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JP2002173645A - 水系樹脂組成物 - Google Patents

水系樹脂組成物

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JP2002173645A
JP2002173645A JP2000369226A JP2000369226A JP2002173645A JP 2002173645 A JP2002173645 A JP 2002173645A JP 2000369226 A JP2000369226 A JP 2000369226A JP 2000369226 A JP2000369226 A JP 2000369226A JP 2002173645 A JP2002173645 A JP 2002173645A
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aqueous resin
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昌隆 田村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塗膜からの室内への揮発性有機化合物の放散
を限りなく零とすることが可能であり、さらに、すでに
室内環境中に放散しているホルムアルデヒドや硫化水素
等の有害化学物質を吸着及び分解する能力のある、高機
能性室内環境対応型の水系塗料組成物の提供を図る。 【解決手段】 揮発性有機化合物を意図的に添加せずと
も低温造膜性及び低温安定性を備える水系樹脂組成物に
対して、ホルムアルデヒドや硫化水素等の有害化学物質
を吸着する能力のある添加剤と、有害化学物質を分解す
る能力のある添加剤とを配合した水系塗料組成物を提供
する。水系樹脂組成物としては、二層構造水系樹脂組成
物や架橋型水系樹脂組成物などを例示できる。有害化学
物質を吸着する能力のある添加剤としては、活性炭等の
物理吸着能を有する多孔質の添加剤や、リン酸系化合物
等の化学吸着能を有する添加剤を例示でき、有害化学物
質を分解する能力のある添加剤としては、二酸化チタン
や酸化亜鉛等の光触媒活性を有するものを例示できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本願発明は、揮発性有機化合物を意図的に
添加せずとも、低温造膜性や低温安定性に優れた水系樹
脂からなる塗料組成物を使用することにより、塗膜から
の室内への揮発性有機化合物の放散をなくし、更に、す
でに室内環境中に放散しているホルムアルデヒドや硫化
水素等の有害化学物質を吸着及び分解する能力のある、
室内環境対応型水系塗料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】水系塗料組成物は乾燥過程において連続
膜を形成し、機能をもたらすが、水系塗料組成物の連続
膜形成条件として、塗装作業温度以上の最低造膜温度
(MFT)を有する水系塗料組成物は造膜不良により連
続膜が形成されず、十分な性能を発揮することができな
い。低温域での造膜性を十分達成させるためには、ベー
ス樹脂のTgを低くし、MFTを低温域に調整すること
で可能となるが、高硬度な膜物性が要求される場合に
は、Tgの高いベース樹脂を使用する必要が生ずる。こ
の場合には、造膜助剤として揮発性有機化合物を添加
し、目的とする膜を形成させる方法をとる場合がある。
【0003】また、水系塗料組成物は水媒体であるた
め、低温(0 ℃以下)領域で凍結する性質があり、さら
に寒冷地においては、マイナス温度領域での長期保管や
塗装作業条件が有るため、低温域での凍結防止や凍結融
解安定性を向上させる目的で、エチレングリコールやプ
ロピレングリコールのような揮発性有機化合物を意図的
に添加する方法が一般的であり、これら揮発性有機化合
物もまた環境、臭気等懸念される要因であることは勿論
である。このように、水系塗料組成物は溶剤系塗料組成
物と比べ、揮発性有機化合物を用いていない点が環境
的、衛生的に優れた特長であると言われるが、MFTの
制限や低温領域での安定性を保持するために揮発性有機
化合物の使用が避けられない場合が多く、環境、臭気等
の問題を完全に解決し得るものであると言うことはでき
ない。
【0004】一方、我々の身の回りでは、様々な新建材
が使われ日常生活において有用な役割をはたしている。
しかし最近になって、日本や欧米等の先進国ではこれら
が原因と考えられるアレルギーと共に新しいタイプの文
明病の一つとして化学物質過敏症が注目されている。ま
た、省エネルギーの観点から現在の建物は非常に気密性
が高く設計されており、室内に化学物質が長時間滞留し
た状態となり、汚染された室内空気に暴露されることに
よって生じる健康障害、所謂シックビル症候群がかなり
の頻度で見られるようになった。また最近、各種建材か
ら放出される色々な化学物質によって室内の汚染濃度
が、外気に比べて高いことが判って来た。上記の室内環
境下において、室内を構成する建材を観察すると、今日
においては、合板を建材として使うことが一層増えてき
ているが、合板、床材の接着剤から、ホルムアルデヒ
ド、トルエン、キシレン等の有機化合物が室内に放出さ
れる場合がある。これらは人間に対しても強い神経毒性
を示す。また、壁紙の接着剤からもホルムアルデヒドが
放出される場合がある。これらの有害化学物質が我々の
生活環境の中に徐々に入り込み、アトピーやアレルギー
症状等を惹き起こしている原因になっているとも言われ
ており、一般人の知らないところで進むこれらの生活環
境の悪化は、まことに憂慮すべき事態に到っていると考
えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記事情に鑑み、本願
発明の目的は、揮発性有機化合物を意図的に添加せずと
も従来の水系塗料組成物の性能に匹敵する低温安定性、
低温造膜性を有する水系塗料組成物であり、該塗料塗装
時に室内への揮発性有機化合物の放散を限りなく零にす
ることができ、ホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物
を含んだ各種建材や家具等への塗装により、これら有害
化学物質を吸着さらに分解する能力を備え、既に放散し
ている有害化学物質をも吸着、分解せんとする塗料組成
物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決する手段】本願発明は、上記の事情に鑑み
鋭意研究した結果、揮発性有機化合物を意図的に添加せ
ずとも低温造膜性及び低温安定性を備える水系樹脂組成
物に対して、ホルムアルデヒドや硫化水素等の有害化学
物質を吸着する能力のある添加剤と、有害化学物質を分
解する能力のある添加剤とを配合したことを特徴とする
室内環境対応型水系塗料組成物を完成させ、上記の課題
を解決することができたものである。ここで、低温造膜
性を有するとは、最低造膜温度(MFT)が、塗装作業
環境温度以下を示すもので、寒冷地を想定して好ましく
は10℃以下、より好ましくは5 ℃以下の温度を意味
する。また、低温安定性を有するとは、寒冷地で特に屋
外の低温環境に放置され、塗料組成物が凍結した後、最
低造膜温度(MFT)に温度を上昇させた状態で、塗膜
が形成されることを意味する。
【0007】特に、水系樹脂組成物として二層構造水系
樹脂組成物や架橋型水系樹脂組成物等を使用することに
