WO2022118849A1 - 気体分離システム及び気体の製造方法 - Google Patents

Abstract

本発明は、特定気体分離膜ユニットを備え、前記特定気体分離膜ユニットの供給気体の入口に供給気体管が接続され、透過気体の排出口に透過気体排出管が接続され、濃縮気体の排出口に濃縮気体排出管が接続され、前記透過気体排出管又は前記濃縮気体排出管は分岐部を有し、前記分岐部を有する管よりも上流に位置する管は合流部を有し、前記分岐部及び前記合流部が分岐管により連結されている、気体分離システムに関する。

Description

気体分離システム及び気体の製造方法

　本発明は、気体分離膜を備える気体分離システムと、それを用いた気体の製造方法に関する。

　近年クリーンなエネルギー源として、水素が注目されている。水素は、天然気体及び石炭等の化石燃料を気体化し、主成分として水素と二酸化炭素を含む混合気体から二酸化炭素を除去することによって得られている。処理対象となる気体は水蒸気改質、水性気体シフトを経ており、高温、高圧であることが特徴である。さらに、水素はアンモニアを合成するハーバー・ボッシュ法にも用いられている。これは、水素と窒素を高温、高圧で反応させることでアンモニアを合成する方法であるが、生産プラントにおいて未反応の水素と窒素を分離回収するプロセスが必要である。

　低コストで混合気体から特定の気体を濃縮させる方法として、素材の持つ気体透過性の違いを利用して目的気体を選択的に透過させる膜分離法が注目されている。

　分離膜を備える気体分離システムに関し、例えば特許文献１には、前段に１つと後段に２つの気体分離膜ユニットを備え、後段の１つの気体分離膜ユニットから得られる気体の全量を前段の気体分離膜ユニットに循環させる技術が開示されている。

　特許文献２や３には、前段に１つの気体分離膜ユニットと後段に１つの気体分離膜ユニットを備え、後段から得られる気体の全量を前段の気体分離膜ユニットに循環させる技術が開示されている。

　また、特許文献４には、分離膜ユニットを透過したヘリウムを、供給気体に循環させながらヘリウムを回収する技術が開示されている。

日本国特開２０１６－１８７７７０号公報 日本国特開昭５１－１４７４８０号公報 日本国特開平０９－０６６２１７号公報 日本国特開２０１９－０７２６５８号公報

　しかしながら、従来の気体分離膜を備える気体分離システムでは、高回収率かつ高純度を両立して富化することが難しく、精製効率が十分でない場合があった。

　そこで本発明は、冨化される成分を高回収率かつ高純度で精製可能な気体分離システムを提供することを課題とする。

　上記目的を達成するための本発明は、以下の１～１５を包含する。
１．２種以上の成分を含む混合気体から少なくとも１種の成分を富化する気体分離システムであって、
　前記気体分離システムは特定気体分離膜ユニットを備え、
　前記特定気体分離膜ユニットは、供給気体の入口、透過気体の排出口、及び濃縮気体の排出口を備え、
　前記供給気体の入口には、供給気体管が接続され、
　前記透過気体の排出口には、透過気体排出管が接続され、
　前記濃縮気体の排出口には、濃縮気体排出管が接続され、
　前記透過気体排出管又は前記濃縮気体排出管は分岐部を有し、前記分岐部を有する管よりも上流に位置する管は合流部を有し、前記分岐部及び前記合流部が分岐管により連結されている、気体分離システム。
２．前記特定気体分離膜ユニットは、前記気体分離システム中に１つのみ存在し、
　前記供給気体管が前記合流部を有し、他の気体分離膜ユニットを備えない、前記１に記載の気体分離システム。
３．前記１または２に記載の気体分離システムを用いた気体の製造方法であって、
　前記特定気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中の、富化される成分の濃度を３０ｍｏｌ％以下に制御する工程を含む、気体の製造方法。
４．前記特定気体分離膜ユニットの上流に他の気体分離膜ユニットをさらに備え、前記他の気体分離膜ユニットを通った透過気体又は濃縮気体が、前記特定気体分離膜ユニットに供給される、前記１に記載の気体分離システム。
５．前記特定気体分離膜ユニットの下流に他の気体分離膜ユニットをさらに備え、前記特定気体分離膜ユニットを通った透過気体又は濃縮気体が、前記他の気体分離膜ユニットに供給される、前記１に記載の気体分離システム。
６．前記特定気体分離膜ユニット中の分離膜が、ポリアミド膜である、前記１、２、４または５のいずれか１に記載の気体分離システム。
７．前記特定気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中の、富化される成分が水素である、前記１、２、４、５または６のいずれか１に記載の気体分離システム。
８．２種以上の成分を含む混合気体から少なくとも１種の成分を富化する気体分離システムであって、
　前記気体分離システムは、連結管によって接続された第１の気体分離膜ユニット及び第２の気体分離膜ユニットを含み、
　前記第１の気体分離膜ユニットは、第１の入口、第１の透過出口、及び第１の濃縮出口を備え、
　前記第２の気体分離膜ユニットは、第２の入口、第２の透過出口、及び第２の濃縮出口を備え、
　前記第１の入口には第１の供給気体管が接続され、
　前記連結管は、前記第１の透過出口又は前記第１の濃縮出口と、前記第２の入口とを連結し、
　前記第２の透過出口には、第２の透過気体排出管が接続され、
　前記第２の濃縮出口には、第２の濃縮気体排出管が接続され、
　前記第２の透過気体排出管又は前記第２の濃縮気体排出管は分岐部を有し、前記第１の供給気体管又は前記連結管は合流部を有し、前記分岐部及び前記合流部が分岐管により連結されている、気体分離システム。
９．前記連結管が前記合流部を有する、前記８に記載の気体分離システム。
１０．前記第１の気体分離膜ユニット中の分離膜及び前記第２の気体分離膜ユニット中の分離膜が、ポリアミド膜である、前記８または９に記載の気体分離システム。
１１．前記連結管は、前記第１の濃縮出口と、前記第２の入口とを連結しており、
　前記分岐部は、前記第２の透過気体排出管に設けられる、前記８～１０のいずれか１に記載の気体分離システム。
１２．前記連結管は、前記第１の透過出口と、前記第２の入口とを連結しており、
　前記分岐部は、前記第２の濃縮気体排出管に設けられる、前記８～１０のいずれか１に記載の気体分離システム。
１３．前記第２の透過気体排出管又は前記第２の濃縮気体排出管は、前記分岐部を介して前記分岐管及び回収装置と連結している、前記１１又は１２に記載の気体分離システム。
１４．前記第１の気体分離膜ユニット及び前記第２の気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中の、富化される成分が水素である、前記１１に記載の気体分離システム。
１５．前記１１又は１２に記載の気体分離システムを用いた気体の製造方法であって、
　前記第１の気体分離膜ユニットから排出され、前記第２の気体分離膜ユニットへ供給されない気体に含まれる富化される成分の気体量を、前記第１の気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中の富化される成分の３０体積％以上８０体積％以下に制御する工程を含む、気体の製造方法。

