構成要素との対応関係を明示しつつ、以下にまとめて列挙する。
【0086】
外周面が周方向に分割されて異なる極に交互に着磁された円筒形状のマグネット部をもち、軸を中心に回転可能なロータ1と、軸と平行して延出することで形成されるとともにマグネット部の外周面に対向する少なくとも一つの外側磁極部3a(33a,33c)と、外側磁極部3a(33a,33c)に対向する位置であってマグネット部の内周面に対向する内側磁極部(3b,4b,4c,33b)と、ロータの軸方向に配置され、外側磁極部3a(33a,33c)および内側磁極部(3b,4b,4c,33b)を励磁するコイル2とを有し、ロータ1を2箇所の停止位置で保持する駆動装置であって、マグネット部の着磁された1極あたりの中心角に対する外側磁極部3a(33a,33c)1極あたりの中心角の比の値をY、マグネット部の径方向の厚みに対するマグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると
−0.3X+0.63>Y
の条件を満たす駆動装置としている。
【0087】
また、外周面が周方向に分割されて異なる極に交互に着磁された円筒形状のマグネット部をもち、軸を中心に回転可能なロータ1と、ロータ1の回転に応じて作動する出力部材1hと、軸と平行して延出することで形成されるとともにマグネット部の外周面に対向する少なくとも一つの外側磁極部3a(33a,33c)と、外側磁極部3a(33a,33c)に対向する位置であってマグネット部の内周面に対向する内側磁極部(3b,4b,4c,33b)と、ロータの軸方向に配置され、外側磁極部3a(33a,33c)および内側磁極部(3b,4b,4c,33b)を励磁するコイル2と、開口部5aを備えた地板5と、出力部材1hにより駆動されて地板5の開口部5aに進退することで開口部5aを通過する光量を変化させる光量調節部材(7,8,10,20)とを有し、光量調節部材を2箇所の停止位置で保持する駆動装置であって、マグネット部の着磁された1極あたりの中心角に対する外側磁極部3a(33a,33c)1極あたりの中心角の比の値をY、マグネット部の径方向の厚みに対するマグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると
−0.3X+0.63>Y
の条件を満たす光量調節装置としている。
【0088】
また、外周面が周方向に分割されて異なる極に交互に着磁された円筒形状のマグネット部をもち、軸を中心に回転可能なロータ1と、ロータ1の回転に応じて作動する出力部材1hと、軸と平行して延出することで形成されるとともにマグネット部の外周面に対向する少なくとも一つの外側磁極部3a(33a,33c)と、外側磁極部3a(33a,33c)に対向する位置であってマグネット部の内周面に対向する内側磁極部(3b,4b,4c,33b)と、ロータの軸方向に配置され、外側磁極部3a(33a,33c)および内側磁極部(3b,4b,4c,33b)を励磁するコイル2と、開口部5aを備えた地板5と、出力部材により駆動されて地板5の開口部5aに進退することで開口部5aを通過する光量の焦点位置を変化させるレンズ41とを有し、レンズ41を2箇所の停止位置で保持するレンズ駆動装置であって、マグネット部の着磁された1極あたりの中心角に対する外側磁極部(33a,33c)1極あたりの中心角の比の値をY、マグネット部の径方向の厚みに対するマグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると
−0.3X+0.63>Y
の条件を満たすレンズ駆動装置としている。
【0089】
これらの構成によれば、マグネット部の着磁された極の中心位置が外側磁極部3aの中心位置に対向するようにコギング力が働く。マグネットの外周面には異なる極(N極、S極)が着磁されているため、コイルの無通電時に2箇所の位置でロータの回転位置を保持することができる。
【0090】
具体的には、コイル2への通電を行った場合、マグネット部の着磁された極の中心位置が外側磁極部3aの歯の中心に対向する位置の間を移動するように駆動されるので、コイル2への通電によって駆動されたマグネット部(ロータ1)はコイル2への通電を遮断されてもその位置を保持するようにステータに発生する磁力(コギング)により吸引されている。つまり、非通電でもロータの回転位置を保持することが可能となり、消費電力を少なくすることが可能となる。
【0091】
また、上記の実施の形態では、ロータ1のマグネット部と外側磁極部3aとの間に作用する磁力による吸引力が反対向きとなる領域を含み、かつ、マグネット部の着磁された極の中心と外側磁極部3aとの中心が対向する領域を含まないようにロータ1の作動範囲を規制する。
【0092】
