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JP2003229022A - 高分子固体電解質及びその製造方法 - Google Patents

高分子固体電解質及びその製造方法

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JP2003229022A
JP2003229022A JP2002027432A JP2002027432A JP2003229022A JP 2003229022 A JP2003229022 A JP 2003229022A JP 2002027432 A JP2002027432 A JP 2002027432A JP 2002027432 A JP2002027432 A JP 2002027432A JP 2003229022 A JP2003229022 A JP 2003229022A
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Japan
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salt monomer
group
salt
polymer
solid electrolyte
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Mutsuhiro Matsuyama
睦宏 松山
Tamotsu Orihara
保 織原
Takeshi Watanabe
毅 渡邉
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Sumitomo Bakelite Co Ltd
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Sumitomo Bakelite Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安全性・経時安定性に優れ、室温付近でも1
-3S/cm以上の高いイオン導電性を発揮し、成形性
にも優れ、簡便に、且つ不純物の出来るだけ少ない状態
で製造した高分子固体電解質を提供する。 【解決手段】 イオン的相互作用を有する塩モノマー前
駆体と、該塩モノマー前駆体と相溶性の良い1種類以上
の重合性モノマーとを、他の構成成分と共に、室温若し
くは室温以下の温度で均一に混合した後、室温若しくは
室温以上の温度で加熱し、若しくは活性光線の作用によ
り、塩モノマー前駆体を塩モノマーに変換させると共
に、該塩モノマーと重合性モノマーとの共重合反応によ
り、マトリックスとなる特定構造の共重合ポリマーを生
成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、高分子固体電解
質に関し、さらに詳しくは、高分子マトリックス中にお
いて、主としてリチウム系金属化合物を電荷のキャリア
として含有することにより、高いイオン導電性を発揮
し、かつ漏液等が無く安全性及び経時安定性、成形性に
優れた高分子固体電解質の調製過程において、吸湿性が
高い等の理由により通常の方法では高純度精製の困難な
塩モノマーを、予め合成及び精製することなく、塩モノ
マーの前駆体を、高分子固体電解質の他の構成成分と室
温若しくは室温以下の温度で混合した後、室温若しくは
室温以上の温度で加熱することにより、所期の塩モノマ
ーが高分子固体電解質内部で形成されることを特徴とす
る、高分子固体電解質及びその製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯電話やPDA,ノートパソコ
ンに代表される情報携帯機器、屋外における使用頻度の
高いMDプレーヤー,MP3プレーヤー,デジタルカメ
ラ等の携帯機器、あるいはこれからの高齢化社会に需要
が増えることが予測される、携帯用医療器具やPHSタ
イプ福祉機器類などの普及に伴い、より軽量、小容積
で、安価、安全、高出力な二次電池に対する需要が高ま
ってきている。そしてそれらの要求を満たす電源用二次
電池材料として、高分子固体電解質が注目されてきてい
る。
【0003】従来、二次電池用電解質としては一般に、
電気化学的にみて比較的安定な有機溶媒に、イオン性化
合物を溶解させた液体電解質が用いられてきた。しかし
この場合、電池内部に流動性のある液体を含有するた
め、長期間使用した場合や電池自身が何らかの理由によ
