JPWO2002068407A1 - ベンゾイミダゾール化合物 - Google Patents
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Abstract
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)が関与する種々の疾患の処置に用いることができる化合物の提供。下記式(1)で表される2位に置換されたヘテロ環基、4位にカルバモイル基を有するベンズイミダゾール誘導体又はその塩。
Description
技術分野
本発明は、医薬、特にPARP阻害剤として有用なベンゾイミダゾール誘導体に関する。
背景技術
リウマチ様関節炎(慢性関節リウマチ、rheumatoid arthritis:RA)は再燃と寛解を繰り返す多発性関節炎で、関節破壊をきたし、関節外症状を伴い、ときに生命を脅かす疾患である。RAの特徴としては(1)単核球の浸潤、(2)滑膜細胞の増殖、(3)その結果としての組織破壊が挙げられる(N.Engl.J.Med.,322,1277−1289(1990))。そのため薬物治療の目的は、関節機能の保持及びX線により観測される骨破壊の防止である。
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(Poly(ADP−ribose)polymerase:PARP)は113kDaの核内酵素である。PARPのN末端に存在する2箇所のZnフィンガー・モチーフがDNA鎖の損傷を認識し、その近傍のヒストンやDNAトポイソメラーゼI、IIを含む様々な核タンパクにニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide:NAD)のADP−リボース部を重合していく反応を司ることが知られている。そのため過剰なPARPの活性化は細胞内NAD及びATP含量を枯渇させ細胞死へと導くと考えられている(J.Clin.Invest.,77,1312−1330(1986))。
様々な炎症性疾患においてNOや活性酸素、あるいはこれらの反応生成物であるペルオキシニトリトは組織障害を引き起こす強力なメディエーターであることは広く知られている。この組織障害は、NO、活性酸素、ペルオキシニトリトによって生じたDNA鎖の損傷をPARPが認識・活性化し、エネルギー枯渇を招いた結果であると考えられている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93 1753−1758(1996))。またPARPの活性化を阻害することにより炎症時の細胞浸潤が強く抑制されることも明らかとなっている(J.Exp.Med.,186,1041−1049(1997)、Immunology,93,96−101(1998))。
RA患者において、関節液細胞では活性酸素産生能が亢進していること(Z.Rheumatol.,46,227−232(1987))、関節液および血清中のNO2 −イオン量が著明に増加していること(Ann.Rheum.Dis.,51,1219−1222(1992))、末梢単核球においてDNA鎖の損傷が増加していること(Ann.Rheum.Dis.,51,8−12(1992))、NAD含量が減少していること(Int.J.Clin.Pharm.Res.,14,57−63(1994))等の事実から、PARPの活性化が示唆されており、その結果として細胞浸潤や組織破壊が引き起こされていると考えられている。
従って、PARP阻害剤はRAをはじめとする炎症性疾患の治療薬として有用であると考えられる。しかしながら、臨床上有効なPARP阻害剤は見出されてなく、優れた阻害活性を有する新規なPARP阻害剤の開発が切望されている。
下式に示す、ベンゾイミダゾールの4位に無置換のカルバモイル基を、2位に含窒素飽和ヘテロ環を有するPARP阻害剤が、WO00/32579号公報に開示されている。
(式中、Aは、置換基R2及びR3を有し、1又は2個のN原子を含む4〜8員の飽和又はモノエテノイドヘテロ環を示す。R2は、H;NR26R27又はオキソ基で置換されていてもよい分枝状又は直鎖状C1−8アルキル;C3−7シクロアルキル−C1−4アルキル;CO−(NH)0,1−R21;CO2R21;或いは置換されていてもよいフェニル(R21はC3−7シクロアルキルまたはフェニル等を示す)を、R3は、H;フェニル基で置換されていてもよい分枝状又は直鎖状C1−8アルキル等をそれぞれ示す。また、前記R2におけるNR26R27は3〜8員ヘテロ環を形成してもよく、当該ヘテロ環はC1−4アルキル又はC1−4アルキル−フェニルで置換されていてもよい。詳細は当該公報参照。)
当該化合物は、2位に含窒素飽和ヘテロ環を有し、当該ヘテロ環が結合手を介して更に他の環と結合しうるが、その際の結合手は、オキソ基で置換されていてもよいC1−8アルキレン、CO−(NH)0,1、CO2又は結合である。またそれら結合手と結合する環は、(1)オキソ基で置換されていてもよいC1−8アルキレンの場合、Nで結合する3〜8員含窒素ヘテロ環、(2)C1−4アルキレン、CO−(NH)0,1又はCO2の場合、フェニル又はC3−7シクロアルキル、(3)C5−8アルキレン又は結合の場合、フェニル、とそれぞれ限定されている。
発明の開示
本発明者等は、PARPを阻害する化合物につき鋭意検討した結果、ベンゾイミダゾールの4位に無置換のカルバモイル基を、2位に含窒素飽和ヘテロ環を有し、当該含窒素飽和ヘテロ環に、特定の結合手を介して更に1個以上の環基が結合する、ベンゾイミダゾール誘導体が良好なPARP阻害活性を有し、特に経口投与においても良好な活性を有することを知見し、PARPの関与する疾患の予防、治療若しくは診断剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明によれば、下記一般式(I)で示されるベンゾイミダゾール誘導体(以下、「本発明化合物(I)」と称する。)又はその製薬学的に許容される塩、並びにこれらの1種又は2種以上を有効成分として含有する医薬、特にPARP阻害剤が提供される。
(式中の記号は以下の意味を有する。
R1:H、低級アルキル、ハロゲン、又はハロゲンで置換された低級アルキル基、
R2a及びR2b:H、低級アルキル又は非存在、
点線:環内の二重結合の存在又は非存在、
A:含窒素飽和ヘテロ環、
X:オキソ基で置換されていてもよい低級アルキレン又は結合、
Y1及びY3:同一又は互いに異なって、オキソ基で置換されていてもよい低級アルキレン、オキソ基で置換されていてもよい低級アルケニレン、オキソ基で置換されていてもよい低級アルキニレン又は結合、
Y2:O、S、SO、SO2又は結合(但しY1がメチレン又は結合のとき、Y2は結合を示す)、
Z:置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロ環基(但し、当該ヘテロ環基は、環原子である炭素原子を介してY3と結合する)、
但し、−Y1−Y2−Y3−で示される基が、−CO−O−、オキソ基で置換されていてもよいC1−8アルキレン又は−CO−O−C1−4アルキレンの場合、Zは置換されていてもよいヘテロ環基を示し、また、Y1及びY2が共に結合の場合、Y3は結合以外の基を示す。以下同様。)
尚、式(I)中の点線は、R2a及びR2bとの組合せにより、ベンゾイミダゾール環部が下記のいずれかの構造であることを示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書中、「アルキル」、「アルキレン」、「アルケニレン」及び「アルキニレン」とは、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を意味し、「低級アルキル」は、例えばC1−6のアルキル基であり、好ましくはC1−4のアルキル基、より好ましくはメチル、エチル及びイソプロピル基である。「低級アルキレン」は、例えばC1−6のアルキレンであり、好ましくはC2−4のアルキレンであり、より好ましくはエチレン及びブチレンである。「低級アルケニレン」は、例えばC2−6のアルキルの任意の位置に1個以上の2重結合を有することを意味し、「低級アルキニレン」は、例えばC2−6のアルキル鎖の任意の位置に1個以上の三重結合を有することを意味する。
「ハロゲン」は、F、Cl、Br及びIを示し、好ましくは、F、Cl及びBrである。「ハロゲンで置換された低級アルキル」とは、例えば、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルを意味し、好ましくは1個以上のFで置換されたC1−6アルキルであり、より好ましくは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロエチルである。
「シクロアルキル基」は、好ましくは炭素数3乃至14個のシクロアルキル基であり、架橋されていてもよい。より好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びアダマンチル基である。
「アリール基」は、好ましくは炭素数6乃至14個の単環乃至3環式アリール基である。より好ましくは、フェニル及びナフチル基であり、更に好ましくは、フェニル基である。また、フェニル基に5乃至8員のシクロアルキル環が縮環し、例えば、インダニル又はテトラヒドロナフチル基を形成していてもよい。
「ヘテロ環基」とは、環原子としてO、S及びNから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する5乃至8員の単環乃至三環式ヘテロ環基を示す。環原子である任意の炭素原子がオキソ基で置換されていてもよく、S又はNが酸化されオキシドやジオキシドを形成してもよい。該ヘテロ環基は架橋されていてもよく、また、スピロ環を形成してもよい(オキソ基より誘導される1,3−ジオキソラン環等のアセタール体を含む)。また、シクロアルキル環やベンゼン環が縮環していてもよい。好ましくは、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、ピロリジニル、ピペリジル、モルホリニル、ピペラジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ホモピペラジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、クロマニル、ジオキソラニル、8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−イル、9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−イル、3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル、2−アザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−4−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−4−イル、3−アザスピロ[5.5]ウンデカン−9−イル、2−アザスピロ[4.5]デカン−8−イル、2−アザスピロ[4.4]ノナン−7−イル及び8−アザスピロ[4.5]デカン−2−イル基等が挙げられる。更に好ましくは、ピリジル、ピリダジニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル及びベンゾチエニル基等である。
「含窒素飽和ヘテロ環基」としては、環原子として少なくとも1つのNを有し、更に1つのO又はSを有していてもよい5乃至8員の飽和ヘテロ環基であり、環原子である任意の炭素原子がオキソ基で置換されていてもよく、S又はNが酸化されオキシドやジオキシドを形成してもよい。該ヘテロ環基は、架橋されていてもよく、また、スピロ環を形成してもよい(オキソ基より誘導される1,3−ジオキソラン環等のアセタール体を含む)。好ましくは、ピロリジニル、ピペリジル、モルホリニル、ピペラジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ホモピペラジニル、8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−イル、9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−イル、3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル、2−アザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−4−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−4−イル、3−アザスピロ[5.5]ウンデカン−9−イル、2−アザスピロ[4.5]デカン−8−イル、2−アザスピロ[4.4]ノナン−7−イル及び8−アザスピロ[4.5]デカン−2−イル基であり、更に好ましくはピロリジニル、ピペリジル及び8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−イル基である。
「環原子である炭素原子を介してY3と結合するヘテロ環基」とは、隣接するリンカーである−Y1−Y2−Y3−で示される基(例えば、Y2及びY3が共に結合の場合はY1)と結合する環原子が炭素原子であるヘテロ環基を示す。例えば、1−ピペリジルは含まないが、2−、3−又は4−ピペリジルは包含する。
