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JPH1161209A - 貴金属微粒子の分散体及びその製造方法、並びに分散体を利用した構造体デバイス及びその製造方法 - Google Patents

貴金属微粒子の分散体及びその製造方法、並びに分散体を利用した構造体デバイス及びその製造方法

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Publication number
JPH1161209A
JPH1161209A JP9220521A JP22052197A JPH1161209A JP H1161209 A JPH1161209 A JP H1161209A JP 9220521 A JP9220521 A JP 9220521A JP 22052197 A JP22052197 A JP 22052197A JP H1161209 A JPH1161209 A JP H1161209A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fine particles
noble metal
gold
dispersion
plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9220521A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasutsuna Mori
康維 森
Keitaro Nakamura
圭太郎 中村
Takao Fukuoka
隆夫 福岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Arkray Inc
Original Assignee
KDK Corp
Kyoto Daiichi Kagaku KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KDK Corp, Kyoto Daiichi Kagaku KK filed Critical KDK Corp
Priority to JP9220521A priority Critical patent/JPH1161209A/ja
Publication of JPH1161209A publication Critical patent/JPH1161209A/ja
Pending legal-status Critical Current

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安定性に優れ且つ高濃度の貴金属微粒子を含
有しうる貴金属微粒子の分散体を提供する。 【解決手段】 貴金属微粒子と板状微粒子との複合ゾル
は、板状微粒子を分散させた分散液中で貴金属微粒子を
生成させることによって得る。また、当該複合ゾルをゲ
ル化してゲルを得る。このようにして得られる複合ゾル
及びゲルは安定性に優れる貴金属微粒子の分散体であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金コロイドのよう
な分散体において貴金属微粒子を安定に分散させておく
ための技術に関する。より詳しくは、貴金属微粒子の安
定な分散体と、その分散体の製造方法と、その分散体を
使用した構造体デバイスと、そのデバイスの製造方法と
に関する。
【0002】
【従来の技術】Faradyが黄リンを還元剤として金コロイ
ドを生成したのを始め(M. Farady, Philos. Trans. R.
Soc. London, Ser. A, 147, 145(1857))、数多くの金
微粒子の作製方法が報告されている。Turkevichらはク
エン酸ナトリウムやアセトンジカルボン酸(以下ADCAと
略す)を還元剤とした詳細な研究を残し、クエン酸は反
応液中でまずADCAに酸化された後、金錯体の還元に与る
とした(J. Turkevich,P.C. Stevenson, J. Hillier,
J. Farady, Soc. Disc., 11, 55(1951))。
【0003】クエン酸ナトリウムを用いては単分散微粒
子の粒径の制御が行われた(G. Frens, Nature(Physica
l Sci.), 241, 20(1973))。ADCAを用いて金微粒子の生
成反応が追跡された(三宅義和,牟田哲也,石塚勝也,白
石智之,岩崎仁,森康維, 化学工学論文集, 21(5), 929(1
995))。ADCAに対するクエン酸の影響も調べられた(森
康維,村尾義尚,三宅義和, 粉体工学会誌, 33, 199(199
6))。溶液中での貴金属微粒子の調製や特性は総説にま
とめられている(戸島直樹,山地由美, 材料科学, 31, 2
65(1994))。最近、金微粒子の詳しい解説がまとめられ
た(黒川洋一,細谷洋介, 表面, 34(2), 100-106(199
6))。
【0004】また成書にも金微粒子の生成方法は記載さ
れている(M. A. Hayat Ed. "Colloidal Gold" vol. 1
and vol. 2, Academic Press Inc., 1984、横田貞記,藤
森修編, 「イムノゴールド法」, ソフトサイエンス社,
1992)。
【0005】金コロイドの作製方法は種々知られている
が、大別すると金の錯体を還元剤で還元するものと、金
の錯体を光還元するものとに分かれる。還元剤を用いる
ものでは、塩化金(III)酸、塩化金(III)酸ナトリウ
ムなどの水溶液またはそれを含浸させたマトリックス
に、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ADCA、アスコルビ
ン酸、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンなどの還元
剤を加えると、出発物質の仕込比、用いる還元剤の種
類、温度、反応時間に依存して所定の粒径の金微粒子が
得られる。必要に応じてチオール化合物、エチレンジア
ミン四酢酸塩など金微粒子に配位する化合物や界面活性
剤が添加される。
【0006】光還元を行うものでは、塩化金(III)
酸、ジメチル(トリフルオロアセチルアセトナト)金、
ジメチル(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)金の溶
液またはそれを含浸させたマトリックスに光照射して金
微粒子を生成する。金錯体の初期濃度、照射光量、照射
時間、雰囲気をコントロールすると粒径を制御できる。
ゾルゲルマトリックス内に含浸させたジメチル(トリフ
ルオロアセチルアセトナト)金、ジメチル(ヘキサフル
オロアセチルアセトナト)金に、351 nmの光を照射して
得られる金微粒子では、照射時間の超短で粒径の大小が
コントロールされた(N. G. Khlebtsov, V. A. Bogatyr
ev, L. A. Dykman, A. G. Melnikov, J. Colloid Inter
face Sci., 180(2), 436(1996))。またキトサンに含浸
した塩化金酸に253.7 nmの紫外線を照射した金微粒子の
生成機構が調べられた(Y. Yonezawa, I. Kawabata, T.
Sato, Ber. Bunsen-Ges. Phys. Chem., 100(1), 39(19
96))。
【0007】金微粒子の作製は通常は水溶液で行われる
が、センサーや触媒、光学デバイスとして利用するので
あればマトリックスを用いる必要がある。マトリックス
には、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、ポリアクリ
ルアミド、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロー
ス、キトサンなどのポリマーが用いられた。またゾルゲ
ル法によるシリカ系マトリックスも用いられた(S. Sak
ka, SPIE Vol. 1758 Sol-Gel Optics II, 2(1992))。
ガラスをマトリックスとする例はステンドグラスなどの
装飾品として知られている。
【0008】金コロイドを用いるセンサーでは、ポリマ
ーをマトリックスとして固定化された金微粒子の表面増
強ラマン散乱(以下SERSと略す)が研究されている(黒
川洋一,石川浩, 高分子加工, 42(10), 486(1993))。一
方ではゾルゲルマトリックス内で粒径を制御して生成さ
せた金微粒子でSERSが観測された(F. Akbarian, B.S.
