WO2023112150A1 - 低分子量アルギン酸化合物を含有するオーラル製品および当該製品用の組成物 - Google Patents

Abstract

重量平均分子量が１０，０００～９００，０００である、アルギン酸、その塩、そのエステル、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアルギン酸化合物を含有する、オーラル製品用組成物を提供する。

Description

低分子量アルギン酸化合物を含有するオーラル製品および当該製品用の組成物

　本発明は、低分子量アルギン酸化合物を含有するオーラル製品および当該製品用の組成物に関する。

　スヌースのようなオーラルたばこ製品が知られている（例えば特許文献１）。使用者は当該製品を口腔内に入れて使用する。一方、食品飲料等に使用される機能性素材としてアルギン酸が知られている。例えば特許文献２には、アルギン酸を含む飲料が開示されている。当該飲料は、血糖値およびインスリンの上昇を抑制するとされる。また特許文献３には、アルギン酸塩を含むオーラル製品が開示されている。当該製品は添加物の放出速度を調整可能であるとされる。

国際公開２０１２／１３３３６５号 特開平６－７０９３号公報 特表２０１２－５２２７６５号公報

　オーラル製品には、当該製品を使用する際に、唾液が当該製品に浸透するまでの間、口当たりが悪いという課題があった。かかる事情に鑑み、本発明は、口当たりのよい使用感を与えるオーラル製品を提供することを課題とする。

　発明者らは、アルギン酸、その塩、そのエステル、およびこれらの組合せからなる群から選択されるアルギン酸化合物を用いることでこの課題を解決するという着想を得た。そこで、発明者らは市販されているアルギン酸またはその塩を用いて予備的検討を行ったが、課題を十分に解決できなかった。発明者らは、この現象がアルギン酸化合物の分子量が高いことに起因するとの知見を得て、特定の分子量のアルギン酸化合物を用いることで前記課題が解決できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
態様１
　重量平均分子量が１０，０００～９００，０００である、アルギン酸、その塩、そのエステル、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアルギン酸化合物を含有する、オーラル製品用組成物。
態様２
　前記組成物における前記アルギン酸化合物の量が、１～９９重量％である、態様１に記載の組成物。
態様３
　植物由来アルカロイドをさらに含む、態様１または２に記載の組成物。
態様４
　態様１～３のいずれかに記載の組成物を含有するオーラル製品。
態様５
　外装材と、主材と、を備える含有するオーラル製品であって、
　前記外装材または前記主材が、重量平均分子量が１０，０００～９００，０００である、アルギン酸、その塩、そのエステル、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアルギン酸化合物を含有する、
オーラル製品。
態様６
　前記外装材が前記アルギン酸化合物を含む、態様５に記載のオーラル製品。
態様７
　噛みたばこ、パウチ、錠剤、ガム、フィルム、または液体の形態である、態様４に記載のオーラル製品。
態様８
　パウチまたはガムの形態である、態様５または６に記載のオーラル製品。
態様９
　態様１～３のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、
　前記アルギン酸化合物よりも高い分子量を有する原料アルギン酸化合物を、常圧下、９５～１００℃で５０分間以上加熱して、前記アルギン酸化合物を調製する工程、
を備える製造方法。

　本発明によって使用時に口当たりのよい使用感を与えるオーラル製品を提供できる。

　以下に本発明を詳細に説明する。本発明において「Ｘ～Ｙ」はその端値であるＸとＹを含む。オーラル製品とは、口腔に製品を含んだ状態で、唾液を介し有効成分を口腔粘膜より摂取する製品である。オーラル製品は、使用時に燃焼やデバイスによる加熱や霧化を伴わない。

１．オーラル製品用組成物
（１）アルギン酸化合物
　オーラル製品用組成物（以下単に「組成物」ともいう）は、重量平均分子量が１０，０００～９００，０００である、アルギン酸、その塩、そのエステル、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアルギン酸化合物を含有する。

　アルギン酸は、Ｄ－マンヌロン酸（以下「Ｍ」ともいう）と、Ｌ－グルロン酸（以下「Ｇ」ともいう）の２種類のウロン酸からなる直鎖状多糖であり、Ｍ－Ｍ結合のみからなるブロック、Ｇ－Ｇ結合のみからなるブロック、およびＭとＧがランダムに結合したランダムブロックを含む。通常、アルギン酸は褐藻類から製造され、塩またはエステルの形態を含む。本発明においてはアルギン酸、その塩、およびそのエステルを総称して「アルギン酸化合物」という。アルギン酸化合物は種々の方法で製造されるが、本発明においては公知の方法で得られたアルギン酸化合物を使用できる。

　一般に市販されているアルギン酸化合物は分子量が高いので、本発明においては重量平均分子量が１０，０００～９００，０００の範囲となるように低分子化する必要がある。低分子化の方法としては、酸を用いた加水分解法、分解酵素を用いた生分解法、加圧下で加熱する方法（例えば特許文献２）、常圧化で加熱する方法（岩田一幸ら、日本家政学会誌、vol.48、No.9、p.803（1997））が知られている。本発明では、装置の簡便性および製造時の安全性等の観点から常圧下で原料アルギン酸化合物を加熱して低分子化することが好ましい。その温度は、好ましくは９５～１００℃である。また加熱時間は好ましくは５０分間以上である。必要に応じて、有機酸存在下でアルギン酸化合物を加熱してもよい。有機酸としてはクエン酸、リンゴ酸、乳酸、および酢酸等の食品として許容される酸が好ましい。その量は、所望の分子量に応じて適宜調整される。

　本発明で使用されるアルギン酸化合物の重量平均分子量は前述のとおり、１０，０００～９００，０００であるが、好ましくは１２，５００～６０，０００、より好ましくは１５，０００～５０，０００である。重量平均分子量はゲルろ過クロマトグラフィー（ＧＰＣ）によって測定される。