り外部から加熱された場合、あるいは機器の故障により
過充電されたり物理的に損壊した場合に、人体に被害あ
るいは使用機器に障害を与えうる電解液が電池内部から
外部に漏出する危険性を常に孕んでいた。
【0004】このため、これまでに種々の方法により、
電解液の外部への漏出を防ぐための試みが為されてき
た。電解液に高分子化合物を含有若しくは含浸させ、電
解液全体をゲル状物とすることによる方法は、その一つ
としてあげられる。ゲル化方法には、ポリマー同士の相
互作用により物理的にゲル化させる方法と、架橋剤を用
いて共有結合により直接的にポリマー同士を連結する方
法とがある。一般に前者を物理ゲル、後者を化学ゲルと
呼称することが多い。これらは柔軟であるため成型が容
易であり、また比較的軽量なものが多く、これらの点が
二次電池用に狭いスペースしか確保できない小型機器類
には、設計上の大きなメリットとなっている。しかし比
較的多くの有機溶媒を含むため、高温域における形態安
定性が不十分なものも多く、例えば、不測の事象に於い
て長時間高温条件にさらされた場合に液漏れを起こした
り、あるいは内圧上昇により電池容器が圧力損壊する例
も見受けられた。
【0005】その一方で、有機溶媒を全く含まないいわ
ゆる「全固体型電解質」の開発もこれまで活発に行われ
てきた。各種リチウム塩とポリエチレンオキサイドの混
合物がその一例としてあげられる。この場合、上記のよ
うな漏液等の被害はほぼ克服されているが、液状部分が
存在しないが故に低温領域での電池特性が悪く、比較的
高温でなければ所定の電導度を発現できない系が多い。
これは人間の活動領域において比較的低温条件にさらさ
れる機会の多い各種携帯機器にとっては、致命的な欠点
と言えよう。
【0006】一方で、ゲル型電解質及び全固体型電解質
にみられる欠点を克服するため、常温で流動性を有する
イオン性化合物、いわゆる「常温溶融塩」を何らかの高
分子化合物と組み合わせて、電解質として用いる試みも
為されている。しかしハロゲン化アルミニウム化合物等
の比較的危険性の高い化合物を利用したものが多く、安
全性の点から問題が大きい。また従来検討されてきたイ
ミダゾリウム型化合物は電位窓を広く確保することが難
しいため、高容量化を目的としてリチウム電池等に適用
する際には困難を伴うことが多いという欠点を有する。
【0007】また、常温溶融塩は、常温で液状若しくは
ペースト状といった形態をとることが多く、且つ蒸気圧
は著しく低いものが多いため、通常の方法による精製に
は必然的に多大な困難が伴う。しかしその半面、蒸気圧
が著しく低く、場合によっては粘凋な液状であり、且つ
電導度は比較的高いため、精製の困難な点さえクリアで
きれば、固体電解質構成成分として満足すべき諸条件の
殆ど全てを満たす稀有な素材であるのも確かである。
【0008】一方で、無機化合物をベースポリマーとし
た固体電解質の開発も最近活発に行われており、中には
室温付近で比較的高い電導度を示しうる例も報告されて
いる。しかしいずれも、可撓性に乏しいため成型が困難
であるという欠点を克服しきれておらず、製品化する上
での最大の障害となっていることは否めない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べたように、
二次電池用途の固体電解質としては様々な系がこれまで
提案されてきており、次世代の固体電解質に向けて年々
開発競争も熾烈を極める情勢となってきている。どの様
式においても一長一短があるため一概に優劣を論じるこ
とは出来ないが、成型性に優れ比較的電導度も高い点な
どを理由に、ゲル状電解質に関する研究がこれまで活発
に行われてきている。しかし電導度の問題さえ解決でき
るならば、より安定性/安全性の高い全固体型電解質の
方が望ましいと考えられる。
【0010】ここでいま一度、それぞれの系における問
題点を整理すると、ゲル状固体電解質の場合は、比較
的多量の溶媒を含むことに伴う漏液,発火の危険性,
経時安定性(ゲル骨格の部分結晶化に伴う固液分離が無
いかどうか)等が挙げられ、全固体型電解質の場合は、
低温域における電導度の劣化,成型性等が挙げられ
よう。
【0011】常温溶融塩を固体電解質の構成成分の一つ
として適用する場合は、さらに構成成分の合成及び精
製操作の困難さ、が挙げられる。また、高分子固体電解
質を構成する原料としての化学種の組み合わせによって
は、高分子固体電解質に含有される高分子量成分と他の
構成成分の相溶性、あるいは金属塩と他の構成成分の相
溶性など、構成成分同士の相溶性が良好でないために製