　本発明によって２種以上の成分を含む混合気体から、少なくとも１種の気体を高回収率と高純度を両立しながら富化することができる。

図１は、実施例１における気体分離システムのフロー図である。 図２は、実施例２～７における気体分離システムのフロー図である。 図３は、本発明の実施形態に係る気体分離システムの一例を示すフロー図である。 図４は、実施例８～１２における気体分離システムのフロー図である。 図５は、実施例１３～１６における気体分離システムのフロー図である。 図６は、比較例３～６における気体分離システムのフロー図である。

　本発明は、２種以上の成分を含む混合気体から少なくとも１種の成分を富化する気体分離システムであって、前記気体分離システムは特定気体分離膜ユニットを備え、前記特定気体分離膜ユニットは、供給気体の入口（以下「入口」ともいう）、透過気体の排出口（以下「透過出口」ともいう）、及び濃縮気体の排出口（以下「濃縮出口」ともいう）を備え、前記供給気体の入口には、供給気体管が接続され、前記透過気体の排出口には、透過気体排出管が接続され、前記濃縮気体の排出口には、濃縮気体排出管が接続され、前記透過気体排出管又は前記濃縮気体排出管は分岐部を有し、前記分岐部を有する管よりも上流に位置する管は合流部を有し、前記分岐部及び前記合流部が分岐管により連結されている、気体分離システムに関する。

　本発明の実施形態に係る気体分離システムは、特定気体分離膜ユニットを備える。ここで、気体分離膜ユニットとは、分離膜を備えることで、２種以上の成分を含む混合気体から少なくとも１種の成分を富化する性能を有する部分をいい、具体的な好ましい構成は後述する。特定気体分離膜ユニットは、気体分離膜ユニットのなかでも、上述した構成を備えるものをいう。本発明の実施形態に係る気体分離システムは、特定気体分離膜ユニットと、さらに他の気体分離膜ユニットとを備える場合がある。すなわち、他の気体分離膜ユニットとは、気体分離システムに少なくとも含まれる特定気体分離膜ユニットの他に、さらに気体分離膜システムに含まれる気体分離膜ユニットのことをいう。他の気体分離膜ユニットは特定気体分離膜ユニットとしての上記構成を備えなくてもよいが、特定気体分離膜ユニットとしての上記構成を備える場合をなんら排除するものではない。本明細書において、特定気体分離膜ユニットと他の気体分離膜ユニットとを総称して、単に気体分離膜ユニットという場合がある。

　気体分離膜ユニットにおいて、供給気体の入口（入口）は、気体分離膜ユニットに供給される気体の入口である。供給される気体は、入口に接続された供給気体管を通じて供給される。なお、供給気体管は、入口と、別の気体分離膜ユニットの透過出口または濃縮出口とを接続する連結管であってもよい。
　透過気体の排出口（透過出口）は、気体分離膜ユニット中の分離膜を透過した気体（透過気体）が排出される出口である。透過気体は、透過出口に接続された透過気体排出管を通じて気体分離膜ユニットから排出される。一方、濃縮気体の排出口（濃縮出口）は、気体分離膜ユニット中の分離膜を透過せずに残った気体（濃縮気体）が排出される出口である。濃縮気体は、濃縮出口に接続された濃縮気体排出管を通じて気体分離膜ユニットから排出される。濃縮気体排出管及び透過気体排出管はそれぞれ、別の気体分離膜ユニットの入口に接続される連結管であってもよい。
　また、特定気体分離膜ユニットにおいて、透過気体排出管又は濃縮気体排出管は分岐部を有し、前記分岐部を有する管よりも上流に位置する管は合流部を有する。そして、分岐部及び合流部は分岐管により連結されている。分岐部を有する管よりも上流に位置する管とは、換言すれば、分岐部からみて、分岐部を有する管が接続された気体分離膜ユニット（特定分離膜ユニット）を介して気体の流れの上流側に位置する管のことをいう。分岐管は、流れてくる気体を異なる方向へ分岐する配管であり、合流部は、分岐部から分岐管を流れてきた気体と、分岐部を有する管よりも上流に位置する管に流れている気体が合流する配管である。合流部は、気体を効率良く混合させる混合器を備えていても良い。

　特定気体分離膜ユニットから排出された気体は、分岐部から分岐管を通じて合流部に到達する循環流と、目的成分を高純度で含む気体として回収される回収流に分断される。循環流を設けることで、循環流が供給される気体分離膜ユニットにおいて、分離膜に透過させたい成分が高濃度化し、ろ過に影響する分圧が高まるため透過が促進される。この操作を気体分離膜ユニットにおける気体濃度が平衡になるまで繰り返すことで、気体分離膜ユニットにおける選択分離性をさらに高め、気体分離システムとして冨化される成分を高回収率かつ高純度で得ることができる。なお、上記は気体分離膜ユニットに搭載された分離膜が、いずれも冨化される成分を選択的に透過させる場合の説明であるが、分離膜が、いずれも冨化される成分を選択的に透過させない場合は、上述の「透過」を「濃縮」に読み替えることができ、同様に本発明の効果を得られる。以下、同様の読み替えが可能な部分について、「透過又は濃縮」という場合がある。

