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JP2003175320A - 中空糸状膜の製造方法 - Google Patents

中空糸状膜の製造方法

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JP2003175320A
JP2003175320A JP2002292729A JP2002292729A JP2003175320A JP 2003175320 A JP2003175320 A JP 2003175320A JP 2002292729 A JP2002292729 A JP 2002292729A JP 2002292729 A JP2002292729 A JP 2002292729A JP 2003175320 A JP2003175320 A JP 2003175320A
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drying
polyvinylpyrrolidone
hollow fiber
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輝彦 大石
Masujiro Ogata
益次郎 緒方
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 膜からの溶出量が極めて少なく、血液タン
パク質や血小板の付着が少ない優れた透析性能を有する
乾燥膜の製造方法において、特に透水量及び透過率等の
性能のばらつきの小さな中空糸状膜を得る方法を提供す
ること。 【解決手段】 ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピ
ロリドンからなる高透水量で大きな孔径の膜孔保持材を
含まない湿潤膜をあらかじめ製造しておき、脱溶剤後乾
燥することにより該湿潤膜の孔径を収縮させた後、さら
に膜中のポリビニルピロリドンの一部を水に不溶化する
工程を含む、溶出物の少ない乾燥した中空糸状膜を製造
する方法であって、湿潤膜の乾燥工程をマイクロ波照射
によって行うことを特徴とする中空糸状膜の製造方法、
及び該方法によって得られた中空糸状膜からなるモジュ
ール。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、膜からの溶出量が
極めて少なく、血液タンパク質や血小板の付着が少ない
優れた透析性能を有する高性能中空糸状膜の製造方法に
おいて、特に透水量及び透過率等の性能のばらつきの小
さな中空糸状膜を製造する方法に関する。また、本発明
は、そのように製造された中空糸状膜からなるモジュー
ルにも関する。
【0002】
【従来の技術】近年、選択的な透過性を有する膜を利用
する技術がめざましく進歩し、これまでに気体や液体の
分離フィルター、医療分野における血液透析器、血液濾
過器、血液成分選択分離フィルター等の広範な分野での
実用化が進んでいる。該膜の材料としては、セルロース
系(再生セルロース系、酢酸セルロース系、化学変性セ
ルロース系等)、ポリアクリロニトリル系、ポリメチル
メタクリレート系、ポリスルホン系、ポリエチレンビニ
ルアルコール系、ポリアミド系等のポリマーが用いられ
てきた。このうちポリスルホン系ポリマーは、その熱安
定性、耐酸、耐アルカリ性に加え、製膜原液に親水化剤
を添加して製膜することにより、血液適合性が向上する
ことから、半透膜素材として注目され研究が進められて
きた。
【0003】一方、膜を接着してモジュールを作製する
ためには膜を乾燥させる必要があるが、有機高分子より
なる多孔膜、なかでもポリスルホン系等の疎水性ポリマ
ーからなる透析膜、限外濾過膜は、製膜後に乾燥させる
と乾燥前に比べ著しく透水量が低下することが知られて
いる。そのため膜は常に湿潤状態か、水に浸漬させた状
態で取り扱う必要があった。
【0004】この対策として従来よりとられてきた方法
は、製膜後、乾燥前にグリセリン等の低揮発性有機液体
を多孔膜中の空孔部分に詰めておくことであった。しか
しながら、低揮発性有機液体は、一般に高粘度なため、
洗浄除去に時間がかかり、膜をモジュール成型して洗浄
後も微量ではあるが低揮発性有機液体由来の溶出物等
(低揮発性有機液体と化学反応して生成した様々な誘導
体)がモジュール封入液中にみられることに問題があっ
た。
【0005】低揮発性有機液体を用いずに乾燥させる方
法として、特許文献1には、低揮発性有機液体の代わり
に塩化カルシウム等の無機塩を用いる方法が示されてい
るが、洗浄除去する必要性に変わりはない。また、微量
であるとしても残存した無機塩が透析患者に与える悪影
響が危惧される。
【0006】また、膜の乾燥方法として、特許文献2に
は、中空糸膜に対し水蒸気による湿熱処理を行いながら
マイクロ波を照射する中空糸膜の製造方法が示されてい
る。しかし、乾燥でありながら膜の変形を防ぐために水
蒸気処理していることから乾燥時間を長くする欠点があ
り、さらに、グリセリン等の低揮発性有機液体を付着さ
せてからの乾燥であることから、膜からの溶出物を低減
させるという目的は達成されない。
【0007】特許文献3及び特許文献4には、低揮発性
有機液体を用いずに乾燥処理をしたポリビニルピロリド
ンを含む親水化膜が開示されている。これらには、血液
から血漿成分を分離する性能が記載されているが、血漿
