WO2005092648A1 - スタビライザの横ずれ防止装置 - Google Patents

Abstract

【課題】構造が簡単で製作が容易で、かつ、熱による変質のないスタビライザの横ずれ防止装置を提供する。 【解決手段】第1端部及び第2端部を有し、スタビライザと接する上面と、該上面とは反対側にある下面と、を有する平板と、第1端部の上面及び第2端部の下面をそれぞれ凹ませて形成される切込み段部と、を有し、スタビライザの所定位置外周に、平板を、その板面に沿って巻き付けて締め付け、各切込み段部を重ね合わせ、その重なり部において両端部を固定してなることを特徴とする、スタビライザの横ずれ防止装置である。                                                                                 

Description

スタビライザの横ずれ防止装置

技術分野

[0001] 本発明は、自動車等に車輪の緩衝装置として使用されているスタビライザが、走行 時に軸心方向へ位置が変動しないようにするスタビライザの横ずれ防止装置に関す るものである。

背景技術

[0002] 図 2は特許文献 1に示されているスタビライザ 1の斜視図であって、スタビライザ 1は 全体が弾性の棒材で作られており、中央の基部 2に対して両側の先端部 3、 3を同じ 方向へ直角に屈曲してコ字状に成形した捻りばねの一種であって、中央の基部 2を 車体構造体に枢支して両側の先端部 3、 3を車軸に連結したものである。

[0003] スタビライザ 1は、走行時における車体のローリング運動で発生するエネルギを、基 部 2の捻り運動に変換して吸収するようになっている力 スタビライザ 1が、基部 2の軸 線方向に位置を変動してしまう横ずれを生じると、車軸に影響を与えて走行性能を悪 くするため、スタビライザ 1が基部 2の軸線方向に変位する横ずれを防止する必要が ある。この横ずれ防止の手段の一つとして、基部 2の枢支位置の近傍に、局部的に 径を太くした鍔状部 4を形成し、この鍔状部 4の側面を車体床構造体側の部材に当 接するような手段が採られて 、た。

[0004] 又、他の横ずれ防止装置として、特許文献 2に示されるものが知られて 、る。すな わち、図 3に示すように、スタビライザ 1の基部 2の枢支位置の近傍に摩擦係数の大き いゴム等の内輪材 5を巻き、内輪材 5の中央部外周を金属薄板帯 6で強く巻き締め、 固着面 7に摩擦抵抗力を付加して、基部 2に対して内輪材 5が滑動できないようにし 、内輪材 5の側面を車体床構造体側の枢支部材に当接するようにした手段が採られ ていた。

[0005] さらに、他の横ずれ防止装置として特許文献 3に示すものが知られている。従来、 図 4に示すように、スタビライザ 1に対して平板 8を C型に塑性変形させ、これを巻き付 けて平板 8の両端面同士を溶接金属 Wをもって溶接している。しかしながら、 C型変 形させた平板 8の両端面継ぎ目の隙間には、直接スタビライザ 1の表面が露出してい るため、溶接時に溶接金属がその隙間からスタビライザ 1の表面に直接接触すること が懸念される。溶接金属がスタビライザ 1表面に直接接触した場合、最も顕著な現象 としては、スタビライザ 1の表面硬さの変化であり、その結果として、スタビライザ 1の折 損起点となる可能性がある。さらに横ずれ防止装置は、スタビライザ 1のねじり発生応 力が最も高い位置の近傍に取り付けられるため、スタビライザ 1の耐久寿命を著しく 低下させる原因となる。

[0006] これを試験結果の一例で説明する。上記溶接部における表面硬度の推移は、溶接 金属、熱影響部 (HAZ領域、即ち、熱影響による硬度の変化領域)、スタビライザ母 材に分けてグラフで示すと、図 5に示すようになる。すなわち、表面硬度は HAZ部に おいて最高硬度を示し、この部分が折損起点となり易い。なお、図 5において、横軸 の表面からの深さにおける 0. 0—2. Ommの範囲が元々のスタビライザ母材であり、 0. 0一一 1. 6mmは溶接金属の盛り上がり部を示す。