　本発明の実施形態に係る気体分離システムは、以下の第１の実施形態及び第２の実施形態を含む。
　本発明の実施形態に係る気体分離システムは、気体分離膜ユニットを少なくとも１つ含むものであればよく、該気体分離膜ユニットのうち少なくとも１つが特定気体分離膜ユニットであればよい。ここで、気体分離システムが気体分離膜ユニットを２つ以上備える場合の構成例として、下記（ａ）又は（ｂ）が挙げられる。
　（ａ）特定気体分離膜ユニットの上流に他の気体分離膜ユニットをさらに備え、他の気体分離膜ユニットを通った透過気体又は濃縮気体が、特定気体分離膜ユニットに供給される、気体分離システム。
　（ｂ）特定気体分離膜ユニットの下流に他の気体分離膜ユニットをさらに備え、前記特定気体分離膜ユニットを通った透過気体又は濃縮気体が、他の気体分離膜ユニットに供給される、気体分離システム。

　なかでも、上記（ａ）の場合において、他の気体分離膜ユニットとして第１の気体分離膜ユニットを備え、特定気体分離膜ユニットとして第２の気体分離膜ユニットを備える気体分離システムを、第１の実施形態に係る気体分離システムとして具体的に例示する。すなわち、本発明の第１の実施形態に係る気体分離システムは、連結管によって接続された第１の気体分離膜ユニット及び第２の気体分離膜ユニットを含み、前記第１の気体分離膜ユニットは、第１の入口、第１の透過出口、及び第１の濃縮出口を備え、前記第２の気体分離膜ユニットは、第２の入口、第２の透過出口、及び第２の濃縮出口を備え、前記第１の入口には第１の供給気体管が接続され、前記連結管は、前記第１の透過出口又は前記第１の濃縮出口と、前記第２の入口とを連結し、前記第２の透過出口には、第２の透過気体排出管が接続され、前記第２の濃縮出口には、第２の濃縮気体排出管が接続され、前記第２の透過気体排出管又は前記第２の濃縮気体排出管は分岐部を有し、前記第１の供給気体管又は前記連結管は合流部を有し、前記分岐部及び前記合流部が分岐管により連結されている。
　つまり第１の実施形態は、本発明の実施形態の中でも気体分離膜ユニットを少なくとも２つ有する点に特徴を有する。

　第２の実施形態の気体分離システムにおいては、特定気体分離膜ユニットは、気体分離システム中に１つのみ存在し、供給気体管が合流部を有し、気体分離システムは他の気体分離膜ユニットを備えない。つまり第２の実施形態は、本発明の実施形態の中でも気体分離膜ユニットを１つのみ有する点に特徴を有する。

　以下、このような第１の実施形態と第２の実施形態を包含する本発明の実施の形態について、詳細に説明する。

　＜気体分離システムおよび気体分離膜ユニット＞
　（第１の実施形態：複数の気体分離膜ユニットを有する気体分離システム）
　第１の実施形態に係る気体分離システム１００は、連結管８によってつながれた第１の気体分離膜ユニット１、第２の気体分離膜ユニット２を含んで構成される。ここで、第１の気体分離膜ユニット１は他の気体分離膜ユニットであり、第２の気体分離膜ユニット２は特定気体分離膜ユニットである。以下、これについて説明する。

　図１～４はそれぞれ、本発明の第１の実施形態に係る気体システムを模式的に例示する図である。図１～４において、第１の気体分離膜ユニット１は、第１の入口１１、第１の透過出口１２、及び第１の濃縮出口１３を備える。第２の気体分離膜ユニット２は、第２の入口２１、第２の透過出口２２、及び第２の濃縮出口２３を備える。第１の入口１１には、第１の供給気体管４１が接続されている。

　連結管８は、第１の透過出口１２又は第１の濃縮出口１３と、第２の入口２１とを接続している。このとき、連結管８は、第２の入口２１に接続される供給気体管を兼ねる。また、連結管８は、第１の透過出口１２に接続される透過気体排出管又は第１の濃縮出口１３に接続される濃縮気体排出管を兼ねる。第１の透過出口１２又は第１の濃縮出口１３のうち、連結管８が接続されていない出口には、透過気体排出管又は前記濃縮気体排出管として第１の透過気体排出管５１又は第１の濃縮気体排出管６１が接続される。ここで、図１～４に示すように、必要に応じて第１の透過気体排出管５１は第２の透過気体排出管５２と合流してもよい。又は、第１の濃縮気体排出管６１は第２の濃縮気体排出管６２と合流してもよい。

　第２の透過出口２２には、第２の透過気体排出管５２が接続され、第２の濃縮出口２３には、第２の濃縮気体排出管６２が接続されている。第２の透過気体排出管５２又は前記第２の濃縮気体排出管６２は分岐部９を有し、第１の供給気体管４１又は連結管８は合流部を有する。ここで、分岐部９及び合流部１０は分岐管７により連結されている。合流部１０は、図１～４の態様においては分岐部を有する管よりも上流に位置する管である第１の供給気体管４１又は連結管８に設けられるが、合流部は、分岐部を有する管よりも供給気体の流れの上流に位置する管に設けられればよい。すなわち、合流部は、分岐部からみて、少なくとも第２の気体分離膜ユニット２を介した上流側に設けられればよい。

　分岐管７は、流れてくる気体を異なる方向へ分岐する配管であり、合流部１０は、分岐部９から分岐管７を流れてきた気体と、第１の供給気体管４１又は連結管８に流れている気体が合流する配管である。合流部１０は、気体を効率良く混合させる混合器を備えていても良い。

　ここで、図１に例示される構成は、連結管８が第１の濃縮出口１３と第２の入口２１とを接続し、第２の透過気体排出管５２が分岐部９を有し、第１の供給気体管４１が合流部１０を有する構成である。

　図２に例示される構成は、連結管８が第１の濃縮出口１３と第２の入口２１とを接続し、第２の透過気体排出管５２が分岐部９を有し、連結管８が合流部１０を有する構成である。

　図３に例示される構成は、連結管８が第１の透過出口１２と第２の入口２１とを接続し、第２の濃縮気体排出管６２が分岐部９を有し、第１の供給気体管４１が合流部１０を有する構成である。

　図４に例示される構成は、連結管８が第１の透過出口１２と第２の入口２１とを接続し、第２の濃縮気体排出管６２が分岐部９を有し、連結管８が合流部１０を有する構成である。