「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよいアリール」又は「置換されていてもよいヘテロ環基」における置換基としては、医薬、殊にPARP阻害剤におけるこれらの環の置換基として使用可能な置換基であり、これらの置換基を1〜5個有していてもよい。置換基として好ましくは、C1−20炭化水素基、ハロゲン、ハロゲンで置換されたC1−6アルキル、OH、O−C1−20炭化水素基、SH、S−C1−20炭化水素基、SO−C1−20炭化水素基、SO2−C1−20炭化水素基、CO−C1−20炭化水素基、ヘテロ環基、CO2H、COO−C1−20炭化水素基、CONH2、CONH−C1−6アルキル、CON(C1−6アルキル)2、NHCO−C1−6アルキル、NHCO2−C1−6アルキル、NHCONH−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2基からなる群より選択される基である(ここで、「C1−20炭化水素基」とはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキレン−シクロアルキル、アルケニレン−シクロアルキル、アルキニレン−シクロアルキル、アルキレン−アリール、アルケニレン−アリール、アルキニレン−アリール等を包含する。該炭化水素基及びヘテロ環基は更に置換基を有していてもよく、該置換基として好ましくは、C1−6アルキル、ハロゲン、OH、O−C1−6アルキル、SH、S−C1−6アルキル、SO−C1−6アルキル、SO2−C1−6アルキル、CO−C1−6アルキル、CO2H、COO−C1−6アルキル、CONH2、CONH−C1−6アルキル、CON(C1−6アルキル)2、NHCO−C1−6アルキル、NHCO2−C1−6アルキル、NHCONH−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2基からなる群より選択される基であり、該置換基を1〜4個有していてもよい)。より好ましくは、C1−6アルキル、シクロアルキル、アリール、C1−6アルキレン−シクロアルキル、C1−6アルキレン−アリール、ハロゲン、ハロゲンで置換されたC1−6アルキル、OH、O−C1−6アルキル、O−シクロアルキル、O−アリール、O−C1−6アルキレン−シクロアルキル、O−C1−6アルキレン−アリール、S−C1−6アルキル、S−シクロアルキル、S−アリール、S−C1−6アルキレン−シクロアルキル、S−C1−6アルキレン−アリール、CO−C1−6アルキル、CO−シクロアルキル、CO−アリール、CO−C1−6アルキレン−シクロアルキル、CO−C1−6アルキレン−アリール、ヘテロ環基、CO2H、COO−C1−6アルキル、CONH2、CONH−C1−6アルキル、CON(C1−6アルキル)2、NHCO−C1−6アルキル、NHCO2−C1−6アルキル、NHCONH−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2からなる群より選択される基である(該シクロアルキル、アリール及びヘテロ環基は、C1−6アルキル、ハロゲン、OH、O−C1−6アルキル、SH、S−C1−6アルキル、CO−C1−6アルキル、CO2H、COO−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2基からなる群より選択される基を1〜4個有していてもよい)。更に好ましくは、C1−6アルキル、シクロアルキル、アリール、C1−6アルキレン−アリール、ハロゲン、ハロゲンで置換されたC1−6アルキル、OH、O−C1−6アルキル、O−アリール、O−C1−6アルキレン−アリール、S−C1−6アルキル、S−アリール、S−C1−6アルキレン−アリール、CO−C1−6アルキル、CO−アリール、ヘテロ環基、CO2H、COO−C1−6アルキル、CONH2、CONH−C1−6アルキル、CON(C1−6アルキル)2、NHCO−C1−6アルキル、NHCO2−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2からなる群より選択される基である(該シクロアルキル、アリール及びヘテロ環基は、C1−6アルキル、ハロゲン、OH、O−C1−6アルキル、S−C1−6アルキル、CO−C1−6アルキル、CO2H、COO−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2基からなる群より選択される基を1〜4個有していてもよい)。
本発明における好ましい化合物は、R1がH、R2a又はR2bがH、Xが結合又はC1−6アルキレン、Aがピロリジニル又はピペリジル、Y1がC1−6アルキレン、Y2がO、S又は結合、Y3がC1−6アルキレン又は結合、Zが置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロ環基の化合物である。より好ましくは、Zが置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよいヘテロ環基の化合物であり、更に好ましくは、X及びY3が結合の化合物であり、更に好ましくは、(1)Y2がO又はS、且つZが置換されていてもよいフェニル、及び(2)Y2が結合、且つZが置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基の化合物である。より更に好ましくは、−Y1−Y2−Y3−Zが次のG群から選択される基である、2−[1−(置換)ピペリジン−4−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド化合物である。
G群:2−フェノキシエチル、3−フェノキシプロピル、4−フェノキシブチル、6−フェノキシヘキシル、2−(2−フルオロフェノキシ)エチル、3−(2−フルオロフェノキシ)プロピル、4−(2−フルオロフェノキシ)ブチル、2−(3−フルオロフェノキシ)エチル、3−(3−フルオロフェノキシ)プロピル、4−(3−フルオロフェノキシ)ブチル、2−(4−フルオロフェノキシ)エチル、3−(4−フルオロフェノキシ)プロピル、4−(4−フルオロフェノキシ)ブチル、2−(2−クロロフェノキシ)エチル、3−(2−クロロフェノキシ)プロピル、4−(2−クロロフェノキシ)ブチル、3−(3−クロロフェノキシ)プロピル、3−(4−クロロフェノキシ)プロピル、3−(2−ブロモフェノキシ)プロピル、3−(3−ブロモフェノキシ)プロピル、3−(4−ブロモフェノキシ)プロピル、3−(2−トリフルオロメチルフェノキシ)プロピル、3−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)プロピル、3−(4−トリフルオロメチルフェノキシ)プロピル、3−(2−シアノフェノキシ)プロピル、3−(3−シアノフェノキシ)プロピル、3−(4−シアノフェノキシ)プロピル、3−(2−ニトロフェノキシ)プロピル、3−(3−ニトロフェノキシ)プロピル、3−(4−ニトロフェノキシ)プロピル、2−(2,4−ジフルオロフェノキシ)エチル、3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)プロピル、4−(2,4−ジフルオロフェノキシ)ブチル、3−(2,3−ジフルオロフェノキシ)プロピル、3−(2,5−ジフルオロフェノキシ)プロピル、3−(2,6−ジフルオロフェノキシ)プロピル、3−(3,4−ジフルオロフェノキシ)プロピル、3−(3,5−ジフルオロフェノキシ)プロピル、3−(2,3−ジクロロフェノキシ)プロピル、3−(2,4−ジクロロフェノキシ)プロピル、3−(2,5−ジクロロフェノキシ)プロピル、3−(2,6−ジクロロフェノキシ)プロピル、3−(3,4−ジクロロフェノキシ)プロピル、3−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピル、4−(ナフタレン−1−イルオキシ)ブチル、4−(ナフタレン−2−イルオキシ)ブチル、2−フェニルチオエチル、3−フェニルチオプロピル、4−フェニルチオブチル、2−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)エチル、3−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)プロピル、4−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)ブチル、2−(5−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)エチル、3−(5 フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)プロピル、4−(5−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ブチル、3−[3−(2−クロロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]プロピル、3−[3−(3−フルオロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]プロピル、2−(2−フェニルオキサゾール−4−イル)エチル、3−(2−フェニルオキサゾール−4−イル)プロピル、4−(2−フェニルオキサゾール−4−イル)ブチル、2−(2−フェニルチアゾール−4−イル)エチル、3−(2−フェニルチアゾール−4−イル)プロピル、4−(2−フェニルチアゾール−4−イル)ブチル、2−(3−フェニルイソキサゾール−5−イル)エチル、3−(3−フェニルイソキサゾール−5−イル)プロピル、4−(3−フェニルイソキサゾール−5−イル)ブチル、2−(5−フェニルチオフェン−2−イル)エチル、3−(5−フェニルチオフェン−2−イル)プロピル、4−(5−フェニルチオフェン−2−イル)ブチル、2−(5−フェニルイソキサゾール−3−イル)エチル、3−(5−フェニルイソキサゾール−3−イル)プロピル、4−(5−フェニルイソキサゾール−3−イル)ブチル及び{3−[5−(4−クロロフェニル)フラン−2−イル]プロピル基。
本発明化合物の内、特に好ましい化合物は、2−[1−(6−フェノキシヘキシル)ピペリジン−4−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド、2−{1−[2−(4−フルオロフェノキシ)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド、2−{1−[4−(4−フルオロフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド、2−{1−[3−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)プロピル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド及び2−{1−[2−(2−フェニルオキサゾール−4−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドである。
本発明化合物(I)は、置換基の種類によっては幾何異性体や互変異性体が存在する場合があるが、本発明にはこれらの異性体の分離したもの、あるいは混合物をも包含する。また、本発明化合物(I)は不斉炭素原子を有する場合があり、不斉炭素原子に基づく異性体が存在しうる。本発明にはこれら光学異性体の混合物や単離されたものを包含する。また、本発明には、本発明化合物(I)を放射性同位元素でラベル化した化合物も包含する。
本発明化合物(I)は、R2a又はR2bの一方がHである化合物は互いに平衡の関係にある。本明細書において構造式や化合物名等の表記はその一方のみで記載するが、本発明にはそれら平衡関係にある化合物を包含する。
本発明化合物(I)は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もあり、かかる塩が製薬学的に許容され得る塩である限りにおいて本発明に包含される。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。さらに、本発明は、本発明化合物(I)及びその製薬学的に許容され得る塩の各種の水和物や溶媒和物及び結晶多形の物質をも包含する。
また、本発明化合物には、薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で本発明のNH2、OH、CO2H等に変換される基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、Prog.Med.,5,2157−2161(1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163−198に記載の基が挙げられる。
(製造法)