Dunn, J. I. Zink, J. Phys. Chem., 99, 3892(199
5))。
【0009】金微粒子は抗体や酵素、あるいはプロテイ
ンAなどのアフィニティリガンドを吸着することが知ら
れており、イムノアッセイ等のバイオ分野で利用され
る。金微粒子の生体分子への吸着性を利用したセンサー
が注目されている。例えば、金微粒子と酵素の複合体を
電極表面に吸着した酵素固定化電極が提案された(矢吹
聡一,水谷文雄, 第48回コロイドおよび界面化学討論会
講演要旨集,P170(1995))。
【0010】そのほかマトリックスに固定化された金微
粒子は、非線形光学材料や触媒、殺菌剤、装飾品原料、
ステンドグラスに利用されており、マトリックスとして
は前述のゾルゲル法によるシリカ系マトリックスやポリ
マーの他、ガラスや繊維集合体が用いられている。スメ
クタイトなど層状ケイ酸塩をマトリックスに用いたもの
では、触媒(特開平04-193343)、殺菌剤(特公平08-16
178)、装飾品原料(特開平04-218603)の例がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】固相であるマトリック
スを有するデバイス(構造体デバイス)は取り扱いが簡
便であるが、反応や検出の際には均一さが重要なファク
ターになる。よって金微粒子は固相に均一に分散する必
要がある。一方では、測定対象物質の濃縮や、信号の集
中のためには金微粒子の濃度が高いことが望ましい場合
がある。
【0012】分散性を高めるため、ゲル化してマトリッ
クスとする前のゾルの凝集を防止する研究がなされてき
た。ナノメートルサイズの微粒子を使用すると分散は比
較的安定化する(横田貞記,藤森修編, 「イムノゴール
ド法」, ソフトサイエンス社,1992)。しかし粒径が制
限され、効果は希薄なゾルに限定される。
【0013】界面活性剤など分散安定化剤の添加は効果
的である(戸島直樹,山地由美, 材料科学, 31, 265(199
4)、特開平09-70527)。しかし特殊な添加物を要するう
え、ゲル化の際に相分離を生じるおそれがある。
【0014】チオールやエチレンジアミンなど配位子の
添加もまた効果的である上に、ゲル化の際にも分散性を
維持できる(T. N. Taylor, T. A. Zawodzinski, Jr.,
Langmuir, 12(5), 1172(1996)、米澤徹,周藤端樹,國武
豊喜, 日本化学会第72回春季年会要旨集, 3B614(199
7))。しかし、これら配位子は金微粒子と強固に結合す
るため、測定対象物質との相互作用を妨害するので、作
製したデバイスの用途が限定される。
【0015】シリカコロイド共存下での金微粒子の生成
は界面を利用した新規な試みで興味深い(白井清,江角
邦男, 日本化学会第72回春季年会要旨集, 3B613(199
7))。しかし有機溶媒を用いなければならない上に、得
られる微粒子の多分散性に改善の余地を残している。
【0016】ガラスに金微粒子を封入したステンドガラ
スや光学素子は、安定ではあるが測定対象物質と金微粒
子との相互作用がないのでセンサーには不向きである。
前述のようにポリマーなど有機基材を用いた例は多数報
告されている(中尾幸道, 材料科学, 31, 286(1994)、
M. Antonietti E. Wenz, Adv. Mater., 7(12),1000(199
5)、Y. Yonezawa, I. Kawabata, T. Sato, Ber. Bunsen
-Ges. Phys. Chem., 100(1), 39(1996))。しかし作製
後の経時変化があること、溶媒によって膨潤変形するこ
とが問題になる。また高分子中の不純物が無視できな
い。さらに励起光によって炭化などの損傷を受ける。
【0017】ゾルゲル法によるエンカプシュレーション
は近年注目され、金微粒子の固定化とセンサーへの応用
も試みられている(F. Akbarian, B. S. Dunn, J. I. Z
ink,J. Phys. Chem., 99, 3892(1995))。しかし、ゾル
ゲル法では物質の拡散定数が小さいなどのマトリックス
の限界をそのまま持ち込んでいる。
【0018】金微粒子作製後にゾルゲル法(後藤和生,
野口晋,山口良雄,出来成人, 高分子論文集, 50, 1796(1
993))を適用し混合によってデバイスを作製しようとい
う試みがある。しかし混合によって希釈されるという欠
点がある。
【0019】なお、金コロイドを固定化する必要性を説
明すれば以下の通りである。コロイドの分散安定化はDL
VO理論で説明される。化学的還元を受けた金微粒子に
は、還元剤アニオンや錯体金属アニオンが吸着され負電
荷を帯びる(M. A. Hayat Ed. "Colloidal Gold" vol.
1 and vol. 2, Academic Press Inc., 1984)。この静
電的な反発ポテンシャルと、ファンデルワールス力等に
依存する引力ポテンシャルとの相対的な大きさのバラン
スが適当であると、総ポテンシャル曲線には極大が現れ
る。微粒子の運動エネルギーがその極大よりも大きくな
ければ、微粒子はその極大を越えて互いに接近すること
ができず凝集が起こらないので系は安定化する。一方、
対イオンの吸着等やイオン強度の増加によって静電的な
反撥ポテンシャルが変化すると、総ポテンシャル曲線の
極大値が減少し、粒子はエネルギー障壁を越えて凝集す
るようになる。一方では複数の微粒子を架橋しうる高分
子の存在によって架橋凝集が発生する。
【0020】したがって金微粒子を液中に分散したまま
利用するのは極めて困難であり、金コロイド標識抗体な
ど少数の例が見られるに過ぎない。金コロイド標識抗体
では抗体タンパク質との複合化によって金微粒子が保護
されている。しかしこの場合、もはや金微粒子が他の化
合物と相互作用を行うことはできない。
【0021】したがって金微粒子を利用するためには、
固相マトリックスに固定化したデバイスを作製する必要
がある。実際に、光デバイス、センサー、触媒等に用い
ようとする試みは諸処に見られる(黒川洋一, 細谷洋
介, 表面, 34(2), 100-106(1996))。金コロイド分散系
で生じることが知られているSERSを微量分析に応用する
ためにはデバイス化する必要が指摘されている(黒川洋
一, 電気化学, 61, 643(1993)))。
【0022】上記のように固定化した金微粒子を利用し
得るデバイスとしては以下のようなものがある。ひとつ
は光機能性物質をマトリックスに分散させた光学素子で
ある。マトリックスは用いる電磁波に対して透明である
必要がある。非線形光学材料や、表面プラズモンセンサ
ーがこれに当てはまる。
【0023】もう一つは、酸や塩基、その他化合物を分
散させた反応触媒と、pH指示薬や酵素などを分散させた
化学センサーである。ここで対象とするデバイスは、流
体中の対象物質がデバイス内または界面近傍に容易に移
動しうる構造を持つことが必要である。例えば化学セン
サーでは、液体中の測定対象物質が、センサー素子内あ
るいは界面近傍に移動し、あらかじめ含ませた化学試薬
と化学的あるいは酵素的に反応して色素あるいは電気化
学活性種を生成するものである。この検出反応によって
生成した色素/電気化学活性種の量を光学的/電気化学
的に検出する。
【0024】金微粒子はSERSのように測定対象物質と相
互作用して信号を発生する。酵素や抗体を吸着しセンサ