よって、揮発性有機化合物を意図的に添加せずとも低温
造膜性や凍結安定性に優れる水系塗料組成物が得られる
ことを見いだし、更に、有害化学物質を物理的に吸着す
る能力のある活性炭、シリカ、ゼオライト、アルミニウ
ムシリケート、珪藻土等の多孔質顔料や、化学的に吸着
する能力のあるリン酸系化合物、アミン系化合物等の添
加剤と、二酸化チタンや酸化亜鉛等の、有害化学物質を
分解する能力のある添加剤とを併用することにより、有
害化学物質を吸着及び分解する能力のある、室内環境対
応型水系塗料組成物の発明を完成するに至ったものであ
る。
【0008】水系樹脂組成物としては、例えば、Tgの
低い水系のアクリルエマルション、酢酸ビニル−エチレ
ンエマルション、スチレン/アクリル共重合エマルショ
ン、酢酸ビニル/アクリル共重合エマルション、及びこ
れらの混合物等が用いられる。特に外層部にTgの低い
アクリル樹脂成分、内層部にTgの高いアクリル樹脂成
分を持った2層構造のアクリル樹脂系エマルションや外
層部にウレタン樹脂成分、内層部にビニル系重合物成分
の構造を有し、設計上外層部のウレタン樹脂成分のTg
は内層部の重合性ビニル単量体の重合物成分のTgより
低い、2層構造のビニル系ウレタンエマルション、さら
には、これら水系樹脂組成物を架橋型に誘導したもので
も良く、具体的には、カルボン酸に金属イオン、水酸基
−イソシアネート、エポキシ−アミン、エポキシ−カル
ボキシル基、カルボン酸−アジリジン、カルボニル−ヒ
ドラジド、シロキサン、カルボン酸−カルボジイミド、
アセトアセテート−ケチミン等の架橋基があげられ、こ
のような架橋型水系樹脂組成物等を使用することが望ま
しい。
【0009】本願目的に最も適する水系樹脂組成物と
は、具体的には、2層構造のエマルションであって、2
層構造の組成は内層部/外層部ともにビニル系重合体成
分により構成されるもの、または、内層部にビニル系重
合体成分、外層部にウレタン系重合体成分により構成さ
れるものが挙げられ、外層部のガラス転移温度(Tg)
が内層部のガラス転移温度(Tg)より低く設計される
ものであり、それぞれのガラス転移点(Tg)は目的の
用途を考慮し調整することが望ましく、低温造性膜をよ
り顕著に発揮させるためには、内層部のTgより外層部
のTgが15C°以上低いことが望ましい。さらに、内
層部/外層部の特に外層部に水酸基を導入した水系樹脂
組成物は低温安定性に優れ、より好ましくはポリオキシ
エチレン鎖をグラフトさせた水系樹脂組成物が低温安定
性および低温造膜性に優れ、それぞれの相乗効果によ
り、より優れた低温安定性と低温造膜性を示すものであ
る。また、上記水系樹脂組成物は得られた塗膜の物理的
強度や付着性、耐水性、耐候性等を向上させるために、
公知の架橋基を導入するこもできる。例えば、ヒドラジ
ドとカルボニル基に導入や、水分散型ポリイソシアネー
トを後配合して用いたり、アジリジンやカルボジミド等
のカルボキシル基と架橋を起こす成分を加えて使用する
こともでき、低温安定性や低温造膜性に悪影響を与えな
い範囲で架橋型への応用ができるものである。
【0010】ホルムアルデヒドや硫化水素等の有害化学
物質を吸着する能力のある添加剤としては、物理吸着
能、化学吸着能等、吸着のメカニズムを特に限定するも
のではなく、有害化学物質を吸着し得る添加剤を選択し
て用いることができる。物理吸着能を有する添加剤とし
ては、活性炭、シリカ、アルミニウムシリケート、珪藻
土等の多孔質の体質顔料を例示し得る。化学吸着能を有
する添加剤としては、リン酸アルミニウム、リン酸チタ
ン、トリポリリン酸二水素アルミニウム等のリン酸系化
合物や、ヒドラジン誘導体等のアミン系化合物等々、種
々の吸着剤を用いることができる。また、化学吸着能を
有する化合物を、物理吸着能を有する多孔質体に添着す
ることもできる。
【0011】ホルムアルデヒドや硫化水素等の有害化学
物質を分解する能力のある添加剤としては、二酸化チタ
ンや酸化亜鉛等の光触媒活性を有するものを例示し得
る。これらは、光(紫外線)エネルギーにより活性化さ
れて強い酸化力を生じ、これに接する有機物や上記有害
化学物質等を酸化分解するものであり、太陽光のみなら
ず、蛍光灯などの微弱な紫外線によっても、触媒活性が
発揮されるものが望ましい。
【0012】上記の有害化学物質を吸着する能力のある
添加剤によって、各種新建材や家具等から室内へ放散せ
んとしたり、既に放散しているホルムアルデヒド等の有
害化学物質を吸着すると共に、有害化学物質を分解する
能力のある添加剤によって、吸着した有害化学物質を分
解することができる。両添加剤は、それぞれ別々に配合
することもできるが、両者を複合一体化させて外観上単
一の添加剤として配合することもできる。特に、上記の
光触媒活性を有する化合物を、物理吸着能を有する多孔
質の添加剤に添着させることにより、吸着と分解の機能
を有効に発揮させることができる。即ち、酸化亜鉛、酸
化チタン等の有害物質除去剤を添着した活性炭、セピオ
ライト、ゼオライト等の粉状或いはシリカ、アルミニウ
ムシリケート等の微粒子状多孔質体を用いることによっ
て、有害化学物質を吸着及び分解して、室内に放散して
いるホルムアルデヒドなどの有害物質を削減することが
可能である。
【0013】より望ましくは、セピオライト(珪酸マグ
ネシウム系の層状結晶をした鉱物)や活性炭にヒドラジ
ン誘導体等のアミン系化合物を添着させ、アルデヒド類
を化学反応によって固定化する無機鉱物系の有害物除去
剤、またはゼオライトに超微粒子の酸化チタンを添着さ
せて、太陽光や蛍光灯の光で低級アルデヒド類を分解す
る機能を持った無機鉱物系の有害物除去剤等を例示し得
る。また、チタン、亜鉛、リンの複合体からなる光触媒
型無機系吸着分解剤、例えば「セブントール」を例示し
得る。また、多孔質なシリカ層でコーティング処理し
た、特開平9−31335号公報に製造方法が例示され
ている多孔質シリカコーティング二酸化チタン光触媒、
例えば「STE−01」、「タイノック」を用いてもよ
い。また、シリカからなる多孔質マイクロカプセルにア
ナターゼ型超微粒子酸化チタン光触媒を内包させた光触
媒酸化チタン内包マイクロカプセル、例えば「ゴットボ
ール」等を使用することができる。これらは、単独でま
たは併用して用い、放散した有害物質を効率よく削減す
ることが可能である。
【0014】本願発明の塗料組成物は、上記有害物除去
剤のほか、例えば酸化チタン、ベンガラ、グラファイ
ト、コバルトグリーン、マンガンブルー等の着色顔料及
び例えば炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、
カオリン、石膏、マイカ、コロイダルシリカ、シリカゲ
ルアルミニウム、フレーク、MIOなどの体質顔料も加
えることができ、さらに、本願発明の塗料組成物には、
通常の塗料に使用されている増粘剤、消泡剤等の添加剤
を用いることができるが、使用に当たっては揮発性有機
化合物を含まない添加剤を選定することが望ましい。
【0015】次に、前述の水系樹脂組成物として、より
好ましい実施の形態を説明する。より好ましい水系樹脂
組成物は 、2層構造のビニル系ウレタンエマルション
であって、外層部にウレタン樹脂成分、内層部にビニル
系重合物成分の構造を有し、外層部のウレタン樹脂成分
にはアニオン性及びノニオン性の親水性を示す部位を持
ったものであり、ウレタン樹脂 成分またはビニル重合
体成分の少なくとも何れか一方に水酸基を持つものであ
る。
【0016】特に、下記の態様に係るものが望ましい。 態様1 外層部に乳化能を有するポリウレタン樹脂成分、内層部
