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JP2001072606A - 高分子型癌転移・再発予防剤 - Google Patents

高分子型癌転移・再発予防剤

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Publication number
JP2001072606A
JP2001072606A JP2000198341A JP2000198341A JP2001072606A JP 2001072606 A JP2001072606 A JP 2001072606A JP 2000198341 A JP2000198341 A JP 2000198341A JP 2000198341 A JP2000198341 A JP 2000198341A JP 2001072606 A JP2001072606 A JP 2001072606A
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JP
Japan
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metastasis
cancer
recurrence
cancer metastasis
molecular weight
Prior art date
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Pending
Application number
JP2000198341A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Maeda
浩 前田
Toshimitsu Konno
俊光 今野
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Original Assignee
Individual
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 固形癌の手術中または手術後の正常臓器への
癌転移及び再発を防止するため、転移の恐れのある正常
臓器近傍の体腔や、門脈等、転移好発部位への転移経路
等に投与した場合、投与個所以外の健常な他の臓器への
拡散や血管内へ移行することなく、その近辺に長期間滞
留して、転移や再発を効果的に予防することができる癌
転移・再発予防剤の提供。 【解決手段】 外科手術前、手術時または手術後に、転
移好発部位近傍の腹腔、胸腔等の体腔内または門脈等、
転移好発部位への転移経路に投与する癌転移・再発予防
剤であって、制癌作用を有する薬剤が高分子化合物と結
合した高分子型癌転移・再発予防剤。特にネオカルチノ
スタチン(NCS)がスチレン−マレイン酸共重合体残
基(SMA)と結合したネオカルチノスタンチン誘導体
(スマンクス)を有効成分とする癌転移・再発予防剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、体腔内固形癌切除
手術中または手術後の癌転移及び再発予防のため、外科
手術前、手術時または手術後に、転移または再発好発部
位近傍の体腔内または転移または再発好発部位への転移
経路に投与する高分子型癌転移・再発予防剤に関する。
更に詳しくは、癌患者に投与された際、体腔内に長時間
滞留して、外科手術により見かけ上根治した原発癌の再
発、または原発癌からの転移を効果的に防止することの
できる高分子型癌転移・再発予防剤に関する。
【0002】
【従来の技術】肺癌、胃癌、その他固型癌は胸腔、腹腔
内臓器(肺臓、胃、肝臓、大腸等)の主たる癌腫であ
り、これらの癌の治療には外科手術、化学療法、放射線
治療、免疫療法等、あるいはこれらを併用した種々の治
療法が行なわれている。
【0003】そのうち化学療法によって癌を治療しよう
とする試みについては、これまでに数多くの制癌剤が開
発されており、化学療法のみによる治療、或いは術後の
再発防止剤として制癌剤が多く使用されてきたが、その
効果は不充分であり、またその強い副作用のため、患者
のquality of lifeを損なうという問題があった。
