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JPWO2015072537A1 - 発光材料、有機発光素子および化合物 - Google Patents

発光材料、有機発光素子および化合物 Download PDF

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Abstract

下記一般式(1)で表される化合物は発光材料として有用である。R1〜R8は水素原子または置換基、R9は置換基を表すが、R1〜R8の少なくとも1つは下記一般式(2)等で表される基である。L12は単結合または二価の連結基を表し、*は一般式(1)におけるベンゼン環への結合部位を表す。R11〜R20は水素原子または置換基を表す。

Description

本発明は、発光材料として有用な化合物とそれを用いた有機発光素子に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、正孔輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。その中には、ホウ素原子と他のヘテロ原子を含むヘテラボリン環を有する三環構造にカルバゾリル基等の置換基が結合した構造を有する化合物を利用した、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する研究も見受けられる。
非特許文献1には、ホウ素原子と窒素原子を含むヘテラボリン環を有する化合物について発光特性を検討した結果が記載されている。それによると、下記の構造を有する化合物のシクロヘキサン溶液または固体膜に励起光を照射したところ可視領域に発光が認められたことが記載されている(Hexnはn−ヘキシル基を表し、Tipは2,4,6−トリイソプロピルフェニル基を表す)。
しかしながら、非特許文献1には、ヘテラボリン環のヘテロ原子を、酸素原子や硫黄原子などの窒素原子以外のヘテロ原子に変えた化合物については記載されていない。
Figure 2015072537
また、特許文献1には、下記一般式で表されるヘテラボリン環を有する三環構造の化合物が開示されている。下記の一般式におけるR1は2以上のアリール基またはヘテロアリール基を含む基であり、R3、R4は1〜5つの置換基を表し、R2〜R4は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基を表すものと規定されている。ここでは、下記一般式のR1が2,4,6−トリフェニルフェニル基、R2がフェニル基、R3、R4が水素原子である化合物を、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する一対の電極間に存在する発光層の中にホスト材料として用いた例や、電子輸送層の中に用いた例が記載されている。しかしながら、特許文献1には、この一般式で表される化合物の発光特性については記載されておらず、ヘテラボリン環のヘテロ原子を、窒素原子以外のヘテロ原子に変えた化合物についても記載されていない。
Figure 2015072537
非特許文献2には、ホウ素原子と他のヘテロ原子を含むヘテラボリン環を有する化合物について発光特性を検討した結果が記載され、下記の構造を有する化合物のシクロヘキサン溶液に可視領域の発光が認められたことが記載されている。下記式におけるRは水素原子またはメチル基を表し、EはN−メチル基または硫黄原子を表し、Mesはメシチル基を表す。しかしながら、非特許文献1には、Rがカルバゾリル基などの置換アミノ基である化合物については記載されていない。
Figure 2015072537
Chem.Commun.,2007,3204-3206 Chem.Eur.J.2007,13,8051-8060
WO2011/143563号公報
上記のように、非特許文献1には、ホウ素原子と窒素原子を含むヘテラボリン環(アザボリン環)を有する三環構造にカルバゾリル基を導入した化合物が可視領域で発光することが開示されている。しかしながら、本発明者らが、カルバゾリル基やメチル基等で置換したカルバゾリル基を、アザボリン環を有する三環構造に導入した化合物について発光特性を実際に評価したところ、発光特性は十分に満足しうるものではないことが判明した(後掲の比較例1〜3参照)。
そこで本発明者らは、ヘテラボリン環を有する化合物群について種々の検討を始め、多数の類似骨格の中からホウ素原子と酸素原子または硫黄原子とを含むヘテラボリン環を有する化合物群に発光材料として有用性があることを初めて見出し、さらに検討を進めることにした。上記のように、ホウ素原子と硫黄原子を含むヘテラボリン環を有する三環構造の化合物については、非特許文献2に可視領域で発光が認められたことが記載されている。しかしながら、非特許文献2には、ヘテラボリン環を有する三環構造にカルバゾール基等の置換アミノ基が結合した化合物については記載されていない。このため、ホウ素原子と酸素原子または硫黄原子を含むヘテラボリン環を有する三環構造にカルバゾリル基等の置換アミノ基が結合した化合物の発光材料としての有用性は予測がつかない。
このような状況下において本発明者らは、ホウ素原子と酸素原子または硫黄原子を含むヘテラボリン環を有する化合物の発光材料としての有用性についてさらに検討を進め、発光特性が優れた化合物を見出すことを目指して研究を重ねた。そして、発光材料として有用な化合物の一般式を導きだし、発光効率が高い有機発光素子の構成を一般化することを目的として鋭意検討を進めた。
鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、ホウ素原子と酸素原子または硫黄原子を含むヘテラボリン環を有する化合物のうち特定の構造を有するものが発光材料として優れた性質を有することを見出した。また、そのような化合物群の中に、遅延蛍光材料として有用なものがあることを見出し、発光効率が高い有機発光素子を安価に提供しうることを明らかにした。本発明者らは、これらの知見に基づいて、上記の課題を解決する手段として、以下の本発明を提供するに至った。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
Figure 2015072537
[一般式(1)において、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。R1〜R8は各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、R1〜R8の少なくとも1つは、各々独立に下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基である。R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8、R8とR9、R9とR1は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R9は置換基を表す。R9がホウ素原子と単結合を形成していない孤立電子対を有する原子を含むとき、該原子はホウ素原子と配位結合して環状構造を形成していてもよい。]
Figure 2015072537
Figure 2015072537
[一般式(2)〜(7)において、L12〜L17は各々独立に単結合または二価の連結基を表し、*は一般式(1)におけるベンゼン環への結合部位を表す。R11〜R20、R21〜R28、R31〜R38、R3a、R3b、R41〜R48、R4a、R51〜R58、R61〜R68は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25、R25とR26、R26とR27、R27とR28、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R3aとR3b、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R65とR66、R66とR67、R67とR68はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
[2] 一般式(1)のR1〜R8の少なくとも1つが前記一般式(3)〜(7)のいずれかで表される基であることを特徴とする[1]に記載の発光材料。
[3] 一般式(1)のR1〜R8の少なくとも1つが前記一般式(3)で表される基である場合に、前記一般式(3)のR21〜R28のうち少なくとも1つは置換基であることを特徴とする[1]または[2]に記載の発光材料。
[4] 一般式(1)のR2、R3、R6、およびR7の少なくとも1つが前記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の発光材料。
[5] 一般式(1)のR3およびR6の少なくとも1つが前記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることを特徴とする[4]に記載の発光材料。
[6] 一般式(1)のR3とR6が、各々独立に前記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることを特徴とする[5]に記載の発光材料。
[7] 前記一般式(2)のR11〜R20の少なくとも1つ、前記一般式(3)のR21〜R28の少なくとも1つ、前記一般式(4)のR31〜R38の少なくとも1つと、R3aおよびR3bの少なくとも1つ、前記一般式(5)のR41〜R48の少なくとも1つ、前記一般式(6)のR51〜R58の少なくとも1つ、および前記一般式(7)のR61〜R68の少なくとも1つが置換基であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の発光材料。
[8] 前記一般式(2)のR13およびR18の少なくとも一方、前記一般式(3)のR23およびR26の少なくとも一方、前記一般式(4)のR33およびR36の少なくとも一方と、R3aおよびR3bの少なくとも一方、前記一般式(5)のR43およびR46の少なくとも一方、前記一般式(6)のR53およびR56の少なくとも一方、並びに前記一般式(7)のR63およびR66の少なくとも一方が置換基であることを特徴とする[7]に記載の発光材料。
[9] 前記一般式(2)のR13およびR18の少なくとも一方、前記一般式(3)のR23およびR26の少なくとも一方、前記一般式(4)のR33およびR36の少なくとも一方と、R3aおよびR3bの少なくとも一方、前記一般式(5)のR43およびR46の少なくとも一方、前記一般式(6)のR53およびR56の少なくとも一方、並びに前記一般式(7)のR63およびR66の少なくとも一方が、前記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることを特徴とする[8]に記載の発光材料。
[10] 前記一般式(2)〜(7)のL12〜L17が、単結合であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項に記載の発光材料。
[11] 一般式(1)のXが、酸素原子であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか1項に記載の発光材料。
[12] 一般式(1)のR9が、下記一般式(a)で表される基であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれか1項に記載の発光材料。
Figure 2015072537
[式(a)において、*は前記一般式(1)におけるホウ素原子への結合部位を表す。R9a、R9b、R9c、R9d、R9eは、各々独立に水素原子または置換基を表す。R9aとR9b、R9bとR9c、R9cとR9d、R9dとR9eはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
[13] 前記一般式(a)のR9aとR9eが置換基であることを特徴とする[12]に記載の発光材料。