図3の状態からコイル2へ通電して外側磁極部3aをS極に励磁するとマグネット部に時計回りの回転力が生じて安定して起動が行われ、図4の開放状態となり、また図4の状態からコイル2へ通電して外側磁極部3aをN極に励磁するとマグネット部に反時計回りの回転力が生じて安定して起動が行われ、図3の閉鎖状態となる。
【0093】
また、上記の実施の形態では、出力部材1hの作動範囲と外側磁極部3aは離れて配置されているため、駆動ピン1hをマグネットの材料で構成しても駆動ピン部における発生する電磁力は非常に小さく、マグネット全体の出力特性に影響を及ぼさず、安定した駆動特性を得るができる。
【0094】
また、上記の実施の形態では、ロータ1の回転の中心となる軸の一端1eは地板5の開口部5aより外れた前地板5上に設けられた穴部5dに、他端1fは内側磁極3b部の中心部に設けられた穴部に、それぞれ回転可能に嵌合しているため、内側磁極部3b或いは外側磁極部3aとマグネット部のギャップの管理が容易になり、量産時の性能が安定する。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、コイルへの非通電時において、ロータのマグネット部が所定の2位置で安定的に保持されるようにし、一旦コイルへ通電を行ってロータを所定の個所まで移動させた後は、コイルへの通電を断っても、ロータを所定の個所で保持することができ、省電力化を達成することができる駆動装置、光量調節装置、あるいは、レンズ駆動装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1の形態における光量調節装置の分解斜視図である。
【図2】図1の光量調節装置の断面図である。
【図3】本発明の実施の第1の形態においてシャッタ閉鎖時の図2のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施の第1の形態においてシャッタ開放時の図2のB−B断面図である。
【図5】本発明の実施の第1の形態におけるコギングトルクの様子を表す図である。
【図6】本発明の実施の第1の形態における外側磁極の幅寸法とコギングトルク、マグネット寸法の関係を表す図である。
【図7】図6の各関係を求める為に使用したモータの種類を示す図である。
【図8】本発明の実施の第1の形態における実験結果であるトルクとロータの回転位相との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施の第1の形態における実験結果であるトルクとロータの回転位相との関係を示す図である。
【図10】本発明の実施の第1の形態における実験結果であるトルクとロータの回転位相との関係を示す図である。
【図11】本発明の実施の第1の形態における実験モデルの外側磁極の幅寸法とコギングトルク、マグネット寸法の関係を表す図である。
【図12】本発明の実施の第2の形態における光量調節装置の分解斜視図である。
【図13】本発明の実施の第3の形態における光量調節装置の分解斜視図である。
【図14】本発明の実施の第3の形態における光量調節装置の断面図である。
【図15】本発明の実施の第4の形態におけるレンズ駆動装置の斜視図である。
【図16】従来のシャッタ羽根駆動装置である。
【図17】従来の他のシャッタ羽根駆動装置である。
【符号の説明】
1 マグネット
1h 駆動ピン
2 コイル
3 ステータ
3a 外側磁極部
4 補助ステータ
5 地板
7,8 シャッタ羽根
20 NDフィルター板
30 絞り口径板
33 ステータ
33a,33c 外側磁極部
40 レンズホルダー
41 レンズ
Claims (11)
- 外周面が周方向に分割されて異なる極に着磁された円筒形状のマグネット部をもち、軸を中心に回転可能なロータと、前記軸と平行して延出することで形成されるとともに前記マグネット部の外周面に対向する少なくとも一つの外側磁極部と、前記外側磁極部に対向する位置であって前記マグネット部の内周面に対向する内側磁極部と、前記ロータの軸方向に配置され、前記外側磁極部および前記内側磁極部を励磁するコイルとを有し、前記ロータを2箇所の停止位置で保持する駆動装置であって、
前記マグネット部の着磁された1極あたりの中心角に対する前記外側磁極部1極あたりの中心角の比の値をY、前記マグネット部の径方向の厚みに対する前記マグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると
−0.3X+0.63>Y
の条件を満たすことを特徴とする駆動装置。 - 前記ロータのマグネット部と前記外側磁極部との間に作用する磁力による吸引力が反対向きとなる領域を含み、かつ、前記マグネット部の着磁された極の中心と前記外側磁極部との中心が対向する領域を含まないように前記ロータの作動範囲を規制する規制部材を有することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
