JP2004044774A - 液封防振装置 - Google Patents
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Abstract
【構成】ドーム部6を壁の一部とする縦主液室10と仕切り部材8で仕切られた縦副液室11をダンピングオリフィス通路15で連通し、第1の取付部材3の中心軸方向からの振動入力を吸収する縦方向防振部1を設け、ドーム部6の周囲に第1の取付部材3と同軸状の横方向防振部2を設け、前後方向に前後の横主液室20A,20Bを配置し、ダンピングオリフィス通路24及びアイドルオリフィス通路26でそれぞれを副液室へ連通する。また、横膜ストッパ53と横膜50の間の作動室56を大気開放又は負圧源へ切り換えることにより、横膜50をフリー又は拘束状態に変化させ、フリー状態では、横膜50のバネを非線形的に変化させる。
【選択図】図1
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はエンジンマウント等に使用する液封防振装置であって、主たる振動の入力方向(以下、これをZ軸方向及び縦方向という)における入力振動を主として防振する縦方向防振部と、Z軸方向と直交する方向(以下、これをX・Y軸方向及び横方向という)の入力振動を主として防振する横方向防振部とを一体化し、縦方向及び横方向のいずれの方向からの入力振動にも対応できるようにした液封防振装置に係り、特に、液室の内圧を制御することにより、入力振動に応じてバネ特性及び減衰特性を可変にしたものに関する。
【0002】
【先行技術】
振動発生側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受け側へ取付けられる第2の取付部材と、これら第1の取付部材と第2の取付部材を連結する略円錐状をなす弾性体本体部材とを備え、弾性本体部の内側にこの弾性本体部を弾性壁部の一部とする液室を設け、この液室を仕切り部材により2つに区画して両液室を第1のオリフィス通路で連絡することにより、Z軸方向に主液室と副液室を配設した円錐型マウントは周知である。また、円筒状の内外筒間を弾性部材で連結するとともに、内外筒間を弾性部材によって周方向へ区画された複数の液室を設け、これらの液室間をオリフィス通路で結んだ円筒ブッシュも周知である。
【0003】
さらに、このような円筒型ブッシュと円錐型マウントを複合一体化してエンジンマウントとした液封防振装置は公知である。このようにすると、主たる振動を円錐マウント部で吸収し、これに直交する方向の振動を円筒型ブッシュ部で吸収できるので、単一装置で直交する3軸、XYZ軸方向、すなわち縦及び横方向のすべての振動を吸収可能になる。このような構造の例として、特公昭63−61533、特開昭61−262244、特開2002−21914、特開2001−349369、特開2002−39355、特開2002−89613、特開2002−98155、特開2002−122175がある。
また、縦方向振動部における液室に臨む弾性壁の一部を弾性変形可能な弾性膜とし、この弾性変形を制御することにより、液室内の内圧を制御する内圧制御手段を設けたものも種々公知である。このような構造の例として、特開平10−38017、特開平10−281214、特開2002−070931がある。
さらに、縦方向振動部における液室に臨む弾性壁の一部を薄肉にしてその膜共振を利用することにより低動バネ化させるとともにその範囲をブロード化することも公知である。このような構造の例として、特開平11−351311がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような縦方向防振部と横方向防振部を一体化したものであっても、それぞれの部分において入力振動に対応して発生する内圧は弾性部材の形状等によって決まってしまうから、バネ特性や減衰特性も入力振動に応じて決まってしまう。しかし液室の内圧を制御できれば、共振効率を大きくしたいときは内圧を上げ、逆に低動バネを必要とするときには内圧を下げることにより、バネ特性や減衰特性を入力振動に応じて最適に変化させることが可能になる。
【0005】
このような内圧制御は縦方向防振部においては上記に例示したように公知であるが、縦方向防振部と横方向防振部を複合一体化した液封防振装置において、縦方向並びに横方向のいずれでもこのような内圧制御を行おうとすれば、縦方向防振部と横方向防振部のそれぞれに内圧制御手段を設けなければならず、装置の複雑・大型化並びにコストの大幅アップを招くことになる。
【0006】
そこで、縦方向防振部と横方向防振部を複合一体化した防振装置において、縦方向並びに横方向いずれの振動に対しても内圧制御でき、しかも装置の簡単・小型化並びにコストダウンを可能にすることが望まれることになる。本願発明は係る要請の実現を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1に係る液封防振装置は、主たる振動を主として防振する縦方向防振部と、主たる振動の入力方向と直交する方向の振動を主として防振する横方向防振部とを一体化した液封防振装置であって、縦方向防振部は主たる振動の入力方向に、弾性部材と、この弾性部材を壁の一部とする縦主液室と、この縦主液室にオリフィス通路を介して連通する縦副液室とを配設し、横方向防振部は主たる振動の入力方向と直交する平面内に複数の横液室を配置してこれら横液室間をオリフィス通路で連通したものにおいて、前記縦方向防振部の縦主液室を構成する弾性壁が前記横方向防振部の各液室を構成する弾性壁の一部をなすとともに、前記横方向防振部を構成する横液室の少なくとも一つに、その内圧を制御するための内圧制御手段を設けたことを特徴とする液封防振装置。