[0007] そこで特許文献 3には、溶接時の悪影響を避けるために、図 6A、図 6Bに示すよう に、半割りにした 2つのリング 9、 10をヒンジ部 11で接続し、ヒンジ部 11を塑性変形さ せ、ヒンジ部の反対側に設けられた溶接部 12に溶接を行うことが示されて！/ヽる。 特許文献 1：特開 2000— 79819号公報

特許文献 2：特開 2000 - 142068号公報

特許文献 3：米国特許第 5857800号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0008] 上記図 2に示す横ずれ防止装置は、スタビライザ 1の基部 2に圧縮方向のスラスト力 を加えて塑性変形させるので、製造工程が煩雑になる問題があった。図 3に示す横 ずれ防止装置は、金属薄板帯 6に大きな締め付け力が期待できず、大きな横方向の 力を受けた時には内輪材 5が滑動する問題があった。図 4の横ずれ防止装置は、前 述のように溶接時の熱が直接スタビライザ 1に伝わり、スタビライザ 1に悪影響を及ぼ すこととなる。図 6A及び 6Bに示す横ずれ防止装置は、半割のリング形状が複雑とな り、高価になる。又、溶接部 12を設けるには一定のスペースが必要となり、スペース 確保の点力 不利となる。

[0009] したがって、本発明は、これらの問題点のないスタビライザ用横ずれ防止装置を提 供するものである。

課題を解決するための手段

[0010] 本発明は上記課題を解決するためになされたもので、下記の構成よりなる。

[0011] 本発明の第 1の態様に係るスタビライザの横ずれ防止装置は、第 1端部及び第 2端 部を有し、スタビライザと接する上面と、該上面とは反対側にある下面と、を有する平 板と、第 1端部の上面及び第 2端部の下面をそれぞれ凹ませて形成される切込み段 部と、を有し、スタビライザの所定位置外周に、平板を、その板面に沿って巻き付けて 締め付け、各切込み段部を重ね合わせ、その重なり部において両端部を固定してな ることを特徴とする。

[0012] また、第 1の態様では、固定部が、溶接によりなる溶接部であってよぐさらに、その 溶接部が、第 1端部の切込み段部の先端と、第 2端部の切込み段部の基部との重な り部において形成されていてもよい。またさらに、溶接部が、第 1端部の切込み段部と 、第 2端部の切込み段部との重なり部の略中央位置に形成されていてもよい。

[0013] また、本発明の第 2の態様に係るスタビライザの横ずれ防止装置の製作方法は、第 1端部及び第 2端部を有し、スタビライザと接する上面と、該上面とは反対側にある下 面とを有する平板を供し、第 1端部の上面を凹ませて切込み段部を形成し、第 2端部 の下面を凹ませて切込み段部を形成し、スタビライザの所定位置外周に、平板を、そ の板面に沿って第 1端部の切込み段部と前記第 2端部の切込み端部とが重なるよう に巻き付けて締め付け、切込み段部の重なり部を溶接固定する、ことを特徴とする。

[0014] 平板の厚さはスタビライザの大きさにもよるが、横ずれを防止する機能を発揮させる ためには、 3. 0-8. Omm程度あれば良ぐ幅は 10— 20mm程度あれば良い。又、 溶接が、第 1端部の切込み段部の先端と、第 2端部の切込み段部の基部との重なり 部において実行される場合は上側端部下側の段部を開先のように斜辺で形成しても 良い。溶接が、第 1端部の切込み段部と、第 2端部の切込み段部との重なり部の略中 央位置において実行される場合では、そのまま溶着しても良いし、溶着部に凹みを 付けておいても良い。いずれの場合も、両端部の突合せ部の隙間が直接スタビライ ザの表面に臨むことがないので、溶接熱が直接的にスタビライザ表面に伝わることが ない。したがって、スタビライザを熱によって変質させることがない。そして、構成は簡 単でスペースを大きく取ることもなぐ製作、取付けが容易である。