にビニル系重合物成分の構造を有する2層構造水系樹脂
組成物であって、外層部のポリウレタン樹脂成分と内層
部のビニル系重合物成分との少なくとも何れか一方が水
酸基を持つものであることを特徴とする2層構造水系樹
脂組成物。 態様2 外層部に乳化能を有するポリウレタン樹脂成分、内層部
にビニル系重合物成分の構造を有する2層構造水系樹脂
組成物であって、外層部のポリウレタン樹脂成分がノニ
オンおよびアニオン性の親水性部位を持つものであるこ
とを特徴とする2層構造水系樹脂組成物。 態様3 外層部に乳化能を有するポリウレタン樹脂成分、内層部
にビニル系重合物成分の構造を有する2層構造水系樹脂
組成物であって、外層部のポリウレタン樹脂成分と内層
部のビニル系重合物成分との少なくとも何れか一方が水
酸基を持つものであり、且つ、外層部のポリウレタン樹
脂成分がノニオンおよびアニオン性の親水性部位を持つ
ものであることを特徴とする2層構造水系樹脂組成物。 態様4 外層部のポリウレタン樹脂成分は、1分子中に2個の水
酸基と少なくとも1個以上の親水性基を含むグリコール
成分(1)と、イソシアネートと反応しうる官能基を有
する重合性ビニル単量体(2)をイソシアネート(3)
と反応させて得られた乳化能を有する重合性ポリウレタ
ン樹脂(4)であり、内層部のビニル系重合物成分は重
合性ビニル単量体(5)を上記の重合性ポリウレタン樹
脂(4)と水中で重合させたものであることを特徴とす
る上記態様1〜3の何れかに記載の水系樹脂組成物。 態様5 外層部のポリウレタン樹脂成分は、1分子中に2個の水
酸基と少なくとも1個以上の親水性基を含むグリコール
成分(1)及び親水性を示さないイソシアネートと反応
しうるグリコール成分(1a)と、イソシアネートと反
応しうる官能基を有する重合性ビニル単量体(2)をイ
ソシアネート(3)と反応させて得られた乳化能を有す
るポリウレタン樹脂(4)であり、内層部のビニル系重
合物成分は、重合性ビニル単量体(5)を上記の重合性
ポリウレタン樹脂(4)と水中で重合させたものである
ことを特徴とする上記態様1〜3の何れかに記載の水系
樹脂組成物。 態様6 1分子中に2個の水酸基と少なくとも1個以上の親水性
基を含むグリコール成分(1)の親水性基は、カルボキ
シル基、スルホン酸基のような後で中和により親水性を
もたらすイオン性基及び/又はポリオキシエチレン鎖の
ような非イオン性の親水性基であることを特徴とする上
記態様4又は5記載の水系樹脂組成物。 態様7 乳化能を有する重合性ポリウレタン樹脂(4)100重
量部に対する重合性ビニル単量体(5)の重量比が10
0〜3000重量部であることを特徴とする上記態様4
〜6の何れかに記載の水系樹脂組成物。 態様8 グリコール成分(1)とジイソシアネート化合物(3)
とをOH基/NCO基=1.0/1.2〜1.0/2.
0の範囲内で反応させ、得られたポリウレタン樹脂末端
のイソシアネートをイソシアネートと反応しうる官能基
を有する重合性ビニル単量体(2)と反応させ、ポリウ
レタン樹脂1分子中に0.5〜1.5分子の重合性ビニ
ル基を導入した乳化能を有する重合性ポリウレタン樹脂
(4)を重合性ビニル単量体(5)と水中で重合させて
得られたものであることを特徴とする上記態様4〜7の
何れかに記載の水系樹脂組成物。
【0017】上記態様に係る水系樹脂組成物は、1分子
中に2個の水酸基と少なくとも1個以上の親水性基を含
むグリコール成分(1)を必須の成分として含有するグ
リコール成分と、イソシアネートと反応しうる官能基を
有する重合性ビニル単量体(2)をイソシアネート
(3)と反応させて乳化能を有する重合性ポリウレタン
樹脂(4)を得、この重合性ポリウレタン樹脂(4)を
重合性ビニル単量体(5)と水中で重合させることによ
り水系樹脂組成物を製造するに際して、重合性ポリウレ
タン樹脂(4)と重合性ビニル単量体(5)との少なく
ともいずれか一方に水酸基を導入しておくと共に、重合
性ポリウレタン樹脂(4)がノニオンおよびアニオン性
の親水性部位を持つものとしておくことを特徴とする水
系樹脂組成物の製造方法により、製造することが出来
る。
【0018】より詳しくは、上記の乳化能を有する重合
性ポリウレタン樹脂(4)の合成方法はイソシアネート
と反応しうる官能基を有した化合物との反応により合成
できる。ここでポリウレタン樹脂とあるが、水酸基とイ
ソシアネートとの反応ではウレタン結合を形成するが、
実質上イソシアネートと反応しうるアミンのようなその
他の活性水素含有の化合物との反応を含んだ場合も、本
願発明においてはポリウレタン樹脂と総称している。
【0019】乳化能を有する重合性ポリウレタン樹脂
(4)の合成方法としては、例えば、カルボキシル基、
スルホン酸基、ポリエチレングリコール等の親水性を示
すグリコール(1)とジイソシアネート化合物(3)と
を反応させた後、イソシアネートと反応しうる官能基を
有する重合性ビニル単量体(2)をイソシアネートとの
反応にて導入し、片末端イソシアネート基をグリコール
またはモノオール成分で停止させることにより合成で
き、後述する重合性ビニル単量体(5)をプレエマルシ
ョン化でき、或いは、重合性ポリウレタン樹脂(4)と
重合性ビニル単量体(5)の混合物を水中に分散するこ
とができるものである。特に、請求項6以降の発明によ
れば、後述する重合性ビニル単量体(5)を簡単にプレ
エマルション化でき、或いは、重合性ポリウレタン樹脂
(4)と重合性ビニル単量体(5)の混合物を水中に簡
単に分散することができるものであり、且つ、得られる
重合体の安定性に優れるものを、製造することができ、
製造時に実質的に乳化剤を必要とせず、製造工程の簡素
化を図る事ができると共に、極めて良好な安定性を示す
エマルション樹脂を製造することができる。
【0020】本願発明で用いる親水性を示すグリコール
(1)としては、第1にイオン性基を持つグリコールが
挙げられ、具体的には2,2−ジメチロールプロピオン
酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロ
ール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ポリカプロラ
クトン変性ジメチロールプロピオン酸、ポリカプロラク
トン変性ジメチロールブタン酸や、グリセリン、トリメ
チロールエタン、トリメチロールプロパンのようなトリ
オール1分子に対して、無水フタル酸、テトラヒドロ無
水フタル酸、無水こはく酸、無水トリメリット酸のよう
な、1分子に1個の酸無水物基を持つ化合物を1分子を
変性させたジオールカルボン酸成分や、エチレングリコ
ールやジエチレングリコールのようなジオール2分子に
対して、無水ピロメリット酸のような1分子に2個の酸
無水物基をもつ化合物を1分子変性させたジオールカル
ボン酸成分等が使用でき、これらは後述するウレタン化
反応により目的である重合性ポリウレタン樹脂の分子内
にカルボキシル基の導入ができるものであり、エチレン
グリコールやジエチレングリコールのようなジオール1
分子に対して、1分子に1個の酸無水物基を持つ化合物
を1分子反応させた、モノオールカルボン酸は、後述す
るウレタン化反応により末端にカルボキシル基を導入で
きる。また、エポキシ基とカルボキシル基との反応によ
り得られるカルボキシル基含有ジオールおよびモノオー
ルの使用も可能である。例えば、エチレングリコールジ
グリシジルエーテル1分子に対してアジピン酸2分子を
反応させ得られる1分子内に2個の水酸基と2個のカル
