以下、本開示の一実施形態である粗取り用カッタ20について、図面を参照して説明する。なお、図1に示す翼根1は、発電機として利用されるロータ(図示外)の外周に形成された溝に、タービン翼(図示外)を装着するための基部である。図5に示す粗取り用カッタ20は、その翼根1を切削する工程の中で、はじめに行われる粗取り工程(図2:S10参照)で使用されるスローアウェイ式の切削回転工具である。
はじめに、翼根1の形状について説明する。図1に示すように、タービン翼の基部である翼根1は、自身の長手方向に対して左右対称で、且つ先端側に向けて逆クリスマスツリー状に根幅が増減しながら徐々に狭くなるように形成されている。翼根1の外周面には、先端側から後端側に向かって、第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14が互いに間隔を空けて各々形成され、それらの根幅は徐々に広くなっている。
さらに、第1幅広部11と第2幅広部12との間に第1幅狭部15が形成され、第2幅広部12と第3幅広部13との間に第2幅狭部16が形成され、第3幅広部13と第4幅広部14との間に第3幅狭部17が形成されている。第4幅広部14の後方に第4幅狭部18が形成されている。第2幅狭部16の根幅は、第1幅狭部15の根幅よりも広くなっている。第3幅狭部17の根幅は、第2幅狭部16の根幅よりも広くなっている。第4幅狭部18の根幅は、第3幅狭部17の根幅よりも広くなっている。
次に、翼根1の切削加工工程について説明する。図2に示すように、翼根切削加工工程は、粗取り工程(S10)と、中仕上げ工程(S11)と、仕上げ工程(S12)とから構成されている。以下、これら3つの工程の内容について、順に詳細に説明する。
まず、粗取り工程(S10)について説明する。図3に示すように、翼根1に対して最終的に形成される予定翼根形状10(二点鎖線)を想定した場合に、まず、粗取り用カッタ20を用いて、翼根1に粗取り形状2を切削する。粗取り形状2の輪郭は、予定翼根形状10の長手方向に向かって、段階的に径が細くなるように階段状に切削される。この粗取り形状2を切削することにより、図4に示すように、予定翼根形状10の第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14において、所定の削り代65を残すようにして切削される。
つまり、根幅の狭い第1幅狭部15、第2幅狭部16、第3幅狭部17、第4幅広部118については、次の中仕上げ工程で切削し、根幅の広い第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14を、最初の粗取り工程で先に切削してしまうのである。よって、後述する中仕上げ用カッタ70で切削する際には、第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14については既に切削済みとなる。従って、中仕上げ用カッタ70(図12参照)において、第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14に対応する各くびれ部分には翼根1の外周面が接触しない。くびれ部分は他部位に比べて強度が弱いが、その部分に翼根1が接触しないので、中仕上げ用カッタ70にかかる負荷を低減できる。
次に、粗取り用カッタ20の構造について説明する。図5に示すように、粗取り用カッタ20は、刃先を有するチップを着脱可能に固定できる「スローアウェイ式」の切削回転工具である。粗取り用カッタ20は、軸線方向先端側に向かって階段状に縮径する工具本体23を備えている。工具本体23の軸線方向後端部には、図示しない工作機械の主軸の先端に当接するための略円柱状の台座部22が同一軸線上に設けられている。台座部22の軸線方向後端部には、主軸に設けられた工具装着穴(図示外)に装着するためのテーパ部21が同一軸線上に設けられている。なお、粗取り用カッタ20は、右刃、左ねじれの切削回転工具である。
次に、工具本体23の形状について説明する。図5,図6に示すように、工具本体23は、形成されるべき粗取り形状2(図3の右側参照)にほぼ対応する階段状の輪郭を有する。工具本体23は、台座部22側から軸線方向先端側に向かって順に、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された第1段部25と、その第1段部25の軸線方向先端側に同一軸線上に設けられ、第1段部25よりも小さくかつ同一形状に形成された第2段部26と、その第2段部26の軸線方向先端側に同一軸線上に設けられ、第2段部26よりも小さくかつ同一形状に形成された第3段部27と、その第3段部27の軸線方向先端側に同一軸線上に設けられ、第3段部27よりも小さくかつ同一形状に形成された第4段部28と、その第4段部28の軸線方向先端側に同一軸線上に設けられ、第4段部28よりも小さくかつ同一形状に形成された第5段部29とから構成されている。
このような工具本体23を軸線方向先端側から見たときに、図7に示すように、第5段部29、第4段部28、第3段部27、第2段部26、第1段部25の各位置は、先端側から後端側に向かう方向において、左方向(反時計回り)にねじられている。さらに、工具本体23の軸線方向には4本の段付き溝37が形成されている。これら段付き溝37は、軸線方向先端側から見たときに、左方向(反時計回り)にねじられている。
次に、工具本体23を構成する第1〜5段部25〜29の各構造について、図5乃至図7を参照して順に説明する。なお、ここでは、工具本体23の軸線方向先端側にある第5段部29を最初に説明し、第4段部28、第3段部27、第2段部26、第1段部25の順に説明する。