【0004】いずれにしても、癌治療法の主流は現在で
は依然として外科手術あるいは化学療法であり、近年外
科手術の進歩により,原発癌の治癒率は著しく向上して
いる。しかしながら、肉眼的に検知不可能で、見かけ上
根治したように見える場合でも、極く微小に取り残した
癌細胞による癌の再発、あるいは手術中または手術後の
他臓器への転移を完全に防止することは難しく、手術後
においても再発,転移により死に至ることが多く、手術
後の再発は手術例の50%以上になることも少なくない。
転移した癌に対しては一般に外科的治療が困難な場合が
多く、殆どが化学療法や放射線療法に頼らざるを得な
い。従って、これらが転移する前にその転移・再発好発
部に予め薬剤をデポジットしておく方法が合理的であ
る。
【0005】また、近年の外科手術において、内視鏡
(腹腔鏡、胸腔鏡等)を用いることによって、患者の腹
部や胸部にわずか1〜3cmの小さい開口部を作成し、肺
癌、胃癌などの胸腔や腹腔内腫瘍の手術が可能になっ
た。この手段は患者に対する侵襲・負担(ストレス)が
最少となり患者の手術後の回復等において大変有用な手
段である。しかしながら、手術中または手術後の胸腔や
腹腔内でのいわゆる癌細胞の播種を完全に予防すること
は内視鏡下であるためより困難であり、かなり高頻度、
場合によっては数十パーセントの確率で癌性胸膜炎や腹
膜炎を併発(再発)する。
【0006】このように癌治療においては、手術後の見
かけ上正常な局所での癌の再発あるいは転移の予防が重
要な課題となっているが、現在癌の転移の有効な防止方
法が確立されていないのが現状である。手術中または手
術後の癌細胞の播種による再発を予防する目的に対し
て、これまで、手術後に制癌剤を投与することがしばし
ば行なわれ,そのための制癌剤も数多く開発されている
が、その何れにおいても、みるべき有効性が認められて
いない。その理由は、これらの在来型の制癌剤は、いず
れも低分子型の薬剤であるため、体腔内に直接投与して
も、体腔内から数分以内に薬物が拡散によって血管内
(血中)へ移行し、全身性に分布、排泄されることとな
り、制癌剤の体腔内で選択的にその濃度を持続的に高く
維持できないことにある(図2、図3)。それのみなら
ず、低分子型制癌剤ではそれが全身に分布することにな
り、その毒性が全身にいきわたり骨髄抑制や腎毒性、更
には免疫抑制などの副作用が強く発現し、何れの文献で
もこのような薬剤による予防治療法で有効な成績の報告
がないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】外科手術後の癌の再発
が、主として手術時に完全に除去されなかった微小な付
着残存腫瘍が体腔内に播種し、あるいは癌細胞が血液を
経由する血行性、またはリンパ液(リンパ系)を介する
リンパ行性のメカニズムにより癌細胞が他の臓器に移動
して転移先で増殖し再発の原因となることを考慮すれ
ば、体腔内に残存し付着する癌細胞を絶滅することがで
きる制癌剤を、あらかじめ転移が予想される正常臓器,
正常細胞局所の存在する胸腔、腹腔等の体腔内に散布、
滞留させ、または転移の経路となる血管やリンパ節等に
投与し、それが体腔内に長期間残存して播種性の癌のめ
ばえを除去すれば、転移・再発を大幅に制御することが
できる。
【0008】本発明の発明者は、この問題の解決のため
には、高分子化された薬剤、更にはそれを油性化した製
剤を用いるのが最も有効な手段であると考え、高分子型
薬剤を用いれば他の臓器へ拡散したり、血管内へ移行す
ることなく、長期間にわたり、その体腔内に滞留し、そ
の間、接触する腫瘍細胞を殺傷し、播種性の再発予防作
用を発揮することに着目した。さらにまた、体腔内は免
疫性炎症性細胞(マクロファージや好中球やリンパ球)
が最も豊富に存在している場所であり、これらの細胞に
対して活性化能を有する薬剤を高分子化および油性化し
た制癌剤として体腔内に投与すれば、宿主の免疫力を最
も効率よく高めるためには最適の方法であることに着目
し、高分子型の制癌剤を癌転移予防剤として用いること
によってこの問題を解決することを試みた。
【0009】発明者らはこれまでに、ネオカルチノスタ
チン(NCS)がスチレン−マレイン酸共重合体残基
(SMA)と結合したネオカルチノスタンチン誘導体