【0008】
請求項2は上記請求項1において、前記内圧制御手段は、前記横液室の内圧変動によって弾性変形する可動膜と、この可動膜の変形を規制する可動膜ストッパとを備え、前記可動膜を自由に弾性変形するフリー状態又は前記可動膜ストッパ上へ固定する拘束状態に切り換えることを特徴とする。
【0009】
請求項3は上記請求項2において、前記可動膜ストッパは、前記可動膜の非拘束状態において、前記可動膜を当接させてそのバネ定数を変化させることにより前記可動膜に非線形のバネ特性を与えることを特徴とする。
【0010】
請求項4は上記請求項2において、前記内圧制御手段は、前記可動膜と可動膜ストッパ間に形成される作動室を大気又は吸気負圧に切り換えることにより制御するものであることを特徴とする。
【0011】
請求項5は上記請求項2において、前記内圧制御手段は、前記可動膜をソレノイド又はモーターにより駆動して制御するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項6は上記請求項2〜5のいずれかにおいて、前記可動膜が前記横液室を構成する他の弾性部材と別体に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7は上記請求項2〜6のいずれかにおいて、前記可動膜が耐ガソリン性材料で形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8は上記請求項1において、前記横方向防振部における前記オリフィス通路は、少なくとも共振周波数の異なる第1及び第2のオリフィス通路を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項9は上記請求項1において、前記縦方向防振部及び横方向防振部の各液室を構成する弾性壁のうち少なくとも一部の液室を構成する弾性壁の厚さを他の液室を構成する弾性壁の厚さと異ならせたことを特徴とする。
【0016】
【発明の効果】
請求項1によれば、横方向防振部を構成する複数の横液室の少なくとも一つに内圧制御手段を設けたので、低動バネが要求されるような振動に対しては、内圧制御手段によって横液室の内圧を下げることにより全体を低バネ化する。また、高減衰が要求されるような振動に対しては、内圧制御手段によって横液室の内圧を上げることにより共振効率を高めて高減衰を実現する。
【0017】
しかも、横方向防振部の横液室を構成する弾性壁の一部を、縦方向防振部の縦主液室を構成する弾性壁となるようにして縦方向防振部と横方向防振部を複合一体化したものであるから、横液室と縦主液室は共通の弾性壁を介して相互に連係し、横液室に対して行う内圧制御の結果が縦主液室に及ぶようになる。したがって、内圧制御手段は横液室の少なくとも一つに設ければ足り、縦方向防振部側への設置を省略できるから、縦方向防振部と横方向防振部を複合一体化した液封防振装置であるにもかかわらず、縦方向並びに横方向いずれの振動に対しても内圧制御でき、しかも装置の簡単・小型化並びにコストダウンが可能になる。
【0018】
請求項2によれば、内圧制御手段が可動膜と可動膜ストッパを備えるので、低動バネが要求されるような振動に対しては、可動膜をフリー状態にすることによって内圧を吸収させて低動バネ化する。また、高減衰が要求されるような振動に対しては、可動膜ストッパ上へ可動膜を固定して拘束状態とすることにより、横液室の壁剛性を高くして横液室間のオリフィス通路に流入する液量を多くして高減衰を実現する。
【0019】
請求項3によれば、入力振動が大きくなると可動膜が可動膜ストッパへ当接することにより自由な弾性変形が規制されて可動膜のバネが高くなるので、可動膜が可動膜ストッパへ当接する前後でバネ定数を非線形に変化させることができ、入力振動の大きさに応じて適正なバネ特性を実現できる。
【0020】
請求項4によれば、可動膜の制御を、大気開放と吸気負圧による吸引の切り換えにより行うようにしたので、可動膜と可動膜ストッパ間に形成される作動室を大気開放すると可動膜をフリー状態とし、吸気負圧で吸引すると、可動膜を可動膜ストッパへ吸着固定して拘束状態にする。したがってエンジンの吸気負圧等を利用して内圧制御手段を容易に実現できる。
【0021】
請求項5によれば、可動膜の制御をソレノイド又はモーターによる駆動で行うので、これらの電気的駆動制御により内圧制御手段を容易に実現できる。
【0022】
請求項6によれば、可動膜を横液室を構成する他の弾性部材別体に構成したので、可動膜のみを他の弾性部材と異なる物性材料にでき、必要な部分のみへ最適物性の材料を限定使用できることになり、他の弾性壁を通常の材料のまま使用できるので、全体のコストを抑え、かつ最適性能を得ることができる。
【0023】
このとき請求項7のように、可動膜を耐ガソリン性に優れた材料で構成することにより、耐ガソリン性の要求される環境下で使用するときでも耐久性を高めることができる。しかもこのような耐ガソリン性に優れた材料部分を必要最小限度にすることによってコストダウンすることができる。特にエンジンの吸気負圧を利用して制御する請求項4において効果的になる。
【0024】
請求項8によれば、横方向防振部におけるオリフィス通路として、少なくとも第1及び第2のオリフィス通路を設け、かつそれぞれの共振周波数を異ならせたから、複数の周波数で液柱共振を発生させるとともに、それぞれの共振効率を向上させることができる。
【0025】