発明の効果

[0015] 本発明は、構成が簡単なので、製作が容易であるば力りでなぐ溶接時の熱による 影響が少ないので、スタビライザを変質させることがない。又、溶接のための突出部 がな 、ので、スペースを確保する上でも有利となる。

図面の簡単な説明

[0016] [図 1A]図 1Aは、本発明の実施形態に係る横ずれ防止装置の説明図である。

[図 1B]図 1Bは、本発明の一実施形態に係る横ずれ防止装置の断面図である。

[図 1C]図 1Cは、本発明の他の実施形態に係る横ずれ防止装置の断面図である。

[図 1D]図 1Dは、図 1 Aにおける平板の先端部の変形例を示す説明図である。

[図 2]図 2は、従来の横ずれ防止装置の一例を示す説明図である。

[図 3]図 3は、従来の横ずれ防止装置の他の例を示す斜視図である。

[図 4]図 4は、従来の横ずれ防止装置のまた他の例を示す断面図である。

[図 5]図 5は、図 4に係る横ずれ防止装置の表面硬度を示すグラフである。

[図 6A]図 6Aは、従来の横ずれ防止装置のさらに他の例を示す説明図である。

[図 6B]図 6Bは、図 6Aの横ずれ防止装置を示す説明図である。

[図 7]図 7は、本発明の実施形態に係る横ずれ防止装置における溶接部の表面硬度 の推移を示すグラフである。

[図 8]図 8は、耐久試験法の説明図である。

発明を実施するための最良の形態

[0017] 本発明に係るスタビライザの横ずれ防止装置は、スタビライザを熱によって変質さ せることがない。また、構成は簡単でスペースを大きく取ることもなぐ製作、取付けが 容易である。

実施例

[0018] 次に本発明の実施例を図面によって説明する。 [0019] 図 1A— IDには、本発明の実施形態を示しており、図 1 Aはスタビライザ 1と本発明 に用いる平板 13の関係を示す。平板 13は予め C型に加工しておいてスタビライザ 1 に締め付けて緊縛できる長さを有して 、る。そして左右の両端には上下対称に切込 み段部 14、 15を設けてある。すなわち、平板 13の図 1Aにおける左側の端部（第 1端 部）のスタビライザ 1と接する上面側を凹ませて形成された切込み段部 14と、平板 13 の図 1Aにおける右側の端部 (第 2端部）の上面とは反対側の下面側を凹ませて形成 された切込み段部 15との、 2つの切込み段部が設けられている。平板 13をスタビラィ ザ 1に締め付けた態様力 図 1B及び図 1Cに示されている。図 1Bでは、平板 13を締 め付けて、切込み段部 14の先端と、切込み段部 15の基部との突合せ面を溶接部 16 として溶接固定したものである。図 1Cでは、切込み段部 14と 15の重なり部の略中央 位置を溶接部 16として固定したものである。特に図 1Cの場合は溶接部 16の切込み 段部 14側に予め凹部を設けるか、又は、直径 2— 4mmの孔をあけておくと溶接が容 易となる。又、いずれの場合も切込み段部 14、 15の先端部は、図 1Dに示すように、 面取り 17をしてぉ 、て、締め付け時に重なり易くしておくと良!、。

[0020] いずれの場合も溶接部にスタビライザ 1の表面に達する隙間がないので、熱が該表 面に直接当たることがなぐ該表面状態の変化を防止し、耐久寿命への影響を低減 させる。本発明品の溶接部におけるスタビライザの表面硬さの推移をグラフ化したも のが図 7である。このように、本発明品の場合はスタビライザの表面硬さの表面からの 深さによる硬さの変化が少ない。したがって折損の起点となる部分が少なぐ耐久寿 命が永くなる。