ー用の担体となる。これらのデバイス用のマトリックス
に望ましい特性を挙げれば以下の通りである。 ・金微粒子を高度に分散させており、金微粒子の持つ既
知の特性を利用できること。 ・触媒やセンサーとしての用途には、マトリックスが化
学種と金微粒子の相互作用を妨害しないか、しても小さ
いこと。反応や検出時の環境にマトリックスが安定であ
ること。 ・光学素子としての用途には用いる電磁波に対してマト
リックスが透明であること。電磁波にマトリックスが安
定であること。 ・必要に応じて金微粒子が高濃度に集積された分散体が
作製可能であること。 ・任意の形状に成形可能であること。 ・一連のマトリックスの成形加工によっても金微粒子の
分散性が損なわれないこと。 ・一連のマトリックスの成形加工によってもマトリック
スの構造や特性が損なわれないこと。
【0025】しかしながら、これらを兼ね備えたマトリ
ックスはまだ提案されていない。以上、金を例にして説
明したが、他の貴金属についても同様な問題がある。し
たがって、上記のデバイスのマトリックスとして利用す
るのに適した高濃度の貴金属微粒子を固定化した安定な
分散体が要求されている。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意努力
の結果、金微粒子の生成反応を板状微粒子であるスメク
タイトの微粒子の分散系中で行うことにより、安定な金
コロイドを得ることができること、さらに、これをゲル
化することにより金微粒子を安定に固定化したマトリッ
クスを得ることができることを見い出し、そして、この
知見に基づき本発明を完成した。
【0027】すなわち、本発明は、板状微粒子を分散さ
せた分散液中で貴金属微粒子を生成させることによって
得られる、貴金属微粒子と板状微粒子との複合ゾルであ
る、貴金属微粒子の分散体、及び、当該複合ゾルをゲル
化して得られる、貴金属微粒子の分散体を提供する。
【0028】また、本発明は、上記複合ゾルである貴金
属微粒子の分散体の製造方法、すなわち、板状微粒子を
分散させた分散液中で貴金属微粒子を生成させることに
より、貴金属微粒子と板状微粒子との複合ゾルを生成さ
せることを含む、貴金属微粒子の分散体の製造方法を提
供する。さらに、本発明は、上記複合ゾルをゲル化して
得られる貴金属微粒子の分散体の製造方法、すなわち、
上記の製造方法において、さらに、複合ゾルをゲル化す
ることを含む製造方法を提供する。
【0029】上記の分散体及びその製造方法において、
板状微粒子は、好ましくは、スメクタイトの微粒子であ
る。スメクタイトは、好ましくは合成スメクタイトであ
り、さらに好ましくは、合成ヘクトライト又は合成サポ
ナイトである。また、貴金属微粒子は、好ましくは、金
微粒子である。
【0030】さらに、また、本発明は、上記貴金属微粒
子の分散体を利用したデバイス、すなわち、プレート表
面の一部又は全部の領域上に、上記貴金属微粒子の分散
体を有する構造体デバイス、及び、多孔性物質内に、上
記の貴金属微粒子の分散体を有する構造体デバイスを提
供する。また、本発明は、これらのデバイスの製造方
法、すなわち、プレート表面の一部又は全部の領域上
に、上記の複合ゾルを適用し、次いで複合ゾルをゲル化
することにより貴金属微粒子の分散体を得ることを含
む、構造体デバイスの製造方法、及び、多孔性物質に、
上記の複合ゾルを含有させ、その後ゲル化することによ
り貴金属微粒子の分散体を得る、構造体デバイスの製造
方法を提供する。
【0031】上記のデバイス及びその製造方法におい
て、貴金属微粒子は、好ましくは、金微粒子である。な
お、本明細書において、「貴金属微粒子の分散体」とい
う用語は、貴金属微粒子が分散している限りにおいて、
ゾル及びゲル(乾燥ゲルも含む)のいずれの形態のもの
をも包含する意味で用いる。
【0032】
【発明の実施の形態】先ず、貴金属微粒子と板状微粒子
との複合ゾルである貴金属微粒子の分散体について説明
する。
【0033】貴金属微粒子は、金、銀、白金、パラジウ
ムなどの微粒子であり、好ましくは、金微粒子である。
金微粒子の粒径は、水中において少なくとも準安定なコ
ロイドを形成できればよく、その金微粒子を使用するデ
バイスの目的に応じて適宜好ましい粒径を選択できるた
め、特に限定されないが、強いて挙げれば、電子顕微鏡
による観察で測定した平均粒径で、10〜100nm、
より好ましくは20〜80nmである。他の貴金属の微
粒子の場合も同様の観点から粒径を選択することができ
る。
【0034】板状微粒子は、層状無機化合物からなる。
層状無機化合物は、Si四面体、Al八面体等の多面体
が平面状に連なったシート構造が層状に重なった結晶構
造を有する無機化合物であり、層状粘土鉱物及びハイド
ロタルサイトを含むものであって、国際公開パンフレッ
ト第WO 97/16720号及びそこに引用された文献、成書に
詳しく記述されている。例えば、モンモリロナイトであ
るクニミネ工業社のクニピアFなどのスメクタイトを用
いることができる。スメクタイトは好ましくは合成スメ
クタイトである。また自身の分散性が高く不純物の少な
い合成ヘクトライトや、合成サポナイトを特に好ましく
用いることができる。合成ヘクトライトの例としては、
ラポート社のラポナイトXLG、ラポナイトRD、コープケ
ミカル社のルーセンタイトSWNがあげられる。合成サポ
ナイトの例としては、クニミネ工業社のスメクトンSAが
あげられる。
【0035】板状微粒子の粒径は、分散性が十分高けれ
ばよく、特に限定されないが、光散乱法で測定した平均
粒径で、20〜80nmが好ましい。板状微粒子をマト
リックスにしたとき以下の既知の効果が期待され、ま
た、実際に貴金属微粒子の分散体としたときにその効果
が得られることが確認された。 ・化学的に安定である。 ・可視〜近赤外領域で透明である。 ・成膜しやすく成形加工が容易である。 ・多孔質構造体が得られる。 ・多孔質構造は乾燥等の成形加工によっても破壊されな
い。
【0036】すなわち、板状微粒子はそれ自身可視〜近
赤外領域に吸収をほとんど持たず、また粒径が十分小さ
いかあるいは配向させれば透光性の良い固相が得られ
る。板状微粒子は分散性が高く、したがって吸着した物
質も固相中で均一に分散される。また異方性を持つ微粒
子であるため、多孔体が容易に調製できると期待され
る。これらの特性は新たなセンサー用デバイスの基材と
して有利である。
【0037】板状微粒子では次の性質によって多孔体を
作ることができる。ゾルにおいて凝集してカードハウス
構造を取る(M. L. Occelli, J. Lynch, J. V. Sender
s, J. Catalysis, 107, 557-565(1985))。ゾルを凍結
乾燥すると多孔質構造体になる(T. J. Pinnavaia, M.
S. Tzou, S. D. Landau, R. H. Raythatha, H. Raskin,
J. Molecular Catalysis, 27(1-2), 195-212(198
4))。硬い板状粒子なのでウェットゲルのカードハウス
が風乾後も維持され多孔体になる。
【0038】またピラードクレー=層間架橋で多孔体が
得られる(F. Figueras, Catal. Rev. Sci. Eng., 30
(3), 457-499(1988)、山中昭司,触媒,32(1), 9-14(199
0)、M.Ogawa, N. Takahashi, C. Kato, K. Kuroda, J.