請求項9によれば、縦方向防振部及び横方向防振部の各液室を構成する弾性壁の少なくとも一部の液室を構成する弾性壁の厚さを他の液室を構成する弾性壁の厚さを異ならせたことにより、膜共振を異なる複数の周波数で発生させることができ、その結果、これら複数の膜共振を連成してより広範囲の周波数域を低動バネ化できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて車両のエンジンマウントに構成された一実施例を説明する。図1はこのエンジンマウントの全体断面図(図2の1−1線断面図)、図2はZ軸方向の車体取付時上方となる側から示す平面図、図3は90°違いの全体断面図(図2の1−3線断面図)、図4は図1の4−4線断面図、図5は第1の取付部と弾性部材が一体化された内挿体の斜視図、図6は内圧制御の説明図、図7〜図10はバネ特性を示すグラフ、図11は弾性壁の肉厚変化の組合せを示す略図である。
【0027】
なお、以下の説明において、図2の図示状態における左右方向、上下方向及び図1における上下方向を、それぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向とする。これらのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、それぞれ車体取付時の前後方向、左右方向)及び上下方向にも相当する。
【0028】
これらの図において、このエンジンマウントは円錐型マウントに相当する部分である縦方向防振部1と円筒型ブッシュに相当する部分である横方向防振部2を一体的に形成したものであり、縦方向防振部1は、エンジン側へ取付けられる第1の取付部材3と、その周囲を間隔をもって囲む剛性のある円筒状外枠として構成された第2の取付部材4と、これら第1の取付部材3と第2の取付部材4間を連結する弾性本体部5を有する。
【0029】
第1の取付部材3は、その軸心方向が縦方向防振部1における主たる振動の入力方向であるZ軸方向と一致し、弾性本体部5中に埋設されている部分は下方が細径化されZ軸方向に添って下方へ長く延びる円柱状をなしている。第1の取付部材3の弾性本体部5から上方へ突出する部分は扁平部をなしてエンジンのブラケット(図示省略)に取付けられる。
【0030】
弾性本体部5の一部である略円錐状のドーム部6によって形成される略円錐型の空間は液室をなし、図1の下方へ開放され、この開放部へ仕切り部材8及びダイアフラム9が取付けられ、ドーム部6の内壁と仕切り部材8の間に形成される部分を縦主液室10とし、仕切り部材8とダイアフラム9の間を縦副液室11とし、仕切り部材8により液室内を縦主液室10と縦副液室11に区画している。ダイアフラム9はこのエンジンマウントの動特性にとって殆ど無視できる程度の弱いバネを有する可撓性膜部材である。ドーム部6は横液室20を構成する弾性壁の一部をなし、縦主液室10と縦副液室11はZ軸方向へ並べて配設され、各液室にはそれぞれ公知の非圧縮性液体が封入されている。
【0031】
仕切り部材8は、適宜樹脂等からなる円筒部12とこれより小径でかつその内側へ縦副液室11側から嵌合する押さえプレート13とで構成され、円筒部12の外周部に第1のオリフィス通路15が形成され、縦主液室10と縦副液室11を常時連通し、所定の低周波数にて液柱共振を発生して高減衰を実現するダンピングオリフィスとして機能する。仕切り部材8は、縦主液室10の内圧を吸収する弾性膜8aを有する。この弾性膜8aは平面視略円形であり、周囲を円筒部12と押さえプレート13の間に固定されている。
【0032】
円筒部12と押さえプレート13の各中央部分は縦主液室10側へ突出する円形の段部12b,13bをなし、各段部12b,13bは弾性膜8aの上下に所定間隔をもって平行するように設けられ、各々に貫通穴12a及び13aが設けられ、弾性膜8aが縦主液室10の液圧に応じて弾性変形可能になっている。但し、円筒部12と押さえプレート13の段部12b,13bは弾性膜8aの中心部8bに当接して弾性膜8aの上下を支持している。これにより、弾性膜8aは中心部8bと外周部の各固定部間における比較的短いスパンで弾性変形して縦主液室10の内圧を吸収するようになっている。
【0033】
ドーム部6は、縦主液室10を覆う弾性壁であって、横方向防振部2は、ドーム部6の上にその外壁を弾性壁の一部とする複数の横主液室(本実施例では前後一対をなす20A及び20B)が形成されている。これら前後の横主液室20A及び20Bは、それぞれ側方へ開放されて図1に示す断面で略三角形の空間をなすとともに、弾性本体部5と一体に形成されて略水平の前後方向へ広がる前後の端部壁21A、21Bとドーム部6及び液室カバー22又は横膜50で密閉される。
本実施例においては、車体取付時後側となる横主液室(以下、後側横主液室という)20Bに対して液室カバー22が取付けられ、車体取付時前側となる横主液室(以下、前側横主液室という)20Aには横膜50が取付けられている。
【0034】
図4に示すように、液室カバー22は第2の取付部材4の内周面へ略1/4円周の円弧状をなし、後側横主液室20Bへ嵌合されその開口縁部へ密接される。液室カバー22の第2の取付部材4と接触する外表面には周方向へ延びる溝23が上下2段に設けられて第2の取付部材4側へ開放され、この溝23により第2の取付部材4との間にダンピングオリフィス通路24及びアイドルオリフィス通路26が形成されている。アイドルオリフィス通路26は、後側横主液室20Bと横副液室25を連通している。
【0035】
横副液室25は、前後の横主液室20A,20B間に左右一対で設けられたすぐり部27R、27Lのうちの一方である左側のすぐり部27Lに対して、その内部をダイアフラム28で区画することにより形成され、本実施例の場合は、ダイアフラム28と第2の取付部材4との間に形成される。ダイアフラム28は縦方向防振部1におけるダイアフラム9と同様の可撓性膜部材である。図中の符号29はダイアフラム28の座部に埋設された略四辺形の枠金具であり、ダイアフラム28の取付時における位置決め並びに横副液室25を液密にシールすることに役立っている。