で、高分子型の制癌剤であるスマンクス(SMANC
S)について数多くの研究を行ない、またそれの静脈注
射用、動脈内注射用油性製剤、或いは経口投与による治
療薬としての使用方法等について研究開発を行なった
(日本特許第1,549,302号,第1,549,302号,1,545,131号,
2,556,865号、米国特許第5,389,366号)。
【0010】これらの研究は専らスマンクスを治療薬と
して現存する腫瘍患部に直接投与し,原発癌を治癒する
目的で用いるものであった。しかしその後、スマンクス
が従来の治療薬と異なり、高分子型制癌剤であることか
ら、これをあらかじめ転移が予想される正常臓器近傍の
体腔あるいは転移経路となる血管、例えば門脈やリンパ
管に手術前、手術時または手術後に投与すれば、投与個
所以外の健常な他の臓器への拡散や血管内へ移行するこ
となく、再発あるいは播種性腫瘍細胞の生着しやすい正
常部の臓器・組織に長期間滞留し、万一浸潤・播種したあ
るいは手術後になお残存する腫瘍細胞をも殺傷し,播種
性の転移再発予防作用を発揮するので、このような高分
子型制癌剤は、癌転移予防剤として用いると特に有効で
あることを見出した。また在来の低分子化合物型の制癌
剤においても、これを高分子化合物と結合させて高分子
化することにより、同様に癌の転移再発防止に有効であ
ることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、制癌作用
を有する薬剤が高分子化合物と結合した制癌剤であっ
て、固形癌切除手術中または手術後の正常臓器または正
常細胞への癌転移及び再発予防のため、外科手術前、手
術時または手術後に、転移好発部位近傍の体腔内または
転移好発部位への転移経路に投与する高分子型癌転移・
再発予防剤である。
【0012】本発明は特に、ネオカルチノスタチン(N
CS)がスチレン−マレイン酸共重合体残基(SMA)
と結合したネオカルチノスタンチン誘導体である”スマ
ンクス”(ジノスタチンスチマラマー)を有効成分とす
る高分子型癌転移予防剤及びそれを用いた癌転移予防方
法である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の高分子型癌転移・再発予
防剤は、制癌作用を有する成分を有効成分とし、それを
高分子化合物と、共有結合、イオン結合等により結合さ
せ、高分子化することにより得られる。
【0014】上記制癌作用を有する成分としては、生体
親和性があり、高分子化合物と結合し、高分子型癌転移
予防剤を形成し得るものであれば、高分子でも低分子で
あっても、とくに限定されないが、例えば、ネオカルチ
ノスタチン、マイトマイシン、ドキソルビシン、シスプ
ラチン等を例示することができる。
【0015】高分子型癌転移・再発予防剤を形成させる
ための高分子化合物としては、スチレン−マレイン酸共
重合体、ポリアミノ酸、ヒドロキシプロピル・メタアク
クレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチ
レングリコール、ポリビニルアルコール,可溶性ゼラチ
ン、キチン類、プルラン、デキストラン類、澱粉等を挙
げることができる。
【0016】これら高分子化合物と薬剤との組合せで得
られる高分子型制癌剤として表1のものを例示すること
ができる。
【0017】
【表1】 (注)SMA:スチレンーマレイン酸共重合体 PEG:ポリエチレングリコール PPG:ポリプロピレングリコール HMPA:ヒドロキシプロピルメタクリレートコポリマ
ー PVP:ポリビニルピロリドン
【0018】このような高分子型癌転移・再発予防剤は
生体内に投与されると、アルブミン等と結合し、見かけ
上の分子量は更に高くなり、尿とともに排泄されること
なく、体腔内に長期間滞留して癌再発防止効果を促進す
る。本発明においては、この生体内での挙動分子量が4
万以上であることが望ましい。挙動分子量がこれより低
いと体腔内の目的とする部位に長期間滞留せず、血中や
他の臓器へ自由に拡散し、癌転移・再発予防剤の体腔内
濃度を上げることができず、薬効が充分発揮されない。
そのためには癌転移予防剤自体の分子量が、高分子量で
あることが必要であり、平均分子量が10,000以上