　アルギン酸化合物がアルギン酸塩である場合、カウンターイオンとしてはＮａ^＋、Ｋ^＋、Ｃａ^２＋、またはＭｇ^２＋が挙げられる。アルギン酸化合物がアルギン酸エステルである場合、例えばプリピレングリコールエステルであってよい。

　組成物における前記アルギン酸化合物の量は、好ましくは１～９９重量％であり、より好ましくは５～５０重量％である。

　前記アルギン酸化合物は、高分子量のアルギン酸化合物と同様に、グルコース負荷時の血糖値およびインスリン値の上昇を抑える効果も期待できる。したがって、本発明のオーラル製品用組成物を含むオーラル製品は、一態様において食事中または食後に使用されてもよい。

（２）植物由来アルカロイド
　組成物は植物由来アルカロイドを含んでもよい。植物由来アルカロイドとは窒素原子を含む塩基性有機化合物である。植物アルカロイドとしては、ニコチン、カフェイン、テオブロミン、カプサイシンのような成分等が挙げられる。また、組成物への前記成分の配合形態としては、前記成分を含有する植物体および植物体を加工した再構成材料、前記成分を含有する植物体由来抽出物、または担持物質や塩等にて安定化させた前記成分を含有する原料等が挙げられる。

　植物由来アルカロイドとしては、ニコチン、ニコチン含有原料、またはこれらの組合せが好ましい。ニコチン含有原料とは、ニコチン塩や安定化させたニコチン等のニコチンを含む原料をいう。カフェイン、テオブロミン、カプサイシン等の他の植物由来アルカロイド含有原料についても同様である。安定化させたニコチンとしては、例えばイオン交換樹脂に担持させたニコチン等のニコチン担持物質が挙げられる。イオン交換樹脂として、弱酸性陽イオン交換樹脂を挙げることができる。ニコチンが担持されたイオン交換樹脂として、具体的にニコチンポラクリレックスと呼ばれる、例えば１０重量％以上、２０重量％以下のニコチンを含有する樹脂複合体を用いることができる。ニコチンポラクリレックスで用いられるイオン交換樹脂は弱酸性陽イオン交換樹脂である。ニコチンポラクリレックスを用いる場合、組成物に対する添加量は、通常０．５重量％以上であり、１．０重量％以上であることが好ましく、２．０重量％以上であることがより好ましい。一方、風味の観点から、組成物に対するニコチンポラクリレックスの添加量は、通常１５．０重量％以下であり、１２．０重量％以下であることが好ましく、１０．０重量％以下であることがより好ましい。

　また、ニコチン含有原料は、例えばたばこ葉を粉砕したたばこ粉末を含むたばこ材料であってもよい。たばこ粉末は、乾燥したたばこ葉のラミナの刻み、微粉、または繊維等を含んでもよく、例えば後述する方法によって調製される。本発明において、たばこ葉は、葉肉（ラミナ）、葉脈（ステム）、または根を含んでもよい。前記たばこ材料は、基本的にたばこ葉のラミナから得られるたばこ粉末の他に、たばこ葉の中骨や根に由来する要素を含んでいてもよい。

　たばこ粉末の粒径は限定されないが、口腔内でのなじみを良好にして使用感を高めることと、たばこ粉末に含まれる香味成分の口腔内への放出を良好にする観点から、１．２ｍｍのメッシュを通過したものであることが好ましく、１．０ｍｍのメッシュを通過したものであることがより好ましい。

　たばこ粉末の原料となるたばこ種は特に限定されず、例えばニコチアナ属であり、ニコチアナ・タバカムの黄色種、バーレー種、ニコチアナ・ルスチカのブラジリア種などを例示できる。後述するたばこ材料およびたばこ葉についてもこれらと同じ種を使用できる。

　たばこ粉末は以下のようにして調製されることが好ましい。まず、たばこ葉を粉砕して得たたばこ粉末に対して、塩基を添加して混合する。添加する塩基としては炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムを挙げることでき、水溶液として添加することが好ましい。また、例えばオーラルパウチ製品製造時のニコチン安定化のため、リン酸二水素ナトリウムのようなｐＨ調整剤を添加してもよい。塩基の添加後の混合物のｐＨは８．０～９．０に調整されることが好ましい。この混合物における、たばこ粉末の含有率は、６０～９０重量％であることが好ましい。

　塩基を添加した後、例えば品温が６５～９０℃、好ましくは品温が７０～８０℃となる条件で、例えば０．５～３時間、好ましくは０．８～２時間加熱を行う。これにより、たばこ粉末の殺菌が行われる。加熱は、蒸気注入による加熱と、ジャケットによる加熱のどちらか一方または両方により行うことができる。加熱後の混合物のｐＨは８．０～９．０であることが好ましく、加熱後の混合物の含水率は１０～５０重量％であることが好ましい。

　加熱後、得られた処理たばこ粉末に対して必要に応じて蒸気注入を止めてジャケットのみの加熱を行ない、乾燥処理を行う。その後、１５～２５℃程度で１時間程度、冷却する態様を挙げることができる。

　たばこ粉末を含むたばこ材料を用いる場合、前記組成物に対するその添加量は、通常０．００１重量％以上であり、０．０１重量％以上であることが好ましく、０．０５重量％以上であることがより好ましい。一方、風味の観点から、前記組成物に対するその添加量は、通常９０重量％以下であり、好ましくは８０重量％以下、７０重量％以下、４５重量％以下、４０重量％以下、または３０重量％以下である。