[14] 一般式(1)のR1〜R8の少なくとも1つが前記一般式(4)で表される基であることを特徴とする[1]〜[13]のいずれか1項に記載の発光材料。
[15] 一般式(1)のR3とR6、またはR2とR7が、前記一般式(4)で表される基であることを特徴とする[1]〜[4]、[7]〜[14]のいずれか1項に記載の発光材料。
[16] 前記一般式(4)のR3aとR3bが、置換基であることを特徴とする[14]または[15]に記載の発光材料。
[17] 前記置換基が、炭素数1〜15のアルキル基またはフェニル基であることを特徴とする[14]〜[16]のいずれか1項に記載の発光材料。
[18] 前記一般式(4)のR3aとR3bが互いに結合して環状構造を形成していることを特徴とする[14]〜[16]のいずれか1項に記載の発光材料。
[19] 前記一般式(1)で表される化合物からなる遅延蛍光体。
[20] [1]〜[18]のいずれか1項に記載の発光材料を含むことを特徴とする有機発光素子。
[21] 遅延蛍光を放射することを特徴とする[20]に記載の有機発光素子。
[22] 有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする[20]または[21]に記載の有機発光素子。
[23] 下記一般式(1’)で表される化合物。
Figure 2015072537
[一般式(1’)において、X’は酸素原子または硫黄原子を表す。R1’〜R8’は各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、R1’〜R8’の少なくとも1つは、各々独立に下記一般式(2’)〜(7’)のいずれかで表される基である。R1’とR2’、R2’とR3’、R3’とR4’、R5’とR6’、R6’とR7’、R7’とR8’、R8’とR9’、R9’とR1’は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R9’は置換基を表す。R9’がホウ素原子と単結合を形成していない孤立電子対を有する原子を含むとき、該原子はホウ素原子と配位結合して環状構造を形成していてもよい。]
Figure 2015072537
Figure 2015072537
[一般式(2’)〜(7’)において、L12’〜L17’は各々独立に単結合または二価の連結基を表し、*は一般式(1’)におけるベンゼン環への結合部位を表す。R11’〜R20’、R21’〜R28’、R31’〜R38’、R3a’、R3b’、R41’〜R48’、R4a’、R51’〜R58’、R61’〜R68’は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R11’とR12’、R12’とR13’、R13’とR14’、R14’とR15’、R16’とR17’、R17’とR18’、R18’とR19’、R19’とR20’、R21’とR22’、R22’とR23’、R23’とR24’、R24’とR25’、R25’とR26’、R26’とR27’、R27’とR28’、R31’とR32’、R32’とR33’、R33’とR34’、R35’とR36’、R36’とR37’、R37’とR38’、R3a’とR3b’、R41’とR42’、R42’とR43’、R43’とR44’、R45’とR46’、R46’とR47’、R47’とR48’、R51’とR52’、R52’とR53’、R53’とR54’、R55’とR56’、R56’とR57’、R57’とR58’、R61’とR62’、R62’とR63’、R63’とR64’、R65’とR66’、R66’とR67’、R67’とR68’はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
本発明の化合物は、発光材料として有用である。また、本発明の化合物の中には遅延蛍光を放射するものが含まれている。本発明の化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、高い発光効率を実現しうる。
有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。 実施例1の化合物5の溶液の発光スペクトルである。 実施例1の化合物5の薄膜型有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルである。 実施例1の化合物5の溶液の過渡減衰曲線である。 実施例2の化合物6の溶液および薄膜型有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルである。 実施例2の化合物6の薄膜型有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルである。 実施例2の化合物6の溶液の過渡減衰曲線である。 実施例3の化合物18の溶液の発光スペクトルである。 実施例3の化合物18の溶液の過渡減衰曲線である。 実施例4の化合物59の溶液の発光スペクトルである。 実施例5の化合物65の溶液の発光スペクトルである。 実施例6の化合物67の溶液の発光スペクトルである。 実施例7の化合物156の溶液の発光スペクトルである。 実施例7の化合物156の溶液の過渡減衰曲線である。 比較例1の比較化合物Aの溶液の発光スペクトルである。 比較例1の比較化合物Aの溶液の過渡減衰曲線である。 比較例2の比較化合物Bの溶液の発光スペクトルである。 比較例2の比較化合物Bの溶液の過渡減衰曲線である。 比較例3の比較化合物Cの溶液の発光スペクトルである。 比較例3の比較化合物Cの溶液の過渡減衰曲線である。 実施例11の化合物5の有機エレクトロミネッセンス素子の発光スペクトルである。 実施例11の化合物5の有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−外部量子効率特性を示すグラフである。 実施例12の化合物6の有機エレクトロミネッセンス素子の発光スペクトルである。 実施例12の化合物6の有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−外部量子効率特性を示すグラフである。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべて1Hであってもよいし、一部または全部が2H(デューテリウムD)であってもよい。
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の発光材料は、下記一般式(1)で表される化合物からなることを特徴とする。
Figure 2015072537
一般式(1)において、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。
一般式(1)において、R1〜R8は各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、R1〜R8の少なくとも1つは、各々独立に下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基である。
下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基は、R1〜R8のうちの1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。
下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基がR1〜R8のうちの1つのみであるときは、R2、R3、R6およびR7のいずれか1つが下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることが好ましく、R3またはR6が下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることがより好ましい。
一方、R1〜R8のうちの2つ以上が下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であるときは、下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基は、R1〜R4の少なくとも1つと、R5〜R8の少なくとも1つであることが好ましい。このとき、下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基は、R1〜R4のうちの1〜3つ、R5〜R8のうちの1〜3つであることが好ましく、R1〜R4のうちの1または2つ、R5〜R8のうちの1または2つであることがより好ましい。R1〜R4のうち一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基の数と、R5〜R8のうち一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基の数は同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。R1〜R4のうちでは、R2またはR3の少なくとも1つが一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることが好ましく、少なくともR3が一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることがより好ましい。また、R5〜R8のうちでは、R6またはR7の少なくとも1つが一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることが好ましく、少なくともR6が一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることがより好ましい。好ましい化合物は、一般式(1)のR3とR6が一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基である化合物、一般式(1)のR2とR7が一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基である化合物、一般式(1)のR2、R3、R6、R7が一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基である化合物であり、さらに好ましい化合物はR3とR6が一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基である化合物である。一般式(1)中に存在する複数の一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基は、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。また、一般式(1)で表される基は対称構造をとっていることも好ましい。すなわち、R1とR8、R2とR7、R3とR6、R4とR5は、それぞれ同一であることが好ましい。
Figure 2015072537
Figure 2015072537
一般式(2)〜(7)において、*は一般式(1)におけるベンゼン環への結合部位を表す。
12〜L17は、各々独立に単結合または二価の連結基を表し、単結合であることが好ましい。L12〜L17が二価の連結基である場合、二価の連結基としては、炭素数6〜18の芳香族炭化水素環基、環員数6〜18の複素芳香族炭化水素環基などを挙げることができる。好ましい連結基は、フェニレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、トリフェニレニレン基、チオフェニレン基であり、より好ましくい連結基はフェニレン基であり、さらに好ましい連結基は、1,4−フェニレン基である。これらの連結基は置換基が導入されていてもよい。連結基に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲については、下記のR1〜R8等がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