本発明化合物(I)及びその製薬学的に許容される塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基で保護、又は当該官能基に容易に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(T.W.Greene)及びウッツ(P.G.M.Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去、あるいは所望の基に転化することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、本発明化合物(I)のプロドラッグは上記保護基と同様、原料乃至中間体の段階で特定の基を導入、あるいは得られた本発明化合物(I)を用い反応を行うことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者により公知の方法を適用することにより行うことができる。
以下、本発明化合物(I)の代表的な製造法を説明する。R2a又はR2bの一方がHである本発明化合物(I’)は下記経路に従って製造できる。
(式中、RaはCONH2、もしくはCONH2に容易に転化可能な基(CO2H、カルボン酸エステル又はCN等)を、Lは脱離基を、P1はH又はC1−6アルキル基等のCO2Hの保護基を、P2はH又はアミノ基の保護基を示し、A’はAの内、Y1と結合する位置に環原子Nを有する基をそれぞれ示す。以下同様。)
A.第一製法:アルキル化
本製法は、原料化合物(II)をアルキル化反応に付すことにより本発明化合物(I’)を得る方法である。Lが示す脱離基としては、Cl、Br、I等のハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基などのアルキルスルホニルオキシ基やベンゼンスルホニルオキシ基、トルエン(特にp−トルエン)スルホニルオキシ基などのアリールスルホニルオキシ基等の有機スルホン酸残基などが挙げられる。
反応は、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の反応に不活性な溶媒中、化合物(II)と化合物(III)とを当モルあるいは一方を過剰量用いて、−78℃〜0℃の冷却下、冷却下乃至室温下、室温下又は場合によっては室温下乃至加熱下に行われる。また、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基の存在下に行うのが好ましい。
また、本発明化合物(I’)は還元的アルキル化反応によっても製造できる。その際、原料化合物(III)の代わりに、対応するカルボニル化合物を使用し、還元的アルキル化反応の常法(例えば日本化学会編「実験化学講座(丸善)」(第4版、20巻、1992年、300)等に記載の方法)に従って反応を行う。
更に、原料化合物(II)のRaがCONH2以外の場合、原料化合物(II)の段階で、又はアルキル化反応後に所望のCONH2基へと変換可能である。RaがCO2Hの場合、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、DMF、DMSO、ピリジン等の反応に不活性な溶媒中、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)、1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール(CDI)等)、場合によっては、更に添加剤(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等)の存在下、アンモニアで処理することにより製造できる。Raがカルボン酸エステルの場合、水、アルコール類、DMF、THF等の反応に不活性な溶媒中または無溶媒中、室温乃至加熱下、場合により加圧下に、アンモニアと反応させて製造できる。RaがCNの場合、加水分解により直接CONH2基へ、又はCO2Hを一旦経由して製造できる。これらの反応は他の化合物の製法においても適用でき、同様にしてRaがCONH2である化合物を製造できる。
B.第二製法:アミド化及び環化
本製法は原料化合物(IV)及び(VII)をアミド化反応に付し中間体(VIII)とし、得られた化合物(VIII)を環化反応に付し、本発明化合物(I’)を得る方法である。尚、中間体(VIII)を単離せず、アミド化反応後そのまま環化反応の条件に付しても本発明化合物(I’)を得ることができる。
(1)アミド化
反応は、芳香族炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、DMF、DMSO等の反応に不活性な溶媒中、DCC、DIPC、WSC、CDI等の縮合剤、場合によっては更にHONSu、HOBt等の添加剤の存在下、化合物(IV)と化合物(VII)とを当モルあるいは一方を過剰量用いて、−78℃〜0℃の冷却下、冷却下乃至室温下、室温下又は場合によっては室温下乃至加熱下に行う。トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、ピコリン、ルチジンなどの塩基の存在下に反応させるのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
或いは、原料化合物(VII)の代わりに種々の反応性誘導体を使用してもよい。該反応性誘導体としては、酸無水物;カルボン酸のメチルエステル、エチルエステルなどの通常のエステル;酸クロライド、酸ブロマイドの酸ハライド;酸アジド;p−ニトロフェノールなどのフェノール系化合物やHONSu、HOBt等のN−ヒドロキシル化合物等と反応させて得られる活性エステル;アルキル炭酸ハライドなどのハロカルボン酸アルキルエステルやピバロイルハライドなどと反応させて得られる有機酸系混合酸無水物や塩化ジフェニルホスホリルを反応させて得られるリン酸系混合酸無水物などの混合酸無水物等が適用できる。
(2)環化
反応は芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類等の反応に不活性な有機溶媒中または無溶媒下、触媒量乃至溶媒量の酸を用い、−78℃〜0℃の冷却下、冷却下乃至室温下、室温下又は場合によっては室温下乃至加熱下に行われる。用いられる酸としては酢酸、硫酸、塩酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられる。
C.原料化合物の製造
化合物(II)は、化合物(IV)及び(V)より、上記アミド化及び環化反応と同様の条件に付すことにより製造できる。化合物(VII)は化合物(IX)及び(III)より、上記アルキル化反応と同様の条件に付すことにより製造できる。化合物(IV)はUS5380719等に記載の方法により製造できる。化合物(V)及び(IX)はイソニペコチン酸等多くの化合物が市販されており、或いは容易に入手可能な化合物を公知の反応を適用することによって、容易に製造でき、例えば化合物(V)又は(IX)においてXがC1−6アルキレンである化合物(XIII)は、下記の方法によっても製造可能である。
(式中、Rbは−A’−P2又はC1−4アルキレン−A’−P2、RcはH又はC1−4アルキル、或いは、RbとRcが結合する炭素原子と一体となって全体として−A’−P2を示す。RdはC1−4アルキル基等の当該反応に一般に使用可能な基を示す。以下同様。)
即ち、ホーナー−エモンズ(Horner−Emmons)反応等のWittig様の反応によりオレフィン化後、パラジウム炭素等の存在下での接触還元により製造することができる。或いは、市販のトロピノン(XIVa)又は精密有機合成(L.−F.Tietze,T.Eicher著、高野誠一、小笠原国郎 訳、南江堂、487−489)に記載の方法と同様の方法によって製造される化合物を原料として、化合物(V)又は(IX)に対応する化合物(XIVe)、(XIVf)及び(XIVg)が製造できる。
シアノ化反応は、トシルメチルイソシアニド(TosMIC)等を使用するのが好ましく、具体的にはSynthetic Communication 25(6),787−793(1995)に記載の方法等があげられる。その他は当業者に公知の反応により製造される。
化合物(III)は容易に入手可能であるか、或いは市販化合物より容易に製造できる。Lの脱離基は、OH基又はCO2H基から常法により容易に製造できる。Y2がO又はSの化合物はエーテル化又はエステル化反応により、Y2がSO又はSO2である化合物はSを酸化することによりそれぞれ容易に製造できる。また、環基Z上に種々の置換基を有する化合物は公知の方法により容易に製造可能であり、置換基を有するヘテロ環として、例えば、1,2,4−オキサジアゾール誘導体はN−ヒドロキシアミジン誘導体と酸クロリド等のカルボン酸誘導体との縮合(J.Med.Chem.29,2174−2183(1986))等により、オキサゾール誘導体は2−ハロケトン誘導体とアミド誘導体の反応(J.Med.Chem.39,237−245(1996))等により、イソオキサゾール誘導体は1,3−ジケトン誘導体とヒドロキシルアミンとの縮合(J.Med.Chem,31,1659−1664(1988))或いはニトリルオキシド誘導体とアセチレン誘導体との1,3−双極子付加反応(J.Med.Chem.10,411−418(1967))等により、チアゾール誘導体は2−ハロケトン誘導体とチオアミド誘導体の反応(Gazz.Chim.Ital.92,1084−1092(1962))等により、イミダゾール誘導体はイミデート誘導体、2−ヒドロキシケトン誘導体及びアンモニアの反応(J.Med.Chem.43,1071−1084(2000))等により製造することができる。
また、R2a又はR2bの一方が低級アルキルである本発明化合物は、上記中間体(IV)、(VI)又は(VIII)、或いは発明化合物(I’)において、アルキル化反応に付すことにより製造できる。反応条件は上記アルキル化と同様の条件が適用できる。
また、本発明化合物は環AがA’以外の場合にも、上記製造法と実質的に同様の、当業者に自明の方法により製造できる。
上記各製法により得られた反応生成物は、遊離化合物、その塩あるいは水和物など各種の溶媒和物として単離、精製することができる。塩は通常の造塩処理に付すことにより製造できる。
単離、精製は、抽出、濃縮、留去、結晶化、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行うことができる。
各種異性体は異性体間の物理化学的な差を利用して常法により単離できる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法、例えば分別結晶化又はクロマトグラフィー等により分離できる。また、光学異性体は、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。
産業上の利用可能性
本発明化合物は医薬製剤の活性成分として有用である。特にPARP阻害作用を有するため、PARPの関与する、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、腹膜炎、胸膜炎、腎炎等)、自己免疫疾患(例えば、I型糖尿病等)、虚血再還流障害に伴う疾患(例えば、脳卒中、心筋梗塞、臓器移植等)の予防・治療薬として有用である。
本発明化合物の作用は以下の薬理試験によって確認された。
1.無細胞系PARP阻害活性測定試験(in vitro)
1)試験化合物は所望の濃度を、82.5mMトリス−HCl(pH8.0)、50mM塩化カリウム、10mM塩化マグネシウム、5mMジチオスレイトール、100μg/mlヒストン、26nM 3H−NADおよび0.06unitヒト組み替え型PARPを含有している反応液中で25℃、3時間反応させた。
2)反応液に100mMニコチンアミドを添加することにより反応を停止させた。
3)反応液を0.5mg抗マウスIgG抗体結合型SPAビーズと反応させTop count(商品名、Packard社)により酵素活性を測定した。
4)IC50はPARPのADP−ribose重合化活性を50%阻害する試験化合物濃度として各化合物について算出した。
実施例1、62、72、77及び88に記載の化合物は、それぞれ16、23、17、16及び8.3nMのIC50を示した。
2.生細胞系PARP阻害活性測定試験(in vitro)
1)J774.1細胞(マウス単球/マクロファージ細胞株)を25mM HEPESおよび10%牛胎児血清含有DMEM培地にて5x105個/mlに調整し、37℃、5%CO2の条件下で24時間培養した。
2)試験化合物は28mM塩化カリウム、28mM塩化ナトリウム、2mM塩化マグネシウム、0.01%ジギトニン及び26nM 3H−NADを含む56mM HEPES(pH7.5)溶液にて所望の濃度に調整し、反応溶液とした。
3)DMEM培地を上記反応溶液と置換し、37℃、5%CO2条件下で15分培養した。
4)細胞を冷5%トリクロロ酢酸にて洗浄後、2%SDS、0.1M NaOHにより溶解し放射活性を測定した。
5)IC50はPARPのADP−ribose重合化活性を50%阻害する試験化合物濃度として各化合物について算出した。
実施例1、62、72、77及び88に記載の化合物は、それぞれ8.2、47、5.1、10及び6.1nMのIC50を示した。
3.ザイモザン誘発腹膜炎(in vivo)
1)6〜8週令雄性Balb/cマウス(日本チャールスリバー)を実験に供した。
2)マウスは試験前日夕方より絶食、自由飲水とした。
3)各試験化合物は0.5%メチルセルロースにて懸濁あるいは溶解した。
4)各試験化合物懸濁液あるいは溶液を上記Balb/cマウスに所望の用量となるように5ml/kgにて経口投与した。陰性および陽性対照群には溶媒である0.5%メチルセルロースを5ml/kgにて投与した。