ボキシル基を有する化合物等も使用できる。イオン性グ
リコールの選択においては、これらの群から選ばれた1
種または2種以上の使用ができるものである。
【0021】本願発明で用いる親水性を示すグリコール
(1)としては、第2にイオン性基を持たないグリコー
ルが挙げられ、具体的にはポリエチレングリコールのよ
うなノニオン性グリコールであり、親水性を示すもので
あれば、ポリエチレングリコール中にポリプロピレング
リコール鎖やテトラメチレングリコール鎖がブロックま
たはランダムに重合されたものでもよく、これらは、1
分子に1個以上の水酸基を含んだものである必要があ
り、簡便な合成法としてはモノおよびジオールが適して
いる。
【0022】本願発明で用いる乳化能を有する重合性ポ
リウレタン樹脂の合成は、上述した乳化能を有するグリ
コール(1)を用いることができるが、本願目的の水系
樹脂組成物を得るには、得られる水系樹脂組成物の重合
安定性、保存安定性においてはアニオン性のグリコール
が、凍結安定性、低温造膜性においてはノニオン性グリ
コールがそれぞれ効果を発現する。
【0023】また、本願発明の乳化能を有する重合性ポ
リウレタン樹脂の合成は、親水性を示さないその他のグ
リコール成分(1a)の使用ができる。これは、重合性
ビニル単量体(5)を水中で重合させるにあたり、予め
重合性ビニル単量体を、重合性ポリウレタン樹脂を乳化
剤として水中に乳化させる所謂プレエマルションを調整
する必要があるが、その際、重合性ポリウレタン樹脂
(4)の親水性が強すぎた場合、水への溶解性はあるも
のの重合性ビニル単量体(5)を乳化させなかったり、
得られたプレエマルションの安定性が悪かったりするこ
とがある。さらには、プレエマルションが安定であって
も重合中に粒子の融着や高粘度化、あるいは、重合反応
率が低下し未反応の重合性ビニル単量体の残存率が高ま
ることがある。これは、重合性ポリウレタン樹脂の分子
に疎水性のセグメントが欠乏することによる場合があ
る。このため、必要であれば親水性を示さないグリコー
ル成分を重合性ポリウレタン樹脂にイソシアネート化合
物(3)により結合させることができる。親水性を示さ
ないグリコール(1a)としては、オクタノール、デカ
ノール、2−エチルヘキサノール等のアルキルアルコー
ルやポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレング
リコールおよびこれらのモノアルコール体等が使用でき
る。
【0024】本願発明で用いるイソシアネート化合物
(3)は芳香族、脂肪族、脂環式ジイソシアネートがあ
り、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、
2,6−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニ
ルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネー
ト、α、α、α'、α'ーテトラメチルキシリレンジイソ
シアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホ
ロンジイソシアネート、1,5ーテトラヒドロナフタレ
ンジイソシアネート、さらにはこれらのイソシアヌレー
ト、ビューレット、アダクト体等が挙げられ、これらの
群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるが、
揮発性有機溶剤に希釈されたイソシアネート化合物に関
しては、本願目的の達成のため有機溶剤を留去する必要
がる。
【0025】イソシアネートと水酸基、或いはイソシア
ネートと反応しうる水酸基以外の官能基との反応条件は
特に限定は無く、イソシアネートと水酸基との反応は5
0℃から100℃内の反応温度で行われ、イソシアネー
トと1級または2級アミンとの反応は室温から50℃内
の反応温度で完結する。また、反応に際しては、必要で
あれば公知であるジブチルスズジラウレートやジオクチ
ルスズジラウレートのようなウレタン化触媒を使用する
こともできる。
【0026】乳化能を有する重合性ポリウレタン樹脂
(4)の合成においては、無溶媒系でも行えるが、得ら
れる樹脂粘度が高く、撹拌や作業性が問題となる場合、
重合性ビニル単量体をキノン系やフェノール系酸化防止
剤を必要量添加し、反応溶媒として用いる事もできる。
この重合性ビニル単量体は事実上イソシアネートとの反
応を起こさない化合物に限られ、好ましくは、メチルメ
タクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレ
ート等のウレタン樹脂に対して溶解力の強いものが良
い。
【0027】本願発明で用いるイソシアネートと反応し
うる官能基を有する重合性ビニル単量体(2)として
は、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキ
シエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタ
クリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、
4−ヒドロキシブチルアクリレート、アセトアセトキシ
エチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等が
挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上
の使用ができるが、反応性の点から、4−ヒドロキシブ
チルアクリレートのような1級の水酸基を持つ重合性ビ
ニル単量体が好ましい。
【0028】本願発明においては、凍結安定性を向上さ
せるために、重合性ポリウレタン樹脂(4)やビニル系
重合体成分への水酸基の導入を行うが、ウレタン樹脂成
分(4)への水酸基の導入方法としては、導入試薬とし
て、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,
4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエ
チレングリコール、ジプロピレングリコールおよびこれ
らのオリゴマーのようなジオールが使用でき、イソシア
ネート官能基1個に対して1分子のグリコールを加え導
入させる方法や、トリメチロールエタン、トリメチロー
ルプロパン、ペンタエリスリトールのような、1分子に
3つ以上の水酸基を持つポリオールをイソシアネート官
能基1個に対し、1分子のポリオールを加え導入させる
事ができる。さらに、反応性の高いアルカノールアミン
による選択的且つ短時間での水酸基の導入方法が挙げら
れる。これは、分子内に1級または2級のアミノ基を1
個有し、水酸基を1個以上有する化合物であり、イソシ
アネート官能基1個に対して1分子のアルカノールアミ
ンを加えて尿素結合により導入できる。例えば、アルカ
ノールアミンとしてはエタノールアミン、メチルエタノ
ールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられ、重合性
ポリウレタン樹脂(4)への水酸基の導入試薬はこれら
の群から選ばれた1種または2種以上の使用ができ、得
られる乳化能を有する重合性ポリウレタン樹脂(4)の
分子量は800から5000であり、好ましくは150
0から3500である。
【0029】本願発明で用いる重合性ビニル単量体
(5)としては、メチルメタクリレート、エチルメタク
