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JPH10203979A - チアプロフェン酸を含有する抗眼炎症剤 - Google Patents

チアプロフェン酸を含有する抗眼炎症剤

Info

Publication number
JPH10203979A
JPH10203979A JP1140697A JP1140697A JPH10203979A JP H10203979 A JPH10203979 A JP H10203979A JP 1140697 A JP1140697 A JP 1140697A JP 1140697 A JP1140697 A JP 1140697A JP H10203979 A JPH10203979 A JP H10203979A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
eye
inflammatory agent
agent according
ocular inflammatory
buffer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP1140697A
Other languages
English (en)
Inventor
Shigetoshi Okumura
重年 奥村
Nanae Nagata
奈々恵 永田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Rohto Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Rohto Pharmaceutical Co Ltd
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Filing date
Publication date
Application filed by Rohto Pharmaceutical Co Ltd filed Critical Rohto Pharmaceutical Co Ltd
Priority to JP1140697A priority Critical patent/JPH10203979A/ja
Publication of JPH10203979A publication Critical patent/JPH10203979A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新規な抗眼炎症剤を提供する。 【解決手段】 チアプロフェン酸またはその薬学上許容
される塩を含有する局所投与用の抗眼炎症剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はチアプロフェン酸
(5−ベンゾイル−α−メチル−2−チオフェン酢酸)
またはその薬学上許容される塩を含有する、局所投与に
適した新規な抗眼炎症剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】眼炎症の患者は眼疾患患者の半数以上を
占めており、医療現場における抗眼炎症効果を有する薬
剤の役割は大きい。現在、眼炎症には、主に非ステロイ
ド剤、ステロイド剤および抗菌剤が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ステロイド剤は眼炎症
に対しても優れた効果をあらわし、臨床上不可欠な薬剤
であるが、全身投与、局所投与の別にかかわらず重篤な
副作用を引き起こす恐れがある。そのような副作用とし
て、例えば、ステロイド性緑内障、感染性眼疾患、ステ
ロイド性白内障等がある。また、抗菌剤は作用スペクト
ルが狭く、細菌性眼炎症にしか効力が期待できない。こ
のような事情から、非ステロイド性の抗眼炎症剤の開発
が望まれている。
【0004】現在、非ステロイド抗炎症剤は内服剤とし
て数十種類の薬剤が上市されているが、眼炎症にも有効
な薬剤はごく少数である。たとえ眼炎症に有効な薬剤で
あっても、全身投与の場合には投与量が多く、胃粘膜障
害などの副作用を伴う恐れがある。従って、抗眼炎症治
療を目的とする場合には、他の部位の炎症に比較して、
特に眼炎症に対して有効な非ステロイド剤を用いること
が望ましい。また、眼組織の特異性から、眼科治療に
は、薬物量が少量であり、全身性の副作用を抑制するこ
とができる局所投与が好ましい。しかし、眼は最も鋭敏
な器官の1つであり、特に炎症を起こしているときは過
敏になっていることから、臨床上有用な眼科用局所治療
剤の調製は様々な困難を伴う。例えば、眼科用製剤の主
流である点眼剤の場合、活性成分には抗炎症作用はもと
より、十分な水溶解性、眼組織への良好な移行性、眼に
対する低刺激性等が要求されるが、そのような条件を満
たす薬剤は僅かであり、現在、抗眼炎症性点眼剤として
上市されている非ステロイド剤はインドメタシン、ジク
ロフェナクおよびプラノプロフェンの3薬剤のみであ
る。しかも、点眼剤の場合、薬液が直ちに流去する等の
理由で、一回当たりの投薬可能量は内服剤等に比べては
るかに少なく、経口投与で有効性が知られている薬剤の
多くが点眼投与では効果がないという問題もある。上記
の3種の非ステロイド剤を含有する点眼剤においても、
その抗眼炎症効果は、いずれもステロイド性抗炎症点眼
剤に及ばない。
【0005】従って、局所投与で有効な非ステロイド性
抗眼炎症剤の開発が強く望まれていた。上記のごとく、
そのような製剤は、局所投与で眼炎症に対して有効であ
ることに加えて、低刺激性、安定性等の様々な条件を満
たす必要がある。具体的な条件は剤形により異なるが、
例えば、無菌であること、低刺激性であること、等張性
であること、適当なpHであること、化学的に安定であ
ること等が求められる。非ステロイド性消炎鎮痛剤であ
るチアプロフェン酸(化合物名:5−ベンゾイル−α−
メチル−2−チオフェン酢酸)(藤村ら,応用薬理9,715
(1975);荒川ら,炎症 5,41(1985))は、既に内服剤とし
て上市されており、全身投与における眼炎症への効果も
示唆されている(J.Fr.Ophtalmol.;8/8-9(559-563)1
