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JPWO2007132867A1 - 癌の予防及び治療剤 - Google Patents

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JPWO2007132867A1
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Abstract

本発明によれば、Ras、Raf、MEK、ERK及びRSK阻害剤、すなわちMAPK系シグナル伝達活性を指標としてP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤をスクリーニングすることができ、耐性獲得が抑制された抗癌剤、抗癌剤による癌治療効果を高める抗癌剤耐性抑制剤を提供することができる。

Description

本発明は、P−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤及びそのスクリーニング方法に関する。また、本発明は、抗癌剤耐性の獲得が抑制された抗癌剤に関する。さらに、本発明は、抗癌剤耐性を獲得した癌に対しても有効な癌治療剤に関する。
ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン等のアンスラサイクリン類、ビンクリスチン等のビンカアルカロイド類、パクリタキセル、ドセタキセル等のタキサン類等の抗癌剤は、抗悪性腫瘍効果が極めて高いことから広く用いられているが、反面、骨髄抑制、下痢などの副作用をおこすことが知られている。また、長期投与により癌が耐性を獲得して抗癌剤の効力が低下すること、患者によっては抗癌剤に対して耐性を示すことから化学療法を施すことができないことが知られている。
癌細胞によるこれらの抗癌剤に対する耐性獲得のメカニズムについては、以前からよく研究されており、多くのABCトランスポーター(ATP結合領域を1分子内に有しATPによって駆動する膜タンパク質)がこれらの抗癌剤の耐性に関与していることが知られている。
ABCトランスポーターの一つとしてP−糖タンパク質が抗癌剤の耐性に関与していることが知られている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:3004−3008(1987))。すなわち、P−糖タンパク質を発現する癌では、P−糖タンパク質が抗癌剤を細胞外に排出することにより、抗癌剤の細胞内蓄積を減少させる作用を有することが判明した。このP−糖タンパク質をコードする遺伝子がMDR(Multi−drug resistance)1遺伝子である。同様に、ABCトランスポーターの一つとしてBCRP(Breast Cancer Resistance Protein)が抗癌剤の耐性に関与していることが知られている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95(26),15665−15670(1998)。
しかしながら、ABCトランスポーター、特にP−糖タンパク質の発現あるいは発現の増大により抗癌剤耐性を獲得するに至った癌細胞系で、P−糖タンパク質の発現を抑制する低分子化合物はあまり知られていない(特開2006−69910号公報、特開2005−247716号公報)。また、エストロゲン(Estrogen)はヒト培養乳癌細胞株のP−糖蛋白発現を低下させることが報告されている(Cancer Res.65:596−604,2005、第64回日本癌学会学術総会・総会記事 p425)。また、BCRPの発現あるいは発現の増大により抗癌剤耐性を獲得するに至った癌細胞系で、BCRPの発現を抑制する低分子化合物はあまり知られていない(特開2004−123567号公報、Cancer Res.65:596−604,2005)。
そこで本発明者は、ABCトランスポーターであるP−糖タンパク質を高発現している癌細胞を用いて、P−糖タンパク質発現を抑制する化合物を見出す目的で種々の物質についてスクリーニングしたところ、MEK阻害剤及びRas阻害剤がP−糖タンパク質発現を顕著に抑制することを見出した。また、ERK阻害剤及びRSK阻害剤もまた、P−糖タンパク質の発現を抑制することも見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、ABCトランスポーターであるBCRPを高発現している癌細胞を用いて、MEK阻害剤がBCRP発現を顕著に抑制することを見出した。
すなわち本発明は、次に示す、MAPK系シグナル伝達阻害剤を含有してなるP−糖タンパク質発現抑制剤、P−糖タンパク質発現抑制剤をスクリーニングする方法、抗癌剤耐性抑制剤、癌治療剤などを提供するものである。
また、本発明は、次に示す、MAPK系シグナル伝達阻害剤を含有してなるBCRP発現抑制剤、BCRP発現抑制剤をスクリーニングする方法、抗癌剤耐性抑制剤、癌治療剤などを提供するものである。
(1)MAPK系シグナル伝達阻害剤を含有してなるP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤。
(2)MAPK系シグナル伝達阻害剤が、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現を阻害する物質またはMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性を阻害する物質である、上記(1)に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤。
(3)MAPK系シグナル伝達阻害剤が、Ras阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤およびRSK阻害剤から選択される1種又は2種以上である上記(1)または(2)に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤。
(4)MAPK系シグナル伝達阻害剤が、
(a)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質の活性を阻害する低分子化合物、
(b)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質の発現を阻害する低分子化合物、
(c)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNA及び
(d)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチドから選ばれる少なくとも一種である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤。
(5)Ras、Raf、MEK、ERKまたはRSK阻害活性を指標として、P−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤をスクリーニングする方法。
(6)上記(1)に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤を含有してなる耐性獲得が抑制された抗癌剤。
(6a)P−糖タンパク質の発現を抑制する活性と共に、抗癌活性を有するP−糖タンパク質発現抑制剤を含有する、上記(6)記載の抗癌剤。
(6b)BCRPの発現を抑制する活性と共に、抗癌活性を有するBCRP発現抑制剤を含有する、上記(6)記載の抗癌剤。
(6c)P−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤がMEK阻害剤である、上記(6)又は(6a)記載の抗癌剤。
(7)上記(1)に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤を含有してなる抗癌剤耐性抑制剤。
(8)MAPK系シグナル伝達阻害剤が、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現を阻害する物質またはMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性を阻害する物質である、上記(7)に記載の抗癌剤耐性抑制剤。
(9)MAPK系シグナル伝達阻害剤が、Ras阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤およびRSK阻害剤から選択される1種又は2種以上である上記(7)または(8)に記載の抗癌剤耐性抑制剤。
(10)上記(1)に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤と抗癌剤とを組み合わせてなる癌治療剤。
(11)MAPK系シグナル伝達阻害剤が、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現を阻害する物質またはMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性を阻害する物質である、上記(10)に記載の癌治療剤。
(12)MAPK系シグナル伝達阻害剤が、Ras阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤およびRSK阻害剤から選択される1種又は2種以上である上記(10)または(11)に記載の癌治療剤。
(13)抗癌剤が、塩酸ドキソルビシン、ダウノマイシン、塩酸エピルビシン、アンスラサイクリン類、ビンカアルカロイド類およびタキサン類から選択される上記(10)〜(12)のいずれかに記載の癌治療剤。
(14)MAPK系シグナル伝達阻害剤の有効量を投与することを特徴とする、P−糖タンパク質またはBCRPの発現を抑制する方法。
(15)MAPK系シグナル伝達阻害剤が、Ras阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤またはRSK阻害剤から選択される1種又は2種以上である上記(4)に記載のP−糖タンパク質またはBCRPの発現を抑制する方法。
(16)上記(1)に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤を含有してなる抗癌剤の有効量を投与することによる、癌を治療する方法。
(17)抗癌剤耐性獲得を抑制して癌を治療するものである、請求項16に記載の方法。
(18)抗癌剤の標的癌細胞からの排出を抑制して癌の治療効果を高めるものである、請求項16に記載の方法。
なお、本発明は、がん分子標的治療研究会総会(2006.6.15−16、東京)、第65回 日本癌学会学術総会(2006.9.28−30、横浜)、(The joint meeting of the 3rd ISC international conference on chemotherapeutics and the 11th international symposium on cancer chemotherapy(2006.12.6−8、東京)、日本薬学会第127年会(2007.3.28−30、富山)において発表されている。
図1は、MAPKシグナル伝達系、Aktシグナル伝達系阻害剤による内因性P−糖タンパク質発現の抑制を示す図である。
図2は、MEK阻害剤U0126による内因性又は外因性P−糖タンパク質発現の経時的な発現抑制を示す図である。
図3は、MEK阻害剤PD098059による内因性又は外因性P−糖タンパク質発現の経時的な発現抑制を示す図である。
図4は、MEK、ERK、RSK遺伝子のノックダウンによる内因性又は外因性P−糖タンパク質発現の経時的な発現抑制を示す図である。
図5は、MEK阻害剤U0126による内因性BCRP発現の経時的な発現抑制を示す図である。
図6は、MEK阻害剤による、がん細胞におけるパクリタキセルに対する感受性の増大を示す図である。
図7は、MEK阻害剤による、がん細胞におけるP−糖タンパク質の蛍光基質Rhodamine123の取り込み量の増加を示す図である。
まず、本発明は、MAPK系シグナル伝達阻害剤を含有してなるP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤を提供する。ここで、「MAPK系シグナル伝達」は、外界からのシグナルを細胞内に伝達する細胞内シグナル伝達経路の一つであり、GPCR(Gタンパク質結合受容体)、細胞増殖因子、細胞分化因子、ストレス刺激等のシグナルによって活性化されることが知られている。MAPK系シグナル伝達経路(MAPキナーゼカスケード)は、MAPKKK(MAPキナーゼキナーゼキナーゼ)、MAPKK(MAPキナーゼキナーゼ)、MAPキナーゼの3段階のキナーゼによるカスケードを含んでいる。MAPK系シグナル伝達経路は、例えば、MAPKとして、ERK、p38 MAPK、SAPK/JNK、ERK5/BMKなどが、MAPKKとして、MEK、MKKなどが、MAPKKとして、Raf、Mos、Tpl2、MLK、TAK、DLK、MEKK、ASKなどが知られている。本発明において、MAPK系シグナル伝達経路のうち特に対象とする経路は、(1)Raf又はMos(MAPKKK)、(2)MEK(MAPKK)、(3)ERK(MAPK)の順にシグナルが伝達される経路である。
「P−糖タンパク質」は、MDR1(Multidrug Resistance 1)ともよばれる抗癌剤耐性に関するABCトランスポーターとして最初に同定されたタンパク質であり、MDR1遺伝子にコードされている。P−糖タンパク質の遺伝子であるMDR1遺伝子のヒト全長cDNAの配列は公知である。MDR1遺伝子はGen Bankのaccession number M14758として登録されており、Cell 47:381−389(1986)などで報告されている。本明細書中、ヒト野生型MDR1 cDNAと称する遺伝子は、ヒトの副腎のcDNAライブラリーより単離されたものである(Biochem Biophys Res Commun 162:224−231(1989))。
「BCRP(Breast Cancer Resistance Protein)」は、正常組織では心臓組織での発現が確認され、癌組織では特に乳ガン組織で高発現することが明らかとなった抗癌剤耐性に関するABCトランスポーターとして同定されたタンパク質である。BCRP遺伝子にコードされている。BCRPの遺伝子であるBCRP遺伝子のヒト全長cDNAの配列は公知である。BCRP遺伝子はGen Bankのaccession number AB056867として登録されており、Doyle,L.A.,Yang,W.,Abruzzo,L.V.,Krogmann,T.,Gao,Y.,Rishi,A.K.and Ross,D.D.Amultidrug resistance transporter from human MCF−7 breast cancer cells Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95(26),15665−15670(1998)などで報告されている。
「抗癌剤耐性」は、抗癌剤の反復的な投与の結果または先天的にP−糖タンパク質やBCRPの発現が亢進等している結果、癌の治療または予防の処置において薬理効果の減少または消失がおこることをいう。
「抗癌剤耐性の獲得」は、抗癌剤の反復的な投与の結果としてその抗癌剤又はその類縁抗癌剤への感受性が減弱すること、または、先天的あるいは後天的に何らかの理由によりP−糖タンパク質やBCRPの発現が亢進した状態となった結果としてその抗癌剤又はその類縁抗癌剤への感受性が減弱していることをいう。
本発明者らは、P−糖タンパク質またはBCRPの発現をMAPK系シグナル伝達阻害剤(特に、Raf、Mos、MEK及びERKが関与するカスケードのシグナル伝達を阻害する阻害剤)によって抑制できることを見出したものである。
