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JPWO2019156093A1 - ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

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Abstract

低発熱性、耐摩耗性及び加工性に優れたゴム組成物を提供することを目的とする。上記目的を達成するべく、本発明は、ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、充填材と、下記式(I)で表される化合物と、フェノール基を有する化合物を含有する老化防止剤と、を含むことを特徴とする。

Description

本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
昨今、自動車の低燃費化に対する要求が強くなっており、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。そのため、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物として、tanδが低く、低発熱性に優れたゴム組成物が望まれている。
従来の空気入りタイヤにおいては、低発熱性を実現することを目的として、ゴム組成物中のカーボンブラックの粒子径を大きくしたり、カーボンブラックの配合量を減少させる等の対策が考えられるが、同時にトレッドゴムの耐摩耗性の低下や、ゴムの耐カット性や耐チッピング性等の耐破壊性を低下させるという問題があった。
そのため、耐摩耗性等の他の物性を低下させることなく、低発熱性を改善できる技術の開発が望まれていた。
それらの技術の一つとして、例えば特許文献1には、ゴム成分とカーボンブラックとの化学的相互作用を向上させることを目的として、天然ゴムを含むエラストマーに、カーボンブラック及び特定のヒドラジド化合物を配合したゴム組成物が開示されている。
特表2014−501827号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術については、低発熱性が十分ではなく、自動車の低燃費化に対する要求に応えるべく、低発熱性のさらなる改善が必要であった。加えて、特許文献1の技術によって、低発熱性の改善を図った場合には、ゴム組成物中にポリマーゲルが生成し、加工性の悪化(粘度の増大)も考えられたことから、加工性についてもさらなる改善が望まれていた。
そのため、本発明の目的は、低発熱性、耐摩耗性及び加工性に優れたゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、低発熱性、耐摩耗性及び生産性に優れたタイヤを提供することにある。
本発明者らは、ゴム成分及び充填材を含むゴム組成物について、上記課題を解決するべく鋭意研究を行った。そして、ゴム組成物中に、特定構造を有するヒドラジド化合物を含有させることによって、ゴム成分とカーボンブラックとの相互作用を高めることができる結果、より優れた低発熱性を実現できることに着目した。そして、上述したポリマーゲルの生成に起因した加工性の悪化の問題については、ゴム組成物中に、さらにフェノール基を有する化合物を含有する老化防止剤を含有させることによって、優れた低発熱性及び耐摩耗性と、優れた加工性とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、充填材と、下記式(I)で表される化合物と、フェノール基を有する化合物を含有する老化防止剤と、を含むことを特徴とする。
Figure 2019156093
(式中、Aは、アリール基であり、少なくとも2つの極性基を有し、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基であり、さらに、該置換基は、O、S及びN原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。)
上記構成を具えることによって、優れた低発熱性、耐摩耗性及び加工性を実現できる。
また、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物中のAの有する極性基の少なくとも1つが、ヒドロキシル基、アミノ基又はニトロ基であることが好ましく、当該極性基の少なくとも1つがヒドロキシル基であることがより好ましく、当該極性基の少なくとも2つがヒドロキシル基であることが特に好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
さらに、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物中のAが、フェニル基又はナフチル基であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現でき、実用性の点でも優れるためである。
また、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物中のR1及びR2が、いずれも水素原子であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
さらに、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物の分子量が、250以下であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
さらにまた、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物の融点が、80℃以上、250℃未満であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
また、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05〜30質量部であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現でき、加工性の悪化も有効に抑制できるためである。
さらに、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物が、2,6−ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,3−ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,4−ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,5−ジヒドロキシベンゾヒドラジド、4−アミノ−2−ヒドロキシベンゾヒドラジド、3,5−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド、4−アミノ−3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド、3−ヒドロキシ−4−ニトロナフタレン−2−カルボヒドラジド、1,3−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド、2,4,6−トリヒドロキシベンゾヒドラジド及び2,6−ジヒドロキシ−4−メチルベンゾヒドラジドからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