造上大きな問題をきたす恐れがあり、この場合は、高
分子固体電解質の構成成分同士の相溶性の改良も重要な
課題となる。
【0012】そこでこの発明の主たる目的は、室温付近
でも10-3S/cm以上の、高いイオン導電性を発現
し、且つ可尭性、機械強度、柔軟性、経時安定性に優
れ、尚且つ人間の活動圏内に於いて十分に安全な高分子
固体電解質を、出来るだけ簡便に且つ不純物の出来るだ
け少ない状態で得ることとする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、イオン的相
互作用を有する塩モノマーを、高分子マトリックス中に
均一に分散させる際に、塩モノマーそのものを直接用い
るのではなく、予め高度に精製された塩モノマー前駆体
を均一に系中に分散させた後、これを熱エネルギー若し
くは活性光線の作用により、塩モノマーへ変換せしめる
ことにより、内部構造がより均質で且つ不純物や水分の
含有量の少ない、高分子固体電解質が得られることを見
出し、さらに検討を進めて本発明を完成させるに至っ
た。
【0014】即ち本発明は、イオン的相互作用を有する
塩モノマー成分と、1種類以上の重合性モノマー成分と
からなる、特定構造の共重合ポリマー、金属塩、および
可塑剤からなる高分子固体電解質であって、特定構造の
共重合ポリマーが、塩モノマー前駆体と、該塩モノマー
前駆体と相溶性の良い1種類以上の重合性モノマーと
を、他の構成成分と共に、室温若しくは室温以下の温度
で均一に混合した後、室温若しくは室温以上の温度で加
熱し、若しくは活性光線の作用により、塩モノマー前駆
体を塩モノマーに変換させると共に、該塩モノマーと重
合性モノマーとの共重合反応により生成せしめたもので
あることを特徴とする高分子固体電解質であり、さらに
はその製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明は、イオン的相互作用を有
する塩モノマーそのものを直接用いるのではなく、塩モ
ノマーの前駆体を予め高度に精製し、重合性モノマーを
含む系中に均一に混合した後、これを塩モノマーへ変換
せしめると共に共重合させることにより、内部構造がよ
り均質で且つ不純物や水分の含有量の少ない、高分子固
体電解質を得ることを骨子とする。
【0016】この方法によれば、固体状の塩モノマー
が、固体電解質の他の構成成分との相溶性が良好でない
場合でも、塩モノマー前駆体は極性が比較的低いため、
他の構成成分との相溶性が良い場合が多く、塩モノマー
成分を系中に均一に分散させることが可能になる。この
塩モノマー前駆体は、室温若しくはそれ以下の温度では
化学変化若しくは物理変化を起こさず、安定に存在しう
る化合物であるが、熱エネルギー若しくは活性光線によ
り処理されて所期の塩モノマーへと変換され、同時に重
合性官能基の作用により、高分子マトリックス中に共有
結合により安定に固定化される。
【0017】この高分子固体電解質の内に、アルカリ金
属塩若しくはアルカリ土類金属塩及び可塑剤を均一に共
存させることにより、電荷キャリアとして機能する化学
種の移動度を大きく低下させることが無く、高いイオン
導電性を発揮でき、かつ漏液等が無く安全性及び経時安
定性、成形性に優れた高分子固体電解質が実現される。
【0018】このような塩モノマー前駆体としては、一
般式[I]で表され、重合性官能基を備えた含窒素化合
物、及び重合性官能基を備えた有機酸エステルから構成
され、また、一般式[II]で表され、重合性官能基を備え
た含硫黄化合物、及び重合性官能基を備えた有機酸エス
テルから構成されるものが挙げら、また、これらの混合
物でも良い。
【0019】
【化3】
【0020】一般式[I]において、X1,X2はR3及び
2−P2の組み合わせからなり、P1,P2はそれぞれ重
合性官能基を含む置換基、Acは一般式[I]で表される
化合物が塩モノマーに変換されたとき、イオン的相互作
用に直接的に関与する官能基を表し、R1,R2,R3
4,R5はそれぞれアルキル基、アルケニル基、アラル
キル基、アラルケニル基、アルコキシアルキル基、アシ
ルオキシアルキル基、スルホアルキル基、アリール基、
あるいは芳香族複素環残基等からなる。X2,R4,R5
はいずれか一対若しくはそれ以上が相互に共有結合によ
り連結され、環状構造を形成していても構わない。ま
た、X2−N,R4−N,R5−Nに示される共有結合の
いづれか一つが、単結合でなく二重結合である場合は、
4,R5のいづれか一つは存在しない。また、P1−R1