　ニコチン含有原料は、たばこ葉等のニコチン含有物質を抽出することにより得られるニコチン含有抽出液であってもよい。

　上記の態様の中でも、的確なニコチンの供給や、取扱い易さの観点から、ニコチン担持物質を用いることが好ましい。また、通常、たばこ粉末を添加した場合、組成物やオーラル製品の色がたばこ葉の色となる傾向がある。一方で、無色のニコチン含有化合物を用いた場合、白色の組成物やオーラル製品を提供することが可能となる。白色のオーラル製品を好む使用者にとって、このような態様は利点である。上記の原料は、１種を用いてもよいし、２種以上を併用してもよい。

　組成物中の総ニコチンの含有率は、限定されないが、ユーザーの嗜好性の観点から、通常０．１～２０．０重量％である。したがって植物由来アルカロイドとしてニコチン含有原料を用いる場合は、総ニコチン含有率がこの範囲になるように当該原料の量は調整される。ニコチンがイオンとして存在する場合、上記の含有率は、ニコチンイオンとしての含有率である。前記組成物中のニコチンの含有率は、ガスクロマトグラフィー質量分析計（ＧＣ－ＭＳ）、液体クロマトグラフィー（ＬＣ、ＵＶ検出）等で測定することができる。

　上記以外の成分は、最終形態であるオーラル製品の形態によって適宜選択される。以下、主としてオーラルパウチ製品用の組成物に用いられる成分について説明する。

（３）基材
　組成物は、基材を含有することが好ましい。基材は、特に限定されず、水分を吸着および保持できる多糖類または多孔質構造体等が挙げられる。具体的には、基材は、セルロース、微結晶セルロース（ＭＣＣ）、球状セルロース、および多孔質セルロースからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。中でも前記組成物のかさ密度調整の自由度および白色を呈する観点から、セルロースであることがより好ましい。これらの物質は、１種類を単独で用いてもよく、また、２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　組成物中の基材の含有率（基材を２種類以上含有する場合は、それらの総含有率）は、限定されない。しかしながら製造中または製品保管中における水分の溶出を抑制して品質向上を図るという観点、および製品の白色度を高めることで使用者にとって望ましい外観を付与する観点から、前記含有率は、通常１０重量％以上であり、１５量％以上であることが好ましく、２０重量％以上であることがより好ましい。また、前記含有率の上限は限定されないが、その他の原料を配合できる限界の観点から、通常７０重量％以下であり、６８重量％以下であることが好ましく、６５重量％以下であることがより好ましい。

（４）糖アルコール
　組成物は、糖アルコールを含有することが好ましい。糖アルコールの種類は特に限定されず、例えば、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、およびラクチトール等を挙げることができる。これらのうち、良好な風味を付与する観点から、マルチトールが好ましい。これらの物質は、１種類を単独で用いてもよく、また、２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　組成物中の糖アルコールの含有率（糖アルコールを２種類以上含有する場合は、それらの総含有率）は、限定されないが、風味の調節の観点から、通常１重量％以上であり、５量％以上であることが好ましく、１０重量％以上であることがより好ましい。また、その上限は、通常８０重量％以下であり、７０重量％以下であることが好ましく、６０重量％以下であることがより好ましい。

（５）ポリグリセリン脂肪酸エステル
　組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるグリセリンの重合度は２～１０であることが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、乳化剤として機能する。そのため、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することにより、組成物の各成分の均一な混合状態が保持され、香味成分を安定に保つことができるため、当該組成物の香味を良好にすることができる。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、組成物に適度な粘性を付与し、各成分を一体に結着させることができるため、当該組成物のぱさつきを抑え、使用感、香味等を良好にすることができる。加えて、組成物が水の含有量（含水率）の少ないドライタイプの場合でも、当該組成物をパウチ等の外装材に充填する際に、当該組成物が飛散することを抑制できる。このように、前記組成物にポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させることで、オーラル製品の製造における作業効率、歩留まり等の製造効率を向上することができる。

　ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの脱水縮合体の脂肪酸エステルであり、グリセリンの重合度は、通常２以上であり、３以上であってもよく、また、通常１０以下であり、８以下であってよい。

　ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル基（ＲＣＯＯ－基）は、脂肪酸に由来する。当該脂肪酸は限定されず、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。また、当該脂肪酸の炭素数は、良好な香味および製造効率の観点から、通常１０以上であり、１２以上であることが好ましく、１４以上であることがより好ましく、１６以上であることがさらに好ましく、また、通常３０以下であり、２６以下であることが好ましく、２２以下であることがより好ましく、２０以下であることがさらに好ましい。当該脂肪酸は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。

　また、ポリグリセリン脂肪酸エステル一分子が有する脂肪酸エステル基の数は、ポリグリセリン脂肪酸エステルが乳化剤としての機能を発揮し得る構造であれば限定されず、グリセリンの重合度およびグリセリン由来の水酸基の数に応じて適宜選択することができる。乳化剤としての機能を発揮し得る構造とは、親油基となる脂肪酸部位および親水基となる多価アルコール部位の両方を有する構造である。具体的には、ポリグリセリン脂肪酸エステル一分子あたりの脂肪酸エステル基の数は、通常１以上であればよい。また、グリセリン由来の水酸基の数は、１以上であればよい。

　ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるグリセリンの重合度、ならびに脂肪酸エステル基の種類および数は、上述したものを任意に組み合わせることができる。より具体的には、ポリグリセリン脂肪酸エステルのアルコール成分は、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、またはデカグリセリンであってよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの酸成分は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α－リノレン酸等の脂肪酸であってよい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステル等であってよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、１種類を単独で用いてもよく、また２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　ポリグリセリン脂肪酸エステルは、良好な香味および製造時の作業性の観点から、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルおよびデカグリセリン脂肪酸エステルから選択される一種以上であることが好ましい。ジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレートおよびジグリセリンモノオレエートからなる群から選択されることが好ましく、ジグリセリンモノオレエートであることがより好ましい。デカグリセリン脂肪酸エステルは、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンミリステート、デカグリセリンパルミテート、デカグリセリンステアレートおよびデカグリセリンオレエートからなる群から選択されることが好ましく、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノパルミテート、デカグリセリンモノステアレートおよびデカグリセリンモノオレエートからなる群から選択されることがより好ましい。