タンパクが透過することから透析膜としては有効でない
ことが分かる。また、ポリビニルピロリドンを分解・変
性させる温度で乾燥していることから、膜からの溶出物
を低減させるという目的においては極めて好ましくない
製法である。
【0008】また、特許文献5には血液が直接接触する
膜内表面でのポリビニルピロリドンの存在率を20〜50%
程度にした中空糸膜が開示されている。これは主に血液
タンパク、血小板等の付着物を少なくするための湿潤膜
を示すものである。従って、血液タンパクが付着しにく
いことからろ液速度の径時変化が起こりにくいことが示
されているが、アルブミンの透過性が低い等の透析性能
についての記載は一切無い。
【0009】本発明者は、特定の性能を有する湿潤膜を
グリセリン等の低揮発性有機液体に含浸せずに乾燥して
高性能な血液浄化膜を製造する方法を提案した(特許文
献6)が、糸束状にして乾燥した場合、糸束の中心部と
外周部の膜とでは若干の性能差が生じることが明らかと
なった。
【0010】
【特許文献1】特開平6−277470号公報
【特許文献2】特開平11−332980号公報
【特許文献3】特開平8−52331号公報
【特許文献4】特公平8−9668号公報
【特許文献5】特開平6−296686号公報
【特許文献6】特許第3281364号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、膜か
らの溶出量が極めて少なく、血液タンパク質や血小板の
付着が少ない優れた中空糸状膜の製造方法において、特
に透水量及び透過率等の性能のばらつきの小さな中空糸
状膜を製造する方法を提供することにある。また、本発
明の課題は、透水性及び透過率などの性能が中心部と外
周部とでばらつきがないモジュールを提供することにも
関する。
【0012】
【課題を解決するための手段】以上の如くモジュールか
らの溶出物の原因となる膜孔保持剤を用いずに乾燥した
透析性能を有する血液浄化用乾燥膜は本発明者等の出願
発明(特許文献6)までなかった。その原因は、膜孔保
持剤を用いずに乾燥させると、湿潤状態とは全く異なっ
た低性能の膜となることであった。そこで、本発明者等
は、前期出願により、あらかじめ目標とする性能よりも
高透水量で大孔径である特定の性能を有する湿潤膜を作
製しておき、これを乾燥・収縮させて目標の透析性能を
有する膜を製造するというこれまでにない、誰も思いつ
かなかった発想に基づき鋭意研究を進めた結果、溶出物
が極めて少なく、血液タンパクや血小板の付着が少ない
選択透過性に優れた透析性能を有する膜を得る方法を提
供した。その後、さらに研究を進めたところ、本発明者
らは、特許文献6の方法によって血液浄化膜を製造する
際、湿潤膜を糸束状にして乾燥すると、糸束の中心部と
外周部の膜とでは、透水量や透過性能にばらつきが生じ
ることを発見した。そこで、ばらつきをなくすために鋭
意研究した結果、乾燥工程を工夫することで、ばらつき
が抑えられることを見出し本発明に至ったものである。
【0013】すなわち本発明は、ポリスルホン系ポリマ
ーとポリビニルピロリドンからなる、高透水量で大きな
孔径の膜孔保持材を含まない湿潤膜をあらかじめ製造し
ておき、脱溶剤後乾燥することにより該湿潤膜の孔径を
収縮させた後、さらに膜中のポリビニルピロリドンの一
部を水に不要化する工程を含む、溶出物の少ない乾燥し
た中空糸状膜を製造する方法において、湿潤膜の乾燥工
程をマイクロ波照射によって行うことを特徴とする中空
糸状膜の製造方法に関するものである。
【0014】本発明では、また、乾燥するとき、中空糸
状膜を糸束状に製束して、該糸束内に除湿気体を通過す
ることが好ましい。本発明では、乾燥開始時に糸束の中
心部と外周部における膜の含水率の差を10%以内に少
なくしておくことが、さらに好ましい。
【0015】さらに、本発明は、乾燥開始後の糸束の含
水率が20〜70%になる時点でマイクロ波照射の出力を低
下させるか、あるいはマイクロ波照射乾燥から40℃以上
120℃以下の温度の加熱乾燥に切り替える方法にも関す
るものである。その際、乾燥開始後の糸束の含水率が20
〜70%になる時点での該糸束の中心部と外周部における
膜の含水率の差が5%以内であることが、さらに好まし
い。上記の方法において、製膜原液が、ポリスルホン系
ポリマー、ポリビニルピロリドン、及び溶剤からなり、
ポリスルホン系ポリマーに対するポリビニルピロリドン
の比率が18〜27重量%であることが好ましい。本発明
は、また、上記のように製造される中空糸状膜からなる
モジュールにも関するものである。本発明の中空糸状膜
は血液透析性能に優れており血液透析のための中空糸状
膜として用いられる。さらに、その他の体外循環治療の
ための膜としても有用である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の中空糸状膜(以
下単に「膜」ともいう)の構成について説明する。本発
明の製造方法は、高透水量で大きな孔径の湿潤膜をあら
かじめ製造しておき、脱溶剤後に膜孔保持剤を含浸させ
ずに乾燥させることに特徴を有する。
【0017】通常、中空糸状膜を製造する際に用いられ
る膜孔保持剤には、粘性を有する有機物と人体への毒性
が懸念される無機物に分類される。粘性を有する有機物
からなる膜孔保持剤は、粘性が高いために完全に洗浄除
去することが困難であることから、膜中に残存して膜か
らの溶出量を増加させ、さらに残存した膜孔保持剤と化