まず、第5段部29の構造について説明する。図5乃至図7に示すように、第5段部29は、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された角柱である。第5段部29には、外方に向けて略十字状に4方向に突出する第1突出部31、第2突出部32、第3突出部33、第4突出部34が設けられている。第1突出部31と第2突出部32との間、第2突出部32と第3突出部33との間、第3突出部33と第4突出部34との間、第4突出部34と第1突出部31との間には、軸線方向先端側から見た形状がL字状の溝が形成され、各段付き溝37の一部分を各々形成している。
さらに、図5,図6に示すように、段付き溝37に対向する第1突出部31の内面の後端側には、矩形状に形成された切削チップ座44が凹設されている。段付き溝37に対向する第2突出部32の内面の前端側には、矩形状に形成された切削チップ座49が凹設されている。段付き溝37に対向する第3突出部33の内面の後端側には、矩形状に形成された切削チップ座(図示外)が凹設されている。段付き溝37に対向する第4突出部34の内面の前端側には、矩形状に形成された切削チップ座49(図6参照)が凹設されている。つまり、切削チップ座44,49は、互いに千鳥状に配設されている。
そして、第1突出部31に凹設された切削チップ座44には、長方形状の長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト60で固定されている。第2突出部32に凹設された切削チップ座49にも、長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第3突出部33に凹設された切削チップ座(図示外)にも、長方形チップ52(図7参照)が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第4突出部34に凹設された切削チップ座49にも、長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト60で固定されている。このとき、これら長方形チップ52の、工具本体23の軸線方向に対して平行な2つの長辺のうち外側の一辺は、予定翼根形状10(図4参照)の長手方向に対して平行になるように配置される。
次に、第4段部28の構造について説明する。図5乃至図7に示すように、第4段部28も、第5段部29と同様に、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された角柱である。第4段部28も、第1突出部31、第2突出部32、第3突出部33、第4突出部34を備えている。第1突出部31と第2突出部32との間、第2突出部32と第3突出部33との間、第3突出部33と第4突出部34との間、第4突出部34と第1突出部31との間には、軸線方向先端側から見た形状がL字状の溝が形成され、各段付き溝37の一部分を各々形成している。
さらに、図5,図6に示すように、段付き溝37に対向する第1突出部31の内面の後端側には、矩形状に形成された切削チップ座43が凹設されている。段付き溝37に対向する第2突出部32の内面の前端側には、矩形状に形成された切削チップ座48が凹設されている。段付き溝37に対向する第3突出部33の内面の後端側には、矩形状に形成された切削チップ座(図示外)が凹設されている。段付き溝37に対向する第4突出部34の内面の前端側には、矩形状に形成された切削チップ座48(図6参照)が凹設されている。つまり、切削チップ座43,48は、互いに千鳥状に配設されている。
そして、第1突出部31に凹設された切削チップ座43には、正方形チップ51が嵌め込まれ、ボルト60(図5参照)で固定されている。第2突出部32に凹設された切削チップ座48には、長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第3突出部33に凹設された切削チップ座(図示外)には、正方形チップ51(図7参照)が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第4突出部34に凹設された切削チップ座48には、長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト60で固定されている。このとき、正方形チップ51の、工具本体23の軸線方向に対して平行な2つの辺のうち外側の一辺と、長方形チップ52の、工具本体23の軸線方向に対して平行な2つの長辺のうち外側の一辺とは、予定翼根形状10(図4参照)の長手方向に対して平行になるように配置される。
次に、第3段部27の構造について説明する。図5乃至図7に示すように、第3段部27も、第5段部29と同様に、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された角柱である。第3段部27も、第1突出部31、第2突出部32、第3突出部33、第4突出部34を備えている。第1突出部31と第2突出部32との間、第2突出部32と第3突出部33との間、第3突出部33と第4突出部34との間、第4突出部34と第1突出部31との間には、軸線方向先端側から見た形状がL字状の溝が形成され、各段付き溝37の一部分を各々形成している。
さらに、図5,図6に示すように、段付き溝37に対向する第1突出部31の内面の後端側には、矩形状に形成された切削チップ座42が凹設されている。段付き溝37に対向する第2突出部32の内面の前端側には、矩形状に形成された切削チップ座47が凹設されている。段付き溝37に対向する第3突出部33の内面の後端側には、矩形状に形成された切削チップ座(図示外)が凹設されている。段付き溝37に対向する第4突出部34の内面の前端側には、矩形状に形成された切削チップ座47(図6参照)が凹設されている。つまり、切削チップ座42,47は、互いに千鳥状に配設されている。
