以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係るショベルの全体構成について説明する。図1は本発明の実施形態に係るショベルの側面図である。
図1に示されるように、ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン11等の動力源が搭載される。
次に、図2を参照して、図1のショベルの駆動系の構成について説明する。図2は、図1のショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。図2中、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御系をそれぞれ二重線、太実線、破線、及び一点鎖線で示している。
図2に示されるように、ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、コントローラ30、圧力制御弁31等を含む。
エンジン11は、ショベルの駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。また、エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に連結されている。
メインポンプ14は、高圧油圧ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26及び圧力制御弁31を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、制御弁171〜176、及び制御弁177を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171〜176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁171〜176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1A、右側走行用油圧モータ1B、及び旋回用油圧モータ2Aを含む。また、コントロールバルブ17は、制御弁177を通じ、油圧アクチュエータから流出する作動油を作動油タンクに選択的に流出させる。制御弁177は、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダル(図示せず。)の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
操作圧センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力(操作圧)の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、操作圧センサ29以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部として機能する。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM、ROM等を含むコンピュータで構成されている。コントローラ30の各種機能は、例えばROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。コントローラ30の詳細については後述する。
圧力制御弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。本実施形態では、圧力制御弁31は、コントローラ30が出力する電流指令に応じてパイロットポンプ15からコントロールバルブ17内の制御弁177のパイロットポートに導入される二次圧を調整する電磁弁である。圧力制御弁31は、例えば、電流指令が大きいほど、制御弁177のパイロットポートに導入される二次圧が大きくなるように動作する。
次に、図3を参照して、ショベルに搭載される油圧システムの第1構成例について説明する。図3は、図1のショベルに搭載される油圧システムの第1構成例を示す概略図である。図3では、図2と同様に、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御系を、それぞれ二重線、太実線、破線、及び一点鎖線で示している。
図3に示されるように、油圧システムは、エンジン11、レギュレータ13L、13R、メインポンプ14L、14R、パイロットポンプ15、旋回圧センサ24L、24R、操作装置26、吐出圧センサ28L、28R、操作圧センサ29、コントローラ30、旋回油圧回路TC、バイパス回路60等を含む。油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14L、14Rから、センターバイパス管路40L、40R、パラレル管路42L、42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。メインポンプ14L、14Rは、図2のメインポンプ14に対応する。
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175A及び176Aを通る高圧油圧ラインである。
センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175B及び176Bを通る高圧油圧ラインである。