　第２の気体分離膜ユニット２から排出された気体は、分岐部９から分岐管７を通じて合流部１０に到達する循環流と、第１の気体分離膜ユニット１から排出された気体と共に回収される回収流に分断される。循環流を設けることで、循環流が供給される気体分離膜ユニットにおいて、分離膜に透過又は濃縮させたい成分が高濃度化し、ろ過に影響する分圧が高まるため透過又は濃縮が促進される。この操作を気体分離膜ユニットにおける気体濃度が平衡になるまで繰り返すことで、気体分離膜ユニットにおける選択分離性をさらに高め、気体分離システムとして冨化される成分を高回収率かつ高純度で得ることができる。

　特に、第１の気体分離膜ユニット１から第２の気体分離膜ユニット２へと排出される気体、すなわち連結管８を通過する気体において、分離膜を透過又は濃縮させたい成分濃度が比較的低下している。そのため、図２及び図４に例示されるような、連結管８に合流部１０を有する構成においては、第２の気体分離膜ユニット２への循環流供給による分圧の向上効果は、図１や図３に例示されるような、第１の供給気体管４１が合流部１０を有する構成に比べて高くなる。

　したがって、第１の実施形態においては、合流部１０は分岐部からみて、少なくとも第２の気体分離膜ユニット２を介した上流側に設けられればよく、図１～４に例示される態様において具体的には第１の供給気体管４１又は連結管８のいずれかに設けられていれば構わないが、合流部１０が連結管８に設けられることがより好ましい。

　第１の気体分離膜ユニット１および第２の気体分離膜ユニット２に搭載された分離膜が、いずれも冨化される成分を選択的に透過させる場合、つまり非冨化される成分よりも冨化される成分の透過度が高い場合、連結管８は、第１の気体分離膜ユニット１の第１の濃縮出口１３と第２の気体分離膜ユニット２の第２の入口２１を連結するように設けられる。また分岐部９は、第２の透過気体排出管５２に設けられる。図１及び図２は、この場合の構成例を示す図である。かかる構成において、冨化される成分は透過気体に高純度で含まれるため、透過気体を回収する。すなわち、かかる構成において、第２の透過気体排出管５２は、分岐部９を介して分岐管７及び回収装置と連結していることが好ましい。

　一方で、第１の気体分離膜ユニット１および第２の気体分離膜ユニット２に搭載された分離膜が、いずれも冨化される成分を選択的に透過させない場合、連結管８は、第１の気体分離膜ユニット１の第１の透過出口１２と第２の気体分離膜ユニット２の第２の入口２１を連結するように設けられる。また、分岐部９は第２の濃縮気体排出管６２に設けられる。図３及び図４は、この場合の構成例を示す図である。かかる構成において、冨化される成分は濃縮気体に高純度で含まれるため、濃縮気体を回収する。つまり、かかる構成において、第２の濃縮気体排出管６２は、分岐部９を介して分岐管７及び回収装置と連結していることが好ましい。

　冨化される成分を選択透過させる膜を搭載した気体分離システムを用いて第２の気体分離膜ユニット２から排出される透過気体の一部を富化気体として回収すると共に、回収しなかった透過気体を第２の気体分離膜ユニット２の供給気体と合流させることで、第２の気体分離膜ユニット２の供給側での冨化される成分の分圧が高まり、冨化される成分の透過量が増加するため、冨化される成分を高回収率かつ高純度で得ることができる。

　また、冨化される成分を選択透過させる膜を搭載した場合と同様の構成の気体分離システムにおいて、逆に非冨化される成分を選択透過する膜を用いて同様の操作を行うと、第２の気体分離膜ユニット２の、供給側の非冨化される成分の分圧が高まり、非冨化される成分の透過量が増加する。つまり透過側で非冨化される成分を高回収率かつ高純度で得ることができる。

　ここで、気体分離システムにおける各気体分離膜ユニットは、一本の気体分離膜モジュールから構成されてもよく、あるいは複数本の気体分離膜モジュールを並列または直列に配列して構成されてよい。気体分離膜モジュールに搭載される膜の形態は平膜や中空糸膜を用いることができ、モジュール化して圧力容器に収納して使用される。

　なお、ここでは第１の気体分離膜ユニットおよび第２の気体分離膜ユニットを組み合わせた構成を、第１の実施形態の構成例として詳述しているが、第１の実施形態の気体分離システム中の気体分離膜ユニットの数は、２つ以上であれば特に限定されるものではなく、気体分離膜ユニットは３つ以上あってもよい。例えば、第２の気体分離膜ユニットの第２の透過出口２２又は第２の濃縮出口２３と、さらに含まれ得る他の気体分離膜ユニットの入口とが連結管で接続されていてもよいし、第１の供給気体管は、さらに含まれ得る他の気体分離膜ユニットの透過出口又は濃縮出口と接続された連結管であってもよい。また、気体分離膜ユニットが３つ以上で構成される場合も、上述の通り、合流部は分岐部からみて、少なくとも第２の気体分離膜ユニット２を介した上流側に設けられればよい。例えば第１の気体分離膜ユニットより上流にさらに他の気体分離膜ユニットを含む場合、合流部は、当該他の気体分離膜ユニットの入口に接続された供給気体管あるいは連結管に設けられてもよい。

　同様に、ここでは第１の気体分離膜ユニットおよび第２の気体分離膜ユニットを組み合わせた場合を第１の実施形態の構成例として詳述しているが、第１の実施形態の気体分離システムにおいては、複数の気体分離システムを連結した構造とすることで、複数の分岐部や合流部、連結管を有する態様としてもよく、このように第１の実施形態の気体分離システムを複数組み合わせても、同様の効果を得ることができる。あるいは、第１の気体分離膜ユニットや、さらに含まれ得る他の気体分離膜ユニットが、第２の気体分離膜ユニットとともに特定分離膜ユニットに該当する構成を備えてもよい。

