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JP2001238698A - プロテアーゼ活性の測定方法 - Google Patents

プロテアーゼ活性の測定方法

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JP2001238698A
JP2001238698A JP2000384557A JP2000384557A JP2001238698A JP 2001238698 A JP2001238698 A JP 2001238698A JP 2000384557 A JP2000384557 A JP 2000384557A JP 2000384557 A JP2000384557 A JP 2000384557A JP 2001238698 A JP2001238698 A JP 2001238698A
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thin film
protease
dye
biological sample
dispersed
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Riyouichi Nemori
良一 根守
Takemare Nakamura
剛希 中村
Hideaki Naruse
英明 成瀬
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プロテアーゼ基質を含む薄膜を用いたプロテ
アーゼ測定方法において、プロテアーゼ活性の発現をよ
り詳細に解析できる方法を提供する。 【解決手段】 プロテアーゼ活性の測定方法であって、
(1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素又は固
体分散された色素から選ばれる少なくとも一種の色素及
びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及び/又は実
質的に水に溶けない薄膜に対して、プロテアーゼを含む
生体試料を接触させる工程;及び(2)該薄膜を水性媒体
で洗浄してプロテアーゼの作用により該薄膜に形成され
た消化痕を検出する工程を含む方法。 【効果】 薄膜の染色工程が不要となるために測定のた
めの操作が簡便であり、薄膜上の組織や細胞が染色され
ることがなくなり、プロテアーゼ活性の発現がより詳細
に解析できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プロテアーゼの測
定方法に関するものである。より具体的には、癌細胞の
浸潤活性や転移活性などの癌の悪性度、歯周炎などの歯
周病の進行度、リウマチ性関節炎などにおける破壊性病
変などの正確な診断を可能にするプロテアーゼ測定方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】癌細胞の浸潤や転移、歯周炎などの歯周
病の進行、リウマチ性関節炎などにおける組織破壊の進
行、創傷治癒過程、個体発生過程などにおいて、マトリ
ックスメタロプロテアーゼ、プラスミノーゲンアクティ
ベーターなど種々のプロテアーゼが関与することが知ら
れており、それらのプロテアーゼの検出及び定量方法と
して、抗体を用いたイミュノアッセイ法、イミュノブロ
ッティング法、電気泳動ザイモグラフィー法などが知ら
れている。また、組織中におけるプロテアーゼの活性を
測定する方法として、The FASEB Journal, Vol.9, Jul
y, pp.974-980, 1995又は国際公開WO97/32035号公報に
開示されたいわゆるin situ zymography法が知られてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】国際公開WO97/32035号
公報に示されるプロテアーゼ活性の測定方法において、
ゼラチン等の薄膜の染色にアミドブラック、クマジーブ
ルーあるいはポンソーなどの色素を用いることができる
が、これらの色素により薄膜が染色されるのと同時に、
薄膜に貼り付けられた組織切片も染色されるため、消化
痕、すなわち組織におけるプロテアーゼ活性の正確な判
定が困難な場合がある。従って、本発明の課題はこの問
題を解決する手段を提供することにある。より具体的に
は、本発明の課題は、国際公開WO97/32035号公報に示さ
れるプロテアーゼ活性の測定方法において、プロテアー
ゼ活性の発現をより詳細に解析できる方法を提供するこ
とにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決すべく鋭意努力した結果、ゼラチン等のプロテア
ーゼ基質を含む薄膜をあらかじめ乳化分散された色素及
び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくと
も一種の色素で着色しておくことにより、薄膜の染色工
程が不要となり、薄膜上の組織や細胞におけるプロテア
ーゼ活性の発現がより詳細に解析できることを見いだし
た。さらに、細胞核を薄膜とは異なる色の染料で染色す
ることにより、核の形態情報と消化痕とを同時に観察す
ることが可能となり、プロテアーゼ活性の局在の測定が
格段に容易になることを見いだした。本発明はこれらの
知見を基にして完成されたものである。
【0005】すなわち、本発明は、プロテアーゼ活性の
測定方法であって、(1)支持体表面に形成され、乳化分
散された色素及び固体分散された色素からなる群から選
ばれる少なくとも一種の色素及びプロテアーゼ基質を含
有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜
に対して、プロテアーゼを含む生体試料を接触させる工
程;及び(2)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼ
の作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程
を含む方法を提供するものである。
【0006】別の観点からは、本発明により、プロテア
ーゼ活性の測定方法であって、 (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固
体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一
種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及
び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、プロテア
ーゼを含む生体試料を接触させる工程; (2)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用に
より該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び
(3)該薄膜上の生体試料、好ましくは組織切片又は細胞
の細胞核を染色する工程を含む方法が提供される。
【0007】さらに別の観点からは、プロテアーゼ活性