学反応して有害物を生じる原因と成り得る。一方、無機
物からなる膜孔保持剤においても、微量に残存するため
透析患者に与える悪影響が危惧される。
【0018】本発明でいう膜孔保持剤とは、乾燥時の性
能低下を防ぐために乾燥前までの製造過程で膜中の空孔
部分に詰めておく物質である。膜孔保持剤を含んだ溶液
に湿潤膜を浸漬することによって膜中の空孔部分に該保
持剤を詰めることが可能である。乾燥後も膜孔保持剤を
洗浄・除去さえすれば、膜孔保持剤の効果により湿潤膜
と同等の透水量、阻止率等の性能を保持することが可能
である。
【0019】膜孔保持剤としては、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、
1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコ
ール、2−ブチン−1,4−ジオール、2−メチル−
2,4−ペンタジオール、2−エチル−1,3−ヘキサ
ンジオール、グリセリン、テトラエチレングリコール、
ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコー
ル300、ポリエチレングリコール400等のグリコー
ル系又はグリセロール系化合物及び蔗糖脂肪酸エステル
等の有機化合物および塩化カルシウム、炭酸ナトリウ
ム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウ
ム、塩化亜鉛等の無機塩を挙げることができる。
【0020】また、本発明において、高透水量で大きな
孔径の湿潤膜とは、透水量が100mL/(m2・hr・mmHg)以上で
あって、重量平均分子量40,000のポリビニルピロリドン
の透過率が75%を超え、且つ牛血漿系におけるアルブミ
ンの透過率が0.3%以上である性能を有する湿潤膜を意
味する。
【0021】牛血漿アルブミンの透過率は、以下のよう
な方法で測定することが可能である。まず、長さ20cmの
中空糸状膜を100本束ねて小型モジュールを作製する。
このモジュールに37℃に加温したヘパリン添加牛血漿
(ヘパリン5000IU/L(リットル)、タンパク濃度6.0g/d
L(デシリットル))を膜内表面側に線速1.0cm/秒で通
過させ、モジュールの入り圧と出圧の平均圧力50mmHgに
て30分間限外濾過を行う。得られた濾液と元液の濃度の
測定は、紫外分光光度計により280nmの波長にて測定
し、下記の式(1)に代入して透過率を算出する。 透過率(%)=(濾液の吸光度)×100/(元液の吸光度) (1)
【0022】ポリビニルピロリドンの透過率は、濾過す
る水溶液を3重量%のポリビニルピロリドン(BASF社製
K30、重量平均分子量40,000)のリン酸バッファー
(0.15mol/リットル、pH7.4)水溶液にして、モジュー
ルの入り圧と出圧の平均圧力を200mmHgにした以外は、
牛血漿アルブミンの透過率の測定と同様な操作を行うこ
とにより求められる。
【0023】高透水量で大きな孔径の湿潤膜は、ポリス
ルホン系ポリマー(以下単に「ポリマー」ともいう)、
ポリビニルピロリドン、及び溶剤からなる製膜原液を、
内部液とともに2重環状ノズルから吐出させ、エアギャ
ップを通過させた後、凝固浴で凝固させる製造方法にお
いて、内部液にポリマーの溶剤の水溶液を用いることに
より製造可能である。
【0024】内部液は、膜の中空部と内表面を形成させ
るものであるが、内表面の孔径は、内部液中の溶剤濃度
に比例して大きくなることが判っている。本発明では、
湿潤膜を乾燥収縮させることにより目標の性能の透析膜
が得られることから、内部液中の溶剤濃度を、目標とす
る透析性能を有する湿潤膜を製造する時に比べて、高濃
度にする必要がある。
【0025】本発明で用いられるポリスルホン系ポリマ
ーとしては、下記の式(2)、または式(3)で示され
る繰り返し単位を有するものが挙げられる。なお、式中
のArはパラ位での2置換のフェニル基を示し、重合度
や分子量については特に限定しない。 −O−Ar−C(CH−Ar−O−Ar−SO−Ar− (2) −O−Ar−SO−Ar− (3)
【0026】ポリビニルピロリドンは高分子量のものほ
ど膜への親水化効果が高いため、高分子量のものほど少
量で十分な効果が発揮できることから、本発明において
は重量平均分子量900,000以上のポリビニルピロリドン
が使用される。900,000より小さい重量平均分子量を有
するポリビニルピロリドンを用いて膜への親水化効果を
付与するためには大量のポリビニルピロリドンを膜中に
残存させる必要があるが、このために膜からの溶出物が
増加することになる。また、逆に溶出物を下げるために
900,000より小さい重量平均分子量のポリビニルピロリ
ドンの膜中での残存量を少なくすると親水化効果が不十
分となってしまい、その結果血液透析を行ったとき濾過
速度の経時的低下をきたし十分な効果を発揮できない。
【0027】また、ポリスルホン系ポリマーとポリビニ
ルピロリドンの溶解に用いられる溶剤は、これら両方を
共に溶解するものであり、N−メチル−2−ピロリドン、
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミ
ド等である。
【0028】製膜原液中のポリマー濃度は、製膜可能
で、かつ得られた膜が膜としての性能を有するような濃
度の範囲であれば特に制限されず、5〜35重量%、好ま
しくは10〜30重量%である。高い透水性能を達成するた