であることが好ましいが、それ以下であっても、アルブ
ミン等と結合して生体内での挙動分子量が4万以上とな
るものであれば本発明の目的を達成することができる。
【0019】上記各種の高分子型体腔内投与用癌転移予
防剤のうち、特にスマンクスが最適である。スマンクス
(SMANCS)は、ネオカルチノスタチン(以下NC
Sという)がスチレン−マレイン酸共重合体(以下SM
Aという)と結合し、高分子化されたものである。
【0020】ネオカルチノスタチンは、ストレプトミセ
ス・カルチノスタチカス・バリアントF−41 クロヤ
(Streptomyces carzinostaticus var. F-41・Kuroy
a)の培養物中に産性されるタンパク質性抗癌物質であ
り(特公昭42-21752号、米国特許3,334,022)であり、そ
の一次構造は本発明の一人である前田によって、アミノ
酸総残基数が109の推定分子量10,700のものとして報告
されている(Science 178巻、875〜876頁(1972年)、
及びArch.Biochem,Biophys.,163巻、379〜385頁)。
【0021】このネオカルチノスタチン(NCS)がス
チレン−マレイン酸共重合体(SMAという)と結合
し、高分子化されたスマンクスの構造は日本特許第2,55
6,865号その他に記載されているように下記式(1)を有す
るものである。
【0022】
【化1】 [SMA]−[NCS]−[SMA] (1) 式中、[NCS]はネオカルチノスタチンの1位のアラニ
ン残基中の1級アミノ基および20位のリジン残基中の1級
アミノ基からそれぞれ1個の水素原子を除いた2価のネオ
カルチノスタチン残基を意味する。
【0023】また式中[SMA]は (a)下記式(2)を有するスチレン残基
【化2】 (b)下記式(3)を有するマレイン酸残基
【化3】 及び任意成分として、
【化4】(c)下記式(4)を有する半エステル化マレイ
ン酸残基 (式中Rは炭素数が1ないし4のアルカノール、アルキ
ル基の炭素数が1または2のエチレングリコ−ルモノアル
キルエーテル、もしくはアルキル基の炭素数が1または
2のグリセリンジアルキルエーテルから水酸基を除いた
アルコール残基である。)とを構成単位とし、かつ
(b)及び/または(c)中の少なくとも1部は、式(3)
及び/または(4)において、分子中の1個のカルボキシル
基から水酸基が除かれ、該ネオカルチノスタチン残基と
の結合手を有する下記式(5)及び/または(6)の構造とな
っている、1価の部分半エステル化されていても良いス
チレンマレイン酸共重合体残基を意味する。
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】[SMA]は、分子中に上記式(5)、(6)に示
されるマレイン酸残基及び/または半エステル化マレイ
ン酸残基中のカルボキシル基から水酸基が除かれたカル
ボニル基の炭素原子の結合手を有し、これによって、
[NCS]と結合し、高分子型制癌剤が形成されている。
【0027】スマンクスの代表的なものは、SMAにお
ける半エステル化されていても良いスチレンマレイン酸
共重合体残基が、半ブチルエステル化スチレンマレイン
酸共重合体残基である化合物(Bu−SMANCS)である。
【0028】スマンクスは免疫性炎症性細胞(マクロフ
ァージや好中球やリンパ球)が最も豊富に存在している
体腔内で、これら免疫系の活性化能に特に優れた薬剤で
あるのみならず、芳香族環を有するために、体腔内で血
清アルブミンと容易に結合し、見かけ分子量は更に高く
なり体腔内に長期間滞留して癌の転移再発防止効果を最
大限に発揮するので、本発明の目的に最も適した癌転移
予防剤である。
【0029】スマンクス等、高分子化合物との結合物で
ある高分子型癌転移予防剤は更に高級脂肪酸グリセライ
ド、中鎖脂肪酸トリグリセライド、同ジグリセライド、
大豆油、オリーブ油、その他植物油あるいは油性造影剤
(例:ピリオドール)等により懸濁溶解して用いること
ができる。また必要に応じ、他の精製油を配合すること
ができる。例えばスマンクスは、1mgを2mlの油性造影剤
に超音波により懸濁溶解したものを油剤とし、その懸濁
溶解油剤を胸腹腔内には通常1〜4mg用いる。また、生理