の測定方法であって、 (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固
体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一
種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及
び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、生体試料
の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを接触さ
せる工程; (2)支持体上に形成され、乳化分散された色素及び固体
分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種
の色素、プロテアーゼ基質、及びプロテアーゼ・インヒ
ビターを含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶
けない薄膜に対して上記切片のうちの他の切片の一つを
接触させる工程; (3)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用に
より該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び
(4)工程(1)で用いた薄膜の消化痕と工程(2)で用いた薄
膜の消化痕とを対比する工程を含む方法が本発明により
提供される。
【0008】さらに、本発明により、プロテアーゼ活性
の測定方法であって、 (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固
体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一
種の色素、プロテアーゼ基質を含有する架橋された及び
/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、生体試料の
実質的に連続した2以上の切片のうちの一つをさせる工
程; (2)支持体上に形成され、乳化分散された色素及び固体
分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種
の色素、プロテアーゼ基質、及びプロテアーゼ・インヒ
ビターを含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶
けない薄膜に対して、上記切片のうちの他の切片の一つ
を接触させる工程; (3)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用に
より該薄膜に形成された消化痕を検出する工程; (4)該薄膜上の生体試料、好ましくは組織切片又は細胞
の細胞核を染色する工程;及び(5)工程(1)で用いた薄膜
の消化痕と工程(2)で用いた薄膜の消化痕とを対比する
工程 を含む方法が提供される。
【0009】これらの発明の好ましい態様によれば、生
体試料の染色として細胞核染色を行う上記方法;細胞核
の染色にヘマトキシリンあるいはメチルグリーンを用い
る上記方法;生体試料がヒトを含む哺乳類動物から得ら
れた組織、細胞、又は体液である上記方法が提供され
る。薄膜は架橋されていてもよく、硬膜剤を含んでいて
もよい。また、単層又は重層の構造を有していてもよ
い。薄膜は2以上の色素を含んでいてもよく、重層構造
の薄膜においては、各層ごとに異なる色素を含んでいて
もよい。
【0010】また、上記の発明の好ましい態様によれ
ば、生体試料が、ヒトを含む哺乳類動物、好ましくは患
者、疾患が疑われる哺乳動物、実験動物などから分離・
採取した生体試料である上記方法が提供される。生体試
料として、組織片などの固形試料のほか、組織から吸引
により採取した細胞又は組織片を含む試料、血液、リン
パ液、唾液などの非固形試料などを用いることができ
る。例えば、生体試料が癌組織、リンパ節、歯周病組
織、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織または液(例えばリ
ウマチ性病変の関節液または歯槽膿漏組織抽出液)、胸
水、腹水、脳脊髄液、乳腺異常分泌液、卵巣嚢胞液、腎
臓嚢胞液、膵液、喀痰、血液あるいは血球である上記方
法は本発明の好ましい態様である。連続した切片を用い
る方法では生体試料として組織切片を用いることができ
る。プロテアーゼがマトリックスメタロプロテアーゼ又
はセリンプロテアーゼである上記方法は好ましい態様で
ある。
【0011】また、さらに好ましい態様によれば、薄膜
がゼラチン又はカゼインを含む薄膜である上記方法;薄
膜の消化痕を薄膜の色素と識別可能な染料で染色する上
記方法;消化痕の検出を顕微鏡を用いた目視により判定
する上記方法;画像処理装置を用いて消化痕の定量又は
数値化を行う上記方法が提供される。プロテアーゼ・イ
ンヒビターを用いる方法においては、プロテアーゼ・イ
ンヒビターがキレート剤、マトリックスメタロプロテア
ーゼ阻害剤、又はセリンプロテアーゼ阻害剤であること
が好ましい。
【0012】さらに別の観点からは、プロテアーゼ活性
の測定に用いるための薄膜であって、支持体表面に形成
されており、乳化分散された色素及び固体分散された色
素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素及びプ
ロテアーゼ基質を含有する架橋された及び/又は実質的
に水に溶けない薄膜が本発明により提供される。この薄
膜は、好ましくは上記方法に用いることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】本明細書において用いられる測定
方法という用語は、定性及び定量を含めて最も広義に解
釈されるべきである。本発明のプロテアーゼの測定方法
は、試料中に含まれるプロテアーゼによってプロテアー
ゼ基質が消化され、薄膜中に消化痕が形成されることに
よりプロテアーゼを測定する方法(いわゆるin situ zy
mography法:例えば国際公開WO97/32035号公報に開示さ
れている)において、少なくとも一種の色素及びプロテ
アーゼ基質を含有する架橋された及び/又は実質的に水
に溶けない薄膜を用いることを特徴としており、薄膜を
水性媒体で洗浄することにより消化された部分の基質と
色素が洗い流され、消化痕を光学濃度の低い部分として
顕微鏡下で検出し、試料中のプロテアーゼ活性の存在を
検出することができるという特徴がある。
【0014】本発明において「架橋された及び/又は実
質的に水に溶けない薄膜」とは、支持体表面上に形成さ
れた薄膜を30℃の水に30分間浸漬した場合に実質的
にプロテアーゼ基質が水中に溶出することがないことを
意味している。本発明の薄膜は、一般的には硬膜剤を用
いたプロテアーゼ基質の架橋により製造することができ
るが、必ずしも硬膜剤を必要としない場合もある。例え
ば、コラーゲン薄膜の焼付けによる架橋は米国特許明細
書第4,931,386号に記載されており、またアミノ基転移
酵素により蛋白質を架橋することも可能である。薄膜の
製造には、一般的には、有機又は無機の硬膜剤を用いる
ことができる。このような硬膜剤は、例えばゼラチンな