制御弁171は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を左側走行用油圧モータ1Aへ供給し、且つ、左側走行用油圧モータ1Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁172は、メインポンプ14Rが吐出する作動油を右側走行用油圧モータ1Bへ供給し、且つ、右側走行用油圧モータ1Bが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁173は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁174は、メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
制御弁175A、175Bは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるブーム用第1制御弁としてのスプール弁である。また、本実施例では、制御弁175Aは、ブーム4の上げ操作が行われた場合にのみ作動し、ブーム4の下げ操作が行われた場合には作動しない。
制御弁176A、176Bは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるアーム用第1制御弁としてのスプール弁である。
制御弁177Aは、アームシリンダ8のロッド側油室から作動油タンクに流出する作動油の流量を制御するアーム用第2制御弁としてのスプール弁である。制御弁177Bは、ブームシリンダ7のボトム側油室から作動油タンクに流出する作動油の流量を制御するブーム用第2制御弁としてのスプール弁である。制御弁177A、177Bは図2の制御弁177に対応する。
制御弁177A、177Bは、最小開口面積(開度0%)の第1弁位置と最大開口面積(開度100%)の第2弁位置とを有する。制御弁177A、177Bは、第1弁位置と第2弁位置との間で無段階に移動可能である。
パラレル管路42Lは、センターバイパス管路40Lに並行する高圧油圧ラインである。パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Aの何れかによってセンターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給する。
パラレル管路42Rは、センターバイパス管路40Rに並行する高圧油圧ラインである。パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Bの何れかによってセンターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給する。
レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。レギュレータ13L、13Rは、図2のレギュレータ13に対応する。具体的には、レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出圧が所定値以上となった場合にメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
旋回操作レバー26Aは、操作装置26の一例であり、上部旋回体3の旋回を操作するために用いられる。また、旋回操作レバー26Aは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。具体的には、旋回操作レバー26Aは、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、旋回操作レバー26Aは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右側パイロットポートに作動油を導入させる。
ブーム操作レバー26Bは、操作装置26の一例であり、ブーム4を操作するために用いられる。また、ブーム操作レバー26Bは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175A、175Bのパイロットポートに導入させる。具体的には、ブーム操作レバー26Bは、ブーム上げ方向に操作された場合に、制御弁175Aの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Bの左側パイロットポートに作動油を導入させる。一方、ブーム操作レバー26Bは、ブーム下げ方向に操作された場合には、制御弁175Aの左側パイロットポートに作動油を導入させることなく、制御弁175Bの右側パイロットポートにのみ作動油を導入させる。
吐出圧センサ28L、28Rは、吐出圧センサ28の一例であり、メインポンプ14L、14Rの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
操作圧センサ29A、29Bは、操作圧センサ29の一例であり、旋回操作レバー26A、ブーム操作レバー26Bに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
左右走行レバー(又はペダル)、アーム操作レバー、及びバケット操作レバー(何れも図示せず。)はそれぞれ、下部走行体1の走行、アーム5の開閉、及びバケット6の開閉を操作するための操作装置である。これらの操作装置は、旋回操作レバー26A、ブーム操作レバー26Bと同様の構成であってよい。即ち、これらの操作装置は、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量(又はペダル操作量)に応じた制御圧を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁の左右何れかのパイロットポートに導入させる。また、これらの操作装置のそれぞれに対する操作者の操作内容は、操作圧センサ29Aと同様、対応する操作圧センサによって圧力の形で検出され、検出値がコントローラ30に対して出力される。