- 外周面が周方向に分割されて異なる極に着磁された円筒形状のマグネット部をもち、軸を中心に回転可能なロータと、前記ロータの回転に応じて作動する出力部材と、前記軸と平行して延出することで形成されるとともに前記マグネット部の外周面に対向する少なくとも一つの外側磁極部と、前記外側磁極部に対向する位置であって前記マグネット部の内周面に対向する内側磁極部と、前記ロータの軸方向に配置され、前記外側磁極部および前記内側磁極部を励磁するコイルと、開口部を備えた地板と、前記出力部材により駆動されて前記地板の開口部に進退することで前記開口部を通過する光量を変化させる光量調節部材とを有し、前記光量調節部材を2箇所の停止位置で保持する駆動装置であって、
前記マグネット部の着磁された1極あたりの中心角に対する前記外側磁極部1極あたりの中心角の比の値をY、前記マグネット部の径方向の厚みに対する前記マグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると
−0.3X+0.63>Y
の条件を満たすことを特徴とする光量調節装置。 - 前記地板には前記出力部材と嵌合して前記出力部材の作動範囲を規制する案内溝が形成されており、前記案内溝は前記作動範囲が前記ロータのマグネット部と前記外側磁極部との間に作用する磁力による吸引力が反対向きとなる領域を含み、かつ、前記マグネット部の着磁された極の中心と前記外側磁極部との中心が対向する領域を含まないように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光量調節装置。
- 前記光量調節部材はシャッタ羽根であり、前記出力部材が前記案内溝の一方の端面に突き当たったときに前記シャッタ羽根が前記開口部を開放状態とし、前記出力部材が前記案内溝の他方の端面に突き当たったときに前記シャッタ羽根が前記開口部を閉鎖状態とすることを特徴とする請求項4に記載の光量調節装置。
- 前記光量調節部材は絞り部材であり、前記出力部材が前記案内溝の一方の端面に突き当たったときに前記絞り部材が前記開口部に進入して前記開口部を通過する光量を減らし、前記出力部材が前記案内溝の他方の端面に突き当たったときに前記絞り部材が前記開口部から退避することを特徴とする請求項4に記載の光量調節装置。
- 前記出力部材の作動範囲と前記外側磁極部は、前記ロータを挟んで反対側に位置することを特徴とする請求項4に記載の光量調節装置。
- 前記出力部材は前記マグネット部と一体的に形成されて回転し、前記外側磁極部は前記出力部材と前記ロータの軸方向における位置が重複することを特徴とする請求項3から7のいずれかに記載の光量調節装置。
- 前記ロータの回転の中心となる軸の一端は前記地板の開口部より外れた前記地板上に設けられた穴部に、他端は前記内側磁極部の中心部に設けられた穴部に、それぞれ回転可能に嵌合していることを特徴とする請求項3から8のいずれかに記載の光量調節装置。
- 外周面が周方向に分割されて異なる極に着磁された円筒形状のマグネット部をもち、軸を中心に回転可能なロータと、前記ロータの回転に応じて作動する出力部材と、前記軸と平行して延出することで形成されるとともに前記マグネット部の外周面に対向する少なくとも一つの外側磁極部と、前記外側磁極部に対向する位置であって前記マグネット部の内周面に対向する内側磁極部と、前記ロータの軸方向に配置され、前記外側磁極部および前記内側磁極部を励磁するコイルと、開口部を備えた地板と、前記出力部材により駆動されて前記地板の開口部に進退することで前記開口部を通過する光束の焦点距離を変化させるレンズとを有し、前記レンズを2箇所の停止位置で保持するレンズ駆動装置であって、
前記マグネット部の着磁された1極あたりの中心角に対する前記外側磁極部1極あたりの中心角の比の値をY、前記マグネット部の径方向の厚みに対する前記マグネット部の着磁された1極あたりの円周上の長さの比の値をXとすると
−0.3X+0.63>Y
の条件を満たすことを特徴とするレンズ駆動装置。 - 前記地板には前記出力部材と嵌合して前記出力部材の作動範囲を規制する案内溝が形成されており、前記案内溝は前記作動範囲が前記ロータのマグネット部と前記外側磁極部との間に作用する磁力による吸引力が反対向きとなる領域を含み、かつ、前記マグネット部の着磁された極の中心と前記外側磁極部との中心が対向する領域を含まないように形成されていることを特徴とする請求項10に記載のレンズ駆動装置。
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