食塩水、8%重曹溶液、5%グルコース液等の水溶液で用
いても差し支えない。その他脂肪酸トリグリセリド、脂
肪酸およびそのエステル類、オリーブオイル、綿実油、
オレイン酸、大豆油、その他植物油を用いることができ
る。
【0030】本発明の高分子型癌転移・再発予防剤は、
固形癌外科手術時の転移予防及び再発防止用として、ま
だ癌細胞の見出されない正常組織や正常臓器及び外科手
術によって肉眼的には検知不可能で、見かけ上根治した
局所に長期間滞留させることを目的とし、そのために腹
腔や胸腔等の体腔あるいは癌の転移経路となる血管、例
えば門脈やリンパ管等に投与させるものであり、特に正
常臓器または正常細胞への癌転移予防のため、転移好発
部位近傍の体腔内または転移好発部位への転移経路に投
与する転移予防剤として用いるのが有効である。治療対
象の癌としては肺癌、胃癌、肝臓癌、大腸癌等、体腔内
のすべての固形癌に適用することができ、また膵臓、胆
のう、卵巣の腫瘍に対する手術時に使用することができ
る。
【0031】投与する時期は外科手術直前、手術時ある
いはその直後であり、注射器、スプレ−等にて投与し、
或いはガーゼに染み込ませて塗布することができる。ま
た体内で溶解する物質、例えばフィブリン、ゼラチン、
プルラン等に吸収させたスポンジあるいは被膜等の形態
で投与しても良い。
【0032】投与する場所は腹腔、胸腔等の体腔に直接
してもよいが、血行性あるいはリンパ節性播種転移の経
路となる門脈等の血管、あるいはリンパ管内等に投与す
ることができる。
【0033】
【実施例】[製造例1](スマンクス油剤の調製) 高分子型制癌剤スマンクス(山之内製薬製、化学名、ス
チレンマレイン酸共重合体半ブチルエステル結合ネオカ
ルチノスタチン、別名ジノスタチンスチラマラー、分子
量約1万5000であるが、体内ではアルブミンと結合し、
見かけ上の分子量は約8万となる)1mgを2mlの油性造影
剤”リピオドール”(フランス・ゲルベ社、 Laborato
ire Guerlbet 社製)に超音波により懸濁溶解したも
のを油剤とし、これを各実施例にて用いた。
【0034】[実施例1](高分子型制癌剤スマンクスに
よる VX-2 肺腫瘍の外科手術後の再発予防効果) 家兎30羽(平均体重2.7kg)にペントバービタール・ナ
トリウムを静脈内投与し、麻酔下に正中より開胸術をほ
どこし、左右両葉下部被膜下にVX-2腫瘍を各葉1〜2mmサ
イズの小片をとり移植する。ついで絹糸にて開口部を縫
合し、ミノサイクリン軟膏を縫合部に塗布しテーピング
し、普通食にて飼育し、約10〜20日間、腫瘍を増殖させ
る。ついで、上記同様にペント・バービタール・ナトリ
ウムを投与し、麻酔下に、開胸術を施行し、肺両葉部に
生育した腫瘍を切除し、断端部を絹糸にて縫合する。
【0035】そのうち、第1群の10羽に対して、リピオ
ドールに懸濁溶解したスマンクス(1mg/2ml)の0.5mg
(1.0ml)を胸腔内に広く散布し、開胸部を上記に準じ
て縫合し閉じる。また比較のため、第2群として、ウサ
ギ10羽に対し、第1群に準じ腫瘍部を切除し、断端部を
縫合し、低分子型制癌剤であるマイトマイシン1mg/5ml
の水溶液の1ml(0.2mg/1.0ml)を同様に胸腔に広く散布
し、開胸部を再び縫合し、テーピングし、閉じる。更に
第3群としてウサギ10羽に対し、腫瘍部の切除術を施行
し、断端部を縫合したものを対照群として、制癌剤を投
与せず、生理食塩水1.0mlのみを投与し、上記に準じて
縫合、閉じる。
【0036】以上、3群について、50日後の生存率なら
びに生存ウサギの開胸部の肉眼所見による存在腫瘍の有
無により、薬効を評価した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】表2から明らかなように、高分子型制癌剤
であるスマンクスを投与した群は、マイトマイシン投与
群及び制癌剤無投与の群に比べて、肺腫瘍の外科手術後
の再発予防効果が優れている。
【0039】[実施例2](高分子型制癌剤スマンクスに
よるラットモデルにおける肝臓癌切除後の腹腔内播種・
癌性腹膜炎の予防化学療法) ドンリュウラット230g〜310g、雄または雌30匹をペント
・バービユチレート・ナトリウム静脈注射により麻酔
