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JP2003105106A - 熱収縮性ポリエステル系フィルム及びその製造方法 - Google Patents

熱収縮性ポリエステル系フィルム及びその製造方法

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JP2003105106A
JP2003105106A JP2001296571A JP2001296571A JP2003105106A JP 2003105106 A JP2003105106 A JP 2003105106A JP 2001296571 A JP2001296571 A JP 2001296571A JP 2001296571 A JP2001296571 A JP 2001296571A JP 2003105106 A JP2003105106 A JP 2003105106A
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shrinkage
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聡 早川
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Yoshiaki Takegawa
善紀 武川
Katsuya Ito
勝也 伊藤
Shigeru Yoneda
茂 米田
Katsuhiko Nose
克彦 野瀬
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温において優れた収縮特性を有すると共
に、収縮仕上がり性に優れ、かつ生産性及び品質(ピン
ナーバブル量など)に優れたラベル用途に好適な熱収縮
性ポリエステル系フィルムを提供する。 【解決手段】 熱収縮性ポリエステル系フィルムにおい
て、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を5モル
%以上とすると共に、フィルムの特性を下記(1)〜
(3)のようにする。 (1)熱収縮性ポリエステル系フィルムを、85℃の温
水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の
熱収縮率が20%以上 (2)温度275℃における溶融比抵抗値が0.70×
108Ω・cm以下 (3)フィルムの最大収縮方向に対する厚みの変位を測
定したとき、下記式で表される厚み分布が7%以下 厚み分布=(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱収縮性ポリエステ
ル系フィルムに関し、さらに詳しくはラベル用途に好適
な熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】熱収縮性プラスチックフィルムは、加熱
によって収縮する性質を利用して、収縮包装、収縮ラベ
ル、キャップシール等の用途に広く用いられている。な
かでも、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリスチレン系フ
ィルム、ポリエステル系フィルム等の延伸フィルムは、
ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチ
レン容器、ガラス容器等の各種容器において、ラベルや
キャップシールあるいは集積包装の目的で使用されてい
る。
【0003】しかしポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱
性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダ
イオキシンの原因となる等の問題を抱えている。また、
熱収縮性塩化ビニル系樹脂フィルムをPET容器等の収
縮ラベルとして用いると、容器をリサイクル利用する際
に、ラベルと容器とを分離しなければならないという問
題がある。
【0004】一方、ポリスチレン系フィルムは、収縮後
の仕上がり外観性が良好な点は評価できるが、耐溶剤性
に劣るため、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しな
ければならない。また、ポリスチレン系フィルムは、高
温で焼却する必要がある上に、焼却時に多量の黒煙と異
臭が発生するという問題がある。
【0005】これらの問題のないポリエステル系フィル
ムは、ポリ塩化ビニル系フィルムやポリスチレン系フィ
ルムに代わる収縮ラベルとして非常に期待されており、
PET容器の使用量増大に伴って、使用量も増加傾向に
ある。
【0006】しかし、従来の熱収縮性ポリエステル系フ
ィルムも、その収縮特性においてはさらなる改良が求め
られていた。特に、収縮時に、収縮斑やシワが発生し
て、収縮前のフィルムに印刷した文字や図柄が、PET
ボトル、ポリエチレンボトル、ガラス瓶等の容器に被覆
収縮した後に歪むことがあり、この歪みを可及的に小さ
くしたいというユーザーサイドの要望があった。また収
縮応力が小さく、容器へのフィルムの密着性に劣ること
があった。
【0007】さらには熱収縮性ポリスチレン系フィルム
と比較すると、ポリエステル系フィルムは低温での収縮
性に劣ることがあり、必要とする収縮量を得るために高
温で収縮させなければならず、ボトル本体の変形や白化
が生じることがあった。
【0008】ところで、熱収縮性フィルムを実際の容器
の被覆加工に用いる際には、必要に応じて印刷工程に供
した後、ラベル(筒状ラベル)、チューブ、袋等の形態
に加工する。これら加工フィルムは、容器に装着した
後、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮ト
ンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収
縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部
を、ベルトコンベアー等にのせて通過させ、熱収縮させ
て容器に密着させている。
【0009】スチームトンネルは、熱風トンネルよりも
伝熱効率が良く、より均一に加熱収縮させることが可能
であり、熱風トンネルに比べると良好な収縮仕上がり外
観を得ることができるが、従来の熱収縮性ポリエステル
系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィルムやポリスチレ
ン系フィルムに比べると、スチームトンネルを通過させ
た後の収縮仕上がり性が余り良くないという問題があっ
た。
【0010】また熱収縮の際に温度斑が生じやすい熱風
トンネルを使用すると、ポリエステル系フィルムでは、
収縮白化、収縮斑、シワ、歪み等が発生し易く、特に収
縮白化が製品外観上問題となっていた。そして、この熱
風トンネルを通過させた後の収縮仕上がり性において
も、ポリエステル系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィ
ルムやポリスチレン系フィルムよりも劣っているという
問題があった。
【0011】さらに、収縮率を確保するために延伸度合
いを高めると、収縮方向に直交する方向でフィルムが破
断し易くなって、印刷工程やラベル加工工程、あるいは
収縮後のフィルムの破断トラブルが起こることがあり、
このようなトラブルについても改善が嘱望されていた。
【0012】さらに熱収縮性フィルムは、上記収縮仕上
がり性の他に、生産性を高めることも要求され、さらに
は品質の観点から透明性が高いこと、並びにフィルム厚
みが均一であることも要求される。生産性を高めるため
には、溶融押出ししたフィルムをキャスティングロール
によって冷却する際に、フィルムとロールとを静電気的
に密着させて冷却効率を高め、キャスト速度を高めるこ
とが考えられる。なおフィルムをロールに静電密着させ
れば、フィルム表面の不具合(ピンナーバブルの発生な
ど)を低減でき、さらにはフィルムの厚みを均一化する
ことも容易である。フィルムをロールに静電密着させる
ためには、ロールに接触する前の押出し直後の溶融状フ
ィルムにおいて、その表面にいかに多くの電荷担体を存
在させるかが重要である。電荷担体を多くするために
は、ポリエステルを改質してその比抵抗を低くすること
が有効であり、多大の努力が払われている。例えば、特
公平3−54129号公報には、ポリエチレンテレフタ
レート(PET)製造時にマグネシウム化合物、ナトリ
ウム又はカリウム化合物、及びリン化合物を添加し、M
g原子の濃度を30〜400ppm、Na原子又はK原
子の濃度を3.0〜50ppm、MgとPとの原子数比
(Mg/P)を1.2〜20にすることによって、PE
Tフィルムの比抵抗値を低くすることが開示されてい
る。この公報には、さらにエステル化率20〜80%の
時点でマグネシウム化合物を添加し、固有粘度が0.2
に達するまでの間にナトリウム又はカリウム化合物を添
加し、エステル化率が90%以上進行した時点から固有
粘度が0.2に達するまでの間にリン化合物を添加する
ことによって不溶性異物の生成を抑制し、フィルムの品
質を向上させている。
【0013】一方、特表2000−504770号公報
に開示されているように、1,4−シクロヘキサンジメ
タノール(CHDM)を共重合させたポリエステルは、
透明性と明度とに優れており注目されている。しかしこ
の共重合性ポリエステルは比抵抗値が高いため、フィル
ムの生産性や品質を向上させる観点から、静電密着性を
向上するための改質が必要である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記CHDM
を共重合させたポリエステルにおいて、前記PETで開
発された方法(特公平3−54129号公報)をそのま
ま適用しても、ポリマーの原料も性質も異なるため、そ
の有効性は疑わしい。すなわちCHDMを共重合させた
ポリエステルはPETに比べて熱的性質(融点・結晶化