リレート、プロピルメタクリレート、iso−プロピル
メタクリレート、ブチルメタクリレート、iso−ブチ
ルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、
ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレー
ト、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタ
クリレート、ラウリルメタクリレート等のアルキルメタ
クリル酸エステル類あるいはこれらのアクリル酸エステ
ル類や、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N−
ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルア
ミド、スチレン、ビニルトルエンや、多官能重合性ビニ
ル単量体として、アリルメタクリレート、エチレングリ
コールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアク
リレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、
トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリ
スリトールペンタアクリレートやそれらのメタクリル酸
誘導体、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらの群か
ら選ばれた1種又は2種以上の使用ができる。
【0030】本願発明での水酸基の導入方法の二つ目と
して、水酸基を持つ重合性ビニル単量体により重合性ビ
ニル単量体重合物成分に水酸基を導入する方法がある。
ここで用いる水酸基を持つ重合性ビニル単量体は、2−
ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロ
ピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリ
レート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートやこれら
のアクリル酸エステル類等が挙げられ、これらの群から
選ばれた1種又は2種以上の使用ができる。
【0031】本願発明の乳化能を有する重合性ポリウレ
タン樹脂(4)と重合性ビニル単量体(5)の水中での
重合に際しては、乳化能を有する重合性ポリウレタン樹
脂(4)100重量部に対し、100から3000重量
部の範囲で用いることができ、高固形分化、重合安定性
の観点から、500から2000の範囲が望ましい。
【0032】重合方法としては、予め水中に乳化能を有
する重合性ポリウレタン樹脂(4)を分散あるいは溶解
しておき、この中に重合性ビニル単量体(5)を乳化さ
せた所謂プレエマルションを調整し、これを重合開始剤
と共に水中に滴下して重合する方法と、乳化能を有する
重合性ポリウレタン樹脂(4)に重合性ビニル単量体
(5)を加え、これを水中に重合開始剤と共に滴下する
方法により合成できる。尚、重合性ポリウレタン樹脂に
導入されたカルボキシル基やスルホン酸基は中和してか
ら用いることができ、プレエマルション法ではプレエマ
ルション調整時に塩基を加えて中和しておくこともでき
る。重合性ポリウレタン樹脂(4)および重合性ビニル
単量体(5)の混合物を水中に滴下する場合は、予め水
中に塩基を溶解させておくことができる。中和剤とし
て、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム等の無機塩基やトリエチルアミン、ジメ
チルエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノー
ルアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基の使用が
可能であり、目的の水系樹脂組成物の安定性や臭気を考
慮に入れ選定されるものであり、これらの群から選ばれ
た1種又は2種以上の使用ができる。塩基の加える量は
重合性ポリウレタン樹脂の酸価に対して100%以上が
良く、好ましくは150〜180%である。
【0033】ここで用いる重合開始剤としては、公知の
ラジカル開始剤の使用が可能で、過硫酸アンモニウム、
過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が挙げられ、目的
とする水系樹脂組成物の固形分に対し、0.3〜1.0
%のラジカル開始剤の重量が使用され、水溶液として希
釈した後に用いることが望ましい。
【0034】重合温度については、70〜90℃がよ
く、単量体の残存率および重合安定性の点から75〜8
5℃の範囲が望ましい。重合時間(滴下速度)について
は、2〜5時間の範囲が良く、反応熱の冷却能が十分で
あり、目的の重合温度が安定的に持続できる速度であれ
ば、2〜3時間が適切であるが、これよりも早い滴下速
度の場合、反応容器に樹脂の融着が増える傾向が観察さ
れる。また、滴下終了後、開始剤が全て消費するまでさ
らに加熱撹拌を続け反応を終了するが、依然として未反
応の重合性単量体が残存する場合、さらに開始剤を適量
添加して、重合を進めることもできるし、特に気層部に
浮遊する重合性ビニル単量体については、空気、窒素ガ
ス等の気体を流すことで未反応の重合性単量体を除去す
ることもできる。
【0035】
【実施例】以下に本願発明の実施例を記すが、本願発明
はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】まず、本願発明の塗料組成物の実施に適し
た樹脂の例を説明する。なお、上記の態様1乃至8に対
応する樹脂の例を「態様例」として説明し、それ以外の
例を「他の樹脂例」として説明する。
【0037】「態様例」 1−1 乳化能を有する重合性ポリウレタン樹脂の合成
方法 温度計、コンデンサー、窒素導入管、撹拌装置を取り付
けた1Lのフラスコにポリプロピレングリコール(OH
価=280.5)80g、イソホロンジイソシアネート
177.6g、ジメチロールプロピオン酸 53.6
g、およびメチルメタクリレート 151.5gを加
え、窒素雰囲気下で90℃、4時間加熱撹拌した。これ
に2−ヒドロキシエチルメタクリレート 26.0gを
加え、IRスペクトルにより2260cm−1のイソシ
アネートの吸収が減少しなくなるまで反応を行った後、
ポリエチレングリコール(OH価=561.0)40.
0gを加え、IRスペクトルにより2260cm−1
イソシアネートの吸収が無くなるまで反応を続けた。こ
れに、メチルメタクリレート 100.0gを加え、乳
化能を有する重合性ポリウレタン樹脂のメチルメタクリ
レート溶液(4)−1−1を得た。
【0038】1−2 乳化能を有する重合性ポリウレタ
ン樹脂の合成方法 温度計、コンデンサー、窒素導入管、撹拌装置を取り付
けた1Lのフラスコにポリプロピレングリコール(OH
価=280.5)80g、イソホロンジイソシアネート
177.6g、ジメチロールプロピオン酸 53.6
g、およびメチルメタクリレート 185.3gを加
え、窒素雰囲気下で90℃、4時間加熱撹拌した。これ
に2−ヒドロキシエチルメタクリレート 26.0gを
加え、IRスペクトルにより2260cm−1のイソシ
アネートの吸収が減少しなくなるまで反応を行った後、
ポリエチレングリコール(OH価=561.0)40.