し、上腹部を約5cm切開、開口し、肝臓を露出し、別の
ドンリュウラットで腹水癌として腹腔にて継代培養した
AH136B腫瘍2×106/mlを1mlダルベッコMEM培地にて懸濁
し肝被膜上に散布、播種性腹腔内転移のラットモデルを
作成する。すなわちこれを手術時の腫瘍播種モデルとす
る。次にラットを次の3群に分け別々の処置を行う。第
1群は高分子型制癌剤スマンクス/リピオドール懸濁液
投与群で、スマンクスは1.0mg/kgとし、リピオドールの
1.0ml(約0.3mg含有)にスマンクスを懸濁し腹腔内に広
範に散布したものを用いる。第2群は低分子型制癌剤の
代表例としてのマイトマイシンC(協和)投与群で、1.0
mg/kg投与量で、この薬剤約0.3mgを5%グルコース2mlに
溶かし、腹腔内に散布、投与する。第3群は制癌剤を投
与せず、5%グルコース2ml投与のみの対照群である。
1、2群の薬剤は両者とも最大耐量の1/2〜1/3以下であ
る。薬剤投与後、何れのグループも絹糸により開腹腔部
を縫合し、テトラサイクリン軟膏塗布後テーピングす
る。結果を表3に示す。
【0040】
【表3】AH136B の腹腔内播種モデルにおける腹腔内播
種の予防・治療効果
【0041】表3から明らかなように、高分子のスマン
クス投与の群のみが腹水癌(癌性腹膜炎)の発生をほぼ
抑制した。
【0042】[実施例3](ヒト肺線癌に対する手術切除
時の補助化学療法) ヒト肺腺癌患者(67才、女性)で、腫瘍は肺左葉下端に
孤立性の直径約3cm腫瘍を有した。通常の開胸手術によ
り、肺部の腫瘍は完全治癒切除を施行した。ついで、開
胸中の胸腔内にスマンクス/リピオドールをプラスチッ
クシリンジに吸入しその約3ml(スマンクス3mg含有)を
広範囲に0.05ml〜0.1mlの少量ずつ胸腔内に散布、次い
で縫合し、長期にわたり予後の観察を行った。X線等に
よる画像診断(胸部X線またはCT像)および超音波画像
診断を、投与後初期は毎月、6ヶ月以後は約3〜6ヶ月に1
回の割合でX線胸部写真撮影を行った。この症例では8
年経過後も腫瘍陰影・胸水ともになく、再発・播種性の
癌性胸膜炎の徴候もなく完全治癒と考えられた。同様の
症例でさらに14例、何れも左または右、あるいは両葉
の末端部に孤立性の腫瘍結節1〜3個を有する症例で、こ
れら腫瘍結節に対し、何れも完全治癒切除を行ったの
ち、上記同様に約3ml(3mg)のスマンクス/リピオドー
ルを散布した。これらに再発は肺内部再発1例のみで、
1〜4年経過後、他はすべて再発なく、さらに経過観察
であるが本治療法の有効性が証明された。
【0043】[実施例4](薬剤投与後の腹腔内濃度と血
中濃度の時間的変化) 低分子型制癌剤マイトマイシンCおよびドキソルビシ
ン、さらに高分子型制癌剤スマンクスおよび高分子のモ
デル化合物としての放射線クロム標識ウシ血清アルブミ
ンの合計4種の化合物を用い、ラットAH136B腹水型肝癌
(腹水癌)を有するラットの腹腔内にこれら各種薬剤投
与後の腹腔内濃度と血中濃度の各々について、時間的推
移の関係を検討した。
【0044】使用したドキソルビシンは放射性14C誘導
体(NEN社、Boston,MA,USA)の放射活性により、ま
た、マイトマイシン(シグマ社)およびスマンクスはグ
ラム陽性細菌のミクロコッカス・ルテウスに対する抗菌
活性により、何れも腹水中(腹腔内)と血中濃度を測定
した。
【0045】高分子性制癌剤のモデル化合物として血清
アルブミンのリジンのアミノ基に対し、等モル倍のキレ
ート剤ジエチレン・トリアミン・ペンタ酢酸(DTPA)酸
無水物を加え、pH8.5の5%重炭酸ソーダ溶液中でDTPAの
付加反応を行い、DTPA結合アルブミンを得た。これに対
し、γ線放射性の三塩化クロム(51CrCl3)をDTPAと等
モル量添加し、キレート結合させた。クロム(51Cr)を
加えるとDTPA基に放射性クロムはただちに結合する。こ
の反応混合物をセファデックスG-50カラムを用い、低分
子分画のDTPAの試薬とその分解物、遊離のクロムを除去
し、また未反応のDTPA結合クロムと、DTPA51Cr(放射性
化)タンパクとを、生理食塩水を溶出に用い分離した。
放射活性を生理食塩水により希釈し一定濃度に調整し、
以下の動物実験に用いた。
【0046】これら4種の薬物、即ちスマンクス
