WO2021260794A1

WO2021260794A1 - 伝動装置

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Publication number: WO2021260794A1
Application number: PCT/JP2020/024609
Authority: WO
Inventors: 隆士渥美
Original assignee: 武蔵精密工業株式会社
Priority date: 2020-06-23
Filing date: 2020-06-23
Publication date: 2021-12-30
Also published as: US20230279946A1; DE112020007342T5; JPWO2021260794A1; CN115885120A

Abstract

相互間が着脱可能に結合される第１，第２ケースを少なくとも含む伝動ケースと、伝動ケース内で回転可能な伝動軸を有して伝動ケースに収容される伝動機構と、伝動軸を随時にロック可能として伝動ケースに収容されるパーキングロック機構とを備えた伝動装置のパーキングロック機構（２０）において、ディテントアーム（２６）は、これの回動支点部（２２）が第１ケース（１１）内に位置する一方、該ディテントアームとディテントばね（２８）との係合部が第２ケース（１２）内に位置しており、第１ケース（１１）には、第１，第２ケース相互の合わせ面（ｆ）よりも第２ケース（１２）側に張出す支持突部（４０）が設けられていて、該支持突部（４０）にディテントばね（２８）の固定端部（２８ｂ）が、前記合わせ面（ｆ）よりも第２ケース（１２）側で取付けられる。これにより、ケースの小型化と、組立作業性及びディテントアームの操作性を高められる。

Description

伝動装置

　本発明は、伝動装置、特に相互間が着脱可能に結合される第１，第２ケースを少なくとも含む伝動ケースと、伝動ケース内で回転可能な伝動軸を有して伝動ケースに収容される伝動機構と、伝動軸を随時にロック可能であって伝動ケース内に設けられるパーキングロック機構とを備えた伝動装置に関する。

　上記伝動装置において、パーキングロック機構が、伝動軸に相対回転不能に設けたパーキングギヤと、パーキングギヤと係合することでパーキングギヤをロック可能なパーキングポールと、駆動されることでパーキングポールをパーキングギヤとのロック位置及びパーキングギヤから離脱したロック解除位置に回動させるロッドと、第１ケースに基部が回動可能に支持されて、その回動によりロッドを駆動し得るようロッドに連結したディテントアームと、ディテントアームの先部に係脱可能に係合してディテントアームを特定のアーム回動位置に弾発、保持するディテントばねとを有し、ディテントアームのアーム回動位置を切換えることで、パーキングポールをロック位置とロック解除位置との間で移動可能としたものは、例えば、特許文献１に開示されるように従来公知である。

日本特開２０１２－５２６４６号公報

　従来の伝動装置において、ディテントアームは、これの回動によりロッドを軸方向に移動させるための回動角度とアーム長さが設定されており、その回動角度とアーム長さに応じた十分な回動スペースが必要となる。そして、この回動スペースを全て第１ケース内に確保しようとすると、第１ケース、延いては伝動ケースが大型化する要因となる。

　そこで、ディテントアームを第１，第２ケース内に跨がるよう配置すれば、第２ケース内もディテントアームの回動スペースに利用可能となって第１ケースを小型化できる。この場合のディテントばねの配置・取付構造としては、例えば、［１］ディテントばねの基端部（即ち固定端）を第２ケースに取付けるか、又は、［２］ディテントばねの基端部を第１ケースに取付けた上で、その取付部からディテントばねの先端部（即ち自由端）を第２ケース内のディテントアーム先部まで長く延ばすことが考えられる。

　ところが上記した［１］［２］の何れの構造にも一長一短がある。即ち、［１］の場合は、第１，第２ケースの結合後には相互に係合状態となるディテントばねとディテントアームとが、両ケースの結合前には非係合状態にある。このため、両ケースの結合作業の際には、ディテントばねとディテントアームとを、外部から十分には視認できない状態で手探りで係合させる必要があり、組立作業性が悪くなる不都合がある。

　一方、［２］の場合は、図９（ｂ）で明らかなように、ディテントアームの先部とディテントばねの先端部（例えばローラ）との接触部の接線Ｙと、ディテントばねの曲げ変形の起点とローラ中心とを結ぶ仮想直線Ｚとがなす角度βが比較的大きくなる。そのため、［２］の場合の方が［１］の場合よりも、ディテントばねに抗してディテントアームを回動させるためにより大きな操作トルクが必要となって、ディテントアームの操作性が悪くなる不都合がある。