Mater. Chem., 4(4), 519-523(1994))。
【0039】膨潤性層状無機化合物であるスメクタイト
は、有望な新素材として近年関心が高まっている(例え
ば、山中昭司,日本化学会第71回秋季年会講演予稿集2V0
7,1996)。特徴をまとめると、 ・イオン交換能があり、しかもあらかじめインターカレ
ートしておいたカチオンの種類と量でイオン交換容量を
制御できる。 ・無限に膨潤し、無機ポリマーと見なせる。 ・2:1型であり層構造がしっかりしている。 ・耐熱性が高い。 ・天然に豊富に存在し、なおかつ合成も可能。 ・可視、紫外領域で透明(シリカよりも光透過性に優れ
る)。 ・絶縁体である。 ・スラリーをデポジットし簡単に膜が作製できる。 ・全粒子の表面積が 800 m2/g と大きい。 ・無機化合物、有機化合物の両方と親和性がよい。 ・化学的に安定。 ・層間に規則性がある。 ・容易に制御構造であるナノコンポジットが得られる。 ・資源として安く、大量にある。 ・イオン交換によるインターカレーションはゆっくりで
も確実に進む。
【0040】このような特徴のため、スメクタイトを用
いることが好ましい。複合ゾルである貴金属微粒子の分
散体は、板状微粒子の水中分散液において、貴金属粒子
を生成させることによって得ることができる。
【0041】例えば、板状微粒子を水中に分散させ、そ
の分散液に貴金属の錯体などの貴金属コロイドの原料と
なる化合物を加え、貴金属微粒子の生成反応を行わせる
ことにより、貴金属微粒子と板状微粒子の複合ゾルを生
成させることができる。また、貴金属コロイドの原料と
なる化合物を含む水溶液に板状微粒子を分散させ、その
分散液において貴金属微粒子の生成反応を行わせること
もできる。
【0042】貴金属微粒子の生成は、従来の技術の欄で
説明したような既知の方法を用いることができる。例え
ば、貴金属の錯体を還元剤で還元する方法、及び、貴金
属の錯体を光還元する方法のいずれも用いることができ
る。
【0043】板状微粒子と貴金属微粒子の好ましい比は
次のように定められる。板状微粒子は、フェースの部分
に負電荷を持つ。エッジの部分にはpHに依存して正電荷
が発生する。このように単位重量あたりのイオン交換量
が決まっている。例えば、合成ヘクトライトではメチレ
ンブルーの吸着量を基準としてカチオン交換容量(CE
C)が求められている。貴金属微粒子は板状微粒子の吸
着性にしたがって、板状微粒子と共に分散していると考
えられる。したがって一定量の板状微粒子が分散させる
貴金属微粒子の量は有限で、pHや共存するイオンに依存
する。分散させる必要のある貴金属微粒子の量と、用い
た板状微粒子の吸着容量を考慮して、好ましい比となる
ように貴金属微粒子の材料や板状微粒子の仕込み比を定
めれば良い。例えば、貴金属微粒子の原材料として塩化
金(III)酸、板状微粒子としてラポナイトXLGを用
いた場合には、板状微粒子の濃度が5g/lであると
き、2×10-3mol/lまでの塩化金(III)酸を仕
込むことができる。
【0044】好ましい製造方法を金微粒子の場合を例に
とって具体的に説明すれば以下の通りである。板状微粒
子は水にあらかじめ良く分散させておく。分散量は、用
いる板状微粒子の種類と、得ようとする分散体によって
好ましい値を定めればよいが、通常には、0.01g/
l〜50g/lである。分散液のpHを適宜調整すれば次
に添加する金錯体や還元剤(これらは多くは酸である)
の解離度が一定になるのでさらによい。例えば、ADCAを
還元剤として用いる場合には、pH7.0〜11.0に調
整する。
【0045】板状微粒子の分散液に、まず金錯体の水溶
液を加える。よく撹拌した後、還元剤を加える。還元剤
の濃度は、クエン酸やADCAの場合、加えた金錯体の濃度
の3倍程度の濃度が選択される。しかし、これに限定さ
れるものではない。
【0046】既知の方法において、反応時の撹拌は粒径
の大きさ、粒径分布に大きな影響を与えることが知られ
ている(P. T. Spicer, W. Keller, S. E. Pratsinis,
J. Colloid Interface Sci., 184, 112(1996))が、板
状微粒子の分散液を用いる場合でも同様である。再現性
よい金微粒子と板状微粒子の複合ゾルを得るためには、
撹拌の方法、撹拌の強さ、撹拌子や撹拌羽の形状を決め
ておくのがよいが、これらは当業者であれば適宜決定で
きることである。
【0047】本発明の貴金属微粒子の分散体は安定性に
優れる。安定性は以下の様にして確認することができる
(金を例にとって説明するが、他の貴金属においても同
様である)。
【0048】実際に板状微粒子の分散系の共存下で金微
粒子を作製し、得られた金微粒子-板状微粒子複合ゾル
における金コロイドの安定性を紫外可視吸光スペクトル
で確かめることができる。
【0049】メンブランフィルター、ポリスチレンプレ
ート上に複合ゾルをデポジットして、ゲルを作製し、ゲ
ルにおいて金微粒子が分散していることを紫外可視吸光
スペクトルと電子顕微鏡で確かめることができる。
【0050】紫外可視吸収スペクトルで金コロイドの分
散状態(安定性)を判定できることを説明すると、以下
の通りである。金コロイドは赤、青、紫を呈す。この着
色は電子のプラズマ振動に起因しプラズモン吸収と呼ば
れる。吸収スペクトルの吸収極大波長と、金微粒子の粒
径の関係はMieやMaxwell Carnettの理論によって説明さ
れる(黒川洋一, 細谷洋介, 表面, 34(2), 100-106(199
6))。最近では厳密な実験から、粒径と吸収極大波長の
関係の実験式が求められた(N. G. Khlebtsov, V. A. B
ogatyrev, L. A. Dykman, A. G. Melnikov, J. Colloid
Interface Sci., 180(2), 436(1996))。このようにス
ペクトルの測定や色調の観察から、金微粒子の粒径の大
きさや凝集による粒径の変化、粒径分布の多分散性を判
定できる(森康維,村尾義尚,三宅義和, 粉体工学会誌,
33, 199(1996))。吸光度は金微粒子の濃度を大まかに
のみ反映している。
【0051】本発明による複合ゾルである貴金属微粒子
の分散体は、別個に調製された貴金属コロイド液と板状
微粒子の分散液を混合して得たゾルに比べ、高濃度の貴
金属微粒子を含有することができる。
【0052】さらに、従来の手法で一般的に混合して得
られたゾルでは、十分に2種類の微粒子を均一に分散し
たゾルを得るのは容易ではないが、本発明で得られる複
合ゾルでは、調製の際に既に十分に均一に2種類の微粒
子が分散している。従来の手法で得られたゾル本発明に
よる複合ゾルの両者の判別には、目視や光学顕微鏡によ
って貴金属微粒子による着色が均一であるかどうかを調
べるのが有効である。本発明による複合ゾルでは、板状
微粒子が「フロキュレーション」と呼ばれる凝集を生じ
ても貴金属微粒子による着色は均一で、貴金属微粒子の
分散性は維持されている。
【0053】なお、板状微粒子の層状無機化合物の層間
に金微粒子がインターカレーションする必要はない。後
記の実施例に用いたラポナイトXLGの複合ゾルでは、板
状微粒子の平均粒径は、実測された金微粒子の粒径とほ
ぼ同等あるいは金微粒子がやや大きい。よってこの実施
例はインターカレーションが生じなくとも効果が得られ
ることを示唆している。
【0054】上記複合ゾルは、上記の特性を損なうこと
なく、塗工および乾燥による成膜が可能である。これら
のゾルから多孔質のゲルが作られる。板状微粒子は異方
性を持つ板状の粒子なのでこれを含む上記複合ゾルは塗
工液として次の利点を持つ。
【0055】塗工液に板状の粒子が含まれると、弾性率
が増加する。この理由として板状粒子の面積に比べマト
リックス層の厚みが小さい場合には、外部からの引張り
変形が、マトリックス内部では剪断変形に変換される可
能性が指摘されている(原崎勇次, 「新版コーティング