5)ザイモザン(Sigma)は生理食塩水により0.5mg/mlとなるように懸濁し、化合物の経口投与と同時に1ml/mouseにて腹腔内投与した。陰性対照群には生理食塩水を1ml/mouseにて腹腔内投与した。
6)ザイモザン投与4時間後に各マウスの腹腔を5mlの0.1%ヘパリン含有生理食塩水にて洗浄し腹腔内の細胞を回収した。
7)回収した細胞数はCelltak(商品名、日本光電)にて測定した。
8)ED30はザイモザンによって腹腔に浸潤した細胞数を30%抑制する試験化合物用量として各化合物について算出した。
4.コラーゲン誘発関節炎(in vivo)
1)3mg/mlウシII型コラーゲン(コラーゲン研修会)8mlと同量のFCA(Freund complete adjuvant H37 Ra、DIFCO Laboratories)を十分に混合し、雄性DBA/1Jマウス(日本チャールスリバー)尾根部皮内に100μlずつ免疫した。
2)21日後、上記と同様に追加免疫した。
3)追加免疫日を0日目とし、1週間に2回の割合で体重および各肢の関節炎スコアを測定した。関節炎スコアは以下のように設定した。すなわち、0は正常、1は発赤および軽度の腫脹、2は中程度の腫脹、3は重度の腫脹または関節部の強直である。
4)試験化合物は0.5%メチルセルロースを溶媒として、1、3、10および30mg/5mlの濃度で懸濁し、5ml/kgの用量にて1日1回経口投与を21日目まで行った。なお陰性および陽性対照群には溶媒である0.5%メチルセルロースを5ml/kgにて投与した。
5)測定結果は経日的な変化として表すと共に時間−反応曲線下面積(AUC:area under the curve)として表した。関節炎スコアに関してはsteel検定を、体重変動に関してはDunnett検定を行いp値が0.05以下の場合を有意とした。
上記実験より、本発明化合物はPARP阻害作用を有し、PARPの関与する疾患の予防・治療薬として有用であることが確認された。
本発明化合物(I)又はその製薬学的に許容され得る塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている薬剤用担体、賦形剤等を用いて通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(商品名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体、半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知のpH調整剤、防腐剤、増粘剤や賦形剤が適宜添加され、固体、液体若しくは半固体状に成形される。経鼻剤は通常のスプレー器具、点鼻容器、チューブ、鼻腔内挿入具等を用いて投与される。
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり約0.001〜100mg/kg、好ましくは0.1〜10mg/kgが適当であり、これを1回であるいは2〜4回に分けて投与する。静脈投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001から10mg/kgが適当で、1日1回〜複数回に分けて投与する。関節内投与の場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001〜10mg/kgが適当で、1日1回〜複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001〜100mg/kgを1日1回〜複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。本発明化合物は下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また原料化合物の製法を参考例に示す。
参考例1
2,3−ジアミノ安息香酸エチルエステル(29.3g)のDMF(500ml)溶液に1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−カルボン酸(40.0g)、WSC・HCl(40.0g)及びHOBt(1.5g)を加え、室温下一夜攪拌した。反応液を濃縮後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を乾燥後、溶媒を留去し、粗製の2−アミノ−3−[(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−カルボニル)アミノ]安息香酸エチルエステル(56.9g)を得た。該粗製物を酢酸(600ml)に溶解し、120℃で1時間加熱攪拌した。反応液を濃縮後、残渣にトルエンを加え、減圧濃縮した。残渣をクロロホルムで希釈し、1M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、水層からは更にクロロホルムで抽出し、合わせた有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、エチル2−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキシレート(27.5g)を得た。
参考例2
エチル2−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキシレート(27.5g)のエタノール(400ml)溶液に1M水酸化ナトリウム水溶液(250ml)を加え、50℃で3時間攪拌した。反応液を減圧濃縮後、1M塩酸を加え、析出した結晶を濾取、水洗して、2−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボン酸(23.3g)を得た。
参考例3
2−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボン酸(23.2g)のTHF(300ml)懸濁液にCDI(16.2g)を加え、室温下3時間攪拌した。反応液にアンモニア飽和のTHF(200ml)を加え、室温下一夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、乾燥、溶媒を留去して、tert−ブチル4−(4−カルバモイル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(18.9g)を得た。
参考例4
2−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド(14.1g)に氷冷下トリフルオロ酢酸(50ml)を加え、室温下一夜攪拌した。反応液を減圧濃縮後、残渣に酢酸エチル及びイソプロピルエーテルを加えて得られる固体を濾取し、酢酸エチル及びイソプロピルエーテルで洗浄して、2−ピペリジン−4−イル−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・2トリフルオロ酢酸塩(15.1g)を得た。
参考例1と同様の方法で後記表1に示す参考例5〜8の化合物を、参考例2と同様の方法で参考例9〜12の化合物を、参考例3と同様の方法で参考例13〜16の化合物を、参考例4と同様の方法で参考例17〜20の化合物をそれぞれ合成した。参考例1〜20の化合物の構造を表1に示す。尚、表中、物理化学データが空欄の化合物は精製せずにそのまま次の反応に使用したことを示す。
実施例1
2−ピペリジン−4−イル−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・2トリフルオロ酢酸塩(710mg)、4−(4−フルオロフェノキシ)ブチルブロミド(310mg)、炭酸カリウム(1.4g)、ヨウ化カリウム(129mg)及びDMF(10ml)の混合物を室温下一夜攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)で精製し、2−{1−[4−(4−フルオロフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド(519mg)を得た。得られた化合物(519mg)をエタノールに溶解し、4M塩化水素/酢酸エチル溶液(4ml)を加えた。溶媒を減圧濃縮して生じた結晶を再結晶(エタノール−水)して、2−{1−[4−(4−フルオロフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・2塩酸塩(200mg)を得た(無色粉末)。
実施例2
2−ピペリジン−4−イル−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・2トリフルオロ酢酸塩(860mg)、チオフェン−2−アルデヒド(1.1g)、酢酸(5ml)及び1,2−ジクロロエタン(15ml)混合物にトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.10g)を加え、2日間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び1M水酸化ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)で精製し、2−[1−(チオフェン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド(95mg)を得た。得られた化合物をメタノールに溶解し、フマル酸(30mg)を加えた。生じた結晶を再結晶(2−プロパノール)して、2−[1−(チオフェン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・1/2フマル酸塩(108mg)を得た(無色粉末)。
実施例3
2−{1−[4−(2−ベンジルオキシフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド(344mg)、メタノール(15ml)及び10%パラジウム−炭素(90mg)混合物を、水素雰囲気下、室温下で一夜攪拌した。反応混合物を濾過後、溶媒を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)で精製し、2−{1−[4−(2−ヒドロキシフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド(254mg)を得た。得られた化合物をメタノールに溶解し、4M塩化水素/酢酸エチル溶液(4ml)を加えた。溶媒を減圧濃縮して生じた結晶を再結晶(エタノール−水)して、2−{1−[4−(2−ヒドロキシフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・2塩酸塩(244mg)を得た(無色粉末)。
実施例1と同様の方法で後記表2〜6に示す実施例4〜106の化合物を、実施例2と同様の方法で後記表6に示す実施例107及び108の化合物を合成した。実施例化合物の構造及び物理化学的データを、表2〜6に示す。
また、表7〜9に本発明の別の化合物の構造を示す。これらは、上記の製造法や実施例に記載の方法及び当業者にとって自明である方法、又はこれらの変法を用いることにより、容易に合成することができる。
表中、次に示す略号を用いる。Rex:参考例番号、Ex:実施例番号、Cmpd:化合物番号、Me:メチル、Et:エチル、Pr:1−プロピル、iPr:2−プロピル、tBu:tert−ブチル、Boc:tBu−O−CO−、Ac:アセチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、cHex:シクロヘキシル、Ad:1−アダマンチル、1Naph:1−ナフチル、2Naph:2−ナフチル、2Thi:2−チエニル、3Thi:3−チエニル、2Py:2−ピリジル、3Pyで3−ピリジル、4Py:4−ピリジル、Dat:物理化学的データ(F:FAB−MS[(M+H)+];EI:EI−MS(M+);ES:ESI−MS[(M+H)+];NMR:DMSO−d6中の1HNMRにおけるδ(ppm));Sal:塩(空欄:フリー体;HCl:塩酸塩;Fu:フマル酸塩;数字は酸成分の比率を示し、例えば、2HClは二塩酸塩を意味する。)をそれぞれ示す。また、置換基の前の数字は置換位置を示し、数字が複数個あるものは複数の置換を示す。例えば2−OMe−Phは2−メトキシフェニルを、2,4−F2−Phは2,4−ジフルオロフェニルを示す。
本発明は、医薬、特にPARP阻害剤として有用なベンゾイミダゾール誘導体に関する。
背景技術
リウマチ様関節炎(慢性関節リウマチ、rheumatoid arthritis:RA)は再燃と寛解を繰り返す多発性関節炎で、関節破壊をきたし、関節外症状を伴い、ときに生命を脅かす疾患である。RAの特徴としては(1)単核球の浸潤、(2)滑膜細胞の増殖、(3)その結果としての組織破壊が挙げられる(N.Engl.J.Med.,322,1277−1289(1990))。そのため薬物治療の目的は、関節機能の保持及びX線により観測される骨破壊の防止である。
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(Poly(ADP−ribose)polymerase:PARP)は113kDaの核内酵素である。PARPのN末端に存在する2箇所のZnフィンガー・モチーフがDNA鎖の損傷を認識し、その近傍のヒストンやDNAトポイソメラーゼI、IIを含む様々な核タンパクにニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide:NAD)のADP−リボース部を重合していく反応を司ることが知られている。そのため過剰なPARPの活性化は細胞内NAD及びATP含量を枯渇させ細胞死へと導くと考えられている(J.Clin.Invest.,77,1312−1330(1986))。