また、本発明のゴム組成物については、前記ジエン系ゴムが、天然ゴムであることが好ましい。優れた耐摩耗性を実現できるためである。
さらに、本発明のゴム組成物については、前記充填材が、カーボンブラックを含むことが好ましい。優れた耐摩耗性を実現できるためである。
さらにまた、本発明のゴム組成物については、前記充填材の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10〜160質量部であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
また、本発明のゴム組成物については、前記フェノール基を有する化合物は、フェノール基の数に対する分子量の割合が、250以下であることが好ましい。より優れた加工性を実現できるためである。
さらに、本発明のゴム組成物については、前記老化防止剤の合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましい。粘度の悪化を招くことなく、より優れた加工性を実現できるためである。
さらにまた、本発明のゴム組成物については、前記老化防止剤における前記フェノール基を有する化合物の割合が、20〜100質量%であることが好ましい。老化防止作用を得つつ、より優れた加工性を実現できるためである。
また、本発明のゴム組成物については、前記老化防止剤が、アミン系老化防止剤をさらに含有し、前記老化防止剤における前記アミン系老化防止剤の割合が、80質量%以下であることが好ましい。加工性の悪化をより確実に抑制できるためである。
本発明のタイヤは、上述のゴム組成物を用いたことを特徴とする。
上記構成を具えることによって、優れた低発熱性、耐摩耗性及び生産性を実現できる。
本発明によれば、低発熱性、耐摩耗性及び加工性に優れたゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低発熱性、耐摩耗性及び生産性に優れたタイヤを提供することができる。
以下に、本発明の実施形態を具体的に例示説明する。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、充填材と、下記式(I)で表される化合物と、フェノール基を有する化合物を含有する老化防止剤とを含むゴム組成物である。
Figure 2019156093
(式中、Aは、アリール基であり、少なくとも2つの極性基を有し、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基であり、さらに、該置換基は、O、S及びN原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。)
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物に含まれるゴム成分については、ジエン系ゴムを含むものであれば特に限定はされない。
前記ジエン系ゴムについては、例えば、天然ゴムや、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等の合成ジエン系ゴムが挙げられるが、これらの中でも、少なくとも天然ゴムを含むことが好ましい。より優れた低発熱性を実現できるからであり、耐摩耗性についても向上が望める。
なお、前記ジエン系ゴムについては、1種単独で含有してもよいし、2種以上のブレンドとして含有してもよい。
また、前記ゴム成分については、上述したジエン系ゴム以外にも、発明の効果を損なわない範囲で、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)等の非ジエン系合成ゴムを含むことも可能である。
なお、前記ゴム成分におけるジエン系ゴムの含有量については、特に限定はされないが、優れた低発熱性及び耐摩耗性を維持するという点からは、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
(充填材)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、充填材を含む。
充填材を、前記ゴム成分及び後述する式(I)で表される化合物とともに含むことで、充填材の分散性が高まり、強度や耐摩耗性等の性能を高いレベルで維持しつつ、優れた低発熱性を実現できる。
ここで、前記充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、前記ゴム成分100質量部に対して10〜160質量部であることが好ましく、30〜100質量部であることがより好ましい。充填材の量について適正化を図ることで、より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためであり、含有量が10質量部以上の場合には、十分な耐摩耗性が得られ、含有量が160質量部以下の場合には、低発熱性の悪化を抑えることができる。
また、前記充填材の種類については特に限定はされない。例えば、カーボンブラックや、シリカ、その他の無機充填材を含むことができる。その中でも、前記充填材は、カーボンブラックを含むことが好ましい。より優れた低発熱性を実現できるからであり、耐摩耗性についても向上が望める。
ここで、前記カーボンブラックとしては、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、IISAF、SAFグレード等のカーボンブラックが挙げられる。
なお、前記カーボンブラックの含有量は、よりすぐれた耐摩耗性を得る観点から、前記ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましい。前記カーボンブラックの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以上とすることで、ゴム組成物の耐摩耗性をより向上できるためである。また、前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、160質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましい。前記カーボンブラックの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して160質量部以下とすることで、耐摩耗性を高いレベルで維持しつつ、低発熱性や加工性についてより改善できるためである。
なお、前記充填材としてのシリカについては、特に限定はされず、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ及びコロイダルシリカ等を用いることができる。
また、前記その他の無機充填材としては、例えば下記式(II)で表される無機化合物を用いることも可能である。