コントローラ30は、操作圧センサ29A等の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13L、13Rに対して制御信号を出力し、メインポンプ14L、14Rの吐出量を変化させる。
圧力制御弁31A、31Bは、コントローラ30が出力する電流指令に応じてパイロットポンプ15から制御弁177A、177Bのパイロットポートに導入される制御圧を調整する。圧力制御弁31A、31Bは、図2の圧力制御弁31に対応する。
圧力制御弁31Aは、制御弁177Aを第1弁位置と第2弁位置の間の任意の位置で停止できるように制御圧を調整可能である。圧力制御弁31Bは、制御弁177Bを第1弁位置と第2弁位置の間の任意の位置で停止できるように制御圧を調整可能である。
旋回油圧回路TCは、上部旋回体3の旋回を実現するための油圧回路である。この例では、旋回油圧回路TCは、旋回用油圧モータ2A、リリーフ弁22L、22R、チェック弁23L、23R等を含む。
旋回用油圧モータ2Aは、上部旋回体3を旋回させる油圧モータである。旋回用油圧モータ2Aのポート21L、21Rは、制御弁173に接続され、且つ、リリーフ弁22L、22R及びチェック弁23L、23Rを介して油路44に接続されている。
リリーフ弁22Lは、ポート21L側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、ポート21L側の作動油を油路44側に流出させる。リリーフ弁22Rは、ポート21R側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、ポート21R側の作動油を油路44側に流出させる。
チェック弁23Lは、ポート21L側の圧力が油路44側の圧力より低くなった場合に開き、油路44側からポート21L側に作動油を流入させる。チェック弁23Rは、ポート21R側の圧力が油路44側の圧力より低くなった場合に開き、油路44側からポート21R側に作動油を流入させる。この構成により、チェック弁23L、23Rは、旋回用油圧モータ2Aの減速時又は制動時に油路44側から吸入側ポート側に作動油を流入させることができる。
旋回圧センサ24L、24Rは、旋回用油圧モータ2Aのポート21L、21Rにおける作動油の圧力を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
バイパス回路60は、旋回用油圧モータ2Aと制御弁173とを接続するモータ管路51A、51Bと、制御弁173の下流側に配置される制御弁175A、176Aの上流側のパラレル管路42Lとを連通可能に構成されている。バイパス回路60は、コントロールバルブ17内に配置された選択弁62と、バイパス弁64と、を有する。
選択弁62は、モータ管路51A及びモータ管路51Bのうち圧力が高い側とパラレル管路42Lとを連通させる。一方、選択弁62は、モータ管路51A及びモータ管路51Bのうち圧力が低い側とパラレル管路42Lとを遮断する。モータ管路51Aは、旋回用油圧モータ2Aの一方の側と制御弁173との間の管路である。モータ管路51Bは、旋回用油圧モータ2Aの他方の側と制御弁173との間の管路である。本実施形態では、選択弁62は、モータ管路51Aに接続された第1入口62Aと、モータ管路51Bに接続された第2入口62Bと、パラレル管路42Lに接続された出口62Cとを有するシャトル弁である。選択弁62は、第1入口62A及び第2入口62Bのうち圧力が高い側と出口62Cとを連通させる。一方、選択弁62は、第1入口62A及び第2入口62Bのうち圧力が低い側と出口62Cとを遮断する。なお、選択弁62は、2つのチェック弁を組み合わせて構成されていてもよい。また、選択弁62の出口62Cは、パラレル管路42Rに接続されていてもよい。
バイパス弁64は、選択弁62の出口62Cとパラレル管路42Lとの間に設けられる圧力制御弁である。バイパス弁64は、旋回用油圧モータ2Aの減速圧力がパラレル管路42Lの圧力よりも高い場合に開口される。旋回用油圧モータ2Aの減速圧力は、例えば旋回用油圧モータ2Aの吐出側に設けられる圧力センサ(図示せず。)によって検出される。圧力センサは、検出した値をコントローラ30に対して出力する。パラレル管路42Lの圧力は、例えば吐出圧センサ28Lによって検出されるメインポンプ14Lの吐出圧であってよい。また、バイパス弁64は、ショベルの動作が複合動作である場合に開口されることが好ましい。この構成により、旋回用油圧モータ2Aの減速時のエネルギーを別の油圧アクチュエータで使用できる。本実施形態では、バイパス弁64は、比例制御可能なスプール弁である。なお、バイパス弁64は、リリーフ弁であってもよい。また、バイパス弁64は、異なる設定圧力のリリーフ弁を多段に接続した構成であってもよい。
戻り弁70は、制御弁173の下流側に設けられ、作動油タンクに排出される作動油の流量を制御する流量制御弁である。戻り弁70は、旋回用油圧モータ2Aの減速圧力がパラレル管路42Lの圧力よりも高い場合に遮断される。また、戻り弁70は、ショベルの動作が複合動作である場合に遮断されることが好ましい。この構成により、旋回用油圧モータ2Aの減速時に、旋回用油圧モータ2Aの吐出側から吐出される作動油が制御弁173を通過して作動油タンクに流れることが防止される。そのため、制御弁173の旋回用油圧モータ2Aの吐出側と接続されるポートと制御弁173の作動油タンクと接続されるポートとの間の開口で生じる不必要なエネルギー損失を低減できる。本実施形態では、戻り弁70は、スプール弁である。