様々な炎症性疾患においてNOや活性酸素、あるいはこれらの反応生成物であるペルオキシニトリトは組織障害を引き起こす強力なメディエーターであることは広く知られている。この組織障害は、NO、活性酸素、ペルオキシニトリトによって生じたDNA鎖の損傷をPARPが認識・活性化し、エネルギー枯渇を招いた結果であると考えられている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93 1753−1758(1996))。またPARPの活性化を阻害することにより炎症時の細胞浸潤が強く抑制されることも明らかとなっている(J.Exp.Med.,186,1041−1049(1997)、Immunology,93,96−101(1998))。
RA患者において、関節液細胞では活性酸素産生能が亢進していること(Z.Rheumatol.,46,227−232(1987))、関節液および血清中のNO2 −イオン量が著明に増加していること(Ann.Rheum.Dis.,51,1219−1222(1992))、末梢単核球においてDNA鎖の損傷が増加していること(Ann.Rheum.Dis.,51,8−12(1992))、NAD含量が減少していること(Int.J.Clin.Pharm.Res.,14,57−63(1994))等の事実から、PARPの活性化が示唆されており、その結果として細胞浸潤や組織破壊が引き起こされていると考えられている。
従って、PARP阻害剤はRAをはじめとする炎症性疾患の治療薬として有用であると考えられる。しかしながら、臨床上有効なPARP阻害剤は見出されてなく、優れた阻害活性を有する新規なPARP阻害剤の開発が切望されている。
下式に示す、ベンゾイミダゾールの4位に無置換のカルバモイル基を、2位に含窒素飽和ヘテロ環を有するPARP阻害剤が、WO00/32579号公報に開示されている。
(式中、Aは、置換基R2及びR3を有し、1又は2個のN原子を含む4〜8員の飽和又はモノエテノイドヘテロ環を示す。R2は、H;NR26R27又はオキソ基で置換されていてもよい分枝状又は直鎖状C1−8アルキル;C3−7シクロアルキル−C1−4アルキル;CO−(NH)0,1−R21;CO2R21;或いは置換されていてもよいフェニル(R21はC3−7シクロアルキルまたはフェニル等を示す)を、R3は、H;フェニル基で置換されていてもよい分枝状又は直鎖状C1−8アルキル等をそれぞれ示す。また、前記R2におけるNR26R27は3〜8員ヘテロ環を形成してもよく、当該ヘテロ環はC1−4アルキル又はC1−4アルキル−フェニルで置換されていてもよい。詳細は当該公報参照。)
当該化合物は、2位に含窒素飽和ヘテロ環を有し、当該ヘテロ環が結合手を介して更に他の環と結合しうるが、その際の結合手は、オキソ基で置換されていてもよいC1−8アルキレン、CO−(NH)0,1、CO2又は結合である。またそれら結合手と結合する環は、(1)オキソ基で置換されていてもよいC1−8アルキレンの場合、Nで結合する3〜8員含窒素ヘテロ環、(2)C1−4アルキレン、CO−(NH)0,1又はCO2の場合、フェニル又はC3−7シクロアルキル、(3)C5−8アルキレン又は結合の場合、フェニル、とそれぞれ限定されている。
発明の開示
本発明者等は、PARPを阻害する化合物につき鋭意検討した結果、ベンゾイミダゾールの4位に無置換のカルバモイル基を、2位に含窒素飽和ヘテロ環を有し、当該含窒素飽和ヘテロ環に、特定の結合手を介して更に1個以上の環基が結合する、ベンゾイミダゾール誘導体が良好なPARP阻害活性を有し、特に経口投与においても良好な活性を有することを知見し、PARPの関与する疾患の予防、治療若しくは診断剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明によれば、下記一般式(I)で示されるベンゾイミダゾール誘導体(以下、「本発明化合物(I)」と称する。)又はその製薬学的に許容される塩、並びにこれらの1種又は2種以上を有効成分として含有する医薬、特にPARP阻害剤が提供される。
(式中の記号は以下の意味を有する。
R1:H、低級アルキル、ハロゲン、又はハロゲンで置換された低級アルキル基、
R2a及びR2b:H、低級アルキル又は非存在、
点線:環内の二重結合の存在又は非存在、
A:含窒素飽和ヘテロ環、
X:オキソ基で置換されていてもよい低級アルキレン又は結合、
Y1及びY3:同一又は互いに異なって、オキソ基で置換されていてもよい低級アルキレン、オキソ基で置換されていてもよい低級アルケニレン、オキソ基で置換されていてもよい低級アルキニレン又は結合、
Y2:O、S、SO、SO2又は結合(但しY1がメチレン又は結合のとき、Y2は結合を示す)、
Z:置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロ環基(但し、当該ヘテロ環基は、環原子である炭素原子を介してY3と結合する)、
但し、−Y1−Y2−Y3−で示される基が、−CO−O−、オキソ基で置換されていてもよいC1−8アルキレン又は−CO−O−C1−4アルキレンの場合、Zは置換されていてもよいヘテロ環基を示し、また、Y1及びY2が共に結合の場合、Y3は結合以外の基を示す。以下同様。)
尚、式(I)中の点線は、R2a及びR2bとの組合せにより、ベンゾイミダゾール環部が下記のいずれかの構造であることを示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書中、「アルキル」、「アルキレン」、「アルケニレン」及び「アルキニレン」とは、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を意味し、「低級アルキル」は、例えばC1−6のアルキル基であり、好ましくはC1−4のアルキル基、より好ましくはメチル、エチル及びイソプロピル基である。「低級アルキレン」は、例えばC1−6のアルキレンであり、好ましくはC2−4のアルキレンであり、より好ましくはエチレン及びブチレンである。「低級アルケニレン」は、例えばC2−6のアルキルの任意の位置に1個以上の2重結合を有することを意味し、「低級アルキニレン」は、例えばC2−6のアルキル鎖の任意の位置に1個以上の三重結合を有することを意味する。
「ハロゲン」は、F、Cl、Br及びIを示し、好ましくは、F、Cl及びBrである。「ハロゲンで置換された低級アルキル」とは、例えば、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルを意味し、好ましくは1個以上のFで置換されたC1−6アルキルであり、より好ましくは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロエチルである。
「シクロアルキル基」は、好ましくは炭素数3乃至14個のシクロアルキル基であり、架橋されていてもよい。より好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びアダマンチル基である。
「アリール基」は、好ましくは炭素数6乃至14個の単環乃至3環式アリール基である。より好ましくは、フェニル及びナフチル基であり、更に好ましくは、フェニル基である。また、フェニル基に5乃至8員のシクロアルキル環が縮環し、例えば、インダニル又はテトラヒドロナフチル基を形成していてもよい。
「ヘテロ環基」とは、環原子としてO、S及びNから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する5乃至8員の単環乃至三環式ヘテロ環基を示す。環原子である任意の炭素原子がオキソ基で置換されていてもよく、S又はNが酸化されオキシドやジオキシドを形成してもよい。該ヘテロ環基は架橋されていてもよく、また、スピロ環を形成してもよい(オキソ基より誘導される1,3−ジオキソラン環等のアセタール体を含む)。また、シクロアルキル環やベンゼン環が縮環していてもよい。好ましくは、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、ピロリジニル、ピペリジル、モルホリニル、ピペラジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ホモピペラジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、クロマニル、ジオキソラニル、8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−イル、9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−イル、3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル、2−アザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−4−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−4−イル、3−アザスピロ[5.5]ウンデカン−9−イル、2−アザスピロ[4.5]デカン−8−イル、2−アザスピロ[4.4]ノナン−7−イル及び8−アザスピロ[4.5]デカン−2−イル基等が挙げられる。更に好ましくは、ピリジル、ピリダジニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル及びベンゾチエニル基等である。
「含窒素飽和ヘテロ環基」としては、環原子として少なくとも1つのNを有し、更に1つのO又はSを有していてもよい5乃至8員の飽和ヘテロ環基であり、環原子である任意の炭素原子がオキソ基で置換されていてもよく、S又はNが酸化されオキシドやジオキシドを形成してもよい。該ヘテロ環基は、架橋されていてもよく、また、スピロ環を形成してもよい(オキソ基より誘導される1,3−ジオキソラン環等のアセタール体を含む)。好ましくは、ピロリジニル、ピペリジル、モルホリニル、ピペラジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ホモピペラジニル、8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−イル、9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−イル、3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル、2−アザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−4−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−4−イル、3−アザスピロ[5.5]ウンデカン−9−イル、2−アザスピロ[4.5]デカン−8−イル、2−アザスピロ[4.4]ノナン−7−イル及び8−アザスピロ[4.5]デカン−2−イル基であり、更に好ましくはピロリジニル、ピペリジル及び8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−イル基である。
「環原子である炭素原子を介してY3と結合するヘテロ環基」とは、隣接するリンカーである−Y1−Y2−Y3−で示される基(例えば、Y2及びY3が共に結合の場合はY1)と結合する環原子が炭素原子であるヘテロ環基を示す。例えば、1−ピペリジルは含まないが、2−、3−又は4−ピペリジルは包含する。