0gを加え、IRスペクトルにより2260cm−1
イソシアネートの吸収が無くなるまで反応を続けた。こ
れに、イソホロンジイソシアネート 44.4gを加
え、2時間反応を行った後、メタノール 6.4gを加
えIRスペクトルにより2260cm−1のイソシアネ
ートの吸収が無くなるまで反応を続けた。これにメチル
メタクリレート 100.0gを加え、乳化能を有する
重合性ポリウレタン樹脂のメチルメタクリレート溶液
(4)−1−2を得た。
【0039】1−3 乳化能を有する重合性ポリウレタ
ン樹脂の合成方法 温度計、コンデンサー、窒素導入管、撹拌装置を取り付
けた1Lのフラスコにポリプロピレングリコール(OH
価=280.5)80g、イソホロンジイソシアネート
177.6g、ジメチロールプロピオン酸 53.6
g、およびメチルメタクリレート 133.1gを加
え、窒素雰囲気下で90℃、4時間加熱撹拌した。これ
に2−ヒドロキシエチルメタクリレート 26.0gを
加え、IRスペクトルにより2260cm−1のイソシ
アネートの吸収が減少しなくなるまで反応を行った後、
エチレングリコール 12.4gを加え、IRスペクト
ルにより2260cm−1のイソシアネートの吸収が無
くなるまで反応を続けた。これに、メチルメタクリレー
ト 100.0gを加え、乳化能を有する重合性ポリウ
レタン樹脂のメチルメタクリレート溶液(4)−1−3
を得た。
【0040】1−4 乳化能を有する重合性ポリウレタ
ン樹脂の合成方法 温度計、コンデンサー、窒素導入管、撹拌装置を取り付
けた1Lのフラスコにポリプロピレングリコール(OH
価=280.5)80g、イソホロンジイソシアネート
177.6g、ジメチロールプロピオン酸 53.6
g、およびメチルメタクリレート 122.1gを加
え、窒素雰囲気下で90℃、4時間加熱撹拌した。これ
に2−ヒドロキシエチルメタクリレート 26.0gを
加え、IRスペクトルにより2260cm−1のイソシ
アネートの吸収が減少しなくなるまで反応を行った後、
メタノール 6.4gを加え、IRスペクトルにより2
260cm−1のイソシアネートの吸収が無くなるまで
反応を続けた。これに、メチルメタクリレート 10
0.0gを加え、乳化能を有する重合性ポリウレタン樹
脂のメチルメタクリレート溶液(4)−1−4を得た。
【0041】「他の樹脂例」 1−5 乳化能を有する非重合性ポリウレタン樹脂の合
成方法 温度計、コンデンサー、窒素導入管、撹拌装置を取り付
けた1Lのフラスコにポリプロピレングリコール(OH
価=280.5)80g、イソホロンジイソシアネート
177.6g、ジメチロールプロピオン酸 53.6
g、およびメチルメタクリレート 144.0gを加
え、窒素雰囲気下で90℃、4時間加熱撹拌した。これ
にブタノール 14.8gを加え、IRスペクトルによ
り2260cm−1のイソシアネートの吸収が減少しな
くなるまで反応を行った後、ポリエチレングリコール
(OH価=561.0)40.0gを加え、IRスペク
トルにより2260cm−1のイソシアネートの吸収が
無くなるまで反応を続けた。これに、メチルメタクリレ
ート 100.0gを加え、乳化能を有する非重合性ポ
リウレタン樹脂のメチルメタクリレート溶液1−5を得
た。
【0042】1−6 乳化能を有する非重合性ポリウレ
タン樹脂の合成方法 温度計、コンデンサー、窒素導入管、撹拌装置を取り付
けた1Lのフラスコにポリプロピレングリコール(OH
価=280.5)80g、イソホロンジイソシアネート
177.6g、ジメチロールプロピオン酸 53.6
g、およびメチルメタクリレート 121.6gを加
え、窒素雰囲気下で90℃、4時間加熱撹拌した。これ
にブタノール 14.8gを加え、IRスペクトルによ
り2260cm−1のイソシアネートの吸収が減少しな
くなるまで反応を行った後、メタノール 6.4gを加
え、IRスペクトルにより2260cm−1のイソシア
ネートの吸収が無くなるまで反応を続けた。これに、メ
チルメタクリレート 100.0gを加え、乳化能を有
する非重合性ポリウレタン樹脂のメチルメタクリレート
溶液1−6を得た。
【0043】「態様例」 2−1 乳化能を有する重合性ポリウレタン樹脂による
水系樹脂の合成方法 フラスコに温度計、コンデンサー、撹拌装置を取り付け
た2Lのフラスコに水300gを入れ、内温80℃にし
た。別途水 270gに乳化能を有するポリウレタン樹
脂(4)−1−1をポリウレタン樹脂成分として33.
7g、水酸化ナトリウム 2.5gを加え均一になるま
で撹拌した。これに、メチルメタクリレート 180.
9g、および2−エチルヘキシルアクリレート 18
0.9gを撹拌しながら加え、プレエマルションを調整
した。このプレエマルションおよび過硫酸ナトリウム
2.0gを溶解した水溶液32gを同速度、3時間で滴
下した。さらに、3時間80℃で加熱撹拌を行った。下
記表1の組成表に記載の乳化能を示すポリウレタン樹脂
を用いた水系樹脂組成物は上記の手順により合成し、得
られる水系樹脂組成物の固形分での酸価が5mgKOH
/gとなるようポリウレタン樹脂量を調整した。
【0044】その他の態様例2−2,2−3,2−4,
2−1−1および他の樹脂例2−5,2−6について
は、態様例2−1と同様の手順で下記表1の組成表に示
した重合性ビニル単量体を用い重合を行い、それぞれ水
系樹脂組成物を得た。態様例2−1−a,2−1−b,
2−2−a,2−2−b,2−3−a,2−4−aおよ
び他の樹脂例2−5−a,2−6−aについては、態様
例2−1と同様の手順で、表1の組成表に示した重合性
ビニル単量体を用い、メチルメタクリレートおよび2−
エチルヘキシルアクリレートと共に2−ヒドロキシエチ
ルメタクリレートを加えて重合を行い、それぞれ水系樹
脂組成物を得た。
【0045】「他の樹脂例」2−7 フラスコに温度
計、コンデンサー、撹拌装置を取り付けた2Lのフラス
コに水 300g、レベノールWZ(花王株式会社製)
8gを入れ、内温80℃にした。別途撹拌装置を取り付
けた1Lの容器に水 234gを入れ、レベノールWZ
8g、エマルゲン913(花王株式会社製)3.8g、
エマルゲン909(花王株式会社製)6.0gおよびエ
レミノールJS−2(三洋化成工業株式会社製)4gを
溶解しておき、メチルメタクリレート 181.6g、
2−エチルヘキシルアクリレート 181.6g、アク
リル酸 8gを加えよく撹拌してプレエマルションを得
た。反応容器に得られたプレエマルションと過硫酸ナト
リウム 2gを含んだ水溶液 32gを同速度で3時間か
けて滴下した。さらに、3時間加熱撹拌を行った。40
℃まで冷却後30%アンモニア水 4gを水 20gに希
釈した溶液を添加し、他の樹脂例2−7−1の水系樹脂
組成物を得た。
【0046】他の樹脂例2−7−a、参考例2−7−1
の合成は、上記2−7の「他の樹脂例」と同様の操作に
より、下記表1の組成表に示した重合性ビニル単量体を
用い、2−7−aおよび2−7−1の水系樹脂組成物を
得た。
【0047】
【表1】
【0048】評価 低温造膜性、凍結安定性、膜物性について得られた水系
樹脂組成物を評価した。低温造膜性については、熱勾配
試験装置(造膜温度測定装置)ASTM−2354−6
5T(理学工業株式会社製)により造膜温度(単位は摂
氏、以下同じ)を調べた。凍結安定性については、−3
0℃に5時間保存後、20℃の雰囲気下にて溶解した際
の樹脂の安定性により評価した。膜物性については、ド
クターブレード15milによりガラス板上にキャスト
したものを20℃、1週間放置した膜について40℃雰
囲気下でのタックの有無、カーボン汚染について評価し
た。参考例2−1−1および2−7−1についてはTg
の測定を行った。Tg測定用膜作成は、テフロン製平板
にドクターブレード15milによりキャストしたもの
を20℃、1週間放置した膜について、EXSTAR−