一般式(2)〜(7)において、R11〜R20、R21〜R28、R31〜R38、R3a、R3b、R41〜R48、R4a、R51〜R58、R61〜R68は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基の数は特に制限されず、R11〜R20、R21〜R28、R31〜R38、R3a、R3b、R41〜R48、R4a、R51〜R58、R61〜R68のすべてが無置換(すなわち水素原子)であってもよいが、R11〜R20、R21〜R28、R31〜R38、R3aおよびR3b、R41〜R48、R51〜R58、R61〜R68のそれぞれの組の少なくとも1つは置換基であることが好ましく、R13およびR18、R23およびR26、R33およびR36、R3aおよびR3b、R43およびR46、R53およびR56、R63およびR66のそれぞれの組の少なくとも1つが置換基であることがより好ましい。一般式(2)〜(7)のそれぞれにおいて置換基が2つ以上ある場合、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
11〜R20、R21〜R28、R31〜R38、R3a、R3b、R41〜R48、R4a、R51〜R58、R61〜R68がとりうる置換基と、R1〜R8がとりうる置換基と、L12〜L17に導入しうる置換基して、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数1〜20のジアルキル置換アミノ基である。さらに好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8、R8とR9、R9とR1、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25、R25とR26、R26とR27、R27とR28、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R3aとR3b、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R65とR66、R66とR67、R67とR68は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環などを挙げることができる。
11〜R20、R21〜R28、R31〜R38、R3a、R3b、R41〜R48、R4a、R51〜R58、R61〜R68は、各々独立に上記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることも好ましい。
また、R1〜R8は、例えば少なくとも1つとして一般式(3)〜(7)のいずれかで表される基を選択してもよく、少なくとも1つとして一般式(4)〜(7)のいずれかで表される基を選択してもよい。R1〜R8の少なくとも1つが一般式(4)で表される基であるとき、一般式(4)のR3aおよびR3bの少なくともいずれかが置換基であることが好ましく、R3aとR3bがともに置換基であることがより好ましい。置換基としては、炭素数1〜15のアルキル基、フェニル基であることが好ましく、炭素数1〜15のアルキル基であることがより好ましい。また、R3aおよびR3bは互いに結合して環状構造を形成していることも好ましい。この環状構造としては、フルオレン環、キサンテン環、チオキサンテン環等の三環構造であることが好ましい。
一般式(1)において、R9は置換基を表す。R9が表す置換基の説明と好ましい範囲については、
上記のR1〜R8等がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。このうち、R9は下記一般式(8)で表される置換もしくは無置換のフェニル基であることが好ましい。
Figure 2015072537
一般式(8)において、*は一般式(1)におけるホウ素原子への結合部位を表す。R9a、R9b、R9c、R9d、R9eは、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基の数は特に制限されず、R9a、R9b、R9c、R9d、R9eのすべてが無置換(すなわち水素原子)であってもよいが、R9a、R9c、R9eの少なくともいずれかは置換基であることが好ましく、R9aとR9eが置換基であることがより好ましい。一般式(8)において置換基が2つ以上ある場合、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。R9aとR9b、R9bとR9c、R9cとR9d、R9dとR9eはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R9a、R9b、R9c、R9d、R9eがとりうる置換基の説明と好ましい範囲については、下記のR1〜R8等がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができ、環状構造の説明と好ましい例については、上記の一般式(1)において、R1とR2等が互いに結合して形成する環状構造の説明と好ましい例を参照することができる。
ここで、R9がホウ素原子と単結合を形成していない原子であって孤立電子対を有するものを含む置換基であるとき、該原子はホウ素原子と配位結合して環状構造を形成していてもよい。ここでいうホウ素原子と単結合を形成していない原子であって孤立電子対を有するものとして、酸素原子や窒素原子を挙げることができる。また、該原子がホウ素原子と配位結合することによって形成される環状構造は、5〜7員環であることが好ましく、5または6員環であることがより好ましい。具体的な化合物例として、下記の化合物177〜186を参照することができる。これらの化合物では、ホウ素原子と単結合を形成していない酸素原子または窒素原子がホウ素原子と配位結合して5または6員環を形成している。
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。

Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
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Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)で表される最小化合物の分子量である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のR1〜R9のいずれかに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしを反応させることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(9)または(10)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
Figure 2015072537
一般式(9)または(10)において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、L1およびL2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは2〜10である。連結基は−X11−L11−で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(9)または(10)において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基である。
1およびL2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)の構造のR1〜R8のいずれか、一般式(2)のR11〜R20のいずれか、一般式(3)の構造のR21〜R28のいずれか、一般式(4)の構造のR31〜R38のいずれか、一般式(5)の構造のR41〜R48のいずれか、一般式(6)の構造のR51〜R58のいずれか、一般式(7)の構造のR61〜R68のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(11)〜(14)で表される構造を挙げることができる。
Figure 2015072537
これらの式(11)〜(14)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)の構造のR1〜R9のいずれかにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
Figure 2015072537
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
[一般式(1’)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物は新規化合物である。
Figure 2015072537
一般式(1’)において、X’は酸素原子または硫黄原子を表す。R1’〜R8’は各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、R1’〜R8’の少なくとも1つは、各々独立に下記一般式(2’)〜(7’)で表される基である。R1’とR2’、R2’とR3’、R3’とR4’、R5’とR6’、R6’とR7’、R7’とR8’、R8’とR9’、R9’とR1’は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R9’は置換基を表す。R9’がホウ素原子と単結合を形成していない孤立電子対を有する原子を含むとき、該原子はホウ素原子と配位結合して環状構造を形成していてもよい。
Figure 2015072537
Figure 2015072537
一般式(2’)〜(7’)において、L12’〜L17’は各々独立に単結合または二価の連結基を表し、*は一般式(1’)におけるベンゼン環への結合部位を表す。R11’〜R20’、R21’〜R28’、R31’〜R38 ’、R3a’、R3b’、R41’〜R48’、R4a’、R51’〜R58’、R61’〜R68 ’は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R11’とR12’、R12’とR13’、R13’とR14’、R14’とR15’、R16’とR17’、R17’とR18’、R18’とR19’、R19’とR20’、R21’とR22’、R22’とR23’、R23’とR24’、R24’とR25’、R25’とR26’、R26’とR27’、R27’とR28’、R31’とR32’、R32’とR33’、R33’とR34’、R35’とR36’、R36’とR37’、R37’とR38’、R3a’とR3b’、R41’とR42’、R42’とR43’、R43’とR44’、R45’とR46’、R46’とR47’、R47’とR48’、R51’とR52’、R52’とR53’、R53’とR54’、R55’とR56’、R56’とR57’、R57’とR58’、R61’とR62’、R62’とR63’、R63’とR64’、R65’とR66’、R66’とR67’、R67’とR68’はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
一般式(1’)におけるR1'〜R8’と、一般式(2’)〜(7’)におけるR11’〜R20 ’、R21’〜R28 ’、R31’〜R38 ’、R3a’、R3b’、R41’〜R48 ’、R4a’、R51’〜R58 ’、R61’〜R68 ’の説明と好ましい範囲については、一般式(1)で表される化合物の説明を参照することができる。
[一般式(1’)で表される化合物の合成方法]
一般式(1’)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、一般式(1’)のR3’とR6’が一般式(4’)で表される基である化合物は、以下の2つの化合物を反応させることにより合成することが可能である。
Figure 2015072537