　（第２の実施形態：１つのみの気体分離膜ユニットを有する気体分離システム）
　本発明の第２の実施形態に係る気体分離システムは、２種以上の気体から少なくとも１種の成分を富化する気体分離システムであって、前記気体分離システムは特定気体分離膜ユニットを備え、前記特定気体分離膜ユニットは、供給気体の入口（以下、入口ともいう）、透過気体の排出口（以下、透過出口ともいう）、及び濃縮気体の排出口（以下、濃縮出口ともいう）を備え、前記入口には、供給気体管が接続され、前記透過出口には、透過気体排出管が接続され、前記濃縮出口には、濃縮気体排出管が接続され、前記透過気体排出管又は前記濃縮気体排出管は分岐部を有し、前記分岐部を有する管よりも上流に位置する管は合流部を有し、前記分岐部及び前記合流部が分岐管により連結している。そして、第２の実施形態に係る気体分離システムは、特定気体分離膜ユニットが気体分離システム中に１つのみ存在し、供給気体管が合流部を有し、気体分離システムは他の気体分離膜ユニットを備えないことを特徴とする。つまり本発明の第２の実施形態に係る気体分離システム２００では、１本のモジュール、または複数のモジュールが並列や直列につながれた気体分離膜ユニットを特定分離膜ユニットとして備える。以下、これについて説明する。

　図５に例示するように、特定気体分離膜ユニット２は、入口２１、透過出口２２、及び濃縮出口２３を備え、入口２１には、供給気体管４が接続されている。また、透過出口２２には透過気体排出管５が接続され、濃縮出口２３には、濃縮気体排出管６が接続されている。

　さらに、透過気体排出管５又は濃縮気体排出管６は分岐部９を有する。図５は、透過気体排出管５が分岐部を有する場合の構成例である。そして、分岐部を有する管、すなわち透過気体排出管５又は濃縮気体排出管６よりも上流に位置する管である供給気体管４は合流部１０を有する。分岐部９及び合流部１０は分岐管７により連結されている。分岐管７は流れてくる気体を異なる方向へ分岐する配管であり、合流部１０は、分岐部９から分岐管７を流れてきた気体と、供給気体管４に流れている気体が合流する配管である。合流部１０は、気体を効率良く混合させる混合器を備えていても良い。

　特定気体分離膜ユニット２から排出された気体は、分岐部９から分岐管７を通じて合流部１０に到達する循環流と、目的成分を高純度で含む気体として回収される回収流に分断される。循環流を設けることで、循環流が供給される気体分離膜ユニットにおいて、分離膜に透過又は濃縮させたい成分が高濃度化し、ろ過に影響する分圧が高まるため透過又は濃縮が促進される。この操作を気体分離膜ユニットにおける気体濃度が平衡になるまで繰り返すことで、気体分離膜ユニットにおける選択分離性をさらに高め、気体分離システムとして冨化される成分を高回収率かつ高純度で得ることができる。

　特定気体分離膜ユニット２に搭載された分離膜が、冨化される成分を選択的に透過させる場合、つまり非冨化される成分よりも冨化される成分の透過度が高い場合、分岐部９は、透過気体排出管５に設けられる。かかる構成において、冨化される成分は透過気体に高純度で含まれるため、透過気体を回収する。すなわち、かかる構成において、透過気体排出管５は、分岐部９を介して分岐管７及び回収装置と連結していることが好ましい。

　特定気体分離膜ユニット２に搭載された分離膜が、冨化される成分を選択的に透過させない場合、分岐部９は濃縮気体排出管６に設けられる。かかる構成において、冨化される成分は濃縮気体に高純度で含まれるため、濃縮気体を回収する。つまり、かかる構成において、濃縮気体排出管６は、分岐部９を介して分岐管７及び回収装置と連結していることが好ましい。

　＜気体分離膜モジュール＞
　本発明の実施形態に係る気体分離システム中の気体分離膜ユニットは、分離膜を備える。分離膜は、好ましくは気体分離膜モジュールの形態で気体分離膜ユニットに備えられる。気体分離膜ユニットは、一本の気体分離膜モジュールから構成されていても、複数本の気体分離膜モジュールを並列または直列に配列して構成されてもよい。

　気体分離膜モジュールでは、入口から濃縮出口に向かって連続的にろ過が行われる。ろ過が進むと膜を透過する成分の分圧が低下するため、気体分離膜モジュールの濃縮出口に近づくほど気体が透過しがたくなる。特に第１の実施形態において、第２の気体分離膜ユニットでは、第１の気体分離膜ユニットに比べてろ過が進んでいるため透過しがたい。そのため、透過抵抗となる膜面での濃度分極を供給気体の高流速化により解消させることが好ましい。その手段としては供給側流路材を薄型化する方法や、平膜の場合では気体分離膜モジュールの端面から供給気体を送り込み外周部から排出する方法が挙げられる。

　＜循環比＞
　回収流量に対する循環流量の比率を循環比とよぶ。循環比が大きくなるほど循環流が供給される気体分離膜ユニットでの透過量を増加させやすいが、回収流の量が小さくなるため得られる富化気体の流量は減少する傾向がある。そのため、循環比は、所望の富化気体の回収率や純度に応じて調整できる。例えば、循環比は１～１５の範囲で調整することが好ましい。なお、循環比のより好ましい範囲は、供給気体の組成によって変わるため、本範囲において適宜調整できる。

　循環比の調整手段としては、連結管または回収流の配管に設けられたバルブの開度を変更することが挙げられる。なお、回収率とは供給気体中の富化される成分に対する回収した富化される成分の比率であり、回収率が１００％に近いほど効率良く気体分離が行われていることになる。

　＜分離膜＞
　第１の実施形態の気体分離システム中の第１の気体分離膜ユニット中の分離膜及び第２の気体分離膜ユニット中の分離膜は、富化される気体の種類に応じて適宜選択できる。分離膜としては、当該技術分野においてこれまで用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。例えばシリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂などのゴム状ポリマー材料、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、セルロース、炭素などの高分子膜や、ゼオライトやシリカ、パラジウムなどの無機膜が挙げられる。

　また気体分離膜ユニットに搭載される分離膜は、均質膜、均質層と多孔層とからなる非対称膜、微多孔質膜などいずれであってもよい。分離膜の圧力容器への収納形態も、プレートアンドフレーム型、スパイラル型、中空糸型などいずれであってもよい。水素やヘリウムなどの比較的サイズの小さい気体を透過させる場合、ポリアミド膜やシリカ膜、ゼオライト膜、グラフェン膜を用いることができる。特に、ポリアミド膜はモジュールに高充填でき、気体の透過量を高めることができるため好ましい。したがって、本発明の第１の実施形態において、第１の気体分離膜ユニット中の分離膜及び第２の気体分離膜ユニット中の分離膜は、ポリアミド膜であることが好ましい。