工学」, 槙書店, 1978)。
【0056】また板状粒子が凝集して形成する網目構造
は、かき混ぜると簡単に崩れて見かけ粘度が低下する。
しかし放置しておくと時間と共に再び構造を再生し粘度
が増す。この現象はチキソトロピーと呼ばれ、所定の厚
みで所定の領域にコーティングを行う上では有利である
(田中丈之, 「コーティング膜の物性と評価方法(改訂
版)」, 理工出版社, 1993)。
【0057】コーティングの分野では、塗工液の構造化
が行われ塗工性能を向上させている(北原文雄監修,
「分散・凝集の解明と応用技術」, テクノシステム, 19
92)。この構造化は板状微粒子のカードハウス構造に類
似しているが、焼成された粘土鉱物、高分子によって凝
集した粘土鉱物によって行われる。
【0058】次に、上記複合ゾルをゲル化して得られる
貴金属微粒子の分散体について説明する。ゲル化の方法
には、風乾、凍結乾燥、加熱乾燥などの乾燥、架橋その
他の既知の手段を用いることができる。例えば、25〜
80℃の恒温槽中で乾燥するという手段が挙げられる。
【0059】複合ゾルは支持体に塗工、点着するなど
(以下、塗工と総称する)してからゲル化してもよい。
複合ゾルの塗工方法には水系に適用される既知の手段を
用いることができる。なお、上述のように上記複合ゾル
は塗工液として優れた性質を有している。
【0060】支持体としては、ポリスチレンなどのプラ
スチックプレートを用いることができる。複合ゾルは水
系の分散液なので、プラスチックプレート上に点着など
するときにはあらかじめ親水化処理を行っておくのが望
ましい。親水化処理の方法としてはプラズマ処理、紫外
線照射など既知の方法を用いることができる。これらの
一連の処理と、得られる構造体の一般的な概念は特開平
9-105708等に説明されている。ガラスプレートならば、
ガラスが元来親水性なので、親水化処理の必要はない。
【0061】また支持体としては、メンブランフィルタ
ー、繊維集合体などの多孔性物質を選んでも良い。限外
ろ過膜も多孔性物質に含まれるものとする。多孔性物質
中へゾルを含有させ、ゲル化する。
【0062】本発明の構造体デバイスは、上記複合ゾル
をゲル化して得られる貴金属微粒子の分散体を構造体と
して有するデバイスである。構造体とは、貴金属微粒子
を固定化した固相マトリックスを意味する。
【0063】構造体は、デバイスの有するプレートの一
部又は全部の領域上に設けられていてもよいし、デバイ
スの有する多孔性物質内に設けられていてもよい。プレ
ートは上記したようなプラスチックプレートでもガラス
プレートでもよい。多孔性物質は上記したようなメンブ
ランフィルターや線維集合体などである。
【0064】このような構造体デバイスは、それぞれ、
プレート表面の一部又は全部の領域に、上記複合ゾルを
適用し、次いで複合ゾルをゲル化すること、及び、多孔
性物質に、上記複合ゾルを含有させ、その後ゲル化する
ことにより得ることができる。
【0065】本発明の構造体デバイスは、光学素子、化
学センサー等とすることができ、構造体すなわち固相マ
トリックスとして本発明の貴金属微粒子の分散体を用い
ることの他は、既知の光学素子や化学センサーと同様に
構成することができる。
【0066】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明
する。
【0067】
【実施例1】板状微粒子分散系での金コロイドの調製 合成ヘクトライトであるラポナイトXLG(ラポート社
製)の乾燥粉末10 gを容器に取り純水約97 mlを加え、
超音波を照射して分散させた。分散液のpHを0.1 N水酸
化ナトリウム水溶液の約3 mlを加えて10.5に調整した
後、全量を100 mlにし、10 g/lの板状微粒子分散液を調
製した。
【0068】この分散液の30 mlを別の容器に取り 2×1
0-3 mol/lの塩化金(III)酸水溶液の15 mlを加えよく
撹拌した。一定時間加温した後、6×10-3 mol/lのADCA
水溶液の15 mlを加え、栓をして60゜Cの恒温水槽に浸け
た。この反応液の組成は、ラポナイトXLG(pH 10.5) 5
g/l、塩化金(III)酸 5×10-4 mol/l、ADCA 1.5×10-
3 mol/lである。
【0069】塩化金(III)酸は和光純薬社製を、ADCA
はFluka社製を用いた。すべての水溶液は蒸留水をMili-
Q超純水製造装置(ミリポア社製)で処理した純水を用
いて調製した。
【0070】加温後、しばらくすると反応液は赤色を呈
した。光路長が5 mmのハーフセルに反応液を入れ、恒温
セルホルダーTCC-240Aを備えた可視紫外分光光度計UV-1
600(島津製作所製を)でスペクトルの経時変化を測定
した。セルは60゜Cに温調して測定した。
【0071】反応液調製直後から3日後まで、間欠的に
測定したスペクトルを図1に示す。時間の経過と共に約
540 nmに極大を持つ吸収が増大していることがわかる。
この事実から板状微粒子の存在下においても金微粒子の
生成反応が支障なく行えることが立証された。
【0072】
【実施例2】種々の板状微粒子の共存下での金コロイド
の調製 実施例1と同じ操作を、ラポナイトXLGの代わりに合成
ヘクトライトであるラポナイトRD(ラポート社製)を用
いて行った。約560nmに吸収を示す金微粒子を生成でき
た。
【0073】また、天然モンモリロナイトの精製品であ
るクニピアF(クニミネ工業社製)をラポナイトXLGの代
わりに用いた反応液を、60゜Cに温調したスターラー付き
ホットバスで撹拌しながら反応を進行させる他は実施例
1と同じ操作を行って、約530nmに吸収を示す金微粒子
を生成できた。
【0074】また、合成サポナイトであるスメクトンSA
(クニミネ工業製)をラポナイトXLGの代わりに用いた
反応液を、60゜Cに温調したスターラー付きホットバスで
撹拌しながら反応を進行させる他は実施例1と同じ操作
を行って、約530nmに吸収を示す金微粒子を生成でき
た。
【0075】これらの事実から板状微粒子の種類にかか
わらず金微粒子の生成反応が支障なく行えることが立証
された。
【0076】
【実施例3】ゾルの安定性の確認 実施例1と同じ操作を、還元剤ADCAの反応液中の組成
が、5.0×10-4、1.0×10 -3、1.5×10-3、2.0×10-3、2.
5×10-3 mol/lとなるように仕込量を変えて行った。反
応進行時のスペクトルの経時変化を測定した。
【0077】それぞれの最大吸収波長における吸光度の
経時変化を図2にまとめた(白三角:5.0×10-4、黒菱
形:1.0×10-3、黒三角:1.5×10-3、白四角:2.0×10
-3、黒四角:2.5×10-3 mol/l)。ADCAの濃度が高いも
のは早くプラトー域に達する。60゜Cという加温状態にお
いても5000分以上吸光度は低下しなかった。このことは
生成した金微粒子の粒径の変動や金微粒子の増減が少な
いことを意味する。
【0078】以上のように板状微粒子と金微粒子の複合
ゾルの優れた安定性が示唆された。
【0079】
【実施例4】ゾル調製の再現性 実施例1と同じ操作を、塩化金(III)酸の反応液中の
濃度が2.5×10-4 mol/lとなるように仕込み濃度を変え
て行った。実施例1と同様にスペクトルの経時変化を測
定した。
【0080】この操作を三回繰り返した。最大吸収波長
534 nmにおける吸光度の経時変化のグラフ(白四角、黒
菱形、白三角)を、この三つの反応液について重ね書き
し図3として示す。
【0081】グラフから明らかなように板状微粒子の共
存下において金微粒子の生成反応を、再現性よく実施で
きた。
【0082】
【実施例5】板状微粒子分散系での金コロイドの調製 実施例1に記載の方法と同様に、組成がラポナイトXLG
5 g/l、塩化金(III)酸 5×10-4 mol/l、ADCA 1.5×10