温度・ガラス転移温度など)が大きく異なり、耐熱性が
低い。そのためCHDMを共重合させたポリエステルで
は、溶融比抵抗値を下げるために添加剤を添加すると、
熱的性質が大きく変化して耐熱性がさらに低下し、ポリ
エステルが着色したり、粘度低下(分子量低下)が起こ
り易くなると考えるのが普通である。
【0015】本発明は上記の様な事情に着目してなされ
たものであって、その目的は、耐熱性を低下させること
なく、低温において優れた収縮特性を有すると共に、収
縮仕上がり性に優れ、かつ生産性及び品質(ピンナーバ
ブルの抑制、厚みの均一性など)に優れたラベル用途に
好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供すること
を課題とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を
解決するために鋭意検討したところ、アルカリ土類金属
化合物、リン化合物、アルカリ金属化合物などは、他の
添加剤とは異なり、CHDMを共重合させたポリエステ
ルの耐熱性を意外にも低下させないこと、そのため耐熱
性を低下させることなく溶融比抵抗値を下げてポリエス
テル系フィルムの生産性及び品質を高めることができる
こと、さらには前記フィルムの延伸条件を制御するとポ
リエステル系フィルムの厚みの均一性をさらに高めるこ
とができることを見出し、本発明を完成した。
【0017】すなわち本発明の熱収縮性ポリエステル系
フィルムは、多価アルコール成分100モル%のうち、
1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が5モル%以
上であり、下記(1)、(2)及び(3)の特性を有す
る点に要旨を有するものである。
【0018】(1)10cm×10cmの正方形状に切
り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料を、8
5℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃
の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向
の熱収縮率が20%以上 (2)温度275℃における溶融比抵抗値が0.70×
108Ω・cm以下 (3)フィルムの最大収縮方向に対する厚みの変位を、
前記最大収縮方向の長さが50cm、幅が5cmの試験
片を用いて測定したとき、下記式で表される厚み分布が
7%以下 厚み分布=(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100 前記特性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムは、
低温から高温までの幅広い温度域において、優れた収縮
仕上がり性(収縮白化の抑制、収縮斑の抑制、シワの抑
制、歪みの抑制、及び/又はタテヒケの抑制など)を有
しており、熱収縮後の外観を美麗にできる。しかも静電
密着性に優れており、生産性(生産速度)を高めること
ができ、さらには品質(ピンナーバブルの抑制、厚みの
均一性など)も向上できる。
【0019】前記フィルムは、アルカリ土類金属原子M
2及びリン原子Pを含有しているのが好ましく[含有
量:アルカリ土類金属原子M2は、例えば、40〜40
0ppm(質量基準)程度、リン原子Pは、例えば、6
0〜600ppm(質量基準)程度]、フィルム中のア
ルカリ土類金属原子M2と、リン原子Pとの質量比(M2
/P)が1.2〜5.0であるのが好ましい。質量比
(M2/P)を前記範囲に制御すると、溶融比抵抗値を
低減できるだけでなく、フィルム中の異物も低減でき
る。
【0020】前記フィルムは、さらにアルカリ金属原子
1を0〜100ppm(質量基準)程度含有している
のが望ましい。これによりさらに溶融比抵抗値を低減で
きる。
【0021】なお多価アルコール成分100モル%中の
前記1,4−シクロヘキサンジメタノールの割合は、1
0〜80モル%であるのが望ましい。この範囲に1,4
−シクロヘキサンジメタノールの割合を制御すると、収
縮仕上がり性、特に収縮白化の抑制性を著しく向上でき
る。
【0022】前記フィルムは、フィルムの最大収縮方向
に対する厚みの変位を、前記最大収縮方向の長さが50
cm、幅が5cmの試験片を用いて測定したとき、下記
式で表される厚み分布が7%以下であるのが好ましい。
【0023】 厚み分布=(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100 前記範囲に厚み分布を制御すると、フィルムに多色印刷
する際に、加工性に優れ、さらには色ズレを高度に防止
できる。
【0024】前記フィルムは、フィルムの最大収縮方向
についての熱収縮試験を、90℃の熱空気中、試験片幅
20mm、チャック間距離100mmの条件で行ったと
き、最大熱収縮応力値が、通常、3MPa以上である。
【0025】前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、
ポリエステルを溶融・製膜し、延伸することにより製造
することができる。特に本発明では、前記ポリエステル
としてアルカリ土類金属化合物及びリン含有化合物を含
むポリエステルを使用すると共に、前記延伸に際してフ
ィルムの表面温度を平均温度±1℃以内に制御してい
る。アルカリ土類金属化合物及びリン含有化合物によっ
てフィルムの溶融比抵抗値を低減することができ、フィ
ルムの生産性(生産速度)及び品質(ピンナーバブルの
抑制、厚みの均一性など)を向上できる。しかも延伸の
際のフィルムの表面温度を厳密に管理しているため、厚
みの均一性をさらに高めることができる。
【0026】前記ポリエステルとしては、少なくともエ
ステル化工程の後の時期に、アルカリ土類金属化合物及
びリン含有化合物を添加したものを用いるのが望まし
い。これら化合物の添加時期をエステル化工程の後とす
ることにより、それ以前に添加する場合に比べて不溶性
異物の生成量を低減できる。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の熱収縮性ポリエステル系
フィルムは、10cm×10cmの正方形状に切り出し
た試料を85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、直
ちに25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最
大収縮方向の熱収縮率が20%以上である。フィルムの
熱収縮率が20%未満であると、容器等に被覆収縮させ
たときにフィルムの熱収縮量が不足して、外観不良が発
生するため好ましくない。より好ましい熱収縮率は30
%以上、さらに好ましくは40%以上である。熱収縮率
の上限値は80%(特に75%)が好ましい。
【0028】ここで、最大収縮方向の熱収縮率とは、試
料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、
最大収縮方向は、正方形の縦方向または横方向(または
斜め方向)の長さで決められる。また、熱収縮率(%)
は、10cm×10cmの試料を、85℃±0.5℃の
温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた
後、25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸
漬した後の、フィルムの縦および横方向(または斜め方
向)の長さを測定し、下記式 熱収縮率=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷
(収縮前の長さ) に従って求めた値である。
【0029】熱収縮性ポリエステル系フィルムは、最大
収縮方向の熱収縮応力値(最大熱収縮応力値)が高い程
好ましい。熱収縮応力値が高いと、容器を被覆した後で
フィルム(ラベルなど)の緩みを防止でき、フィルムの
機械的強度不足による耐破れ性の悪化を防止できる。本
発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの最大熱収縮応
力値は、90℃の熱空気中、試験片幅20mm、チャッ
ク間距離100mmの条件で熱収縮試験を行ったとき、
通常、3MPa以上、好ましくは3.5MPa以上、さ
らに好ましくは4MPa以上である。
【0030】なお前記最大熱収縮応力値は、以下のよう
にして測定する。
【0031】(1)熱収縮性フィルムから、最大収縮方
向の長さが200mm、幅20mmの試験片を切り出す (2)熱風式加熱炉を備えた引張試験機(例えば、東洋
精機製「テンシロン」)の加熱炉内を90℃に加熱する (3)送風を止め、加熱炉内に試験片をセットする。チ
ャック間距離は100mm(一定)とする (4)加熱炉の扉を速やかに閉めて、送風を再開し、熱
収縮応力を検出・測定する (5)チャートから最大値を読み取り、これを最大熱収
縮応力値(MPa)とする 前記所定の熱収縮率を達成するためには、ポリエステル
系フィルムの組成を調整するのが有効である。またポリ
エステル系フィルムの組成を調整することによって、最
大熱収縮応力値を前記所定の範囲に制御することもでき
る。すなわち、詳細は後述するが、本発明の熱収縮性ポ
リエステル系フィルムでは、結晶性ユニット(エチレン
テレフタレートユニットなど)をポリエステルのベース
成分とすることが望ましい。前記結晶性ユニットは、ポ
リエステル系フィルムの結晶化度を高める役割があるた
め、フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性等を発揮させる
ことができる。ところが結晶性ユニットだけでは、熱収
縮性が低い。そこで本発明では、ポリエステル系フィル
ムの組成を調整して、非晶化度合いを高め、熱収縮性を
高めている。
【0032】より詳細には、本発明の熱収縮性ポリエス
テル系フィルムは、単独又は複数のポリエステルを用い