どの硬化促進のために利用可能な硬膜剤から適宜選択す
ればよいが、測定の対象となるプロテアーゼの活性に影
響を与えないものを選択する必要がある。例えば、活性
ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−
1,3,5−トリアジン及びそのナトリウム塩など)及
び活性ビニル化合物(1,3−ビスビニルスルホニル−
2−プロパノール、1,2−ビス(ビニルスルホニルア
セトアミド)エタン、ビス(ビニルスルホニルメチル)
エーテル、及びビニルスルホニル基を側鎖に有するビニ
ル系ポリマーなど)を用いることができ、1,2−ビス
(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを用いること
が好ましい。
【0015】本発明の対象となるプロテアーゼとして
は、例えば、マトリックス・メタロプロテアーゼ及びセ
リンプロテアーゼを挙げることができ、これらの酵素に
ついては、鶴尾隆編「癌転移の分子機構」、pp.92-10
7、メジカルビュー社、1993年発行に詳細に説明されて
いる。本発明の方法に特に好適なプロテアーゼとして、
例えば、間質型コラーゲナーゼ(MMP-1)、ゼラチナーゼ
A (MMP-2)、及びゼラチナーゼB (MMP-9)などのマトリ
ックス・メタロプロテアーゼ;及びプラスミノーゲン・
アクティベーター(PA)などのセリンプロテアーゼを挙げ
ることができるが、本発明の方法の対象は上記の特定の
プロテアーゼに限定されることはない。
【0016】プロテアーゼ基質は、プロテアーゼの基質
として分解される高分子化合物であれば特に限定されな
い。例えばコラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、
フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、又はカゼイ
ンなどを用いることができる。好ましくは、コラーゲ
ン、ゼラチン、フィブロネクチン、又はカゼインを用い
ることができ、より好ましくはゼラチン又はカゼインを
用いることができる。ゼラチンを用いる場合には、ゼラ
チンの種類は特に限定されず、例えば、牛骨アルカリ処
理ゼラチン、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処理
ゼラチン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼ
ラチンなどを用いることができる。プロテアーゼ基質は
上記の1種を用いても良いが、2種以上を組み合わせて
用いてもよい。
【0017】2種以上の異なるプロテアーゼ基質を組み
合わせて用いることにより、生体試料中に含まれるプロ
テアーゼの種類を正確に特定できる場合がある。例え
ば、生体試料中の実質的に連続した切片のうちの一つを
ある種のプロテアーゼ基質を含む薄膜に接触させて消化
痕を検出し、他の切片を異なるプロテアーゼ基質を含む
薄膜に接触させて薄膜上の消化痕を検出し、それぞれの
結果を対比することができる。比較のためにそれぞれ異
なるプロテアーゼ基質を含む薄膜を2種以上用いてもよ
い。プロテアーゼ基質を含む薄膜としては、乾燥後の膜
厚が1〜10 μm、好ましくは2〜7 μmのものを用いるこ
とが好適である。
【0018】本発明の薄膜は支持体表面に形成される
が、支持体の材質や形状は特に限定されない。薄膜上の
表面変化を顕微鏡下で観察するような場合や、吸光度測
定や蛍光測定などの分光学的手段により表面変化を検出
する場合には、例えば、薄膜は平面状の透明又は半透明
の支持体上に形成されることが好ましい。このような透
明又は半透明の高分子支持体としては、例えば、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ア
タクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリ
スチレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロー
ス、ポリメチルメタクリレート、ポリスルフォン、ポリ
アリレート等からなる透明又は半透明プラスチックフイ
ルムなどを用いることができる。特に好ましいのはポリ
エチレンテレフタレート、シンジオタクティックポリス
チレン、ポリアリレートであるが、ポリエチレンテレフ
タレートを用いることが最も好ましい。用いる支持体自
体に着色が施されていてもよい。
【0019】支持体の厚さは特に限定されないが、50
μm以上、300μm以下が好ましく、より好ましくは
100μm以上、200μm以下である。特に好ましく
は175μm程度のものを用いることができる。該支持
体上の薄膜は単層又は重層で形成することができるが、
薄膜はできる限り均一な表面を与えるように調製すべき
である。
【0020】薄膜の調製には、例えば、プロテアーゼ基
質の水溶液に、硬膜剤の所定量及び色素溶液又は色素分
散物を加えて均一に混合し、得られた溶液又は分散液を
支持体表面に塗布して乾燥すればよい。塗布方法として
は、例えば、ディップ塗布法、ローラー塗布法、カーテ
ン塗布法、押し出し塗布法などを採用することができ
る。もっとも、薄膜の調製方法はこれらに限定されるこ
とはなく、例えば、写真用フイルムの技術分野などにお
いて汎用されている薄膜形成方法などを適宜採用するこ
とが可能である。
【0021】薄膜を支持体上に形成するにあたり、薄膜
と支持体との接着を改善するために、薄膜と支持体表面
との間に下塗り層を設けてもよい。例えば、塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン、ブタジエン、スチレン、メタクリ
ル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等から
選ばれるモノマーの1種又は2種以上を重合させて得ら
れる重合体又は共重合体、ポリエチレンイミン、エポキ
シ樹脂、グラフト化ゼラチン、又はニトロセルロースな
どの重合体を下塗り層として形成することができる。ま
た、ポリエステル系支持体を用いる場合には、下塗り層
に替えて、支持体表面をコロナ処理、紫外線処理、又は
グロー処理することによっても、支持体と薄膜との接着
力を改善できる場合がある。コロナ処理、紫外線処理、
又はグロー処理を行った後下塗り層を塗布する方法も支
持体と薄膜との接着力を改善できる。
【0022】本明細書において用いられる「支持体表面
上に形成された薄膜」という用語またはその同義語につ
いては、このような1又は2以上の下塗り層及び/又は
支持体表面の処理を排除するものと解釈してはならな
い。もっとも、薄膜と支持体との接着を改善するための
手段は上記のものに限定されることはなく、例えば、写
真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている手
段を適宜採用することができる。また、薄膜が複数の層
を重層してなる場合には、重層される2つの層の間にさ
らに中間層を設けてもよく、2つの層が直接接触してい
る場合に限定して解釈してはならない。このような中間
層を適宜配置する手段は、例えば、写真用フイルムの技
術分野などにおいて汎用されている。また、支持体表面
上に形成された膜の表面に保護層を設けることも好まし