めには、ポリマー濃度は低い方がよく、10〜25重量%が
好ましい。
【0029】さらに重要なことはポリビニルピロリドン
の添加量であり、ポリマーに対するポリビニルピロリド
ンの混和比率ガ27重量%以下、好ましくは10〜27重量
%、さらに好ましくは20〜27重量%である。ポリマーに
対するポリビニルピロリドンの混和比率が27重量%を超
えると溶出量が増える傾向にあり、また10重量%未満で
は製膜原液の粘性が低いためにスポンジ構造の膜を得る
ことが困難である。また、原液粘度、溶解状態を制御す
る目的で、水、貧溶剤等の第4成分を添加することも可
能であり、その種類、添加量は組み合わせにより随時行
えばよい。
【0030】凝固浴としては、例えば水;メタノール、
エタノール等のアルコール類;エーテル類;n−ヘキサ
ン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類などポリマーを
溶解しない液体が用いられるが、水が好ましい。また、
凝固浴にポリマーを溶解する溶剤を若干添加することに
より凝固速度をコントロールすることも可能である。
【0031】凝固浴の温度は、-30〜90℃、好ましくは0
〜90℃、さらに好ましくは0〜80℃である。凝固浴の温
度が90℃を超えたり、-30℃未満であると、凝固浴中の
中空糸状膜の表面状態が安定しにくい。
【0032】脱溶剤洗浄後の乾燥は、中空糸状膜を多数
本束ねた糸束の形態(以後、単に『糸束』と呼ぶ)に
て、十分に湿潤している糸束にマイクロ波を照射するこ
とにより行なわれる。
【0033】しかしながら、マイクロ波照射は低含水率
の糸束をより均一に乾燥するのに適していることから、
過加熱による膜の変形・溶融を防ぐために、糸束の平均
含水率が20〜70%、より好ましくは50〜70%になる時点
でマイクロ波照射の出力を低下させるのが好ましい。
【0034】さらに、糸束の平均含水率が20〜70%、好
ましくは50〜70%になる時点での該糸束の中心部と外周
部における膜の含水率の差が5%以内であることが、性
能のばらつきを抑えるためにより好ましい。乾燥の時、
糸束内に通風を行うことによって、糸束の中心部と外周
部における膜の含水率の差を5%以内にすることが可能
である。ここで、糸束の中心部とは、糸束の円形状断面
において中心点から直径の1/6の範囲をいう。また、糸束
の外周部とは、糸束の円形状断面において外周から1/6の
範囲をいう。
【0035】また、同様な理由から、乾燥開始時におけ
る糸束についても、糸束の中心部と外周部における膜の
含水率の差が10%以内であることが好ましい。脱溶剤後
糸束を放置しておくと、糸束の中心部と外周部の含水率
には差が生じるために、乾燥工程に入る直前に糸束を再
度水中に浸漬することにより糸束中心部と外周部の含水
率の差を10%以内にすることが可能である。ここで、含
水率とは、乾燥前の糸束(又は膜)の重量(A(g))
と乾燥糸束(又は膜)の重量(B(g))から(4)式
により計算で求められるものをいう。 含水率(%)=(A−B)×100/B (4)
【0036】さらに、糸束の中心部と外周部の乾燥速度
の差をなくすために、糸束内には40℃を超えない温度の
除湿気体を通風することが好ましい。糸束内に通風する
とは中空糸状膜間に風を流すことを意味する。本発明に
おいて、40℃以上120℃以下の温度の除湿気体を糸束内
に通風することは、糸束内に通風すると同時に糸束に対
し加熱乾燥を行っていることを意味する。
【0037】マイクロ波の出力は高いことが好ましい
が、乾燥させる膜の量により最適値は異なる。また、糸
束の含水率が20〜70%、好ましくは50〜70%になる時点
でマイクロ波照射から40℃以上120℃以下の温度の送風
乾燥に切り替える2段階乾燥を行う方法でも、マイクロ
波照射よりは乾燥時間を要するが、糸束を均一に乾燥す
ることが可能である。2段階乾燥法においても、糸束の
含水率が20〜70%、好ましくは50〜70%になる時点での
該糸束の中心部と外周部における膜の含水率の差が5%
以内であることが性能のばらつきを抑えるのに有効であ
る。
【0038】加熱乾燥の温度は、40℃以上120℃以下で
あることが好ましく、さらに好ましくは100℃以下であ
る。120℃を超えるとポリビニルピロリドンが変性およ
び分解するために、膜孔保持剤を用いなくても得られた
乾燥膜からの溶出量が増えることから好ましくない。ま
た、40℃未満では、乾燥時間がかかり過ぎるので好まし
くない。
【0039】乾燥後の膜に電子線及びγ線等の放射線を
照射することにより、膜中のPVPの一部を水に不溶化で
きることから、膜からの溶出量をより低減することが可
能である。放射線の照射は、モジュール化前又はモジュ
ール化後のどちらでも良い。また、膜中の全PVPを不溶
化してしまうと、溶出量を低減できる一方で、透析時に
ロイコペニア症状が観察されることから好ましくない。
【0040】本発明でいう水に不溶であるPVPとは、膜
中の全PVP量から水に可溶であるPVP量を差し引いたもの
である。膜中の全PVP量は、窒素及びイオウの元素分析
により容易に算出することができる。また、水に可溶で
あるPVP量は、以下の方法により求めることができる。
膜をN−メチル−2−ピロリドンで完全に溶解した後、
得られたポリマー溶液に水を添加してポリスルホン系ポ
リマーを完全に沈殿させる。さらに該ポリマー溶液を静
置した後、上澄み液中のPVP量を液体クロマトグラフィ