て得られるフィルムであり、ポリエステルを構成するジ
カルボン酸成分と、多価アルコール成分とを含んでい
る。そして多価アルコール成分は、多価アルコール成分
全体(100モル%)に対して、5モル%以上の1,4
−シクロヘキサンジメタノール成分を含有するように調
製されている。1,4−シクロヘキサンジメタノール成
分の割合を5モル%以上にすると、フィルムの非晶化度
合いを高めることができ、所定の熱収縮率を達成するこ
とができる。また所定の最大熱収縮応力値を達成するこ
とも可能である。さらには収縮仕上がり性(収縮白化の
抑制、収縮斑の抑制、シワの抑制、歪み抑制、及び/又
はタテヒケの抑制など)も高めることができる。なお熱
収縮性フィルムは、溶剤(テトラヒドロフランや1,3
−ジオキソランなど)を用いて接着することにより、ラ
ベル(筒状ラベル)、チューブ、袋等の形態に加工する
ことが多いが、1,4−シクロヘキサンジメタノール成
分の割合を5モル%以上にすると、通常、溶剤接着性も
高めることができる。しかもフィルムの透明性を高める
ことができる場合も多い。
【0033】ところで、従来の熱収縮性ポリエステル系
フィルムにおいては、熱収縮工程でフィルムが加熱され
てある温度まで到達した場合、フィルムを構成するポリ
エステルの組成によっては熱収縮率が飽和してしまい、
それ以上高温に加熱しても、それ以上の収縮が得られな
いことがある。このようなフィルムは、比較的低温で熱
収縮することができる利点があるが、前記熱風トンネル
で熱収縮させた場合や、熱収縮前に30℃以上の雰囲気
下で長期間保管した後で熱収縮させた場合に、収縮白化
現象が起こり易い。この収縮白化現象は、ポリエステル
の分子鎖が部分的に結晶化して、結晶部分の光の屈折率
が非晶部分と異なるため、起こるのではないかと考えら
れる。
【0034】しかし本発明者等は、多価アルコール成分
100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール
成分の割合を10モル%以上とすることで、上記収縮白
化を著しく抑制し得ることを見出した。さらに収縮斑も
著しく抑制できる。1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル成分の量は12モル%以上がより好ましく、14モル
%以上がさらに好ましい。
【0035】一方、多価アルコール成分100モル%
中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分は80モ
ル%以下に抑制することが望まれる。1,4−シクロヘ
キサンジメタノール成分が多すぎると、フィルムの収縮
率が必要以上に高くなり過ぎて、熱収縮工程でラベルの
位置ずれや図柄の歪みが発生する恐れがある。また、フ
ィルムの耐溶剤性が低下するため、印刷工程でインキの
溶媒(酢酸エチル等)によってフィルムの白化が起きた
り、フィルムの耐破れ性が低下するため好ましくない。
従って、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分は7
0モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに
好ましい。
【0036】なお本発明のフィルムは、前記1,4−シ
クロヘキサンジメタノール成分以外の他の多価アルコー
ル成分を含有していてもよい。多価アルコール成分は、
ジオール成分であってもよく、三価以上のアルコール成
分であってもよい。ジオール成分を形成するジオールに
は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,
4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2
−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキ
サンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオー
ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−
ノナンジオール、1,10−デカンジオール等のアルキ
レングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン
グリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビ
スフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキ
サイド付加物などのエーテルグリコール類;ダイマージ
オールなどが含まれる。三価以上のアルコールには、ト
リメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリト
ールなどが含まれる。
【0037】またジカルボン酸成分を形成するジカルボ
ン酸類としては、芳香族ジカルボン酸、そのエステル形
成誘導体、脂肪族ジカルボン酸等が利用可能である。芳
香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イ
ソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−
ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が
挙げられる。またエステル誘導体としてはジアルキルエ
ステル、ジアリールエステル等の誘導体が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、ダイマー酸、グルタル
酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ
酸、コハク酸等が挙げられる。
【0038】なお前記ジカルボン酸類に加えて、p−オ
キシ安息香酸等のオキシカルボン酸、無水トリメリット
酸、無水ピロメリット酸等の三価以上のカルボン酸を必
要に応じて併用してもよい。
【0039】またポリエステルは、必ずしも前記ジカル
ボン酸類及び多価アルコールから製造する必要はなく、
ラクトン類(ε−カプロラクトンなど)の開環重合によ
って製造してもよい。前記ジカルボン酸成分及び多価ア
ルコール成分中の各成分の割合(モル%)を算出する場
合、ラクトン類の開環成分は、ジカルボン酸成分及び多
価アルコール成分のいずれにも該当するものとして計算
する。
【0040】フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性等を考
慮すれば、ポリエステル中の結晶性ユニット(エチレン
テレフタレートユニットなど)が20モル%以上になる
ようにポリエステルを選択することが好ましい。従っ
て、多価カルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸
成分は20モル%以上であるのが好ましい。また多価ア
ルコール成分100モル%中、エチレングリコール成分
は20モル%以上であるのが好ましい。結晶性ユニット
は、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上が
さらに好ましい。ただし、本発明では、多価アルコール
成分100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノ
ール成分が5モル%以上であるため、エチレングリコー
ル成分は95モル%以下である。
【0041】そして本発明の熱収縮性ポリエステル系フ
ィルムは、前記収縮特性や収縮仕上がり性に優れるだけ
でなく、溶融比抵抗値が低いために、生産性やフィルム
品質にも優れる。すなわち本発明の熱収縮性ポリエステ
ル系フィルムは溶融比抵抗値が0.70×108Ω・c
m以下である。溶融比抵抗値が小さいと、押出し機から
溶融押し出ししたフィルムをキャスティングロールで冷
却するに際して、ロールに対するフィルムの静電密着性
を高めることができる。そのため冷却固化の安定性を高
めることができ、キャスティング速度(生産速度)を高
めることができる。溶融比抵抗値は好ましくは0.65
×108Ω・cm以下、さらに好ましくは0.60×1
8Ω・cm以下である。
【0042】さらに溶融比抵抗値が低く、静電密着性が
高いと、フィルム品質を高めることもできる。すなわち
静電密着性が低いと、フィルムの冷却固化が不完全とな
って、キャスティングロールとフィルムとの間に局部的
にエアーが入り込み、フィルム表面にピンナーバブル
(スジ状の欠陥)が発生する虞があるのに対して、静電
密着性に優れると前記ピンナーバブルを低減することが
でき、フィルム外観を高めることができる。
【0043】加えて溶融比抵抗値が十分に低く、静電密
着性が十分に高い場合、フィルムの厚みを均一化でき
る。すなわちキャスティングロールへの静電密着性が低
いと、キャスティングした未延伸フィルム原反の厚みが
不均一化し、この未延伸フィルムを延伸した延伸フィル
ムにおいては厚みの不均一性がより拡大されてしまうの
に対して、静電密着性が十分に高い場合には、延伸フィ
ルムにおいても厚みを均一化できる。しかも本発明で
は、後述するように、フィルムの延伸条件を制御してい
るため厚みの均一性をさらに高めることができる。
【0044】なお厚みの均一性については、下記式で表
される厚み分布によって評価できる。
【0045】 厚み分布=(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100 前記最大厚み、最小厚み、及び平均厚みは、前記最大収
縮方向の長さが50cm、幅が5cmとなるようにフィ
ルムから試験片を切り取り、接触式厚み計を用いて最大
収縮方向に対する厚みの変位を測定することによって求
めることができる。
【0046】本発明のフィルムの厚み分布は、7%以
下、好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下、