く、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されて
いる。
【0023】本発明の薄膜に配合する色素は、可視域に
吸収を有するものであれば特に制限はなく、公知の物質
を含む種々の化合物を使用することができる。1種類の
色素を用いてもよいが、2種以上の色素を組み合わせて
用いてもよい。例えば、重層した薄膜を用いる場合に
は、各層に異なる色の色素を配合することができる。な
お、本発明の色素としては蛍光色素以外の色素を用いる
ことが好ましい。薄膜中への色素の添加量は特に限定さ
れないが、薄膜の面積に対する色素合計量として0.001
〜10 mmol/m2、好ましくは0.01〜1 mmol/m2である。
【0024】色素としては、例えば、アゾ色素(アゾレ
ーキ色素、不溶性モノアゾ色素、不溶性ジスアゾ色素、
縮合アゾ色素、金属錯塩アゾ色素、キレートアゾ色素)
アゾメチン色素、インドアニリン色素、ベンゾキノン色
素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、ジフェニ
ルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色
素、アクリジン色素、アジン色素、オキサジン色素、チ
アジン色素、オキソノール色素、メロシアニン色素、シ
アニン色素、アリーリデン色素、スチリル色素、ペリノ
ン色素、インジゴ色素、チオインジゴ色素、キノリン色
素、ニトロ色素、ニトロソ色素、多環式色素(ペリレン
及びペリノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジ
ン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色
素、ジケトピロロピロール系色素等)、アジン色素等、
その他の色素(アリザリンレーキ色素、アルカリブル
ー、群青、コバルトブルー)などを挙げることができ
る。
【0025】具体的な化合物については「新版染料便
覧」(有機合成化学協会編;丸善,1970)、「カラ
ーインデックス」(The Society of Dyers and colouri
sts)、「色材工学ハンドブック」(色材協会編;朝倉
書店、1989)、「印刷インキ技術」CMC出版(1
984年刊)、W. Herbst, K. Hunger共著による Indus
trial Organic Pigments(VCH Verlagsgesellschaft、
1993年刊)などに記載されている。これらのうち、
油溶性の色素は酵素反応に対して悪影響を及ぼさない点
で好適である。
【0026】以下に本発明の薄膜に配合可能な好ましい
色素の具体例を示すが、本発明の薄膜は下記の色素を用
いたものに限定されることはない。
【0027】
【化1】
【0028】
【化2】
【0029】
【化3】
【0030】
【化4】
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】本発明の薄膜の製造には、上述の色素それ
自体を用いてもよいが、表面処理を施された固体分散色
素を用いてもよい。表面処理の方法には、例えば、樹脂
やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着さ
せる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤
やエポキシ化合物、ポリイソシアネートなど)を固体分
散色素表面に結合させる方法などを挙げることができ、
その具体的手段は「金属石鹸の性質と応用」(幸書
房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984)、
「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)などに
記載されている。
【0038】薄膜の製造にあたり、一般的には、色素を
プロテアーゼ基質中に分散させることが望ましく、その
目的のために分散剤を用いることができる。分散剤の種
類は特に限定されず、用いるプロテアーゼ基質と色素と
の組み合わせに応じて種々のもの、例えば界面活性剤型
の低分子分散剤や高分子型分散剤などを用いることがで
きる。疎水性のプロテアーゼ基質中で用いる場合には、
分散安定性の観点から高分子型分散剤を用いることが好
ましい。分散剤の例としては、特開平3−69949号
公報、欧州特許公開549486号公報等に記載のもの
を挙げることができる。
【0039】本発明の薄膜の製造に使用される分散色素
の粒径は、例えば、分散後に0.01〜10μmの範囲
であることが好ましく、0.05〜1μmであることが
さらに好ましい。色素をプロテアーゼ基質中に固体分散
する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いら
れる公知の分散技術を利用できる。分散機としては、例
えば、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパ
ーミル、ボールミル、インペラー、デスパーサー、KD
ミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、
加圧ニーダー等を挙げることができ、その手法の詳細は
「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載
されている。
【0040】本発明の薄膜には、色素を固体微粒子分散
物として添加することができる。色素の固体微粒子分散
物は、所望により適当な溶媒(水、アルコールなど)を
用い、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、
サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミ
ル等の分散機を用いて調製することができるが、縦型あ
るいは横型の媒体分散機を用いることが好ましい。ま
た、色素を適当な溶媒中に溶解させたのち貧溶媒に添加
して微結晶を析出させる方法や、pHをコントロールさ
せることによってまず色素を溶解させ、その後pHを変
化させて微結晶を析出させる方法などを利用しても得る
ことができる。いずれの場合も分散剤を用いることが好
ましい。
【0041】色素の固体微粒子分散物を含有する薄膜
は、上記のようにして得た色素の固体微粒子を適当なプ
ロテアーゼ基質中に分散させることによってほぼ均一な
固体微粒子分散物を調製した後、これを所望の支持体上
に塗設することによって形成することができる。また、
解離状態の色素を塩の形で水溶液として塗布した後、酸
性のゼラチンを上塗りすることにより、析出分散を塗布
時に得る方法を採用してもよい。分散剤としては、例え
ば、公知のアニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は
両性の低分子又は高分子分散剤を用いることができる。
例えば、特開昭52−92716号公報、国際公開WO
88/04794号、特開平10−20496号公報に
記載の分散剤を挙げることができる。特にアニオン性及
び/又はノニオン性の高分子分散剤の使用が好ましい。