次に、図3の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御(以下「ネガコン制御」と称する。)について説明する。
センターバイパス管路40L、40Rは、最も下流にある制御弁176A、176Bのそれぞれと作動油タンクとの間にネガティブコントロール絞り18L、18Rを備える。メインポンプ14L、14Rが吐出した作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rで制限される。そして、ネガティブコントロール絞り18L、18Rは、レギュレータ13L、13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」とする。)を発生させる。
破線で示されるネガコン圧管路41L、41Rは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生させたネガコン圧をレギュレータ13L、13Rに伝達するための制御圧ラインである。
レギュレータ13L、13Rは、ネガコン圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。また、レギュレータ13L、13Rは、導入されるネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を減少させ、導入されるネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させる。
具体的には、図3で示されるように、ショベルにおける油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合(以下、「待機モード」とする。)、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路40L、40Rを通ってネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンターバイパス管路40L、40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、低下したネガコン圧を受けるレギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。
上述のような構成により、図3の油圧システムは、待機モードにおいては、メインポンプ14L、14Rにおける無駄なエネルギー消費を抑制できる。なお、無駄なエネルギー消費は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路40L、40Rで発生させるポンピングロスを含む。
また、図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14L、14Rから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できるようにする。
次に、図2から図4を参照し、図1のショベルのコントローラ30の構成について説明する。図4は、コントローラ30の動作の流れを示すブロック線図である。
図2及び図3に示されるように、コントローラ30は、動作判定部301と、バイパス回路制御部302と、ポンプ流量制御部303と、を有する。
動作判定部301は、ショベルが旋回減速の動作を行っているか否かを判定する。本実施形態では、動作判定部301は、旋回操作レバー26Aの操作量に基づいて、ショベルが旋回減速の動作を行っているか否かを判定する。旋回操作レバー26Aの操作量は、操作圧センサ29Aが検出する値によって判断される。具体的には、動作判定部301は、旋回操作レバー26Aが中立位置に戻す方向に操作された場合、ショベルが旋回減速の動作を行っていると判定する。また、動作判定部301は、旋回用油圧モータ2Aの吐出側の圧力と吸込側の圧力とに基づいて、ショベルが旋回減速の動作を行っているか否かを判定してもよい。具体的には、動作判定部301は、旋回用油圧モータ2Aの吐出側の圧力が吸込側の圧力よりも大きい場合、ショベルが旋回減速の動作を行っていると判定する。
また、動作判定部301は、ショベルの動作が複合動作であるか否かを判定する。本実施形態では、動作判定部301は、操作装置26の操作状態に基づいて、ショベルの動作が複合動作であるか否かを判定する。操作装置26の操作状態は、操作圧センサ29が検出する値によって判断される。具体的には、動作判定部301は、複数の操作装置26が同時に操作されている場合、ショベルの動作が複合動作であると判定する。
バイパス回路制御部302は、バイパス弁64及び戻り弁70の開閉を制御する。本実施形態では、バイパス回路制御部302は、旋回用油圧モータ2Aの減速圧力及びメインポンプ14Lの吐出圧と吐出流量に基づいて、バイパス弁64及び戻り弁70の開閉を制御する。吐出流量の算出については後述する。具体的には、旋回用油圧モータ2Aの減速圧力がメインポンプ14Lの吐出圧より高く、メインポンプ14Lの吐出流量が低減可能な場合、戻り弁70を遮断し、バイパス弁64を開口する。一方、バイパス回路制御部302は、旋回用油圧モータ2Aの減速圧力がメインポンプ14Lの吐出圧以下であり、メインポンプ14Lの吐出流量が低減不可の場合、戻り弁70を開口し、且つ、バイパス弁64を遮断する。ここで、メインポンプ14Lの吐出流量が低減不可の場合は、例えば、メインポンプ14Lの吐出流量がスタンバイ流量の場合である。また、メインポンプ14Lの吐出流量を用いずに、メインポンプ14Lの吐出指令値(電流値)を用いて低減の可否を判断してもよい。