　なお、第２の実施形態に係る気体分離システム中の気体分離膜ユニット中の分離膜においても、第１の実施形態で用いられるものと同様のものを選択することができる。また、この他の実施形態における、特定気体分離膜ユニットを含む各気体分離膜ユニット中の分離膜についても同様であり、好ましくはポリアミド膜が用いられる。

　＜ポンプによるろ過効率向上＞
　本発明の実施形態に係る気体分離システムは、例えば、水素精製、及びプラントからの排ガスやバイオガスからのメタンの回収などの方法に使用することができる。すなわち、気体分離システムにおいて、気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中の、富化される成分は特に限定されないが、水素やメタンが好ましく、水素がより好ましい。気体分離システムは、２種以上の成分を含む混合気体から少なくとも１種の成分を富化するものであればよく、例えば３種以上の成分を含む混合気体から２種以上の成分を富化するものであってもよい。本発明の実施形態に係る気体分離システムにおいて、ろ過効率を高めるために気体分離膜ユニットの前後に昇圧ポンプや減圧ポンプを設けることができる。

　＜富化方法（気体の製造方法）＞
　本実施形態に係る気体分離システムを用いた気体の製造方法について説明する。かかる気体の製造方法は、例えば本実施形態に係る気体分離システムに２種以上の成分を含む混合気体を供給する工程と、前記気体分離システム中の気体分離膜ユニットを通った透過気体又は濃縮気体を回収する工程と、を含む。

　（複数の気体分離膜ユニットを有する気体分離システム）
　第１の実施形態に係る気体分離システムを用いた気体の製造方法においては、第１の気体分離膜ユニットから排出され、第２の気体分離膜ユニットへ供給されない気体に含まれる富化される成分の気体量を、第１の気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中の富化される成分の３０体積％以上８０体積％以下に制御する工程を有することが好ましい。第１の気体分離膜ユニット１から排出され、第２の気体分離膜ユニット２へ供給されない気体とは、連結管８が第１の濃縮出口１３と第２の入口２１とを接続している場合は第１の透過出口から排出される透過気体のことをいう。また、連結管８が第１の透過出口１２と第２の入口２１とを接続している場合は第１の濃縮出口から排出される濃縮気体のことをいう。かかる気体量の割合は４０体積％以上がより好ましく、５０体積％以上がさらに好ましい。また、かかる気体量の割合は７０体積％以下が好ましく、６０体積％以下がさらに好ましい。第１の気体分離膜ユニットから排出され、第２の気体分離膜ユニットへ供給されない気体に含まれる富化される成分の気体量は、例えば供給気体量や運転圧力、温度を変更することで制御できる。

　このようにすることで、第２の気体分離膜ユニットに供給される供給気体中の富化される成分濃度が高まり、その結果、高分圧となり透過又は濃縮に係る性能が向上する。そのため、第１の気体分離膜ユニットでの分離を高回収率、高純度で行いつつ、第２の気体分離膜ユニットにおいても高回収率、高純度で分離できる。

　（１つのみの気体分離膜ユニットを有する気体分離システム）
　第２の実施形態に係る気体分離システムを用いた気体の製造方法においては、特定気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中に含まれる富化される成分の濃度を３０ｍｏｌ％以下に制御する工程、つまり供給される供給気体中の富化される成分の濃度を低く保つ工程を有することが好ましい。供給気体中に含まれる富化される成分の濃度は１０ｍｏｌ％以下がより好ましく、５ｍｏｌ％以下がさらに好ましい。供給気体中に含まれる富化される成分の濃度は、例えば吸着法や吸収法を用いることで制御できる。

　第２の実施形態に係る気体分離システムを用いる場合、供給気体が始めに分離膜によって処理される特定気体分離膜ユニットにおいて、供給される供給気体中の富化される成分の濃度を高めることができる。そのため、供給気体中の富化される成分の濃度が高濃度の場合よりも低濃度の場合の方が高い効果を発揮することができる。なお、かかる態様は、特定気体分離膜ユニットに搭載された分離膜が、冨化される成分を選択的に透過させる場合及び冨化される成分を選択的に透過させない場合のいずれにおいても好適である。

　以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。

　（気体分離膜の作製）
　抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布（通気度１．０ｃｃ／ｃｍ^２／秒）上に、ポリスルホンの１８質量％ジメチルホルムアミド（ＤＭＦ）溶液を室温（２５℃）、塗布厚み１９０μｍでキャストした後、直ちに純水中に５分間浸漬することによって、基材である不織布上に多孔性支持層を形成した。
　次に、２－エチルピペラジンが５．５質量％、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが５００ｐｐｍ（質量基準）、リン酸３ナトリウムが２．０質量％になるように溶解した水溶液に、多孔性支持層を形成した基材を１０秒間浸漬した後、エアーノズルから窒素を吹き付けて、余分な水溶液を除去した。続いて７０℃に加温した０．２質量％のトリメシン酸クロリドを含むｎ－デカン溶液を、多孔性支持体の表面に均一に塗布し、６０℃の膜面温度で３秒間保持した後に、膜面温度を１０℃まで冷却し、この温度を維持したまま空気雰囲気下で１分間放置し、分離機能層（ポリアミド膜）を形成した。得られた分離膜を垂直に保持して液切りし、６０℃の純水で２分間洗浄して分離膜を得た。

　（気体分離膜の酸素に対するヘリウム透過性）
　２５℃の温室下で風乾した分離膜を有効膜面積２５ｃｍ^２の円形に切り取り、供給側と透過側の２つのチャンバに隔てられた透過セルに取り付け、ヘリウム６０モル％、酸素４０モル％を含む供給気体を圧力０．１ＭＰａ、温度２５℃、１００ｍＬ／ｍｉｎにて供給し透過側を－０．０５ＭＰａに減圧して運転した。運転開始から３０分間後に透過気体をサンプリングし、ＴＣＤ（熱伝導度検出器）を有するガスクロマトグラフィーへ透過気体を送り、この混合気体における透過気体の濃度を分析し、ヘリウムおよび酸素の透過度を算出した。また、ヘリウム透過度を酸素透過度で除して、ヘリウム／酸素選択性を算出した。その結果、ヘリウム透過度は１０ｎｍｏｌ／ｍ^２／ｓ／Ｐａ、酸素透過度は０．５ｎｍｏｌ／ｍ^２／ｓ／Ｐａ、ヘリウム／酸素選択性は２０であった。