【0042】本発明の薄膜に含まれる色素は、特開昭6
2−215272号公報(125頁右上欄2行目〜12
7頁左下欄末行)、特開平2−33144号公報(37
頁右下欄14行目〜38頁左上欄11行目)、欧州特許
公開EP0.355.600A2号(85頁22行目〜
31行目)に記載の紫外線吸収剤、特開平07−104
448号公報(第70欄10行目〜第71欄2行目)記
載の退色防止剤と併用することもできる。
【0043】また、薄膜への色素の乳化分散による導入
は、例えば、特開平07−104448号公報(第71
欄3行目〜第72欄11行目)などに記載の種々の公知
分散方法により行うことができるが、高沸点有機溶媒
(必要に応じて低沸点有機溶媒を併用してもよい)に溶
解し、ゼラチンなどのプロテアーゼ基質水溶液に乳化分
散する水中油滴分散法を採用してもよい。水中油滴分散
法に用いられる高沸点溶媒の例は米国特許第2,32
2,027号明細書などに記載されている。また、ポリ
マー分散法の1つとしてのラテックス分散法及びラテッ
クスの具体例は、米国特許第4,199,363号明細
書、西独特許出願第(OLS)2,541,274号明
細書、同2,541,230号明細書、特公昭53−4
1091号公報、及び欧州特許公開第029104号公
報等に記載されており、これらを本発明の薄膜製造に利
用してもよい。また、有機溶媒可溶性ポリマーによる分
散法について国際公開WO88/00723号公報に記
載されている。
【0044】水中油滴分散法に用いることのできる高沸
点有機溶媒としては、例えば、フタール酸エステル類
(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレー
ト、ジシクロへキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキ
シルフタレート、デシルフタレート、ビス(2,4−ジ
−tert−アミルフェニル)イソフタレート、ビス
(1,1−ジエチルプロピル)フタレート)、リン酸又
はホスホンのエステル類(例えば、ジフェニルホスフェ
ート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフ
ェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、
ジオクチルブチルホスフェート、トリシクロヘキシルホ
スフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、
トリドデシルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフ
ェニルホスフェート)、安息香酸エステル酸(例えば、
2−エチルヘキシルベンゾエート、2,4−ジクロロベ
ンゾエート、ドデシルベンゾエート、2−エチルヘキシ
ル−p−ヒドロキシベンゾエート)、アミド類(例え
ば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジエチ
ルラウリルアミド)、アルコール類またはフェノール類
(イソステアリルアルコール、2,4−ジ−tert−
アミルフェノールなど)、脂肪族エステル類(例えば、
コハク酸ジブトキシエチル、コハク酸ジ−2−エチルヘ
キシル、テトラデカン酸2−ヘキシルデシル、クエン酸
トリブチル、ジエチルアゼレート、イソステアリルラク
テート、トリオクチルシトレート)、アニリン誘導体
(N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−tert−オ
クチルアニリンなど)、塩素化パラフィン類(塩素含有
量10%〜80%のパラフィン類)、トリメシン酸エス
テル類(例えば、トリメシン酸トリブチル)、ドデシル
ベンゼン、ジイソプロピルナフタレン、フェノール類
(例えば、2,4−ジ−tert−アミルフェノール、
4−ドデシルオキシフェノール、4−ドデシルオキシカ
ルボニルフェノール、4−(4−ドデシルオキシフェニ
ルスルホニル)フェノール)、カルボン酸類(例えば、
2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ酪酸、
2−エトキシオクタンデカン酸)、アルキルリン酸類
(例えば、ジ−2(エチルヘキシル)リン酸、ジフェニ
ルリン酸)などが挙げられる。また、補助溶媒として沸
点が30℃以上約160℃以下の有機溶剤(例えば、酢
酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、メチルエ
チルケトン、シクロヘキサノン、2−エトキシエチルア
セテート、ジメチルホルムアミド)を併用してもよい。
【0045】高沸点有機溶媒の量は用いられる色素1g
に対して10g以下、好ましくは5g以下、より好まし
くは1g〜0.1gである。また、プロテアーゼ基質1
gに対して1ml以下、好ましくは0.5ml以下、さ
らに好ましくは0.3ml以下が適当である。疎水性の
色素を親水性コロイドに分散する際には、種々の界面活
性剤を用いることができる。例えば、特開昭59−15
7636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスク
ロージャー(以下、RDと略す)17643に界面活性剤
として挙げられたものを使うことができる。
【0046】薄膜中にはプロテアーゼ基質、色素、及び
必要に応じて硬膜剤のほか、各種の添加物を加えてもよ
い。添加物としては、例えば薄膜の塗布を容易にするた
めの界面活性剤、色素を分散するためのオイル又は乳化
剤、防腐剤、防かび剤、pHを調節するための酸または
塩基、酵素活性を調節するためのCa++等の無機イオンが
あげられるが、これらに限定されることはない。また、
本発明の薄膜には帯電防止の手段が施されていてもよ
い。例えば、プロテアーゼ基質層側又はその反対側の表
面電気抵抗が1012Ω以下であるものを好ましく用いる
ことができる。膜の表面電気抵抗を低下させるための手
段としては、例えば、写真用フイルムに利用されている
技術を採用することができる。
【0047】例えば、本発明の薄膜の製造には、以下に
示すような添加剤を必要に応じて使用することができ
る。硬膜剤(RD17643:26頁;RD18716:651頁左欄;RD3
07105:874〜875頁)、バインダー(RD17643:26頁;RD
18716:651頁左欄;RD307105:873〜874頁)、可塑剤又
は潤滑剤(RD17643:27頁;RD18716:650頁右欄;RD307
105:876頁)、塗布助剤又は界面活性剤(RD17643:26
〜27頁;RD18716:650頁右欄;RD307105:875〜876
頁)、帯電防止剤(RD17643:27頁;RD18716:650頁右
欄;RD307105:876〜877頁)、マット剤(RD307105:87
8〜879頁)。これらの添加剤はいずれも写真用フイルム
の技術分野において汎用されており、本発明の薄膜の製
造に同様に利用できる。
【0048】本発明の方法に用いる生体試料としては、
ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取された生体試料を
用いることができる。例えば、罹患した哺乳類動物、疾