　組成物中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有率（ポリグリセリン脂肪酸エステルを２種類以上含有する場合は、それらの総含有率）は、限定されないが、良好な香味を得る観点および製造効率向上の観点から、通常０．１重量％以上であり、０．２量％以上であることが好ましく、０．３重量％以上であることがより好ましく、０．５重量％以上であることがさらに好ましい。また、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有率は、前記組成物に適度な粘性を付与する観点から、通常２０.０重量％以下であり、１５.０重量％以下であることが好ましく、１０.０重量％以下であることがより好ましく、８.０重量％以下であることがさらに好ましい。

　ポリグリセリン脂肪酸エステルのＨＬＢ値は、限定されないが、良好な香味を得る観点および製造効率向上の観点から、通常６．０以上、好ましくは７．０以上、また、通常２０.０以下、好ましくは１８．０以下、より好ましくは１６．０以下である。

（６）離型剤
　組成物は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤は、組成物を製造する際に成分が混合機、混錬機等の製造装置に付着したり、当該組成物をパウチ等の外装材に充填する際に成分が充填機等に付着したりする不都合を軽減し、製造効率を向上させることができる。また、離型剤は、組成物を構成する材料間の付着性を低減してケーキング（当該材料間の凝集や固化）を抑制し、また、当該組成物のべたつきを抑制することもできる。その結果、当該組成物を含むオーラル製品の外観、口触りといった使用感、香味等が向上する。また、組成物が外装材の外へ漏れることを抑制でき、オーラル製品の特性を向上することができる。

　離型剤は、上記作用効果を奏する限り限定されない。離型剤としては、例えば、微粒二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸マグネシウム等の化合物が挙げられる。これらのうち、上記効果が高く、香味への影響も少ない点で、離型剤は二酸化ケイ素であることが好ましい。離型剤は、１種類を単独で用いてもよく、また、２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　離型剤は、上記効果を十分発揮する観点から、粒子状であることが好ましい。当該粒子の平均粒径は、製造効率向上の観点から、通常２０.０μｍ以下であり、１５.０μｍ以下であることが好ましく、１０.０μｍ以下であることがより好ましく、また、通常０．２μｍ以上であり、０．３μｍ以上であることが好ましく、０．４μｍ以上であることがより好ましく、１．０μｍ以上であることがさらに好ましい。本発明において、離型剤粒子の平均粒径は、レーザー回折粒度分布測定により求めた粒度分布における体積基準累積５０％での粒径（Ｄ５０）を意味する。レーザー回折粒度分布測定には、マルバーン・パナリティカル社製「マスターサイザー３０００」のような汎用の装置を用いることができる。また、本発明においてこのような平均粒径を有する二酸化ケイ素を、「微粒二酸化ケイ素」と称することがある。

　組成物中の離型剤の含有率（離型剤を２種類以上含有する場合は、それらの総含有率）は、限定されないが、良好な香味を確保し、かつ、上記効果を十分発揮する観点から、通常０．０５重量％以上であり、０．１重量％以上であることが好ましく、０．５重量％以上であることがより好ましく、また、通常３．０重量％以下であり、２．５重量％以下であることが好ましく、２．０重量％以下であることがより好ましい。

（７）水
　組成物中の水の含有率（含水率）は、当該組成物の製造容易性の観点から、通常５重量％以上である。さらに、組成物の製造効率向上、耐ケーキング性向上、べたつき抑制等の観点から、水の含有率の下限は３０重量％以上であることが好ましく、４５重量％以上であることがより好ましく、その上限は通常６０重量％以下であり、５０重量％以下であることが好ましい。また、水の含有率は４０重量％以下であってもよく、３０重量％以下であってもよく、２０重量％以下であってもよい。水の含有率は、添加する水の量を調整したり、製造段階で加熱処理や乾燥処理を設けたりすることによって調整することができる。前記組成物の水の含有率は、製品のタイプ（モイストまたはドライ）に応じて適宜調整される。例えばモイストタイプの場合、水の含有率は通常２０～６０重量％であり、好ましくは３０～５０重量％である。一方、ドライタイプの場合、水の含有率は通常５～２０重量％であり、好ましくは１０～１５重量％である。

　組成物の水の含有率（含水率）は、加熱乾燥式水分計（例えば、ＭＥＴＴＥＲ　ＴＯＬＥＤＯ社製：ＨＢ　４３－Ｓ）を用いて測定することができる。測定に際し、試料を所定容器に投入し到達温度１００℃まで加熱する。測定は６０秒間で１ｍｇ以下の変化量となった時点で終了し、加熱前後の秤量値より含水率を算出する。

（８）その他
　組成物は、上記以外にその他の物質を含んでいてもよい。その他の物質としては、例えば、香料、ｐＨ調整剤、甘味料（糖アルコールを除く）、保湿剤、苦味抑制剤、白色剤（二酸化ケイ素を除く）、および乳化剤（ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く）等が挙げられる。当該物質の含有率は、限定されず、製品設計に応じて適宜配合を調整することができる。

