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dah

ファンタズムのdahのレビュー・感想・評価

ファンタズム(1979年製作の映画)
3.6
子供の頃に観て強烈に脳裏に焼き付けられ、忘れられなくなってしまったホラー映画です。

他の何とも似ていません。
主人公の少年はある日、墓地で奇妙な影を見かけ、棺を運ぶ異様な風貌をした2メートル近い長身の男に遭遇します。一目で只者ではないと悟った少年…その男は悪魔なのか、異星人なのか、はたまた別次元の世界からやってきた魔人なのか…そのどれとも言えるし、どれでもないようにも見えて…見ようによってはSFにも見える、なんというんでしょうか、ノージャンルなホラー…?とにかく独創的で得体の知れない気味の悪さが全編に漂い続けます。

それにしても、監督はいったいどこからこんなインスピレーションを得たのでしょう。
子供の見る悪夢、その不条理さも含めてそのまま映画にしたようなシーンの連続…その象徴とも言うべき存在が前述の長身の男(トールマンという俗称が付いているキャラクター)と、そのトールマンのアジトである墓地の館の番人ともいえる銀色の謎の球体です。この球体、無重力のようにスーーーッと自動追尾よろしく飛び回り、侵入者の息の根を止めるまで執拗に追い続けるんですが…一度見たら忘れられない強烈なインパクトを残します。そして、少年がついに垣間見るトールマンと墓地の正体…これも訳が分からないですが、謎を残したままなんの解決にも至っていないのが逆に良い効果の後味の悪さを残していて、これも僕がこの映画を忘れられない一因になっています。

ファンタズムがカルト的な人気を得てその後シリーズ化されパート5まで続いたのは、このあまりにも不思議な世界観の虜になった人が多かったからでしょうね(僕もそのひとり)。この映画でトールマンという当たり役を得た俳優アンガス・スクリムさんはパート5まで出演されます。


パート2以降はちょっとトーンダウンしてしまう(ように感じる)んですが…。この第一作目が持っている雰囲気が僕にはたまらなくて、それでトラウマ映画になってるんですよね。
それは、僕が主人公と同じ年ぐらいの少年だった頃に観たという事と、この映画の中での少年の行動パターンの描き方に起因するのかなと思っています。
子供の頃って、なにかと好奇心の塊ですよね。特に、怖いものなんか、やめときゃ良いのに好奇心の方が勝ってつい手が出てしまう。怖くてたまらないのに覗かずにはいられない。そんな少年の心情が見事に描かれていて誰もが共感でき、それが故に残酷なまでにか弱い少年がその悪夢に引きずり込まれてゆく様を、絶望感にも似た気持ちで見守り続けていく…心の奥がキューーンとしてしまう感覚。これが、クセになるような快感(僕はヘンタイ…?)なのかもしれません。

最後に、テーマ音楽。大人になっても鮮明に思い出せるほどに、ずーっと耳に残っています。僕にとってはホラー映画の好きなテーマ曲でまず思い浮かぶのは、かの有名なエクソシストの「チューブラーベルズ」よりも、このファンタズムのテーマです。
dah

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