MAPK系シグナル伝達阻害剤とは、MAPK系シグナル伝達に携わるRas、MOS、TpI2、Raf、MEK、ERK、RSK、MKK、p38 MARK、SAPK、JNK、MLK、MEKK、MLK、ASK等の生体内分子の発現阻害、活性化阻害、不安定化等を介してシグナル伝達を阻害する薬物をいう。シグナルの阻害には、完全に遮断することも、シグナルが減弱されることも含まれる。かかる薬物としては、低分子若しくは高分子化合物のほか、siRNA、shRNA、抗体、アンチセンス、ペプチド、タンパク質、酵素などを用いることができる。
MAPK系シグナル伝達阻害剤としては、例えば、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現を阻害する物質、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質(MAPK系シグナル伝達に関与する遺伝子の翻訳産物を含む)の活性を阻害する物質など、を用いることができる。ここで、「タンパク質の発現を阻害する」とは、当該タンパク質の遺伝子の発現阻害を含む、当該タンパク質をコードする遺伝子からタンパク質生成までの一連の事象(例えば、転写(mRNAの生成)、翻訳(タンパク質の生成)を含む)のうちのいずれかの事象を阻害することによって、当該タンパク質の生成を阻害することを意味する。「タンパク質の活性を阻害する」とは、当該タンパク質が有する生理的作用(例えば、MAPKシグナル伝達経路における次段階のタンパク質のリン酸化)を阻害することをいい、当該タンパク質を活性型に変換する事象(例えば、リン酸化)を阻害すること、不安定化(または安定化阻害)などによって当該タンパク質の生理的作用を抑制することも含む。
MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質(例えば、Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質、RSKタンパク質など)を本発明で用いられるタンパク質と称することがある。MAPK系シグナル伝達に関与する遺伝子(MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子を含む)を本発明で用いられる遺伝子と称することがある。
本発明で用いられるMAPK系シグナル伝達阻害剤としては、例えば、(a)本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害する低分子化合物、(b)本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害する低分子化合物、(c)本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNA、(d)本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、(e)本発明で用いられるタンパク質に対する抗体、(f)本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するリボザイム、(g)本発明で用いられるタンパク質に対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質の変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチド、(h)本発明で用いられるタンパク質に対するアプタマーなどが挙げられる。
本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害するものであれば特に制限はないが、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAへの転写を阻害する物質、(ii)本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質への翻訳を阻害する物質などが挙げられる。(i)本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAへの転写を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAへの転写を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写に関与する因子に結合し、本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写を阻害する物質などが挙げられる。(ii)本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質への翻訳を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質への翻訳を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質への翻訳に関与する因子に結合し、本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質への翻訳を阻害する物質などが挙げられる。このような本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害する物質としては、具体的には、例えば、(b)本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害する低分子化合物、(c)本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNA、(d)本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、(f)本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するリボザイム、などが挙げられる。
本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害するものであれば特に制限はないが、例えば、(i)MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性化を阻害する物質、(ii)MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質が、その下流の因子(例えば、タンパク質)を活性化することを阻害する物質などが挙げられる。ここで、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性化を阻害するとは、例えば、MAP系シグナル伝達に関与するタンパク質を活性型に変換する事象(例えば、リン酸化)を直接的に阻害することを含むが、これに限定されない。例えば、MAPK系シグナル伝達系の上流の因子(例えば、タンパク質)の発現阻害、活性化阻害、不安定化(または安定化阻害)などによってMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性化を阻害することも、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性化を阻害することに含まれる。
MAPK系シグナル伝達阻害剤としては、より具体的には、例えば、Ras阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、RSK阻害剤などを用いることができる。これらの阻害剤は、単独で、必要に応じてそれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
Ras阻害剤としては、実施例記載の薬物(FTI−277)の他、R115777(Zarnesta)、BMS−214662、SCH66336、L−778,123などが挙げられる。なお、R115777、BMS−214662、SCH66336はファルネシル転移酵素阻害剤で、L−778,123はゲラニルゲラニル転移酵素阻害剤である。これらの阻害剤は、rasスーパーファミリーの低分子量Gタンパク質が、細胞の膜構造に結合して機能を発揮するために必要な修飾(ファルネシル化とゲラニルゲラニル化)を阻害するため、Rasの活性化を阻害する。なお、FTI−277はファルネシル転移酵素阻害剤(一般名:N−[4−[2−(R)−amino−3−mercaptopropyl]amino−2−phenyl−benzoyl]mehionine)であり、EMD Bioscience社から入手可能である(Cancer Res.,59:4919−4926(1999))。
Raf阻害剤としては、例えば、Bay43−9006(B−Raf、C−Rafの選択的阻害剤。ソラフェニブ(sorafenib)とも呼ばれる。)などが挙げられる。Raf阻害剤としては、A−Raf、B−Raf、C−Raf阻害剤が好ましく、なかでも特に好ましくはB−Raf阻害剤である。
MEK阻害剤としては、実施例記載の薬物(U0126、PD098059)の他、PD184161(MEK1及びMEK2選択的阻害剤)などが挙げられる。U0126はMEK1/2の選択的阻害剤(一般名:1,4−diamino−2,3−dicyano−1,4−bis[2−aminophenyl−thio]butadiene)である。U0126は、化学合成された有機化合物(1.4−diamino−2,3−dicyano−1,4−bis[2−amino−phenylthio]butadiene)で、MAPKK(MEK)活性を阻害し、ERK1/ERK2の活性化を抑制する。U0126は、PD098059に比べるとRafによるMEK1/2のリン酸化とMEK1/2によるERK1/2のリン酸化の両方を阻害するため、より効率よく阻害することができる(J.Biol.Chem.,273:18623−18632(1998))。U0126はCell Signaling Technology社から入手可能である。PD098059はMEK1の選択的阻害剤(一般名:2’−Amino−3’−methoxyflavone)で、Promega社から入手可能である。PD098059は、MAPK/ERKキナーゼI(MAPキナーゼ・キナーゼIまたはMEK1)に対する強力で、細胞透過性を有する選択的な阻害剤であり、MEK1の活性化をブロックするため次段階のMAPキナーゼのリン酸化/活性化を阻害する(Exp.Cell Res.253,255−270(1999))。
また、MEK阻害剤としては、国際公開第9837881号パンフレット、国際公開第99901426号パンフレット、特開2001−55376号公報、国際公開第200041505号パンフレット、国際公開第200041994号パンフレット、国際公開第200042002号パンフレット、国際公開第200042003号パンフレット、国際公開第200042022号パンフレット、国際公開第200042029号パンフレット、国際公開第200056706号パンフレット、国際公開第200068199号パンフレット、国際公開第200068200号パンフレット、国際公開第200068201号パンフレット、国際公開第200168619号パンフレット、国際公開第200236570号パンフレット等に記載の薬物等が挙げられる。なかでも、MEK1、MEK2阻害剤が好ましい。
ERK阻害剤としては、例えば、特開2005−330265号公報に記載の阻害剤、ERK inhibitor(Merck Calbiochem社)、5−Iodotubercidin(Merck Calbiochem社)等が挙げられる。ERK inhibitor(Merck Calbiochem社)はERK2特異的阻害剤(KD=〜5mM)(一般名:3−(2−Aminoethyl)−5−((4−ethoxyphenyl)methylene−2,4−thiazolidinedione)である。5−Iodotubercidin(Merck Calbiochem社)はERK2競合的阻害剤(Ki=530nM)(一般名:4−Amino−5−iodo−7−(β−D−ribofuranosyl)pyrrolo[2,3−d]−pyrimidine)であり、adenosinekinaseも阻害することが知られている(Ki=30nM)。なかでも、ERK1、ERK2阻害剤が好ましい。
RSK阻害剤としては、例えば、Kaempherol−3−O−(4’−O−acetyl−a−L−rhamnopyranoside)等が挙げられる。RSK阻害剤としては、RSK1、RSK2及びRSK3阻害剤が好ましい。
本発明において好ましく用いられるMAPK系シグナル伝達阻害剤は、例えば、(a)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質の活性を阻害する低分子化合物、(b)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質の発現を阻害する低分子化合物、(c)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNA、(d)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、(e)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質に対する抗体、(f)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質に対するリボザイムなどが挙げられる。これらの物質は、単独で、必要に応じてそれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、「低分子化合物」とは、分子量10,000以下(好ましくは、分子量5,000以下、より好ましくは分子量2,000以下、特に好ましくは分子量700以下)の有機および無機物質を意味する。
Rasタンパク質は、GTP結合蛋白質であり、MAPK系シグナル伝達経路においてMAPKKKであるRafタンパク質にシグナルを伝達する機能を有するGTP結合蛋白質で、K−Ras、N−Ras、H−Rasなどが知られている。例えば、Leukemia 17:1263−1293(2003)に記載されている。Rasタンパク質の活性の測定は、例えば、J.Biol.Chem.277:7865−7874(2002)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
Rafタンパク質は、MAPKKKであり、MAPK系シグナル伝達経路においてMAPKKであるMEKタンパク質にシグナルを伝達する機能を有するキナーゼで、A−Raf、B−Raf、C−Rafなどがある。例えば、Leukemia 17:1263−1293(2003)に記載されている。Rafタンパク質の活性の測定は、例えば、Methods Enzymol.255:279−290(1995)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
MEKタンパク質は、MAPKKであり、MAPK系シグナル伝達経路においてMAPKであるERKタンパク質にシグナルを伝達する機能を有するキナーゼでMEK1、MEK2などがある。例えば、Leukemia 17:1263−1293(2003)に記載されている。MEKタンパク質の活性の測定は、例えば、Science 258:478−480(1992)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
ERKタンパク質は、MAPキナーゼであり、種々の転写因子のセリン・スレオニン残基をリン酸化して遺伝子発現を促進する機能を有し、ERK1、ERK2などがある。例えば、World J Gastroenterol.2006 Apr 21;12(15):2445−2449.Related Articles,Linksなどに記載されている。ERKタンパク質の活性の測定は、例えば、World J Gastroenterol.2006 Apr 21;12(15):2445−2449.Related Articles,Linksなどに記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