「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよいアリール」又は「置換されていてもよいヘテロ環基」における置換基としては、医薬、殊にPARP阻害剤におけるこれらの環の置換基として使用可能な置換基であり、これらの置換基を1〜5個有していてもよい。置換基として好ましくは、C1−20炭化水素基、ハロゲン、ハロゲンで置換されたC1−6アルキル、OH、O−C1−20炭化水素基、SH、S−C1−20炭化水素基、SO−C1−20炭化水素基、SO2−C1−20炭化水素基、CO−C1−20炭化水素基、ヘテロ環基、CO2H、COO−C1−20炭化水素基、CONH2、CONH−C1−6アルキル、CON(C1−6アルキル)2、NHCO−C1−6アルキル、NHCO2−C1−6アルキル、NHCONH−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2基からなる群より選択される基である(ここで、「C1−20炭化水素基」とはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキレン−シクロアルキル、アルケニレン−シクロアルキル、アルキニレン−シクロアルキル、アルキレン−アリール、アルケニレン−アリール、アルキニレン−アリール等を包含する。該炭化水素基及びヘテロ環基は更に置換基を有していてもよく、該置換基として好ましくは、C1−6アルキル、ハロゲン、OH、O−C1−6アルキル、SH、S−C1−6アルキル、SO−C1−6アルキル、SO2−C1−6アルキル、CO−C1−6アルキル、CO2H、COO−C1−6アルキル、CONH2、CONH−C1−6アルキル、CON(C1−6アルキル)2、NHCO−C1−6アルキル、NHCO2−C1−6アルキル、NHCONH−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2基からなる群より選択される基であり、該置換基を1〜4個有していてもよい)。より好ましくは、C1−6アルキル、シクロアルキル、アリール、C1−6アルキレン−シクロアルキル、C1−6アルキレン−アリール、ハロゲン、ハロゲンで置換されたC1−6アルキル、OH、O−C1−6アルキル、O−シクロアルキル、O−アリール、O−C1−6アルキレン−シクロアルキル、O−C1−6アルキレン−アリール、S−C1−6アルキル、S−シクロアルキル、S−アリール、S−C1−6アルキレン−シクロアルキル、S−C1−6アルキレン−アリール、CO−C1−6アルキル、CO−シクロアルキル、CO−アリール、CO−C1−6アルキレン−シクロアルキル、CO−C1−6アルキレン−アリール、ヘテロ環基、CO2H、COO−C1−6アルキル、CONH2、CONH−C1−6アルキル、CON(C1−6アルキル)2、NHCO−C1−6アルキル、NHCO2−C1−6アルキル、NHCONH−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2からなる群より選択される基である(該シクロアルキル、アリール及びヘテロ環基は、C1−6アルキル、ハロゲン、OH、O−C1−6アルキル、SH、S−C1−6アルキル、CO−C1−6アルキル、CO2H、COO−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2基からなる群より選択される基を1〜4個有していてもよい)。更に好ましくは、C1−6アルキル、シクロアルキル、アリール、C1−6アルキレン−アリール、ハロゲン、ハロゲンで置換されたC1−6アルキル、OH、O−C1−6アルキル、O−アリール、O−C1−6アルキレン−アリール、S−C1−6アルキル、S−アリール、S−C1−6アルキレン−アリール、CO−C1−6アルキル、CO−アリール、ヘテロ環基、CO2H、COO−C1−6アルキル、CONH2、CONH−C1−6アルキル、CON(C1−6アルキル)2、NHCO−C1−6アルキル、NHCO2−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2からなる群より選択される基である(該シクロアルキル、アリール及びヘテロ環基は、C1−6アルキル、ハロゲン、OH、O−C1−6アルキル、S−C1−6アルキル、CO−C1−6アルキル、CO2H、COO−C1−6アルキル、NH2、NH−C1−6アルキル、N(C1−6アルキル)2、CN及びNO2基からなる群より選択される基を1〜4個有していてもよい)。
本発明における好ましい化合物は、R1がH、R2a又はR2bがH、Xが結合又はC1−6アルキレン、Aがピロリジニル又はピペリジル、Y1がC1−6アルキレン、Y2がO、S又は結合、Y3がC1−6アルキレン又は結合、Zが置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロ環基の化合物である。より好ましくは、Zが置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよいヘテロ環基の化合物であり、更に好ましくは、X及びY3が結合の化合物であり、更に好ましくは、(1)Y2がO又はS、且つZが置換されていてもよいフェニル、及び(2)Y2が結合、且つZが置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基の化合物である。より更に好ましくは、−Y1−Y2−Y3−Zが次のG群から選択される基である、2−[1−(置換)ピペリジン−4−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド化合物である。
G群:2−フェノキシエチル、3−フェノキシプロピル、4−フェノキシブチル、6−フェノキシヘキシル、2−(2−フルオロフェノキシ)エチル、3−(2−フルオロフェノキシ)プロピル、4−(2−フルオロフェノキシ)ブチル、2−(3−フルオロフェノキシ)エチル、3−(3−フルオロフェノキシ)プロピル、4−(3−フルオロフェノキシ)ブチル、2−(4−フルオロフェノキシ)エチル、3−(4−フルオロフェノキシ)プロピル、4−(4−フルオロフェノキシ)ブチル、2−(2−クロロフェノキシ)エチル、3−(2−クロロフェノキシ)プロピル、4−(2−クロロフェノキシ)ブチル、3−(3−クロロフェノキシ)プロピル、3−(4−クロロフェノキシ)プロピル、3−(2−ブロモフェノキシ)プロピル、3−(3−ブロモフェノキシ)プロピル、3−(4−ブロモフェノキシ)プロピル、3−(2−トリフルオロメチルフェノキシ)プロピル、3−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)プロピル、3−(4−トリフルオロメチルフェノキシ)プロピル、3−(2−シアノフェノキシ)プロピル、3−(3−シアノフェノキシ)プロピル、3−(4−シアノフェノキシ)プロピル、3−(2−ニトロフェノキシ)プロピル、3−(3−ニトロフェノキシ)プロピル、3−(4−ニトロフェノキシ)プロピル、2−(2,4−ジフルオロフェノキシ)エチル、3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)プロピル、4−(2,4−ジフルオロフェノキシ)ブチル、3−(2,3−ジフルオロフェノキシ)プロピル、3−(2,5−ジフルオロフェノキシ)プロピル、3−(2,6−ジフルオロフェノキシ)プロピル、3−(3,4−ジフルオロフェノキシ)プロピル、3−(3,5−ジフルオロフェノキシ)プロピル、3−(2,3−ジクロロフェノキシ)プロピル、3−(2,4−ジクロロフェノキシ)プロピル、3−(2,5−ジクロロフェノキシ)プロピル、3−(2,6−ジクロロフェノキシ)プロピル、3−(3,4−ジクロロフェノキシ)プロピル、3−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピル、4−(ナフタレン−1−イルオキシ)ブチル、4−(ナフタレン−2−イルオキシ)ブチル、2−フェニルチオエチル、3−フェニルチオプロピル、4−フェニルチオブチル、2−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)エチル、3−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)プロピル、4−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)ブチル、2−(5−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)エチル、3−(5 フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)プロピル、4−(5−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ブチル、3−[3−(2−クロロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]プロピル、3−[3−(3−フルオロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]プロピル、2−(2−フェニルオキサゾール−4−イル)エチル、3−(2−フェニルオキサゾール−4−イル)プロピル、4−(2−フェニルオキサゾール−4−イル)ブチル、2−(2−フェニルチアゾール−4−イル)エチル、3−(2−フェニルチアゾール−4−イル)プロピル、4−(2−フェニルチアゾール−4−イル)ブチル、2−(3−フェニルイソキサゾール−5−イル)エチル、3−(3−フェニルイソキサゾール−5−イル)プロピル、4−(3−フェニルイソキサゾール−5−イル)ブチル、2−(5−フェニルチオフェン−2−イル)エチル、3−(5−フェニルチオフェン−2−イル)プロピル、4−(5−フェニルチオフェン−2−イル)ブチル、2−(5−フェニルイソキサゾール−3−イル)エチル、3−(5−フェニルイソキサゾール−3−イル)プロピル、4−(5−フェニルイソキサゾール−3−イル)ブチル及び{3−[5−(4−クロロフェニル)フラン−2−イル]プロピル基。
本発明化合物の内、特に好ましい化合物は、2−[1−(6−フェノキシヘキシル)ピペリジン−4−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド、2−{1−[2−(4−フルオロフェノキシ)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド、2−{1−[4−(4−フルオロフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド、2−{1−[3−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)プロピル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド及び2−{1−[2−(2−フェニルオキサゾール−4−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドである。
本発明化合物(I)は、置換基の種類によっては幾何異性体や互変異性体が存在する場合があるが、本発明にはこれらの異性体の分離したもの、あるいは混合物をも包含する。また、本発明化合物(I)は不斉炭素原子を有する場合があり、不斉炭素原子に基づく異性体が存在しうる。本発明にはこれら光学異性体の混合物や単離されたものを包含する。また、本発明には、本発明化合物(I)を放射性同位元素でラベル化した化合物も包含する。
本発明化合物(I)は、R2a又はR2bの一方がHである化合物は互いに平衡の関係にある。本明細書において構造式や化合物名等の表記はその一方のみで記載するが、本発明にはそれら平衡関係にある化合物を包含する。
本発明化合物(I)は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もあり、かかる塩が製薬学的に許容され得る塩である限りにおいて本発明に包含される。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。さらに、本発明は、本発明化合物(I)及びその製薬学的に許容され得る塩の各種の水和物や溶媒和物及び結晶多形の物質をも包含する。
また、本発明化合物には、薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で本発明のNH2、OH、CO2H等に変換される基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、Prog.Med.,5,2157−2161(1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163−198に記載の基が挙げられる。
(製造法)
本発明化合物(I)及びその製薬学的に許容される塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基で保護、又は当該官能基に容易に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(T.W.Greene)及びウッツ(P.G.M.Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去、あるいは所望の基に転化することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、本発明化合物(I)のプロドラッグは上記保護基と同様、原料乃至中間体の段階で特定の基を導入、あるいは得られた本発明化合物(I)を用い反応を行うことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者により公知の方法を適用することにより行うことができる。
以下、本発明化合物(I)の代表的な製造法を説明する。R2a又はR2bの一方がHである本発明化合物(I’)は下記経路に従って製造できる。
(式中、RaはCONH2、もしくはCONH2に容易に転化可能な基(CO2H、カルボン酸エステル又はCN等)を、Lは脱離基を、P1はH又はC1−6アルキル基等のCO2Hの保護基を、P2はH又はアミノ基の保護基を示し、A’はAの内、Y1と結合する位置に環原子Nを有する基をそれぞれ示す。以下同様。)
A.第一製法:アルキル化
本製法は、原料化合物(II)をアルキル化反応に付すことにより本発明化合物(I’)を得る方法である。Lが示す脱離基としては、Cl、Br、I等のハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基などのアルキルスルホニルオキシ基やベンゼンスルホニルオキシ基、トルエン(特にp−トルエン)スルホニルオキシ基などのアリールスルホニルオキシ基等の有機スルホン酸残基などが挙げられる。