　（気体分離膜のメタンに対するヘリウム透過性）
　気体の種類を酸素からメタンに変更したこと以外は全て気体分離膜の酸素に対するヘリウム透過性評価と同様にして、ヘリウムおよびメタンの透過度、ヘリウム／メタン選択性を算出した。その結果、ヘリウム透過度は１０ｎｍｏｌ／ｍ^２／ｓ／Ｐａ、メタン透過度は０．２５ｎｍｏｌ／ｍ^２／ｓ／Ｐａ、ヘリウム／メタン選択性は４０であった。

　なお、本実施例では作製した分離膜を用い、ヘリウムを含む混合気体に対し分離を行ったが、当該分離膜は水素やヘリウムなど、比較的サイズの小さい気体を選択的に透過できるポリアミド膜である。したがって、本実施例で用いた各気体分離システムに水素を含む混合気体を用いた場合も同様に分離を行うことができ、同様に本発明の効果を得ることができる。また、富化される気体の種類に応じて分離膜の種類を適宜変更した場合であっても、同様に本発明の効果が得られることは上述の通りである。

　（気体分離膜モジュール）
　気体分離膜を幅３００ｍｍに裁断した後、２５℃の温室下で風乾後に折り畳み、供給側流路材（Ｄｉｏｍｅｓｈ　ＰＥＴ－Ｓｃｒｅｅｎ　１００－５５ＰＴ（ｉｎｎｏｖｅｘ社製））を折り畳まれた分離膜に挟んだ。気体分離膜の透過側面に、透過側流路材（Ｄｉｏｍｅｓｈ　ＰＥＴ－Ｓｃｒｅｅｎ　１００－５５ＰＴ（ｉｎｎｏｖｅｘ社製））を配置し、透過側流路材の端部３辺に接着剤を塗布し、これらの積層物（リーフ数：５枚、有効膜面積１．０ｍ^２）を、ＡＢＳ樹脂製集水管（幅：３００ｍｍ、径：１７ｍｍ、孔数８０個×直線２列）にスパイラル状に巻囲し、直径２．５インチの分離膜モジュールを作製した。

　（ヘリウム回収率およびヘリウム純度）
　表に示す条件で、気体分離システムによるヘリウム及び酸素を含む混合気体の分離を行った。運転温度は３０℃であり、各気体分離膜ユニットの運転圧力は０．１ＭＰａであった。
　運転開始から１時間後の透過気体を質量分析計（ＵＬＶＡＣ　ＳＯＬＵＴＩＯＮＳ社製　ＣＧＭ２－０５１）でサンプリングし、ヘリウムと酸素の体積を分析し、下記式からヘリウム純度を算出した。
　ヘリウム純度（体積％）＝透過ヘリウム量（Ｌ／分）／透過気体（ヘリウムと酸素の合計）量（Ｌ／分）×１００
　引き続き、透過気体を石鹸膜式流量計（堀場エステック社製　ＶＰ－１Ｕ）に送り込み、得られた測定値を透過気体量（Ｌ／分）とし、下記式からヘリウム回収率を算出した。
　ヘリウム回収率（体積％）＝供給ヘリウム量（Ｌ／分）／透過気体（ヘリウムと酸素の合計）量（Ｌ／分）×（ヘリウム純度／１００）×１００
　なお、供給ヘリウム量は、各実施例における供給流量とヘリウム体積％の積を１００で除した値である。

　（メタン回収率およびメタン純度）
　気体の種類としてメタン６０モル％及びヘリウム４０モル％を含む混合気体に変更し、ヘリウム純度および回収率と同様の方法でメタン純度および回収率を算出したこと以外は全てヘリウム回収率およびヘリウム純度と同様にして評価した。

　（実施例１）
　図１に示す構成の気体分離システムにおいて、気体分離システムによるヘリウム６０モル％及び酸素４０モル％を含む混合気体（７Ｌ／分）の分離を行った。結果を表１に示す。

　（実施例２～７）
　気体分離システムの構成を図２に示すものに変更し、モジュール本数及び循環比を表の通りに変更したこと以外は全て実施例１と同様にして、気体分離システムの性能を評価した。結果を表１に示す。

　（実施例８～１２）
　供給気体をメタン６０モル％及びヘリウム４０モル％とし、気体分離システムの構成を図４に示すものに変更し、モジュール本数及び循環比を表２の通りに変更したこと以外は全て実施例１と同様にして、気体分離システムの性能を評価した。結果を表２に示す。

　（実施例１３～１６）
　供給気体をヘリウム及び酸素を含み、表４に示す組成に調製した混合気体（３Ｌ／分）とし、気体分離システムの構成を図５に示すものに変更し、モジュール本数及び循環比を表４の通りに変更したこと以外は全て実施例１と同様にして、気体分離システムの性能を評価した。結果を表４に示す。

　（比較例１）
　図１に示す気体分離システムの構成において、第２の気体分離膜ユニットにおける第２の透過気体排出管を設けず、第２の透過出口を封止したこと以外は全て実施例１と同様にして気体分離システムを運転した。結果を表３に示す。すなわち第１の気体分離膜ユニットでのヘリウム分圧が高くなったものの、第１の気体分離膜ユニットでのろ過が十分に行われずヘリウムの回収率が悪化した。

　（比較例２）
　図２に示す気体分離システムの構成において、第２の気体分離膜ユニットにおいて第２の透過気体排出管に分岐部を設けなかったこと以外は、全て実施例２と同様にして、気体分離システムを運転した。結果を表３に示す。すなわち第２の気体分離膜ユニットにおけるヘリウム分圧が低下し、ヘリウム透過量が悪化したため、気体分離システムで回収したヘリウムの純度が悪化した。

　（比較例３～６）
　気体分離システムの構成を図６に示すように分岐部を設けない構成としたこと以外は、全て実施例１３～１６と同様にして、気体分離システムを運転した。図６の気体分離システム３００における気体分離膜ユニット１は、供給気体管４が接続された入口１１、透過気体排出管５が接続された透過出口１２、濃縮気体排出管６が接続された濃縮出口１３を備える。結果を表４に示す。すなわち気体分離膜ユニットにおけるヘリウム分圧が低下し、ヘリウム透過量が悪化したため、気体分離システムで回収したヘリウムの純度が悪化した。