　１）香料
　香料は限定されず、例えば、メンソール、葉たばこ抽出エキス、天然植物性香料（例えば、シナモン、セージ、ハーブ、カモミール、葛草、甘茶、クローブ、ラベンダー、カルダモン、チョウジ、ナツメグ、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、ローズ油、レモン、オレンジ、ケイ皮、キャラウェー、ジャスミン、ジンジャー、コリアンダー、バニラエキス、スペアミント、ペパーミント、カシア、コーヒー、セロリー、カスカリラ、サンダルウッド、ココア、イランイラン、フェンネル、アニス、リコリス、セントジョンズブレッド、スモモエキス、ピーチエキス等）、糖類（例えば、グルコース、フルクトース、異性化糖、カラメル、蜂蜜、糖蜜等）、ココア類（パウダー、エキス等）、エステル類（例えば、酢酸イソアミル、酢酸リナリル、プロピオン酸イソアミル、酪酸リナリル等）、ケトン類（例えば、メントン、イオノン、ダマセノン、エチルマルトール等）、アルコール類（例えば、ゲラニオール、リナロール、アネトール、オイゲノール等）、アルデヒド類（例えば、バニリン、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド等）、ラクトン類（例えば、γ－ウンデカラクトン、γ－ノナラクトン等）、動物性香料（例えば、ムスク、アンバーグリス、シベット、カストリウム等）、および炭化水素類（例えば、リモネン、ピネン等）が挙げられる。香料として１種類を単独で用いてもよく、また２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　２）ｐＨ調整剤
　ｐＨ調整剤は限定されず、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、無水リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、およびクエン酸ナトリウム等が挙げられる。中でも、製品の呈味への影響の観点から、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、またはリン酸二水素ナトリウムが好ましい。ｐＨ調整剤として１種類を単独で用いてもよく、また２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　３）甘味料
　甘味料としては、限定されないが、例えばキシリトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール；およびアセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム等が挙げられる。味の調節の観点から糖アルコールが好ましい。甘味料は、１種類を単独で用いてもよく、また、２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　４）苦味抑制剤
　苦味抑制剤は限定されないが、例えば、大豆レシチンが挙げられる。大豆レシチンとはリン脂質であり、具体的にホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジン酸等が挙げられる。苦味抑制剤として１種類を単独で用いてもよく、また２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　５）保湿剤
　保湿剤は限定されないが、例えば、グリセリンおよびプロピレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。製品保存性の観点から、グリセリンが好ましい。保湿剤として１種類を単独で用いてもよく、また２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　６）白色剤
　白色剤は限定されないが、例えば、微粒二酸化ケイ素、二酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられる。製品への味の影響の観点から、微粒二酸化ケイ素が好ましい。白色剤として１種類を単独で用いてもよく、また２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　７）乳化剤、界面活性剤
　乳化剤（ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く）は限定されないが、例えば、食品に添加される乳化剤を挙げることができる。乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびレシチンからなる群から選ばれる一種以上を挙げることができる。ショ糖脂肪酸エステルとして、ショ糖パルミチン酸エステルおよびショ糖ステアリン酸エステルを挙げることができる。有機酸グリセリン脂肪酸エステルとして、コハク酸グリセリン脂肪酸エステルおよびジアセチル酒石酸グリセリン脂肪酸エステルを挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、デカグリセリン脂肪酸エステルを挙げることができる。前記組成物における乳化剤の含有率は、前述のポリグリセリン脂肪酸エステルとの合計含有率が、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有率として上述した範囲内となる量であることが好ましい。

　８）ゲル化剤、ゲル化補助剤
　本発明の組成物は、前記アルギン酸化合物以外のゲル化剤を含んでいてもよい。当該ゲル化剤としては、カルボキシル基を有する多糖類が好ましく、例えば、カラギーナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタン、ジェラン、トラガントガムが好ましい。さらに、カルシウムイオンの存在下でゲル化しやすく、カルボキシル基と陽イオンでジャンクションゾーンを作り架橋構造を形成することができる観点から、カラギーナン、ペクチン、ジェランが好ましい。これらは、１種類を単独で用いてもよく、また２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　ゲル化補助成分としては、例えばカルシウムイオンが挙げられ、その供給源（ゲル化補助剤）は、は限定されないが、例えば、カルシウムのハロゲン酸塩（塩化物等）、クエン酸、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、および乳酸塩等が挙げられる。これらのうち、味への影響が少ない、溶解性が高い、および溶解後のｐＨの観点から、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、またはリン酸カルシウムが好ましく、特に、乳酸カルシウムが好ましい。これらは１種類を単独で用いてもよく、また２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

　カルシウムイオン以外のゲル化補助成分としては、例えば、カルシウムイオンと同様にゲル化剤をイオン結合で結合させることができるマグネシウム、銀、亜鉛、銅、金、アルミニウム等の金属イオン、およびカチオン性高分子のイオン等が挙げられる。これらの供給源（その他のゲル化補助剤）としては、例えば、これらの金属イオンのハロゲン酸塩（塩化物等）、クエン酸、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、およびカチオン性高分子等が挙げられる。これらは１種類を単独で用いてもよく、また２種類以上を任意の比率で併用してもよい。

（９）特性
　１）流動性
　組成物の流動性により、当該組成物の粘性、製造装置への付着性、耐ケーキング性、およびべたつきを評価することができる。当該流動性は、測定温度２２℃における垂直応力５．０ｋＰａでの剪断応力の値を相対比較して評価される。垂直応力５．０ｋＰａは、組成物の製造装置への付着、ケーキング、べたつきが生じ得る条件として、製造中、搬送中、保管中等に自重により前記組成物に加えられると想定される圧力負荷である。当該剪断応力は、好ましくは４．１５ｋＰａ以上、より好ましくは４．２０ｋＰａ以上、さらに好ましくは４．２５ｋＰａ以上、また、好ましくは５．８５ｋＰａ以下、より好ましくは５．８０ｋＰａ以下である。