　本発明は、上記に鑑み提案されたもので、従来構造の上記問題を簡単な構造で一挙に解決可能とした伝動装置を提供することを目的とする。

　上記目的を達成するために、本発明は、相互間が着脱可能に結合される第１，第２ケースを少なくとも含む伝動ケースと、前記伝動ケース内で回転可能な伝動軸を有して該伝動ケースに収容される伝動機構と、前記伝動軸を随時にロック可能であって前記伝動ケース内に設けられるパーキングロック機構とを備えており、前記パーキングロック機構が、前記伝動軸に相対回転不能に設けたパーキングギヤと、前記パーキングギヤと係合することで該パーキングギヤをロック可能なパーキングポールと、駆動されることで前記パーキングポールを前記パーキングギヤとのロック位置及び該パーキングギヤから離脱したロック解除位置に移動させるロッドと、前記第１ケースに基部が回動可能に支持されて、その回動により前記ロッドを駆動し得るよう該ロッドに連結したディテントアームと、前記ディテントアームの先部に係脱可能に係合して該ディテントアームを特定のアーム回動位置に弾発、保持するディテントばねとを有する伝動装置において、前記ディテントアームは、該ディテントアームの回動支点部が前記第１ケース内に位置する一方、該ディテントアームと前記ディテントばねとの係合部が前記第２ケース内に位置しており、前記第１ケースには、前記第１，第２ケース相互の合わせ面よりも前記第２ケース側に張出す支持突部が設けられていて、その支持突部に前記ディテントばねの固定端部が前記合わせ面よりも前記第２ケース側で取付けられることを第１の特徴とする。

　また本発明は、第１の特徴に加えて、前記支持突部は、前記第１ケースとは別体の支持部材で構成されていて、その支持部材が該第１ケースに固定されることを第２の特徴とする。

　また本発明は、第２の特徴に加えて、前記支持部材は、前記ロッドの移動を案内するロッド案内部を有することを第３の特徴とする。

　また本発明は、第１～第３の何れかの特徴に加えて、前記ロッドは、前記伝動軸と直交する投影面で見て前記ディテントアームの回動軸線と略直交する方向に延びていて、前記ディテントばねとは前記伝動軸の軸方向に互いに重ねて配置されることを第４の特徴とする。

　第１の特徴によれば、ディテントアームは、これの回動支点部が第１ケース内に位置する一方、ディテントばねとの係合部が第２ケース内に位置しており、第１ケースには、第１，第２ケース相互の合わせ面よりも第２ケース側に張出す支持突部が設けられていて、その支持突部にディテントばねの固定端部が該合わせ面よりも第２ケース側で取付けられるので、第２ケースの内部空間をディテントアームの回動スペースの一部として活用可能となり、それだけ第１ケース延いては伝動ケースを小型化することができる。しかも共通の第１ケースにディテントアーム及びディテントばねを纏めて取付けるため、両者の係合作業を、第１，第２ケースの結合前に第１ケース側で容易且つ的確に行うことができ、組立作業性が良好である。またディテントばねの固定端部の位置が第２ケース寄りとなることで、ディテントアームの回動操作時に同アームからディテントばねに押し曲げ力を効率よく作用させることができるので、ディテントばねに抗してディテントアームを回動させるための操作トルクの軽減が図られ、ディテントアームの操作性が良好となる。

　また第２の特徴によれば、ディテントばねの固定端部を取付ける支持突部は、第１ケースとは別体の支持部材で構成されていて、その支持部材が第１ケースに後付けで固定されるので、支持突部が合わせ面よりも第２ケース側に張り出していても、その支持突部に邪魔されずに合わせ面の加工を容易且つ的確に行うことができる。

　また第３の特徴によれば、支持部材は、パーキングポールをロック位置・ロック解除位置に移動させるロッドの移動を案内するロッド案内部を有するので、ディテントばねの固定端部を嵩上げして取付ける支持部材が、ロッドの移動の案内手段に兼用され、それだけ装置の構造簡素化に寄与することができる。

　また第４の特徴によれば、ロッドは、伝動軸と直交する投影面で見てディテントアームの回動軸線と略直交する方向に延びていて、ディテントばねとは伝動軸の軸方向に互いに重ねて配置されるので、それらロッドとディテントばねとの重なり配置により、パーキングロック機構をディテントアームの回動軸方向に小型化することが可能となる。

図１は本発明の一実施形態に係る伝動装置の内部構造を、伝動ケースの第２ケース及び第２ケースに取り付けられた軸受等を取外した状態で右側から見た図（図２の１矢視図）である。図２は図１の２－２線断面図である。図３はパーキングロック機構の要部断面図（図１の３矢視部拡大断面図）である。図４は第２ケースを省略して描いた、図３の４－４線断面図である。図５はパーキングロック機構と第１ケースとの配置関係を示す斜視図である。図６はパーキングロック機構各部を図５とは異なる方向から見た斜視図である。図７は図６と同方向から見たパーキングロック機構の分解斜視図である。図８はパーキングロック機構各部の相対的な動きを示す概略作用説明図であって、図８（ａ）はロック作動状態を、図８（ｂ）はロック解除状態（実線）・解除途中状態（鎖線）を示す図である。図９はディテントアームの回動操作時にディテントアームがディテントばねに及ぼす力の掛かり具合の違いを説明する説明図であって、図９（ａ）は実施形態を、図９（ｂ）は比較例をそれぞれ示す図である。