RSKタンパク質は、MAPキナーゼ活性化プロテインキナーゼ(MAPKAPキナーゼ)で、例えば、Leukemia 17:1263−1293(2003)に記載されている。RSKタンパク質の活性の測定は、例えば、EMBO J.14:674−684(1995)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
本明細書中、本発明で用いられるタンパク質の活性を、MAPK系シグナル伝達経路において次段階のタンパク質にシグナルを伝達する活性(例えば、リン酸化活性;以下、「MAPK系シグナル伝達経路シグナル伝達活性」ともいう)と称することもある。
なお、本明細書では、Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質という用語は、それらと実質的に同一の活性を有する限り、その変異体をも包含する意味で用いられる。上記タンパク質の変異体としては、例えば、上記文献に記載のアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/又は挿入したアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。アミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、とくに限定されない。
実質的に同質の活性としては、例えばMAPK系シグナル伝達活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、脂肪酸合成酵素活性などが同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドとしては、前記した本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドであって、好ましくは、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様の性質を有するものであればいずれのものでもよい。
例えば、本発明で用いられるタンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは70個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましくは200個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。
また、本発明で用いられる部分ペプチドは、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
本発明で用いられる部分ペプチドまたはそれらの塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明で用いられるタンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明で用いられる部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(i)〜(v)に記載された方法が挙げられる。
(i)M.BodanszkyおよびM.A.Ondetti、ペプチド・シンセシス(Peptide Synthesis)Interscience Publishers,New York(1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide),Academic Press,New York(1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)(1975年)
(iv)矢島治明および榊原俊平、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明で用いられる部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
P−糖タンパク質発現抑制活性は、後述の実施例にて記載したP−糖タンパク質発現量をウエスタンブロット法で測定することができる。また、BCRP発現抑制活性は、後述の実施例にて記載したBCRP発現量をウエスタンブロット法で測定することができる。
その他にもFACSによって測定することもできる。FACS(Fluorescence activated cell sorting)での測定は、標識抗体を用いて細胞表面に発現しているであろうP−糖タンパク質を染色し、染色処理後の細胞を液流にのせ、標識量(P−糖タンパク質量)を測定することによって行うことができる。具体的には、例えば、ビオチン化P−糖タンパク質抗体(MRK16)を細胞表面に発現しているP−糖タンパク質と反応させた後、PE標識ストレプトアビジンと反応た後、FACSではPEの輝度を測定することにより、細胞表面上に発現しているP−糖タンパク質量を測定できる。
また、BCRP発現量のFACS(Fluorescence activated cell sorting)での測定は、標識抗体を用いて細胞表面に発現しているであろうBCRPを染色し、染色処理後の細胞を液流にのせ、標識量(BCRP量)を測定することによって行うことができる。具体的には、例えば、ビオチン化BCRP抗体を細胞表面に発現しているBCRPと反応させた後、PE標識ストレプトアビジンと反応た後、FACSではPEの輝度を測定することにより、細胞表面上に発現しているBCRP量を測定できる、
(a)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質の活性を阻害する低分子化合物
本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害する物質として好適に使用することができる。本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩としては、本発明で用いられるタンパク質の有する活性(例、MAPK系シグナル伝達活性)を阻害しうる化合物またはその塩であればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質に結合し、その活性を阻害する化合物またはその塩などが挙げられる。このような化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であってもよい。該化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。該化合物の塩としては、例えば、生理学的に許容される金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
このうち、生理学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩,カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩,マグネシウム塩,バリウム塩など)などの無機塩、アンモニウム塩など、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸など無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。
このような化合物としては、前述のRas阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、RSK阻害剤などが挙げられる。また、このような化合物は、後述するスクリーニング方法によって得ることができる。
(b)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質の発現を阻害する低分子化合物
本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害する化合物またはその塩は、本発明で用いられるタンパク質の発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害する物質として好適に使用することができる。本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害する化合物またはその塩としては、本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害しうるものであればよく特に制限はないが、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAへの転写を阻害する化合物、(ii)本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質への翻訳を阻害する化合物などが挙げられる。(i)本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質をコードするmRNAへの転写を阻害する化合物としては、本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写に関与する因子に結合し、転写を阻害する化合物などが挙げられる。(ii)本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質への翻訳を阻害する化合物としては、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質への翻訳を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質への翻訳に関与する因子に結合し、翻訳を阻害する化合物などが挙げられる。
このような化合物としては、前述のRas阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、RSK阻害剤などが挙げられる。また、このような化合物は、後述するスクリーニング方法によって得ることができる。
(c)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNA
本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAなど)は、低毒性であり、本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子の翻訳を抑制することができ、本発明で用いられるタンパク質の発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このような、本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNAとしては、本発明で用いられるタンパク質をコードするRNAの一部を含有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNA(small(short)interfering RNA)、shRNA(small(short)hairpin RNA)など)などが挙げられる。
このような二重鎖RNAは、公知の方法(例、Nature,411巻,494頁,2001年;特表2002−516062号公報;米国特許出願公開第2002/086356号明細書;Nature Genetics,24巻,180−183頁,2000年;Genesis,26巻,240−244頁,2000年;Nature,407巻,319−320頁,2002年;Genes & Dev.,16巻,948−958頁,2002年;Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,99巻,5515−5520頁,2002年;Science,296巻,550−553頁,2002年;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99巻,6047−6052頁,2002年;Nature Biotechnology,20巻,497−500頁,2002年;Nature Biotechnology,20巻,500−505頁,2002年;Nucleic Acids Res.,30巻,e46,2002年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。
本発明で用いられるRNAi作用を有する二重鎖RNAの長さは、通常、17〜30塩基、好ましくは19〜27塩基、より好ましくは20〜22塩基である。
(d)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド(好ましくはDNA)(以下、アンチセンスポリヌクレオチドの説明においては、これらのDNAを本発明で用いられるDNAと略記する場合がある)の塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスポリヌクレオチドとしては、本発明で用いられるDNAの塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスポリヌクレオチドであってもよいが、アンチセンスDNAが好ましい。
本発明で用いられるDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明で用いられるDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明で用いられるDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。特に、本発明で用いられるDNAの相補鎖の全塩基配列うち、(i)翻訳阻害を指向したアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、本発明で用いられるタンパク質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドが、(ii)RNaseHによるRNA分解を指向するアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、イントロンを含む本発明で用いられるDNAの全塩基配列の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドがそれぞれ好適である。
アンチセンスポリヌクレオチドは通常、10〜40個程度、好ましくは15〜30個程度の塩基から構成される。
ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンスDNAを構成する各ヌクレオチドのりん酸残基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾りん酸残基に置換されていてもよい。また、各ヌクレオチドの糖(デオキシリボース)は、2’−O−メチル化などの化学修飾糖構造に置換されていてもよいし、塩基部分(ピリミジン、プリン)も化学修飾を受けたものであってもよく、配列番号:2で表わされる塩基配列を有するDNAにハイブリダイズするものであればいずれのものでもよい。これらのアンチセンスポリヌクレオチドは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンスポリヌクレオチドの阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、または本発明で用いられるタンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。
(e)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質(以下、「本発明で用いられるタンパク質」ともいう)に対する抗体