特に好ましくは4.5%以下(例えば、4%以下)であ
る。フィルムに多色印刷する際に厚み分布が大きすぎる
と、フィルムにシワが入り易くなったり、フィルム走行
中に蛇行が発生し易くなるため、加工性が低下し、さら
には色ズレが生じる。さらに溶剤接着によってフィルム
をチューブ等に加工する際にも、接着部分の重ね合わせ
が困難になる。加えてフィルムをロール状に巻いた状態
で部分的な巻き硬度の差が発生する場合があり、フィル
ムに弛みや皺が発生し、フィルムの外観を大きく損な
う。
【0047】そして本発明では、フィルムの溶融比抵抗
値を上記範囲に制御するため、フィルム中にアルカリ土
類金属化合物と、リン含有化合物とを含有させている。
アルカリ土類金属化合物だけでも溶融比抵抗値を下げる
ことができるが、リン含有化合物を共存させると溶融比
抵抗値を著しく下げることができる。アルカリ土類金属
化合物とリン含有化合物とを組合わせることによって溶
融比抵抗値を著しく下げることができる理由は明らかで
はないが、リン含有化合物を含有させることによって、
異物の量を減少でき、電荷担体の量を増大できるためと
推定される。
【0048】フィルム中のアルカリ土類金属化合物の含
有量は、アルカリ土類金属原子M2を基準にして、例え
ば、40ppm(質量基準)以上、好ましくは50pp
m(質量基準)以上、さらに好ましくは60ppm(質
量基準)以上である。アルカリ土類金属化合物の量が少
なすぎると溶融比抵抗値を下げることができない。なお
アルカリ土類金属化合物の含有量を多くし過ぎても、溶
融比抵抗値の低減効果が飽和してしまい、むしろ異物生
成や着色などの弊害が大きくなる。そのためアルカリ土
類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子M2
基準にして、例えば、400ppm(質量基準)以下、
好ましくは350ppm(質量基準)以下、さらに好ま
しくは300ppm(質量基準)以下である。
【0049】フィルム中のリン化合物の含有量は、リン
原子Pを基準にして、例えば、10ppm(質量基準)
以上、好ましくは15ppm(質量基準)以上、さらに
好ましくは20ppm(質量基準)以上、特に60pp
m(質量基準)以上である。リン化合物の量が少なすぎ
ると、溶融比抵抗値を下げることが充分にできず、異物
の生成量を低減することもできない。なおリン化合物の
含有量を多くしすぎても、溶融比抵抗値の低減効果が飽
和してしまう。さらにはジエチレングリコールの生成を
促進してしまい、しかもその生成量をコントロールする
ことが困難であるため、フィルムの物性が予定していた
ものと異なる虞がある。そのためリン化合物の含有量
は、リン原子Pを基準にして、例えば、600ppm
(質量基準)以下、好ましくは500ppm(質量基
準)以下、さらに好ましくは450ppm(質量基準)
以下、特に400ppm(質量基準)以下である。
【0050】アルカリ土類金属化合物及びリン化合物で
フィルムの溶融比抵抗値を下げる場合、フィルム中のア
ルカリ土類金属原子M2とリン原子Pとの質量比(M2
P)は、1.2以上(好ましくは1.3以上、さらに好
ましくは1.4以上)であることが望ましい。質量比
(M2/P)を1.2以上にすることによって、溶融比
抵抗値を著しく低減できる。なお質量比(M2/P)が
5.0を超えると、異物の生成量が増大したり、フィル
ムが着色したりする。そのため質量比(M2/P)は、
5.0以下、好ましくは4.5以下、さらに好ましくは
4.0以下である。
【0051】フィルムの溶融比抵抗値をさらに下げるた
めには、前記アルカリ土類金属化合物及びリン含有化合
物に加えて、フィルム中にアルカリ金属化合物を含有さ
せるのが望ましい。アルカリ金属化合物は、単独でフィ
ルムに含有させても溶融比抵抗値を下げることはできな
いが、アルカリ土類金属化合物及びリン含有化合物の共
存系に追加することで、溶融比抵抗値を著しく下げるこ
とができる。その理由については明確ではないが、アル
カリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及びリン含
有化合物の三者で錯体を形成することによって、溶融比
抵抗値を下げているものと推定される。
【0052】フィルム中のアルカリ金属化合物の含有量
は、アルカリ金属原子M1を基準にして、例えば、0p
pm(質量基準)以上、好ましくは5ppm(質量基
準)以上、さらに好ましくは6ppm(質量基準)以
上、特に7ppm(質量基準)以上である。なおアルカ
リ金属化合物の含有量を多くしすぎても、溶融比抵抗値
の低減効果が飽和してしまい、さらには異物の生成量が
増大する。そのためアルカリ金属化合物の含有量は、ア
ルカリ金属原子M1を基準にして、例えば、100pp
m(質量基準)以下、好ましくは90ppm(質量基
準)以下、さらに好ましくは80ppm(質量基準)以
下である。
【0053】前記アルカリ土類金属化合物としては、ア
ルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、脂肪族カル
ボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、
芳香族カルボン酸塩(安息香酸塩)、フェノール性水酸
基を有する化合物との塩(フェノールとの塩など)など
が挙げられる。またアルカリ土類金属としては、マグネ
シウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど
(好ましくはマグネシウム)が挙げられる。好ましいア
ルカリ土類金属化合物には、水酸化マグネシウム、マグ
ネシウムメトキシド、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウ
ム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウムなど、特に酢酸
マグネシウムが含まれる。前記アルカリ土類金属化合物
は、単独で又は2種以上組合わせて使用できる。
【0054】前記リン化合物としては、リン酸類(リン
酸、亜リン酸、次亜リン酸など)、及びそのエステル
(アルキルエステル、アリールエステルなど)、並びに
アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸及びそれらの
エステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)
が挙げられる。好ましいリン化合物としては、リン酸、
リン酸の脂肪族エステル(リン酸のアルキルエステルな
ど;例えば、リン酸モノメチルエステル、リン酸モノエ
チルエステル、リン酸モノブチルエステルなどのリン酸
モノC1-6アルキルエステル、リン酸ジメチルエステ
ル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジブチルエステル
などのリン酸ジC1-6アルキルエステル、リン酸トリメ
チルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリ
ブチルエステルなどのリン酸トリC1-6アルキルエステ
ルなど)、リン酸の芳香族エステル(リン酸トリフェニ
ル、リン酸トリクレジルなどのリン酸のモノ、ジ、又は
トリC 6-9アリールエステルなど)、亜リン酸の脂肪族
エステル(亜リン酸のアルキルエステルなど;例えば、
亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン
酸のモノ、ジ、又はトリC1-6アルキルエステルな
ど)、アルキルホスホン酸(メチルホスホン酸、エチル
ホスホン酸などのC1-6アルキルホスホン酸)、アルキ
ルホスホン酸アルキルエステル(メチルホスホン酸ジメ
チル、エチルホスホン酸ジメチルなどのC1-6アルキル
ホスホン酸のモノ又はジC1-6アルキルエステルな
ど)、アリールホスホン酸アルキルエステル(フェニル
ホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチルなど
のC6-9アリールホスホン酸のモノ又はジC1-6アルキル
エステルなど)、アリールホスホン酸アリールエステル
(フェニルホスホン酸ジフェニルなどのC6-9アリール
ホスホン酸のモノ又はジC6-9アリールエステルなど)
などが例示できる。特に好ましいリン化合物には、リン
酸、リン酸トリアルキル(リン酸トリメチルなど)が含
まれる。これらリン化合物は単独で、又は2種以上組合
わせて使用できる。
【0055】前記アルカリ金属化合物としては、アルカ
リ金属の水酸化物、炭酸塩、脂肪族カルボン酸塩(酢酸
塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、芳香族カルボン
酸塩(安息香酸塩)、フェノール性水酸基を有する化合
物との塩(フェノールとの塩など)などが挙げられる。
またアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カ
リウムなど(好ましくはナトリウム)が挙げられる。好
ましいアルカリ土類金属化合物には、水酸化リチウム、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭
酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナト
リウム、酢酸カリウムなど、特に酢酸ナトリウムが含ま
れる。
【0056】ポリエステルは常法により溶融重合するこ
とによって製造できるが、ジカルボン酸とグリコール類
とを直接反応させて得られたオリゴマーを重縮合する、
いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル
体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮
合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の