　上記の垂直応力５．０ｋＰａでの組成物の剪断応力は、レオメーターを用いて測定することができる。例えば、レオメーターとしてフリーマンテクノロジー社製のパウダーレオメーターＦＴ４を用いた場合、下記の測定条件で測定される。
・測定モード：ｓｔａｎｔａｒｄ　ｐｒｏｇｒａｍ　（２５ｍｍ＿ｓｈｅａｒ＿９ｋＰａ）
・測定温度：２２℃
・測定湿度：６０％ＲＨ
・測定容器：内径２５ｍｍの円筒容器、容積１０ｍｌ
・垂直荷重：３～９ｋＰａ
　測定原料をそれぞれ篩（１．１８ｍｍ目開き）にかけ、粒子を細かく均一にしたものを測定サンプルとし、上記レオメーターの手順に沿って測定を行う。

　２）粒度
　組成物は、固体の複数の粒状物から構成されることが好ましいが、その粒状物のサイズは、限定されない。ユーザーの使用時の口触りの良さ、製造時の扱いやすさ、および品質のばらつきを制御する観点から、乾燥させた組成物は、通常は１５ｍｍの篩目を有する篩を通過（＜１５ｍｍ）サイズであり、１０ｍｍの篩目を有する篩を通過するサイズ（＜１０ｍｍ）であることが好ましく、５ｍｍの篩目を有する篩を通過するサイズ（＜５ｍｍ）であることがより好ましく、３．２ｍｍの篩目を有する篩を通過するサイズ（＜３．２ｍｍ）であることがさらに好ましい。例えば、含水率が５重量％以下となるよう乾燥した組成物の全てが３．２ｍｍの篩目の篩を通過した場合、当該組成物の乾燥時の最大粒度が３．２ｍｍ以下であることを表す。乾燥時の組成物の粒度の下限を設定する必要はないが、パウチからの漏れを防ぐ観点から、通常３μｍ以上である。

　上記の乾燥した組成物の調製方法は、含水率を５重量％以下まで低下させることができる限り限定されないが、例えば口腔用組成物を常温、７０℃～８０℃等の温度条件で所定の時間静置することにより調製する方法が挙げられる。組成物の最大粒度は、例えばニコチンが担持されたイオン交換樹脂の粒度、含水率等を調整することにより適宜調整できる。

　３）ｐＨ
　組成物のｐＨは限定されないが、味への影響の観点から、通常７．０以上であり、７．５以上であることが好ましく、８．０以上であることがより好ましく、また、通常１０．０以下であり、９．５以下であることが好ましく、９．０以下であることがより好ましい。当該ｐＨは２５℃における測定値である。

　測定温度２５℃における組成物のｐＨは、ｐＨ分析計（例えば、堀場製作所製：ＬＡＱＵＡ　Ｆ－７２　フラットＩＳＦＥＴ　ｐＨ電極）を用い、組成物２ｇに対して、水２０ｍＬ投入し１０分間振とうし、その上清液を測定することで測定することができる。機器の校正は、例えば、フタル酸ｐＨ標準液（ｐＨ４．０１）、中性リン酸塩ｐＨ標準液（ｐＨ６．８６）、ほう酸塩ｐＨ標準液（ｐＨ９．１８）（いずれも和光純薬工業）を用いた３点校正で行うことが好ましい。

２．オーラル製品
　オーラル製品は、口中に含んで使用される。製品形態は、公知のとおりとすることができる。その例としては、噛みたばこ、パウチ、錠剤、ガム、フィルム、および液体の形態が挙げられる。噛みたばこ製品とは、咀嚼することで、組成物に含まれるニコチンが唾液と混合されて摂取される製品をいう。パウチ製品とはシールされた非水溶性外装材（パウチともいう）内に組成物（主材または充填物ともいう）を備え、唾液がパウチを通って浸透しパウチ内に包含された組成物中の成分を溶解し、その後、パウチを通り抜けて口腔中に運び出し得る製品をいう。錠剤製品は口中で徐々に溶解または崩壊させて、口腔、咽頭などから組成物中の成分を摂取する製品をいう。錠剤製品としては、トローチ、チュアブル、またはドロップ等のタイプがある。ガム製品とは、使用者が咀嚼することで、組成物中に含まれる成分が唾液と混合され口腔粘膜を通し吸収される製品をいう。ガム製品としては咀嚼型ガムまたはバブル型ガム等のタイプがある。フィルム製品とは、口腔適用時に唾液等の水分によって口腔粘膜へ付着する製品をいう。粘膜を介して組成物中に含まれる成分が摂取される。液体製品は、スプレーまたは滴下によって口腔内に適用され、口腔粘膜を介して組成物中の成分を摂取する製品をいう。

　オーラル製品のサイズは、その形状によって適宜調製される。したがって、１個のオーラル製品に含まれる前記アルギン酸化合物の量も適宜調製される。

　オーラル製品が、パウチ、錠剤製品またはガム等のように外装材と主材を備える場合、主材は前記組成物であることが好ましい。また、前記アルギン酸化合物は外装材、主材、またはその双方に含有されることもできる。この場合、主材は組成物またはこれに準ずる組成物であってよいが、アルギン酸化合物の量は、その総量が１製品当たり所望の量となるように調整されることが好ましい。

　本発明においてはパウチの形態のオーラル製品、すなわちオーラルパウチ製品が特に好ましいので、以下、当該製品を例にして説明する。オーラルパウチ製品は、主材（充填物ともいう）と、当該主材を包装する外装材（パウチともいう）を備える。

（１）パウチ
　パウチは、充填物を包装することができ、水に溶解せず、かつ、液体（水や唾液等）および充填物中の水溶性成分を透過できれば、限定されず公知のものを用いることができる。パウチの材料としては、例えば、セルロース系の不織布等が挙げられ、市販の不織布を用いてもよい。このような材料からなるシートを袋形状に成形し、その中に充填物を充填し、ヒートシール等の手段によりシールすることによりパウチ製品を作製することができる。