　表１～表４に示す結果から明らかなように、実施例１～１６における気体分離システムは、冨化される成分について高回収率及び高純度を両立できる結果となった。かかる気体分離システムは、２種以上の成分を含む混合気体から少なくとも一種の成分を富化する分離に優れているといえる。

　本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、２０２０年１２月２日出願の日本特許出願（特願２０２０－１９９９９９）及び２０２０年１２月２３日出願の日本特許出願（特願２０２０－２１３３０７）に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

　本発明の気体分離システムは、冨化される成分を高回収率及び高純度で精製できるため、２種以上の気体から少なくとも１種を富化する分離に好適に用いることができる。

１００、２００、３００　気体分離システム
１　気体分離膜ユニット（第１の気体分離膜ユニット）
１１　供給気体の入口（第１の入口）
１２　透過気体の排出口（第１の透過出口）
１３　濃縮気体の排出口（第１の濃縮出口）
２　特定気体分離膜ユニット（第２の気体分離膜ユニット）
２１　供給気体の入口（第２の入口）
２２　透過気体の排出口（第２の透過出口）
２３　濃縮気体の排出口（第２の濃縮出口）
４　供給気体管
４１　第１の供給気体管
５　透過気体排出管
５１　第１の透過気体排出管
５２　第２の透過気体排出管
６　濃縮気体排出管
６１　第１の濃縮気体排出管
６２　第２の濃縮気体排出管
７　分岐管
８　連結管
９　分岐部
１０　合流部

Claims (15)

1. 　２種以上の成分を含む混合気体から少なくとも１種の成分を富化する気体分離システムであって、
   　前記気体分離システムは特定気体分離膜ユニットを備え、
   　前記特定気体分離膜ユニットは、供給気体の入口、透過気体の排出口、及び濃縮気体の排出口を備え、
   　前記供給気体の入口には、供給気体管が接続され、
   　前記透過気体の排出口には、透過気体排出管が接続され、
   　前記濃縮気体の排出口には、濃縮気体排出管が接続され、
   　前記透過気体排出管又は前記濃縮気体排出管は分岐部を有し、前記分岐部を有する管よりも上流に位置する管は合流部を有し、前記分岐部及び前記合流部が分岐管により連結されている、気体分離システム。
2. 　前記特定気体分離膜ユニットは、前記気体分離システム中に１つのみ存在し、
   　前記供給気体管が前記合流部を有し、他の気体分離膜ユニットを備えない、請求項１に記載の気体分離システム。
3. 　請求項１または２に記載の気体分離システムを用いた気体の製造方法であって、
   　前記特定気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中の、富化される成分の濃度を３０ｍｏｌ％以下に制御する工程を含む、気体の製造方法。
4. 　前記特定気体分離膜ユニットの上流に他の気体分離膜ユニットをさらに備え、前記他の気体分離膜ユニットを通った透過気体又は濃縮気体が、前記特定気体分離膜ユニットに供給される、請求項１に記載の気体分離システム。
5. 　前記特定気体分離膜ユニットの下流に他の気体分離膜ユニットをさらに備え、前記特定気体分離膜ユニットを通った透過気体又は濃縮気体が、前記他の気体分離膜ユニットに供給される、請求項１に記載の気体分離システム。
6. 　前記特定気体分離膜ユニット中の分離膜が、ポリアミド膜である、請求項１、２、４または５のいずれか１項に記載の気体分離システム。
7. 　前記特定気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中の、富化される成分が水素である、請求項１、２、４、５または６のいずれか１項に記載の気体分離システム。
8. 　２種以上の成分を含む混合気体から少なくとも１種の成分を富化する気体分離システムであって、
   　前記気体分離システムは、連結管によって接続された第１の気体分離膜ユニット及び第２の気体分離膜ユニットを含み、
   　前記第１の気体分離膜ユニットは、第１の入口、第１の透過出口、及び第１の濃縮出口を備え、
   　前記第２の気体分離膜ユニットは、第２の入口、第２の透過出口、及び第２の濃縮出口を備え、
   　前記第１の入口には第１の供給気体管が接続され、
   　前記連結管は、前記第１の透過出口又は前記第１の濃縮出口と、前記第２の入口とを連結し、
   　前記第２の透過出口には、第２の透過気体排出管が接続され、
   　前記第２の濃縮出口には、第２の濃縮気体排出管が接続され、
   　前記第２の透過気体排出管又は前記第２の濃縮気体排出管は分岐部を有し、前記第１の供給気体管又は前記連結管は合流部を有し、前記分岐部及び前記合流部が分岐管により連結されている、気体分離システム。
9. 　前記連結管が前記合流部を有する、請求項８に記載の気体分離システム。
10. 　前記第１の気体分離膜ユニット中の分離膜及び前記第２の気体分離膜ユニット中の分離膜が、ポリアミド膜である、請求項８または９に記載の気体分離システム。
11. 　前記連結管は、前記第１の濃縮出口と、前記第２の入口とを連結しており、
    　前記分岐部は、前記第２の透過気体排出管に設けられる、請求項８～１０のいずれか１項に記載の気体分離システム。
12. 　前記連結管は、前記第１の透過出口と、前記第２の入口とを連結しており、
    　前記分岐部は、前記第２の濃縮気体排出管に設けられる、請求項８～１０のいずれか１項に記載の気体分離システム。
13. 　前記第２の透過気体排出管又は前記第２の濃縮気体排出管は、前記分岐部を介して前記分岐管及び回収装置と連結している、請求項１１又は１２に記載の気体分離システム。
14. 　前記第１の気体分離膜ユニット及び前記第２の気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中の、富化される成分が水素である、請求項１１に記載の気体分離システム。
15. 　請求項１１又は１２に記載の気体分離システムを用いた気体の製造方法であって、
    　前記第１の気体分離膜ユニットから排出され、前記第２の気体分離膜ユニットへ供給されない気体に含まれる富化される成分の気体量を、前記第１の気体分離膜ユニットへ供給される供給気体中の富化される成分の３０体積％以上８０体積％以下に制御する工程を含む、気体の製造方法。
     

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