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、抗体の説明においては、これらを単に本発明で用いられるタンパク質と略記する場合がある)に対する抗体は、本発明で用いられるタンパク質を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(i)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明で用いられるタンパク質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔Nature、256、495(1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
(ii)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質抗原)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明で用いられるタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
(f)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するリボザイム
本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質の発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このようなリボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine,7巻,221頁,2001年;FEBS Lett.,228巻,228頁,1988年;FEBS Lett.,239巻,285頁,1988年;Nucl,Acids.Res.,17巻,7059頁,1989年;Nature,323巻,349頁,1986年;Nucl.Acids.Res.,19巻,6751頁,1991年;Protein Eng.3巻,733頁,1990年;Nucl.Acids Res.,19巻,3875頁,1991年;Nucl.Acids Res.,19巻,5125頁,1991年;Biochem.Biophys.Res.Commun.,186巻,1271頁,1992年など参照)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、本発明で用いられるタンパク質をコードするRNAの一部に公知のリボザイムを連結することによって製造することができる。本発明で用いられるタンパク質をコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得る本発明のRNA上の切断部位に近接した部分(RNA断片)が挙げられる。上記リボザイムには、グループIイントロン型やRNasePに含まれるM1 RNAなどのラージリボザイム、ハンマーヘッド型やヘアピン型などのスモールリボザイムなどが含まれる(タンパク質核酸酵素,35巻,2191頁,1990年)。ハンマーヘッド型リボザイムについては、例えば、FEBS Lett.,228巻,228頁,1988年;FEBS Lett.,239巻,285頁,1988年;タンパク質核酸酵素,35巻,2191頁,1990年;Nucl.Acids Res.,17巻,7059頁,1989年などを参照することができる。また、ヘアピン型リボザイムについては、例えば、Nature,323巻,349頁,1986年;Nucl.Acids Res.,19巻,6751頁,1991年;化学と生物,30巻,112頁,1992年などを参照することができる。
(g)本発明で用いられるタンパク質に対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質の変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチド
本発明で用いられるタンパク質に対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質の変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害する物質として好適に使用することができる。本明細書において、「本発明で用いられるタンパク質に対してドミナントネガティブに作用するタンパク質の変異体」とは、それが発現することによって、本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害(消失もしくは低下)させる作用を有するタンパク質を意味する(多比良和誠編,遺伝子の機能阻害実験法,羊土社,26−32頁,2001年など参照)。
(h)本発明で用いられるタンパク質に対するアプタマー
本発明で用いられるタンパク質に対するアプタマーは、本発明で用いられるタンパク質の活性や機能を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害する物質として好適に使用することができる。アプタマーは、公知の方法、例えばSELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)法(Annual Review of Medicine 56巻,555−583頁,2005年)を用いて取得する。アプタマーの構造は、公知の方法を用いて決定することができ、その構造を基に公知の方法に従いアプタマーを製造する。
(P−糖タンパク質発現抑制剤及び抗癌剤耐性抑制剤)
(BCRP発現抑制剤及び抗癌剤耐性抑制剤)
本発明においては、上記(a)本発明で用いられるタンパク質に対する抗体、(b)本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、(c)本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNA、(d)本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するリボザイム、(e)本発明で用いられるタンパク質の活性を阻害する低分子化合物、(f)本発明で用いられるタンパク質の発現を阻害する低分子化合物などの活性成分を常套手段に従って、製剤化し、P−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤として投与することができる。P−糖タンパク質発現抑制剤は、P−糖タンパク質の発現を抑制することによって、抗癌剤の細胞外への排出を抑制することができる。よって、P−糖タンパク質発現抑制剤は、抗癌剤耐性抑制剤として用いることができる。BCRP発現抑制剤は、BCRPの発現を抑制することによって、抗癌剤の細胞外への排出を抑制することができる。よって、BCRP発現抑制剤は、抗癌剤耐性抑制剤として用いることができる。
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記活性成分を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記物質を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
なお前記した各組成物は、上記活性成分との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
該活性成分の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、抗癌剤に対して耐性を獲得した肺癌の抗癌剤耐性抑制の目的で本発明の活性成分を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該活性成分を、約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該活性成分の投与量は、対象疾患、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、抗癌剤に対して耐性を獲得した肺癌の抗癌剤耐性抑制の目的で本発明の活性成分を注射剤の形で投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該活性成分を、約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
より具体的には、(a)上記本発明のタンパク質の活性を阻害する低分子化合物またはその塩、(b)上記本発明のタンパク質の発現を阻害する低分子化合物またはその塩などは、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。例えば、経口投与のための製剤(医薬組成物)としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。非経口投与のための製剤としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられる。注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記活性成分を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記物質を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記アンチセンスポリヌクレオチドは、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。また、例えば、前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。該アンチセンスポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独またはリポゾームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下、関節腔内、癌病変部等に投与してもよい。上記二重鎖RNA、リボザイム、上記本発明で用いられるタンパク質に対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質の変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドなどは、上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
上記抗体、アプタマーなどは、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記抗体またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与(例、静脈注射)に適する剤形として提供される。好ましくは吸入剤として提供される。
また、本発明のP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤の対象となる癌は、前記の抗癌剤の適用対象となる癌であれば特に制限されない。
(Ras、Raf、MEK、ERKまたはRSK阻害活性を指標として、P−糖タンパク質発現抑制剤をスクリーニングする方法)
(Ras、Raf、MEK、ERKまたはRSK阻害活性を指標として、BCRP発現抑制剤をスクリーニングする方法)
次に、本発明は、Ras、Raf、MEK、ERKまたはRSK阻害活性などのMAPK系シグナル伝達阻害活性を指標として、P−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤をスクリーニングする方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様は、試験化合物のMAPK系シグナル伝達阻害活性を評価し、MAPK系シグナル伝達阻害活性を有する化合物を選択することを含む方法である。MAPK系シグナル伝達阻害活性とは、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現阻害、活性化阻害、不安定化などによりMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質を介したシグナル伝達を阻害しうる活性を意味する。したがって、MAPK系シグナル伝達阻害活性は、MAPK系シグナル伝達に対する阻害活性によって評価しうる他、Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質、RSKタンパク質などのMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現阻害活性、活性化阻害活性、不安定化活性などにより評価することもできる。このようにして選択された化合物は、P−糖タンパク質またはBCRPの発現を抑制する化合物であり、抗癌剤耐性抑制剤のための候補化合物となる。
MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現阻害活性、活性化阻害活性、不安定化活性などは公知の方法に従って測定することができる。具体的には、例えば、Ras阻害活性、Raf阻害活性、MEK阻害活性、ERK阻害活性、RSK阻害活性などによりMAPK系シグナル伝達阻害活性を評価することが可能である。ここで、Ras阻害活性、Raf阻害活性、MEK阻害活性、ERK阻害活性またはRSK阻害活性とは、Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質の発現阻害、活性化阻害、不活性化などによりRasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質を介したシグナル伝達を阻害しうる活性を意味する。
Ras阻害活性は、例えば、J.Biol.Chem.270:26802−26806(1995)、Cancer Res.56:1727−1730(1996)、Cancer Res.59:4919−4926(1999)に記載の方法により測定することができる。Raf阻害活性、例えば、Chem.Biol.6:559−568(1999)、Int.J.Clin.Pharmacol.Ther.40:567−568(2002)に記載の方法により測定することができる。MEK阻害活性は、例えば、WO99/01426、J.Immunol.160,4175(1998);J.Biol.Chem.273,18623(1998);J.Biol.Chem.274,6168(1999);J.Biol.Chem.274,6747(1999);Bioorg.Med.Chem.Lett.8,2839(1998).等に記載の方法により測定することができる。ERK阻害活性は、例えば、特開2005−330265号公報に記載の方法により測定することができる。RSK阻害活性は、例えば、Org.Lett.7:1097−1099(2005)、Bioorg.Med.Chem.14:3974−3977(2006)に記載の方法により測定することができる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。試験化合物は塩を形成していてもよく、試験化合物の塩としては、生理学的に許容される金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
より具体的には、例えば、(1)(i)試験化合物を細胞に接触させた場合と、(ii)試験化合物を細胞に接触させない場合との、該細胞のRas、Raf、MEK、ERKまたはRSKを介したシグナル伝達などのMAPK系シグナル伝達活性の比較を行うことを特徴とするP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤のスクリーニング方法を提供する。