ーで定量することにより水に可溶であるPVPを定量する
ことができる。
【0041】本発明の製造方法は、膜孔保持剤を含まな
い湿潤膜をマイクロ波照射により乾燥することを特徴と
し、本製造方法を用いて得られた膜は、膜孔保持剤を含
まない乾燥膜であって、純水の透水量が10〜1,000mL/
(m2・hr・mmHg)、重量平均分子量40,000のポリビニルピ
ロリドンの透過率が75%以下で、且つ牛血漿系における
アルブミンの透過率が0.3%未満であり、さらにそれぞ
れの性能のバラツキが小さいことを特徴とする中空糸状
膜である。最近の血液透析療法では、透析アミロイド病
状の改善のために原因物質とされているβ2−ミクログ
ロブリン(分子量:11,800)を十分に透過させるが、ア
ルブミン(分子量:67,000)はほとんど透過させない分
画性を有する膜が求められており、本発明の膜は、牛血
漿系におけるアルブミンの透過率が0.3%以下である。
アルブミンの透過率が0.3%を超えることは体内に有効
なアルブミンを大きく損失することを意味することから
透析膜としては好ましくない。
【0042】また、純水の透水量が10mL/(m2・hr・mmH
g)以上の膜においては、ポリビニルピロリドンの透過
率(A(%))とβ2−ミクログロブリンのクリアランス
(B(mL/分))とには下記の式(5)に示す一次関数的
な相関関係が存在する。クリアランス評価には1.5m2
有効膜面積を有する透析仕様のモジュールに成形・加工
することが必要であるが、本評価方法では簡易的に測定
可能であり、クリアランスを容易に推測することが可能
である。 B(mL/分)=0.636A+29.99 (5) ここで、β2−ミクログロブリンのクリアランスは、
1.5mの有効膜面積のモジュールに、血液流量200m
L/分(膜内表面側)、透析液流量500mL/分(膜外表面
側)の条件下で日本人工臓器学会の性能評価基準に従い
透析測定したものである。
【0043】β2−ミクログロブリンのクリアランス
は、透析患者の体力や病状及び病状の進行度に合わせて
様々なものが要求されているが、ポリビニルピロリドン
の透過率が75%を超えるとアルブミンの透過率が0.3%
を超えてしまうことから、ポリビニルピロリドンの透過
率は75%以下であることが必要である。
【0044】また、本発明の製造方法により作られた膜
は,膜孔保持剤を製造工程で使用してないことから、膜
孔保持剤由来の溶出物は存在しない。従って、本発明の
膜の溶出物試験液の吸光度は0.04未満であり、且つ該試
験液中に膜孔保持剤を含まない。ここで、溶出物試験液
とは、人工腎臓装置承認基準に基づき調整したものであ
り、2cmに切断した乾燥中空糸状膜1.5gと注射用蒸留水1
50mLを日本薬局方の注射用ガラス容器試験のアルカリ溶
出試験に適合するガラス容器に入れ、70±5℃で1時間
加温し、冷却後膜を取り除いた後蒸留水を加えて150m
Lとしたものを意味する。吸光度は220〜350nmでの最大
吸収波長を示す波長にて紫外吸収スペクトルで測定す
る。人工腎臓装置承認基準では吸光度を0.1以下にする
ことが定められているが、本発明の膜は膜孔保持剤を保
持しないことから0.04未満を達成することが可能であ
る。また、膜孔保持剤の有無については、該試験液を濃
縮又は水分除去したものをガスクロマトグラフィー、液
体クロマトグラフィー、示差屈折系、紫外分光光度計、
赤外線吸光光度法、核磁気共鳴分光法、及び元素分析等
の公知の方法により測定することにより検知可能であ
る。また、膜中に膜孔保持剤を含むか否かについてもこ
れらの測定方法により検知可能である。
【0045】本発明の製造方法により作られた膜は、ポ
リスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンからな
り、膜内表面におけるポリビニルピロリドンの濃度が30
〜45重量%である。膜の血液適合性に重要な因子は、血
液が接する膜内表面の親水性であり、ポリビニルピロリ
ドン(以下、単に「PVP」ともいう)を含有するポリス
ルホン系膜では、膜内表面のPVP濃度が重要である。膜
内表面のPVP濃度が低すぎると膜内表面が疎水性を示
し、血漿タンパク質が吸着しやすく、血液の凝固も起こ
りやすい。すなわち、膜の血液適合性不良となる。逆に
膜内表面のPVP濃度が高すぎると、PVPの血液系への溶出
量が増加し本発明の目的や用途にとっては好ましくない
結果を与える。従って、本発明での膜内表面のPVPの濃
度は、30〜40%の範囲であり、好ましくは33〜40%であ
る。
【0046】膜内表面のPVP濃度は、エックス線光量子
スペクトル(X-ray Photoelectron spectroscopy、以下X
PS)によって決定される。すなわち、膜内表面のXPSの
測定は、試料を両面テープ上に並べた後、カッターで繊
維軸方向に切開し、膜の内側が表になるように押し広げ
た後、通常の方法で測定する。すなわち、C1s、O1s、N1s、
S2pスペクトルの面積強度から、装置付属の相対感度係
数を用いて窒素の表面濃度(窒素原子濃度)とイオウの
表面濃度(イオウ原子濃度)から求めた濃度をいうもの
であり、ポリスルホン系ポリマーが(2)式の構造であ
るときには(6)式により計算で求めることができる。 PVP濃度(重量%)=C×100/(C+C) (6) ここで、C:窒素原子濃度(%) C:イオウ原子濃度(%) M:PVPの繰り返しユニットの分子量(111) M:ポリスルホン系ポリマーの繰り返しユニットの分