及びP2−R2は複数の共有結合により連結されていても
良く、P2はR2のほかR3,R4,R5と同時に共有結合
により連結されていても構わない。また、P1もしくは
1は、P2,R2,R3,R4,R 5の1つ以上の部位と、
一つ以上の共有結合により連結されていても構わない。
同様にP2もしくはR2は、P1,R1の1つ以上の部位と
一つ以上の共有結合により連結されていても構わない。
但し、何れの場合もこれらの相互連結によりP1及びP2
の重合性は阻害されない。このような塩モノマー前駆体
は、いずれか1種もしくは複数種が混合されていても良
い。
【0021】
【化4】
【0022】一般式[II]において、X3,X4はR8及び
7−P4の組み合わせからなり、P3,P4はそれぞれ重
合性官能基を含む置換基、Acは一般式[II]で表される
化合物が塩モノマーに変換されたとき、イオン的相互作
用に直接的に関与する官能基を表し、R6,R7,R8
9はそれぞれアルキル基、アルケニル基、アラルキル
基、アラルケニル基、アルコキシアルキル基、アシルオ
キシアルキル基、スルホアルキル基、アリール基、ある
いは芳香族複素環残基等からなる。X4,R9は相互に共
有結合により連結され環状構造を形成していても構わな
い。また、X4−Sに示される共有結合が単結合でな
く、二重結合である場合は、R9は存在しない。また、
3−R6及びP4−R7は複数の共有結合により連結され
ていてもよく、P4はR7のほかR8,R9と同時に共有結
合により連結されていても構わない。また、P3もしく
はR6は、P4,R7,R8,R9の1つ以上の部位と、一
つ以上の共有結合により連結されていても構わない。同
様にP4もしくはR7は、P3,R6の1つ以上の部位と一
つ以上の共有結合により連結されていても構わない。但
し、何れの場合もこれらの相互連結によりP3及びP4
重合性は阻害されない。このような塩モノマー前駆体
は、いずれか1種もしくは複数種が混合されていても良
い。
【0023】塩モノマーを構成するカチオンに変換され
るカチオン前駆体部位と、アニオンに変換されるアニオ
ン前駆体部位のモル比は、50/1から1/50の範囲
にあることが望ましく、さらには10/1から1/1で
あることが望ましいが、特にこの範囲に限定されるもの
ではない。
【0024】これらの塩モノマー前駆体は、室温若しく
はそれ以下の温度では、化学変化若しくは物理変化を起
こすことはなく安定な化合物であるが、室温若しくは室
温以上の温度で、加熱し若しくは活性光線により処理す
ることにより、一般式[III]または一般式[IV]で表され
る構造の、塩モノマーに変換される。
【0025】
【化5】
【0026】一般式[III]の化合物は、重合性官能基を
備えたアルキル四級アンモニウムカチオンまたは含窒素
複素環式カチオン、及び重合性官能基を備えた有機酸ア
ニオンから構成されており、Ac-はイオン的相互作用に
直接的に関与するイオン性官能基を表す。
【0027】
【化6】
【0028】一般式[IV]の化合物は、重合性官能基を備
えたスルホニウムカチオン、及び重合性官能基を備えた
有機酸アニオンから構成されており、Ac-はイオン的相
互作用に直接的に関与するイオン性官能基を表す。
【0029】尚、イオン的相互作用に直接的に関与する
イオン性官能基Ac-としては、例えば、カルボキシル
基、スルホキシル基等はその一例として挙げられるが、
本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。ま
た、塩モノマーを構成するカチオン部位とアニオン部位
のモル比、すなわちカチオン/アニオン比は10/1か
ら1/10の範囲にあることが望ましく、さらには1/
1であることが望ましいが、特にこの範囲に限定されな
い。なお、この比が1/1でない場合は、金属塩等の高
分子固体電解質の他の構成成分との間で電荷バランスが
図られていれば良い。
【0030】塩モノマーを構成するカチオンとアニオン
のモル比が1/1でない場合は、電荷バランスを図るた
めに、重合性官能基を備えていない高分子化学種若しく
は低分子化学種若しくは各種金属塩等の添加を行うのが
望ましい。但しこの場合、電解質中におけるカチオン性
キャリアー(例えばリチウムイオン等)の輸率低下を避
けるために、アニオン性キャリアーの移動度は低いか、
もしくは移動度の比較的高いアニオン性化学種(ハロゲ
ンアニオン等)の電解質中に含まれる濃度が低い方が好
ましい。この条件を満たすものであれば如何様な化学種
でも実使用に供することは可能であるが、電導度等の電