-3 mol/lである反応液を調製した。ただし、ラポナイト
XLG分散液は、分散液のpHを7.0、8.9、9.9、10.5に調整
した4種類を準備した。それぞれに対応する4種類の反
応液(F0717-2、F0717-3、F0717-4、N0609と番号付けす
る)をポリプロピレン製のボトルに入れ、60゜Cの恒温水
槽中で一昼夜加温した。
【0083】pHが10未満であるF0717-2、F0717-3、F071
7-4では板状微粒子が低pHや塩の存在下でその形態を取
ることが知られているフロキュレーションを起こしてい
た。しかし容器を軽く振とうするだけで容易に再分散し
た。
【0084】また生成した金コロイドの色調は、板状微
粒子を中和して用いたF0717-2ではややくすんだ赤みを
帯びていた。これに対してアルカリ側で調製したF0717-
4、N0609は鮮やかな赤色を呈していた。これらの色調は
安定で変化しなかった。
【0085】
【参考例1】通常法での金コロイドの調製 純水の30 mlをポリプロピレン製のボトルに取り 2×10
-3 mol/lの塩化金(III)酸水溶液の15 mlを加えよく撹
拌した。一定時間加温した後、6×10-3 mol/lのクエン
酸ナトリウム水溶液の15 mlを加えた。この反応液の組
成は、塩化金(III)酸 5×10-4 mol/l、クエン酸ナト
リウム 1.5×10-3 mol/lである。この反応液をF0715-1
とした。60゜Cの恒温水槽中で一昼夜加温した。
【0086】純水の30 mlをポリプロピレン製のボトル
に取り 2×10-3 mol/lの塩化金(III)酸水溶液の15 ml
を加えよく撹拌した。一定時間加温した後、6×10-3 mo
l/lのADCA水溶液の15 mlを加えた。この反応液の組成
は、塩化金(III)酸 5×10-4 mol/l、ADCA 1.5×10-3
mol/lである。この反応液をF0715-2とした。60゜Cの恒温
水槽中で一昼夜加温した。
【0087】
【実施例6】ゾルの吸収スペクトル 実施例5、参考例1で調製した金微粒子-板状微粒子複
合ゾル(F0717-2、F0717-3、F0717-4、N0609)、金コロ
イド(F0715-2)のスペクトルを、日本分光社製紫外可
視分光光度計V-550でミクロセルを用いて測定した。セ
ルは25゜Cに温調した。
【0088】得られたスペクトルをF0715-2(対照)、F
0717-2(pH 7.5)、F0717-3(pH 8.9)、F0717-4(pH
9.9)、N0609(pH 10.5)について重ね書きし、図4に
示した。それぞれの試料の見かけの最大吸収波長は、52
2、547、540、525、535nmであった。
【0089】板状微粒子を含まないF0715-2の最大吸収
ピークの高さは、他の試料と比べて低かった。またF071
5-2では680nm付近に小さな吸収が現れていた。この長波
長の吸収は凝集した金コロイド粒子に起因するものと考
えられる。他の試料では、長波長領域の吸収は観察され
なかった。
【0090】一昼夜後のゾルのスペクトルは生成した金
コロイドの安定性を反映しており、板状微粒子が存在す
る複合ゾルでは生成した金微粒子の凝集が抑制されてい
ることが示された。
【0091】
【実施例7】金コロイドの容器への付着 実施例5、参考例1で調製した金微粒子-板状微粒子複
合ゾル、金コロイドを一昼夜60゜Cで加温したものの容器
を観察した。
【0092】すると、板状微粒子を含まないF0715-1、F
0715-2では、容器にの内壁に黒色の析出物が見受けられ
た。金の生成量を多くして行った別の実験では、この析
出物は金泥状であったので、金微粒子が器壁に付着、沈
積したものと考えられた。
【0093】板状微粒子との複合ゾルであるF0717-2、F
0717-3、F0717-4、N0609では、このような析出物はほと
んど見られなかった。この事実から、板状微粒子との複
合ゾルでは金微粒子が安定に分散されていることが判明
した。
【0094】
【実施例8】乾燥ゲルの比較 実施例1と参考例1で作製したゾルをガラス瓶に移し、
60゜Cの恒温槽に入れて乾燥ゲル化させた。板状微粒子を
含むゲルは、分散された金微粒子の存在を示す赤色を保
つガラス状の固体であった。一方、板状微粒子を含まな
いゾルを乾燥しても、器壁に茶褐色の染みがつくだけで
ゲルは得られなかった。
【0095】この事実から、板状微粒子との複合ゾルを
ゲル化すると金微粒子が分散されたまま固定化された固
体が得られる可能性が示唆された。
【0096】
【実施例9】表面処理したプラスチックプレート上への
ゾルの点着 ポリスチレンプレートにφ7 mmの穴を開けたマスクをあ
て、大気下、低圧水銀灯で紫外線を照射した。照射の条
件は既報に述べた(大久保章夫,松川公洋,井上弘,福岡
隆夫, 化学工学会第29回秋季大会研究発表講演要旨集N1
05,1996、特開平9-105708)。
【0097】このプレートの円形の親水化パターンに、
実施例5で作製した複合ゾルN0609をデポジットした。
点着はオートピペットで行い、複合ゾルの30、50、60、
80、100、120、150μlを点着した。
【0098】点着した複合ゾルは親水化されたパターン
上にのみ液滴上に保持され、軽い振動を与えてもパター
ンからはみ出して溢失することがなかった。このことは
特開平9-105708で提案された液体保持具などに、本発明
の複合ゾルを塗工などによって利用することができ、し
たがって複合ゾルが有用なデバイスのマトリックスとな
りうる可能性を示している。
【0099】
【実施例10】表面処理したプラスチックプレート上で
のゲルの作製 実施例9で作製した複合ゾルをデポジットしたプレート
を60゜Cの恒温槽に入れ乾燥させ、ゲルを親水パターン上
に形成した構造体を作製した。
【0100】50μl以下の複合ゾルをデポジットしたも
のではゲルの部分に割れが生じた。一方、100μl以上の
複合ゾルをデポジットしたものでは、点着した円形のパ
ターンが歪んだゲルになった。ゲルの出来映えは、複合
ゾルの組成、乾燥などの条件に関係していると考えられ
る。
【0101】この事実を踏まえ、今回の実験ではプラス
チックプレートには80μlをデポジットして特性を調べ
ることにした。実施例5で作製した板状微粒子を含む複
合ゾルF0717-2、F0717-3、F0717-4、N0609の80μlを、
実施例9で示した親水化パターン上に点着し、60゜Cの恒
温槽内で乾燥した。親水化パターン上に半透明の赤色の
膜が形成された。
【0102】親水性パターン上に形成されたこれらの膜
は、プレートを純水中に1分間浸漬しても溶解したり剥
離したりすることがなかった。このことは塗工などによ
って固体に塗工した複合ゾルを、乾燥などによってゲル
化させてデバイスを作製できる可能性を示している。
【0103】
【参考例2】参考例1で作製した板状微粒子を含まない
金微粒子ゾルF0715-1、F0715-2の80μlを、実施例9で
示した親水化パターン上に点着し、60゜Cの恒温槽内で乾
燥した。親水化パターン上に茶褐色の薄膜が付いた固体
が得られた。
【0104】一方、別にラポナイトXLG の5g/l分散液を
調製し、その80μlを実施例9で示した親水化パターン
上に点着し、60゜Cの恒温槽内で乾燥した。親水化パター
ン上に透明で滑らかな膜が形成された。
【0105】親水性パターン上のこれらの膜は、プレー
トを純水中に1分間浸漬しても溶解したり剥離したりす
ることがなかった。
【0106】
【実施例11】ゲルの吸収スペクトル 実施例10と参考例2で作製したゲルの透過吸収スペク
トルを、25゜Cに温調した日本分光社製紫外可視分光光度
計V-550を用いて測定した。レファレンスには、ゲルを
デポジットしていないプラスチックプレートを用いた。
【0107】ゲルのスペクトルをF0715-2(対照)、F07
17-2(pH 7.0)、F0717-3(pH 8.9)、F0717-4(pH 9.