(A)、ドキソルビシン(B)、マイトマイシン
(C)、アルブミン(D)をラット尾静脈より、マイト
マイシンは4mg/kg、スマンクスは5mg/kg、ドキソルビシ
ンおよびアルブミンは各々250万cpm相当を目安に注射し
た。各時間ごとにエーテル麻酔下にラットを屠殺し、血
液、腹水、その他各臓器を分離し、前述の方法により、
各々その濃度を定量して、各薬剤の投与後の腹腔内濃度
及び血中濃度の時間的変化を調べた。腹腔内投与後の腹
腔内残存率と血中移行性の時間経過を図1(スマンク
ス)、図2(ドキソルビシン)、図3(マイトマイシ
ン)、及び図4(アルブミン)に示す。図1〜4におい
て、横軸はいずれも時間であるが、縦軸は図1及び図3
においては生物活性(抗菌活性)、図2及び図4において
は放射活性により表した。また図中、○は腹腔内濃度、
●は血中濃度を示す。
【0047】その結果、体腔(腹腔)内に投与した高分
子のスマンクス(図1)および、高分子制癌剤のモデル
化合物としてのアルブミン(図4)は、血中に移行する
ことなく長期間にわたり体腔内に滞留した。これに対
し、低分子のマイトマイシン(図3)及びドキソルビシ
ン(図2)は両者とも、腹腔内に投与すると速やかに血
中に移動し、腹腔内濃度と血液中濃度は速やかに平衡化
した。このことから、高分子型制癌剤は、体腔内での薬
物濃度が長期間、充分に高い分だけ、体腔内投与によ
り、胸腔や、腹腔内に播種した癌細胞を除去するのに有
利になることが証明された。このことが、これら部位に
おける手術時の播種性癌細胞の増殖の阻止・予防に有用
な手がかりになると考えられた。また、全身性(血行
性)に移行しない高分子型制癌剤はそれだけ全身性の副
作用が少ないと考えられた。これに対し、低分子のマイ
トマイシンおよびドキソルビシンは腹腔内より、30〜60
分以内にほぼ完全に血中へ移行し、腹腔内濃度と血中濃
度が平衡化している。即ち、これらの薬剤は短時間で全
身に広がっており、腹腔からは消失しているので、目的
とする体腔内での薬効(有効性)は低下し、一方全身性
の副作用を示すことが明らかである。
【0048】[実施例5](ヒト大腸癌切除時の肝転移に
対する予防化学療法) 大腸・直腸癌の外科手術を行なった患者においては、癌
細胞は手術処置中に門脈を通って血行性に播種し肝臓に
転移することが多いと考えられている。その転移の道筋
と考えられている門脈内に、スマンクス/リピオドール
(1mg/ml)を2〜4ml、パルス的にシリンジをプッシュ
し、0.1mL/1回でゆっくりと5-10分かけて注入し
た。その結果、手術3年後で肝に転移癌の発生した症例
は、15例中2例で、他の患者は何らそのような転移性肝
癌の発生はみられなかった。
【0049】大腸・直腸癌の治療の主流は今なお外科的
切除である。しかしながら、その50〜60%は主として肝
に転移性肝癌を生じ、それが原因となって死亡する。生
存者で肝転移癌の発生のあった人、また長期生存者で臨
床症状がなかった人についての死亡時の剖検もあわせた
全症例の検討では、大腸・直腸癌患者の80%が、大腸・
直腸癌の細胞が手術中に剥離し、肝に転移性の腫瘍娘結
節を作っているという報告もある。これは主として、癌
細胞が手術処置中に門脈を介して血行性に播種するため
であると考えられている。
【0050】在来より、このような大腸癌の肝臓への転
移予防に対し5-フロロウラシル(5FU)や5FU+ロイコボ
リンあるいはマイトマイシンなどの低分子型制癌剤の門
脈内投与、あるいは門脈内持続14日間注入投与などが試
みられたが、何れも対照群に比し有意な差はみとめられ
ず、転移予防化学療法として実用に推奨される方法はな
かった。一応有意な差があるという報告でもその差は僅
かである。これに対し、実施例5の結果から、本発明の
高分子型制癌剤の使用によりその薬効が長期間その肝局
所内に維持できることがわかり、これにより癌の予防化
学療法が可能となった。
【0051】 [実施例6](スマンクスの癌転移予防効果の例) 白色家兎の肝臓被膜内にVX−2癌の2〜3mm角片を
移植し,その腫瘍径が10〜20mmになったところで
A,B2群に分け、スマンクス/リピオドールを治療的
投与のみ行なった場合と、予防的投与を併用した場合と