ポンプ流量制御部303は、メインポンプ14Lの吐出量を制御する。本実施形態では、ポンプ流量制御部303は、図4に示されるように、メインポンプ14Lの流量Qpから所定の計算式に基づいて算出される流量Qを減算して得られる流量となるようにレギュレータ13Lに対して制御指令を出力する。所定の計算式は、バイパス弁64の開口面積A、メインポンプ14Lの吐出圧Ps、及び旋回用油圧モータ2Aの減速圧力Pswoを入力として流量Qを出力する計算式である。これにより、レギュレータ13Lは、ポンプ流量制御部303の制御指令に応じてメインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、ポンプ流量制御部303は、旋回用油圧モータ2Aの減速圧力が大きいほど、メインポンプ14Lの吐出量が小さくなるようにレギュレータ13Lに対して制御指令を出力する。
次に、図5を参照して、コントローラ30がバイパス弁64及び戻り弁70の開閉を制御して旋回減速時のエネルギーを回生する処理(以下「旋回回生処理」と称する。)について説明する。図5は、旋回回生処理の一例のフローチャートである。コントローラ30は、ショベルの稼働中に所定の制御周期で繰り返しこの処理を実行する。
最初に、動作判定部301は、ショベルが旋回減速の動作を行っているか否かを判定する(ステップST1)。本実施形態では、動作判定部301は、旋回操作レバー26Aが中立位置に戻す方向に操作された場合、ショベルが旋回減速の動作を行っていると判定する。
ショベルが旋回減速の動作を行っていないと動作判定部301が判定した場合(ステップST1のNo)、処理を終了する。一方、ショベルが旋回減速の動作を行っていると動作判定部301が判定した場合(ステップST1のYes)、動作判定部301は、ショベルの動作が複合動作であるか否かを判定する(ステップST2)。本実施形態では、動作判定部301は、複数の操作装置26が同時に操作されている場合、ショベルの動作が複合動作であると判定する。なお、ステップST2の後にステップST1を行ってもよく、ステップST1及びステップST2を同時に行ってもよい。
ショベルの動作が複合動作でないと動作判定部301が判定した場合(ステップST2のNo)、処理を終了する。ショベルの動作が複合動作であると動作判定部301が判定した場合(ステップST2のYes)、バイパス回路制御部302は、旋回用油圧モータ2Aの減速圧力がメインポンプ14Lの吐出圧より高いか否かを判定する(ステップST3)。
旋回用油圧モータ2Aの減速圧力がメインポンプ14Lの吐出圧より低い場合(ステップST3のNo)、処理を終了する。一方、旋回用油圧モータ2Aの減速圧力がメインポンプ14Lの吐出圧より高い場合(ステップST3のYes)、バイパス回路制御部302は、メインポンプ14Lの吐出流量が低減可能か否かを判定する(ステップST4)。
メインポンプ14Lの吐出流量が低減不可である場合(ステップST4のNo)、処理を終了する。一方、メインポンプ14Lの吐出流量が低減可能である場合(ステップST4のYes)、バイパス回路制御部302は、戻り弁70を閉口する(ステップST5)。続いて、バイパス回路制御部302は、バイパス弁64を開口する(ステップST6)。なお、ステップST6の後にステップST5を行ってもよく、ステップST5及びステップST6を同時に行ってもよい。
続いて、ポンプ流量制御部303は、メインポンプ14Lの吐出量を制御する(ステップST7)。本実施形態では、ポンプ流量制御部303は、メインポンプ14Lの吐出量から所定の計算式に基づいて算出される流量を減算して得られる流量となるようにレギュレータ13Lに対して制御指令を出力する。これにより、レギュレータ13Lは、ポンプ流量制御部303の制御指令に応じてメインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14Lの吐出量を制御する。ステップST7の後、処理を終了する。
この構成により、ハーフレバー状態での旋回減速の際、作動油が制御弁173を通過して作動油タンクに流れることが防止され、作動油はバイパス回路60を通過してパラレル管路42Lに流れる。そのため、制御弁173で生じる不必要なエネルギー損失を低減できる。また、バイパス回路60を通過してパラレル管路42Lに流入する作動油に応じてメインポンプ14Lの吐出量を低減できるので、省エネルギー化を図ることができる。
次に、図6、図7A及び図7Bを参照して、図1のショベルに搭載される油圧システムの第2構成例について説明する。図6は、図1のショベルに搭載される油圧システムの第2構成例を示す概略図である。図6では、図2と同様に、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御系を、それぞれ二重線、太実線、破線、及び一点鎖線で示している。なお、図6の油圧システムは図3の油圧システムと同様に旋回油圧回路TCを有しているが、図6においては旋回油圧回路TCの図示を省略している。図7A及び図7Bは、第2構成例におけるコントローラの動作の流れを示すブロック線図である。
図6に示されるように、第2構成例の油圧システムは、選択弁62の出口62Cがパラレル管路42Lではなく、センターバイパス管路40Lに連通可能に構成されている点で、第1構成例の油圧システムと異なる。なお、その他の点については、第1構成例の油圧システムと同様の構成である。