反応は、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の反応に不活性な溶媒中、化合物(II)と化合物(III)とを当モルあるいは一方を過剰量用いて、−78℃〜0℃の冷却下、冷却下乃至室温下、室温下又は場合によっては室温下乃至加熱下に行われる。また、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基の存在下に行うのが好ましい。
また、本発明化合物(I’)は還元的アルキル化反応によっても製造できる。その際、原料化合物(III)の代わりに、対応するカルボニル化合物を使用し、還元的アルキル化反応の常法(例えば日本化学会編「実験化学講座(丸善)」(第4版、20巻、1992年、300)等に記載の方法)に従って反応を行う。
更に、原料化合物(II)のRaがCONH2以外の場合、原料化合物(II)の段階で、又はアルキル化反応後に所望のCONH2基へと変換可能である。RaがCO2Hの場合、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、DMF、DMSO、ピリジン等の反応に不活性な溶媒中、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)、1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール(CDI)等)、場合によっては、更に添加剤(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等)の存在下、アンモニアで処理することにより製造できる。Raがカルボン酸エステルの場合、水、アルコール類、DMF、THF等の反応に不活性な溶媒中または無溶媒中、室温乃至加熱下、場合により加圧下に、アンモニアと反応させて製造できる。RaがCNの場合、加水分解により直接CONH2基へ、又はCO2Hを一旦経由して製造できる。これらの反応は他の化合物の製法においても適用でき、同様にしてRaがCONH2である化合物を製造できる。
B.第二製法:アミド化及び環化
本製法は原料化合物(IV)及び(VII)をアミド化反応に付し中間体(VIII)とし、得られた化合物(VIII)を環化反応に付し、本発明化合物(I’)を得る方法である。尚、中間体(VIII)を単離せず、アミド化反応後そのまま環化反応の条件に付しても本発明化合物(I’)を得ることができる。
(1)アミド化
反応は、芳香族炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、DMF、DMSO等の反応に不活性な溶媒中、DCC、DIPC、WSC、CDI等の縮合剤、場合によっては更にHONSu、HOBt等の添加剤の存在下、化合物(IV)と化合物(VII)とを当モルあるいは一方を過剰量用いて、−78℃〜0℃の冷却下、冷却下乃至室温下、室温下又は場合によっては室温下乃至加熱下に行う。トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、ピコリン、ルチジンなどの塩基の存在下に反応させるのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
或いは、原料化合物(VII)の代わりに種々の反応性誘導体を使用してもよい。該反応性誘導体としては、酸無水物;カルボン酸のメチルエステル、エチルエステルなどの通常のエステル;酸クロライド、酸ブロマイドの酸ハライド;酸アジド;p−ニトロフェノールなどのフェノール系化合物やHONSu、HOBt等のN−ヒドロキシル化合物等と反応させて得られる活性エステル;アルキル炭酸ハライドなどのハロカルボン酸アルキルエステルやピバロイルハライドなどと反応させて得られる有機酸系混合酸無水物や塩化ジフェニルホスホリルを反応させて得られるリン酸系混合酸無水物などの混合酸無水物等が適用できる。
(2)環化
反応は芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類等の反応に不活性な有機溶媒中または無溶媒下、触媒量乃至溶媒量の酸を用い、−78℃〜0℃の冷却下、冷却下乃至室温下、室温下又は場合によっては室温下乃至加熱下に行われる。用いられる酸としては酢酸、硫酸、塩酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられる。
C.原料化合物の製造
化合物(II)は、化合物(IV)及び(V)より、上記アミド化及び環化反応と同様の条件に付すことにより製造できる。化合物(VII)は化合物(IX)及び(III)より、上記アルキル化反応と同様の条件に付すことにより製造できる。化合物(IV)はUS5380719等に記載の方法により製造できる。化合物(V)及び(IX)はイソニペコチン酸等多くの化合物が市販されており、或いは容易に入手可能な化合物を公知の反応を適用することによって、容易に製造でき、例えば化合物(V)又は(IX)においてXがC1−6アルキレンである化合物(XIII)は、下記の方法によっても製造可能である。
(式中、Rbは−A’−P2又はC1−4アルキレン−A’−P2、RcはH又はC1−4アルキル、或いは、RbとRcが結合する炭素原子と一体となって全体として−A’−P2を示す。RdはC1−4アルキル基等の当該反応に一般に使用可能な基を示す。以下同様。)
即ち、ホーナー−エモンズ(Horner−Emmons)反応等のWittig様の反応によりオレフィン化後、パラジウム炭素等の存在下での接触還元により製造することができる。或いは、市販のトロピノン(XIVa)又は精密有機合成(L.−F.Tietze,T.Eicher著、高野誠一、小笠原国郎 訳、南江堂、487−489)に記載の方法と同様の方法によって製造される化合物を原料として、化合物(V)又は(IX)に対応する化合物(XIVe)、(XIVf)及び(XIVg)が製造できる。
シアノ化反応は、トシルメチルイソシアニド(TosMIC)等を使用するのが好ましく、具体的にはSynthetic Communication 25(6),787−793(1995)に記載の方法等があげられる。その他は当業者に公知の反応により製造される。
化合物(III)は容易に入手可能であるか、或いは市販化合物より容易に製造できる。Lの脱離基は、OH基又はCO2H基から常法により容易に製造できる。Y2がO又はSの化合物はエーテル化又はエステル化反応により、Y2がSO又はSO2である化合物はSを酸化することによりそれぞれ容易に製造できる。また、環基Z上に種々の置換基を有する化合物は公知の方法により容易に製造可能であり、置換基を有するヘテロ環として、例えば、1,2,4−オキサジアゾール誘導体はN−ヒドロキシアミジン誘導体と酸クロリド等のカルボン酸誘導体との縮合(J.Med.Chem.29,2174−2183(1986))等により、オキサゾール誘導体は2−ハロケトン誘導体とアミド誘導体の反応(J.Med.Chem.39,237−245(1996))等により、イソオキサゾール誘導体は1,3−ジケトン誘導体とヒドロキシルアミンとの縮合(J.Med.Chem,31,1659−1664(1988))或いはニトリルオキシド誘導体とアセチレン誘導体との1,3−双極子付加反応(J.Med.Chem.10,411−418(1967))等により、チアゾール誘導体は2−ハロケトン誘導体とチオアミド誘導体の反応(Gazz.Chim.Ital.92,1084−1092(1962))等により、イミダゾール誘導体はイミデート誘導体、2−ヒドロキシケトン誘導体及びアンモニアの反応(J.Med.Chem.43,1071−1084(2000))等により製造することができる。
また、R2a又はR2bの一方が低級アルキルである本発明化合物は、上記中間体(IV)、(VI)又は(VIII)、或いは発明化合物(I’)において、アルキル化反応に付すことにより製造できる。反応条件は上記アルキル化と同様の条件が適用できる。
また、本発明化合物は環AがA’以外の場合にも、上記製造法と実質的に同様の、当業者に自明の方法により製造できる。
上記各製法により得られた反応生成物は、遊離化合物、その塩あるいは水和物など各種の溶媒和物として単離、精製することができる。塩は通常の造塩処理に付すことにより製造できる。
単離、精製は、抽出、濃縮、留去、結晶化、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行うことができる。
各種異性体は異性体間の物理化学的な差を利用して常法により単離できる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法、例えば分別結晶化又はクロマトグラフィー等により分離できる。また、光学異性体は、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。
産業上の利用可能性
本発明化合物は医薬製剤の活性成分として有用である。特にPARP阻害作用を有するため、PARPの関与する、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、腹膜炎、胸膜炎、腎炎等)、自己免疫疾患(例えば、I型糖尿病等)、虚血再還流障害に伴う疾患(例えば、脳卒中、心筋梗塞、臓器移植等)の予防・治療薬として有用である。
本発明化合物の作用は以下の薬理試験によって確認された。
1.無細胞系PARP阻害活性測定試験(in vitro)
1)試験化合物は所望の濃度を、82.5mMトリス−HCl(pH8.0)、50mM塩化カリウム、10mM塩化マグネシウム、5mMジチオスレイトール、100μg/mlヒストン、26nM 3H−NADおよび0.06unitヒト組み替え型PARPを含有している反応液中で25℃、3時間反応させた。
2)反応液に100mMニコチンアミドを添加することにより反応を停止させた。
3)反応液を0.5mg抗マウスIgG抗体結合型SPAビーズと反応させTop count(商品名、Packard社)により酵素活性を測定した。
4)IC50はPARPのADP−ribose重合化活性を50%阻害する試験化合物濃度として各化合物について算出した。
実施例1、62、72、77及び88に記載の化合物は、それぞれ16、23、17、16及び8.3nMのIC50を示した。
2.生細胞系PARP阻害活性測定試験(in vitro)
1)J774.1細胞(マウス単球/マクロファージ細胞株)を25mM HEPESおよび10%牛胎児血清含有DMEM培地にて5x105個/mlに調整し、37℃、5%CO2の条件下で24時間培養した。
2)試験化合物は28mM塩化カリウム、28mM塩化ナトリウム、2mM塩化マグネシウム、0.01%ジギトニン及び26nM 3H−NADを含む56mM HEPES(pH7.5)溶液にて所望の濃度に調整し、反応溶液とした。
3)DMEM培地を上記反応溶液と置換し、37℃、5%CO2条件下で15分培養した。
4)細胞を冷5%トリクロロ酢酸にて洗浄後、2%SDS、0.1M NaOHにより溶解し放射活性を測定した。
5)IC50はPARPのADP−ribose重合化活性を50%阻害する試験化合物濃度として各化合物について算出した。
実施例1、62、72、77及び88に記載の化合物は、それぞれ8.2、47、5.1、10及び6.1nMのIC50を示した。
3.ザイモザン誘発腹膜炎(in vivo)
1)6〜8週令雄性Balb/cマウス(日本チャールスリバー)を実験に供した。
2)マウスは試験前日夕方より絶食、自由飲水とした。
3)各試験化合物は0.5%メチルセルロースにて懸濁あるいは溶解した。
4)各試験化合物懸濁液あるいは溶液を上記Balb/cマウスに所望の用量となるように5ml/kgにて経口投与した。陰性および陽性対照群には溶媒である0.5%メチルセルロースを5ml/kgにて投与した。
5)ザイモザン(Sigma)は生理食塩水により0.5mg/mlとなるように懸濁し、化合物の経口投与と同時に1ml/mouseにて腹腔内投与した。陰性対照群には生理食塩水を1ml/mouseにて腹腔内投与した。
6)ザイモザン投与4時間後に各マウスの腹腔を5mlの0.1%ヘパリン含有生理食塩水にて洗浄し腹腔内の細胞を回収した。
7)回収した細胞数はCelltak(商品名、日本光電)にて測定した。
8)ED30はザイモザンによって腹腔に浸潤した細胞数を30%抑制する試験化合物用量として各化合物について算出した。
4.コラーゲン誘発関節炎(in vivo)
1)3mg/mlウシII型コラーゲン(コラーゲン研修会)8mlと同量のFCA(Freund complete adjuvant H37 Ra、DIFCO Laboratories)を十分に混合し、雄性DBA/1Jマウス(日本チャールスリバー)尾根部皮内に100μlずつ免疫した。
2)21日後、上記と同様に追加免疫した。
3)追加免疫日を0日目とし、1週間に2回の割合で体重および各肢の関節炎スコアを測定した。関節炎スコアは以下のように設定した。すなわち、0は正常、1は発赤および軽度の腫脹、2は中程度の腫脹、3は重度の腫脹または関節部の強直である。
4)試験化合物は0.5%メチルセルロースを溶媒として、1、3、10および30mg/5mlの濃度で懸濁し、5ml/kgの用量にて1日1回経口投与を21日目まで行った。なお陰性および陽性対照群には溶媒である0.5%メチルセルロースを5ml/kgにて投与した。
5)測定結果は経日的な変化として表すと共に時間−反応曲線下面積(AUC:area under the curve)として表した。関節炎スコアに関してはsteel検定を、体重変動に関してはDunnett検定を行いp値が0.05以下の場合を有意とした。