そして、第1突出部31に凹設された切削チップ座42には、正方形チップ51が嵌め込まれ、ボルト60(図5参照)で固定されている。第2突出部32に凹設された切削チップ座47には、長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第3突出部33に凹設された切削チップ座(図示外)には、正方形チップ51(図7参照)が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第4突出部34に凹設された切削チップ座48には、長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト60で固定されている。このとき、正方形チップ51の、工具本体23の軸線方向に対して平行な2つの辺のうち外側の一辺と、長方形チップ52の、工具本体23の軸線方向に対して平行な2つの長辺のうち外側の一辺とは、予定翼根形状10(図4参照)の長手方向に対して平行になるように配置される。
次に、第2段部26の構造について説明する。図5乃至図7に示すように、第2段部26も、第5段部29と同様に、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された角柱である。第2段部26も、第1突出部31、第2突出部32、第3突出部33、第4突出部34を備えている。第1突出部31と第2突出部32との間、第2突出部32と第3突出部33との間、第3突出部33と第4突出部34との間、第4突出部34と第1突出部31との間には、軸線方向先端側から見た形状がL字状の溝が形成され、各段付き溝37の一部分を各々形成している。
さらに、図5,図6に示すように、段付き溝37に対向する第1突出部31の内面の後端側には、矩形状に形成された切削チップ座41が凹設されている。段付き溝37に対向する第2突出部32の内面の前端側には、矩形状に形成された切削チップ座46が凹設されている。段付き溝37に対向する第3突出部33の内面の後端側には、矩形状に形成された切削チップ座(図示外)が凹設されている。段付き溝37に対向する第4突出部34の内面の前端側には、矩形状に形成された切削チップ座46(図6参照)が凹設されている。つまり、切削チップ座41,46は、互いに千鳥状に配設されている。
そして、第1突出部31に凹設された切削チップ座41には、正方形チップ51が嵌め込まれ、ボルト60(図5参照)で固定されている。第2突出部32に凹設された切削チップ座46には、長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト60(図示外)で固定されている。第3突出部33に凹設された切削チップ座(図示外)には、正方形チップ51(図7参照)が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第4突出部34に凹設された切削チップ座46には、長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト60で固定されている。このとき、正方形チップ51の、工具本体23の軸線方向に対して平行な2つの辺のうち外側の一辺と、長方形チップ52の、工具本体23の軸線方向に対して平行な2つの長辺のうち外側の一辺とは、予定翼根形状10(図4参照)の長手方向に対して平行になるように配置される。
次に、第1段部25の構造について説明する。図5乃至図7に示すように、第1段部25も、第5段部29と同様に、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された角柱である。第1段部25も、第1突出部31、第2突出部32、第3突出部33、第4突出部34を備えている。第1突出部31と第2突出部32との間、第2突出部32と第3突出部33との間、第3突出部33と第4突出部34との間、第4突出部34と第1突出部31との間には、軸線方向先端側から見た形状がL字状の溝が形成され、各段付き溝37の一部分を各々形成している。
さらに、図5,図6に示すように、段付き溝37に対向する第2突出部32の内面の前端側には、矩形状に形成された切削チップ座45が凹設されている。段付き溝37に対向する第4突出部34の内面の前端側には、矩形状に形成された切削チップ座45が凹設されている。つまり、切削チップ座45,45は、軸線方向において互いに同一位置に配設されている。
そして、第2突出部32に凹設された切削チップ座45には、長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第4突出部34に凹設された切削チップ座45にも、長方形チップ52が嵌め込まれ、ボルト60(図6参照)で固定されている。このとき、長方形チップ52の、工具本体23の軸線方向に対して平行な2つの辺のうち外側の一辺は、予定翼根形状10(図4参照)の長手方向に対して平行になるように配置される。
次に、粗取り用カッタ20の軸線方向における正方形チップ51および長方形チップ52の互いの位置関係について説明する。図8に示すように、まず、第1段部25において、第2突出部32に固定された長方形チップ52と、第4突出部34に固定された長方形チップ52とは、軸線方向において互いに同列上に配置される。
また、第2段部26〜第4段部28において、第1突出部31及び第3突出部33に各々固定された正方形チップ51と、第2突出部32及び第4突出部34に各々固定された長方形チップ52とは、軸線方向において千鳥状に配置される。さらに、第5段部29において、第1突出部31及び第3突出部33に固定された長方形チップ52と、第2突出部32及び第4突出部34に各々固定された長方形チップ52とは、軸線方向において千鳥状に配置される。