nM・xSiOY・zH2O ・・・ (II)
(式中、Mは、Al、Mg、Ti、Ca及びZrからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、並びに、これらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。)
上記式(II)の無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al23);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO33]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのような電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
(式(I)で表される化合物)
そして、本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分及び充填材に加えて、式(I)で表される化合物を含む。
Figure 2019156093
式(I)の、Aは、アリール基である。ここで、該アリール基は、任意の位置に少なくとも2つの極性基を有し、該極性基は同じであっても、異なっていてもよく、前記極性基の位置については、アリール基の芳香環中のどこであってもよい。
また、式(I)のR1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基である。さらに、これらの置換基については、O、S及びN原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。
上記式(I)で表される化合物については、Aで示されたアリール基がカーボンブラック等の充填材と高い親和性を有し、且つ、ヒドラジド骨格を有する部分がゴム成分と高い親和性を有するため、ゴム組成物中に配合されることで、ゴム成分と充填材との化学的相互作用を大きく向上させることができる。それによって、充填材同士の擦れ合いに起因したヒステリシスロスを低減できる結果、従来に比べて極めて優れた低発熱性を得ることができる。加えて、充填材の分散性向上によって、よりすぐれた耐摩耗性についても実現できる。
また、ゴム成分と充填材との化学的相互作用が大きく向上した結果、ゴム組成物の低発熱性及び耐摩耗性を維持しつつ、未加硫ゴムの粘度上昇を抑制できるため、加工性についても向上が可能となる。
ここで、前記式(I)で表される化合物中のAで示したアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。その中でも、前記アリール基は、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。優れた充填材との親和性を示すため、より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現でき、芳香環の数を減らせるため、コスト的にも有利であり、実用性の点でも優れる。
また、前記式(I)で表される化合物中のAで示したアリール基の有する極性基の数は、2つ以上である。芳香環中に2つ以上の極性基を有することで、カーボンブラック等の充填材と高い親和性を得ることができるためであり、2つ未満の場合には、充填材との親和性が十分に得られず、ゴム組成物の低発熱性及び耐摩耗性を低下させるおそれがある。
また、前記極性基の種類については、特に限定はされず、例えば、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基、アルコキシシリル基、アルキルアミノ基、ニトロ基等が挙げられる。それらの中でも、前記極性基は、少なくとも1つがヒドロキシル基、アミノ基又はニトロ基であることが好ましく、ヒドロキシル基であることがより好ましく、少なくとも2つがヒドロキシル基であることが特に好ましい。さらに優れた充填材との親和性を示し、ゴム組成物の低発熱性及び耐摩耗性をより向上できるためである。
また、前記式(I)で表される化合物においてAにつながるヒドラジド基については、R1及びR2が、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基である。なお、これらの置換基は、O、S及びN原子のうちの一種以上を含むものであってもよい。
さらに、R1及びR2については、上述した置換基の中でも、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、R1及びR2がいずれも水素原子であることがより好ましい。ゴム成分と高い親和性を有し、より優れた低発熱性、耐摩耗性及び加工性が得られるためである。
ここで、上述した式(I)で表される化合物のいくつかの好適例を、以下に示す。これらの化合物を用いることで、ゴム組成物の低発熱性をより向上できる。なお、これらの化合物は、一種単独で用いることも、複数種を混合して用いることもできる。
2,6−ジヒドロキシベンゾヒドラジド
Figure 2019156093
2,3−ジヒドロキシベンゾヒドラジド
Figure 2019156093
2,4−ジヒドロキシベンゾヒドラジド
Figure 2019156093
2,5−ジヒドロキシベンゾヒドラジド
Figure 2019156093
4−アミノ−2−ヒドロキシベンゾヒドラジド
Figure 2019156093
3,5−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド
Figure 2019156093
4−アミノ−3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド
Figure 2019156093
3−ヒドロキシ−4−ニトロナフタレン−2−カルボヒドラジド
Figure 2019156093
1,3−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド
Figure 2019156093
2,4,6−トリヒドロキシベンゾヒドラジド
Figure 2019156093
2,6−ジヒドロキシ−4−メチルベンゾヒドラジド
Figure 2019156093
また、前記式(I)で表される化合物の分子量については、250以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、180以下であることが更に好ましい。天然ゴムの各分子との親和性が高くなり、より優れた低発熱性を得ることができ、耐摩耗性についても高めることができるからである。
また、前記式(I)で表される化合物の融点については、80℃以上、250℃未満であることが好ましく、80〜200℃であることがより好ましい。前記ヒドラジド化合物の融点を低くすることで、天然ゴムの各分子との親和性が高くなり、より優れた低発熱性を得ることができ、耐摩耗性についても高めることができるからである。