Ｇ・・・・・・伝動機構としての減速歯車機構
Ｒ・・・・・・伝動装置としての減速装置
Ｓ１・・・・・伝動軸としての入力軸
１０・・・・・伝動ケース
１１，１２・・第１，第２ケース
ｆ・・・・・・合わせ面
２０・・・・・パーキングロック機構
２１・・・・・パーキングギヤ
２２・・・・・回動支点部としてのディテント軸
２３・・・・・パーキングポール
２３Ｌ，２３ＵＬ・・ロック位置，ロック解除位置
２６・・・・・ディテントアーム
２６ａ，２６ｂ・・ディテントアームの先部，基部
２７・・・・・ロッド
２８・・・・・ディテントばね
２８ｂ・・・・固定端部としての基端部
４０・・・・・支持突部としての支持部材
４０ｇ・・・・ロッド案内部

　先ず、図１，図２において、車両、例えば自動車に搭載したパワーユニットＰＵは、動力源としての電動モータＭ（図２鎖線を参照）と、電動モータＭの出力を減速する減速装置Ｒと、減速装置Ｒの出力を左右の第１，第２出力軸５１，５２に対し差動回転を許容しつつ分配する差動装置Ｄとを備える。

　減速装置Ｒは、本発明の伝動装置の一例であって、車体適所に支持した伝動ケース１０を有する。その伝動ケース１０内には、伝動機構としての減速歯車機構Ｇと、減速歯車機構Ｇ中の入力軸Ｓ１の回転を随時にロック可能なパーキングロック機構２０と、上記した差動装置Ｄとが収納される。また電動モータＭは、これのモータケースが伝動ケース１０の一側面（より具体的には、後述する第２ケース１２の外側面）に、差動装置Ｄとはオフセットした位置において装着される。

　尚、本明細書で前後・左右・上下の各方向は、パワーユニットＰＵの車両搭載状態での前後・左右・上下の各方向をいう。

　伝動ケース１０は、左右一対の第１，第２ケース１１，１２より分割構成される。第１，第２ケース１１，１２は、各々の外周部に互いに重なり合う取付フランジ部１１ｆ，１２ｆを一体に有しており、その両取付フランジ部１１ｆ，１２ｆの合わせ面ｆを貫通する複数のボルトＢ１により、第１，第２ケース１１，１２の相互間が着脱可能に結合される。而して、上記合わせ面ｆは、鉛直且つ前後方向に延びる同一平面上にあり、第１，第２ケース１１，１２相互の合わせ面を構成する。

　また減速歯車機構Ｇは、入力軸Ｓ１に固設される入力ギヤＧ１と、入力軸Ｓ１の後下方に在って入力軸Ｓ１と平行な中間軸Ｓ２に固定、支持され且つ入力ギヤＧ１に噛合する中間ギヤＧ２と、中間ギヤＧ２に噛合する出力ギヤＧ３とを有する。その出力ギヤＧ３は、入力軸Ｓ１に平行な所定軸線Ｘ１（即ち前記第１，第２出力軸５１，５２の軸線）回りに回転可能に配置される。

　入力軸Ｓ１及び中間軸Ｓ２は、何れも第１，第２ケース１１，１２に各両端部が軸受を介してそれぞれ水平軸線回りに回転自在に支持される。また中間ギヤＧ２は、本実施形態では入力ギヤＧ１に噛合する大径の第１中間ギヤ部Ｇ２ａと、第１中間ギヤ部Ｇ２ａと一体的に同軸回転し且つ出力ギヤＧ３と噛合する小径の第２中間ギヤ部Ｇ２ｂとを有した二段ギヤで構成されていて、入力ギヤＧ１の回転を二段階に減速して出力ギヤＧ３側へ伝達する。

　入力軸Ｓ１は、電動モータＭの不図示の出力軸に連動、連結されて、電動モータＭから回転駆動力を受けるものであり、本発明の伝動軸の一例である。また出力ギヤＧ３は、差動装置Ｄにおけるデフケース３０の外周部に固定（例えば溶接）される。

　伝動ケース１０内の底部には、潤滑油が貯溜されており、その油面は、中間ギヤＧ２及び出力ギヤＧ３の下部が一部浸漬する程度に設定される。而して、減速歯車機構Ｇの伝動中、入力ギヤＧ１、中間ギヤＧ２及び出力ギヤＧ３が例えば図１の白抜き矢印の方向に回転し、その回転に伴い、中間ギヤＧ２により撥ね上げられ飛散する潤滑油の一部はパーキングロック機構２０側に向かい、また出力ギヤＧ３により撥ね上げられ飛散する潤滑油の一部は、伝動ケース１０上部に配設した油捕集タンク５５の入口側に向かう。