次に、正方形チップ51の回転軌跡と、長方形チップ52の回転軌跡とによる粗取り形状2の切削方法について、図9を参照して説明する。なお、図9では、工具本体23を軸線方向に沿った断面で見た場合の各チップ51,52の回転軌跡を示している。また、ここでは、工具本体23の軸線方向後端側を「上側」とし、軸線方向先端側を「下側」として説明する。図9に示すように、まず、第1段部25では、長方形チップ52の回転軌跡の横方向の下側の一辺によって、予定翼根形状10の先端が平面状に切削される。
また、第2段部26では、上側の正方形チップ51の回転軌跡の外側の縦方向の一辺と、下側の長方形チップ52の回転軌跡の外側の縦方向の一辺とが同一線上に配置され、軸線方向に平行な直線状の切削経路が形成される。この切削経路によって、予定翼根形状10の第1幅広部11に対応する部分が切削される。このとき、第1幅広部11に対して所定の削り代65を残して、軸線方向に対して平行に切削される。
また、第3段部27でも、上側の正方形チップ51の回転軌跡の外側の縦方向の一辺と、下側の長方形チップ52の回転軌跡の外側の縦方向の一辺とが同一線上に配置され、軸線方向に平行な直線状の切削経路が形成される。この切削経路によって、予定翼根形状10の第2幅広部12に対応する部分が切削される。このとき、第2幅広部12に対して所定の削り代65を残して、軸線方向に対して平行に切削される。
また、第4段部28でも、上側の正方形チップ51の回転軌跡の外側の縦方向の一辺と、下側の長方形チップ52の回転軌跡の外側の縦方向の一辺とが同一線上に配置され、軸線方向に平行な直線状の切削経路が形成される。この切削経路によって、予定翼根形状10の第3幅広部13に対応する部分が切削される。このとき、第3幅広部13に対して所定の削り代65を残して、軸線方向に対して平行に切削される。
また、第5段部29では、上側の長方形チップ52の回転軌跡の外側の縦方向の一辺と、下側の長方形チップ52の回転軌跡の外側の縦方向の一辺とが同一線上に配置され、軸線方向に平行な直線状の切削経路が形成される。この切削経路によって、予定翼根形状10の第4幅広部14に対応する部分と、第4幅狭部18に対応する部分とが切削される。このとき、第4幅広部14に対して所定の削り代65を残して、軸線方向に対して平行に切削される。
そして、第2段部26の各チップ51,52で形成される縦方向の切削経路の下端部と、第3段部27の各チップ51,52で形成される縦方向の切削経路の上端部との間は、第2段部26に固定された長方形チップ52の回転軌跡の下辺によって切削される。さらに、第3段部27の各チップ51,52で形成される縦方向の切削経路の下端部と、第4段部28の各チップ51,52で形成される縦方向の切削経路の上端部との間は、第3段部27に固定された長方形チップ52の回転軌跡の下辺によって切削される。さらに、第4段部28の各チップ51,52で形成される縦方向の切削経路の下端部と、第5段部29の各チップ51,52で形成される縦方向の切削経路の上端部との間は、第4段部28に固定された長方形チップ52の回転軌跡の下辺によって切削される。
こうして、粗取り工程(S10)では、図4に示すように、予定翼根形状10の第1〜第4幅広部11〜14において削り代65を残すようにして段状に切削された粗取り形状2が形成される。
このように、粗取り用カッタ20では、第2〜4段部26〜28において、正方形チップ51および長方形チップ52を軸線方向に千鳥状に配置している。従来のハイス型粗取り用カッタの各段部に形成される1刃に対して、粗取り用カッタ20では、一対の正方形チップ51と長方形チップ52とで、1刃を形成している。即ち、第2〜4段部26〜28では、4つのチップが千鳥状に配置されているので、2刃を形成していることになる。従来のハイス型粗取り用カッタでは、複雑な形状である粗取り形状2を切削するために、刃数を多く(例えば、6刃)設けなければならなかった。
そこで、粗取り用カッタ20のように、一対の正方形チップ51と長方形チップ52とを千鳥状に配置することで、翼根1の外周面に対する接触頻度を効果的に減らすことができる。これにより、翼根1から受ける負荷を低減できることから、粗取り用カッタ20による切削速度を上昇できるので、切削送りを早くすることができる。従って、粗取り工程における作業を効率的に行うことができる。さらに、粗取り用カッタ20で使用される正方形チップ51および長方形チップ52は、単純な形状であるので、市販されている従来のスローアウェイチップを利用できる。つまり、粗取り用カッタ20を使用するために新たな形状のチップを製造する必要もないので、コストがかからず、使い勝手の良い粗取り用カッタ20を提供することができる。
次に、中仕上げ工程(S11)について説明する。図3に示す粗仕上げ工程で翼根1に切削された粗取り形状2に対して、図10に示すように、中仕上げ用カッタ70を用いて、翼根1に中仕上げ形状3を切削する。中仕上げ形状3の輪郭は、予定翼根形状10に対して所定の削り代65(図11参照)を残した状態で切削される。つまり、中仕上げ形状3を切削することで、図11に示すように、先に削り代65を残して切削された予定翼根形状10の第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14に加えて、新たに、第1幅狭部15、第2幅狭部16、第3幅狭部17、第4幅狭部18となる部分についても、所定の削り代65を残して切削される。
次に、中仕上げ用カッタ70の構造について説明する。図12に示すように、中仕上げ用カッタ70は、刃先を有するチップを着脱可能に固定できる「スローアウェイ式」の切削回転工具である。中仕上げ用カッタ70は、軸線方向先端側に向かって段状に縮径する工具本体73を備えている。工具本体73の軸線方向後端部には、図示しない工作機械の主軸の先端に当接するための略円柱状の台座部72が同一軸線上に設けられている。台座部72の軸線方向後端部には、主軸に設けられた工具装着穴(図示外)に装着するためのテーパ部71が同一軸線上に設けられている。