【0036】
横方向防振部2におけるダンピングオリフィス通路24は前側横主液室20Aと入り口30で通じ、右側のすぐり部27Rを構成する弾性仕切壁36の外側面に形成された溝31(図4)及び液室カバー22の外側面に形成された下側の溝23を経て横副液室25と出口(図4にてアイドルオリフィス通路26の出口33の下方に重なっている)で通じる。同様にアイドルオリフィス通路26は後側横主液室20Bと入り口32で通じ、横副液室25と出口33で通じる。出口33とアイドルオリフィス通路26は弾性仕切壁35の外側面に形成された溝35aを介して連通する(図4)。
【0037】
但し、これらダンピングオリフィス通路24及びアイドルオリフィス通路26は、互いに長さや通路断面積等の通路特性を異にしており、その結果、ダンピングオリフィス通路24は一般走行時の低周波振動(例えば、7〜15Hz程度)に対して共振点を有し、アイドルオリフィス通路26はこれよりも高周波数側(例えば、15〜40Hz程度)のアイドル振動に対して共振点を有する。本実施例ではダンピングオリフィス通路24がアイドルオリフィス通路26よりも長くなっている。ダンピングオリフィス通路24は本願発明の横方向防振部2における第1のオリフィス通路であり、アイドルオリフィス通路26は同じく第2のオリフィス通路である。
【0038】
左右のすぐり部27R、27Lは図3及び図5に示すように、これらの図の上方へ向かって大気開放された凹部状の空間であり、それぞれの底部をドーム部6の薄肉部34とし、かつ隣り合うすぐり部27R又は27Lとの間を弾性仕切壁35で囲まれている。また、右側のすぐり部27Rは図4に示すように、外側を弾性本体部5と一体の外側面壁36で囲まれている。但し、外側面壁36は横副液室25が設けられる左側のすぐり部27Lには形成されず、その代わりに別体に形成されて取付けられたダイアフラム28で覆われている。
【0039】
薄肉部34は左右のすぐり部27R、27Lの底部をなすとともにドーム部6の一部を特別薄肉部化したものであり、中周波領域の振動入力によって膜共振を発生する。弾性仕切壁35は横主液室20とすぐり部27との間を仕切り、左右に斜め前方及び斜め後方へ向かってそれぞれ放射方向へ形成される。
【0040】
図1に明らかなように、ドーム部6の先端には断面コ字状をなすリング37が埋設一体化されている。このリング37は下面のみが露出して仕切り部材8を構成する円筒部12の外周に形成されている段部38上へ当接して位置決めしている。第2の取付部材4の内面及び液室カバー22の下端部にはドーム部6の先端が密着してシールする。また、端部壁21の外周部にもリング39が埋設一体化され、第2の取付部材4の上端を内側へ折り曲げたカシメ部40で固定されている。
【0041】
第2の取付部材4のうち仕切り部材8の近傍部側となる下方部分は小径部41をなし、この小径部41とその上方部分の境界部に形成された段部42へドーム部6の先端でリング37の上部側外周部近傍部分を乗せている。上下のリング37,39間に液室カバー22を挟んで上部のカシメ部40により固定している。小径部41の内側には、予め固定リング43が溶接されており、この固定リング43の上へ、ダイアフラム9の外周に形成された肥大部、押さえプレート13、円筒部12及びリング37を順に重ねることにより、仕切り部材8とダイアフラム9が一緒に固定されている。
【0042】
横方向防振部2を構成する弾性本体部5、前側端部壁21A、後側端部21B及び弾性仕切壁35は全て同じ単一の弾性部材で連続一体に構成される。但し、前側端部壁21A、後側端部21B、弾性仕切壁35及び弾性本体部5のうち少なくともいずれかを部分的に特性の異なる弾性材料で構成して全体として単一の弾性部材に一体化することは任意にできる。また、これらの弾性材料を縦方向防振部1と共通にするから、ダイアフラム9を除く縦方向防振部1の弾性材料部分と横方向防振部2の弾性材料部分が一体に形成される単一の内挿体7(図5)となり、このエンジンマウント組立時に単品として扱うことができる。
【0043】
図1及び図4に示すように、横方向防振部2において、前側横主液室20A内に横膜50が設けられている。横膜50は弾性本体部5と別体に構成され、後述する吸気負圧により弾性変形されるため、構成材料もヒドリンゴムなどの耐ガソリン性及び耐熱性に優れたものとなっており、周囲に一体化されたリング状のインサート51に囲まれた内側部分が弾性変形自在になっている。
【0044】
横膜50は前側横主液室20Aの側方開放部へ嵌合されて前側横主液室20Aを覆うようになっている。横膜50を弾性本体部5と別体に形成することによって、高価な耐ガソリン性ゴムを最小部分に限定でき、トータルコストを低減できる。また必要な部分のみへ最適物性の材料を限定使用でき、かつ取付も開放部へ嵌合するだけのため容易になる。
【0045】
第2の取付部材4のうち前側横主液室20Aの部分に横穴52が形成され、ここに横膜ストッパ53が嵌合されている。横膜ストッパ53は耐ガソリン性及び耐熱性に優れたポリプロピレンのような適宜樹脂製であって、パイプ部54が一体に形成され、その軸部を通る通気路55が貫通し、横膜ストッパ53と横膜50の間に形成される作動室56と連通している。通気路55の他端はパイプ部54を介して切り換えバルブ57に接続し、切り換えバルブ57を大気又は負圧源のいずれかへ接続切り換えすることにより、作動室56を大気開放又は負圧に切り換えるようになっている。