上記の反応式におけるR1’、R2’、R4’、R5’、R7’〜R9’、R31’〜R38’、R3a’、R3b’の説明については、一般式(1’)における対応する記載を参照することができる。Aはハロゲン原子を表し、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
上記の反応は、公知の反応を応用したものであり、公知の反応条件を適宜選択して用いることができる。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(1’)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
[有機発光素子]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光材料として有用である。このため、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に発光材料として効果的に用いることができる。一般式(1)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)が含まれている。すなわち本発明は、一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と、一般式(1)で表される化合物を遅延蛍光体として使用する発明と、一般式(1)で表される化合物を用いて遅延蛍光を発光させる方法の発明も提供する。そのような化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。このとき、本発明の一般式(1)で表される化合物は、いわゆるアシストドーパントとして、発光層に含まれる他の発光材料の発光をアシストする機能を有するものであってもよい。すなわち、発光層に含まれる本発明の一般式(1)で表される化合物は、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位の間の最低励起一重項エネルギー準位を有するものであってもよい。
有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R1〜R10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。nは3〜5の整数を表す。
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 2015072537
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 2015072537
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 2015072537
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 2015072537
Figure 2015072537
Figure 2015072537
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 2015072537
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
Figure 2015072537
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[中間体の合成]
実施例の各化合物を合成するための中間体を以下のようにして合成した。
(中間体1aの合成)
Figure 2015072537
アントラニル酸メチル(349.2g,2310mmol)、ヨードベンゼン(428.4g,2100mmol)、炭酸カリウム(348.3g,2520mmol)、ヨウ化銅(20.0g,105mmol)を三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で加熱撹拌した。
反応終了後、この混合物を室温まで冷却し、ヘキサン500mlで希釈し、セライトを用いて濾過した。得られたろ液を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:ジクロロメタン=8:2の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製し、得られたフラクションを真空乾燥した。これにより、目的物の淡黄色オイル状液体(中間体1a)を収量427.5g、収率90%で得た。
(中間体1bの合成)
Figure 2015072537
中間体1a(109.08g,480mmol)、脱水テトラヒドロフラン960mlを三口フラスコに入れ、−40℃に冷却した。この溶液に、メタンガスの発生に注意しつつ、メチルリチウムの3.0Mジエトキメタン溶液(504ml,1512mmol)を30分かけて滴下した。その後、この混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで室温で一晩撹拌した。その後、0℃に冷却した混合物に、慎重にメタノールを滴下して残存メチルリチウムを失活させた。
この混合物を濃縮した後、ジクロロメタンで希釈して溶液を得た。この溶液を、分液ロートを用いて水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、溶液を濾過した後、濃縮し、真空乾燥(60℃、6h)を行ってオイル状液体を得た。このオイル状液体を三口フラスコに入れ、クロロホルム960ml、メタンスルホン酸62.3mlを加えて、窒素雰囲気下、3時間還流させた。
この混合物を室温まで冷却した後、炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて慎重に中和し、分液ロートを用いてクロロホルムによる抽出を行った。得られた抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルパッドで濾過し、濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:ジクロロメタン=1:1の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションを濃縮して得た濃縮物をトルエンとヘキサンの混合溶媒(1:5ml/g)で再結晶した。これにより、目的物の中間体1bを収量47.9g、収率48%で得た。
(中間体2aの合成)
Figure 2015072537
中間体1a(38.18g,168mmol)、脱水テトラヒドロフラン336mlを三口フラスコに入れて0℃に冷却し、この溶液にフェニルリチウムの1.06Mシクロヘキサン−ジエチルエーテル溶液(500ml,529mmol)を30分かけて滴下した。その後、この混合物を0℃で2時間撹拌し、次いで室温で一晩撹拌した。その後、0℃に冷却した混合物に、慎重にメタノールを滴下して残存フェニルリチウムを失活させた。
この混合物を濃縮した後、ジクロロメタンで希釈して溶液を得た。この溶液を、分液ロートで水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、溶液を濾過した後、濃縮し、真空乾燥(60℃、6h)を行ってオイル状物質を得た。このオイル状物質を三口フラスコに入れ、クロロホルム672ml、メタンスルホン酸21.8mlを加えて、窒素雰囲気下、3時間還流させた。
この混合物を室温まで冷却した後、炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて慎重に中和し、分液ロートを用いてジクロロメタンによる抽出を行った。この抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルパッドで濾過し、濃縮した。この濃縮物をトルエンとヘキサンの混合溶媒(5:10ml/g)で再結晶した。これにより、目的物の中間体2aを収量27.9g、収率50%で得た。
(中間体3aの合成)
Figure 2015072537
1−ブロモ−2−フルオロ−4−ヨードベンゼン(25.3g,84mmol)、中間体1b(17.58g,84mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(12.11g,126mmol)、ヨウ化銅(0.32g,1.68mmol)、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(1.01ml,8.4mmol)、1,4−ジオキサン84mlを三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、24時間還流させた。
反応終了後、この混合物をトルエン200mlで希釈し、セライトで濾過した。得られたろ液をシリカゲルパッドで濾過し、濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:トルエン=6:4の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションを濃縮して得た濃縮物をヘキサン(5ml/g,5℃)で再結晶した。これにより、目的物の中間体3aを収量19.68g、収率61%で得た。
(中間体3bの合成)
Figure 2015072537
中間体3a(7.65g,20mmol)、水酸化カリウム(1.12g,20mmol)、炭酸カリウム(2.76g,20mmol)、トリエチレングリコールジメチルエーテル5mlを三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、190℃で48時間加熱撹拌した。反応終了後、この混合物を室温まで冷却した後、トルエン200mlを加えて希釈し、さらに水200mlを加えて超音波処理を10分行った。
この混合物を、セライトを用いて濾過し、ろ液を回収した。このろ液を分液ロートに移し、水洗を2回行い、有機相を回収した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルパッドで濾過し、濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:トルエン=6:4の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製し、さらに得られたフラクションを濃縮して得た濃縮物をヘキサンで再結晶した。これにより、目的物の中間体3bを収量4.16g、収率56%で得た。
(中間体3cの合成)
Figure 2015072537
2−ブロモ−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン(43.9g,155mmol)、脱水テトラヒドロフラン155mlを三口フラスコに入れ、−78℃に冷却した。この溶液にn−ブチルリチウムの1.60Mヘキサン溶液(106.6ml,170.5mmol)をシリンジで加え、−78℃で10分撹拌した後、トリメトキシボラン(34.5ml,310mmol)を2分かけて滴下した。その後、この混合物を−78℃で30分撹拌した後、室温で一晩撹拌した。
この混合物をエバポレータで半分程度に濃縮し、1N塩酸水溶液300mlを加え、室温で4時間撹拌した。得られた溶液を分液ロートに入れ、ジクロロメタンによる抽出を行った。抽出物を、2回水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、濃縮した。この濃縮物を、モレキュラーシーブスを中に仕込んだソックスレー抽出器を取り付けた三口フラスコに入れ、トルエン200ml、メタノール30mlを加えて12時間還流させた。反応終了後、混合物を室温まで冷却し、エバポレータで濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:ジクロロメタン=8:2の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションの溶媒を真空乾燥で除去し、目的物の無色オイル状物質(中間体3c)を収量31.88g、収率74%で得た。
(中間体4aの合成)