次に、工具本体73の形状について説明する。図12,図13に示すように、工具本体73は、形成されるべき中仕上げ形状3(図10参照)にほぼ対応する輪郭を有する。工具本体73は、台座部72側に設けられ、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された第1段部75と、その第1段部75の軸線方向先端側に同一軸線上に設けられ、第1段部75と同一形状に形成された第2段部76と、その第2段部76の軸線方向先端側に同一軸線上に設けられ、第2段部76よりも小さくかつ同一形状に形成された第3段部77と、その第3段部77の軸線方向先端側に同一軸線上に設けられ、第3段部77よりも小さくかつ同一形状に形成された第4段部78と、その第4段部78の軸線方向先端側に同一軸線上に設けられ、第4段部78よりも小さくかつ同一形状に形成された第5段部79とから構成されている。
このような工具本体73を軸線方向先端側から見たときに、図14に示すように、第5段部79、第4段部78、第3段部77、第2段部76、第1段部75の各位置は、先端側から後端側に向かう方向において、左方向(反時計回り)にねじられている。このような工具本体73の軸線方向には4本の段付き溝57が形成され、これら段付き溝57は、軸線方向先端側から見たときに、左方向(反時計回り)にねじられている。
次に、工具本体73を構成する第1〜5段部75〜79の各構造について、図12乃至図14を参照して説明する。ここでは、工具本体73の軸線方向先端側にある第5段部79を最初に説明し、第4段部78、第3段部77、第2段部76、第1段部75の順に説明する。
まず、第5段部79の構造について説明する。図12乃至図14に示すように、第5段部79は、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された角柱である。第5段部79には、外方に向けて略十字状に4方向に突出する第1突出部81、第2突出部82、第3突出部83、第4突出部84が設けられている。第1突出部81と第2突出部82との間、第2突出部82と第3突出部83との間、第3突出部83と第4突出部84との間、第4突出部84と第1突出部81との間には、軸線方向先端側から見た形状がL字状の溝が形成され、各段付き溝57の一部分を各々形成している。
さらに、図12に示すように、段付き溝57に対向する第1突出部81の内面には、略楕円形状に形成された切削チップ座104が凹設されている。段付き溝57に対向する第2突出部82の内面には、円形状に形成された切削チップ座89が凹設されている。段付き溝57に対向する第3突出部83の内面には、略楕円形状に形成された切削チップ座(図示外)が凹設されている。段付き溝57に対向する第4突出部84の内面には、円形状に形成された切削チップ座89(図13参照)が凹設されている。
そして、第1突出部81に凹設された切削チップ座104には、互いに平行な一対の直線状の各辺の両端同士を円弧で結んだ形状である種状チップ95が嵌め込まれ、ボルト97で固定されている。第2突出部82に凹設された切削チップ座89には、円盤形状の円形チップ96が嵌め込まれ、ボルト97(図13参照)で固定されている。第3突出部83に凹設された切削チップ座104にも、種状チップ95が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第4突出部84に凹設された切削チップ座89にも、円形チップ96が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。このとき、種状チップ95は、2つの円弧部分のうち1つの円弧部分が、工具本体73の径方向外側に向けられると共に、その長手方向が、工具本体73の軸線方向に対して斜めに交わるようにして配置される。さらに、円形チップ96は、その外周の一部が、工具本体73の径方向外側に向けられるようにして配置される。
次に、第4段部78の構造について説明する。図12乃至図14に示すように、第4段部78は、第5段部79と同様に、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された角柱である。第4段部78にも、第1突出部81、第2突出部82、第3突出部83、第4突出部84が設けられている。第1突出部81と第2突出部82との間、第2突出部82と第3突出部83との間、第3突出部83と第4突出部84との間、第4突出部84と第1突出部81との間には、軸線方向先端側から見た形状がL字状の溝が形成され、各段付き溝57の一部分を各々形成している。
さらに、図12に示すように、段付き溝57に対向する第1突出部81の内面には、矩形状に形成された切削チップ座103が凹設されている。段付き溝57に対向する第2突出部82の内面には、矩形状に形成された切削チップ座88が凹設されている。段付き溝57に対向する第3突出部83の内面には、矩形状に形成された切削チップ座103(図12参照)が凹設されている。段付き溝57に対向する第4突出部84の内面には、矩形状に形成された切削チップ座(図示外)が凹設されている。
そして、第1突出部81に凹設された切削チップ座103には、細長の長方形状の長方形チップ91が嵌め込まれ、ボルト97で固定されている。第2突出部82に凹設された切削チップ座88には、正方形状に形成された正方形チップ92が嵌め込まれ、ボルト97(図13参照)で固定されている。第3突出部83に凹設された切削チップ座103には、長方形チップ91が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第4突出部84に凹設された切削チップ座(図示外)には、正方形チップ92(図14参照)が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。このとき、長方形チップ91は、4つの角部のうち1つの角部が工具本体73の径方向外側に向くように配置される。さらに、正方形チップ92も、4つの角部のうち1つの角部が工具本体73の径方向外側に向くように配置される。