9)、N0609(pH 10.5)について重ね書きし、図5に示
す。板状微粒子を含まないF0715-2では、全く吸収が観
察されないのに比べ、複合ゾルから得られたゲルでは吸
収ピークが維持されていることは特筆に値する。板状微
粒子を含む複合ゾルから得られたゲルの、それぞれの試
料の見かけの最大吸収波長は、F0717-2、F0717-3、F071
7-4、N0609の順に557、550、535、557nmであった。
【0108】吸収が、分散した金微粒子のプラズモンに
よって生じることを考えると、以上の事実は、板状微粒
子を含むゾルから作製されたゲルは、金微粒子を良好な
分散状態のまま固定化していることを実証するものであ
る。
【0109】
【実施例12】ゾルとゲルの吸収スペクトルの比較 実施例6と実施例11で測定したゾルとゲルの透過吸収
スペクトルを試料別に、図6〜11に示す。ただしゾル
のスペクトルは任意希釈した試料のものを示した。
【0110】板状微粒子を含まないF0715-1、F0715-2で
はゲルに全く吸収が観察されないのに比べ、複合ゾルで
あるF0717-2、F0717-3、F0717-4、N0609から得られたゲ
ルでは吸収ピークが維持されていた。
【0111】吸収が分散した金微粒子のプラズモンによ
って生じることを考えると、以上の事実は、板状微粒子
を含むゾルから作製されたゲルは金微粒子を良好な分散
状態のまま固定化していることをあらためて明示するも
のである。
【0112】
【実施例13】ゲルの親水性 実施例10で作製したゲルが形成されたプレートを純水
中に浸漬しただちに引き上げると、ゲルが形成された部
分のみ濡れており、しかも一様に濡れていた。ゲルの領
域は親水化パターン等によって制御できるので、任意の
パターンに濡れ性を発揮させることができる。
【0113】このことは塗工などによって固体に塗工し
た複合ゾルを、乾燥などによってゲル化させて構造体と
したとき、ゲルの領域のみ親水性の塗工液を二次的にコ
ーティングしたり、測定対象物質を含む水溶液を保持さ
せうる可能性を示している。実施例10における構造体
の有用性を強く示唆するものである。
【0114】
【実施例14】メンブランフィルター上でのゲル膜の作
製 実施例5、参考例1で調製した金微粒子-板状微粒子複
合ゾル、金コロイドのそれぞれ1 mlを、酢酸セルロース
製のメンブランフィルターC020A47A(ポアサイズ0.2μ
m、ADVANTEC TOYO製)上にピペットで滴下した。複合ゾ
ル、金コロイドともメンブランフィルター上に染み状に
デポジットされた。複合ゾルは点着してもゾルで呈して
いた色調を失わなかったが、板状微粒子を含まない金コ
ロイドを点着すると、しばらく後の色調はくすんだ紫色
に変化した。
【0115】この点着したゾルを常温で乾燥させた。複
合ゾルを乾燥させるとメンブランフィルター状にゲルが
成膜されていた。しかもゾルと同様の色調を維持してい
た。これに対し、金コロイドを点着したメンブランフィ
ルターではくすんだ紫色の薄い染みが残るだけであっ
た。
【0116】またポアサイズの大きな酢酸セルロース製
メンブランフィルター(ポアサイズ0.47μm)にN0609複
合ゾルの100μlを滴下し、60゜Cで乾燥させた。島津製作
所製フライングスポットスキャナーCS9000を用いて、メ
ンブランフィルター上に形成されたゲルの反射吸光スペ
クトルを測定した。そのスペクトルを図12に示す。ゾ
ルを点着していないメンブランフィルターで同様に測定
したチャートを図13に示す。反射スペクトルは約545n
mに極大を持っており、複合ゾルおよびポリスチレンプ
レート上に形成されたゲルの透過スペクトルと類似して
いた。
【0117】以上の事実は、板状微粒子を含むゾルから
作製されたゲルでは、金微粒子を良好な分散状態のまま
固定化していることを実証するものである。
【0118】
【実施例15】加圧による限外ろ過膜上へのゾルの点着
とゲルの作製 実施例5、参考例1で調製した金微粒子-板状微粒子複
合ゾル(F0717-2、F0717-4、N0609)、金コロイド(F07
15-2)のそれぞれ500μlを、ポリサルホン製の限外ろ過
膜(分画分子量10000)を備えたウルトラフィルターユ
ニット USY-1(ADVANTEC TOYO製)を用いて加圧ろ過し
た。ろ過終了後、限外ろ過膜を取り出し室温で乾燥させ
た。
【0119】複合ゾルや金コロイドは限外ろ過膜上にト
ラップされていた。ろ過がコロイドの分散を破壊するこ
とが知られている。F0717-2、F0717-4、N0609の複合ゾ
ルは乾燥ゲル化してもゾルの色調を保っていた。これに
対し、F0715-2の金コロイドはろ過と同時に色調を失い,
金属光沢をもったまだらの染みとしてろ過膜上に保持さ
れた。
【0120】以上の事実は、板状微粒子を含むゾルは、
加圧ろ過という環境下にあっても、金微粒子を良好な状
態のまま分散させていることを実証するものである。
【0121】
【実施例16】限外ろ過膜上のゲルの反射吸光スペクト
ル 実施例15で作製した限外ろ過膜上の試料の反射吸光ス
ペクトルを島津製作所製フライングスポットスキャナー
CS9000で測定した。F0715-2、F0717-2、F0717-4、N0609
のスペクトルを図14〜17に示す。またラポナイトXL
G 5g/lのゾルを同様にろ過し乾燥した透明ゲルのスペク
トルも測定し図18に示す。
【0122】F0717-2、F0717-4、N0609のスペクトルに
は、複合ゾルのそれに対応する吸収がはっきりと現れて
いた。それに対し、板状微粒子を含まない金コロイドで
あるF0715-2では、ブランク(図13)とほとんど同じ
スペクトルになった。金微粒子を含まない板状微粒子だ
けのゲルにも吸収が見られなかった。
【0123】以上の事実は、板状微粒子を含むゾルから
作製されたゲルでは、金微粒子を良好な分散状態のまま
固定化していることを実証するものである。
【0124】
【実施例17】減圧ろ過によるメンブランフィルター上
へのゾルの点着とゲルの作製 酢酸セルロース製のメンブランフィルターC020A47A(ポ
アサイズ0.2μm、ADVANTEC TOYO製)をサンクションベ
ッセルVT-500、フィルターホルダー47MM、KGS-47TF(い
ずれもADVANTEC TOYO製)からなるろ過キットに備え付
け、アスピレータで吸引しながら、実施例5、参考例1
で調製した金微粒子-板状微粒子複合ゾルF0717-2、F071
7-3、F0717-4、金コロイドF0715-2、およびラポナイトX
LGの5 g/l分散液のそれぞれ1 mlをピペットで滴下し、
吸引ろ過した。
【0125】複合ゾル、金コロイドともメンブランフィ
ルター上に染み状にデポジットされ、ゾルで呈していた
色調を失わなかった。しかし、乾燥が進むと、板状微粒
子を含む複合ゾルは色調を維持したままゲル化したが、
板状微粒子を含まない金コロイドF0715-2は徐々に鮮や
かな赤色からくすみを帯びた紫色に変化した。
【0126】これらの点着したゾルを常温で乾燥させ
た。複合ゾルを乾燥させるとメンブランフィルター上に
ゲルが成膜された。しかもゾルと同様の色調を維持して
いた。これに対し、金コロイドを点着したメンブランフ
ィルターでは茶褐色の薄い染みが残るだけであった。
【0127】以上の事実は、板状微粒子を含むゾルから
作製されたゲルでは、金微粒子を良好な分散状態のまま
固定化していることを実証するものである。
【0128】
【実施例18】有機溶媒を含んだ多孔体との接触による
相分離 実施例15で用いた限外ろ過膜にはあらかじめ乾燥防止
のため低揮発性の水溶性有機溶媒が含浸させてあった。
有機溶媒との接触がコロイドの分散を破壊し、相分離を
もたらすことはよく知られている。
【0129】しかし、板状微粒子を含む複合ゾルをろ過
しても相分離は全く観察されず、ゾルは膜上に均一に保
持されていた。一方、板状微粒子を含まない金コロイド
F0715-2をろ過すると、金属光沢の染みはまだらであっ
て、相分離と凝集が生じたことを示唆した。ろ過の前に
あらかじめ限外ろ過膜に1 mlの純水を3回通じて有機溶
媒を除去しておくと、金属光沢の染みは膜の全面に一様