Figure 2015072537
1,4−ジブロモ−2−フルオロベンゼン(50.78g,200mmol)、水酸化カリウム(6.73g,120mmol)、炭酸カリウム(27.64g,200mmol)、トリエチレングリコールジメチルエーテル20mlを三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で96時間加熱撹拌した。反応終了後、混合物を室温まで冷却し、トルエン500mlを加えて希釈し、さらに水500mlを加えて超音波処理を10分行った。
この混合物を、セライトを用いて濾過し、ろ液を回収した。このろ液を分液ロートに移し、水洗を2回行い、有機相を回収した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルパッドで濾過し、濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:ジクロロメタン=7:3の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製し、得られたフラクションの濃縮物をヘキサンで再結晶した。これにより、目的物の中間体4aを収量8.51g、収率18%で得た。
(中間体4bの合成)
Figure 2015072537
中間体4a(2.91g,6mmol)、脱水ジエチルエーテル60mlを三口フラスコに入れて懸濁させ、0℃に冷却した。この溶液にn−ブチルリチウムの1.58Mヘキサン溶液(7.6ml,12mmol)をシリンジで加え、0℃で10分撹拌した後、中間体3c(1.66g,6mmol)をジエチルエーテル6mlに溶解した溶液を2分かけて滴下した。その後、この混合物を0℃で30分撹拌した後、室温で一晩撹拌した。
この混合物をエバポレータで濃縮し、得られた濃縮物をジクロロメタン100mlで希釈して溶液を得た。得られた溶液をシリカゲルパッドで濾過し、ろ液を濃縮した。濃縮によって析出した試料をヘキサンでリンスしてろ取し、真空乾燥(50℃、8時間)した。これにより、目的物の中間体4bを収量1.58g、収率49%で得た。
(中間体5aの合成)
Figure 2015072537
中間体3a(7.65g,20mmol)、2−ブロモフェノール(13.84g,80mmol)、炭酸カリウム(11.06g,80mmol)、トリエチレングリコールジメチルエーテル10mlを三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、190℃で72時間加熱撹拌した。反応終了後、混合物を室温まで冷却した後、トルエン200mlを加えて希釈し、さらに水200mlを加えて超音波処理を10分行った。
この混合物を、セライトを用いて濾過し、ろ液を回収した。このろ液を分液ロートに移し、水洗を2回行い、有機相を回収した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルパッドで濾過し、濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:トルエン=6:4の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製し、得られたフラクションを濃縮して白色固体を得た。この白色固体をヘキサンでリンスした後、真空乾燥して目的物の中間体5aを収量9.40g、収率88%で得た。
(中間体6aの合成)
Figure 2015072537
2,5−ジブロモフルオロベンゼン(25.39g,100mmol)、2−ブロモフェノール(25.95g,150mmol)、炭酸カリウム(27.64g,200mmol)、トリエチレングリコールジメチルエーテル10mlを三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、190℃で72時間加熱撹拌した。反応終了後、この混合物を室温まで冷却した後、トルエン200mlを加えて希釈し、さらに水200mlを加えて超音波処理を10分行った。
この混合物を、セライトを用いて濾過し、ろ液を回収した。このろ液を分液ロートに移し、水洗を2回行い、有機相を回収した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルパッドで濾過し、濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:ジクロロメタン=9:1の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製し、濃縮した。これにより、目的物の白色固体(中間体6a)を収量50.53g、収率89%で得た。
(中間体6bの合成)
Figure 2015072537
中間体6a(32.55g,80mmol)、脱水ジエチルエーテル400mlを三口フラスコに入れて溶解させ、0℃に冷却した。この溶液にn−ブチルリチウムの1.60Mヘキサン溶液(102.5ml,164mmol)をシリンジで加え、0℃で10分撹拌した。その後、この混合物に、中間体3c(22.10g,80mmol)をジエチルエーテル40mlに溶解した溶液を5分かけて滴下し、0℃で30分撹拌した後、室温で一晩撹拌した。
この混合物をエバポレータで濃縮し、トルエン500mlで希釈して溶液を得た。この溶液を、分液ロートで2回水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:ジクロロメタン=9:1の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションを、ヘキサンを用いて5℃で再結晶した。これにより、目的物の中間体6bを収量16.51g、収率45%で得た。
(中間体7aの合成)
Figure 2015072537
2,5−ジブロモフルオロベンゼン(15.23g,60mmol)、2−ブロモベンゼンチオール(9.45g,50mmol)、炭酸カリウム(13.82g,100mmol)、トリエチレングリコールジメチルエーテル10mlを三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で24時間加熱撹拌した。反応終了後、この混合物を室温まで冷却した後、トルエン100mlを加えて希釈し、さらに水100mlを加えて超音波処理を10分行った。
この混合物を、セライトを用いて濾過し、ろ液を回収した。このろ液を分液ロートに移し、水洗を2回行い、有機相を回収した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過、濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサンを展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションを濃縮、真空乾燥して目的物の無色オイル状物質(中間体7a)を収量14.01g、収率66%で得た。
(中間体7bの合成)
Figure 2015072537
中間体6aの代わりに中間体7aを用い、各原料の量をモル換算で0.41倍にした以外は中間体6bの合成方法と同様にして中間体7bを合成した。得られた中間体7bは収量2.49g、収率16%であった。
(中間体8aの合成)
Figure 2015072537
2−ブロモ−4−メチルアニリン(50.23g,270mmol)、4−ヨードトルエン(64.75g,297mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(38.92g,405mmol)、酢酸パラジウム(606mg,2.7mmol)、1,1‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1.50g,2.7mmol)、脱水トルエン540mlを三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下で8時間還流撹拌した。
反応終了後、混合物を室温まで冷却した後、トルエン500mlを加えて希釈し、得られた溶液を、セライトを用いて濾過し濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:ジクロロメタン=9:1の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションを濃縮し、真空乾燥して目的物の無色オイル状液体(中間体8a)を収量54.85g、収率74%で得た。
(中間体8bの合成)
Figure 2015072537
中間体8a(16.57g,60mmol)、脱水テトラヒドロフラン240mlを三口フラスコに入れて−78℃に冷却し、この溶液にn−ブチルリチウムの2.65Mヘキサン溶液(47.5ml,126mmol)をシリンジで加えた。その後、反応溶液を0℃で50分撹拌した。その後、この反応溶液に、キサントンの粉末(12.95g,66mmol)を加え、0℃で30分撹拌した後、室温で2時間撹拌した。
反応終了後、反応溶液に少量の水を加えて失活させ、分液ロートを用いてジクロロメタンによる抽出を行った。得られた抽出物を、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、濃縮して反応粗物を得た。
この反応粗物を三口フラスコに入れ、クロロホルム600ml、メタンスルホン酸3.9mlを加えて、窒素雰囲気下、3時間還流させた。この混合物を、室温まで冷却した後、分液ロートを用いて水洗した。水洗した混合物を、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルパッドで濾過し、濃縮して析出物を得た。この析出物をエタノールで再結晶して目的物の中間体8bを収量10.2g、収率45%で得た。
(中間体9aの合成)
Figure 2015072537
原料として2−ブロモアニリン(50.06g,291mmol)と4−ヨードベンゼン(62.43g,306mmol)を用いた以外は、中間体8aの合成方法と同様にして中間体9aを合成した。得られた中間体9aは、収量71.38g、収率99%であった。
(中間体9bの合成)
Figure 2015072537
原料として中間体9a(24.81g,100mmol)、フルオレノン(19.82g,110mmol)を用いた以外は中間体8bの合成方法と同様にして中間体9bを合成した。得られた中間体9bは、収量13.74g、収率41%であった。
(中間体10aの合成)
Figure 2015072537
原料として中間体9a(12.9g,52mmol)を用い、フルオレノンの代わりにキサントン(11.22g,57.2mmol)を用いた以外は、中間体9bの合成方法と同様にして中間体10aを合成した。得られた中間体10aは、収量13.45g、収率74%であった。
(中間体11aの合成)
Figure 2015072537
ジフェニルエーテル(17.02g,100mmol)、FeCl3(0.81g,5mmol)、ニトロベンゼン100mlを三口フラスコに入れ、0℃に冷却した後、この混合物に臭素(21.5ml,420mmol)を15分かけて滴下した。この混合物を、0℃で30分撹拌した後、室温で1時間撹拌し、さらに120℃で24時間加熱撹拌した。反応終了後、この混合物を室温まで冷却し、ジクロロメタン200mlで希釈した。得られた溶液を分液ロートで水洗した後、チオ硫酸ナトリウム/水酸化ナトリウム水溶液で残存臭素を失活させた。この溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルパッドで濾過し、濃縮した。得られた濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサンを展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションの濃縮物をヘキサンで再結晶した。これにより、目的物の中間体11aを収量38.29g、収率79%で得た。
(中間体11bの合成)
Figure 2015072537