気的特性において良好な結果を得るためには、特に移動
度の高いアニオン性化学種、即ちハロゲンアニオン濃度
が、500ppm以下であることが望ましい。常温溶融
塩を使用した従来の固体電解質の場合、対アニオンとし
て例えばAlCl4-等の金属酸アニオンを使用する場合が
あるが、この場合、高分子固体電解質の調製直後はハロ
ゲンイオンが低濃度しか含有されていなくても、長期に
渡る使用に際し、大気中からの吸湿により分解して系中
に大量のハロゲンアニオンを発生し、その結果電池特性
の悪化をもたらす事例が多々見受けられた。本発明者ら
の開発した高分子固体電解質は塩モノマーを使用するこ
とを特徴とするが、塩モノマー合成過程において対アニ
オンを重合性官能基を備えた対アニオンと交換したり、
あるいは対イオンの交換が対カチオンと同時に行えるた
め、移動度の高いフリーのハロゲンアニオン含有量を低
減することが容易であると言う特徴を有する。
【0031】熱エネルギー若しくは活性光線の作用によ
り変換されて生成した塩モノマーと、重合性モノマーと
の重合反応としては、ラジカル重合、イオン重合、配位
重合、縮重合、付加重合等、種々の既知の重合方法が可
能であり、重合操作の簡便さ故にラジカル重合、配位重
合、縮重合、付加重合が望ましいが、特にこれらに限定
されない。
【0032】本発明に用いられる塩モノマー前駆体か
ら、塩モノマーへの変換方法としては、熱エネルギー若
しくは活性光線の利用が挙げられるが、室温以上の加熱
によりアミン若しくはチオエーテルを、アルキレーショ
ンする方法が最も好ましい。特に、有機酸エステルとし
てアルキル若しくはアリールスルホン酸エステル、アミ
ンとしてトリアルキルアミン若しくはアルキルアリール
アミンを用いた場合は、良好な収率でアルキル化反応が
進行し、反応系内に均一に分散した状態で塩モノマーが
生成する。更に、このとき同時に重合性官能基による重
合反応を並行して行った場合、塩モノマーが系内に均一
に分散したまま固体化するので、内部組成の均質な高分
子固体電解質が得られる。なお、上記に挙げた前駆体及
び反応様式に限らず、極性転換可能であれば特にこれら
に限定されない。
【0033】本発明に用いられる、塩モノマー前駆体と
相溶性の良い1種以上類の重合性モノマーは、高分子固
体電解質の可塑性、成形性、熱安定性の調節の目的の
他、高分子固体電解質の未硬化原液の粘度調節の目的の
ために添加せしめるもので、イオン性解離基を持たない
ものが好ましい。この目的のための重合性モノマーとし
ては、上記塩モノマーとラジカル共重合させる場合は、
炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステル、スル
ホン酸エステル、若しくは芳香族化合物であることが好
ましく、さらにはアクリル酸エステル、メタクリル酸エ
ステル、スルホン酸エステル、アクリルアミド、メタク
リルアミド、スルホンアミド、若しくは置換基を備えた
スチレン誘導体等に代表されるアリール化合物が望まし
いが、上記塩モノマーと共重合可能な化学種であれば特
に限定されない。また、電池特性上何ら問題が無けれ
ば、前記の一般式[I],一般式[II]に示した、塩モノマ
ー前駆体化合物のいずれかと同一の化合物であっても良
い。
【0034】塩モノマー前駆体と重合性モノマーの相溶
性は、塩モノマー前駆体、重合性モノマー、及び他の構
成成分を混合した直後の、未硬化原液の状態で透明均一
な溶液若しくはペーストの形態をとるものが最も好まし
い。但し、実際に高分子固体電解質を製造する際に、必
然的に必要とされる有限な時間の範囲で、乳化、エマル
ジョン、コロイド、コアセルベートなどの状態で十分安
定に形態維持可能であれば、透明均一な溶液となりうる
重合性単量体に限らず種々の重合性単量体が適用可能で
ある。
【0035】本発明に用いられる金属塩としては、Li
PF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiB
4、LiN(CF3SO32、C49SO3Li、LiC
(CF3SO23、LiFが挙げられ、これらを単独若し
くは2種以上を混合して用いても構わない。
【0036】本発明に用いられる可塑剤としては、プロ
ピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート
(EC)、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネー
ト、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、テ
トラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシ
ド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が
挙げら挙げられ、これらを単独若しくは2種以上を混合
して用いても構わない。但し、全固体高分子電解質とし
ての特質を実現するため、可塑剤の添加量は高分子固体
電解質全体に対して30wt%以下であることが望まし
い。
【0037】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明するが、本発明はこれによって何ら限定されるもので
はない。
【0038】[実施例1] 塩モノマーAの前駆体A−1:p−スチレンスルホン酸
メチルエステルの合成 スチレンスルホニルクロリド20.3g(100mmo
l)を、無水メタノール200mlに均一に溶解する。
これに28wt%ナトリウムメトキシド/メタノール溶
液19.5gを、攪拌しながら室温でゆっくり滴下する
と定量的に反応が進行した。反応液を蒸留水で希釈した
後、クロロホルムで生成物を抽出し、炭酸水素ナトリウ
ム水溶液及び蒸留水で洗浄し、回収したクロロホルム相
を減圧濃縮して、粗生成物を回収した。粗生成物は常法
により減圧蒸留を行って精製し、淡黄色透明な液状生成
物:スチレンスルホン酸メチルエステルを得た。
【0039】塩モノマーAの前駆体A−2:p−ジエチ
ルアミノメチルスチレンの合成 ジエチルアミン7.3
1g(100mmol),炭酸カリウム7.60g(55
mmol),特級エタノール100ml,および蒸留水
5mlの懸濁液を、室温で緩やかに攪拌しながら、クロ
ロメチルスチレン15.3g(100mmol)/特級
エタノール希釈液をゆっくり滴下した。滴下終了後は、
攪拌をやや強めにして終夜室温で攪拌した。反応液は濾
過して不溶分を除去した後、濾液を塩酸酸性にしてトル
エンを加えて分液操作を行い、水相のみ回収した。この
水相を5N水酸化ナトリウム水溶液で塩基性とし、トル
エンを加えて分液操作を行い、トルエン相を回収した。
このトルエン相を無水硫酸ナトリウム上で一晩乾燥させ
た後、溶媒を減圧溜去し、生成物:p−ジエチルアミノ
メチルスチレンを得た。
【0040】高分子固体電解質の調製 上記塩モノマー前駆体A−1:0.0119g、前駆体
A−2:0.0114g、エチレングリコールジメタク
リレート0.0119g、およびメチルアクリレート0.
0897mlの、(1M)LiPF6[EC/PC]溶液0.
744mlを、室温で混合し均一に溶解させた。この溶
液を十分に脱気したのち、50℃/30minの加熱処
理を行った。処理後すぐに240mMベンゾイルパーオ
キサイド[EC/PC]溶液0.167mlを加えて攪拌
し、均一に溶解させ、引き続きこの溶液を80℃で10
0分加熱し、淡黄色透明のゲル状高分子電解質を得た。
【0041】高分子固体電解質の電導度評価 上記で得られた高分子電解質について、交流インピーダ
ンス法により電導度を測定した。測定の際の周波数範囲
は50Hz〜30MHz、電圧は0.5Vとした。測定
の結果、室温(20℃)に於ける電導度は4.75×1
-3S/cmであった。この淡黄色透明のゲル状固体
は、2ヶ月経過後も変色/分解等は観察されなかった。
【0042】[実施例2] 高分子固体電解質の調製 上記塩モノマー前駆体A−1:0.6443g、前駆体
A−2:0.6152g、エチレングリコールジメタク
リレート0.0991g、ジメチルアクリルアミド0.1
02ml、エチレンカーボネート/プロピレンカーボネ
ート[1mol/1mol]混合溶媒0.150ml、および過塩素
酸リチウム粉末0.2128gを、室温で混合し暫く攪
拌して均一に溶解させた。これに引き続き240mMベ
ンゾイルパーオキサイド[EC/PC]溶液0.167m
lを加えて攪拌し、均一に溶解させた。この溶液を十分
に脱気したのち、80℃で100分加熱し、無色透明で
かつ柔軟な固体高分子電解質を得た。
【0043】高分子固体電解質の電導度評価 得られた高分子電解質について、実施例1と同様にして
電導度を測定した結果、電導度は5.81×10-3S/
cmで、2ヶ月経過後も変色/分解等は観察されなかっ
た。
【0044】[比較例1] 塩モノマーAの合成 実施例で得られた塩モノマー前駆体A−1:3.965
g(20mmol)、及びA−2:3.786g(20