第2構成例の油圧システムでは、バイパス回路制御部302は、例えば図7Aに示されるように、操作圧センサ29Aにより検出される値(パイロット圧)に基づいて、バイパス弁64の開口面積を制御してもよい。また、バイパス回路制御部302は、例えば図7Bに示されるように、メインポンプ14Lの吐出圧の目標値(目標ポンプ圧力)から吐出圧センサ28Lにより検出される値(実ポンプ圧力)を減算して算出される差分を用いたPI制御によってバイパス弁64の開口面積を制御してもよい。
この構成により、ハーフレバー状態での旋回減速の際、作動油が制御弁173を通過して作動油タンクに流れることが防止され、作動油はバイパス回路60を通過してセンターバイパス管路40Lに流れる。そのため、制御弁173で生じる不必要なエネルギー損失を低減できる。また、バイパス回路60を通過してセンターバイパス管路40Lに流入する作動油に応じて、ネガコン圧が小さくなるので、メインポンプ14Lの吐出量を低減できる。その結果、省エネルギー化を図ることができる。
次に、図8を参照して、図1のショベルに搭載される油圧システムの第3構成例について説明する。図8は、図1のショベルに搭載される油圧システムの第3構成例を示す概略図である。図8では、図2と同様、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御系を、それぞれ二重線、太実線、破線、及び一点鎖線で示している。なお、図8の油圧システムは図3の油圧システムと同様に旋回油圧回路TCを有しているが、図8においては旋回油圧回路TCの図示を省略している。
図8に示されるように、第3構成例の油圧システムは、選択弁62の出口62Cがパラレル管路42L及びセンターバイパス管路40Lに連通可能に構成されている点で、第1構成例の油圧システムと異なる。
この構成により、ハーフレバー状態での旋回減速の際、作動油が制御弁173を通過して作動油タンクに流れることが防止され、作動油はバイパス回路60を通過してパラレル管路42L及びセンターバイパス管路40Lに流れる。そのため、制御弁173で生じる不必要なエネルギー損失を低減できる。また、バイパス回路60を通過してパラレル管路42L及びセンターバイパス管路40Lに流入する作動油に応じて、メインポンプ14Lの吐出量を低減できるので、省エネルギー化を図ることができる。
次に、図9を参照して、図1のショベルに搭載される油圧システムの第4構成例について説明する。図9は、図1のショベルに搭載される油圧システムの第4構成例を示す概略図である。図9では、図2と同様、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御系を、それぞれ二重線、太実線、破線、及び一点鎖線で示している。なお、図9の油圧システムは図3の油圧システムと同様に旋回油圧回路TCを有しているが、図9においては旋回油圧回路TCの図示を省略している。
図9に示されるように、第4構成例の油圧システムは、バイパス回路60が選択弁62を有しておらず、バイパス管路66Aと、バイパス管路66Bと、を有する点で、第2構成例の油圧システムと異なる。バイパス管路66Aは、モータ管路51Aとセンターバイパス管路40Lとをバイパス弁64Aを介して接続する。バイパス管路66Bは、モータ管路51Bとセンターバイパス管路40Lとをバイパス弁64Bを介して接続する。
第4構成例の油圧システムでは、ショベルの旋回減速時に、旋回用油圧モータ2Aの減速圧力がセンターバイパス管路40Lの圧力よりも大きい場合、バイパス回路制御部302は、旋回用油圧モータ2Aの吐出側のモータ管路51A(51B)とセンターバイパス管路40Lとを接続するバイパス管路66A(66B)に設けられたバイパス弁64A(64B)を開口する。
この構成により、ハーフレバー状態での旋回減速の際、作動油が制御弁173を通過して作動油タンクに流れることが防止され、作動油がバイパス回路60を通過してセンターバイパス管路40Lに流れる。そのため、制御弁173で生じる不必要なエネルギー損失を低減できる。また、バイパス回路60を通過してセンターバイパス管路40Lに流入する作動油に応じて、ネガコン圧が小さくなるので、メインポンプ14Lの吐出量を低減できる。その結果、省エネルギー化を図ることができる。
なお、第4構成例の油圧システムでは、バイパス管路66A、66Bがセンターバイパス管路40Lに連通可能に構成されているが、バイパス管路66A、66Bは、センターバイパス管路40Rに連通可能に構成されていてもよい。また、バイパス管路66A、66Bは、パラレル管路42L、42Rに連通可能に構成されていてもよい。さらに、バイパス管路66A、66Bは、センターバイパス管路40L、40R及びパラレル管路42L、42Rに連通可能に構成されていてもよい。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
上記の各実施形態では、メインポンプ14Lから油圧アクチュエータに向かう作動油の流れを制御する制御弁171、173、175A、176Aのそれぞれは、メインポンプ14Lと作動油タンクとの間で直列に接続されている。しかしながら、制御弁171、173、175A、176Aのそれぞれは、メインポンプ14Lと作動油タンクとの間で互いに並列に接続されていてもよい。
同様に、メインポンプ14Rから油圧アクチュエータに向かう作動油の流れを制御する制御弁172、174、175B、176Bのそれぞれは、メインポンプ14Rと作動油タンクとの間で互いに直列に接続されている。しかしながら、制御弁172、174、175B、176Bのそれぞれは、メインポンプ14Rと作動油タンクとの間で並列に接続されていてもよい。
本国際出願は、2017年7月27日に出願した日本国特許出願第2017−145750号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。