次に、第3段部77の構造について説明する。図12乃至図14に示すように、第3段部77は、第5段部79と同様に、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された角柱である。第3段部77にも、第1突出部81、第2突出部82、第3突出部83、第4突出部84が設けられている。第1突出部81と第2突出部82との間、第2突出部82と第3突出部83との間、第3突出部83と第4突出部84との間、第4突出部84と第1突出部81との間には、軸線方向先端側から見た形状がL字状の溝が形成され、各段付き溝57の一部分を各々形成している。
さらに、図12に示すように、段付き溝57に対向する第1突出部81の内面には、矩形状に形成された切削チップ座102が凹設されている。段付き溝57に対向する第2突出部82の内面には、矩形状に形成された切削チップ座87が凹設されている。段付き溝57に対向する第3突出部83の内面には、矩形状に形成された切削チップ座102が凹設されている。段付き溝57に対向する第4突出部84の内面には、矩形状に形成された切削チップ座(図示外)が凹設されている。
そして、第1突出部81に凹設された切削チップ座102には、細長の長方形状の長方形チップ91が嵌め込まれ、ボルト97で固定されている。第2突出部82に凹設された切削チップ座87には、正方形状に形成された正方形チップ92が嵌め込まれ、ボルト97(図13参照)で固定されている。第3突出部83に凹設された切削チップ座102には、長方形チップ91が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第4突出部84に凹設された切削チップ座(図示外)には、正方形チップ92(図14参照)が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。このとき、長方形チップ91は、4つの角部のうち1つの角部が工具本体73の径方向外側に向くように配置される。さらに、正方形チップ92も、4つの角部のうち1つの角部が工具本体73の径方向外側に向くように配置される。
次に、第2段部76の構造について説明する。図12乃至図14に示すように、第2段部76は、第5段部79と同様に、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された角柱である。第2段部76にも、第1突出部81、第2突出部82、第3突出部83、第4突出部84が設けられている。第1突出部81と第2突出部82との間、第2突出部82と第3突出部83との間、第3突出部83と第4突出部84との間、第4突出部84と第1突出部81との間には、軸線方向先端側から見た形状がL字状の溝が形成され、各段付き溝57の一部分を各々形成している。
さらに、図12に示すように、段付き溝57に対向する第1突出部81の内面には、矩形状に形成された切削チップ座101が凹設されている。段付き溝57に対向する第2突出部82の内面には、矩形状に形成された切削チップ座86が凹設されている。段付き溝57に対向する第3突出部83の内面には、矩形状に形成された切削チップ座101が凹設されている。段付き溝57に対向する第4突出部84の内面には、矩形状に形成された切削チップ座(図示外)が凹設されている。
そして、第1突出部81に凹設された切削チップ座101には、細長の長方形状の長方形チップ91が嵌め込まれ、ボルト97で固定されている。第2突出部82に凹設された切削チップ座86には、正方形状に形成された正方形チップ92が嵌め込まれ、ボルト97(図13参照)で固定されている。第3突出部83に凹設された切削チップ座101には、長方形チップ91が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。第4突出部84に凹設された切削チップ座(図示外)には、正方形チップ92(図14参照)が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。このとき、長方形チップ91は、4つの角部のうち1つの角部が工具本体73の径方向外側に向くように配置される。さらに、正方形チップ92も、4つの角部のうち1角部が工具本体73の径方向外側に向くように配置される。
次に、第1段部75の構造について説明する。図12乃至図14に示すように、第1段部75は、第5段部79と同様に、軸線方向先端側から見た形状が略十字状に形成された角柱である。第1段部75にも、第1突出部81、第2突出部82、第3突出部83、第4突出部84が設けられている。第1突出部81と第2突出部82との間、第2突出部82と第3突出部83との間、第3突出部83と第4突出部84との間、第4突出部84と第1突出部81との間には、軸線方向先端側から見た形状がL字状の溝が形成され、各段付き溝57の一部分を各々形成している。
さらに、図12に示すように、段付き溝57に対向する第2突出部82の内面には、矩形状に形成された切削チップ座85が凹設されている。段付き溝57に対向する第4突出部84の内面には、矩形状に形成された切削チップ座(図示外)が凹設されている。
そして、第2突出部82に凹設された切削チップ座85には、正方形状に形成された正方形チップ92が嵌め込まれ、ボルト97(図13参照)で固定されている。第4突出部84に凹設された切削チップ座(図示外)には、正方形チップ92(図14参照)が嵌め込まれ、ボルト(図示外)で固定されている。このとき、正方形チップ92は、4つの角部のうち1角部が工具本体73の径方向外側に向くように配置される。