　油捕集タンク５５の底壁には、不図示の複数の油孔が設けられ、これら油孔から油捕集タンク５５内の潤滑油が減速歯車機構Ｇ、主として中間ギヤＧ２及び出力ギヤＧ３に滴下される。尚、伝動ケース１０内の上部には、油捕集タンク５５に隣接してブリーザ室ＢＣが設けられ、このブリーザ室ＢＣを介して伝動ケース１０内が大気に連通する。

　差動装置Ｄの構造及び機能は従来周知である。本実施形態の差動装置Ｄのデフケース３０は、例えば歯車式の差動機構を内蔵すると共に伝動ケース１０に回転自在に支持される。そして、このデフケース３０に対し出力ギヤＧ３から入力された回転駆動力は、第１，第２出力軸５１，５２に差動回転を許容しつつ分配、伝達され、これにより、第１，第２出力軸５１，５２に連なる左右の駆動車輪が回転駆動される。

　次に図３～図８も併せて参照して、パーキングロック機構２０の一例を説明する。

　本実施形態のパーキングロック機構２０は、入力ギヤＧ１の側方で入力軸Ｓ１に固設されるパーキングギヤ２１と、上下方向の回動軸線Ｘ２回りに回動可能として第１ケース１１に支持されるディテント軸２２と、ディテント軸２２の回動に連動してパーキングギヤ２１に係脱可能なパーキングポール２３と、パーキングポール２３をパーキングギヤ２１から離反させる方向（即ちパーキングギヤ２１との係合を解除する方向）に常時付勢する戻しばね２４と、ディテント軸２２の回動に連動してパーキングポール２３をパーキングギヤ２１に対し係脱させる連動機構Ｉとを備える。

　パーキングポール２３の基部は、第１，第２ケース１１，１２の内壁に両端部が嵌挿、支持された枢軸２５を介して、伝動ケース１０に揺動可能に支持される。パーキングポール２３は、これの先端寄りの中間部一側においてパーキングギヤ２１に係止可能な突起爪部２３ｔを有し、また先端部の他側において、連動機構Ｉの後述するカム部材２９から押圧力を受ける被押圧部２３ｆを有する。

　そして、パーキングポール２３は、これの突起爪部２３ｔがパーキングギヤ２１と係合して入力軸Ｓ１の回転規制を行うロック位置２３Ｌ（図８（ａ）を参照）と、そのロック位置２３Ｌからパーキングギヤ２１と離れる側に在って上記係合を解除するロック解除位置２３ＵＬ（図８（ｂ）を参照）との間を枢軸２５の軸線回りに揺動可能である。

　上記連動機構Ｉは、ディテント軸２２に基部２６ｂが固定（図示例はビス止め）されてディテント軸２２と一体に回動するディテントアーム２６と、このディテントアーム２６の先部２６ａ寄りの中間部に基端部２７ａが枢支連結されるロッド２７と、ディテントアーム２６の先部２６ａに設けた複数の被係合部（例えば位置決め凹部２６ｖ１，２６ｖ２）に対し選択的に係合してディテントアーム２６を特定の回動位置（後述する第１，第２回動位置）に保持するディテントばね２８と、ロッド２７の先部に軸方向所定範囲内で摺動可能に嵌合保持され且つパーキングポール２３に接離可能なカム部材２９と、カム部材２９を上記所定範囲内で一方側（即ちロッド２７の先端側）の摺動限に偏倚、保持する緩衝ばね４７とを備えている。

　ロッド２７の基端部２７ａは鉤状に折り曲げられており、ディテントアーム２６に直交状態で貫通する。

　カム部材２９は、図８で明らかなように小径部２９ｂと、小径部２９ｂの、ディテントアーム２６側の一端に連設される大径部２９ａとを有する段付き筒状に形成され、小径部２９ｂと大径部２９ａとの間はテーパ状の段差面（カム面）で接続される。緩衝ばね４７は、ロッド２７の中間部外周に突設したばね受け突部と、カム部材２９の大径部２９ａとの間に縮設される。

　而して、ディテントアーム２６が図８（ａ）に示す第１回動位置にあるときに、カム部材２９は、これの大径部２９ａがパーキングポール２３の上記した被押圧部２３ｆに係合することで、パーキングポール２３を前記ロック位置２３Ｌ側に押し上げ、保持可能である。この場合、緩衝ばね４７は、カム部材２９の大径部２９ａが被押圧部２３ｆに接触してパーキングポール２３を押し上げる際の衝撃を吸収緩和するのに有効である。

　ところでディテントばね２８は、図４で明らかなように、側面視で第１，第２ケース１１，１２相互の合わせ面ｆに略沿うように延びる板ばねより構成されていて、全体が第２ケース１２内に配置される。そして、ディテントばね２８は、これの固定端部としての基端部２８ｂが、第１ケース１１の内面に支持部材４０を介して取付けられる。