なお、本発明のゴム組成物における前記式(I)で表される化合物の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05〜30質量部であることが好ましく、0.05〜10質量部であることがより好ましく、0.05〜5質量部であることが特に好ましい。前記含有量を前記ゴム成分100質量部に対して0.05質量部以上とすることで、より優れた低発熱性及び耐摩耗性が得られ、30質量部以下とすることで、加工性の悪化も防ぐことができるためである。
(老化防止剤)
本発明のゴム組成物は、上述した、ゴム成分、充填材及び式(I)で表される化合物に加えて、老化防止剤をさらに含む。そして、前記老化防止剤については、フェノール基を有する化合物(以下、「フェノール基含有化合物」ということがある。)を含有することを要する。
前記式(I)で表される化合物を含むことによって、ゴム成分と充填材との化学的相互作用を大きく向上させることは可能となったが、それに伴ってポリマーゲルが発生し、加工性が悪化することが考えられた。そのため、本発明では、ゴム組成物中に、老化防止剤としてフェノール基含有化合物を用いることによって、低発熱性については優れたレベルで維持しつつ、加工性についても向上させることが可能となる。
ここで、前記フェノール基含有化合物の種類については、特に限定はされず、公知の老化防止剤から適宜選択して用いることができる。
前記フェノール基含有化合物については、例えば、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物が挙げられる。
また、前記フェノール基含有化合物については、上述した化合物の中でも、フェノール基の数に対する分子量の割合(分子量/フェノール基の数)が、250以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましい。より優れた加工性が得られるためである。なお、前記フェノール基含有化合物におけるフェノール基の数については、フェノール基が一つのベンゼン環に2個結合している化合物(ヒドロキノン等)の場合には、2つのフェノール基を有するものとしている。
加えて、前記フェノール基の数に対する分子量の割合が250以下であるフェノール基含有化合物の中でも、さらに優れた加工性が得られる点からは、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,6ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、及び、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィドからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
さらに、前記老化防止剤における前記フェノール基含有化合物の割合は、20〜100質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。前記フェノール基含有化合物の割合を20質量%以上とすることで、ゴム組成物の加工性悪化を抑制することができる。また、前記フェノール基含有化合物のみからなることもできるが、80質量%以下とすることで、老化防止作用もより確実に得ることができる。
なお、前記老化防止剤については、本発明の効果を損なわない範囲で、老化防止作用の向上等を目的として、前記フェノール基含有化合物以外の老化防止剤を含むこともできる。例えば、アミン系老化防止剤をさらに含有することができる。その場合、前記老化防止剤における前記アミン系老化防止剤の含有量は、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。前記老化防止剤における前記アミン系老化防止剤の含有量を80質量%以下とすることで、ゴム組成物の加工性悪化を抑えることができるためである。
また、本発明のゴム組成物における前記老化防止剤の合計含有量については、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましい。前記老化防止剤の合計含有量を、ゴム成分100質量部に対して0.05質量部以上とすることで、老化防止作用をより確実に得ることができ、前記老化防止剤の含有量を、ゴム成分100質量部に対して10質量部以下とすることで、加工性の悪化を抑制できる。
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分、前記充填材、前記式(I)で表される化合物及びフェノール基を有する化合物を含有する老化防止剤の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、シランカップリング剤、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含むことができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
なお、本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定はされない。例えば、ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、充填材と、式(I)で表される化合物と、老化防止剤とを、公知の方法で、配合し、混練することで得ることができる。
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いてなることを特徴とする。低発熱性及び加工性に優れた本発明のゴム組成物をタイヤ材料として含むことによって、優れた低発熱性及び生産性を実現できる。
前記ゴム組成物を適用する部位については、タイヤの中でもトレッドに用いることが好ましい。本発明のゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、低発熱性に優れる。
なお、本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。なお、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(化合物a〜k)
化合物a〜kを製造した。化合物a〜kの種類、融点、1H-NMR測定(条件:300MHz、DMSO-d6、δppm)の結果について以下に示す。
・化合物a:2,6−ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,6−ジヒドロキシ安息香酸メチル5.29g、100%ヒドラジン一水和物3.30gを1−ブタノール32mLに添加し、117℃で15時間攪拌した。反応液を冷却後、析出している固体を濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体2,6−ジヒドロキシベンゾヒドラジド2.85g(収率54%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:198℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):6.3(d,2H),7.1(t,1H),NH(3H)及びOH(2H)は不検出)