患の存在が疑われる哺乳動物、又は実験動物などから分
離・採取した生体試料を用いることができる。生体試料
の形態は特に限定されないが、組織切片などの固形試料
や体液などの非固形試料を用いることができる。非固形
試料としては、例えば、組織から吸引により採取した細
胞又は組織片を含む試料、血液、リンパ液、唾液などの
体液を用いることができる。例えば、肺癌、胃癌、食道
癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、肝臓
癌、口腔癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌などの癌組織か
ら手術や組織検査などにより分離・採取した癌組織、リ
ンパ節、歯周病組織、リウマチ性関節炎の滑膜や骨組織
などの組織から手術や組織検査などにより分離・採取し
た組織、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織に含まれる液
(例えばリウマチ性病変の関節液又は歯槽膿漏組織抽出
液)、胸水、腹水、脳脊髄液、乳腺異常分泌液、卵巣嚢
胞液、腎臓嚢胞液、喀痰、血液あるいは血球などを用い
ることができる。
【0049】試料が組織の場合には、例えば、液体窒素
で急速凍結した試料から凍結切片作成装置を用いて厚さ
1〜10 μm、好ましくは2〜6 μmの切片を調製し、この
切片を薄膜に貼付することによって試料と薄膜とを接触
させることができる。穿刺吸引により採取した細胞又は
組織片を含む非固形試料についても、コンパウンドなど
の成形材料と混合して液体窒素で急速凍結し、同様に切
片を作製して用いることができる。また、組織から穿刺
吸引により採取した細胞又は組織片を含む非固形試料を
そのまま用いる場合には、吸引した試料を薄膜上に吐出
させ、細胞を分散状態で薄膜に接着させればよい。さら
に、生体試料が組織片の場合は、採取した組織の水分を
軽く拭った後、プロテアーゼ基質を含む薄膜の上に1分
間から30分間程度静置することで試料と薄膜とを接触さ
せることができる。
【0050】また、リウマチ性関節炎の患者から採取し
た滑膜液の様な非固形試料を用いる場合には、試料を適
当な濃度に希釈し、及び/又は必要な前処理を行った後
に、約1〜50 μL、好ましくは1〜20 μL程度を薄膜上に
滴下すればよい。歯周病の歯肉溝滲出液を試料として用
いる場合には、歯肉溝内に濾紙を挿入して約5〜10μL程
度の歯肉溝滲出液を採取し、該濾紙を薄膜に貼付する方
法を採用することができる。歯肉溝滲出液の採取後、必
要に応じて蒸留水や適宜の緩衝液(例えば、50 mM Tris
-HCl, pH 7.5, 10 mM CaCl2, 0.2 M NaClなど)を用い
て濾紙から歯肉溝滲出液を抽出し、抽出液を薄膜上に滴
下してもよい。より多量に採取できる体液試料(嚢胞液
など)の場合には、試料を入れた容器の中に薄膜の一部
を浸漬する方法により再現性のよい結果が得られる。
【0051】プロテアーゼを含む組織切片を薄膜に貼付
するか、あるいは液体試料を滴下するなどの手段によっ
て薄膜とプロテアーゼを含む試料を接触させた後、プロ
テアーゼ活性の発現に適した温度、例えば37℃の飽和湿
度条件下で基質の消化に必要な時間薄膜をインキュベー
トする。必要な時間は試料や薄膜の種類によって異なる
が、好ましくは、組織切片又は吸引により得た細胞若し
くは組織片を含む非固形試料については37℃で1〜48時
間、さらに好ましくは6〜30時間、滲出液などの液状の
試料については0.5〜24時間、好ましくは1〜6時間イン
キュベートし、試料中のプロテアーゼによって薄膜中に
消化痕を形成させる。その後、薄膜を水性媒体で洗浄
し、消化された基質及びそこに含まれる色素を除去す
る。水性溶媒としては水の他、水と混和可能な有機溶媒
(たとえば、メタノール、エタノール、アセトン)との
混合物を用いることができる。光学顕微鏡で消化痕を観
察することができる。
【0052】生体試料中の実質的に連続した2以上の切
片のうちの一つをプロテアーゼ・インヒビターを含まな
い薄膜に貼付し、他の切片の1つをプロテアーゼ・イン
ヒビターを含む薄膜に貼付して、両者の薄膜の消化痕を
比較することにより、プロテアーゼの種類を特定するこ
とが可能になる。プロテアーゼ・インヒビターの種類は
特に限定されないが、例えば、キレート剤、マトリック
スメタロプロテアーゼ阻害剤、又はセリンプロテアーゼ
阻害剤などを好適に用いることができる。
【0053】また、プロテアーゼ基質、色素、及び必要
に応じて硬膜剤を含む単層の薄膜を用いる場合には、試
料中のプロテアーゼにより薄膜が消化されるに従って薄
膜の光学濃度が減少するが、プロテアーゼ基質を含む薄
膜が重層塗布されており、各層に異なる色の色素が添加
されている場合には、試料中のプロテアーゼにより薄膜
が消化されるに従って、光学濃度とともに薄膜の色相が
変化する。このような薄膜を用いると、消化の強さを視
覚的に判定することが容易である。
【0054】本発明の方法で生体試料に含まれるプロテ
アーゼ活性を測定し、試料が由来した生体の状況、例え
ば癌の転移やリウマチの進行度などとの対応を調べるこ
とができる。消化痕における消化の強さの判定には、光
学顕微鏡下で目視で判定する方法、分光器により消化痕
の光学濃度を測定する方法、光学顕微鏡で得られる画像
をコンピューターに取り込み、画像解析の方法により消
化痕における各種の数値化を行う方法などのいずれを採
用してもよい。画像解析を行う場合には種々のデータ処
理法を用いることができ、その種類は特に限定されない
が、消化痕の面積、あるいは消化痕部分の濃度と面積の
積分を用いて消化の程度を数値化することが好ましい。
【0055】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定され
ることはない。 例1:赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄膜の製造 (支持体の作成)175μmのPETクリアーフイルム
の表面をコロナ放電処理したのち、以下のような組成の
下塗りを施した支持体を作成した。なお、裏面の電気抵
抗を測定したところ、1×108Ωであった。 1.おもて面 ゼラチン 0.3g/m2 硬膜剤(1) 0.001g/m2 2.裏面 ゼラチン 0.05g/m2 酸化アンチモンをドープした 二酸化スズの水分散物 0.04g/m2 メチルセルロース 0.01g/m2 マット剤 (平均粒径3μのPMMAポリマー粒子)0.005g/m2 硬膜剤(2) 0.002g/m2
【0056】
【化11】
【0057】(色素塗布液の調製)色素化合物(MD−
06)11.8g及び(MD−1)3.9g、溶媒(S
olv−1)15.7g及び酢酸エチル50ccを加え
て溶解し、この溶液をドデシルベンゼンスルホン酸ナト
リウム(界面活性剤(1))8ccを含む10質量%ゼラ
チン(シグマ社製:ブルーム値175)水溶液270cc
に添加した後、超音波ホモジナイザーにて乳化分散し
た。得られた分散液に、10質量%ゼラチン(シグマ社
製#2625)2740gを添加溶解して第1層塗布液
を調製した。第1層以外の層の塗布液もこれと同様の方
法で調製し、前記支持体上に表1に示した構成にて塗布
を行い薄膜を作成した。
【0058】
【表1】