に拡がるようになった。
【0130】以上の事実は、板状微粒子を含む複合ゾル
がコロイドの分散性を乱す外濫のひとつである有機溶媒
との接触にも安定であり、よって、例えば多層膜構造体
によく見受けられる、貧溶媒を含浸させた層との接触に
も耐えうることを示し、本発明による構造体の優れた応
用性を実証するものである。
【0131】
【実施例19】乾燥ゲルの電子顕微鏡観察 N0609の金微粒子の分散を電子顕微鏡で確認した。試料
は懸濁法によって処理した乾燥ゲルを、JEM-100(日本
電子製)によって5万倍と10万倍の倍率で写真撮影し
た。
【0132】すると、得られた電子顕微鏡写真では、お
およそ40 nmの粒径の金微粒子が、他の粒子と凝集し合
うことなく単独で存在していた。これにより、確かに本
発明による複合ゾル、ゲルは金微粒子を凝集させずに分
散させていることが確認された。
【0133】懸濁法などの試料調製方法の過程で金微粒
子どうし連銭状に凝集してしまうことが多い。例えばそ
のような電子顕微鏡写真はN. G. Khlebtsov, V. A. Bog
atyrev, L. A. Dykman, A. G. Melnikov, J. Colloid I
nterface Sci., 180(2), 436(1996)のFig. 1、M. Mabuc
hi, T. Takenaka, Y. Fujiyoshi, N. Ueda, SurfaceSc
i., 119, 150(1982)のFig. 1など随所に見受けられる。
【0134】それに対して板状微粒子を共存させた複合
ゲルでは、凝集が抑制され分散状態が保たれていること
が判明した。このことは本発明による複合ゾル、ゲルで
ある分散体の優れた安定性を示すものである。
【0135】
【発明の効果】本発明によれば、安定性に優れ且つ高濃
度の貴金属微粒子を含有しうる貴金属微粒子の分散体を
得ることができる。この分散体は構造体デバイスのマト
リックスとして光学素子及び化学センサーに特に有用で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の反応液の、経時的に測定したスペク
トルを示す。
【図2】還元剤ADCAの反応液中の濃度を変えたときの反
応進行時のスペクトルの経時変化を、それぞれの最大吸
収波長における吸光度の経時変化として示す(白三角:
5.0×10-4、黒菱形:1.0×10-3、黒三角:1.5×10-3
白四角:2.0×10-3、黒四角:2.5×10-3 mol/l)。
【図3】反応液の、最大吸収波長534 nmにおける吸光度
の経時変化のグラフ(白四角、黒菱形、白三角)を、三
つの反応液について重ね書きして示す。
【図4】実施例5、参考例1で調製した金微粒子-板状
微粒子複合ゾル(F0717-2、F0717-3、F0717-4、N060
9)、金コロイド(F0715-2)のスペクトルを重ね書きし
て示す[F0715-2(対照)、F0717-2(pH 7.5)、F0717-
3(pH 8.9)、F0717-4(pH 9.9)、N0609(pH 10.
5)]。なお、Abs.は吸光度、λは波長を示す。
【図5】実施例10と参考例2で作製したゲルの透過吸
収スペクトルを重ね書きして示す[F0715-2(対照)、F
0717-2(pH 7.5)、F0717-3(pH 8.9)、F0717-4(pH
9.9)、N0609(pH 10.5)]。
【図6】F0715-1の金コロイドとそれから得られたゲル
の透過吸収スペクトルを示す。
【図7】F0715-2の金コロイドとそれから得られたゲル
の透過吸収スペクトルを示す。
【図8】F0717-2の複合ゾルとそれから得られたゲルの
透過吸収スペクトルを示す。
【図9】F0717-3の複合ゾルとそれから得られたゲルの
透過吸収スペクトルを示す。
【図10】F0717-4の複合ゾルとそれから得られたゲル
の透過吸収スペクトルを示す。
【図11】N0609の複合ゾルとそれから得られたゲルの
透過吸収スペクトルを示す。
【図12】メンブランフィルター上に形成されたゲルの
反射吸光スペクトルを示す。
【図13】ゾルを点着していないメンブランフィルター
の反射吸光スペクトルを示す。
【図14】実施例15で作製した限外ろ過膜上の試料
(F0715-2)の反射吸光スペクトルを示す。
【図15】実施例15で作製した限外ろ過膜上の試料
(F0717-2)の反射吸光スペクトルを示す。
【図16】実施例15で作製した限外ろ過膜上の試料
(F0717-4)の反射吸光スペクトルを示す。
【図17】実施例15で作製した限外ろ過膜上の試料
(N0609)の反射吸光スペクトルを示す。
【図18】ラボナイトXLGを実施例15と同様にろ過し
乾燥した透明ゲルの反射吸光スペクトルを示す。

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板状微粒子を分散させた分散液中で貴金
    属微粒子を生成させることによって得られる、貴金属微
    粒子と板状微粒子との複合ゾルである、貴金属微粒子の
    分散体。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の複合ゾルをゲル化して
    得られる、貴金属微粒子の分散体。
  3. 【請求項3】 板状微粒子がスメクタイトの微粒子であ
    る、請求項1又は2に記載の分散体。
  4. 【請求項4】 スメクタイトが合成スメクタイトであ
    る、請求項3に記載の分散体。
  5. 【請求項5】 合成スメクタイトが合成ヘクトライト又
    は合成サポナイトである請求項4に記載の分散体。
  6. 【請求項6】 貴金属微粒子が金微粒子である、請求項
    1〜5のいずれか1項に記載の分散体。
  7. 【請求項7】 板状微粒子を分散させた分散液中で貴金
    属微粒子を生成させることにより、貴金属微粒子と板状
    微粒子との複合ゾルを生成させることを含む、貴金属微
    粒子の分散体の製造方法。
  8. 【請求項8】 さらに、複合ゾルをゲル化することを含
    む、請求項7に記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 板状微粒子がスメクタイトの微粒子であ
    る、請求項7又は8に記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 スメクタイトが合成スメクタイトであ
    る、請求項9に記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 合成スメクタイトが合成ヘクトライト
    又は合成サポナイトである請求項10に記載の製造方
    法。
  12. 【請求項12】 貴金属微粒子が金微粒子である、請求
    項7〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 【請求項13】 プレート表面の一部又は全部の領域上
    に、請求項2に記載の貴金属微粒子の分散体を有する構
    造体デバイス。
  14. 【請求項14】 プレート表面の一部又は全部の領域上
    に、請求項1に記載の複合ゾルを適用し、次いで複合ゾ
    ルをゲル化することにより貴金属微粒子の分散体を得る
    ことを含む、請求項13に記載の構造体デバイスの製造
    方法。
  15. 【請求項15】 多孔性物質内に、請求項2に記載の貴
    金属微粒子の分散体を有する構造体デバイス。
  16. 【請求項16】 多孔性物質に、請求項1に記載の複合
    ゾルを含有させ、その後ゲル化することにより貴金属微
    粒子の分散体を得る、請求項15に記載の構造体デバイ
    スの製造方法。
  17. 【請求項17】 貴金属微粒子が金微粒子である、請求
    項13又は15に記載の構造体デバイス。
  18. 【請求項18】 貴金属微粒子が金微粒子である、請求
    項14又は16に記載の製造方法。
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