・化合物b:2,3−ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,3−ジヒドロキシ安息香酸メチル2.75g、100%ヒドラジン一水和物7.00gを水1.5mLに添加し、100℃で3時間攪拌した。反応液を濃縮後、析出している固体にイソプロピルアルコールを加えて濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体2,3−ジヒドロキシベンゾヒドラジド2.00g(収率73%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:223℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):4.7(br−s,2H),6.7(m,1H), 6.9(m,1H),7.2(m,1H),10.1(br−s,1H),OH(2H)は不検出)

・化合物c:2,4−ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,4−ジヒドロキシ安息香酸メチル5.50g、100%ヒドラジン一水和物13.4gを水3mLに添加し、100℃で3時間攪拌した。反応液を濃縮後、析出している固体にイソプロピルアルコールを加えて濾別し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体2,4−ジヒドロキシベンゾヒドラジド4.82g(収率88%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:237℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):
6.2(m,2H),7.6(m,1H),NH(3H)及びOH(2H)は不検出)

・化合物d:2,5−ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル5.39g、100%ヒドラジン一水和物3.29gを1−ブタノール32mLに添加し、117℃で15時間攪拌した。反応液を冷却後、析出している固体を濾別し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体2,5−ジヒドロキシベンゾヒドラジド4.26g(収率79%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:210℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):4.6(br−s,2H),6.7(m,1H), 6.8(m,1H),7.2(m,1H),9.0(br−s,1H),9.9(br−s,1H),11.5(br−s,1H))

・化合物e:4−アミノ−2−ヒドロキシベンゾヒドラジド
4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸メチル12.0g、100%ヒドラジン一水和物30.3gを水6.6mLに添加し、100℃で2時間攪拌した。反応液を濃縮後、水を加え、析出した固体を濾別し、水で洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体4−アミノ−2−ヒドロキシベンゾヒドラジド8.68g(収率72%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:198℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):
4.4(br−s,2H),5.7(m,2H),6.0(m,2H), 7.4(m,1H),9.5(m,1H),12.7(br−s,1H))

・化合物f:3,5−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド
3,5−ジヒドロキシナフトエ酸43.0g、濃硫酸42.0mLをメタノール860mLに添加し、65℃で44時間攪拌した。反応液を冷却後、水を加え、析出した固体を濾別し、水で洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体3,5−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸メチル44.7g(収率97%)を得た。
上記の方法で得た3,5−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸メチル8.39g、100%ヒドラジン一水和物5.29gをブタノール40.0mLに添加し、65℃で2時間攪拌した。反応液を濃縮し、析出した固体をイソプロピルアルコールに懸濁した。析出した固体を濾別し、イソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体3,5−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド5.01g(収率60%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:219℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):
6.8(m,1H),7.1(m,1H),7.3(m,1H), 7.4(s,1H),8.3(s,1H),10.3(br−s,2H),NH(3H)不検出)