【0059】
【化12】
【0060】例2:赤色の色素乳化物とキレート剤を含
むゼラチン薄膜の製造 例1の第1層(着色層)にo−フェナントロリン(和光
純薬(株)製)0.78 g/m2、界面活性剤(3)を0.06 g/m
2となるように添加した以外は例1と同様に薄膜を製造
した。
【0061】例3:各層に異なる色の色素乳化物を含む
多層構成のゼラチン膜の製造 例1と同様の方法で、イエロー及びシアン色素分散液を
作成し、表2に示した構成の薄膜を作成した。
【0062】
【表2】
【0063】例4:各層に異なる色の色素乳化物とキレ
ート剤を含む多層構成のゼラチン膜の製造 例3の第1層、第2層、及び第3層(それぞれ着色層)
に、o−フェナントロリン(和光純薬(株)製)を0.3
1 g/m2、界面活性剤(3)を0.02 g/m2となるよう
添加する以外は例3と同様にして薄膜を製造した。
【0064】例5:水溶性赤色素を含む薄膜の製造 (色素溶解液の調整)色素化合物(MD−36)2.0
gを水100mlに溶解した色素溶液を、10質量%ゼラ
チン(シグマ社製#2625)溶液500mlに40℃に
て溶解し、色素溶液を作成した。これを用いて、表3に
示す薄膜を製造した。
【0065】
【表3】
【0066】例6:赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄
膜を用いたプロテアーゼ活性の測定 外科手術により摘出し凍結した乳癌検体を、凍結切片作
製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに薄切し、例1に
従って製造した赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄膜に
接着させた。この膜を37℃、相対湿度100%で16
時間インキュベートし、自然乾燥させたのち、10分間
水洗した。マイヤーのヘマトキシリン液に2分間浸漬し
て核染色を行い、10分間水洗後20秒間エタノールに
浸漬して自然乾燥させた。乾燥後、組織切片を覆うよう
にカバーエイドフィルム(サクラ精機製)をキシレンを
用いて貼り付け乳癌切片を封入した。このフィルムをプ
ラスチック製のマウントに保持し、光学顕微鏡を用いて
観察すると乳癌組織切片中、核の形態より癌細胞が存在
すると考えられる部位にゼラチン消化が認められ、プロ
テアーゼ活性があることが明らかとなった。組織切片中
の細胞核はヘマトキシリンにより染色されているが、ゼ
ラチン消化部分の観察には影響がなく、比較例の場合に
比べて鮮明であった。薄膜の染色のためにポンソー染色
液の調製及び染色操作が不要であるため、操作も簡便で
あった。
【0067】例7:赤色の色素乳化物とキレート剤を含
むゼラチン薄膜を用いたプロテアーゼ活性の測定 外科手術により摘出し凍結した乳癌検体を、凍結切片作
製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに薄切し、例2に
従って製造した赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄膜に
接着させた。この膜を例6と同様にしてインキュベー
ト、水洗、ヘマトキシリン染色、水洗処理に付した。こ
のフィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光学
顕微鏡を用いて観察すると、例6で観察されたゼラチン
分解がほぼ完全に阻害されていた。この結果から、例6
で観察されたゼラチン分解はMMPによるものと判断で
きた。
【0068】例8:各層に異なる色の色素乳化物を含む
多層構成のゼラチン膜を用いたプロテアーゼ活性の測定 外科手術により摘出し凍結した子宮頸癌検体を、凍結切
片作製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに薄切し、例
3で製造した各層に異なる色の色素乳化物を含む多層構
成のゼラチン膜に接着させた。この膜を37℃、相対湿
度100%で16時間インキュベートし、自然乾燥させ
たのち、10分間水洗した。マイヤーのヘマトキシリン
液に2分間浸漬して核染色を行い、10分間水洗後20
秒間エタノールに浸漬して自然乾燥させた。乾燥後、組
織切片を覆うようにカバーエイドフィルム(サクラ精機
製)をキシレンを用いて貼り付け、子宮頸癌切片を封入
した。このフィルムをプラスチック製のマウントに保持
し、光学顕微鏡を用いて観察すると子宮頸癌組織切片
中、核の形態より癌細胞が存在すると考えられる部位に
ゼラチン消化が認められ、プロテアーゼ活性があること
が明らかとなった。この場合、フィルム全体がグレー色
であるのに対し、ゼラチン消化の起こった部分は色が変
色して見えた。このことから、各層に異なる色の色素乳
化物を含む多層構成のゼラチン膜を用いると、プロテア
ーゼ活性を色相の変化として検知できることがわかっ
た。
【0069】例9:各層に異なる色の色素乳化物とキレ
ート剤を含む3層構成のゼラチン膜を用いたプロテアー
ゼ活性の測定 外科手術により摘出し凍結した子宮頸癌検体を、凍結切
片作製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに薄切し、例
4に従って作製した赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄
膜に接着させた。この膜を例8と同様にしてインキュベ
ート、水洗、ヘマトキシリン染色、水洗処理に付した。
このフィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光
学顕微鏡を用いて観察すると、例8で観察されたゼラチ
ン分解がほぼ完全に阻害されていた。この結果から、例
8で観察されたゼラチン分解はMMPによるものと判断
できた。
【0070】例10:色素塗布液調製 色素化合物(MD−9)12.0gを乳鉢で30分間す
りつぶした後、150mlのベッセルに0.5mφのガ
ラスビーズ100cc、界面活性剤(A)3.3g及び水
90gを添加し、ダイノミル分散機KBL(シンマルエ
ンタープライズ社製)にて、2時間分散を行った。得ら
れた分散液に10質量%ゼラチン(シグマ社製#262
5)2740gを添加溶解して第一層塗布液を調製し
た。これを用い、実施例1と同様の方法で塗布を行い薄
膜を作成した。これを用いて実施例6の方法で評価を行
ったところ、同様の効果がえられる事が分かった。
【0071】
【化13】
【0072】比較例:ゼラチンと硬膜剤からなる薄膜を
用いたプロテアーゼ活性の測定 外科手術により摘出し凍結した胃癌検体を、凍結切片作
製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに薄切し、国際公
開WO97/32035号公報に開示された架橋ゼラチン薄膜に接
着させた。ゼラチンの膜厚は7μmで1,2−ビス(ビニ
ルスルホニルアセトアミド)エタンにより架橋され、厚
さ175μmのPETフィルムに塗布されたものを用いた。凍
結切片を貼り付けたゼラチン膜を37℃、相対湿度10
0%で16時間インキュベートし、自然乾燥させた。染
色液としては5%の酢酸水溶液に濃度0.8%になるよ
うにポンソー3Rを溶解させた液とエタノールとの3:
7混合液を用い、室温で4分間浸漬して染色した。