本方法においては、まず、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質を発現する細胞に、試験化合物を接触させる。用いられる「細胞」の由来としては、ヒト、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、トリなど、ペット、家畜等に由来する細胞が挙げられるが、これら由来に制限されない。「MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質を発現する細胞」としては、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質を発現している細胞、または外因性のMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子が導入され、該遺伝子が発現している細胞を利用することができる。外因性のMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子が発現した細胞は、通常、それぞれMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子が挿入された発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより作製することができる。該発現ベクターは、一般的な遺伝子工学技術によって作製することができる。
次に、MAPK系シグナル伝達活性(例えば、リン酸化活性)を測定する。具体的には、例えば、(i)と(ii)の場合において、上記細胞を培養し、そのMAPK系シグナル伝達活性を測定する。MAPK系シグナル伝達活性は、公知の方法、例えば、Raf、MEK、ERK、RSKのリン酸化をそれらのタンパク質に対して特異的に反応するリン酸化抗体を用いたウエスタンブロッティング法あるいはELISA法により、あるいはその下流に存在する転写因子(CREB、c−Fosなど)のリン酸化をそれらのタンパク質に対して特異的に反応するリン酸化抗体を用いたウエスタンブロッティング法あるいはELISA法などにより測定することができる。また、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の下流に存在する転写因子の転写活性化能の測定、例えば、その転写因子の標的遺伝子のプロモーター領域を常法に従って単離し、その下流に標識遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、ガラクトシダーゼ等の発光、蛍光、発色遺伝子)をつなげ、その標識遺伝子の活性を見ることにより、MAPK系シグナル伝達活性を測定することもできる。試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
次いで、試験化合物を接触させない場合(コントロール)と比較して、MAPK系シグナル伝達を抑制(低下)させる化合物を選択する。例えば、上記(i)の場合におけるMAPK系シグナル伝達活性を、上記(ii)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上抑制する試験化合物を、MAPK系シグナル伝達を抑制(低下)させる化合物として選択することができる。このようにして選択された化合物は、P−糖タンパク質またはBCRPの発現を抑制する化合物またはその塩であり、抗癌剤耐性抑制剤のための候補化合物となる。
また、例えば(2)(i)試験化合物を細胞に接触させた場合と、(ii)試験化合物を細胞に接触させない場合との、該細胞のRasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質、RSKタンパク質などのMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の発現レベルの比較を行うことを特徴とするP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤のスクリーニング方法を提供する。
本方法においては、まず、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子を発現する細胞に、前記と同様にして試験化合物を接触させる。該細胞としては、Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質、RSKタンパク質などのMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子を発現する細胞、例えば、ヒト外陰部がん細胞A431、ヒト大腸がん細胞HCT−15、SW620、ヒト乳がん細胞MCF−7、MDA−MB−231、ヒト非小細胞肺がん細胞A549、ヒト卵巣がん細胞OVCAR−5などが好ましく用いられる。
次に、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の発現を測定する。具体的には、例えば、上記(i)と(ii)の場合において、上記細胞を培養し、それらのMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の発現レベルを測定する。遺伝子の発現レベルの測定は、転写レベルまたは翻訳レベルの測定など、公知の方法によって行うことができる。例えば、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子を発現する細胞からmRNAを常法に従って抽出し、このmRNAを鋳型としたノーザンハイブリダイゼーション法またはRT−PCR法を実施することによって該遺伝子の転写レベルを測定することができる。あるいは、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子のプロモーター領域を常法に従って単離し、その下流に標識遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、ガラクトシダーゼ等の発光、蛍光、発色などを指標に検出可能な遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない)をつなげ、その標識遺伝子の活性を見ることによっても該遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。また、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子を発現する細胞からタンパク質画分を回収し、それぞれMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現をSDS−PAGE等の電気泳動法で検出することにより、該遺伝子の翻訳レベルの測定を行うこともできる。さらに、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質に対する抗体を用いて、ウエスタンブロッティング法を実施することにより該タンパク質の発現を検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うことも可能である。MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の検出に用いる抗体としては、検出可能な抗体であれば、特に制限はないが、例えばモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体のいずれも利用することができる。試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
次いで、試験化合物を接触させない場合(コントロール)と比較して、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の発現レベルを抑制(低下)させる化合物を選択する。このようにして選択された化合物は、P−糖タンパク質またはBCRPの発現を抑制する化合物またはその塩であり、抗癌剤耐性抑制剤のための候補化合物となる。
さらに、例えば、(3)(i)試験化合物の存在下および(ii)試験化合物の非存在下におけるRasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質、RSKタンパク質などのMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性の比較を行うことを特徴とするP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤のスクリーニング方法も提供する。具体的には、例えば、上記(i)と(ii)の場合においてRasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質、RSKタンパク質などのMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性を測定する。次いで、試験化合物の非存在下の場合(コントロール)と比較して、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性を抑制(低下)させる化合物を選択する。MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性は、公知の方法、例えば、Raf、MEK、ERK、RSKのリン酸化をそれらのタンパク質に対して特異的に反応するリン酸化抗体を用いたウエスタンブロッティング法あるいはELISA法により、あるいはその下流に存在する転写因子(CREB、c−Fosなど)のリン酸化をそれらのタンパク質に対して特異的に反応するリン酸化抗体を用いたウエスタンブロッティング法あるいはELISA法などにより測定することができる。また、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の下流に存在する転写因子の転写活性化能の測定、例えば、その転写因子の標的遺伝子のプロモーター領域を常法に従って単離し、その下流に標識遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、ガラクトシダーゼ等の発光、蛍光、発色遺伝子)をつなげ、その標識遺伝子の活性を見ることにより、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性を測定することもできる。このようにして選択された化合物は、P−糖タンパク質またはBCRPの発現を抑制する化合物またはその塩であり、抗癌剤耐性抑制剤のための候補化合物となる。
また、例えば、(4)(i)試験化合物の存在下および(ii)試験化合物の非存在下におけるRasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質、RSKタンパク質などのMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の安定性の比較を行うことを特徴とするP−糖タンパク質発現抑制剤のスクリーニング方法なども提供する。具体的には、例えば、上記(i)と(ii)の場合においてMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の安定性を測定する。MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の安定性は、公知の方法、例えば、Cancer Res.65:596−604(2005)に記載の方法(35S−labelled pulse chase法)などにより測定することができる。次いで、試験化合物の非存在下の場合(コントロール)と比較して、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の安定性を抑制(低下)させる化合物を選択する。このようにして選択された化合物は、P−糖タンパク質の発現を抑制する化合物またはその塩であり、抗癌剤耐性抑制剤のための候補化合物となる。
上記方法によって選択された化合物は、さらにP−糖タンパク質またはBCRPの発現を指標としてスクリーニングするのが好ましい。例えば、(1)(i)試験化合物を細胞に接触させた場合と、(ii)試験化合物を細胞に接触させない場合との、該細胞のP−糖タンパク質またはBCRPの発現レベルの比較を行うことによってP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤をスクリーニングするのが好ましい。
具体的には、例えば、上記(i)と(ii)の場合において、上記細胞を培養し、それらのP−糖タンパク質またはBCRPをコードする遺伝子の発現レベルを測定する。遺伝子の発現レベルの測定は、転写レベルまたは翻訳レベルの測定など、公知の方法によって行うことができる。例えば、P−糖タンパク質またはBCRPをコードする遺伝子を発現する細胞からmRNAを常法に従って抽出し、このmRNAを鋳型としたノーザンハイブリダイゼーション法またはRT−PCR法を実施することによって該遺伝子の転写レベルを測定することができる。あるいは、P−糖タンパク質またはBCRPをコードする遺伝子のプロモーター領域を常法に従って単離し、その下流に標識遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、ガラクトシダーゼ等の発光、蛍光、発色などを指標に検出可能な遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない)をつなげ、その標識遺伝子の活性を見ることによっても該遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。また、P−糖タンパク質またはBCRPをコードする遺伝子を発現する細胞からタンパク質画分を回収し、それぞれP−糖タンパク質またはBCRPの発現をSDS−PAGE等の電気泳動法で検出することにより、該遺伝子の翻訳レベルの測定を行うこともできる。さらに、P−糖タンパク質またはBCRPに対する抗体を用いて、ウエスタンブロッティング法を実施することにより該タンパク質の発現を検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うことも可能である。P−糖タンパク質またはBCRPの検出に用いる抗体としては、検出可能な抗体であれば、特に制限はないが、例えばモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体のいずれも利用することができる。試験化合物としては、上記方法によって選択された化合物が用いられる。
次いで、試験化合物を接触させない場合(コントロール)と比較して、P−糖タンパク質またはBCRPをコードする遺伝子の発現レベルを抑制(低下)させる化合物を選択する。このようにして選択された化合物は、P−糖タンパク質またはBCRPの発現を抑制する化合物またはその塩であり、抗癌剤耐性抑制剤のための候補化合物となる。
(P−糖タンパク質発現抑制剤を含有してなる耐性獲得が抑制された癌治療剤)
(BCRP発現抑制剤を含有してなる耐性獲得が抑制された癌治療剤)
さらに、本発明は、P−糖タンパク質発現抑制剤を含有してなる耐性獲得が抑制された抗癌剤(以下、「耐性獲得抑制抗癌剤」という)を提供する。本発明の耐性獲得抑制抗癌剤は、P−糖タンパク質の発現を抑制する活性と共に抗癌活性を有するP−糖タンパク質発現抑制剤を含有する。したがって、本発明の耐性獲得抑制抗癌剤は、癌細胞を選択的に死滅させ、癌細胞の増殖を抑制し、および/または癌細胞のアポトーシスを誘導することができると共に、P−糖タンパク質の発現を抑制することによって癌細胞の薬剤耐性獲得を抑制することができるので、耐性獲得が抑制された抗癌剤として有用である。本発明の耐性獲得抑制抗癌剤は、P−糖タンパク質の発現を抑制する活性と共に抗癌活性を有するP−糖タンパク質発現抑制剤を単独で含有することができるし、さらに、これ以外の抗癌剤を配合することもできる。