【0046】
作動室56に臨む横膜ストッパ53の表面には、中央側で通気路55が開口するシート面58が設けられ、その周囲をリング状に囲んで突起部59が一体に形成され、さらにその外周側は横膜50と密着するシール部になっている。
【0047】
横膜50が例えば、振幅が0.03〜0.3mm程度の微少入力振動で弾性変形するときにはシート面58及び突起部59のいずれとも非接触で自由に弾性変形でき、例えば、振幅0.5〜数mm程度のサスペンションを介して路面から入力するような大きな振動になると、突起部59だけがシート面58より先に接触して、横膜50が突起部59を支点とする弾性変形を行い、さらに大振動になるとシート面58へ横膜50が接触するように設定し、横膜50のバネを多段階かつ非線形に変化させる設定になっている。なお、作動室56を負圧にしたときは横膜50がシート面58へ吸引密着され、弾性変形不能な拘束状態になる。
【0048】
図1に示すように、横膜ストッパ53には取付部材60の上端部側がインサートされて一体化しており、取付部材60の下端部側は外向きフランジ61をなして取付金具62のフランジ部63と重ねられ、リベット64で結合一体化されている。取付金具62は第2の取付部材4の下部外周へ溶接されている。横膜ストッパ53はこのリベット64のみにより第2の取付部材4へ固定される。
【0049】
次に、本実施例の作用を説明する。横方向防振部2において、上記のように前後の横主液室20A,20Bを左側のすぐり部27Lに設けた横副液室25と、ダンピングオリフィス通路24及びアイドルオリフィス通路26によって連通させれば、前後方向(X軸方向)における一般走行時の振動に対してダンピングオリフィス通路24の液柱共振による高減衰を実現でき、これよりも高周波数側のアイドル振動に対してアイドルオリフィス通路26の液柱共振により低動バネを実現できる。
【0050】
しかも横方向防振部2と縦方向防振部1の間には、すぐり部27の底部をなす薄肉部34が形成されているので、この薄肉部34が膜共振することにより、縦方向防振部1における上下方向(Z軸方向)の振動に対して低動バネ化を実現できる。そのうえ、ダンピングオリフィス通路15により一般走行時における上下方向の振動に対して高減衰となり、かつ弾性膜8aの存在によって上下方向の振動全体を広範囲の周波数域で低動バネ化できる。
【0051】
したがって、前後方向及び上下方向の各振動について、一般走行時の低周波大振幅振動に対する高減衰と、これより高周波数側の振動に対する低動バネ化を同時に実現できる。しかも、一対のすぐり部27のうち、その一方内に横副液室25を設ければ、すぐり部27の空間を有効に活用でき、装置の小型化が可能になる。
【0052】
なお、Y軸方向の振動に対しては、一種のゴムバネをなす弾性仕切壁35の弾性変形により吸収する。その結果、X軸方向はダンピングオリフィス通路24とアイドルオリフィス通路26の液柱共振により、Y軸方向は弾性仕切壁35により、Z軸方向は縦方向防振部1によりそれぞれ吸収でき、XYZ、3軸方向の各振動を効果的に防振できる。
【0053】
また、弾性仕切壁35の肉厚等を変更してバネ定数を調整すれば、Y軸方向の振動吸収性能を自由に調整できる。本実施例ではすぐり部27の形成により、弾性仕切壁35は柔らかめに設定され、かつ一方のすぐり部27内に横副液室25を設けたことにより左右非対称のバネ定数になる。
【0054】
次に内圧制御について説明する。図6は横膜50の動作を説明する図であり、そのAに示すように、作動室56を大気開放すると、横膜50は弾性変形自由のフリー状態となる。このため、横膜50のバネが低くなり、トータルバネも低くなる。したがって、前後又は上下方向の振動が入力することにより、横主液室20の内圧が変動すると、この内圧変動を横膜50の弾性変形により吸収して低バネとなる。
【0055】
このとき、小振幅振動であれば、横膜50の弾性変形は全くフリーであるから最も低バネの状態となり、多少振動が大きくなって突起部59と接触すると横膜50は突起部59に囲まれた小さな範囲で弾性変形するため、横膜50のバネが上がる。さらに大振動になると、横膜50がシート面58に接触して弾性変形を規制されるのでさらにバネが上がる。したがって、入力振動の大きさによって多段階にバネ定数が変化する非線形のバネ特性を発揮する。
【0056】
特に、7〜15Hz程度の通常走行時における低周波数かつ大振幅振動に対して、横膜50がシート面58へ接続して変形規制されたときは、横膜50が剛体化(本願ではフリー状態より硬くなる状態をいう、以下同)して前側横主液室20Aの壁剛性が上がるため、ダンピングオリフィス通路24へ流れる液量を増大させ、その結果ダンピングオリフィス通路24の共振効率を上げてより高減衰にすることができる。そのうえ大振動入力に対して横膜50の弾性変形を規制するから耐久性を向上できる。
【0057】
図7は横方向防振部2における前後方向振動に対する減衰性能について示すため、横軸に周波数、縦軸に減衰係数Cをとったグラフである。このグラフに明らかなように、横膜50を欠く比較例(破線)に比べて、本実施例(実線)の方が高い減衰係数Cを示す。上記低周波数域において本実施例の方が高減衰を実現して乗り心地を向上できる。
【0058】
なお、このグラフは横方向防振部2における特性である。縦方向防振部1においても、横膜50の剛体化により、上下振動に対してダンピングオリフィス通路15の共振効率が向上する。したがって、縦方向防振部1による上下方向振動及び横方向防振部2による前後振動のいずれかにおいても高減衰を得ることができる。
【0059】