・化合物g:4−アミノ−3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド
3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸50.0gをクロロホルム270mLに加え、氷冷後、60%硝酸24.3mLを滴下した。35分間攪拌した後、析出した固体を濾別し、水、クロロホルムで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、橙色固体3−ヒドロキシ−4−ニトロ−2−ナフトエ酸47.7g(収率77%)を得た。
上記の方法で得た3−ヒドロキシ−4−ニトロ−2−ナフトエ酸12.5g、濃硫酸1mLをブタノール200mLに添加し、117℃で48時間攪拌した。反応液を濃縮後、析出している固体を濾別し、ブタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、黄色固体3−ヒドロキシ−4−ニトロナフタレン−2−カルボン酸ブチル7.52g(収率48%)を得た。
上記の方法で得た3−ヒドロキシ−4−ニトロナフタレン−2−カルボン酸ブチル28.7g、パラジウムカーボン2.90gをメタノール494mLに添加し、水素で置換して室温で8時間攪拌した。反応液を濃縮後、得られた固体にヒドラジン一水和物17.7g、ブタノール330mLを加え、75℃で13時間攪拌した。反応液を冷却後、析出している固体を濾別し、ブタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体4−アミノ−3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド21.1g(収率98%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:181℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):
4.7(br−s,2H),7.3(m,1H), 7,4(m,1H),7.6(m,1H),7.7(s,1H),8.0(m,1H),10.4(br−s,1H),NH(3H)不検出)

・化合物h:3−ヒドロキシ−4−ニトロナフタレン−2−カルボヒドラジド
3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸50.0gをクロロホルム270mLに加え、氷冷後、60%硝酸24.3mLを滴下した。35分間攪拌した後、固体を濾別し、水、クロロホルムで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、橙色固体3−ヒドロキシ−4−ニトロ−2−ナフトエ酸47.7g(収率77%)を得た。
上記の方法で得た3−ヒドロキシ−4−ニトロ−2−ナフトエ酸12.5g、濃硫酸1mLをブタノール200mLに添加し、117℃で48時間攪拌した。反応液を濃縮後、析出した固体を濾別し、ブタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、黄色固体3−ヒドロキシ−4−ニトロナフタレン−2−カルボン酸ブチル7.52g(収率48%)を得た。
上記の方法で得た3−ヒドロキシ−4−ニトロナフタレン−2−カルボン酸ブチル17.1gをメタノール175mLに溶解し、100%ヒドラジン一水和物6.28gを添加し、65℃で16時間攪拌した。反応液を冷却後、析出した固体を濾別し、メタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、橙色固体3−ヒドロキシ−4−ニトロナフタレン−2−カルボヒドラジド14.6g(収率100%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:185℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):
7.1(m,1H), 7.4(m,2H),7.8(m,1H),8.4(m,1H),NH(3H),OH(1H)不検出)

・化合物i:1,3−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド
マロン酸ジエチル5.00gのアセトニトリル50mL溶液に塩化マグネシウム2.97gを加え、氷冷した。次に、トリエチルアミン6.30gを滴下して30分間攪拌した後、フェニル酢酸クロリド4.82gを滴下し、室温に戻し、4.5時間攪拌した。再び反応液を氷冷し、2N塩酸200mLを加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮後、減圧乾燥した。得られた淡黄色油状物残渣を氷冷し、濃硫酸15mLを滴下し、室温に戻して17時間攪拌した。反応液を氷冷し、氷水35mLをゆっくり加え、析出した固体を濾別し、水洗した。得られた固体を減圧乾燥し、黄色固体1,3−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸エチル6.09g(収率84%)を得た。
上記の方法で得た1,3−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸エチル800mgのメタノール3mL溶液に室温で100%ヒドラジン一水和物0.21gを加え、2.5時間加熱還流し、室温に戻して12時間攪拌した。析出した固体を濾別し、得られた固体をメタノールで洗浄し、減圧乾燥して黄土色固体1,3−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド540mg(収率72%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:205℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):
6.6(s,1H), 7.2(m,1H),7.4(m,1H),7.5(d,1H),8.0(d,1H),NH(3H),OH(2H)不検出)

・化合物j:2,4,6−トリヒドロキシベンゾヒドラジド
2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸1水和物10.0gのアセトン100mL溶液に、室温で炭酸ナトリウム2.96gを加えて10分間攪拌し、ジメチル硫酸7.04gを加えて50℃に昇温し、5時間攪拌した。反応液を濃縮し、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。更に無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮後、析出した固体を酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒に懸濁して濾別し、減圧乾燥してピンク色固体2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸メチル6.03g(収率62%)を得た。
上記の方法で得た2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸メチル2.40gをメタノール10mLに懸濁させ、室温で100%ヒドラジン一水和物0.98gを加え、1.5時間加熱還流し、室温に戻して12時間攪拌した。析出した固体を濾別し、得られた固体をメタノールで洗浄し、減圧乾燥してベージュ色固体2,4,6−トリヒドロキシベンゾヒドラジド960mg(収率40%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:207℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):
4.3(br−s,2H),5.8(s,2H),7.2(s,1H),9.3(br−s,1H),12.3(br−s,2H))