さらに、本発明はBCRP発現抑制剤含有してなる耐性獲得が抑制された抗癌剤(以下、「耐性獲得抑制抗癌剤」という)を提供する。本発明の耐性獲得抑制抗癌剤は、BCRPの発現を抑制する活性と共に抗癌活性を有するBCRP発現抑制剤を含有する。したがって、本発明の耐性獲得抑制抗癌剤は、癌細胞を選択的に死滅させ、癌細胞の増殖を抑制し、および/または癌細胞のアポトーシスを誘導することができると共に、BCRPの発現を抑制することによって癌細胞の薬剤耐性獲得を抑制することができるので、耐性獲得が抑制された抗癌剤として有用である。本発明の耐性獲得抑制抗癌剤は、BCRPの発現を抑制する活性と共に抗癌活性を有するBCRP発現抑制剤を単独で含有することができるし、さらに、これ以外の抗癌剤を配合することもできる。
本発明の耐性獲得が抑制された抗癌剤に用いられるMAPK系シグナル伝達阻害剤としては、上記したMAPK系シグナル伝達阻害剤を好ましく用いることができるが、なかでもRas阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤およびRSK阻害剤が好ましい。
本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤を上述の剤として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記P−糖タンパク質発現抑制剤を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記P−糖タンパク質発現抑制剤を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記P−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記物質との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
上記P−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、肺癌の治療の目的で本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該剤を、それぞれ約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該剤の投与量は、対象疾患、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、肺癌の治療の目的で本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤を注射剤の形で投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該剤を、それぞれ約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
また、本発明のP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤は、ホルモン療法剤、抗癌剤(例、化学療法剤、免疫療法剤、チロシンキナーゼシグナル経路阻害剤(細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤)など(以下、併用薬物と略記する)と併用して使用することができる。
本発明の化合物は単剤として使用しても優れた抗癌作用を示すが、さらに前記併用薬物の一つまたは幾つかと併用(多剤併用)することによって、その効果をより増強させることができる。
また、本発明のP−糖タンパク質発現抑制剤は、抗癌剤耐性抑制剤として用いることができるので、P−糖タンパク質発現抑制剤と抗癌剤(例、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤、または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤)とを組み合わせると、耐性を獲得した癌に対して癌治療剤として極めて有効である。
より具体的には、本発明の(A)P−糖タンパク質発現抑制剤と(B)前記の癌細胞が耐性を獲得し得る抗癌剤とを併用すれば、耐性を獲得した癌に対する治療効果が回復するので、これら成分(A)及び(B)を含有する組成物又は併用剤は新たな癌治療剤として有用である。
また、本発明の(A)P−糖タンパク質発現抑制剤と(B)前記の癌細胞が耐性を獲得し得る抗癌剤とを併用すれば、癌に対する耐性を獲得するのを抑制して癌治療を行うことができるので、これら成分(A)及び(B)を含有する組成物又は併用剤は新たな癌治療剤として有用である。
また、本発明のBCRP発現抑制剤は、抗癌剤耐性抑制剤として用いることができるので、BCRP発現抑制剤と抗癌剤(例、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤、または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤)とを組み合わせると、耐性を獲得した癌に対して癌治療剤として極めて有効である。
より具体的には、本発明の(A)BCRP発現抑制剤と(B)前記の癌細胞が耐性を獲得し得る抗癌剤とを併用すれば、耐性を獲得した癌に対する治療効果が回復するので、これら成分(A)及び(B)を含有する組成物又は併用剤は新たな癌治療剤として有用である。
また、本発明の(A)BCRPと(B)前記の癌細胞が耐性を獲得し得る抗癌剤とを併用すれば、癌に対する耐性を獲得するのを抑制して癌治療を行うことができるので、これら成分(A)及び(B)を含有する組成物又は併用剤は新たな癌治療剤として有用である。
かかる癌細胞が耐性を獲得し得る抗癌剤としては、P−糖タンパク質またはBCRPにより耐性を生じる抗癌剤であれば制限されないが、例えば、塩酸ドキソルビシン、ダウノマイシン、塩酸エピルビシン、アドリアマイシン等のアンスラサイクリン類;ビンクリスチン等のビンカアルカロイド類;パクリタキセル、ドセタキセル等のタキサン類の他にも、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤、または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤などが挙げられる。
「ホルモン療法剤」としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、ジエノゲスト、アソプリスニル、アリルエストレノール、ゲストリノン、ノメゲストロール、タデナン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン等)、ERダウンレギュレーター(例、フルベストラント等)、ヒト閉経ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH−RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン等)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン等)、抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド等)、5α−レダクターゼ阻害薬(例、フィナステリド、デュタステリド、エプリステリド等)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン等)、アンドロゲン合成阻害薬(例、アビラテロン等)、レチノイドおよびレチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例、リアロゾール等)などが挙げられる。LH−RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン等)が好ましい。
「化学療法剤」としては、例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤などが挙げられる。
「アルキル化剤」としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシンなどが挙げられる。
「代謝拮抗剤」としては、例えば、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5−FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール等)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチンなどが挙げられる。
「抗癌性抗生物質」としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシンなどが挙げられる。
「植物由来抗癌剤」としては、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタクセル、ビノレルビンなどが挙げられる。
「免疫療法剤(BRM)」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾールなどが挙げられる。
「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」における「細胞増殖因子」としては、細胞の増殖を促進する物質であればどのようなものでもよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が用いられ、具体的には、(1)EGF(epidermal growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、EGF、ハレグリン(HER2リガンド)等〕、(2)インシュリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、インシュリン、IGF(insulin−like growth factor)−1、IGF−2等〕、(3)FGF(fibroblast growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(keratinocyte growth factor)、FGF−10等〕、(4)その他の細胞増殖因子〔例、CSF(colony stimulating factor)、EPO(erythropoietin)、IL−2(interleukin−2)、NGF(nerve growth factor)、PDGF(platelet−derived growth factor)、TGFβ(transforming growth factor β)、HGF(hepatocyte growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)等〕などが挙げられる。
「細胞増殖因子の受容体」としては、前記の細胞増殖因子と結合能を有する受容体であればいかなるものであってもよく、具体的には、EGF受容体、ハレグリン受容体(HER2)、インシュリン受容体、IGF受容体、FGF受容体−1またはFGF受容体−2などが挙げられる。
「細胞増殖因子の作用を阻害する薬剤」としては、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標);HER2抗体)、メシル酸イマチニブ、ZD1839またはセツキシマブ、VEGFに対する抗体(例、ベバシツマブ)、VEGF受容体に対する抗体、ゲフィチニブ、エルロチニブなどが挙げられる。
前記の薬剤の他に、L−アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、プロトポルフィリン・コバルト錯塩、水銀ヘマトポルフィリン・ナトリウム、トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカン等)、トポイソメラーゼII阻害薬(例えば、ソブゾキサン等)、分化誘導剤(例、レチノイド、ビタミンD類等)、血管新生阻害薬(例、サリドマイド、SU11248等)、α−ブロッカー(例、塩酸タムスロシン、ナフトピジル、ウラピジル、アルフゾシン、テラゾシン、プラゾシン、シロドシン等)セリン・スレオニンキナーゼ阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬(例、アトラセンタン等)、プロテアゾーム阻害薬(例、ボルテゾミブ等)、Hsp90阻害薬(例、17−AAG、DMAG(17−desmethoxy−17−N,N−dimethylaminoethylamino−geldanamycin)等)、スピロノラクトン、ミノキシジル、11α−ヒドロキシプロゲステロン、骨吸収阻害・転移抑制薬(例、ゾレドロン酸、アレンドロン酸、パミドロン酸、エチドロン酸、イバンドロン酸、クロドロン酸)なども用いることができる。
本発明の新たな抗癌剤、抗癌剤耐性抑制剤、癌治療剤は、これらの成分が従来用いられている製剤をそのまま併用することにより投与してもよいが、これらの成分を含む新たな製剤としてもよい。これらの製剤の形態としては、経口剤、注射剤(筋肉、皮下、静脈を含む)、坐剤、外用剤(パッチ剤、塗布剤)等が挙げられる。
上記本発明の癌治療剤などの医薬は、本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤と、本発明で用いられる抗癌剤とが同時に作用を示すことができる形態であればよい。例えば、本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤と、本発明で用いられる抗癌剤とを、一つの医薬組成物(例、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、坐剤など)中に製剤化した配合剤としてもよい。また、本発明の癌治療剤などの医薬は、本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤と、本発明で用いられる抗癌剤とからなるキットであってもよい。この場合、本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤と、本発明で用いられる抗癌剤とは、本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤と抗癌剤とが同時に作用することができるかぎり時間差を置いて投与してもよいが、同時に投与するのが好ましい。
本発明の癌治療剤などの医薬におけるP−糖タンパク質発現抑制剤と抗癌剤との投与量の比率(または配合比)は、投与(または配合)される本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤および抗癌剤の種類および/または組み合わせ、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、重量比で、約1:500〜500:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは1:10〜10:1、特に好ましくは1:5〜5:1である。また、本発明の癌治療剤などの医薬におけるBCRP発現抑制剤と抗癌剤との投与量の比率(または配合比)は、投与(または配合)される本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤および抗癌剤の種類および/または組み合わせ、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、重量比で、約1:500〜500:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは1:10〜10:1、特に好ましくは1:5〜5:1である。