　上記のシートの坪量は、特段制限されず、通常１２ｇｓｍ（ｇ／ｍ^２）以上、５４ｇｓｍ以下であり、２４ｇｓｍ以上、３０ｇｓｍ以下であることが好ましい。上記のシートの厚さは、特段制限されず、通常１００μｍ以上、３００μｍ以下であり、１７５μｍ以上、２１５μｍ以下であることが好ましい。

　パウチの内面および外面の少なくとも一方に部分的に撥水材料が塗布されていてもよい。撥水材料としては撥水性フッ素系樹脂が好適である。具体的には、この種の撥水性フッ素系樹脂としては、旭硝子社製のアサヒガード（登録商標）が挙げられる。撥水性フッ素系樹脂は、例えば、菓子類、乳製品、惣菜、ファストフードやペットフードなどの油脂類を含んだ食品や製品のための包材に塗布されている。それ故、この種の撥水性フッ素系樹脂は、口腔内に置かれるパウチに塗布されても安全である。この撥水材料としてはフッ素系樹脂に限ることなく、例えば、パラフィン樹脂、シリコン系樹脂またはエポキシ系樹脂等の撥水作用を有する材料であってもよい。

　パウチは、前記アルギン酸化合物を含有することができる。例えば、前記アルギン酸化合物を分散させた分散液をパウチに塗布、噴霧、または含侵させることによって前記アルギン酸化合物を含有するパウチを調製できる。パウチに前記アルギン酸化合物を含有させることにより、使用時に製品が唾液と接触した際に、アルギン酸が速やかに唾液に溶解することが可能になるため、服用初期の不織布異物感を緩和することが可能になる。また、パウチに前記アルギン酸化合物を香料や甘味料等の添加物と混合して含有させることにより、製品使用時まで前記添加物を安定して担持させ、かつ製品使用初期から前記添加物を唾液と接触させることが可能になる。その結果、よりユーザーの嗜好性を高めることが可能となる。またパウチは、任意の成分を含んでいてよい。当該成分としては、例えば、香りや味を調節する原料や、香料、添加物、たばこ抽出液、および色素等が挙げられる。また、これらの成分を含有させる態様は限定されず、パウチ表面に塗布したり、しみこませたり、繊維からなる場合には該繊維に含有させる態様等が挙げられる。

　パウチの外観も限定されない。パウチは、非透明、半透明、または透明であってよい。パウチが半透明または透明であると充填物が透けてみえる。

　オーラルパウチ製品のサイズは限定されない。使用前の製品のサイズは、長辺の下限が２５ｍｍ以上、２８ｍｍ以上、３５ｍｍ以上、または３８ｍｍ以上であってよい。またその上限は４０ｍｍ以下であってよい。短辺の下限は１０ｍｍ以上または１４ｍｍ以上であってよい。またその上限は、２０ｍｍ以下または１８ｍｍ以下であってよい。オーラルパウチ製品の全重量に対する充填物の重量の割合は、限定されないが、通常８０重量％以上であり、８５重量％以上であることが好ましく、９０重量％以上であることがより好ましく、また、通常９９重量％以下であり、９７重量％以下であることが好ましく、９５重量％以下であることがより好ましい。

（２）充填物
　オーラルパウチ製品１個当たりの充填物の量は、好ましくは０．４～１．５ｇである。オーラルパウチ製品は、外装材、充填物、またはその双方に前記アルギン酸化合物を含有させることができる。

（３）アルギン酸化合物
　オーラルパウチ製品１個当たりに含まれるアルギン酸化合物の量は、好ましくは０．０２～１．２ｇ、より好ましくは０．０５～０．８ｇである。

３．製造方法
（１）オーラル製品用組成物の製造
　前記アルギン酸化合物は、前述のとおり、目的とするアルギン酸化合物よりも高い分子量を有する原料アルギン酸化合物を、常圧下、９５～１００℃で５０分以上加熱して、低分子化する工程を経て調製されることが好ましい。オーラル製品の口当たりを良好にするには、ある程度の量のアルギン酸化合物を用いる必要があるが、高い分子量を有する原料アルギン酸化合物は、配合濃度に比例して組成物の粘度を向上させる。そのため、組成物の製造効率が低下する。特に、原料アルギン酸化合物は、組成物の製造時に、組成物または原料が混合容器や搬送装置等に付着し組成物の収率を低下させることや、組成物の流動性が低下して装置内につまりを発生させる等の不具合を生じさせ得る。さらに、原料アルギン酸化合物は組成物の結着性を高めるため、組成物が不均一になりやすく、ニコチン等の植物由来アルカロイドの偏在化を生じさせる。しかし、本発明では、低分子量の前記アルギン酸化合物を用いるので、これらの不具合を解消でき、かつ組成物の製造効率を向上できる。

　当該組成物は、任意の方法で製造されるが、少なくとも前記アルギン酸化合物と、必要に応じて基材、糖アルコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、および離型剤を混合する工程を経て製造されることが好ましい。混合は、全原料をミキサーに投入して混合することで実施できる。

　好ましい製造方法では、まず、ニコチン、前記アルギン酸化合物、基材、糖アルコール、離型剤、ならびに必要に応じて水およびその他の物質（甘味料、香料、保湿剤等）を混合して第１の混合物を得る。このとき加熱を施してもよい。また、各原料の混合の順序は限定されず、任意の順序または同時にミキサーに投入して混合してもよく、固形の原料を均一に混合した後に液体の原料を添加してさらに混合してもよい。作業性の観点からは、後者の態様が好ましい。