次に、図6のBに示すように、アイドル周波数(例えば15〜40Hz程度)になると、切り換えバルブ57により作動室56を負圧にして、横膜50をシート面58へ吸引密着させる。これにより、横膜50は剛体化するので、トータルバネが高くなり、アイドルオリフィス通路26の共振効率が向上し、低動バネ化する。
【0060】
図8はこれを示し、動バネ定数Kを比較例(破線)に比べて本実施例(実線)の方がアイドル周波数にて低動バネ化できる。なお、このグラフも横方向防振部2における前後方向振動に対する特性であり、横軸に周波数、縦軸に動バネ定数(絶対バネK)をとったものである(以下の図9、10も同様)。
【0061】
さらに加速時の振動による中高周波数(50〜1KHz)の振動に対しては、図6のCに示すように、作動室56を大気開放する。しかもこの振動は比較的小さな振幅であるため、横膜50は横膜ストッパ53による変形規制を受けずフリーとなり、横膜50のバネが最も低くなるから、トータルバネも低バネ化する。
【0062】
図9は中高周波数における横膜50の及ぼす効果を示すため装置全体における上下振動に対する動バネ特性を示し、本実施例(実線)の動バネ定数Kは比較例(破線)よりも全体的に低くなり、図示の中高周波数域全体で低動バネを実現できる。
【0063】
図10は、膜共振の影響を説明するため、縦軸に動バネ定数(絶対バネ定数)K、横軸に周波数をとったグラフであり、図9と同様の中高周波数(50〜1KHz)域における上下振動に対する動バネ特性を示す。なお、このグラフ中には上部として横方向防振部2における各液室にのみ液体を封入し、縦方向防振部1の各液室には液体を封入しない状態で測定した、主として端壁部21A及び21Bの膜共振の効果を示すものと、下部として縦方向防振部1における各液室にのみ液体を封入し、横方向防振部2の各液室には液体を封入しない状態で測定した、主としてドーム部6の膜共振の効果を示すものと、縦方向防振部1及び横方向防振部2の各液室に液体を封入した状態で測定したトータルバネを示すものを併記してある。
【0064】
この例では、上部における前側の端壁部21Aと後側の端壁部21Bのバネを代えてある。具体的には前側の端壁部21Aよりも後側の端壁部21Bを肉厚にし、膜共振周波数を、前側の端壁部21A<後側の端壁部21B<ドーム部のうち例えば左側の薄肉部34<ドーム部の例えば右側の薄肉部34、
となるように設定する。これにより上部である横方向防振部2は、前側の端壁部21Aによる膜共振に基づくピークP1とこれよりも高周波側において後側の端壁部21Bによる膜共振に基づくピークP2を形成する。さらに下部である縦方向防振部1では左側の薄肉部34の膜共振によるピークP3がP2よりも高周波側に生じ、さらにこれよりも高周波側に右側の薄肉部34の膜共振によるピークP4が生じる。
【0065】
この例によれば、上部の動バネ特性における端壁部21A及び21Bによる膜共振のピークP1,P2の発生後、下部の動バネ特性における左右のドーム部6の薄肉部34による膜共振のピークP3,P4が発生するようになっているが、これらを連成した状態となるトータルバネのグラフは、各膜共振のピークP1,P2及びP3、P4の相互作用により、実線で示すように広範囲においてより低動バネを実現できている。
【0066】
本実施例におけるこのような低動バネ化の現象に対する理論的な解明はなされていないが、縦方向防振部1及び横方向防振部2の双方へ液体を封入した実際の使用状態では、横方向防振部2へ振動が入力することにより、その液圧変化がドーム部6へ及ぼされて縦主液室10の内圧に影響を与える結果、これによって低動バネ化を実現するものと考えられる。
【0067】
また、縦方向防振部1への振動入力によってドーム部6より横方向防振部2における各液室の内圧へ影響が与えられる結果、トータルバネの低動バネ化を実現するものと考えられる。いずれにしろ、縦方向防振部1と横方向防振部2の相互作用によって、それぞれの膜共振を利用してトータルバネの低動バネ化を達成させることができる。縦方向防振部1と横方向防振部2におけるそれぞれの膜共振を複数の周波数で発生させるようにしたので、広範囲における低動バネ化を実現するブロード化が可能になっている。
【0068】
しかも、横膜50を設けて全体を低バネにしたので、従来と同程度のトータルバネに設定する場合には、前後の端壁部21A、21B及び左右の薄肉部34、のいずれかもしくは全体をより厚肉にして高バネにできる。その結果、これらの膜共振周波数をより高周波側へ移すことができ、さらに広範囲の周波数域において低動バネを可能にする。
【0069】
なお、上記実施例の他に種々なバリエーションが可能である。例えば前後の端壁部21A、21B及びドーム部6、特に薄肉部34の厚さを調整した種々の組合せが可能である。図11はこの略図であり、便宜上端壁部21のうち前側を21A,後ろ側を21B、ドーム部6の薄肉部34のうち右側を34R,左側を34Lとする。図11の上部は前後方向にて端壁部21A、21Bを示し、下部は左右方向にて左右の薄肉部34R,34Lを同時に示す。
【0070】
このとき、まず、薄肉部の厚さの関係において、34A>34B,34A=34B,34A<34Bの3通りが可能である。同様に端壁部の厚さの関係も21A>21B,21A=21B,21A<21Bの3通りが可能である。したがって、薄肉部と端壁部の組合せにおいては計9通りが可能となる。
【0071】
このように、種々の厚さを変化すると、前後、左右並びに上下の各振動方向に対する方向性を自在に設定できるとともに膜共振周波数を種々に異なった組合せにでき、その結果、これらの連成効果のため防振すべき振動の方向を自由に設定でき、かつより広範囲の低動バネ化を実現できる。
【0072】