mmol)を均一に混合し、50℃/60min加熱攪
拌した。反応は定量的に進行した。得られた粘凋な生成
物に、テトラヒドロフランを加えてほぐし、白色固形物
を回収した。これを再結晶により精製し、塩モノマーA
を得た。
【0045】[高分子固体電解質の調製]実施例1にお
いて、高分子固体電解質を調製する際に、塩モノマー前
駆体A−1及びA−2の代わりに、上記で得られた塩モ
ノマーAを用いたが、この塩モノマーAは、LiPF
6[EC/PC]溶液に対する溶解性が低く、均一溶液と
ならなかった。
【0046】
【発明の効果】本発明に拠れば、室温付近でも10-3
/cm以上の、高いイオン導電性を発現し、且つ可尭
性、機械強度、柔軟性、経時安定性に優れた高分子固体
電解質を、簡便に、且つ不純物の出来るだけ少ない状態
で製造することが可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // H01M 10/40 H01M 10/40 B Fターム(参考) 4J011 PA06 PA26 PA30 PA35 PA37 PA45 PB23 PB27 PC02 PC08 4J100 AB07P AB07Q AL02R AL03R AL62R AM15R AM19R BA32P BA55Q CA04 CA05 EA03 FA18 JA43 5G301 CA08 CA16 CA30 CD01 5H029 AJ06 AM16 CJ02 DJ09 HJ01 HJ02

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオン的相互作用を有する塩モノマー成
    分と、1種類以上の重合性モノマー成分とからなる、特
    定構造の共重合ポリマー、金属塩、および可塑剤からな
    る高分子固体電解質であって、特定構造の共重合ポリマ
    ーが、塩モノマー前駆体と、該塩モノマー前駆体と相溶
    性の良い1種類以上の重合性モノマーとを、他の構成成
    分と共に、室温若しくは室温以下の温度で均一に混合し
    た後、室温若しくは室温以上の温度で加熱し、若しくは
    活性光線の作用により、塩モノマー前駆体を塩モノマー
    に変換させると共に、該塩モノマーと重合性モノマーと
    の共重合反応により生成せしめたものであることを特徴
    とする高分子固体電解質。
  2. 【請求項2】 塩モノマー前駆体が、一般式[I]で表さ
    れ、重合性官能基を備えた含窒素化合物と、重合性官能
    基を備えた有機酸エステルとから構成されることを特徴
    とする、請求項1記載の高分子固体電解質。 【化1】 式中、X1,X2はR3及びR2−P2の組み合わせからな
    り、P1,P2はそれぞれ重合性官能基を含む置換基、A
    cは一般式[I]で表される化合物が塩モノマーに変換さ
    れたとき、イオン的相互作用に直接的に関与する官能基
    を表し、R1,R2,R3,R4,R5はそれぞれアルキル
    基、アルケニル基、アラルキル基、アラルケニル基、ア
    ルコキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、スルホ
    アルキル基、アリール基、あるいは芳香族複素環残基等
    からなる。X2,R4,R5はいずれか一対若しくはそれ
    以上が相互に共有結合により連結され、環状構造を形成
    していても構わない。また、X2−N,R4−N,R5
    Nに示される共有結合のいづれか一つが、単結合でなく
    二重結合である場合は、R4,R5のいづれか一つは存在
    しない。また、P1−R1及びP2−R2は複数の共有結合
    により連結されていても良く、P2はR2のほかR3
    4,R5と同時に共有結合により連結されていても構わ
    ない。また、P1もしくはR1は、P2,R2,R3,R4
    5の1つ以上の部位と、一つ以上の共有結合により連
    結されていても構わない。同様にP2もしくはR2は、P
    1,R1の1つ以上の部位と一つ以上の共有結合により連
    結されていても構わない。但し、何れの場合もこれらの
    相互連結によりP1及びP2の重合性は阻害されない。こ
    のような塩モノマー前駆体は、いずれか1種もしくは複
    数種が混合されていても良い。
  3. 【請求項3】 塩モノマー前駆体が、一般式[II]で表さ
    れ、重合性官能基を備えた含硫黄化合物と、重合性官能