子量(442)
【0047】
【実施例】以下にこの発明の実施例を示すが、本発明
は、これに限定されるものではない。 (血小板粘着量の測定)膜への血小板粘着量の測定は、
以下の操作手順で行った。長さ15cmの中空糸状膜を100
本束ねて小型モジュールを作製し、該モジュールにヘパ
リン添加ヒト新鮮血を線速1.0cm/秒にて15分間通過さ
せ、続いて生理食塩水を1分間通過させた。次に中空糸
状膜を5mm間隔程度に細断し、0.5%ポリエチレングリ
コールアルキルフェニルエーテル(和光純薬社製 商品
名トリトンX-100)を含む生理食塩水中で超音波照射し
て膜表面に粘着した血小板から放出される乳酸脱水素酵
素(以下、「LDH」という)を定量することにより膜面
積(内表面換算)当たりのLDH活性として算出した。酵
素活性の測定はLDHモノテストキット(ベーリンガー・
マンハイム・山之内社製)を使用した。なお、陽性対照
としてPVPを含有しない膜(γ線照射前の実施例1の膜
を有効塩素濃度1,500ppmの次亜塩素酸ナトリウムに2日
間浸漬した後、エタノールに1日間浸漬することにより
得られたもの)を用い、試験品と同時に比較した。
【0048】(血漿タンパク質吸着量)膜への血漿タン
パク質吸着量は、限外濾過時間を240分にした以外はア
ルブミンの透過率測定と同様な操作を行った後、生理食
塩水で1分間洗浄した。次に中空糸状膜を5mm間隔程度
に細断し、1.0%ラウリル硫酸ナトリウムを含む生理食
塩水中で攪拌して抽出した血漿タンパク質を定量するこ
とにより膜重量当たりのタンパク質吸着量として算出し
た。タンパク質濃度はBCAプロテインアッセイ(ピアー
ス社製)を使用した。なお、陽性対照としてPVPを含有
しない膜(γ線照射前の実施例1の膜を有効塩素濃度1,
500ppmの次亜塩素酸ナトリウムに2日間浸漬した後、エ
タノールに1日間浸漬することにより得られたもの)を
用い、試験品と同時に比較した。
【0049】
【実施例1】(製膜及び残溶剤の除去)ポリスルホン
(Amoco Engineering Polymers社製 P-1700)18.0重量
%、ポリビニルピロリドン(BASF社製 K90、重量平均分
子量1,200,000)4.3重量%を、N,N−ジメチルアセトア
ミド77.7重量%に溶解して均一な溶液とした。ここで、
製膜原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリド
ンの混和比率は23.9重量%であった。この製膜原液を60
℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド30重量%と水70
重量%の混合溶液からなる内部液とともに、紡口(2重
環状ノズル 0.1mm−0.2mm−0.3mm)から吐出させ、0.9
6mのエアギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴
へ浸漬した。この時、紡口から凝固浴までを円筒状の筒
で囲み、筒の中に水蒸気を含んだ窒素ガスを流しなが
ら、筒の中の湿度を54.5%、温度を51℃にコントロール
した。紡速は、80m/分に固定した。ここで、紡速に対す
るエアギャップの比率は、0.012m/(m/分)であった。
巻き取った糸束を切断後、束(長さ300mm、膜本数9200
本)の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけ
て洗浄することにより膜中の残溶剤を除去した。
【0050】(湿潤膜の乾燥及びPVPの不溶化処理)上
記の残溶剤除去後の糸束(含水率が300%、糸束中心部
の膜の含水率が300%、糸束外周部の膜の含水率が300
%、糸束の中心部と外周部における膜の含水率の差が0
%)30本を21分間マイクロ波照射(出力30kW)した。こ
の時点で、糸束の含水率は65%(糸束中心部の膜の含水
率が65%、糸束外周部の膜の含水率が65%、糸束の中心
部と外周部における膜の含水率の差が0%)であった。
引き続いて、出力を落として4分間マイクロ波照射(出
力21kW)することにより含水率が1%未満の乾燥膜(糸
束)を得た。また、乾燥開始時から乾燥終了時までの
間、各糸束の下部から8m/秒の風速にて除湿空気(湿度1
0%以下)を糸束の下部から上部へと通風した。この
時、糸束の上部からは乾燥開始時において糸束平均で1m
/秒の風速が測定された。さらに、得られた乾燥膜(糸
束)に25kGyのγ線を照射することにより膜中のPVPの一
部を不溶化した。
【0051】(性能評価結果)この膜の性能を表1に示
す。性能は10回測定した結果の平均値を示す。この膜を
有効濾過面積1.5m2のモジュールにしてβ2−ミクログロ
ブリンのクリアランスを実測したところ、32mL/分で有
ることが分かり、PVPの透過率を式(6)に代入して算
出したクリアランス32.5mL/分と同等であることが明ら
かとなった。さらに、該モジュールにて尿素、ビタミン
B12の透過測定を行ったところ、尿素のクリアランスと
透過率はそれぞれ185mL/分、83%であった。また、ビタ
ミンB12については同様に95mL/分、48%であった。測定
は、
【0042】と同様な方法で行った。また、膜中の全PV
P量の62%が、水に不溶であった。膜の溶出物試験をし
た結果、溶出物試験液の吸光度は0.04以下であった。ま
た、膜孔保持剤を用いていないことから溶出物試験液中
に膜孔保持剤は含まれて無かった。さらに、この膜は陽