製造法を適用することができる。また、その他の重合方
法によって得られるポリエステルであってもよい。ポリ
エステルの重合度は、固有粘度にして0.5〜1.3d
l/gのものが好ましい。
【0057】重合触媒としては、慣用の種々の触媒が使
用でき、例えば、チタン系触媒、アンチモン系触媒、ゲ
ルマニウム系触媒、スズ系触媒、コバルト系触媒、マン
ガン系触媒など、好ましくはチタン系触媒(チタニウム
テトラブトキシドなど)、アンチモン系触媒(三酸化ア
ンチモンなど)、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニ
ウムなど)、コバルト系触媒(酢酸コバルトなど)など
が挙げられる。
【0058】アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化
合物、リン含有化合物の添加時期は特に限定されず、エ
ステル化反応前、エステル化中、エステル化終了から重
合工程開始までの間、重合中、及び重合後のいずれの段
階であってもよいが、好ましくはエステル化工程の後の
任意の段階、さらに好ましくはエステル化終了から重合
工程開始までの間である。エステル化工程の後にアルカ
リ土類金属化合物、リン含有化合物(及び必要に応じて
アルカリ金属化合物)を添加すると、それ以前に添加す
る場合に比べて異物の生成量を低減できる。
【0059】また、必要に応じて、シリカ、二酸化チタ
ン、カオリン、炭酸カルシウム等の微粒子をフィルム原
料に添加してもよく、さらに酸化防止剤、紫外線吸収
剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤等を添加することもで
きる。
【0060】ポリエステル系フィルムは、後述する公知
の方法で得ることができるが、熱収縮性ポリエステル系
フィルムにおいて、多価アルコール成分を特定の範囲に
制御する手段としては、共重合ポリエステル(コポリエ
ステル)を単独で使用する方式と、複数のポリエステル
をブレンドする方式[例えば、互いに異なる複数のホモ
ポリエステルをブレンドする方式;ホモポリエステル
(ポリエチレンテレフタレートなど)と共重合ポリエス
テルとをブレンドする方式;互いに異なる複数の共重合
ポリエステルをブレンドする方式など]がある。
【0061】共重合ポリエステルを単独で使用する方式
では、上記特定組成の多価アルコール成分を含む共重合
ポリエステルを用いればよい。一方、複数のポリエステ
ルをブレンドする方式は、ブレンド比率を変更するだけ
でフィルムの特性を容易に変更でき、多品種のフィルム
の工業生産にも対応できるため、好ましく採用すること
ができる。
【0062】具体的なフィルムの製造方法としては、原
料ポリエステルチップをホッパドライヤー、パドルドラ
イヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥し、
押出機を用いて200〜300℃の温度でフィルム状に
押し出す。あるいは、未乾燥のポリエステル原料チップ
をベント式押出機内で水分を除去しながら同様にフィル
ム状に押し出す。押出しに際してはTダイ法、チューブ
ラ法等、既存のどの方法を採用しても構わない。押出し
た溶融状フィルムは、キャスティングロールで急冷して
未延伸フィルムを得る。
【0063】そして本発明では、前記押出機とキャステ
ィングロールの間に電極を配設し、電極とキャスティン
グロールとの間に電圧を印加し、静電気的にフィルムを
ロールに密着させている。
【0064】前記のようにして得られた未延伸フィルム
は、延伸処理することにより、熱収縮性ポリエステル系
フィルムを製造できる。延伸処理のタイミングは特に限
定されず、例えば、前記冷却用ロール(キャスティング
ロールなど)による冷却後、一旦ロール状に巻き取り、
このロールからフィルムを引き出して延伸処理してもよ
く、該冷却後、ロール状に巻き取ることなく連続的に延
伸処理してもよい。
【0065】延伸方向(フィルムの最大収縮方向)は、
フィルムの横(幅)方向であってもよく、フィルムの縦
方向(長手方向)であってもよいが、延伸方向をフィル
ムの横(幅)方向にすることが生産効率の点で実用的で
あるため、以下、延伸方向(最大収縮方向)を横方向と
する場合の延伸法を例にとって説明する。なお、延伸方
向(フィルムの最大収縮方向)をフィルム縦(長手)方
向とする場合は、下記方法における延伸方向を90゜変
える等、通常の操作に準じて延伸すればよい。
【0066】横方向に延伸する場合、テンターなどの慣
用の延伸手段を用いて延伸処理することができる。
【0067】最大収縮方向(この例では、横方向)の延
伸倍率は、熱収縮率を20%以上にできる限り特に限定
されず、フィルムの組成に応じて適宜選択できるが、例
えば、2〜8倍程度、好ましくは2.3〜7.3倍程
度、さらに好ましくは2.5〜6.0倍程度である。延
伸温度は、通常の方法に従って設定できる。
【0068】なお延伸は、最大収縮方向(この例では、
横方向)のみに延伸する1軸延伸に限定されず、前記最
大収縮方向と異なる方向(例えば、直交方向;この例で
は、フィルムの縦方向)にも延伸する2軸延伸を行って
もよい。異方向(この例では、縦方向)への延伸倍率
は、前記最大収縮方向(横方向)への延伸倍率以下であ
ればよく、例えば、1倍〜4倍程度、好ましくは1.1
倍〜2倍程度である。2軸延伸のタイミングは特に限定
されず、例えば、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれ
でもよく、必要に応じて、再延伸を行ってもよい。ま
た、逐次2軸延伸を行う場合、延伸順序も特に限定され
ず、縦横、横縦、縦横縦、横縦横など、いずれの順序で
延伸してもよい。
【0069】延伸処理後は、50℃〜110℃の範囲内
の所定温度で、0〜15%の伸張あるいは0〜15%の
緩和をさせながら熱処理し、必要に応じて40℃〜10
0℃の範囲内の所定温度でさらに熱処理をするのが望ま
しい。
【0070】なお前記延伸処理に先立ってフィルムを予
備加熱しておいてもよい。予備加熱では、例えば、ガラ
ス転移温度(Tg)+0℃〜Tg+60℃程度の温度に
フィルムを加熱する。
【0071】そして本発明では、上記延伸を行うにあた
っては、フィルム厚みを均一にするための種々の工夫を
施している。すなわち本発明では、フィルム厚みを均一
にするために(1)延伸の際のフィルム表面温度の均温
化を行っている。また必要に応じて、(2)予備加熱
(予熱)条件の制御、(3)延伸に伴う内部発熱の抑
制、(4)延伸温度の制御などの手段も併用するのが望
ましい。
【0072】(1)延伸の際のフィルム表面温度の均温
化 フィルムを延伸するに際してフィルムの表面温度の変動
幅を小さくする(均温化する)と、フィルム全長に亘っ
て同一温度で延伸や熱処理することができる。そのため
厚みの均一性を高めることができ、さらにはフィルムの
熱収縮挙動を均一にすることもできる。
【0073】フィルムを延伸する際には、延伸前の予備
加熱工程、延伸工程、延伸後の熱処理工程、緩和処理、
再延伸処理工程などの種々の工程を経てフィルムを延伸
するため、これらの工程の全部で表面温度の変動幅を小
さくするのが望ましいものの、少なくとも延伸工程で表
面温度の変動幅を小さくすればフィルム厚みの均一性を
高めることができる。
【0074】前記表面温度の変動幅は、任意のポイント
においてフィルムの表面温度を測定したときの各ポイン
トの温度が、例えば、フィルムの平均温度±1℃以内程
度であることが好ましく、平均温度±0.5℃以内であ
ることがさらに好ましい。
【0075】フィルムを延伸する際には、前記各工程
(延伸前の予備加熱工程、延伸工程、延伸後の熱処理工
程、緩和処理、再延伸処理工程など)のうち、少なくと
も延伸工程を含む一部の工程又は全部の工程で、フィル
ムの表面温度の変動幅を小さくできる(均質化する)設
備を用いるのが好ましい。特に、フィルム全長に亘って
厚みを均一にするためには、予備加熱工程及び延伸工程
において(さらに、必要に応じて延伸後の熱処理工程に
おいて)、フィルムの表面温度の変動幅を小さくできる
設備を用いるのが好ましい。なお熱収縮率挙動を均一に
する場合には、延伸工程において、フィルムの表面温度
の変動幅を小さくできる設備を用いるのが好ましい。
【0076】前記フィルム表面温度の変動を小さくでき
る設備としては、例えば、フィルムを加熱するための熱
風の供給速度を制御するための風速制御手段(インバー
ターなど)を備えた設備、空気を安定的に加熱して前記
熱風を調製するための加熱手段[500kPa以下(5
kgf/cm2以下)の低圧蒸気を熱源とする加熱手段
など]を備えた設備などが挙げられる。
【0077】(2)予備加熱(予熱)条件の制御 予備加熱条件を制御する場合、フィルムを徐々に加熱す
るように制御するのが望ましい。予備加熱工程でフィル
ムを徐々に加熱すると、フィルムの温度分布を略均一に
できるため、延伸後のフィルム(熱収縮性フィルム)の
厚みの均一性を高めることができる。
【0078】前記加熱条件は熱伝達係数で示すと、例え
ば、0.00544J/cm2・sec・℃(0.00
13カロリー/cm2・sec・℃)以下程度である。
また予備加熱では、フィルム表面温度がTg+0℃〜T
g+60℃の範囲内の温度になるまで加熱するのが好ま
しくい。
【0079】前記熱伝達係数を達成する方法としては、
例えば、(I)熱風の温度を低くすると共に、(II)
熱風の供給速度(吹出速度)も遅くする方法などが挙げ
られる。より具体的には、(I)熱風の温度、及び(I
I)熱風の吹出速度を下記のように制御する。
【0080】(I)熱風の温度 熱風の温度T1(℃)を、予熱前のフィルムの表面温度
(通常、20〜50℃程度)をT2(℃)とするとき、
T2+90(℃)以下、好ましくはT2+85(℃)以
下に制御する。一方、熱風の温度が低すぎると、所定の
温度までフィルムを加熱することができない。そのため
熱風の温度T1(℃)は、通常、T2+30(℃)以
上、好ましくはT2+40(℃)以上、さらに好ましく