本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤と抗癌剤とを上述の剤として使用する場合、例えば上述した方法など、常套手段に従って製剤化することができる。また、本発明で用いられるBCRP発現抑制剤と抗癌剤とを上述の剤として使用する場合、例えば上述した方法など、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記剤を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記剤を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記P−糖タンパク質発現抑制剤と抗癌剤とが、それぞれ含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記物質との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
上記剤の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、肺癌の治療の目的で本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤と抗癌剤とを経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該剤を、それぞれ約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該剤の投与量は、対象疾患、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、肺癌の治療の目的で本発明で用いられるP−糖タンパク質発現抑制剤と抗癌剤とを注射剤の形で投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該剤を、それぞれ約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本明細書および配列表において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
調製例1(P−糖タンパク質高発現株の調製)
(1)MDR1遺伝子
本発明でヒト野生型MDR1 cDNAと呼ぶ遺伝子としては、ヒトの副腎のcDNAライブラリーより単離されたヒト野生型MDRI cDNAを用いた(Biochem Biophys Res Commun 162:224−231(1989)参照)。
(2)MDR1発現プラスミド
野性型MDR1発現レトロウイルスベクタープラスミドpHaMDRは、Nature Biotechnology 12:694−698(1994)に記載されたものを用いた。
(3)MDR1レトロウイルスの作成
本発明に用いた野性型MDR1発現レトロウイルスHaMDRのレトロウイルス液は、pHaMDRプラスミドをマウスのamphotropic retrovirus packaging cell lineであるPA317細胞にリン酸カルシウム法を用いて導入したのちに35ng/mlのビンクリスチンで選択し、さらに得られたビンクリスチン耐性細胞を限界希釈法でクローニングすることによって得られたレトロウイルス産生細胞3P26の培養上清を用いた。3P26細胞については、Clin.Cancer Res.,3:947−954(1997)に記載されている。
3P26細胞の培養上清を集めて、これを0.45マイクロメーターのフィルターでろ過してレトロウイルス液とした。
(4)MCF−7/MDR細胞及びMDA−MB−231/MDR細胞の調製
HaMDRレトロウイルス液をヒト乳癌細胞MCF−7の培養に加えることにより遺伝子導入を行った。レトロウイルスを添加した細胞を6ng/mlのビンクリスチンで選択し、遺伝子導入細胞を得た。この細胞をMCF−7/MDRと名付けた。また、MDA−MB−231/MDR細胞をMCF−7/MDR細胞と同様の方法で調製した。
(5)SW620−14細胞の調製
大腸がん細胞株SW620細胞を限界希釈法で作製した。具体的には、96−well plate(IWAKI社製)に1個/wellになるように大腸がん細胞株SW620細胞をまき、細胞が増えてきたwellの細胞のみ、24−well plate(IWAKI社製)に移して培養した。細胞が増えた後、さらに100mm−dish(IWAKI社製)に移して培養した。このようにして得た各クローンについて、P−糖タンパク質を高発現しているクローンをFACSで確認し、P−糖タンパク質を高発現するクローン14を得た。この細胞をSW620−14細胞と名付けた。なお、FACSの実施方法は、前述15ページ8行目から記載されている方法に準じて行った。
実施例1(内因性P−糖タンパク質発現抑制剤のスクリーニング)
P−糖タンパク質を高発現している大腸癌由来のHCT−15細胞(Developmental Therapeutics Program、National Cancer Institute、National Institutes of Health、Bethesda、MD、USAより入手)、大腸癌由来のSW620細胞(Developmental Therapeutics Program、National Cancer Institute、National Institutes of Health、Bethesda、MD、USAより入手)において、P−糖タンパク質発現量を減少する薬剤のスクリーニングをウエスタンブロット法で行った。7%ウシ胎児血清を含むDMEM培地にRas阻害剤(ファルネシル転移酵素阻害剤)FTI−277(EMD Bioscience社製)、MEK阻害剤 U0126(Cell Signaling Technology社製)、Hsp90阻害剤17−AAG(17−(allylamino)−17−demethoxygeldanamycin;Almone labsより購入)PI3K阻害剤 LY294002(2−(4−morpholinyl)−8−phenyl−1(4H)−benzopyran−4−one;Merck Calbiochem社製)又はmTOR阻害剤rapamycin(23,27−epoxy−3H−pyrido[2,1−c][1,4]oxaazacyclohen−triacontine;Sigma社製)を添加して、HCT−15細胞又はSW620細胞を12時間培養した。細胞の培養は、初期細胞数を、それぞれHCT−15:30万個/6cmシャーレ、SW620:50万個/6cmシャーレとし、炭酸ガス濃度:5%、温度:37℃で培養した。12時間培養した後に、各薬剤を添加して培養した後のP−糖タンパク質発現量を抗P−糖タンパク質抗体(Zymed社製、商品名:Multidrug Resistance 1+3(MDR,p−glycoprotein)(Host:Mouse,Clone:C219))を用いたウエスタンブロット法で調べた。薬剤を添加せず培養したものをコントロールとした(薬物未添加7%ウシ胎児血清を含むDMEM培地)。各レーンには各々10μgのタンパク質を電気泳動した。結果は図1に示す。なお、タンパク質の定量は、ブラッドフォード法(Bio−Radプロテインアッセイ染色液)で行った。より具体的には、培養後の細胞をスクレーパーを用いて回収し、遠心(5,000rpm x 3分)によりペレットダウンした。細胞ペレットに0.2%NP−40を含むlysis bufferを加え、5分おきにボルテックスをしながら、合計30分間氷上にて細胞膜および細胞質画分を可溶化した。そして遠心(15,000rpm x 15分)した上清をサンプルとし、蛋白の定量を行った。
Ras阻害剤(ファルネシル転移酵素阻害剤)FTI−277又はMEK阻害剤U0126の存在下で、HCT−15細胞及びSW620細胞においてP−糖タンパク質発現量がコントロールの20%以下に減少したが、PI3K阻害剤LY294002やmTOR阻害剤rapamycinの存在下では、HCT−15細胞及びSW620細胞ともにP−糖タンパク質発現は抑制されていなかった(図1)。
Ras阻害剤又はMEK阻害剤の添加によって、内因性に発現しているP−糖タンパク質の発現量が顕著に減少した。Ras阻害剤及びMEK阻害剤には、P−糖タンパク質発現抑制効果があることがわかった。
実施例2(MEK阻害剤U0126による経時的なP−糖タンパク質の発現抑制)
調整例1に記載の方法と同じ調整により得られた内因性P−糖タンパク質を発現しているHCT−15細胞、SW620細胞、及び外因性P−糖タンパク質を発現しているMCF−7/MDR細胞、MDA−MB−231/MDR細胞のP−糖タンパク質発現量に及ぼすMEK阻害剤U0126の抑制効果を、実施例1と同様の方法で、経時的に試験した。
具体的には、7%ウシ胎児血清を含むDMEM培地に、最終濃度が10μMとなるようにMEK阻害剤U0126を添加して、0〜16時間培養した後、P−糖タンパク質発現量をウエスタンブロット法で確認した。結果は図2に示す。
MEK阻害剤U0126存在下で、HCT−15細胞及びSW620細胞におけるP−糖タンパク質発現量は4〜8時間後にコントロールの10〜20%に減少した。また、同様にU0126存在下でMCF−7/MDR細胞、MDA−MB−231/MDR細胞におけるP−糖タンパク質発現量は8〜12時間でコントロールの10%以下に減少した。なお、MDR1 mRNAの発現量に変化は認められなかった。
MEK阻害剤U0126を、内因性P−糖タンパク質を発現しているHCT−15細胞及びSW620細胞に添加した結果、経時的にP−糖タンパク質の発現量が減少した。4〜8時間という短時間で、顕著にP−糖タンパク質の発現量が減少することが判明した。また、MEK阻害剤U0126を、P−糖タンパク質遺伝子であるMDR1遺伝子を導入し外因性のP−糖タンパク質を発現するMCF−7/MDR細胞及びMDA−MB−231/MDR細胞に添加した場合にも、8〜12時間後には、P−糖タンパク質の発現量が顕著に減少した。
MEK阻害剤U0126は、これまでに知られているP−糖タンパク質発現抑制剤と比較して、最も短時間にP−糖タンパク質抑制効果を示した。
実施例3(MEK阻害剤PD098059による経時的なP−糖タンパク質の発現抑制)
U0126とは作用機作の異なるMEK阻害剤PD098059(Cell Signaling Technology社から購入;English,J.et al.(1999)Exp.Cell Res.253,255参照)を用いて、内因性P−糖タンパク質を発現しているHCT−15細胞、SW620細胞、及び外因性P−糖タンパク質を発現しているMCF−7/MDR細胞、MDA−MB−231/MDR細胞のP−糖タンパク質発現量に及ぼすMEK阻害剤PD098059の抑制効果を、実施例1と同様の方法で、経時的に試験した。
具体的には、7%ウシ胎児血清を含むDMEM培地に、最終濃度が50μMとなるようにMEK阻害剤PD098059を添加して、8時間又は12時間培養した後、P−糖タンパク質発現量をウエスタンブロット法で確認した。結果は図3に示す。
いずれの細胞においても、MEK阻害剤PD098059存在下で培養すると、8又は12時間後のP−糖タンパク質発現量はコントロールの10〜20%に減少した。
MEK阻害剤U0126とは作用機作の異なるMEK阻害剤PD098059によっても、同程度の時間でP−糖タンパク質の発現量が減少することが判明した。従って、これらの薬物は、強力なP−糖タンパク質発現抑制剤として有用である。これらのMAPKシグナル系阻害剤は非常に短時間でP−糖タンパク質の発現を低下させ、P−糖タンパク質による抗癌剤耐性を克服することが可能である。
実施例4(MAPKシグナル伝達系遺伝子siRNAによるP−糖タンパク質発現抑制)
MAPKシグナル伝達系遺伝子であるMEK1及び2、ERK1及び2、RSK1及び2及び3のsiRNAを用いて、MAPKシグナル伝達系遺伝子がノックダウンすることによるP−糖タンパク質発現抑制効果をウエスタンブロット法で試験した。細胞には、内因性P−糖タンパク質を発現しているHCT−15細胞、SW620細胞、及び外因性P−糖タンパク質を発現しているMCF−7/MDR細胞、MDA−MB−231/MDR細胞を用いた。これらの細胞は、実施例1または実施例2と同様にして入手した。
7%ウシ胎児血清を含むDMEM培地に、HCT−15細胞及びMCF−7/MDR細胞は20万個/6cmディッシュ(未コーティングの培養用ディッシュ、旭テクノグラス社製)、SW620細胞及びMDA−MB−231/MDR細胞は30万個/6cmディッシュとなるようにまいて、一晩培養後(約16時間)、Control siRNA(QIAGEN;商品名:Control(non−silencing)siRNA、型番:1022076)あるいはMEKI siRNA(QIAGEN;商品名:Hs_MAP2K1_6_HP Validated siRNA、型番:S100300699)、MEK2 siRNA(QIAGEN;商品名:Hs_MAP2K2_5_HP Validated siRNA、型番:S102225090)、ERK1 siRNA(Cell Signaling Technology;商品名:SignalSilence p44 MAPK siRNA(Human Specific)、型番:6436)、ERK2 siRNA(Cell Signaling Technology;商品名:SignalSilence Pool p42 MAPK siRNA(Human Specific)、型番:6391)、RSK1 siRNA(QIAGEN;商品名:Hs_RPS6KA1_10_HP Validated siRNA、型番:S102223067)、RSK2 siRNA(QIAGEN;商品名:Hs_RPS6KA2_9_HP Validated siRNA、型番:S102224999)、RSK3 siRNA(QIAGEN;商品名:Hs_RPS6KA3_6_HP Validated siRNA、型番:S100288197)を、最終濃度が各々25nMあるいは50nMとなるように調製し、遺伝子導入用カチオン性脂質(商品名「Lipofectamine(登録商標)2000Reagent」、Invitrogen社製)を製品添付書に記載の方法に従って混合し各細胞に添加した。添加後、さらに5%炭酸ガス培養器で37℃、48時間培養し、P−糖タンパク質発現量をウエスタンブロットで調べた。結果は図4に示す。図4の各レーンに対応する細胞に対するsiRNA添加量は、それぞれ次の通りである。すなわち、左から1レーン目(Cont.)は最終濃度50nMのControl siRNAを添加、2レーン目(MEK左)は最終濃度12.5nMのMEK1 siRNAおよび最終濃度12.5nMのMEK2 siRNAを混合して(siRNAの最終濃度としては25nM)添加、3レーン目(MEK右)は最終濃度25nMのMEK1 siRNAおよび最終濃度25nMのMEK2 siRNAを混合して(siRNAの最終濃度としては50nM)添加、4レーン目(ERK左)は最終濃度12.5nMのERK1 siRNAおよび最終濃度12.5nMのERK2 siRNAを混合して(siRNAの最終濃度としては25nM)添加、5レーン目(ERK右)は最終濃度25nMのERK1 siRNAおよび最終濃度25nMのERK2 siRNAを混合して(siRNAの最終濃度としては50nM)添加、6レーン目(RSK左)は最終濃度8.3nMのRSK1 siRNA、最終濃度8.3nMのRSK2 siRNAおよび最終濃度8.3nMのRSK3 siRNAを混合して(siRNAの最終濃度としては25nM)添加、7レーン目(RSK右)は最終濃度16.7nMのRSK1 siRNA、最終濃度16.7nMのRSK2 siRNAおよび最終濃度16.7nMのRSK3 siRNAを混合して(siRNAの最終濃度としては25nM)添加した。
MEK1/2 siRNAを導入した細胞ではコントロールと比べていずれもP−糖タンパク質発現量はほとんど差がなかったが、ERK1/2 siRNAを導入した細胞ではコントロールと比べてP−糖タンパク質発現量は用量依存的に約50%前後に減少した。また、RSK1/2/3 siRNAを導入した細胞ではコントロールと比べてP−糖タンパク質発現量が用量依存的に10〜20%に減少した。MAPKシグナル伝達系のsiRNA、とくにRSK1 siRNAは、非常に効率よくP−糖タンパク質の発現を低下させることが示された。