　次に、第１の混合物を撹拌しながら、第１の混合物にポリグリセリン脂肪酸エステル溶液を噴霧することで、第１の混合物とポリグリセリン脂肪酸エステルとを混合し、第２の混合物を得る。ポリグリセリン脂肪酸エステルがアンチケーキング効果を発揮するため、以降の工程において、ケーキングが生じにくくなる。上記ポリグリセリン脂肪酸エステル溶液の溶媒は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを溶解させることができる限り限定されないが、エタノール等のアルコール溶媒であることが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステル溶液の溶媒を第２の混合物中に多量に残存させないため、第１の混合物にポリグリセリン脂肪酸エステル溶液を噴霧している間または噴霧終了後に加熱処理を施してもよい。

　また、第２の混合物の調製後、第２の混合物を乾燥する処理を行ってもよい（乾燥工程）。その後、冷却する処理を行ってもよい。冷却は自然冷却でもよいし、何らかの冷却手段を用いて行ってもよい（冷却工程）。乾燥を行うことで、例えば第２の混合物の含水率を５～６０重量％の間の所望の数値に調整することができる。これにより組成物における含水率の調整が容易になる。

　上記のとおりに得た混合物に、必要に応じてｐＨ調整剤を含む水溶液、アセスルファムカリウム等の甘味料、メンソール等の香料、大豆レシチン等の苦味抑制剤、グリセリン等の保湿剤を添加（添加剤添加工程）することができる。上記の添加物は、固体で添加してもよいし、水に溶解した水溶液として添加してもよい。水溶液で添加する場合は、オーラル製品の最終水分含量を達成できるように予め所定量の水に溶解して添加してもよい。

（２）オーラル製品の製造
　組成物を公知の方法で加工してオーラル製品とすることができる。以下、オーラルパウチ製品を例にして説明する。

　組成物を外装材で包装することでオーラルパウチ製品を製造できる（包装工程）。包装する方法は限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、袋形状の不織布に前記組成物を投入した後シールする方法等、公知の方法を用いることができる。包装工程において、シール後に所望のさらに水を加えてもよい（水添加工程）。例えば、最終的な組成物の水の含有率が５０重量％であり、充填された組成物の水の含有率が１５重量％である場合は、残りの３５重量％分の水を添加する。

［製造例１］
　高分子量のアルギン酸化合物を、水に溶解して水溶液とする。当該水溶液を、常圧、９５℃で６０～３００分間加熱して、低分子量アルギン酸化合物を得る。得られた低分子量アルギン酸化合物の重量平均分子量（ＧＰＣによる測定）は、４００，０００～９００，０００程度である。

［製造例２］有機酸添加
　高分子量のアルギン酸化合物を、水に溶解し、さらに１．０Ｍクエン酸水溶液を混合した水溶液を調製する。当該水溶液を、常圧、９５℃で３０～３００分間加熱して、低分子量アルギン酸化合物を得る。得られた低分子量アルギン酸化合物の重量平均分子量（ＧＰＣによる測定）は、１３，０００～９００，０００程度である。

［実施例１］
　以下に示す成分をミキサーで混合して、オーラル製品用組成物を製造する。
　　ニコチン　２重量部
　　製造例１のアルギン酸化合物　１０．５重量部
　　マルチトール　３７．８重量部
　　セルロース　２２．７重量部
　　リン酸ナトリウム　１４．３重量部
　　ポリグリセリン脂肪酸エステル　１０．３重量部
　　シリカ　２．１重量部
　　アセスルファムＫ　０．３重量部

［実施例２］オーラルパウチ製品
　実施例１で得た組成物０．７ｇを採取し、これを公知のパウチで包装してオーラルパウチ製品を製造する。

［実施例３］オーラルフィルム製品
　以下に示す成分を８０℃の加熱条件で、ミキサーを用いてホモジナイズしつつ、攪拌混合し、オーラル製品用組成物を製造する。
　ニコチン　１０重量部
　製造例１のアルギン酸化合物水溶液（２０重量％水溶液）　４３．５重量部
　ポリグリセリン脂肪酸エステル　３．１重量部
　リン酸二水素ナトリウム　１０．２重量部
　リン酸カリウム　２０．５重量部
　マルチトール　５重量部
　シリカ　２．１重量部
　香料　５．６重量部

　上記で得た組成物を注型用基板上に（１ｍｍの厚さで）均一に広げ、乾燥キャビネットにおいて、６０℃で２０分間乾燥する。乾燥後の前記製品の水分は８重量部である。乾燥させたフィルムは公知の切断方法で切断し、個別の口腔用フィルムを製造する。

Claims (9)

1. 　重量平均分子量が１０，０００～９００，０００である、アルギン酸、その塩、そのエステル、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアルギン酸化合物を含有する、オーラル製品用組成物。
2. 　前記組成物における前記アルギン酸化合物の量が、１～９９重量％である、請求項１に記載の組成物。
3. 　植物由来アルカロイドをさらに含む、請求項１または２に記載の組成物。
4. 　請求項１～３のいずれかに記載の組成物を含有するオーラル製品。
5. 　外装材と、主材と、を備える含有するオーラル製品であって、
   　前記外装材または前記主材が、重量平均分子量が１０，０００～９００，０００である、アルギン酸、その塩、そのエステル、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアルギン酸化合物を含有する、
   オーラル製品。
6. 　前記外装材が前記アルギン酸化合物を含む、請求項５に記載のオーラル製品。
7. 　噛みたばこ、パウチ、錠剤、ガム、フィルム、または液体の形態である、請求項４に記載のオーラル製品。
8. 　パウチまたはガムの形態である、請求項５または６に記載のオーラル製品。
9. 　請求項１～３のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、
   　前記アルギン酸化合物よりも高い分子量を有する原料アルギン酸化合物を、常圧下、９５～１００℃で５０分間以上加熱して、前記アルギン酸化合物を調製する工程、
   を備える製造方法。