はT2+45(℃)以上に制御する。
【0081】なお上記のようにして設定された熱風の温
度は、熱収縮性フィルムのガラス転移温度をTg(℃)
とするとき、通常、Tg+5℃〜Tg+90℃程度(好
ましくはTg+10℃〜Tg+40℃程度)の範囲内に
収まる。
【0082】(II)熱風の吹出速度 熱風の吹出速度を、16m/秒以下、好ましくは15m
/秒以下に制御する。なお熱風の吹出速度の下限は特に
限定されないが、通常、12m/秒以上、好ましくは1
3m/秒以上である。また熱風は、フィルムに対して斜
めに吹き付けてもよいが、略垂直に吹き付けることが多
い。
【0083】なお熱風の温度や吹出速度は、通常の延伸
装置であれば制御できるので、装置に備え付けの制御シ
ステムを利用して調整すればよい。またフィルムの表面
温度は、例えば、赤外式の非接触表面温度計などを用い
てフィルムの走行方向に連続的に測定することができ
る。
【0084】(3)延伸に伴う内部発熱の抑制 延伸に伴うフィルムの内部発熱を抑制すると、延伸方向
(幅方向など)のフィルム温度斑を小さくでき、延伸後
のフィルム(熱収縮性フィルム)の厚みの均一性を高め
ることができる。
【0085】前記内部発熱を抑制するためには、加熱条
件を適宜制御してフィルムを加熱し易くするのが望まし
い。加熱不足の部分があると延伸配向に伴う内部発熱が
発生するのに対して、フィルムが十分に加熱されている
と延伸時に分子鎖が滑りやすくなるため、内部発熱が発
生しにくくなる。
【0086】前記加熱条件は熱伝達係数で示すと、例え
ば、0.0038J/cm2・sec・℃(0.000
9カロリー/cm2・sec・℃)以上、好ましくは
0.0054〜0.0084J/cm2・sec・℃
(0.0013〜0.0020カロリー/cm2・se
c・℃)程度である。
【0087】前記熱伝達係数を達成する方法としては、
例えば、(III)熱風の供給速度(吹出速度)も速く
する方法などが挙げられる。より具体的には、熱風の吹
出速度を、10m/秒以上、好ましくは11m/秒以上
に制御する。なお熱風の吹出速度の上限は特に限定され
ないが、通常、17m/秒以下、好ましくは16m/秒
以下である。また熱風は、フィルムに対して斜めに吹き
付けてもよいが、略垂直に吹き付けることが多い。
【0088】(4)延伸温度の制御 延伸温度を制御する場合、延伸温度が高くなり過ぎない
ように制御する。延伸温度が高すぎると、フィルム厚み
分布値が大きくなり過ぎる場合がある。なお延伸温度が
高すぎると、この熱収縮性フィルムから得られたラベル
を容器に高速装着する際にラベルの腰の強さが不足する
場合もある。
【0089】延伸温度は、例えば、ガラス転移温度(T
g)+40℃以下(好ましくはTg+15℃以下)に制
御するのが望ましい。
【0090】なお厚みの均一性との関連は小さいが、前
記延伸温度は、ガラス転移温度(Tg)−20℃以上
(好ましくはTg−5℃以上)とするのが望ましい。延
伸温度が低すぎると、フィルムの熱収縮率が不足する場
合があり、さらにはフィルムの透明性が低下する場合が
ある。
【0091】本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルム
の厚みは特に限定するものではないが、例えばラベル用
熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、10〜20
0μmが好ましく、20〜100μmがさらに好まし
い。
【0092】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳述す
るが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本
発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本
発明に含まれる。なお、実施例および比較例で得られた
チップ及びフィルムの組成並びに物性の測定方法は、以
下の通りである。
【0093】(1)フィルム組成 ジカルボン酸成分、多価アルコール成分 試料(チップ又はフィルム)を、クロロホルムD(ユー
リソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーリソップ
社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させ
て、試料溶液を調製し、NMR(「GEMINI−20
0」;Varian社製)を用いて、温度23℃、積算
回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを
測定した。NMR測定によるプロトンのピーク強度に基
づいて、試料を構成するモノマーの構成比率を算出し
た。
【0094】金属成分 試料(チップ又はフィルム)に含まれるNa、Mg、及
びPの含有量は、以下に示す方法に従って測定した。
【0095】[Na]試料2gを白金ルツボに入れ、温
度500〜800℃で灰化分解した後、塩酸(濃度:6
mol/L)を5ml加えて蒸発乾固した。残渣を1.
2mol/Lの塩酸10mlに溶解し、Na濃度を原子
吸光分析装置[「AA−640−12」;(株)島津製
作所製]を用いて測定(検量線法)した。
【0096】[Mg]試料2gを白金ルツボに入れ、温
度500〜800℃で灰化分解した後、塩酸(濃度:6
mol/L)を5ml加えて蒸発乾固した。残渣を1.
2mol/Lの塩酸10mlに溶解し、Mg濃度をIC
P発光分析装置[「ICPS−200」;(株)島津製
作所製]を用いて測定(検量線法)した。
【0097】[P]試料を用いて下記(A)〜(C)の
いずれかの方法により、試料中のリン成分を正リン酸に
した。この正リン酸と、モリブデン酸塩とを硫酸(濃
度:1mol/L)中で反応させて、リンモリブデン酸
とした後、硫酸ヒドラジンを加えて還元した。生じたヘ
テロポリ青の濃度を、吸光光度計[「UV−150−0
2」;(株)島津製作所製]を用いて830nmの吸光
度を測定することによって求めた(検量線法)。
【0098】(A)試料と炭酸ソーダとを白金ルツボに
入れ、乾式灰化分解する。
【0099】(B)硫酸・硝酸・過塩素酸系における湿
式分解 (C)硫酸・過塩素酸系における湿式分解 (2)固形物(異物)残存量 試料(チップ又はフィルム)2gをフェノールとテトラ
クロロエタンの混合液[容量100ml;フェノール/
テトラクロロエタン=3/2(質量比)]に溶解した
後、この溶液をテフロン(登録商標)製のメンブランフ
ィルター(孔径0.1μm)でろ過することにより、固
形物を採取し、下記基準に基づいて固形物残存量を評価
した。
【0100】無:ろ過後のメンブランフルター上に残存
する異物を目視で確認できない 微小:ろ過後のメンブランフィルター上に残存する異物
を目視で確認したところ、異物が局部的に存在する 多:ろ過後のメンブランフィルター上に残存する遺物を
目視で確認したところ、フィルター全面に異物が確認さ
れる (3)溶融比抵抗値 温度275℃で溶融した試料(チップ又はフィルム)中
に一対の電極板を挿入し、120Vの電圧を印加した。
電流を測定し、下記式に基づいて溶融比抵抗値(Si;
単位Ω・cm)を求めた。
【0101】 Si(Ω・cm)=(A/I)×(V/io) [式中、Aは電極の面積(cm2)を示し、Iは電極間距
離(cm)を示し、Vは電圧(V)を示し、ioは電流
(A)を示す] (4)キャスト性 押出し機のTダイと、表面温度を30℃に制御したキャ
スティングロールとの間に、タングステンワイヤー製の
電極を配設し、電極とキャスティングロール間に7〜1
0kVの電圧を印加した。前記Tダイから樹脂を温度2
80℃で溶融押出しし、押し出されたフィルムを前記電
極に接触させた後、キャスティングロールで冷却するこ
とにより、厚さ180μmのフィルムを製造した(キャ
スティング速度=30m/分)。得られたフィルムの表
面に発生したピンナーバブルを目視にて観察し、下記基
準に従って評価した。
【0102】 ○:ピンナーバブルの発生なし △:ピンナーバブルの発生が部分的に認められる ×:ピンナーバブルの発生大 (5)熱収縮率 フイルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、85
℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬し
て熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒浸
漬した後、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記
式に従って求めた値である。 熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長
さ)÷(収縮前の長さ) 最も収縮率の大きい方向を最大収縮方向とした。
【0103】(6)厚み分布 フィルムを長さ50cm、幅5cmに裁断した(厚み測
定用試料)。前記試料を10枚用意し、各試料について
接触式厚み計[「KG60/A」;アンリツ(株)製]
を用いて長さ方向に厚みを測定し、下記式に基づいて厚
み分布を求め、その平均値をフィルムの厚み分布とし
た。
【0104】 厚み分布=(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100 (7)最大熱収縮応力値 加熱炉付引張試験機(東洋精機(株)製「テンシロ
ン」)を用い、熱収縮性フィルムから、最大収縮方向の
長さ200mm、幅20mmのサンプルを切り出し、予
め90℃に加熱した加熱炉中の送風を止めて、サンプル
の両端からそれぞれ50mmの位置でサンプルをチャッ
クに取り付けてチャック間距離が100mmとなるよう
にし、その後速やかに加熱炉の扉を閉め送風を再開し検
出される収縮応力を測定し、チャートから求まる最大値
を最大熱収縮応力値(MPa)とした。
【0105】(8)収縮仕上がり性 フィルムを溶剤によって接着してチューブを製造した。