上記実験より、本発明化合物はPARP阻害作用を有し、PARPの関与する疾患の予防・治療薬として有用であることが確認された。
本発明化合物(I)又はその製薬学的に許容され得る塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている薬剤用担体、賦形剤等を用いて通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(商品名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体、半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知のpH調整剤、防腐剤、増粘剤や賦形剤が適宜添加され、固体、液体若しくは半固体状に成形される。経鼻剤は通常のスプレー器具、点鼻容器、チューブ、鼻腔内挿入具等を用いて投与される。
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり約0.001〜100mg/kg、好ましくは0.1〜10mg/kgが適当であり、これを1回であるいは2〜4回に分けて投与する。静脈投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001から10mg/kgが適当で、1日1回〜複数回に分けて投与する。関節内投与の場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001〜10mg/kgが適当で、1日1回〜複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001〜100mg/kgを1日1回〜複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。本発明化合物は下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また原料化合物の製法を参考例に示す。
参考例1
2,3−ジアミノ安息香酸エチルエステル(29.3g)のDMF(500ml)溶液に1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−カルボン酸(40.0g)、WSC・HCl(40.0g)及びHOBt(1.5g)を加え、室温下一夜攪拌した。反応液を濃縮後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を乾燥後、溶媒を留去し、粗製の2−アミノ−3−[(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−カルボニル)アミノ]安息香酸エチルエステル(56.9g)を得た。該粗製物を酢酸(600ml)に溶解し、120℃で1時間加熱攪拌した。反応液を濃縮後、残渣にトルエンを加え、減圧濃縮した。残渣をクロロホルムで希釈し、1M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、水層からは更にクロロホルムで抽出し、合わせた有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、エチル2−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキシレート(27.5g)を得た。
参考例2
エチル2−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキシレート(27.5g)のエタノール(400ml)溶液に1M水酸化ナトリウム水溶液(250ml)を加え、50℃で3時間攪拌した。反応液を減圧濃縮後、1M塩酸を加え、析出した結晶を濾取、水洗して、2−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボン酸(23.3g)を得た。
参考例3
2−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボン酸(23.2g)のTHF(300ml)懸濁液にCDI(16.2g)を加え、室温下3時間攪拌した。反応液にアンモニア飽和のTHF(200ml)を加え、室温下一夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、乾燥、溶媒を留去して、tert−ブチル4−(4−カルバモイル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(18.9g)を得た。
参考例4
2−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド(14.1g)に氷冷下トリフルオロ酢酸(50ml)を加え、室温下一夜攪拌した。反応液を減圧濃縮後、残渣に酢酸エチル及びイソプロピルエーテルを加えて得られる固体を濾取し、酢酸エチル及びイソプロピルエーテルで洗浄して、2−ピペリジン−4−イル−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・2トリフルオロ酢酸塩(15.1g)を得た。
参考例1と同様の方法で後記表1に示す参考例5〜8の化合物を、参考例2と同様の方法で参考例9〜12の化合物を、参考例3と同様の方法で参考例13〜16の化合物を、参考例4と同様の方法で参考例17〜20の化合物をそれぞれ合成した。参考例1〜20の化合物の構造を表1に示す。尚、表中、物理化学データが空欄の化合物は精製せずにそのまま次の反応に使用したことを示す。
実施例1
2−ピペリジン−4−イル−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・2トリフルオロ酢酸塩(710mg)、4−(4−フルオロフェノキシ)ブチルブロミド(310mg)、炭酸カリウム(1.4g)、ヨウ化カリウム(129mg)及びDMF(10ml)の混合物を室温下一夜攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)で精製し、2−{1−[4−(4−フルオロフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド(519mg)を得た。得られた化合物(519mg)をエタノールに溶解し、4M塩化水素/酢酸エチル溶液(4ml)を加えた。溶媒を減圧濃縮して生じた結晶を再結晶(エタノール−水)して、2−{1−[4−(4−フルオロフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・2塩酸塩(200mg)を得た(無色粉末)。
実施例2
2−ピペリジン−4−イル−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・2トリフルオロ酢酸塩(860mg)、チオフェン−2−アルデヒド(1.1g)、酢酸(5ml)及び1,2−ジクロロエタン(15ml)混合物にトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.10g)を加え、2日間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び1M水酸化ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)で精製し、2−[1−(チオフェン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド(95mg)を得た。得られた化合物をメタノールに溶解し、フマル酸(30mg)を加えた。生じた結晶を再結晶(2−プロパノール)して、2−[1−(チオフェン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・1/2フマル酸塩(108mg)を得た(無色粉末)。
実施例3
2−{1−[4−(2−ベンジルオキシフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド(344mg)、メタノール(15ml)及び10%パラジウム−炭素(90mg)混合物を、水素雰囲気下、室温下で一夜攪拌した。反応混合物を濾過後、溶媒を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)で精製し、2−{1−[4−(2−ヒドロキシフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド(254mg)を得た。得られた化合物をメタノールに溶解し、4M塩化水素/酢酸エチル溶液(4ml)を加えた。溶媒を減圧濃縮して生じた結晶を再結晶(エタノール−水)して、2−{1−[4−(2−ヒドロキシフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド・2塩酸塩(244mg)を得た(無色粉末)。
実施例1と同様の方法で後記表2〜6に示す実施例4〜106の化合物を、実施例2と同様の方法で後記表6に示す実施例107及び108の化合物を合成した。実施例化合物の構造及び物理化学的データを、表2〜6に示す。
また、表7〜9に本発明の別の化合物の構造を示す。これらは、上記の製造法や実施例に記載の方法及び当業者にとって自明である方法、又はこれらの変法を用いることにより、容易に合成することができる。
表中、次に示す略号を用いる。Rex:参考例番号、Ex:実施例番号、Cmpd:化合物番号、Me:メチル、Et:エチル、Pr:1−プロピル、iPr:2−プロピル、tBu:tert−ブチル、Boc:tBu−O−CO−、Ac:アセチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、cHex:シクロヘキシル、Ad:1−アダマンチル、1Naph:1−ナフチル、2Naph:2−ナフチル、2Thi:2−チエニル、3Thi:3−チエニル、2Py:2−ピリジル、3Pyで3−ピリジル、4Py:4−ピリジル、Dat:物理化学的データ(F:FAB−MS[(M+H)+];EI:EI−MS(M+);ES:ESI−MS[(M+H)+];NMR:DMSO−d6中の1HNMRにおけるδ(ppm));Sal:塩(空欄:フリー体;HCl:塩酸塩;Fu:フマル酸塩;数字は酸成分の比率を示し、例えば、2HClは二塩酸塩を意味する。)をそれぞれ示す。また、置換基の前の数字は置換位置を示し、数字が複数個あるものは複数の置換を示す。例えば2−OMe−Phは2−メトキシフェニルを、2,4−F2−Phは2,4−ジフルオロフェニルを示す。
Claims (6)
- 一般式(I)で示されるベンゾイミダゾール誘導体又はその塩。
(式中の記号は以下の意味を有する。
R1:H、低級アルキル、ハロゲン、又はハロゲンで置換された低級アルキル基、
R2a及びR2b:H、低級アルキル又は非存在、
点線:環内の二重結合の存在又は非存在、
A:含窒素飽和ヘテロ環、
X:オキソ基で置換されていてもよい低級アルキレン又は結合、
Y1及びY3:同一又は互いに異なって、オキソ基で置換されていてもよい低級アルキレン、オキソ基で置換されていてもよい低級アルケニレン、オキソ基で置換されていてもよい低級アルキニレン又は結合、
Y2:O、S、SO、SO2又は結合(但しY1がメチレン又は結合のとき、Y2は結合を示す)、
Z:置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロ環基(但し、当該ヘテロ環基は、環原子である炭素原子を介してY3と結合する)、
但し、−Y1−Y2−Y3−で示される基が、−CO−O−、オキソ基で置換されていてもよいC1−8アルキレン又は−CO−O−C1−4アルキレンの場合、Zは置換されていてもよいヘテロ環基を示し、また、Y1及びY2が共に結合の場合、Y3は結合以外の基を示す。) - 2−[1−(6−フェノキシヘキシル)ピペリジン−4−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド、2−{1−[2−(4−フルオロフェノキシ)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド、2−{1−[4−(4−フルオロフェノキシ)ブチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド、2−{1−[3−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)プロピル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミド及び2−{1−[2−(2−フェニルオキサゾール−4−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドからなる群から選択される請求の範囲1記載のベンゾイミダゾール誘導体又はその塩。
- 請求の範囲1記載のベンゾイミダゾール誘導体又はその製薬学的に許容される塩と、製薬学的に許容される担体とからなる医薬組成物。
- PARP阻害剤である請求の範囲3記載の医薬組成物。
- 炎症性疾患の予防又は治療剤である請求の範囲4記載の医薬組成物。
- 慢性関節リウマチの予防又は治療剤である請求の範囲5記載の医薬組成物。
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