次に、中仕上げ用カッタ70の軸線方向における長方形チップ91、正方形チップ92、種状チップ95および円形チップ96の互いの位置関係について説明する。図15に示すように、まず、第1段部75において、第2突出部82に固定された正方形チップ92と、第4突出部84に固定された正方形チップ92とは、軸線方向において互いに同列上に配置される。
また、第2段部76〜第4段部78において、第1突出部81及び第3突出部83に各々固定された長方形チップ91と、第2突出部82及び第4突出部84に各々固定された正方形チップ92とは、軸線方向において千鳥状に配置される。また、第5段部79において、第1突出部81及び第3突出部83に各々固定された円形チップ96と、第2突出部82及び第4突出部84に各々固定された種状チップ95とは、互いに円弧の部分が重なるようにして配置される。
次に、長方形チップ91の回転軌跡と、正方形チップ92の回転軌跡と、種状チップ95の回転軌跡と、円形チップ96の回転軌跡とによる中仕上げ形状3の切削方法について、図16を参照して説明する。なお、図16では、工具本体73を軸線方向に沿った断面で見た場合の各チップ91,92,95,96の回転軌跡を示している。また、ここでは、工具本体23の軸線方向後端側を「上側」とし、軸線方向先端側を「下側」として説明する。図16に示すように、まず、第1段部75では、正方形チップ92の回転軌跡における径方向外側に突き出た角部の下側の一辺によって切削経路が形成される。この切削経路によって、予定翼根形状10の第1幅広部11の後端側について、所定の削り代65を残して切削される。
また、第2段部76では、長方形チップ91の回転軌跡における径方向外側に突き出た角部と、その角部を中央に挟む2辺と、正方形チップ92の径方向外側に突き出た角部の下側の一辺とによってV字状の切削経路が形成される。このV字状の切削経路によって、第1幅狭部15に対して所定の削り代65を残して切削される。
また、第3段部77では、長方形チップ91の回転軌跡における径方向外側に突き出た角部と、その角部を中央に挟む2辺と、正方形チップ92の径方向外側に突き出た角部の下側の一辺とによってV字状の切削経路が形成される。このV字状の切削経路によって、第2幅狭部16に対して所定の削り代65を残して切削される。
また、第4段部78では、長方形チップ91の回転軌跡における径方向外側に突き出た角部と、その角部を中央に挟む2辺と、正方形チップ92の径方向外側に突き出た角部の下側の一辺とによってV字状の切削経路が形成される。このV字状の切削経路によって、第3幅狭部17に対して所定の削り代65を残して切削される。
また、第5段部79では、種状チップ95の円弧部分と、その円弧部分から延びる一辺と、円形チップ96の回転軌跡における円弧部分とによって円弧形状の切削経路が形成される。この円弧形状の切削経路によって、第4幅狭部18に対して所定の削り代65を残して切削される。
このように、中仕上げ用カッタ70では、第2〜4段部76〜78において、長方形チップ91および正方形チップ92を千鳥状に配置している。従来のハイス型中仕上げ用カッタの各段部に形成される1刃に対して、中仕上げ用カッタ70では、一対の長方形チップ91と正方形チップ92とで、1刃を形成している。即ち、第2〜4段部86〜88では、4つのチップが千鳥状に配置されているので、2刃を形成していることになる。従来のハイス型中仕上げ用カッタでは、複雑な形状である中仕上げ形状を切削するために、刃数を多く(例えば、6刃)設けなければならなかった。
そこで、中仕上げ用カッタ70のように、一対の長方形チップ91と正方形チップ92とを千鳥状に配置することで、翼根1の外周面に対する接触頻度を効果的に減らすことができる。これにより、翼根1から受ける負荷を低減できることから、中仕上げ用カッタ70による切削速度を上昇できるので、切削送りを早くすることができる。従って、中仕上げ工程における作業を効率的に行うことができる。
さらに、中仕上げ用カッタ70では、予定翼根形状10の第4幅狭部18に対応する部分を、第5段部79に固定された2枚の種状チップ95と、2枚の円形チップ96とで切削する。これら4枚のチップは軸線方向において同列上に配置されている。つまり、第2〜4段部76〜78では、2刃を形成しているのに対し、第5段部79では、4刃を形成している。これは、他部位に比べて第4幅狭部18のように切削量が多い部分については、刃数を多くすることによって、より安定した加工を実現することができる。
また、中仕上げ用カッタ70で使用される長方形チップ91および正方形チップ92は、上記した粗取り用カッタ20と同様に単純な形状であるので、市販されている従来のスローアウェイチップを利用できる。つまり、中仕上げ用カッタ70を使用するために新たな形状のチップを製造する必要もないので、コストがかからず、使い勝手の良い中仕上げ用カッタ70を提供することができる。
また、中仕上げ工程では、粗取り工程において、予定翼根形状10のうち第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14においては既に切削済みであるので、これらを除いた第1幅狭部15、第2幅狭部16、第3幅狭部17、第4幅狭部18に対して、所定の削り代65を残して切削する。そして、工具本体73のうち、第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14に対応する部分は径方向内側に縮径しているが、既に切削済みであることから翼根1の外周面に接触しないようになっている。
これにより、他部位に比べて強度の弱い縮径した部分に過度な負荷がかからない。よって、中仕上げ用カッタ70による切削送りを速くできるので、中仕上げ形状3を効率的に切削できる。また、縮径した部分に過度な負荷がかからないので、加工中に生じるビビリ音や振動を抑制できると共に、切削加工中に折損する虞もない。このように、中仕上げ用カッタ70を使用することで、粗取り形状2が形成された翼根1に対し、予定翼根形状10の全ての部位に対して、所定の削り代65を残すようにして、中仕上げ形状3を効率的に切削できる。