　ディテントばね２８の先部は、ディテントアーム２６との干渉を回避すべくフォーク状に形成され且つその先端部が目玉状に巻回されてローラ支軸４１を両端支持する。そのローラ支軸４１の中間部には、ディテントアーム２６の先部２６ａに設けた前記被係合部（位置決め凹部２６ｖ１，２６ｖ２）に係脱可能なローラ４２が回転自在に保持される。そして、ディテントばね２８の先部（ローラ４２）とディテントアーム２６との係合部は、前記合わせ面ｆよりも第２ケース１２側に位置している。

　次に上記支持部材４０の一例について、主として図３～図７を参照して説明する。即ち、支持部材４０は、第１ケース１１とは別部品の枠体で構成されるものであって、剛性を有し且つ中空ボックス状に形成される。その支持部材４０は、これの基部４０ｂの一側に複数のボルトＢ２で第１ケース１１に後付けで固定される。また支持部材４０の先部４０ａは、前記合わせ面ｆよりも第２ケース１２側に張出しており、その先部４０ａに、ディテントばね２８の基端部２８ｂ即ち固定端部が装着（例えば複数のボルトＢ３で固定）される。

　かくして、支持部材４０は、第１ケース１１上において、ディテントばね２８に対する固定支持部の高さ位置を合わせ面ｆを超えて第２ケース１２側に嵩上げするものであって、本発明の支持突部の一例である。尚、本実施形態では、支持部材４０を第１ケース１１と別部品としたが、これと同様の機能を果たす支持突部を、第１ケース１１の内壁に一体に形成してもよい。

　而して、ディテントアーム２６は、これの回動支点部（即ちディテント軸２２）が第１ケース１１内に位置する一方で、これの先部２６ａが前記合わせ面ｆを超えて第２ケース１２内に張り出しており、その張り出した先部２６ａと、ディテントばね２８との係合部が第２ケース１２内に位置する配置となっている。

　また本実施形態の支持部材４０は、カム部材２９付きのロッド２７を軸方向に摺動可能に貫通、抱持させてロッド２７（従ってカム部材２９）の軸方向移動を案内する中空のロッド案内部４０ｇを有する。このロッド案内部４０ｇは、カム部材２９がパーキングポール２３と対応する位置から逸脱するのを規制する機能を果たし、これにより、カム部材２９をパーキングポール２３の被押圧部２３ｆに対し常に的確に係合、押圧可能となっている。

　しかも支持部材４０は、図５、図８で明らかなようにパーキングポール２３の被押圧部２３ｆが支持部材４０内に突入するのを許容する開口部４０ｏを有する。即ち、パーキングポール２３の被押圧部２３ｆは、開口部４０ｏを通してロッド２７上のカム部材２９（大径部２９ａ）に係脱可能となっている。

　また特に実施形態の開口部４０ｏの周縁部は、図８（ｂ）でも明らかなように、戻しばね２４でパーキングギヤ２１との係合解除方向に付勢されたパーキングポール２３の中間部に係合可能である。即ち、その係合により、開口部４０ｏの周縁部は、パーキングポール２３の係合解除方向への後退限を規制するストッパとして機能する。

　また本実施形態のロッド２７は、入力軸Ｓ１と直交する投影面（図３参照）で見てディテントアーム２６の回動軸線Ｘ２と略直交する方向に延びていて、ディテントばね２８とは入力軸Ｓ１の軸方向（即ち左右方向）に互いに重ねて配置される。

　ところで図１，図３は、パーキングロック機構２０のロック作動状態を示す。この状態では、ディテントアーム２６（従ってディテント軸２２）が第１回動位置に在って、図８（ａ）でも明らかなようにロッド２７上のカム部材２９の大径部２９ａが戻しばね２４の弾発力に抗してパーキングポール２３を前記ロック位置２３Ｌに押し上げ、保持している。また、この状態は、ディテントばね２８がディテントアーム２６の第１位置決め凹部２６ｖ１に弾発、係合してディテントアーム２６を第１回動位置に保持することで、維持される。

　このロック作動状態よりディテントアーム２６（従ってディテント軸２２）が第２回動位置まで回動操作されると、これに連動してロッド２７が前方に引かれる。それに伴い、図８（ｂ）でも明らかなように、パーキングポール２３の被押圧部２３ｆがカム部材２９の小径部２９ｂに対向するようになって、カム部材２９のパーキングポール２３に対する押し上げ力が解除される。これにより、パーキングポール２３は、戻しばね２４の弾発力で前記ロック解除位置２３ＵＬまで後退揺動し、パーキングロック機構２０はロック解除状態となる。この状態は、ディテントばね２８がディテントアーム２６の第２位置決め凹部２６ｖ２に弾発、係合してディテントアーム２６を第２回動位置に保持することで、維持される。