・化合物k:2,6−ジヒドロキシ−4−メチルベンゾヒドラジド
2,6−ジヒドロキシ−4−メチル安息香酸5.00gのアセトン50mL溶液に、室温で炭酸ナトリウム1.66gを加えて10分間攪拌し、ジメチル硫酸3.94gを加えて50℃に昇温し、5時間攪拌した。反応液を濃縮し、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。更に無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮後、析出した固体を冷ヘキサンに懸濁して濾別し、減圧乾燥して白色固体2,6−ジヒドロキシ−4−メチル安息香酸メチル4.94g(収率91%)を得た。
上記の方法で得た2,6−ジヒドロキシ−4−メチル安息香酸メチル4.50gをメタノール12mLに懸濁させ、室温で100%ヒドラジン一水和物1.85gを加え、12時間加熱還流した。室温に戻し、析出した固体を濾別し、得られた固体をメタノールで洗浄し、減圧乾燥してピンク色固体2,6−ジヒドロキシ−4−メチルベンゾヒドラジド3.09g(収率69%)を得た。
Figure 2019156093
(融点:180℃、1H−NMR(300MHz,DMSO−d6,δppm):
2.14(s,3H),5.1(br−s,2H),6.1(s,2H),9.9(br−s,1H),12.5(br−s,2H))
<実施例1〜21、比較例1〜3>
表1の成分組成に従って、ゴム組成物のサンプルを調製した。なお、各成分の配合量については、ゴム成分100質量部に対する質量部で示している。
<評価>
得られたゴム組成物のサンプルについて、以下の評価を行った。
(1)低発熱性(tanδ指数)
各サンプルのゴム組成物を、145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムに対し、粘弾性測定装置[レオメトリックス社製]を用い、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzで損失正接(tanδ)を測定した。
なお、測定したtanδは逆数をとった後100を乗じ、比較例2のtanδの逆数値×100を100としたときの指数値で示した。指数値が大きい程、低発熱性に優れることを示す。評価結果は表1に示す。
(2)耐摩耗性(摩耗指数)
各サンプルのゴム組成物、145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた各加硫ゴムから円板状(直径16.2mm×厚さ6mm)に切り抜いた試験片を用い、JIS−K6264−2:2005に準じて、DIN摩耗試験を行い、室温でDIN摩耗試験を行った際の摩耗量(mm3)を測定した。
なお、各サンプルにおいて測定した摩耗量については、比較例2の摩耗量の逆数を100とした場合の、各サンプルの摩耗量の逆数を摩耗指数として表示している。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性が良好であることを示す。評価結果は表1に示す。
(3)加工性評価(ムーニー粘度指数)
各サンプルのゴム組成物を、JIS K 6300−1:2001(ムーニー粘度、ムーニースコーチタイム)に準拠して、ムーニー粘度の測定を行った。
なお、測定したムーニー粘度については逆数をとった後100を乗じ、比較例2の逆数値×100を100としたときの指数値をムーニー粘度指数とした。ムーニー粘度指数については、大きい程、未加硫粘度が小さく、作業性が良好であることを示す。
Figure 2019156093
*1:RSS#1
*2:旭カーボン(株)製「♯80」
*3:以下の方法で合成された3−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、式(I)で表される化合物には該当しない
(合成方法)
ディーンスターク型還流冷却器及び撹拌機を備えた反応器に、メチルイソブチルケトン500ml及び3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド50.5g(0.25モル)を仕込んだ後、加温し、留出する水を除去しながら5時間加熱還流した。反応液を20℃まで冷却した後、析出した結晶を濾別し、減圧乾燥して微黄色結晶を得た(67.6g、収率95%)。この微黄色結晶は、下記に示すように、NMR、IR分析の結果、3−ヒドロキシ−N′−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジドであることがわかった。
(融点146℃、1H−NMR(DMSO) 0.90(m,6H)、1.93(s,3H)、2.00(m,1H)、2.17(m,2H)、7.38(m,2H)、7.46(m,1H)、7.75(m,1H)、7.95(m,1H)、8.58(m,1H)、11.15(b,1H)、11.65(b,1H)、IR(KBR) 3400〜2400、1650、1550、1510、1470、1360、1230、1170、1140、1120、1050、950、900、880、770、740、670、600、550、480cm-1
*4:三共油化工業(株)製「A/O MIX」
*5:N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
*6:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業(株)製「ノクラック224」
*7:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、三新化学工業(株)製「サンセラーCM」
*8:2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、大内新興化学工業(株)製「ノクラックNS−6」 、分子量:341
*9:4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、大内新興化学工業(株)製「ノクラックNS−30」、分子量:383
*10:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、大内新興化学工業(株)製「ノクラック200」、分子量:220
*11:アクリル酸1’−ヒドロキシ[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルベンゼン)]−1−イル、住友化学(株)製「スミライザーGM」、分子量:395
*12:アクリル酸1’−ヒドロキシ[2,2’−エチリデンビス[4,6−ビス(1,1−ジメチルプロピル)ベンゼン]]−1−イル、住友化学(株)製「スミライザーGS」、分子量:548
各実施例、比較例について、ムーニー粘度指数、tanδ指数、及び摩耗指数の合計値を算出し、総合評価とした。総合評価が高いもの程、加工性、低発熱性及び耐摩耗性を高いレベル両立ができていることを示す。
表1の結果から、各実施例のゴム組成物は、各比較例のゴム組成物に対して総合評価が高く、加工性、低発熱性、耐摩耗性を、高いレベルで両立ができていることがわかった。
本発明によれば、低発熱性、耐摩耗性及び加工性に優れたゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低発熱性及び生産性に優れたタイヤを提供することができる。