次に、仕上げ工程(S12)について説明する。図17に示すように、中仕上げ工程で中仕上げ形状3が切削された翼根1に対して、逆クリスマスツリー状に形成された仕上げ用カッタ100を用いて、中仕上げ形状3を切削することで、所定の削り代65を一度に削り取る。こうして、翼根1の切削加工工程が終了する。
以上説明したように、翼根1を切削するための翼根切削加工工程は、粗取り工程、中仕上げ工程、仕上げ工程の3工程で構成されている。粗取り工程では、本実施形態である粗取り用カッタ20を用いて、翼根1に対して粗取り形状2を切削する。粗取り形状2を切削することで、予定翼根形状10の第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14において、所定の削り代65を残して切削できる。粗取り用カッタ20は、スローアウェイ式の切削回転工具である。粗取り用カッタ20は、階段状に縮径する工具本体23を備える。工具本体23は、第1〜5段部25〜29によって構成されている。
各段部には、偶数のチップ座が周方向に凹設され、軸線方向において千鳥状に配置されている。例えば、第2段部26〜第4段部28における各チップ座には、長方形チップ52、正方形チップ51が周方向において交互に嵌め込まれて固定されている。つまり、一対の正方形チップ51と長方形チップ52とで、1刃を形成しているので、第2〜4段部26〜28では、2刃を形成している。従って、翼根1の外周面に対する接触頻度を効果的に減らすことができるので、翼根1から受ける負荷を低減できる。
さらに、このことから、粗取り用カッタ20による切削速度を上昇させて切削送りを早くできるので、粗取り工程における作業を効率的に行うことができる。さらに、粗取り用カッタ20で使用される正方形チップ51および長方形チップ52は、単純な形状であるので、市販されている従来のスローアウェイチップを利用できる。つまり、粗取り用カッタ20を使用するために新たな形状のチップを製造する必要もないので、コストがかからず、使い勝手の良い粗取り用カッタ20を提供できる。
また、粗取り用カッタ20を用いることで、粗取り形状2が切削できる。粗取り形状2では、予定翼根形状10の第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14において削り代65を残して既に切削されている。これにより、次工程である中仕上げ工程では、第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14に相当する部分については切削する必要がない。中仕上げ工程では、逆クリスマスツリー状に形成された中仕上げ用カッタ70を用いるが、他部位に比べて強度が弱い径方向内側に縮径する部分は、既に削り代65を残して切削された第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14に対応する。つまり、中仕上げ用カッタ70の縮径部分は、翼根1の外周面に接触しないので、過度な負荷がかかるのを防止できる。また、中仕上げ用カッタ70による切削送りを速くできるので、中仕上げ形状3を効率的に切削できる。さらに、縮径した部分に過度な負荷がかからないので、加工中に生じるビビリ音や振動を抑制できると共に、切削加工中に折損する虞もない。
次に、粗取り用カッタ20を用いることによる効果を確認するため、粗取り工程において、粗取り用カッタ20(工具A)を用いた場合と、従来品であるハイス型粗取り用カッタ(工具B)を用いた場合とで比較を行った。この比較試験では、スローアウェイタイプの工具Aを用いた場合の切削送りと、従来のハイスタイプの工具Bを用いた場合の切削送りとをそれぞれ計測し、評価した。各工具の条件(径、刃数)、切削条件(切削速度、刃あたり送り、回転数)は、以下の表1に示す通りである。
つまり、工具Aの径は、80.0mm、刃数は2枚、切削速度は100mm/min、刃あたり送りは0.08mm/刃、回転数は397.9min−1に設定した。一方、工具Bの径は、80.0mm、刃数は6枚、切削速度は20mm/min、刃あたり送りは0.02mm/刃、回転数は79.6min−1に設定した。なお、工具Aである粗取り用カッタ20の刃数は、上記したように、2種類のチップを千鳥状に配置していることから、翼根1の外周面に接触して切削する刃の数として計算すると、2刃となる。
図18及び表1に示すように、工具Bを用いた場合では、複雑な粗取り形状2を切削するために、6刃をワークに当てて切削させるため、切削速度や回転数を早くすることができなかった。よって、工具Bを用いた場合の切削送りは、9.5mm/minであった。これに対し、工具Aを用いた場合では、2刃をワークに当てるだけであるので、ワークから受ける衝撃を低減できることから、工具Bに対して、切削速度や回転数を早くすることができた。これにより、工具Aを用いた場合の切削送りは、工具Bに対して飛躍的に早くなり、63.7mm/minであった。これらの結果により、工具Aを用いることによって、翼根1に粗取り形状2を効率よく切削できることが実証された。
なお、上記実施形態において、本開示の「スローアウェイ式切削回転工具」である粗取り用カッタ20は、例えば、エンドミルやサイドカッタである。
なお、本開示は各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、上記実施形態では、粗取り用カッタ20は、第1〜第5段部25〜29からなる工具本体23を備えているが、段部の数はこれに限定されない。
また、粗取り工程において、第1幅広部11、第2幅広部12、第3幅広部13、第4幅広部14の全ての幅狭部について所定の削り代65を残して先に切削したが、少なくとも根幅が極度に狭い先端側の幅狭部について切削すればよい。