　また、ディテント軸２２は、第１ケース１１内で上下方向に延びており、その軸方向中間部が、第１ケース１１内面の複数の張出壁部に回転自在に嵌合、支持される。そして、その一部の張出壁部（図示例では最下位置の張出壁部１１ｗ）には、ディテント軸２２外周の環状溝に相対回動可能に係合する抜け止め用ボルトＢ４が螺合される。

　更に第１ケース１１の上部には、ディテント軸２２を回動操作するアクチュエータ６０が取付けられる。このアクチュエータ６０は、ディテント軸２２（従ってディテントアーム２６）を前記した第１回動位置と第２回動位置との間で選択的に回動操作可能である。またアクチュエータ６０は、車載の電子制御装置（図示せず）と接続されており、運転席に設けた不図示のパーキング操作部への乗員の操作入力に応じてアクチュエータ６０への通電制御が行われる。

　次に前記実施形態の作用を説明する。パワーユニットＰＵにおいて、電動モータＭから入力軸Ｓ１に回転駆動力が入力されると、それは、伝動装置としての減速装置Ｒで減速されて出力ギヤＧ３に伝達される。そして、出力ギヤＧ３の回転駆動力は、差動装置Ｄにより第１，第２出力軸５１，５２に対し差動回転を許容しつつ分配され、更にその第１，第２出力軸５１，５２から左右の駆動車輪に伝達される。

　また、上記パーキング操作部への操作入力に応じてアクチュエータ６０への通電制御が行われ、これにより、ディテント軸２２を介してディテントアーム２６が前記した第１回動位置（図８（ａ））と第２回動位置（図８（ｂ））との間で選択的に回動操作される。例えば、ディテントアーム２６が第１回動位置にあるときはパーキングロック機構２０が前述のロック作動状態、即ち入力軸Ｓ１の回転規制状態となり、一方、第２回動位置にあるときはパーキングロック機構２０が前述のロック解除状態、即ち入力軸Ｓ１の回転許容状態となる。

　本実施形態のパーキングロック機構２０では、図４及び図５で明らかなように、ディテントアーム２６は、これの回動支点部（即ちディテント軸２２）が第１ケース１１内に位置する一方で、ディテントばね２８との係合部が第２ケース１２内に位置しており、第１ケース１１には、合わせ面ｆよりも第２ケース１２側に張出す支持突部としての支持部材４０が設けられていて、その支持部材４０にディテントばね２８の基端部２８ｂが合わせ面ｆよりも第２ケース１２側で固定されている。これにより、第２ケース１２の内部空間をディテントばね２８の配置スペース、並びにディテントアーム２６の回動スペースの一部として活用可能となり、それだけ第１ケース１１延いては伝動ケース１０を小型化することができる。

　しかも共通のケース、即ち第１ケース１１にディテントアーム２６及びディテントばね２８を纏めて取付けているため、両者２６，２８の係合作業を、第１，第２ケース１１，１２の結合前に第１ケース１１側で容易且つ的確に完結させることができ、組立作業性が頗る良好である。

　その上、本実施形態では、ディテントばね２８の基端部２８ｂの固定位置が第２ケース１２寄りとなることで、ディテントアーム２６の回動操作時に同アーム２６からディテントばね２８に押し曲げ力を効率よく作用させ得るようになって、ディテントアーム２６の操作性が良好となる。その作用原理を図９も参照して、次に具体的に説明する。

　即ち、前述のようにディテントアーム２６が前記第１，第２回動位置の相互間で回動操作される際には、ディテントばね２８先端のローラ４２が該ばね２８の弾発力に抗して、ディテントアーム２６先部の第１，第２位置決め凹部２６ｖ１，２６ｖ２の一方から他方へと乗り換わることで、ディテントアーム２６の回動位置の切換えがなされる。

　この場合、ディテントばね２８の基端部２８ｂの高さ位置が、図９（ａ）で示す実施形態のように支持部材４０で嵩上げされた構造と、図９（ｂ）で示す比較例のように嵩上げされない構造とでは、ディテントばね２８の配置姿勢に違いがある。即ち、実施形態の構造ではディテントばね２８が合わせ面ｆに概ね沿う姿勢であるのに対し、比較例の構造では、合わせ面ｆに対しディテントばね２８がこれの基端から先端に向けて比較的大きな角度で立ち上がる傾斜姿勢となる。

　このようなディテントばね２８の配置姿勢の違いから、ディテントアーム２６の先部２６ａ（例えば位置決め凹部２６ｖ１）とディテントばね２８の先端のローラ４２との接触部の接線Ｙと、ディテントばね２８の曲げ変形の起点２８ｓとローラ４２の中心とを結ぶ仮想直線Ｚとがなす角度は、図９で明らかなように、実施形態の角度αの方が比較例の角度βよりも小さくなる。その関係で、ディテントアーム２６がこれの回動操作時にローラ４２に対し法線方向に押圧力Ｆを及ぼした場合に、その押圧力Ｆの、ディテントばね２８に対する曲げ方向分力（即ち仮想直線Ｚと直交する方向の押圧力成分）の大きさが、実施形態と比較例とで相違する。即ち、上記角度α，βの違いに関係して、実施形態の分力Ｆｓが比較例の分力Ｆｓ′よりも大きくなる。