性対照膜に比べて、血小板粘着量が低く(陽性対照膜4
3.4Unit/m2)、且つ血漿タンパク質の粘着量も低いこと
が明らかとなった(陽性対照膜62.5mg/g)。
【0052】以上に挙げた性能から、この膜は、膜から
の溶出量が極めて少なく、血液タンパク質や血小板の付
着が少ないことが明らかとなった。また、アルブミンの
透過率が少なくβ2−ミクログロブリンのクリアランス
にも優れることから透析性能にも優れた膜であることが
分かった。さらに、糸束の中心部と外周部における膜の
性能の差がこれまでの乾燥方法(比較例1)に比べて少
ないことから性能のばらつきが少ないことが明らかとな
った。
【0053】
【実施例2】製膜原液中のポリビニルピロリドンを4重
量%、N,N−ジメチルアセトアミドを78重量%とした以
外は、実施例1と同様な操作を行った。この時の製膜原
液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混
和比率は22.2重量%であった。この膜の性能を表1に示
す。この膜は、膜からの溶出量が極めて少なく、血液タ
ンパク質や血小板の付着が少ないことが明らかとなっ
た。また、アルブミンの透過率が少なく、且つβ2−ミ
クログロブリンのクリアランスにも優れることが示唆さ
れたことから透析性能にも優れた膜であることが分かっ
た。さらに、糸束の中心部と外周部における膜の性能の
差がこれまでの乾燥方法(比較例1)に比べて少ないこ
とから性能のばらつきが少ないことが明らかとなった。
【0054】
【実施例3】製膜原液中のポリビニルピロリドンを4.8
重量%、N,N−ジメチルアセトアミドを77.2重量%とし
た以外は、実施例1と同様な操作を行った。この時の製
膜原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドン
の混和比率は26.7重量%であった。この膜の性能を表1
に示す。この膜は、膜からの溶出量が極めて少なく、血
液タンパク質や血小板の付着が少ないことが明らかとな
った。また、アルブミンの透過率が少なく、且つβ2
ミクログロブリンのクリアランスにも優れることが示唆
されたことから透析性能にも優れた膜であることが分か
った。さらに、糸束の中心部と外周部における膜の性能
の差がこれまでの乾燥方法(比較例1)に比べて少ない
ことから性能のばらつきが少ないことが明らかとなっ
た。
【0055】
【実施例4】内部液にN,N−ジメチルアセトアミド52重
量%と水48重量%からなる混和溶液を用いた以外は、実
施例3と同様な操作を行った。この膜の性能を表2に示
す。この膜は、膜からの溶出量が極めて少なく、血液タ
ンパク質や血小板の付着が少ないことが明らかとなっ
た。また、アルブミンの透過率が少なく、且つβ2−ミ
クログロブリンのクリアランスにも優れることが示唆さ
れたことから透析性能にも優れた膜であることが分かっ
た。さらに、糸束の中心部と外周部における膜の性能の
差がこれまでの乾燥方法(比較例1)に比べて少ないこ
とから性能のばらつきが少ないことが明らかとなった。
【0056】
【実施例5】残溶剤除去後の糸束(含水率が300%、糸
束中心部の膜の含水率が300%、糸束外周部の膜の含水
率が300%、糸束の中心部と外周部における膜の含水率
の差が0%)30本を21分間マイクロ波照射(出力30kW)
した後、糸束の含水率が65%(糸束中心部の膜の含水率
が65%、糸束外周部の膜の含水率が65%、糸束の中心部
と外周部における膜の含水率の差が0%)であることを
確認した後、87℃に設定した乾燥機(乾燥機内の循環風
速3m/秒)に3時間入れることにより加熱乾燥して含水率
が1%未満の糸束を得た以外は実施例1と同様な操作を
行った。この膜の性能を表2に示す。この膜は、膜から
の溶出量が極めて少なく、血液タンパク質や血小板の付
着が少ないことが明らかとなった。また、アルブミンの
透過率が少なく、且つβ2−ミクログロブリンのクリア
ランスにも優れることが示唆されたことから透析性能に
も優れた膜であることが分かった。さらに、糸束の中心
部と外周部における膜の性能の差がこれまでの乾燥方法
(比較例1)に比べて少ないことから性能のばらつきが
少ないことが明らかとなった。
【0057】
【比較例1】残溶剤除去後の糸束(含水率が300%、糸
束中心部の膜の含水率が300%、糸束外周部の膜の含水
率が300%、糸束の中心部と外周部における膜の含水率
の差が0%)30本を、87℃に設定した乾燥機(乾燥機内
の循環風速3m/秒)に7時間入れることにより加熱乾燥し
て含水率が1%未満の糸束を得た以外は実施例1と同様
な操作を行った。この結果を表2に示す。透水量及PVP
の透過率において糸束の中心部と外周部における膜の性
能に差があり、結果として糸束内で性能のばらつきがあ
ることが明らかとなった。
【0058】
【比較例2】γ線照射しない以外は、実施例1と同様な
操作を行った。この結果を表3に示す。PVPの溶出のた
め溶出試験液の吸光度が0.04を超えることが明らかとな
った。
【0059】
【比較例3】製膜原液中のポリビニルピロリドンを5.0
重量%、N,N−ジメチルアセトアミドを77.0重量%とし
た以外は、実施例1と同様な操作を行った。この時の製
膜原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドン
の混和比率は27.8重量%であった。この膜の性能を表3