なお溶剤接着できなかったものについては、ヒートシー
ルを行ってチューブを製造した。このチューブを裁断し
て熱収縮性ポリエステル系フィルムラベルを作成した。
次いで、容量300mlのガラス瓶にラベルを装着した
後、160℃(風速10m/秒)の熱風式熱収縮トンネ
ルの中を13秒間通過させて、ラベルを収縮させた。収
縮白化と収縮斑の程度を目視で判断し、収縮仕上がり性
を5段階で評価した。基準は、5:仕上がり性最良、
4:仕上がり性良、3:収縮白化または収縮斑少し有り
(2ヶ所以内)、2:収縮白化または収縮斑有り(3〜
5ヶ所)、1:収縮白化または収縮斑多い(6ヶ所以
上)として、4以上を合格レベル、3以下のものを不良
とした。
【0106】(9)溶剤接着性 フィルムを紙管に巻いた状態で雰囲気温度30℃±1
℃、相対湿度85±2%に制御した恒温恒湿機内に25
0時間放置した後、取り出して、東洋インキ製造社製の
草色、金色、白色のインキで3色印刷した後、センター
シールマシンを用いて、1,3−ジオキソラン/アセト
ン=80/20(質量比)の混合溶剤で溶剤接着してチ
ューブを作り、二つ折り状態で巻き取った。このチュー
ブロールを、温度23℃±1℃、相対湿度65%±2%
の恒温恒湿機内に24時間放置後、取り出して、巻き返
し、接着性をチェックした。手で容易に剥がれる部分が
あるものを×、軽い抵抗感をもって手で剥がれるものを
△、手で容易に剥がれる部分のないものを○として評価
した。○が合格である。
【0107】(10)フィルムの表面温度 予備加熱前、予備加熱工程、延伸工程、及び延伸前後の
熱処理工程でのフィルムの表面温度は、赤外式の非接触
表面温度計を用いてフィルムの走行方向に連続的に測定
する。各工程で得られる温度の平均値をフィルムの表面
温度とする。
【0108】合成例1(ポリエステルの合成) エステル化反応缶に、57036質量部のテレフタル酸
(TPA)、35801質量部のエチレングリコール
(EG)、及び15843質量部の1,4−シクロヘキ
サンジメタノール(CHDM)を仕込み、0.25MP
aに調圧し、温度220〜240℃で120分間攪拌す
ることによりエステル化反応を行った。反応缶を常圧に
復圧し、6.34質量部の酢酸コバルト・4水塩(重合
触媒)、8質量部のチタニウムテトラブトキシド(重合
触媒)、及び132.39質量部の酢酸マグネシウム・
4水塩(アルカリ土類金属成分)、5.35質量部の酢
酸ナトリウム(アルカリ金属成分)、及び61.5質量
部のトリメチルホスフェート(リン成分)を加え、温度
240℃で10分攪拌した後、75分間かけて圧力0.
5hPaまで減圧すると共に、温度280℃まで昇温し
た。温度280℃で溶融粘度が7000ポイズになるま
で攪拌を継続(約40分間)した後、ストランド状で水
中へ吐出した。吐出物をストランドカッターで切断する
ことにより、ポリエステルチップAを得た(固有粘度:
0.77dl/g)。
【0109】合成例2〜8 合成例1と同様な方法により、表1に示すポリエステル
チップB〜Hを得た。
【0110】
【表1】
【0111】なお表中、無機成分(Na、Mg、P、T
i、Co、Sb)の含有量は、各原子の濃度(単位:p
pm;質量基準)で示す。また各無機成分の由来は下記
の通りである。
【0112】Na:主に酢酸ナトリウムに由来する Mg:主に酢酸マグネシウム・4水塩に由来する P:主にトリメチルホスフェートに由来する Ti:主にチタニウムテトラブトキシドに由来する Co:主に酢酸コバルト・4水塩に由来する Sb:主に三酸化アンチモンに由来する さらに表中、略記号の意味は以下の通りである。
【0113】TPA:テレフタル酸 EG:エチレングリコール CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール BD:1,4−ブタンジオール PD:1,3−プロパンジオール DEG:ジエチレングリコール 実施例1 上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、チ
ップAを53質量%、チップEを37質量%、チップF
を10質量%の割合で混合し、単軸式押出機を用いて温
度280℃で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ18
0μmの未延伸フィルム(ガラス転移温度=72℃)を
得た。この未延伸フィルム(表面温度=40℃)に温度
91℃の熱風を垂直に供給(吹出速度=13m/秒)し
て約10秒間予熱した後、温度70℃の熱風を供給(吹
出速度=14m/秒)してフィルムの表面温度を約72
℃に維持しながらテンターを用いて横方向に4.0倍延
伸し、続いて温度79℃で10秒間熱処理を行って、厚
さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを100
0m以上に亘って連続的に製造した。フィルムを100
0m連続製造したときのフィルムの表面温度の変動幅
は、予熱工程で平均温度±0.6℃、延伸工程で平均温
度±0.6℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の範囲
内であった。得られたフィルム中のジカルボン酸成分及
び多価アルコール成分の組成と物性値を表2に示す。
【0114】実施例2 上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、チ
ップAを70質量%、チップEを5質量%、チップFを
25質量%の割合で混合し、単軸式押出機を用いて温度
280℃で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180
μmの未延伸フィルム(ガラス転移温度=68℃)を得
た。この未延伸フィルム(表面温度=40℃)に温度7
8℃の熱風を垂直に供給(吹出速度=13m/秒)して
約10秒間予熱した後、温度72℃の熱風を供給(吹出
速度=15m/秒)してフィルムの表面温度を約73℃
に維持しながらテンターを用いて横方向に4.0倍延伸
し、続いて温度80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ
45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000
m以上に亘って連続的に製造した。フィルムを1000
m連続製造したときのフィルムの表面温度の変動幅は、
予熱工程で平均温度±0.8℃、延伸工程で平均温度±
0.5℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の範囲内で
あった。得られたフィルム中のジカルボン酸成分及び多
価アルコール成分の組成と物性値を表2に示す。
【0115】比較例1 上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、チ
ップBを70質量%、チップEを5質量%、チップFを
25質量%の割合で混合し、単軸式押出機を用いて温度
280℃で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180
μmの未延伸フィルム(ガラス転移温度=68℃)を得
た。この未延伸フィルム(表面温度=40℃)に温度7
8℃の熱風を垂直に供給(吹出速度=10m/秒)して
約10秒間予熱した後、温度72℃の熱風を供給(吹出
速度=9m/秒)してフィルムの表面温度を約73℃に
維持しながらテンターを用いて横方向に4.0倍延伸
し、続いて温度80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ
45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000
m以上に亘って連続的に製造した。フィルムを1000
m連続製造したときのフィルムの表面温度の変動幅は、
予熱工程で平均温度±1.5℃、延伸工程で平均温度±
1.8℃、熱処理工程で平均温度±1.0℃の範囲内で
あった。得られたフィルム中のジカルボン酸成分及び多
価アルコール成分の組成と物性値を表2に示す。
【0116】実施例3 上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、チ
ップCを70質量%、チップEを5質量%、チップFを
25質量%の割合で混合し、単軸式押出機を用いて温度
280℃で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180
μmの未延伸フィルム(ガラス転移温度=68℃)を得
た。この未延伸フィルム(表面温度=40℃)に温度7
8℃の熱風を垂直に供給(吹出速度=13m/秒)して
約10秒間予熱した後、温度72℃の熱風を供給(吹出
速度=15m/秒)してフィルムの表面温度を約73℃
に維持しながらテンターを用いて横方向に4.0倍延伸
し、続いて温度80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ
45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000
m以上に亘って連続的に製造した。フィルムを1000
m連続製造したときのフィルムの表面温度の変動幅は、
予熱工程で平均温度±0.8℃、延伸工程で平均温度±
1.0℃、熱処理工程で平均温度±0.8℃の範囲内で
あった。得られたフィルム中のジカルボン酸成分及び多
価アルコール成分の組成と物性値を表2に示す。
【0117】比較例2 上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、チ
ップDを70質量%、チップEを5質量%、チップFを
25質量%の割合で混合し、単軸式押出機を用いて温度
280℃で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180
μmの未延伸フィルム(ガラス転移温度=68℃)を得
た。この未延伸フィルム(表面温度=40℃)に温度7