さらに、横膜50は前側横主液室20Aだけではなく、後ろ側もしくは前後それぞれに設けることができる。そのうえ、前後の横主液室20A、20Bは一例であって、これを左右とすることもできる。また、上記実施例のように、主液室を前後(又は左右)の2室ではなく、より多数にすることもでき、この場合には横膜50も2以上の複数を設けることができる。また、内圧制御手段として吸気負圧を利用するものだけではなく、ソレノイドやモーターの駆動により横膜50を強制的に弾性変形させてもよい。このようにすれば応答性に優れた電気的制御が可能になる。
【0073】
次に、第2実施例を説明する。なお前実施例と共通する部分には共通符号を用い、原則として重複した説明は省略する。図面に基づいて車両のエンジンマウントに構成された一実施例を説明する。図12は図2と対応する図、図13は図4と対応する図、図14は図5と対応する図である。
【0074】
図12に明らかなように、横方向防振部2の端部壁21が全体として略円盤状をなし、前実施例のようなすぐり部27R、27Lが形成されていない点で相違する。また図13に示すように、前側横主液室20Aと後側横主液室20Bを構成する4つの弾性仕切壁35のうち、右側の前後2つの間に横弾性仕切壁70Rが設けられ、左側の前後2つの間に横弾性仕切壁70Lが設けられている。両横弾性仕切壁70R、70Lは、第1の取付部材3を挟んで左右方向反対側へ延出し、弾性仕切壁35と同様に弾性本体部5の一部として一体に形成されている。
【0075】
両横弾性仕切壁70R、70Lの断面積は弾性仕切壁35と比べて数倍大きなものであって、左右方向を著しく高バネにし、Y軸方向の振動を主として両横弾性仕切壁70R、70Lの弾性変形により吸収する。両横弾性仕切壁70R、70Lの各先端は液室カバー71R、71Lのそれぞれに一体形成されている連結凸部72R、72Lと嵌合し、右側における前後2つの弾性仕切壁35と横弾性仕切壁70Rの間で右側前横液室20C及び右側後横液室20Dと、左側における前後2つの弾性仕切壁35と横弾性仕切壁70Lの間で左側前横液室20E及び左側後横液室20Fとを区画する。
【0076】
右液室カバー71R、左液室カバー71Lは樹脂等の適当な材料からなる略半円弧状の部材であって、第2の取付部材4の内周面へ密に嵌合し、横膜50と共に全体として一つの円弧を形成する。右液室カバー71R、左液室カバー71Lには、各弾性仕切壁35の先端もそれぞれ密接し、その密接部と連結凸部72R、72Lとの間に、右側前横液室20Cへの連通口73R及び右側後横液室20Dへの連通口74R、並びに左側前横液室20Eへの連通口73L及び左側後横液室20Fへの連通口74Lが形成されている。
【0077】
連通口73Rと74Rの間は右アイドルオリフィス通路75Rで連通され、右側前横液室20Cと右側後横液室20Dの間で液体流動を可能とし、かつアイドル周波数に共振点をチューニングさせてある。連通口73Lと74Lの間も左アイドルオリフィス通路75Lで連通され、左側前横液室20Eと左側後横液室20Fの間で液体流動を可能とし、かつアイドル周波数に共振点をチューニングさせてある。
【0078】
これらの右アイドルオリフィス通路75R及び左アイドルオリフィス通路75Lは、それぞれ右液室カバー71Rと左液室カバー71Lの各外周部に形成された溝と第2の取付部材4の内周面との間に形成されている。
【0079】
一方、これらの右アイドルオリフィス通路75R及び左アイドルオリフィス通路75Lの図示状態で下方位置には、右ダンピングオリフィス通路76R及び左ダンピングオリフィス通路76Lが重なって設けられる。右ダンピングオリフィス通路76Rは、横膜50の右側端部近傍における右液室カバー71Rの前端部と前側の弾性仕切壁35との接続部に形成された連通口77Rで前側横主液室20Aと連通し、右液室カバー71Rの後端部に設けられた連通口78Rで後側横主液室20Bと連通する。
【0080】
左ダンピングオリフィス通路76Lは、横膜50の左側端部近傍における左液室カバー71Lの前端部と前側の弾性仕切壁35との接続部に形成された連通口77Lで前側横主液室20Aと連通し、左液室カバー71Lの後端部に設けられた連通口78Lで後側横主液室20Bと連通する。右液室カバー71Rと左液室カバー71Lの各後端部は、パイプ部54の延長上となる後側横主液室20Bの中間部で接し、連通口78Rと連通口78Lは一体化している。
【0081】
なお、右ダンピングオリフィス通路76R及び左ダンピングオリフィス通路76Lは、右アイドルオリフィス通路75R及び左アイドルオリフィス通路75Lに比べて、いずれも通路断面積が小さくかつ長いことにより、右アイドルオリフィス通路75R及び左アイドルオリフィス通路75Lの各共振点より低い一般走行時における低周波数域の入力振動に共振点が合うようになっている。
【0082】
図14に示すように、左横弾性仕切壁70Lの先端は凹部79をなし、この凹部79に連結凸部72Lが嵌合し、図の上下方向へ一体に形成されたシール80によって液密に接合し、かつ左横弾性仕切壁70Lの先端が連結凸部72L上を摺動可能になっている。なお右横弾性仕切壁70Rと連結凸部72Rの関係も同様である。また、各弾性仕切壁35の先端面にもシール81が上下方向に形成され、右液室カバー71右又は左液室カバー71Lに対して液密に接合するようになっている。
【0083】
本実施例では、主として前後方向の振動を防振するものであって、前後方向の振動が発生すると、液体は左右のアイドルオリフィス通路75L及び75Rを通って右側前横液室20C及び右側後横液室20Dの間、並びに左側前横液室20E及び左側後横液室20Fの間を移動し、アイドルオリフィス周波数で液柱共振して低動バネになる。また、左右のダンピングオリフィス通路76L及び76Rを通って前側横主液室20Aと後側横主液室20Bの間に流動し、やはり所定の低周波数で液柱共振を生じて高減衰となる。