に示す。製膜原液中のポリスルホンに対するポリビニル
ピロリドンの混和比率が27重量%を超えているので、溶
出量、膜内表面PVP濃度が増加している。
【0060】
【比較例4】製膜原液中のポリビニルピロリドンを3.6
重量%、N,N−ジメチルアセトアミドを78.4重量%とし
た以外は、実施例1と同様な操作を行った。この時の製
膜原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドン
の混和比率は20.0重量%であった。この膜の性能を表3
に示す。膜内表面のPVP量が30%を下回っていることが
明らかとなった。
【0061】
【比較例5】内部液にN,N−ジメチルアセトアミド60重
量%と水40重量%からなる混和溶液を用いた以外は、実
施例3と同様な操作を行った。この膜の性能を表3に示
す。この膜は、アルブミンの透過率が0.3%を超えてお
り、またPVPの透過率も75%を超える性能であった。
【0062】
【比較例6】内部液にN,N−ジメチルアセトアミド10重
量%と水90重量%からなる混和溶液を用いた以外は、実
施例1と同様な操作を行った。この膜の性能を表3に示
す。純水の透水量が10mL/(m2・hr・mmHg)を下回る性能
であった。
【0063】
【比較例7】乾燥温度を170℃にした以外は、実施例1
と同様な操作を行った。この膜の性能を表3に示す。こ
の膜は、膜中の全てのPVPが水に不溶であった。この膜
を有効濾過面積1.5m2のモジュールにして血液流量200mL
/分(膜内表面側)、透析液流量500mL/分(膜外表面
側)の条件下で日本人工臓器学会の性能評価基準に従い
臨床血液評価したところ、透析患者の白血球数が一時的
に低下するロイコペニア症状が観察された。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【発明の効果】本発明の膜は、膜からの溶出量が極めて
少なく、血液タンパク質や血小板の付着が少ない優れた
透析性能を有することから医薬用途、医療用途、及び一
般工業用途に用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B01D 71/44 B01D 71/44 71/68 71/68 Fターム(参考) 4D006 GA13 HA01 MA01 MA21 MB02 MB06 MB18 MC21X MC62X NA13 NA17 NA18 NA50 NA60 NA64 PB09 PB52

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリスルホン系ポリマー及びポリビニル
    ピロリドンからなる、高透水量で大きな孔径の膜孔保持
    材を含まない湿潤膜をあらかじめ製造しておき、脱溶剤
    後乾燥することにより該湿潤膜の孔径を収縮させた後、
    さらに膜中のポリビニルピロリドンの一部を水に不溶化
    する工程を含む、溶出物の少ない乾燥した中空糸状膜を
    製造する方法であって、湿潤膜の乾燥工程をマイクロ波
    照射によって行うことを特徴とする中空糸状膜の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 乾燥時に中空糸状膜が糸束状に製束され
    ており、該糸束内に除湿気体を通風することを特徴とす
    る請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 乾燥開始時の糸束の中心部と外周部にお
    ける膜の含水率の差が10%以内であることを特徴とす
    る請求項2に記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 乾燥開始後、糸束の平均含水率が20〜70
    %になる時点で、マイクロ波照射の出力を低下させるこ
    とを特徴とする請求項2または3に記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 乾燥開始後、糸束の平均含水率が20〜70
    %になる時点で、マイクロ波照射乾燥から40℃以上120
    ℃以下の温度の加熱乾燥に切り替えることを特徴とする
    請求項2または3に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 乾燥開始後の糸束の平均含水率が20〜70
    %になる時点での該糸束の中心部と外周部における膜の
    含水率の差が5%以内であることを特徴とする請求項4
    または5に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 製膜原液が、ポリスルホン系ポリマー、
    ポリビニルピロリドン、及び溶剤からなり、ポリスルホ
    ン系ポリマーに対するポリビニルピロリドンの比率が18
    〜27重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいず
    れかに記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載の方法に
    よって製造される中空糸状膜からなるモジュール。
  9. 【請求項9】 血液透析用である請求項8に記載のモジ
    ュール。
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