[0021] 次に耐久性の試験をスタビライザを加振することによって行った。その加振状態を 図 8に基づいて説明する。スタビライザの Q点及び Q'点を支持し、アーム部先端部 P 点及び P'点を加振する。ズレ止めリング装着位置に、リング装着時の溶接影響があ つた場合、スタビライザの表面硬さが低下し、応力集中によって折損の起点となる。さ らに、ズレ止めリングの装着位置は、 Q点及び Q'点近傍の場合が多ぐスタビライザ の加振によるねじり発生応力が最も高い位置に近いため、耐久寿命を著しく低下さ せることとなる。

[0022] 本発明品の場合は溶接影響がないため耐久寿命が向上する。例えば、本発明品 の耐久寿命に対し、従来品の場合は溶接影響があり、耐久寿命は約 40%程度悪化 していた。

産業上の利用可能性

以上のように、本発明により、構成が簡単で、製作が容易であるば力りでなぐ溶接 時の熱による影響が少な 、ので、スタビライザを変質させることがな 、スタビラィザ用 の横ずれ防止装置を提供することができる。

Claims

請求の範囲

[1] スタビライザの横ずれ防止装置であって、

第 1端部及び第 2端部を有し、前記スタビライザと接する上面と、該上面とは反対側 にある下面と、を有する平板と、

前記第 1端部の上面及び前記第 2端部の下面をそれぞれ凹ませて形成される切込 み段部と、

を有し、

前記スタビライザの所定位置外周に、前記平板を、その板面に沿って巻き付けて締 め付け、前記各切込み段部を重ね合わせ、その重なり部において両端部を固定して なることを特徴とする、スタビライザの横ずれ防止装置。

[2] 前記固定部が、溶接によりなる溶接部である、ことを特徴とする請求項 1記載のスタ ビライザの横ずれ防止装置。

[3] 前記溶接部が、前記第 1端部の切込み段部の先端と、前記第 2端部の切込み段部 の基部との重なり部にぉ 、て形成される、ことを特徴とする請求項 2記載のスタビラィ ザの横ずれ防止装置。

[4] 前記溶接部が、前記第 1端部の切込み段部と、前記第 2端部の切込み段部との重 なり部の略中央位置に形成されて 、る、ことを特徴とする請求項 2記載のスタビライザ の横ずれ防止装置。

[5] 前記第 1端部の切込み段部の前記溶接部に対応する位置に、凹部が設けられて いることを特徴とする請求項 4記載のスタビライザの横ずれ防止装置。

[6] 前記第 1端部の切込み段部の前記溶接部に対応する位置に、孔部が設けられて いることを特徴とする請求項 4記載のスタビライザの横ずれ防止装置。

[7] 前記第 1端部の先端及び前記第 2端部の先端が、面取りされている、ことを特徴と する請求項 1乃至 6のいずれ力 1つに記載のスタビライザの横ずれ防止装置。

[8] スタビライザの横ずれ防止装置の製作方法であって、

第 1端部及び第 2端部を有し、前記スタビライザと接する上面と、該上面とは反対側 にある下面とを有する平板を供し、

前記第 1端部の上面を凹ませて切込み段部を形成し、 前記第 2端部の下面を凹ませて切込み段部を形成し、

前記スタビライザの所定位置外周に、前記平板を、その板面に沿って前記第 1端部 の切込み段部と前記第 2端部の切込み端部とが重なるように巻き付けて締め付け、 前記切込み段部の重なり部を溶接固定する、

スタビライザの横ずれ防止装置の製作方法。

[9] 前記溶接を、前記第 1端部の切込み段部の先端と、前記第 2端部の切込み段部の 基部との重なり部において行う、ことを特徴とする請求項 8記載の製作方法。

[10] 前記溶接を、前記第 1端部の切込み段部と、前記第 2端部の切込み段部との重なり 部の略中央位置にぉ ヽて行う、ことを特徴とする請求項 8記載の製作方法。