【0084】
このとき、横膜50及び内圧制御手段は前実施例と全く同じ構成であり、前実施例同様に機能する。すなわち内圧制御はアイドルオリフィス通路75L及び75Rの共振周波数のとき横膜50を拘束する。すると前側横主液室20Aの壁剛性は高くなるため、前側横主液室20Aと右側前横液室20C及び左側前横液室20Eとの間の弾性仕切壁35の壁剛性も高くなることになり、その結果、右側前横液室20C及び左側前横液室20Eの各壁剛性が高くなって、アイドルオリフィス通路75L及び75Rの共振効率を向上させる。
【0085】
さらに、ダンピングオリフィス通路76L及び76Rの共振周波数でも横膜50を拘束してもよい。なお、端部壁21が略円盤状であるため、前後の端壁部21A及び21Bはそれぞれ、前側横主液室20A及び後側横主液室20Bの上方となる部分とし、ドーム部6の薄肉部34は、前実施例の左右に代わって前側横主液室20A及び後側横主液室20Bを構成するドーム部6の前部又は後部とする。
【0086】
また、本実施例では液室20Aと20Bを主液室とし、他の液室20C〜20Fと異なる名称にしてあるが、これは液室20Aと20Bについて特に前実施例との対応上同じ表現を用いただけであり、各液室20A〜20Fはいずれも機能上において主副の差がない横液室を構成する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るエンジンマウントの図2における1−1線断面図
【図2】実施例に係るエンジンマウントの平面図
【図3】図2の1−3線断面図
【図4】図1の4−4線断面図
【図5】内挿体の斜視図
【図6】横膜の動作説明図
【図7】減衰特性を示すグラフ
【図8】アイドル時の動バネ特性を示すグラフ
【図9】中高周波数域の動バネ特性を示すグラフ
【図10】各部の動バネ特性をあわせて示すグラフ
【図11】弾性壁の肉厚変化の組合せを示す略図
【図12】第2実施例に係る図2と対応する図
【図13】第2実施例に係る図4と対応する図
【図14】第2実施例に係る図5と対応する図
【符号の説明】
1:縦方向防振部、2:横方向防振部、3:第1の取付部材、4:第2の取付部材,5:弾性本体部、6:ドーム部、7:弾性本体部、8:仕切り部材、8a:弾性膜、10:縦主液室、11:縦副液室、15:ダンピングオリフィス通路、20A:前側主液室、20B:後側主液室、21A:前側端部壁、21B:後側端部壁、22:液室カバー、24:ダンピングオリフィス通路、25:横副液室、26:アイドルオリフィス通路、27:すぐり部、34:薄肉部、35:弾性仕切壁、36:外側面壁、50:横膜、53:横膜ストッパ、56:作動室
Claims (9)
- 主たる振動を主として防振する縦方向防振部と、主たる振動の入力方向と直交する方向の振動を主として防振する横方向防振部とを一体化した液封防振装置であって、縦方向防振部は主たる振動の入力方向に、弾性部材と、この弾性部材を壁の一部とする縦主液室と、この縦主液室にオリフィス通路を介して連通する縦副液室とを配設し、
横方向防振部は主たる振動の入力方向と直交する平面内に複数の横液室を配置してこれら横液室間をオリフィス通路で連通したものにおいて、
前記縦方向防振部の縦主液室を構成する弾性壁が前記横方向防振部の各横液室を構成する弾性壁の一部をなすとともに、
前記横方向防振部を構成する横液室の少なくとも一つに、その内圧を制御するための内圧制御手段を設けたことを特徴とする液封防振装置。 - 前記内圧制御手段は、前記横液室の内圧変動によって弾性変形する可動膜と、この可動膜の変形を規制する可動膜ストッパとを備え、前記可動膜を自由に弾性変形するフリー状態又は前記可動膜ストッパ上へ固定する拘束状態に切り換えることを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
- 前記可動膜ストッパは、前記可動膜の非拘束状態において、前記可動膜を当接させてそのバネ定数を変化させることにより、前記可動膜に非線形のバネ特性を与えることを特徴とする請求項2に記載した液封防振装置。
- 前記内圧制御手段は、前記可動膜と可動膜ストッパ間に形成される作動室を大気又は吸気負圧に切り換えることにより制御するものであることを特徴とする請求項2に記載した液封防振装置。
- 前記内圧制御手段は、前記可動膜をソレノイド又はモーターにより駆動して制御するものであることを特徴とする請求項2に記載した液封防振装置。
- 前記可動膜が前記横液室を構成する他の弾性部材と別体に形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載した液封防振装置。
- 前記可動膜が耐ガソリン性材料で形成されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載した液封防振装置。
- 前記横方向防振部における前記オリフィス通路は、共振周波数の異なる少なくとも第1及び第2のオリフィス通路を備えることを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
- 前記縦方向防振部及び横方向防振部の各液室を構成する弾性壁のうち少なくとも一部の液室を構成する弾性壁の厚さを他の液室を構成する弾性壁の厚さと異ならせたことを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
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