原料として中間体11a(14.57g,30mmol)を用いた以外は、後述する化合物5の合成方法Aと同様にして中間体11bを合成した。得られた中間体11bは、収量6.27g、収率39%であった。
(中間体12aの合成)
Figure 2015072537
2,4,6−トリフェニルブロモベンゼン(25.5g,66mmol)、脱水テトラヒドロフラン264mlを三口フラスコに入れ、−80℃に冷却し、この溶液にn−ブチルリチウムの1.60Mヘキサン溶液(45.4ml,72.6mmol)をシリンジで加えた。その後、反応溶液を−80℃で15分撹拌し、その後、トリメトキシボラン(14.7ml,132mmol)をシリンジで加え、室温で一晩撹拌した。この反応溶液に、少量の水を加えて反応系を失活させた後、1N塩酸水溶液400mlを加え、一晩撹拌した。この反応溶液を、分液ロートを用いてジクロロメタンで抽出し、水洗した。水洗した反応溶液を、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過、濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン:酢酸エチル=4:1の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションを濃縮して得た濃縮物にヘキサン200mlを加えて析出物を得た。得られた析出物を、ろ取、真空乾燥(50℃、6時間)して目的物の中間体12aを収量15.9g、収率69%で得た。
(中間体12bの合成)
Figure 2015072537
中間体12a(15.76g,45mmol)を、モレキュラーシーブスを中に仕込んだソックスレー抽出器を取り付けた三口フラスコに入れ、トルエン200ml、メタノール30mlを加えて12時間還流させた。反応終了後、この混合物を室温まで冷却した後、エバポレータで濃縮し、さらに真空乾燥した。これにより、目的物の無色オイル状物質(中間体12b)を得た。
(中間体12cの合成)
Figure 2015072537
原料として中間体6a(10.74g,26.4mmol)、中間体12b(10.0g,26.4mmol)を用いた以外は、中間体6bの合成方法と同様にして中間体12cを合成した。得られた中間体12cは、収量3.53g、収率24%であった。
[化合物の合成例]
(合成例1) 化合物5の合成(合成方法A)
Figure 2015072537
中間体3b(5.56g,7.5mmol)、脱水ジエチルエーテル150mlを三口フラスコに入れて懸濁させ、0℃に冷却した。この溶液にn−ブチルリチウムの1.58Mヘキサン溶液(9.5ml,15mmol)をシリンジで加えた。この混合物を0℃で10分撹拌した後、中間体3c(2.07g,7.5mmol)をジエチルエーテル15mlに溶解した溶液を10分かけて滴下した。その後、この混合物を0℃で30分撹拌した後、室温で一晩撹拌した。
この混合物を、エバポレータで濃縮し、トルエン:ヘキサン=1:1の混合溶媒200mlで希釈して溶液を得た。得られた溶液をシリカゲルパッドで濾過し、ろ液を濃縮した。このろ液をシリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:トルエン=6:4の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションの濃縮物をヘキサンで再結晶して目的物の化合物5を収量2.20g、収率37%で得た。
(合成例2) 化合物5の合成(合成方法B)
Figure 2015072537
中間体4b(1.58g,2.93mmol)、中間体1b(1.47g,7.03mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(0.84g,8.79mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(54mg,59μmol)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(68mg,234μmol)、脱水トルエン15mlを三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下で4時間還流撹拌した。
反応終了後、この混合物を室温まで冷却した後、トルエン50mlを加えて希釈した。得られた溶液を、セライトを用いて濾過し濃縮した。この濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:トルエン=6:4の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションを濃縮して得た濃縮物にアセトニトリル30mlを加え、超音波処理30分を行った。この混合物から析出物をろ取し、アセトニトリルでリンスし、真空乾燥(50℃、6時間)して目的物の化合物6を収量2.14g、収率92%で得た。
(合成例3) 化合物6の合成
Figure 2015072537
中間体3bの代わりに中間体5aを用い、原料の量をモル換算で2.33倍に変更した以外は、化合物5の合成方法Aと同様にして化合物6を合成した。得られた化合物6は、収量5.82g、収率56%であった。
(合成例4) 化合物18の合成
Figure 2015072537
原料として中間体11b(2.70g,5mmol)を用いた以外は、化合物5の合成方法Bと同様にして化合物18を合成した。得られた化合物18は、収量3.65g、収率92%であった。
(合成例5) 化合物59の合成
Figure 2015072537
中間体6b(2.31g,5mmol)、中間体9b(1.99g,6mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(1.15g,12mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(110mg,120μmol)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(139mg,(480μmol)、脱水トルエン30mlを三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下で8時間還流撹拌した。
反応終了後、混合物を室温まで冷却した後、トルエン50mlを加えて希釈して溶液を得た。この溶液を、セライトを用いて濾過し、濃縮した。この濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィーにより、ヘキサン:トルエン=8:2の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションを濃縮して得た濃縮物を、酢酸エチル:ヘキサン(v/v)=2:8の混合溶媒に10ml/gで溶解して再結晶し、真空乾燥(50℃、6時間)した。これにより、目的物の化合物59を収量3.17g、収率89%で得た。
(合成例6) 化合物65の合成
Figure 2015072537
原料として中間体6b(2.31g,5mmol)、中間体10b(1.91g,5.5mmol)を用いた以外は、化合物59の合成方法と同様にして化合物65を合成した。得られた化合物65は、収量3.37g,収率93%であった。
(合成例7) 化合物67の合成
Figure 2015072537
原料として中間体6b(3.69g,8mmol)、中間体8b(3.30g,8.8mmol)を用いた以外は、化合物59の合成方法と同様にして化合物67を合成した。得られた化合物67は、収量4.66g、収率77%であった。
(合成例8) 化合物88の合成
Figure 2015072537
原料として中間体12c(563mg,1mmol)、中間体1b(319mg,1.1mmol)を用いた以外は、化合物59の合成方法と同様にして化合物88を合成した。得られた化合物88は、収量0.49g、収率71%であった。
(合成例9) 化合物116の合成
Figure 2015072537
原料として中間体6b(2.77g,6mmol)、中間体2a(2.40g,7.2mmol)を用いた以外は、化合物59の合成方法と同様にして化合物116を合成した。得られた化合物116は、収量3.56g、収率83%であった。
(合成例10) 化合物156の合成
Figure 2015072537
原料として中間体7b(3mmol)、中間体1b(3.6mmol)を用いた以外は、化合物59の合成方法と同様にして化合物156を合成した。得られた化合物156は、収量1.36g、収率75%であった。
(合成例11) 化合物176の合成
Figure 2015072537
原料として中間体7b(2.16mmol)、中間体2a(2.59mmol)を用いた以外は、化合物59の合成方法と同様にして化合物176を合成した。得られた化合物176は、収量0.85g、収率54%であった。
[素子の作製と評価]
以下において、有機フォトルミネッセンス素子と有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して、評価した。
発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR−3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
また、各材料の一重項エネルギー(ES1)と三重項エネルギー(ET1)の差(ΔEST)は、一重項エネルギー(ES1)と三重項エネルギーを以下の方法で算出し、ΔEST=ES1−ET1により求めた。
(1)一重項エネルギーES1
測定対象化合物とmCPとを、測定対象化合物が濃度6重量%となるように共蒸着することでSi基板上に厚さ100nmの試料を作製した。常温(300K)でこの試料の蛍光スペクトルを測定した。励起光入射直後から入射後100ナノ秒までの発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の蛍光スペクトルを得た。蛍光スペクトルは、縦軸を発光、横軸を波長とした。この発光スペクトルの短波側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値 λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をES1とした。
換算式:ES1[eV]=1239.85/λedge
発光スペクトルの測定には、励起光源に窒素レーザー(Lasertechnik Berlin社製、MNL200)を検出器には、ストリークカメラ(浜松ホトニクス社製、C4334)を用いた。
(2) 三重項エネルギーET1
一重項エネルギーES1と同じ試料を5[K]に冷却し、励起光(337nm)を燐光測定用試料に照射し、ストリークカメラを用いて、燐光強度を測定した。励起光入射後1ミリ秒から入射後10ミリ秒の発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の燐光スペクトルを得た。この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をET1とした。
換算式:ET1[eV]=1239.85/λedge
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引いた。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とした。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の10%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とした。
(実施例1) 化合物5を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
大気下にて化合物5のトルエン溶液(濃度10-5mol/L)およびヘキサン溶液(濃度10-5mol/L)を調製し、窒素で15分間のバブリングによる脱酸素処理を行った後、発光特性測定に用いた。
