JPS6261370B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は板材に精度のよい穴を形成する方法に
関する。 従来、板材に穴を加工する場合、切削による方
法あるいはプレスによる打抜き加工などが行なわ
れていた。しかし切削による方法は、精度のよい
穴を加工することができるが、切屑の処理が面倒
であり、加工時間が長いので大量生産には適さな
い、という欠点があつた。またプレスによる打抜
き加工は量産性には優れているが、通常の打抜き
ではポンチとダイスのクリアランスを大きくとる
ため、せん断面の他に破断面が発生し円筒度の良
好な穴加工が出来なかつた。したがつて、打抜い
た穴にシヤフト、ピン類を板面と垂直に挿入ある
いは圧入する必要がある場合には適さない。 これに対して精密打抜きを行なえば、量産性を
そこなうことなく100％せん断面を有する円筒度
のすぐれた穴を加工することができるが、板押え
圧および逆圧の付加ができる高精度で高価な特殊
プレスが必要である上、打抜き工具の寿命が通常
の打抜きに比較して数分の１と低く工具費が高価
になるという欠点があつた。 本発明は上記した従来技術の欠点を除去するた
めに、板材に打抜き加工によつて形成された下穴
に下穴と同等の寸法形状を有する芯金を挿入し、
該芯金を挿入した状態で、前記板材の表面とほぼ
平行な加圧面を有する面押し部で前記下穴の表面
周辺部を板厚方向にのみ加圧して圧縮し、前記板
材の内部材料を前記芯金の方向に流動させること
によつて、打抜き穴の精度を向上するようにした
ものである。 以下本発明を第１図〜第３図に示す実施例によ
つて説明する。 第１図は通常のプレスを使用し、表に示す寸法
諸元の金型で板厚Ｈ＝６mm（熱間圧延鋼板）の板
材１を打抜いた穴の縦断面形状を示す。

【表】 表中のクリアランスは一般にせん断荷重が最小
となるといわれている寸法、すなわち板厚の約20
％とし、工具の寿命が長くなるように決めたもの
である。 このようにして打抜いた穴の内面は、第１図に
示すように、約H₁＝1.5mm長さのせん断面部２と
これに続く約4.5mm長さのテーパ状の破断面部３
とから形成されており、D₀＝19.2φ、Ｄ＝20.2φ
でその円筒度はきわめて悪い。 第２図は第１図に示した通常のプレスで打抜い
た丸穴の内面の円筒度を向上する方法を示す図で
ある。 第２図において４はポンチ、６は穴の周辺部を
押圧する面押し部、５はポンチ４の先端に設けら
れた芯金であつて、芯金５の外径は穴抜き用ポン
チと等しく、その先端には穴への挿入を容易にす
るとともに、板材の面押量を調整することによつ
て成形後の円筒度を使用目的に応じて任意に決め
られる（第３図で詳細に説明する）ようにコーナ
アールが設けられている。 次に動作を説明する。 ダイス７の上に穴を打抜いた板材１を置き、ポ
ンチ４の芯金５を穴に挿入した後、ポンチ４の面
押し部６で穴周辺部を押圧する。 このようにすると材料が流動し、穴の破断面部
３は内側に縮少して、せん断面部２の内径寸法に
近づき穴の円筒度を向上することができる。 第３図は第２図で示した実施例（D₁＝29.8φ、
D₂＝19.17φ、D₃＝17φ、h₁＝５、h₂＝2.5）にお
ける板材（Ｈ＝６）上面の面押量と穴の円筒度と
の関係を示したものであつて、この場合板材上面
を約0.43mmだけ圧縮すれば円筒度が０になり精度
のよい穴を得ることができる。 破断面部３がせん断面部２より若干大きい方が
よい場合（たとえばピンを挿入する穴の場合）に
は面押量を0.43mm以下に選び、逆に破断面部３の
下部がせん断面部２より若干小さい方がよい場合
（たとえばピンを圧入する穴の場合）には面押量
を0.43mm以上にして材料の一部を芯金５のコーナ
アール部に逃がす。このように面押量は穴の使用
目的に応じて適当に選択すればよい。 なお第３図に示した面押量と円筒度との関係は
板材の材質、打抜き穴の加工諸元、面押しの面
積、面押し部の形状などによつて異なるため、加
工時に予め求めておく必要がある。 本実施例においては芯金５の径を穴抜き用ポン
チの外径と同一寸法にしたが、多少大きくてもま
た小さくても同様の効果が得られる。芯金５の先
端のコーナアールは加工条件によつては（たとえ
ば板の位置決め精度が良好で、ピンを挿入する穴
を加工する場合）なくてもよい。 また、芯金５を長くし、ダイス７側に穴を穿設
し、その中に芯金５の先端を挿入するようにして
もよい。このようにすると、芯金が穴の全長にわ
たつて接触するので、全長でなめらかな面を有す
る穴が得られる。 また、ダイス７にＶ形（あるいは半円形）の突
起をリング状（板材１の穴の周辺部に穴と同心
状）に形成すれば、面押し部６で板材１を押圧し
たとき破断面部３の材料が芯金側へ流動するのを
促進するという効果がある。 なお本実施例では芯金５をポンチ４に設けた
が、ダイス７に設けてもよい。 また穴は丸形として説明したが、本発明は丸形
以外の形状たとえば長孔の加工にも適用できる。 以上詳細に説明したように本発明によれば、板
材に打抜き加工によつて形成された下穴に、下穴
と同等の寸法形状を有する芯金を挿入し、該芯金
を挿入した状態で、前記板材の表面とほぼ平行な
加工面を有する面押し部で前記下穴の表面周辺部
を板厚方向にのみ加圧して圧縮するようにしたの
で、穴内面に材料を積極的かつ効果的に流動させ
ることになり、わずかな圧縮量で打抜き穴の寸法
精度を向上させることができる効果を奏する。そ
してこの効果により、通常のプレス機械を用いて
順送り加工することによつて精度のよい穴を量産
することができたり、さらに工具寿命も精密打抜
きと比較して数倍長くなる等の数々の二次的効果
が生まれる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の打抜き加工によつて作られた穴
を示す縦断面図、第２図は本発明の一実施例を示
す説明図、第３図は第２図で示した実施例におけ
る面押量と円筒度との関係を示す図である。 １：板材、２：穴のせん断面部、３：穴の破断
面部、５：芯金。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 板材に打抜き加工によつて形成された下穴
   に、該下穴と同等の寸法形状を有する芯金を挿入
   し、該芯金を挿入した状態で、前記板材の表面と
   ほぼ平行な加圧面を有する面押し部で前記下穴の
   表面周辺部を板厚方向にのみ加圧して圧縮し、前
   記板材の内部材料を前記芯金の方向に流動させ、
   前記下穴の寸法精度を向上させることを特徴とす
   る打抜き穴の精度向上法。