6000 ステーションBMS−6100(セイコーイ
ンスツルメンツ株式会社製)により測定した。
【0049】
【表2】
【0050】評価基準 上記表2に示した試験結果の各評価基準を、次に示す。 凍結安定性 凍結融解後初期状態に戻る−−−−−−−−◎ 凍結融解後やや粘度が上がるが融着なし−−○ 凍結融解後かなり粘度が上がり融着あり−−△ 凍結後室温にて融解せず−−−−−−−−−× ベタつき度 得られた膜を40℃雰囲気下に3時間放置した状態で、
指触によりタック(ベタつき)の状態を判断した。 ほとんどベタつかない−−1 ややベタつく−−−−−−2 ベタつく−−−−−−−−3 耐汚染性評価 得られた膜にカーボン粉末5部を水100部に懸濁させ
た溶液を塗布し、40℃雰囲気下に3時間保存後、流水
にて汚染部位を洗浄し、汚れが良く落ちるものを評価1
とし、最も汚れが落ち難いものを評価5とした。
【0051】表2に記載した態様例および他の樹脂例の
結果から分かるように、乳化能を有する重合性ポリウレ
タン樹脂(4)−1−1から(4)−1−4を用いた水
系樹脂組成物は、凍結安定性に優れるものが多く、特に
ポリウレタン樹脂成分にノニオンおよびアニオンの両者
を含有したものや水酸基を含有したものが優れている。
また、得られた膜性能においてはタックが無く、耐汚染
性が良好であることが確認できた。他の樹脂例として乳
化能を有する非重合性ポリウレタン樹脂1−5および1
−6を用いた場合、凍結安定性の悪化が観察されるだけ
でなく、得られる膜性能が異なり、タックが有り耐汚染
性の悪化が確認された。これは、ポリウレタン樹脂成分
が高分子量化されないことに起因すると考えられる。
【0052】
【表3】
【0053】表3の参考例の試験結果から、態様例では
Tgを下げずにMFTが下がることが確認され、凍結安
定性も優れることを示している。以上の結果から分かる
ように、乳化能を有するポリウレタン樹脂(4)により
得られた水系樹脂組成物はガラス転移温度(Tg)を下
げることなく、最低造膜温度(MFT)を下げる傾向が
確認された。また、凍結安定性においては、ポリウレタ
ン樹脂(4)にアニオンおよびノニオン性部位が導入さ
れたものが良く、水酸基が導入された樹脂についてはさ
らに良好な結果が得られた。
【0054】このように、本願発明の水系樹脂組成物、
特に上記態様例に係る水系樹脂組成物は、揮発性有機溶
剤である造膜助剤や凍結安定剤を意図的に添加せずと
も、実質上の使用に際し支障を来さない性能を発現する
ことが確認された。
【0055】
【実施例1〜8ならびに比較例1〜3】前述の態様例お
よび他の樹脂例の樹脂を用いて、実施例1〜8ならびに
比較例1〜3の塗料組成物を製造した。実施例1〜8お
よび比較例1に係る塗料組成物成分を表4に示す。この
表の料組成物成分では、添加剤を除く成分を100重量
部となるように調整し、これに2.9重量部の添加剤を
加えて、合計102.9重量部とした。なお、エマルシ
ョン樹脂及び添加剤については、表5に示すと共に、そ
の詳細を後述する。
【0056】
【表4】
【0057】まず、実施例1は、上記表4のエマルショ
ン樹脂として、低Tgアクリル樹脂エマルションである
前述の他の樹脂例2−7−aを用い、これに添加剤とし
てセブントール2.9重量部を配合し、塗料組成物を完
成させたものである。この、塗料組成物を、被塗物の試
料に、2回塗装し、塗付量0.11〜0.13kg/m2
回に調整することにより、約40μmの膜厚の塗膜を形
成した。この実施例1の樹脂種、添加剤の種類、並びに
得られた塗料組成物の性能を、表5に示す。
【0058】実施例2〜8は、実施例1と同様に、表4
の配合に基づく塗料組成物であるが、表5の各実施例の
欄に示す樹脂種及び添加剤を用いて塗料組成物を完成さ
せたものである。この、各塗料組成物を、実施例1と同
様に、被塗物の試料に2回塗装し、塗付量0.11〜
0.13kg/m2・回に調整することにより、約40μm
の膜厚の塗膜を形成し、その性能を、表5に示した。
【0059】ここで実施例2乃至4は、エマルション樹
脂として、下記に示す2層構造のアクリル樹脂系エマル
ションを用いた。実施例5乃至8は、エマルション樹脂
として、前述の態様例2−1−aを用いた。また、各実
施例の表5の中の商標名は次の通りである。「セブント
ール」は、武田薬品工業株式会社製の、チタン、亜鉛、
リンの複合生成物からなる光触媒型無機系吸着分解剤で
ある。「ゴットボール」は、鈴木油脂工業株式会社製
の、シリカからなる多孔質マイクロカプセルにアナター
ゼ型超微粒子酸化チタン光触媒を内包させた光触媒酸化
チタン内包マイクロカプセルである。「タイノック」
は、多木化学株式会社製の光触媒である。「STE−0
1」は石原テクノ株式会社製の、多孔質シリカコーティ
ング二酸化チタン光触媒である。
【0060】実施例2乃至4の、2重構造を有するアク
リル樹脂系エマルションの合成方法温度計、コンデンサ
ー、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた4つ口フラス
コに、イオン交換水208g、ネオペレックスF−25
(花王株式会社製)10gを入れ、フラスコ内温を80
℃にする。また別の500ml容器(1)にイオン交換
水63g、ネオペレックスF−254g、エマルゲン9
13(花王株式会社製)3g、エマルゲン909(花王
株式会社製)1g、及びエレミノールJS−2(三洋化
成工業株式会社製)4gを攪拌溶解し、さらにメチルメ
タアクリレート(MMA)104g、、2−エチルへキ
シルアクリレート(2−EHA)56gを加えて、再攪
拌し、プレエマルション(1)を作成する。4つ口フラ
スコにプレエマルション(1)と重合触媒水溶液(1)
(イオン交換水20gに過硫酸ナトリウム0.9gを溶
解したもの。)を同時に1.5時間かけて滴下する。そ
の間フラスコ内温は80℃±2を保つ。プレエマルショ
ン(1)と重合触媒水溶液(1)を滴下終了後、1時間
熟成させる。その後に、500ml容器(2)にイオン
交換水110g、ネオペレックスF−25 6g、エマ
ルゲン913 4g、エマルゲン909 2g、及びエレ
ミノールJS−2 7gを攪拌溶解し、さらにメチルメ
タクリレート(MMA)104g、2−エチルへキシル
アクリレート(2−EHA)190g、アクリル酸 8
g及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HE
MA)6gを加えて、再攪拌し、プレエマルション
(2)を重合触媒水溶液(2)(イオン交換水20gに
過硫酸ナトリウム1.5gを溶解したもの)と同時に4
つ口フラスコへ2.5時間かけて滴下する。その間フラ
スコの内温は、80℃±2を保つ。全てが滴下終了後、
フラスコ内温を84℃±2に上げて3時間熟成させる。
その後冷却し、内温が50℃以下になった後、防腐剤
0.1g、消泡剤0.3g、PH調整剤(アンモニア
水)3gを添加し、20分攪拌後2重構造のアクリル樹
脂系エマルションを得た。
【0061】
【表5】
【0062】比較例1〜3は、有害化学物質を吸着及び
分解する効果のある添加剤を含まない、もしくは揮発性
有機化合物を添加したものは、実施例1〜6と同一条件
とした塗膜を、各被塗物の試料上に形成した。また、コ
ントロールとして、各被塗物上に塗膜を形成しないもの
を準備し、それぞれの試験結果を表7に示した。
【0063】即ち、比較例1は前記の表4の配合例にお
いて、添加剤を含有しないものである。樹脂としては、
前述の他の樹脂例2−7−aを用いた。比較例2及び3
は下記の表6の配合とした塗料組成物であり、エマルシ
ョン樹脂として、前述の他の樹脂例2−7−1を用い
た。さらに、比較例2は、添加剤として、セブントール
を、2.9重量部添加した。比較例3では、添加剤を用
いなかった。