8℃の熱風を垂直に供給(吹出速度=10m/秒)して
約10秒間予熱した後、温度72℃の熱風を供給(吹出
速度=9m/秒)してフィルムの表面温度を約73℃に
維持しながらテンターを用いて横方向に4.0倍延伸
し、続いて温度80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ
45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000
m以上に亘って連続的に製造した。フィルムを1000
m連続製造したときのフィルムの表面温度の変動幅は、
予熱工程で平均温度±1.0℃、延伸工程で平均温度±
1.5℃、熱処理工程で平均温度±1.2℃の範囲内で
あった。得られたフィルム中のジカルボン酸成分及び多
価アルコール成分の組成と物性値を表2に示す。
【0118】比較例3 上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、チ
ップAを10質量%、チップEを64質量%、チップH
を26質量%の割合で混合し、単軸式押出機を用いて温
度280℃で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ18
0μmの未延伸フィルム(ガラス転移温度=60℃)を
得た。この未延伸フィルム(表面温度=40℃)に温度
105℃の熱風を垂直に供給(吹出速度=10m/秒)
して約10秒間予熱した後、温度72℃の熱風を供給
(吹出速度=9m/秒)してフィルムの表面温度を約7
3℃に維持しながらテンターを用いて横方向に4.0倍
延伸し、続いて温度76℃で10秒間熱処理を行って、
厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを10
00m以上に亘って連続的に製造した。フィルムを10
00m連続製造したときのフィルムの表面温度の変動幅
は、予熱工程で平均温度±1.0℃、延伸工程で平均温
度±1.5℃、熱処理工程で平均温度±1.5℃の範囲
内であった。得られたフィルム中のジカルボン酸成分及
び多価アルコール成分の組成と物性値を表2に示す。
【0119】実施例4 上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、チ
ップAを53質量%、チップEを34質量%、チップG
を13質量%の割合で混合し、単軸式押出機を用いて温
度280℃で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ18
0μmの未延伸フィルム(ガラス転移温度=71℃)を
得た。この未延伸フィルム(表面温度=40℃)に温度
91℃の熱風を垂直に供給(吹出速度=13m/秒)し
て約10秒間予熱した後、温度71℃の熱風を供給(吹
出速度=15m/秒)してフィルムの表面温度を約72
℃に維持しながらテンターを用いて横方向に4.0倍延
伸し、続いて温度79℃で10秒間熱処理を行って、厚
さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを100
0m以上に亘って連続的に製造した。フィルムを100
0m連続製造したときのフィルムの表面温度の変動幅
は、予熱工程で平均温度±0.8℃、延伸工程で平均温
度±0.6℃、熱処理工程で平均温度±0.6℃の範囲
内であった。得られたフィルム中のジカルボン酸成分及
び多価アルコール成分の組成と物性値を表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】なお表中、無機成分(Na、Mg、P、T
i、Co、Sb)の含有量は、各原子の濃度(単位:p
pm;質量基準)で示す。また表中、略記号の意味は以
下の通りである。
【0122】TPA:テレフタル酸 EG:エチレングリコール CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール BD:1,4−ブタンジオール PD:1,3−プロパンジオール DEG:ジエチレングリコール
【0123】
【発明の効果】本発明の熱収縮性ポリエステル系フィル
ムによれば、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分
を所定量含有しているため、低温での収縮性がよく、か
つ収縮仕上がり性に優れており、美麗な外観を得ること
ができる。また溶融比抵抗値が所定値以下であるため、
生産性及び品質(ピンナーバブルの抑制、厚みの均一性
など)に優れている。特に前記フィルムは、所定の延伸
条件下で製造されているため厚みの均一性にきわめて優
れている。このため、収縮ラベル、キャップシール、収
縮包装等の用途に好適に用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G09F 3/04 G09F 3/04 C // B29K 67:00 B29K 67:00 105:02 105:02 B29L 7:00 B29L 7:00 (72)発明者 武川 善紀 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 伊藤 勝也 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 米田 茂 大阪市北区堂島浜二丁目2番8号 東洋紡 績株式会社本社内 (72)発明者 野瀬 克彦 大阪市北区堂島浜二丁目2番8号 東洋紡 績株式会社本社内 Fターム(参考) 4F071 AA45 AA46 AA88 AF36 AF58 AF61 AH06 BA01 BB06 BB07 BC01 BC12 4F210 AA24 AE01 AG01 RA03 RC02 RG02 RG04 RG43 4J002 CF031 CF041 CF051 CF061 CF081 DE058 DE066 DE076 DE228 DH027 EC076 EG028 EG036 EH146 EH148 EJ076 EJ078 EW047 EW067 EW127 FD206 GG00

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱収縮性ポリエステル系フィルムにおい
    て、 多価アルコール成分100モル%のうち、1,4−シク
    ロヘキサンジメタノール成分が5モル%以上であり、下
    記(1)、(2)、及び(3)の特性を有する熱収縮性
    ポリエステル系フィルム。 (1)10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収
    縮性ポリエステル系フィルムの試料を、85℃の温水中
    に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10
    秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が
    20%以上 (2)温度275℃における溶融比抵抗値が0.70×
    108Ω・cm以下 (3)フィルムの最大収縮方向に対する厚みの変位を、
    前記最大収縮方向の長さが50cm、幅が5cmの試験
    片を用いて測定したとき、下記式で表される厚み分布が
    7%以下 厚み分布=(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100
  2. 【請求項2】 フィルム中のアルカリ土類金属原子M2
    と、リン原子Pとの質量比(M2/P)が1.2〜5.
    0である請求項1記載の熱収縮性ポリエステル系フィル
    ム。
  3. 【請求項3】 フィルム中のアルカリ土類金属原子M2
    の含有量が40〜400ppm(質量基準)であり、リ
    ン原子の含有量が60〜600ppm(質量基準)であ
    る請求項1又は2記載のポリエステル系フィルム。
  4. 【請求項4】 フィルム中のアルカリ金属原子M1の含
    有量が0〜100ppm(質量基準)である請求項1〜
    3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィル
    ム。
  5. 【請求項5】 多価アルコール成分100モル%中の前
    記1,4−シクロヘキサンジメタノール成分の割合が1
    0〜80モル%である請求項1〜4のいずれかに記載の
    熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  6. 【請求項6】 フィルムの最大収縮方向についての熱収
    縮試験を、90℃の熱空気中、試験片幅20mm、チャ
    ック間距離100mmの条件で行ったとき、最大熱収縮
    応力値が3MPa以上である請求項1〜5のいずれかに
    記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  7. 【請求項7】 ポリエステルを溶融・製膜し、延伸する
    ことにより熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する
    方法であって、前記ポリエステルとしてアルカリ土類金
    属化合物及びリン含有化合物を含むポリエステルを使用
    すると共に、前記延伸に際してフィルムの表面温度を平
    均温度±1℃以内に制御することを特徴とする請求項1
    記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記アルカリ土類金属化合物及びリン含
    有化合物を少なくともエステル化工程の後に添加するこ
    とにより得られるポリエステルを用いる請求項7記載の
    熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
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