【0073】10分間水洗した後、マイヤーのヘマトキ
シリン液に2分間浸漬して核染色を行い、10分間水洗
後20秒間エタノールに浸漬して自然乾燥させた。乾燥
後、組織切片を覆うようにカバーエイドフィルム(サク
ラ精機製)をキシレンを用いて貼り付け胃癌切片を封入
した。このフィルムをプラスチック製のマウントに保持
し、光学顕微鏡を用いて観察すると、胃癌組織切片中、
核の形態より癌細胞が存在すると考えられる部位にゼラ
チン消化が認められ、プロテアーゼ活性があることが明
らかとなった。しかし、ゼラチン膜上に存在する胃癌切
片もポンソーにより染色されているため、消化痕の一部
が切片により覆われて消化の範囲及び程度が不明確であ
った。
【0074】
【発明の効果】本発明の方法によれば、プロテアーゼ活
性を正確に測定できるとともに、薄膜上の組織や細胞の
形態観察を容易に行うことができる。特に、薄膜の染色
工程が不要となるために測定のための操作が簡便であ
り、薄膜上の組織や細胞が染色されることがなくなり、
プロテアーゼ活性の発現がより詳細に解析できる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プロテアーゼ活性の測定方法であって、
    (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固
    体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一
    種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及
    び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、プロテア
    ーゼを含む生体試料を接触させる工程;及び(2)該薄膜
    を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用により該薄膜
    に形成された消化痕を検出する工程を含む方法。
  2. 【請求項2】 プロテアーゼ活性の測定方法であって、 (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固
    体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一
    種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及
    び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、プロテア
    ーゼを含む生体試料を接触させる工程; (2)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用に
    より該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び (3)該薄膜上の生体試料を染色する工程を含む方法。
  3. 【請求項3】 プロテアーゼ活性の測定方法であって、 (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固
    体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一
    種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及
    び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、生体試料
    の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを接触さ
    せる工程; (2)支持体上に形成され、乳化分散された色素及び固体
    分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種
    の色素、プロテアーゼ基質、及びプロテアーゼ・インヒ
    ビターを含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶
    けない薄膜に対して上記切片のうちの他の切片の一つを
    接触させる工程; (3)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用に
    より該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び
    (4)工程(1)で用いた薄膜の消化痕と工程(2)で用いた薄
    膜の消化痕とを対比する工程を含む方法。
  4. 【請求項4】 プロテアーゼ活性の測定方法であって、 (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固
    体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一
    種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及
    び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、生体試料
    の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つをさせる
    工程; (2)支持体上に形成され、乳化分散された色素及び固体
    分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種
    の色素、プロテアーゼ基質、及びプロテアーゼ・インヒ
    ビターを含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶
    けない薄膜に対して、上記切片のうちの他の切片の一つ
    を接触させる工程; (3)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用に
    より該薄膜に形成された消化痕を検出する工程; (4)該薄膜上の生体試料を染色する工程;及び(5)工程
    (1)で用いた薄膜の消化痕と工程(2)で用いた薄膜の消化
    痕とを対比する工程を含む方法。
  5. 【請求項5】 生体試料の染色が細胞核の染色である請
    求項2又は4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 染色にヘマトキシリンあるいはメチルグ
    リーンを用いる請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 生体試料がヒトを含む哺乳類動物から得
    られた組織、細胞、又は体液である請求項1ないし6の
    いずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか1項に記載
    の方法に用いるための薄膜。
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