　これにより、ディテントアーム２６の回動位置切換えのために同アーム２６の先部２６ａでディテントばね２８の先端即ちローラ４２を押した場合に、同じ押圧力Ｆであっても実施形態の方が、より効率よくディテントばね２８に押し曲げ力を作用させることができる。従って、ディテントばね２８に抗してディテントアーム２６を回動させるための操作トルクは、実施形態の方が比較例よりも小さくて済むから、ディテントアーム２６の操作性も実施形態の方が良好となる。

　尚、本実施形態では、前記角度αが６０度以下となるように、ディテントばね２８の基端部２８ｂの固定位置や合わせ面ｆからの高さを設定することが望ましい。その理由は、前記角度αが大きくなるほどに前記押圧力Ｆの、ディテントばね２８に対する曲げ方向分力Ｆｓが小さくなって、ディテントアーム２６の回動操作性が低下するためである。

　また、本実施形態のディテントばね２８の基端部２８ｂを取付ける支持部材４０と第１ケース１１とは別部品であって、第１ケース１１に後付けで固定される。これにより、組立終了後（即ち第１，第２ケース１１，１２の結合後）に支持部材４０が合わせ面ｆよりも第２ケース１２側に張り出しても、その組立前（特に支持部材４０の組付前）には支持部材４０に邪魔されず（即ち支持部材４０と機械加工工具との干渉を避ける工夫を必要とせず）に合わせ面ｆの機械加工を容易且つ的確に行うことができる。

　また、本実施形態の支持部材４０は、ロッド２７を軸方向に貫通させてロッド２７の軸方向移動を案内するロッド案内部４０ｇを有する。これにより、ディテントばね２８の基端部２８ｂを嵩上げして取付ける支持部材４０がロッド２７の軸方向移動の案内手段に兼用可能となるから、それだけ装置の構造簡素化に寄与することができる。

　また本実施形態のロッド２７は、入力軸Ｓ１と直交する投影面（図３参照）で見てディテントアーム２６の回動軸線Ｘ２と略直交する方向に延びていて、ディテントばね２８とは入力軸Ｓ１の軸方向（即ち左右方向）に互いに重ねて配置される。この重ね配置によれば、ロッド２７とディテントばね２８とは、上記投影面で見て大部分がオーバラップした位置関係となっており、即ちディテント軸２２の軸方向に拡がって展開する位置関係とはならないため、パーキングロック機構２０（特に連動機構Ｉ）をディテントアーム２６の回動軸線Ｘ２に沿う方向に小型化する上で有利となる。

　更に、上記した如くロッド２７とディテントばね２８とが重ね配置される構造と、ディテントばね２８支持用の支持部材４０が、ロッド２７を貫通させるロッド案内部４０ｇを有する構造とによれば、支持部材４０をロッド２７に対しロッド長手方向一方側（即ち後方側）に隣接配置する必要は無くなる。従って、パーキングロック機構２０（特に連動機構Ｉ）をロッド長手方向に小型化する上でも有利となる。この効果を補足説明すると、例えば、支持部材４０が仮に中実ブロック体であって、ロッド２７を貫通させるロッド案内部４０ｇを有しない構造である場合に、この支持部材４０とロッド２７との相互干渉を避けつつロッド２７をディテントばね２８と重ね配置しようとすると、支持部材４０を、実施形態の設置位置よりもロッド２７の長手方向後方側に偏位させざるを得なくなり、その偏位分だけ連動機構Ｉがロッド２７の長手方向に大型化する不都合がある。

　ところで前記実施形態では、伝動装置としての減速装置Ｒの入力軸Ｓ１に入力ギヤＧ１やパーキングギヤ２１が取付けられ、その入力軸Ｓ１に、伝動ケース１０（即ち第２ケース１２）に隣接固定した電動モータＭが連結されている。この電動モータＭの配置スペースに関して言えば、入力軸Ｓ１と直交する投影面で見て、電動モータＭのハウジングは、減速装置Ｒの入力軸Ｓ１回りの一般的な構成部品（例えば入力ギヤＧ１）よりも入力軸Ｓ１の径方向に大きくなってしまう。そのため、伝動ケース１０に電動モータＭを隣接固定する構造では、伝動ケース１０における入力軸Ｓ１周辺に、電動モータＭの径方向サイズに関係したデッドスペースが少なからず生じてしまう。これに対し、本実施形態では、入力軸Ｓ１にパーキングロック機構２０を連係させたことで、入力軸Ｓ１回りにパーキングロック機構２０の主要な構成部品をレイアウト可能となり、上記デッドスペースを有効に活用可能となる。