    基を備えた有機酸エステルから構成されることを特徴と
    する、請求項1記載の高分子固体電解質。 【化2】 式中,X3,X4はR8及びR7−P4の組み合わせからな
    り、P3,P4はそれぞれ重合性官能基を含む置換基、A
    cは一般式[II]で表される化合物が塩モノマーに変換さ
    れたとき、イオン的相互作用に直接的に関与する官能基
    を表し、R6,R7,R8,R9はそれぞれアルキル基、ア
    ルケニル基、アラルキル基、アラルケニル基、アルコキ
    シアルキル基、アシルオキシアルキル基、スルホアルキ
    ル基、アリール基、あるいは芳香族複素環残基等からな
    る。X4,R9は相互に共有結合により連結され環状構造
    を形成していても構わない。また、X4−Sに示される
    共有結合が単結合でなく、二重結合である場合は、R9
    は存在しない。また、P3−R6及びP4−R7は複数の共
    有結合により連結されていてもよく、P4はR7のほかR
    8,R9と同時に共有結合により連結されていても構わな
    い。また、P3もしくはR6は、P4,R7,R8,R9の1
    つ以上の部位と、一つ以上の共有結合により連結されて
    いても構わない。同様にP4もしくはR7は、P3,R6
    1つ以上の部位と一つ以上の共有結合により連結されて
    いても構わない。但し、何れの場合もこれらの相互連結
    によりP3及びP4の重合性は阻害されない。このような
    塩モノマー前駆体は、いずれか1種もしくは複数種が混
    合されていても良い。
  4. 【請求項4】 塩モノマー前駆体が、一般式[I]で表さ
    れる化合物と一般式[II]で表される化合物とを、混合し
    たものであることを特徴とする、請求項1記載の高分子
    固体電解質。
  5. 【請求項5】 塩モノマーに含まれるカチオンの対アニ
    オンとして含まれる、ハロゲンイオン、すなわちF-
    Cl-、Br-、又はI-の量が、高分子固体電解質全体に
    対して500ppm以下であることを特徴とする、請求
    項1ないし請求項4のいずれかに記載の高分子固体電解
    質。
  6. 【請求項6】 塩モノマー前駆体と相溶性の良い重合性
    モノマーが、イオン性解離基を持たないものであること
    を特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれかに記
    載の高分子固体電解質。
  7. 【請求項7】 金属塩が、アルカリ金属塩若しくはアル
    カリ土類金属塩を、単独若しくは2種以上を混合したも
    のであることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいず
    れかに記載の高分子固体電解質。
  8. 【請求項8】 イオン的相互作用を有する塩モノマー成
    分と、1種類以上の重合性モノマー成分とからなる、特
    定構造の共重合ポリマー、金属塩、および可塑剤からな
    る高分子固体電解質の製造方法であって、塩モノマー前
    駆体と、該塩モノマー前駆体と相溶性が良く1種類以上
    の重合性モノマーとを、他の構成成分と共に、室温若し
    くは室温以下の温度で均一に混合した後、室温若しくは
    室温以上の温度で加熱し、若しくは活性光線の作用によ
    り、塩モノマー前駆体を塩モノマーに変換させると共
    に、該塩モノマーと重合性モノマーとの重合反応によ
    り、特定構造の共重合ポリマーを生成させることを特徴
    とする高分子固体電解質の製造方法。
  9. 【請求項9】 塩モノマー前駆体が、前記一般式[I]で
    表され重合性官能基を備えた含窒素化合物、若しくは、
    前記一般式[II]で表され重合性官能基を備えた含硫黄化
    合物と、重合性官能基を備えた有機酸エステルとから構
    成されたもの、又は、それらの混合物であることを特徴
    とする、請求項8記載の高分子固体電解質の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005108553A (ja) * 2003-09-29 2005-04-21 Sumitomo Bakelite Co Ltd 全固体型電解質とその製造方法及び該全固体型電解質を使用した二次電池
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