また、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度10-4Pa以下の条件にて化合物5の薄膜を100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
化合物5のトルエン溶液およびヘキサン溶液について発光スペクトルを測定した結果を図2に示し、化合物5の薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子について発光スペクトルを測定した結果を図3に示す。
フォトルミネッセンス量子収率φは、トルエン溶液で0.97、ヘキサン溶液で0.54、化合物5の薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子で0.83であった。蛍光スペクトルとリン光スペクトルから求めた一重項励起状態と三重項励起状態とのエネルギー差ΔESTは0.05eVであった。
また、化合物5のトルエン溶液およびヘキサン溶液の過渡減衰曲線を図4に示す。この過渡減衰曲線は、化合物に励起光を当てて発光強度が失活してゆく過程を測定した発光寿命測定結果を示すものである。通常の一成分の発光(蛍光もしくはリン光)では発光強度は単一指数関数的に減衰する。これは、グラフの縦軸がセミlog である場合には、直線的に減衰することを意味している。図4に示す化合物5の過渡減衰曲線では、観測初期にこのような直線的成分(蛍光)が観測されているが、数μ秒以降には直線性から外れる成分が現れている。これは遅延成分の発光であり、初期の成分と加算される信号は、長時間側に裾をひくゆるい曲線になる。このように発光寿命を測定することによって、化合物5は蛍光成分のほかに遅延成分を含む発光体であることが確認された。トルエン溶液での即時蛍光成分の発光寿命τ1は35ns、遅延蛍光成分の発光寿命τ2は1.35μsであり、ヘキサン溶液での即時蛍光成分の発光寿命τ1は21ns、遅延蛍光成分の発光寿命τ2は2.09μsであった。
(実施例2) 化合物6を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物5のかわりに化合物6を用いた点を変更して、実施例1と同じ方法により化合物6のトルエン溶液およびヘキサン溶液、化合物6の薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子を作製した。
また、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度10-4Pa以下の条件にて化合物6とmCPとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物6の濃度が6.0重量%である薄膜を100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
化合物6のトルエン溶液およびヘキサン溶液、化合物6とmCPの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子について発光スペクトルを測定した結果を図5に示し、化合物6のみの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子について発光スペクトルを測定した結果を図6に示す。
フォトルミネッセンス量子収率φは、トルエン溶液で1.00、ヘキサン溶液で0.54、化合物6のみの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子で0.88であった。蛍光スペクトルとリン光スペクトルから求めた一重項励起状態と三重項励起状態とのエネルギー差ΔESTは0.08eVであった。
また、化合物6のトルエン溶液およびヘキサン溶液の過渡減衰曲線を図7に示す。トルエン溶液での即時蛍光成分の発光寿命τ1は33ns、遅延蛍光成分の発光寿命τ2は1.60μsであり、ヘキサン溶液での即時蛍光成分の発光寿命τ1は20ns、遅延蛍光成分の発光寿命τ2は1.29μsであった。
(実施例3) 化合物18を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物5のかわりに化合物18を用いた点を変更して、実施例1と同じ方法により化合物18のトルエン溶液を調製した。このトルエン溶液について発光スペクトルおよび過渡減衰曲線を測定した。測定された発光スペクトルを図8に示し、過渡減衰曲線を図9に示す。化合物18のトルエン溶液のフォトルミネッセンス量子収率φは0.81であった。また、即時蛍光成分の発光寿命τ1は89.3ns、遅延蛍光成分の発光寿命τ2は39.5μsであった。
(実施例4) 化合物59を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物5のかわりに化合物59を用いた点を変更して、実施例1と同じ方法により化合物59のトルエン溶液を調製した。このトルエン溶液について発光スペクトルおよび過渡減衰曲線を測定した。測定された発光スペクトルを図10に示す。化合物59のトルエン溶液のフォトルミネッセンス量子収率φは0.76であった。また、即時蛍光成分の発光寿命τ1は27.7ns、遅延蛍光成分の発光寿命τ2は4.02μsであった。
(実施例5) 化合物65を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物5のかわりに化合物65を用いた点を変更して、実施例1と同じ方法により化合物65のトルエン溶液を調製した。このトルエン溶液について発光スペクトルおよび過渡減衰曲線を測定した。測定された発光スペクトルを図11に示す。化合物65のトルエン溶液のフォトルミネッセンス量子収率φは0.56であった。また、即時蛍光成分の発光寿命τ1は25.9ns、遅延蛍光成分の発光寿命τ2は2.06μsであった。
(実施例6) 化合物67を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物5のかわりに化合物67を用いた点を変更して、実施例1と同じ方法により化合物67のトルエン溶液を調製した。このトルエン溶液について発光スペクトルおよび過渡減衰曲線を測定した。測定された発光スペクトルを図12に示す。化合物67のトルエン溶液のフォトルミネッセンス量子収率φは1.00であった。また、即時蛍光成分の発光寿命τ1は35ns、遅延蛍光成分の発光寿命τ2は2.33μsであった。
(実施例7) 化合物156を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物5のかわりに化合物156を用いた点を変更して、実施例1と同じ方法により化合物156のトルエン溶液を調製した。このトルエン溶液について発光スペクトルおよび過渡減衰曲線を測定した。測定された発光スペクトルを図13に示し、過渡減衰曲線を図14に示す。化合物156のトルエン溶液のフォトルミネッセンス量子収率φは1.00であった。また、即時蛍光成分の発光寿命τ1は3.2ns、遅延蛍光成分の発光寿命τ2は1.61μsであった。
(実施例8〜10)
化合物5のかわりに化合物88、116、176を用いた点を変更して、実施例1と同じ方法によりトルエン溶液を調製した。このトルエン溶液について発光スペクトルおよび過渡減衰曲線を測定した。測定された発光スペクトルおよび過渡減衰曲線から求めたフォトルミネッセンス量子収率φおよび発光寿命を表1に示す。表1に示すように、化合物88、116、176のトルエン溶液は、いずれも十分なフォトルミネッセンス量子収率φが得られ、また遅延蛍光を確認することができた。
Figure 2015072537
(比較例1) 比較化合物Aを用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1のかわりに下記の構造を有する比較化合物Aを用いて、実施例1と同じ方法により比較化合物Aのトルエン溶液を調製した。このトルエン溶液について発光スペクトルおよび過渡減衰曲線を測定した。測定された発光スペクトルを図15に示し、過渡減衰曲線を図16に示す。発光寿命は16.0nsであり、遅延蛍光は認められなかった。
Figure 2015072537
(比較例2) 比較化合物Bを用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1のかわりに下記の構造を有する比較化合物Bを用いて、実施例1と同じ方法により比較化合物Aのトルエン溶液を調製した。このトルエン溶液について発光スペクトルおよび過渡減衰曲線を測定した。測定された発光スペクトルを図17に示し、過渡減衰曲線を図18に示す。比較化合物Bのトルエン溶液のフォトルミネッセンス量子収率φは0.27であった。また、発光寿命は8.1nsであり、遅延蛍光は認められなかった。
Figure 2015072537
(比較例3) 比較化合物Cを用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1のかわりに下記の構造を有する比較化合物Cを用いて、実施例1と同じ方法により比較化合物Cのトルエン溶液を調製した。このトルエン溶液について発光スペクトルおよび過渡減衰曲線を測定した。測定された発光スペクトルを図19に示し、過渡減衰曲線を図20に示す。比較化合物Cのトルエン溶液のフォトルミネッセンス量子収率φは0.26であった。また、発光寿命は12.7nsであり、遅延蛍光は認められなかった。
Figure 2015072537
(実施例11) 化合物5を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10-4Pa以下で積層した。まず、ITO上にα−NPDを30nmの厚さに形成し、この上に、mCPを10nmの厚さに形成した。次に、化合物5と(Cz)2DBFを異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物5の濃度は6.0重量%とした。次に、PPTを10nmの厚さに形成し、この上に、TPBiを40nmの厚さに形成した。さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを図21に示し、電流密度−外部量子効率特性を図22に示す。化合物5を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は15.3%の高い外部量子効率を達成した。仮に発光量子効率が100%の蛍光材料を用いてバランスの取れた理想的な有機エレクトロルミネッセンス素子を試作したとすると、光取り出し効率が20〜30%であれば、蛍光発光の外部量子効率は5〜7.5%となる。この値が一般に、蛍光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率の理論限界値とされている。したがって、化合物5を用いた本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、理論限界値を超える高い外部量子効率を実現している点で極めて優れている。
(実施例12) 化合物6を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
化合物5のかわりに化合物6を用いて、実施例4と同じ方法により有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを図23に示し、電流密度−外部量子効率特性を図24に示す。化合物5を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は8.9%の高い外部量子効率を達成した。
Figure 2015072537
本発明の化合物は発光材料として有用である。このため本発明の化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子用の発光材料として効果的に用いられる。本発明の化合物の中には、遅延蛍光が放射するものも含まれているため、発光効率が高い有機発光素子を提供することも可能である。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極