　また伝動ケース１０の第２ケース１２には、これに電動モータＭを隣接固定するための設計上の制約があるが、実施形態では、パーキングロック機構２０の一部を第２ケース１２内に張り出させて第１ケース１１の小型化に寄与し得る一方で、パーキングロック機構２０の大部分は第１ケース１１に取付けられる。そのため、第２ケース１２の、電動モータＭと対応する部分は、上記制約を損なうことなく極力小型化され、延いては伝動ケース１０を全体として小型化する上で有利となる。

　以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。

　例えば、前記実施形態では、伝動装置の一例として、車両用パワーユニットＰＵにおける減速装置Ｒを示したが、伝動装置は増速装置、変速装置であってもよい。

　また前記実施形態では、パーキングロック機構２０による回転規制対象となる伝動軸として減速装置Ｒの入力軸Ｓ１を示したが、伝動軸は、入力軸に限定されず、少なくとも動力伝達を担う回転軸であればよい。

　また前記実施形態では、パーキングロック機構２０のディテント軸２２（従ってディテントアーム２６）の回動操作を、伝動ケース１０に固定のアクチュエータ６０を用いて電動で行うようにしたものを示したが、本発明では、アクチュエータを省略し、その代わりにディテント軸２２を運転席の手動操作部に機械的に連動、連結して、ドライバーのマニュアル操作によりディテント軸２２を手動操作するようにしてもよい。

　また前記実施形態では、伝動ケースが第１，第２ケースより分割構成されるものを示したが、伝動ケースは、３個以上のケースより分割構成されてもよく、そのうちの第１，第２ケースに本発明構造を適用してもよい。

　また前記実施形態では、ロッド２７は、基端部２７ａ以外が折れ曲がっていないものを示したが、ロッドは、基端部以外の部位（例えば中間部）が折れ曲がった形状であってもよい。

Claims

　相互間が着脱可能に結合される第１，第２ケース（１１，１２）を少なくとも含む伝動ケース（１０）と、前記伝動ケース（１０）内で回転可能な伝動軸（Ｓ１）を有して該伝動ケース（１０）に収容される伝動機構（Ｇ）と、前記伝動軸（Ｓ１）を随時にロック可能であって前記伝動ケース（１０）内に設けられるパーキングロック機構（２０）とを備えており、
　前記パーキングロック機構（２０）が、前記伝動軸（Ｓ１）に相対回転不能に設けたパーキングギヤ（２１）と、前記パーキングギヤ（２１）と係合することで該パーキングギヤ（２１）をロック可能なパーキングポール（２３）と、駆動されることで前記パーキングポール（２３）を前記パーキングギヤ（２１）とのロック位置（２３Ｌ）及び該パーキングギヤ（２１）から離脱したロック解除位置（２３ＵＬ）に移動させるロッド（２７）と、前記第１ケース（１１）に基部（２６ｂ）が回動可能に支持されて、その回動により前記ロッド（２７）を駆動し得るよう該ロッド（２７）に連結したディテントアーム（２６）と、前記ディテントアーム（２６）の先部（２６ａ）に係脱可能に係合して該ディテントアーム（２６）を特定のアーム回動位置に弾発、保持するディテントばね（２８）とを有する伝動装置（Ｒ）において、
　前記ディテントアーム（２６）は、該ディテントアーム（２６）の回動支点部（２２）が前記第１ケース（１１）内に位置する一方、該ディテントアーム（２６）と前記ディテントばね（２８）との係合部が前記第２ケース（１２）内に位置しており、
　前記第１ケース（１１）には、前記第１，第２ケース（１１，１２）相互の合わせ面（ｆ）よりも前記第２ケース（１２）側に張出す支持突部（４０）が設けられていて、その支持突部（４０）に前記ディテントばね（２８）の固定端部（２８ｂ）が前記合わせ面（ｆ）よりも前記第２ケース（１２）側で取付けられることを特徴とする伝動装置。
　前記支持突部（４０）は、前記第１ケース（１１）とは別体の支持部材（４０）で構成されていて、その支持部材（４０）が該第１ケース（１１）に固定されることを特徴とする、請求項１に記載の伝動装置。
　前記支持部材（４０）は、前記ロッド（２７）の移動を案内するロッド案内部（４０ｇ）を有することを特徴とする、請求項２に記載の伝動装置。
　前記ロッド（２７）は、前記伝動軸（Ｓ１）と直交する投影面で見て前記ディテントアーム（２６）の回動軸線（Ｘ２）と略直交する方向に延びていて、前記ディテントばね（２８）とは前記伝動軸（Ｓ１）の軸方向に互いに重ねて配置されることを特徴とする、請求項１～３の何れか１項に記載の伝動装置。