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】各実施例及び比較例の試験方法を以下に示
す。 1.ホルムアルデヒド抑制効果 ガラス板(1×50×50mm)に試験塗料をハケを用い
て2回塗装し、塗付量0.11〜0.13kg/m2・回に
調整し、室温にて5日間放置乾燥したものを試験片とし
て、ガス採取袋(1リットル テドラパック)に入れ密
封後、約4ppm濃度のホルムアルデヒドガスを1L注入
し、2時間後テドラパック中のガス濃度を北川式検知管
により測定し抑制率を算出した。 2.促進耐候性 フレキシブル板(3×70×150mm)に試験塗料をハ
ケを用いて2回塗装し、塗付量0.11〜0.13kg/
m2・回に調整し、室温にて7日間放置乾燥したものを試
験片として、促進耐候性試験機(キセノンランプ式)を
使用して、促進耐侯性試験を行い、白亜化の程度、割
れ、はがれ、膨れ、穴の程度色及び艶の変化の程度を目
視で観察した。 3.VOC放散量 アルミニウム板(0.8×70×150mm)に試験塗料
を中毛ローラーを用いて2回塗装し、塗付量0.11〜
0.13kg/m2・回に調整、20℃にて24時間放置し
たものを試験片として、図1に示すサンプリング装置に
て行った。このサンプリング装置は、試料片1を収納し
たセパラブルフラスコ2(1リットル)と、流量計3
と、ポンプ4と、ガスメーター5とをテフロン(登録商
標)管6(3×4mm)及びシリコン管7(4×7mm,7
×10mm)で接続して、循環する流路を形成したもので
ある。セパラブルフラスコ2と流量計3との間には吸着
管8を配位し、ガスメーター3とセパラブルフラスコと
の間にはクリーナー9を配位した。図中10は、温度計
を示す。試料板1は、アルミ板70×150mmを3枚用
いた。ガスメ−タ−3は、DRY TEST GAS MATER(株式会
社シナガワ社製)。ポンプ4は、MINI PUMP(柴田科学
機械工業株式会社社製)。吸着管8は、ORBO-32S/スペ
ルコ社製(活性炭)。クリーナー9は、ORBO-32S/スペ
ルコ社製(活性炭)。 4.加温安定性 容量が500ml、内径が85〜95mmの内面が耐水処理
された金属製の缶に試験塗料を約400ml入れ、ふたで
密閉し、温度35℃で3ヶ月間保存した後、室温に戻し
“容器の中の状態”、“塗装作業性”、“塗膜の外観”
の変化の有無を調べて判定した。
【0067】上記の各実施例及び比較例においては、上
記の各性能試験に加えて低温造膜性及び凍結安定性の試
験を行ったが、いずれの例も、5℃における造膜性が認
められ、凍結後に5℃上昇させた状態で、塗膜が形成さ
れることが、確認された。なお、前述の態様例及び他の
樹脂例においては、低温造膜性及び凍結安定性を樹脂の
みで試験したが、塗料組成物として、各実施する事によ
り、実施例1及び比較例1の低温造膜性及び凍結安定性
は、十分ものとなっている。これに対して、比較例2,
3にあっては、揮発性の凍結防止剤を配合しなければ、
十分な低温造膜性及び凍結安定性を得ることが出来なか
った。
【0068】
【発明の効果】本願発明は、揮発性有機化合物を意図的
に添加せずとも、低温造膜性や凍結安定性に優れた水系
樹脂からなる塗料組成物を使用することにより、塗膜か
らの室内への揮発性有機化合物の放散を限りなく零とす
ることが可能であり、更に、すでに室内環境中に放散し
ているホルムアルデヒドや硫化水素等の有害化学物質を
吸着及び分解する能力のある、高機能性室内環境対応型
として特に有効な水系塗料組成物を提供するものであ
る。本願発明により得られた水系塗料組成物は、自然環
境、作業環境、住(空間)環境に優しい塗材であり、特
に快適性・安全性が望まれる住宅、病院、学校、食堂等
の室内用塗料として有用であり、室内環境を改善し得る
室内空気汚染防止用塗料として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】VOC放散量試験のサンプリング装置の説明図で
ある。
【符号の説明】
1 試料片 2 セパラブルフラスコ 3 流量計 4 ポンプ 5 ガスメーター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 善 敬一郎 東京都江東区南砂2丁目37番2号 ロック ペイント株式会社東京支店内 Fターム(参考) 4J038 CC061 CF031 CF051 CG141 CJ031 CJ101 CJ281 DG001 GA03 HA026 HA216 HA446 HA456 HA556 KA02 KA11 KA12 KA20 MA03 MA08 MA10 MA13 NA02 NA18 NA24 NA25 NA27 PB05

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】揮発性有機化合物を意図的に添加せずとも
    低温造膜性及び低温安定性を備える水系樹脂組成物に対
    して、ホルムアルデヒドや硫化水素等の有害化学物質を
    吸着する能力のある添加剤と、有害化学物質を分解する
    能力のある添加剤とを配合したことを特徴とする室内環
    境対応型水系塗料組成物。
  2. 【請求項2】上記の水系樹脂組成物が、二層構造水系樹
    脂組成物や架橋型水系樹脂組成物からなる群から選択さ
    れた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記
    載の室内環境対応型水系塗料組成物。
  3. 【請求項3】上記の有害化学物質を吸着する能力のある
    添加剤は、活性炭、シリカ、アルミニウムシリケート、
    珪藻土等の物理吸着能を有する多孔質の添加剤と、リン
    酸系化合物、アミン系化合物等の化学吸着能を有する添
    加剤からなる群から選択された少なくとも1種であるこ
    とを特徴とする請求項1または2記載の室内環境対応型
    水系塗料組成物。
  4. 【請求項4】上記の有害化学物質を分解する能力のある
    添加剤が、二酸化チタンや酸化亜鉛等の光触媒活性を有
    するものであることを特徴とする請求項1から3までの
    いずれかに記載の室内環境対応型水系塗料組成物。
  5. 【請求項5】上記の有害化学物質を吸着する能力のある
    添加剤が、活性炭、シリカ、アルミニウムシリケート、
    珪藻土等の物理吸着能を有する多孔質の添加剤であり、
    上記の有害化学物質を分解する能力のある添加剤が、二
    酸化チタンや酸化亜鉛等の光触媒活性を有するものであ
    り、この光触媒活性を有する添加剤が、物理吸着能を有
    する多孔質の添加剤に添着されたことを特徴とする請求
    項1から4までのいずれかに記載の室内環境対応型水系
    塗料組成物。
  6. 【請求項6】上記の水系樹脂組成物は、内層部にアクリ
    ル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等のビニル系
    単量体のうち、それらの重合体のTgが比較的高くなる
    ようなビニル系単量体に、ジビニル系単量体を重合させ
    て粒子内架橋をした重合物を含むものであり、また外層
    部についてはアクリル酸エステル類、メタクリル酸エス
    テル類等のビニル系単量体のうち、それらの重合体のT
    gが比較的低くなるようなビニル系単量体による重合物
    を含むものであり、内層部と外層部の少なくとも何れか
    一方の上記重合物成分が水酸基成分を含有する二層構造
    水性樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から5
    のいずれかに記載の室内環境対応型水系塗料組成物。
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