Claims (18)

  1. ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、充填材と、下記式(I)で表される化合物と、フェノール基を有する化合物を含有する老化防止剤と、を含むことを特徴とする、ゴム組成物。
    Figure 2019156093
    (式中、Aは、アリール基であり、少なくとも2つの極性基を有し、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基であり、さらに、該置換基は、O、S及びN原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。)
  2. 前記式(I)で表される化合物中のAの有する極性基の少なくとも1つが、ヒドロキシル基、アミノ基又はニトロ基であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記式(I)で表される化合物中のAの有する極性基の少なくとも1つが、ヒドロキシル基であることを特徴とする、請求項2に記載のゴム組成物。
  4. 前記式(I)で表される化合物中のAの有する極性基の少なくとも2つが、ヒドロキシル基であることを特徴とする、請求項3に記載のゴム組成物。
  5. 前記式(I)で表される化合物中のAが、フェニル基又はナフチル基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  6. 前記式(I)で表される化合物中のR1及びR2が、いずれも水素原子であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  7. 前記式(I)で表される化合物の分子量が、250以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  8. 前記式(I)で表される化合物の融点が、80℃以上、250℃未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  9. 前記式(I)で表される化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05〜30質量部であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  10. 前記式(I)で表される化合物が、2,6−ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,3−ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,4−ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,5−ジヒドロキシベンゾヒドラジド、4−アミノ−2−ヒドロキシベンゾヒドラジド、3,5−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド、4−アミノ−3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド、3−ヒドロキシ−4−ニトロナフタレン−2−カルボヒドラジド、1,3−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボヒドラジド、2,4,6−トリヒドロキシベンゾヒドラジド及び2,6−ジヒドロキシ−4−メチルベンゾヒドラジドからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  11. 前記ジエン系ゴムが、天然ゴムであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  12. 前記充填材が、カーボンブラックを含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  13. 前記充填材の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10〜160質量部であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  14. 前記フェノール基を有する化合物は、フェノール基の数に対する分子量の割合が、250以下であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  15. 前記老化防止剤の合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05〜10質量部であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  16. 前記老化防止剤における前記フェノール基を有する化合物の割合が、20〜100質量%であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  17. 前記老化防止剤が、アミン系老化防止剤をさらに含有し、前記老化防止剤における前記アミン系老化防止剤の割合が、80質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなることを特徴とする、タイヤ。
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