Claims (23)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
    Figure 2015072537
    [一般式(1)において、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。R1〜R8は各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、R1〜R8の少なくとも1つは、各々独立に下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基である。R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8、R8とR9、R9とR1は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R9は置換基を表す。R9がホウ素原子と単結合を形成していない孤立電子対を有する原子を含むとき、該原子はホウ素原子と配位結合して環状構造を形成していてもよい。]
    Figure 2015072537
    Figure 2015072537
    [一般式(2)〜(7)において、L12〜L17は各々独立に単結合または二価の連結基を表し、*は一般式(1)におけるベンゼン環への結合部位を表す。R11〜R20、R21〜R28、R31〜R38、R3a、R3b、R41〜R48、R4a、R51〜R58、R61〜R68は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25、R25とR26、R26とR27、R27とR28、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R3aとR3b、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R65とR66、R66とR67、R67とR68はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
  2. 一般式(1)のR1〜R8の少なくとも1つが前記一般式(3)〜(7)のいずれかで表される基であることを特徴とする請求項1に記載の発光材料。
  3. 一般式(1)のR1〜R8の少なくとも1つが前記一般式(3)で表される基である場合に、前記一般式(3)のR21〜R28のうち少なくとも1つは置換基であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光材料。
  4. 一般式(1)のR2、R3、R6、およびR7の少なくとも1つが前記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光材料。
  5. 一般式(1)のR3およびR6の少なくとも1つが前記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることを特徴とする請求項4に記載の発光材料。
  6. 一般式(1)のR3とR6が、各々独立に前記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることを特徴とする請求項5に記載の発光材料。
  7. 前記一般式(2)のR11〜R20の少なくとも1つ、前記一般式(3)のR21〜R28の少なくとも1つ、前記一般式(4)のR31〜R38の少なくとも1つと、R3aおよびR3bの少なくとも1つ、前記一般式(5)のR41〜R48の少なくとも1つ、前記一般式(6)のR51〜R58の少なくとも1つ、および前記一般式(7)のR61〜R68の少なくとも1つが置換基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光材料。
  8. 前記一般式(2)のR13およびR18の少なくとも一方、前記一般式(3)のR23およびR26の少なくとも一方、前記一般式(4)のR33およびR36の少なくとも一方と、R3aおよびR3bの少なくとも一方、前記一般式(5)のR43およびR46の少なくとも一方、前記一般式(6)のR53およびR56の少なくとも一方、並びに前記一般式(7)のR63およびR66の少なくとも一方が置換基であることを特徴とする請求項7に記載の発光材料。
  9. 前記一般式(2)のR13およびR18の少なくとも一方、前記一般式(3)のR23およびR26の少なくとも一方、前記一般式(4)のR33およびR36の少なくとも一方と、R3aおよびR3bの少なくとも一方、前記一般式(5)のR43およびR46の少なくとも一方、前記一般式(6)のR53およびR56の少なくとも一方、並びに前記一般式(7)のR63およびR66の少なくとも一方が、前記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基であることを特徴とする請求項8に記載の発光材料。
  10. 前記一般式(2)〜(7)のL12〜L17が、単結合であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光材料。
  11. 一般式(1)のXが、酸素原子であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光材料。
  12. 一般式(1)のR9が、下記一般式(a)で表される基であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の発光材料。
    Figure 2015072537
    [式(a)において、*は前記一般式(1)におけるホウ素原子への結合部位を表す。R9a、R9b、R9c、R9d、R9eは、各々独立に水素原子または置換基を表す。R9aとR9b、R9bとR9c、R9cとR9d、R9dとR9eはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
  13. 前記一般式(a)のR9aとR9eが置換基であることを特徴とする請求項12に記載の発光材料。
  14. 一般式(1)のR1〜R8の少なくとも1つが前記一般式(4)で表される基であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の発光材料。
  15. 一般式(1)のR3とR6、またはR2とR7が、前記一般式(4)で表される基であることを特徴とする請求項1〜4、7〜14のいずれか1項に記載の発光材料。
  16. 前記一般式(4)のR3aとR3bが、置換基であることを特徴とする請求項14または15に記載の発光材料。
  17. 前記置換基が、炭素数1〜15のアルキル基またはフェニル基であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の発光材料。
  18. 前記一般式(4)のR3aとR3bが互いに結合して環状構造を形成していることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の発光材料。
  19. 下記一般式(1)で表される化合物からなる遅延蛍光体。
    Figure 2015072537
    [一般式(1)において、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。R1〜R8は各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、R1〜R8の少なくとも1つは、各々独立に下記一般式(2)〜(7)のいずれかで表される基である。R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8、R8とR9、R9とR1は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R9は置換基を表す。R9がホウ素原子と単結合を形成していない孤立電子対を有する原子を含むとき、該原子はホウ素原子と配位結合して環状構造を形成していてもよい。]
    Figure 2015072537
    Figure 2015072537
    [一般式(2)〜(7)において、L12〜L17は単結合または二価の連結基を表し、*は一般式(1)におけるベンゼン環への結合部位を表す。R11〜R20、R21〜R28、R31〜R38、R3a、R3b、R41〜R48、R4a、R51〜R58、R61〜R68は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25、R25とR26、R26とR27、R27とR28、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R3aとR3b、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R65とR66、R66とR67、R67とR68はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
  20. 請求項1〜18のいずれか1項に記載の発光材料を含むことを特徴とする有機発光素子。
  21. 遅延蛍光を放射することを特徴とする請求項20に記載の有機発光素子。
  22. 有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項20または21に記載の有機発光素子。
  23. 下記一般式(1’)で表される化合物。
    Figure 2015072537
    [一般式(1’)において、X’は酸素原子または硫黄原子を表す。R1’〜R8’は各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、R1’〜R8’の少なくとも1つは、各々独立に下記一般式(2’)〜(7’)のいずれかで表される基である。R1’とR2’、R2’とR3’、R3’とR4’、R5’とR6’、R6’とR7’、R7’とR8’、R8’とR9’、R9’とR1’は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R9’は置換基を表す。R9’がホウ素原子と単結合を形成していない孤立電子対を有する原子を含むとき、該原子はホウ素原子と配位結合して環状構造を形成していてもよい。]
    Figure 2015072537
    Figure 2015072537
    [一般式(2’)〜(7’)において、L12’〜L17’は各々独立に単結合または二価の連結基を表し、*は一般式(1’)におけるベンゼン環への結合部位を表す。R11’〜R20’、R21’〜R28’、R31’〜R38’、R3a’、R3b’、R41’〜R48’、R4a’、R51’〜R58’、R61’〜R68’は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R11’とR12’、R12’とR13’、R13’とR14’、R14’とR15’、R16’とR17’、R17’とR18’、R18’とR19’、R19’とR20’、R21’とR22’、R22’とR23’、R23’とR24’、R24’とR25’、R25’とR26’、R26’とR27’、R27’とR28’、R31’とR32’、R32’とR33’、R33’とR34’、R35’とR36’、R36’とR37’、R37’とR38’、R3a’とR3b’、R41’とR42’、R42’とR43’、R43’とR44’、R45’とR46’、R46’とR47’、R47’とR48’、R51’とR52’、R52’とR53’、R53’とR54’、R55’とR56’、R56’とR57’、R57’とR58’、R61’とR62’、R62’とR63’、R63’とR64’、R65’とR66’、R66’とR67’、R67’とR68’はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
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