内因性BCRPを発現しているヒト大腸癌HT−29細胞及びKM12細胞、ヒト非小細胞肺がんNCI−H460細胞及びA549細胞、ヒト卵巣癌OVACAR−5細胞のBCRP発現量に及ぼすMEK阻害剤U0126の抑制効果を、経時的に試験した。
BCRPを高発現しているヒト大腸癌由来のHT−29細胞及びKM12細胞、(各々Developmental Therapeutics Program,National Cancer Institute,National Institute of Health,Bethesda,MD,USAより入手)、ヒト非小細胞肺がんNCI−H460細胞及びA549細胞(各々Developmental Therapeutics Program,National Cancer Institute,National Institute of Health,Bethesda,MD,USAより入手)、ヒト卵巣癌OVACAR−5細胞(Developmental Therapeutics Program,National Cancer Institute,National Institute of Health,Bethesda,MD,USAより入手)のBCRP発現量に及ぼすMEK阻害剤U0126の抑制効果を、経時的に試験した。
具体的には、7%ウシ胎児血清を含むDMEM培地に10μMのMEK阻害剤U0126(Cell Signaling Technology社製)を添加して、各細胞を8時間又は12時間培養した。細胞の培養は、初期細胞数を、それぞれHT−29:20万個/6cmシャーレ、KM12:20万個/6cmシャーレ、NCI−H460:20万個/6cmシャーレ、A549:20万個/6cmシャーレとし、OVACAR−5:20万個/6cmシャーレ炭酸ガス濃度:5%、温度:37℃で培養した。8時間又は12時間培養した後に、各薬剤を添加して培養した後のBCRP発現量を抗BCRP抗体(Chemicon International社製、商品名:BXP−21)を用いたウエスタンブロット法で調べた。各レーンには各々10μgのタンパク質を電気泳動した。結果は図5に示す。
なお、タンパク質の定量は、ブラッドフォード法(Bio−Rad プロテインアッセイ染色液)で行った。より具体的には、培養後の細胞をスクレーパーを用いて回収し、遠心(5,000rpm x 3分)によりペレットダウンしました。細胞ペレットに0.2% NP−40を含むlysis bufferを加え、5分おきにボルテックスをしながら、合計30分間氷上にて細胞膜および細胞質画分を可溶化した。そして遠心(15,000rpm x 15分)した上清をサンプルとし、蛋白の定量を行った。
また、MEK阻害剤U0126の効果を、p44/p42ERKのリン酸化状態を指標として判定した。結果は図5に示す。なお、図5では、GAPDH(Glyseraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)の発現量をも示した。
MEK阻害剤U0126存在下、ヒト大腸癌細胞、ヒト非小細胞肺がん細胞及びヒト卵巣癌細胞において、12時間後にBCRP発現量が減少した。
MEK阻害剤を用いてMAPKシグナル伝達系を阻害することによって、BCRPが発現抑制されることが示された。
実施例5(パクリタキセルに対する感受性の増大)
内因性P−糖タンパク質を発現している大腸がん細胞HCT−15(1×10個/60mm−dish)、調整例1で得たSW620−14(2×10個/60mm−dish)、外因性P−糖タンパク質を発現させた乳がん細胞MCF−7/MDR(1×10個/60mm−dish)、MDA−MB−231/MDR(2×10個/60mm−dish)を16時間培養後、10μmol/L U0126(Cell Signaling Technology社製)を添加した。24時間毎にU0126含有培地を交換しながら、合計72時間培養した。これらの細胞のうち、特に記載のないものについては、実施例1または実施例2と同様にして入手した。
各細胞において予めもとめたパクリタキセルに対するIC50濃度(50%増殖阻害濃度)、すなわち、HCT−15細胞には100nM、SW620−14細胞には5nM、MCF−7/MDR細胞には4nM、MDA−MB−231/MDR細胞には800nMの濃度の0倍、1倍、3倍濃度のパクリタキセルを、10μmol/L U0126と共に添加し、さらに24時間培養した。コントロール群は、U0126不含培地で同様に72時間培養後、パクリタキセルのみを24時間処理した。パクリタキセルに対するIC50濃度(50%増殖阻害濃度)は、具体的には、細胞増殖阻害試験にて調べた。それぞれの細胞を12−well plate(IWAKI社製)に5000個/ml/ウェルでまき、続いてメディウムで各濃度に希釈した薬剤をwellあたり1ml加えた。このプレートを5%炭酸ガス培養器で37℃、5日間で培養した。5日後、リン酸緩衝バッファーで細胞を洗浄後、0.5mlのトリプシン−EDTAで細胞をはがしメディウム1mlで懸濁し、9mlのセルパック希釈液(東亞医用電子)をいれたビーカーに各ウェルの細胞液をそれぞれ加え、Sysmex CDA−500自動細胞数計測装置(東亞医用電子)にて細胞数を計測した。その結果として、細胞数を50%に減少させるパクリタキセル濃度(IC50)を求めた。
細胞回収後、細胞膜および細胞質画分を可溶化し、ウエスタンブロット法によりP−糖タンパク質、PARP(ポリ ADP リボースポリメラーゼ)の切断断片、GAPDHの発現変化を確認した。ウエスタンブロット法において、それぞれのタンパク質を検出するために使用した抗体は、P−糖タンパク質について抗Multidrug Resistance 1+3モノクローナル抗体(C219)(Zymed社製)、PARPについて抗PARP p85 fragmentポリクローナル抗体(Promega社製)、GAPDHについて抗Glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase モノクローナル抗体(Chemicon International社製)を使用した。
PARPは、アポトーシスの実行本体であるCaspase−3の基質である。抗がん剤などによりアポトーシスシグナルが活性化すると、Caspase−3が活性化し、PARPを切断する。本実験では、アポトーシスシグナル伝達の指標として、PARPの切断断片の発現を確認した。結果を図6に示す。
図6に示されるように、MEK阻害剤により、がん細胞におけるパクリタキセルに対する感受性が増大することが確認された。
実施例6(P−糖タンパク質の蛍光基質Rhodamine123の取り込み量の増加)
HCT−15(1×10/60mm−dish)、SW620−14(2×10/60mm−dish)、MCF−7/MDR(1×10/60mm−dish)、MDA−MB−231/MDR(2×10/60mm−dish)細胞(これらの細胞は、実施例5と同様にして入手した。を、実施例5と同様に10μmol/L U0126含有培地で72時間培養した。コントロール群は、U0126不含培地で同様に72時間培養した。細胞回収後、細胞数を測定し、1×10個/mLになるように細胞懸濁液を培地で調製した。細胞懸濁液に、最終濃度が300nmol/LになるようにRhodamine123(Sigma社)を加えた。Rhodamine123を取り込ませないコントロールは、培地のみとした。それらを37℃で20分間培養してRhodamine123を細胞内に取り込ませた後、遠心して細胞を回収し、氷冷したPBSで細胞を2回洗浄した。アイソフローで細胞を再懸濁し、FACSで測定した。FACSではRhodamine123の輝度を測定することにより、細胞内に取り込まれたRhodamine123を測定できる。結果を図7に示す。
図7に示されるように、MEK阻害剤により、がん細胞におけるP−糖タンパク質の蛍光基質Rhodamine123の取り込み量が増加することが確認された。
本発明によれば、P−糖タンパク質発現抑制剤を提供できる。また、本発明によれば、BCRP発現抑制剤を提供できる。
上記(1)に記載のP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤を含有してなる耐性獲得が抑制された抗癌剤は、抗癌剤に対して耐性を獲得した癌に対しても、抗癌剤の薬効回復が期待でき有効な癌化学療法が可能となる。また、耐性を抑制できるため、抗癌剤の投薬量を減することができ副作用をも抑制した癌化学療法が可能となる。さらに、先天的あるいは後天的に、P−糖タンパク質またはBCRPを過剰に発現していることにより抗癌剤による癌治療が有効でない患者に対しても、癌化学療法が可能となる。
また、上記(1)に記載のP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤の有効量と抗癌剤の有効量とを投与することを特徴とする、抗癌剤に対する耐性を抑制し癌治療効果を高める方法を提供する。
上記(1)に記載のP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤を含有してなる抗癌剤耐性抑制剤は、抗癌剤に対して耐性を獲得した又は獲得しうる癌に対して投与することにより、抗癌剤の薬効回復し有効な癌化学療法が可能となる。
上記(1)に記載のP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤を含有してなる抗癌剤耐性抑制剤と抗癌剤を組み合わせてなる癌治療剤は、抗癌剤に対して耐性を獲得した癌に対して投与することにより、抗癌剤の薬効回復に有効な癌化学療法が可能となる。また、耐性を抑制できるため、抗癌剤の投薬量を減することができ副作用をも抑制した癌化学療法が可能となる。さらに、先天的あるいは後天的に、P−糖タンパク質またはBCRPを過剰に発現していることにより抗癌剤による癌治療が有効でない患者に対しても、癌化学療法が可能となる。
さらに、本発明によれば、上記(1)に記載のP−糖タンパク質発現抑制剤またはBCRP発現抑制剤を含有してなる抗癌剤の有効量を投与することによる、抗癌剤耐性獲得を抑制し癌を治療する方法を提供できる。
本発明によれば、Ras、Raf、MEK、ERKまたはRSK阻害活性を指標として、P−糖タンパク質発現抑制剤を得ることが可能となる。また、本発明によれば、Ras、Raf、MEK、ERKまたはRSK阻害活性を指標として、BCRP発現抑制剤を得ることが可能となる。

Claims (18)

  1. MAPK系シグナル伝達阻害剤を含有してなるP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤。
  2. MAPK系シグナル伝達阻害剤が、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現を阻害する物質またはMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性を阻害する物質である、請求項1に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤。
  3. MAPK系シグナル伝達阻害剤が、Ras阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤およびRSK阻害剤から選択される1種又は2種以上である請求項1または2に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤。
  4. MAPK系シグナル伝達阻害剤が、
    (a)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質の活性を阻害する低分子化合物、
    (b)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質の発現を阻害する低分子化合物、
    (c)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNA及び
    (d)Rasタンパク質、Rafタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質またはRSKタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチドから選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤。
  5. Ras、Raf、MEK、ERKまたはRSK阻害活性を指標として、P−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤をスクリーニングする方法。
  6. 請求項1に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤を含有してなる耐性獲得が抑制された抗癌剤。
  7. 請求項1に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤を含有してなる抗癌剤耐性抑制剤。
  8. MAPK系シグナル伝達阻害剤が、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現を阻害する物質またはMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性を阻害する物質である、請求項7に記載の抗癌剤耐性抑制剤。
  9. MAPK系シグナル伝達阻害剤が、Ras阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤およびRSK阻害剤から選択される1種又は2種以上である請求項7または8に記載の抗癌剤耐性抑制剤。
  10. 請求項1に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤と抗癌剤とを組み合わせてなる癌治療剤。
  11. MAPK系シグナル伝達阻害剤が、MAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の発現を阻害する物質またはMAPK系シグナル伝達に関与するタンパク質の活性を阻害する物質である、請求項10に記載の癌治療剤。
  12. MAPK系シグナル伝達阻害剤が、Ras阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤およびRSK阻害剤から選択される1種又は2種以上である請求項10または11に記載の癌治療剤。
  13. 抗癌剤が、塩酸ドキソルビシン、ダウノマイシン、塩酸エピルビシン、アンスラサイクリン類、ビンカアルカロイド類およびタキサン類から選択される請求項10〜12のいずれかに記載の癌治療剤。
  14. MAPK系シグナル伝達阻害剤の有効量を投与することを特徴とする、P−糖タンパク質またはBCRPの発現を抑制する方法。
  15. MAPK系シグナル伝達阻害剤が、Ras阻害剤、Raf阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤またはRSK阻害剤から選択される1種又は2種以上である請求項4に記載のP−糖タンパク質またはBCRPの発現を抑制する方法。
  16. 請求項1に記載のP−糖タンパク質またはBCRP発現抑制剤を含有してなる抗癌剤の有効量を投与することによる、癌を治療する方法。
  17. 抗癌剤耐性獲得を抑制して癌を治療するものである、請求項16に記載の方法。
  18. 抗癌剤の標的癌細胞からの排出を抑制して癌の治療効果を高めるものである、請求項16に記載の方法。
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