の比較を行なった。A群(8羽)には従来の治療的投与
法に従い、エーテル麻酔下に開腔した各兎の肝動脈内
に、1mgのスマンクスを1mlのリピオドールに懸濁
・溶解した薬剤0.2mlを投与した。一方、B群(13
羽)にはA群と同様の薬剤投与に加えて、スマンクス/
リピオドール0.2mlを腹腔内に散布した。これら両群
の成績を、(1)本来癌細胞のなかった腹腔内での癌の播
種・癌性腹膜炎等の発生の有無、(2)300日経過後の
生存率の両面で調べた。その結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】表4の結果から明らかなように、スマンク
スの予防的腹腔内投与は正常組織部での癌の播種・転移
・増殖・再発を予防することがわかる。
【0054】
【発明の効果】本発明は、スマンクスを始めとする高分
子化合物との結合物である高分子型制癌剤を、固形癌の
外科手術時に胸腔内や腹腔内の局所に散布することによ
り、それがこれら体腔内局所に長期間高濃度によく残存
し、これにより手術後の再発と播種性転移癌の発生の予
防法として有用であるとの発明者の新知見に基づき、こ
れを固形癌外科手術時の体腔内に投与する補助化学療法
剤としての新たな効能を見出したもので、これにより在
来の低分子型制癌剤では不可能であった体腔内の固型癌
の手術中または手術後の癌転移及び再発予防治療剤とし
ての有用性を初めて可能とし、高分子型制癌剤の新たな
使用法として癌治療の効果向上に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 高分子型制癌剤スマンクスを担癌(AH136腫
瘍)ラットの腹腔内に投与したときの、腹腔内残存率と
血中移行性の時間経過を示す図である。
【図2】 低分子型制癌剤ドキソルビシンを担癌(AH13
6腫瘍)ラットの腹腔内に投与したときの、腹腔内残存
率と血中移行性の時間経過を示す図である。
【図3】 マイトマイシンを担癌(AH136腫瘍)ラット
の腹腔内に投与したときの、腹腔内残存率と血中移行性
の時間経過を示す図である。
【図4】 高分子のモデル化合物として放射化アルブミ
ンを担癌(AH136腫瘍)ラットの腹腔内に投与したとき
の、腹腔内残存率と血中移行性の時間経過を示す図であ
る。
【符号の説明】
○:腹腔内濃度 ●:血中濃度を示す。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 制癌作用を有する薬剤が高分子化合物と
    結合した制癌剤であって、固形癌切除手術中または手術
    後の正常臓器または正常細胞への癌転移及び再発予防の
    ため、外科手術前、手術時または手術後に、転移好発部
    位近傍の体腔内または転移好発部位への転移経路に投与
    する高分子型癌転移・再発予防剤。
  2. 【請求項2】 スチレン・マレイン酸共重合体、ポリア
    ミノ酸、ヒドロキシプロピル・メタアククレートコポリ
    マー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコー
    ル、及びポリビニルアルコールまたはそのエステル類か
    ら選ばれた高分子化合物と結合した請求の範囲1記載の
    高分子型癌転移・再発予防剤。
  3. 【請求項3】 平均分子量が10,000以上である請
    求の範囲2記載の高分子型癌転移・再発予防剤。
  4. 【請求項4】 高分子型癌転移予防剤がスチレン−マレ
    イン酸共重合体残基と結合したネオカルチノスタチン誘
    導体を有効成分とする請求の範囲2または3に記載の高
    分子型癌転移・再発予防剤。
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JP2010013411A (ja) * 2008-07-05 2010-01-21 Hiroshi Maeda 抗炎症剤
WO2011049042A1 (ja) * 2009-10-21 2011-04-28 日本化薬株式会社 腹腔内投与用の抗がん剤含有ブロック共重合体、ミセル調製物及びそれを有効成分とする癌治療薬

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