985)。しかし、水に難溶性であり、強い眼刺激性を有す
る等の理由から、チアプロフェン酸の眼局所投与用製剤
は知られておらず、示唆さえされていなかった。チアプ
ロフェン酸の水溶解性を改善する方法として、水溶性メ
グルミン酸及びグルカミン酸塩を用いる方法(特開昭62
-252749)や、シクロデキストリンとの複合体を用いる
方法(特開平4-221379)が知られているが、これらの方
法は、必ずしも眼組織への局所投与用製剤の調製に適す
るものではない。例えば、点眼剤等の眼粘膜に多数回、
直接投与する製剤では、得られた水溶液が安定であると
同時に、眼刺激がなく安全であることが必要である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、非ステロ
イド性抗眼炎症剤の開発のために鋭意研究を重ね、チア
プロフェン酸が局所投与で眼炎症に有効であること、及
び、特定の添加剤を適切な量用いることで、水難溶性及
び眼刺激性等の問題を解決しうることを見出し、本発明
を完成するに至った。即ち、本発明はチアプロフェン酸
またはその薬学上許容される塩を含有する局所投与用の
抗眼炎症剤を提供するものである。本発明のチアプロフ
ェン酸を含有する抗眼炎症剤(以下、本発明製剤とい
う)は、点眼剤、眼軟膏、眼およびその周辺組織への注
射剤等、眼科の分野で用いられるすべての局所投与用製
剤を含む。本発明製剤は、低刺激性であって、チアプロ
フェン酸の眼組織への移行性が良く、少量の投与量でも
眼炎症に対して強い治療効果を発現しうることから、眼
炎症の治療に有用である。なお、本発明製剤が点眼剤で
ある場合、チアプロフェン酸は、澄明な水溶液のみなら
ず、適当な乳化製剤、リポソーム製剤又は懸濁製剤等の
形態をとることができる。
【0007】本発明製剤の活性成分であるチアプロフェ
ン酸は、既知の方法(例えば特公昭49-24915、特公昭55
-5511に記載の方法)で製するか、市販品から得ること
ができる。本発明製剤に用いることができるチアプロフ
ェン酸の塩類は、薬学上許容される塩であれば特に制限
はなく、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、
マグネシウム、アルミニウム、アンモニウム、ジエチル
アミン、モノエタノームアミンやトリエタノールアミン
等の塩が含まれる。またチアプロフェン酸の立体異性体
や水和物も本発明に包含される。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明製剤は、チアプロフェン酸
又はその製薬上許容される塩と、慣用の適当な液体、固
体又は半固体状の担体を用い、必要に応じて、当該技術
分野で用いられている製薬上の添加物を加え、既知の方
法によって適当な投与単位形態に調製することにより製
造される。該製剤は液体、軟膏又は固体の状態であって
よい。添加物は、本発明の目的に反しない限り、当該技
術分野で既知のものから適宜、選択され、例えば、緩衝
剤、等張化剤、溶解補助剤、保存剤、増粘剤、キレート
剤、pH調整剤、乳化剤等を用いることができる。
【0009】本発明製剤中のチアプロフェン酸の濃度
は、該製剤が点眼剤である場合、0.01〜3.0%、好
ましくは0.1%〜1.0%であり、眼およびその周辺組
織への注射剤の場合、0.05%〜5.0%、好ましくは
0.5%〜5%の範囲である。また、眼軟膏剤である場
合、チアプロフェン酸の最終濃度が、通常0.01〜5.
0%、好ましくは0.1%〜5.0%となるように調製す
る。なお、後述の試験例で示すようにチアプロフェン酸
は眼粘膜の炎症に優れた効果を有し、このことは、チア
プロフェン酸が鼻や耳等の炎症にも有効であることを強
く示唆している。チアプロフェン酸を点鼻剤又は点耳剤
として用いる場合、その濃度は、上記の点眼剤に関して
記載した範囲とすることができる。
【0010】既述のごとく、本発明製剤の活性成分であ
るチアプロフェン酸は水難溶性である上、強い眼刺激性
を有するために、通常の製剤化の方法によっては、安定
な水溶液を得ることが困難であるが、以下に示すよう
に、適当な添加剤を用いることにより、安定な水溶液を
得ることができる。或いは、適当な乳化剤を用いて安定
な乳化製剤とするか、リン脂質等を用いて安定なリポソ
ーム製剤とし、点眼剤、注射剤等に用いることができ
る。これら乳化製剤及びリポソーム製剤は、当業者既知
の方法で持続性製剤としてもよい。なお、本発明製剤
が、水溶液状の製剤、乳化製剤、リポソーム製剤、懸濁
製剤など、水を媒質としている場合、それらを広義の
「水性製剤」と呼称することもある。また、チアプロフ
ェン酸の眼刺激作用は、適当な添加剤の使用で軽減又は
解消でき、例えば、水性製剤の場合には、pH及び浸透
圧を一定範囲にすることで該課題を解決できる。
【0011】上記から明らかに、本発明製剤の優れた効
果は、活性成分であるチアプロフェン酸と、剤形に応じ
て製剤化に用いられる各種添加剤の性質、使用量等の総
合的な効果として現れるものであり、本発明製剤中の添
加剤はいずれも本発明の目的の達成に寄与している。し
かし、水性製剤の場合には、特に緩衝剤、等張化剤、溶
解補助剤、及び/又は保存剤の配合等が重要な役割を果
たしている。本発明の水性製剤は、チアプロフェン酸を
安定に含有し、刺激がなく、局所適用で眼炎症に有効で
あることから、臨床上、極めて有用である。
【0012】本発明の抗眼炎症剤が点眼剤、眼およびそ
の周辺組織への注射剤等の水性製剤である場合、そのp
Hは眼科的に許容される範囲であればよい。しかし、水
に難溶性のチアプロフェン酸を安定に含有する水溶液と
するためには、ややアルカリ性に維持することが好まし
く、既知の方法でpHを約5.0〜9.0、好ましくは約
6.5〜8.5の範囲に調整するとよい。このように、本
発明では、通常の点眼剤よりもアルカリ性に維持するこ
とにより、低刺激性で安定かつ有効な抗眼炎症剤を提供
することに成功したのである。また、本発明の点眼剤、
眼およびその周辺組織への注射剤等の水性製剤の浸透圧
は、公知の方法によって0.5〜5圧比、好ましくは約
0.8〜2圧比に調整するのがよい。
【0013】本発明製剤の調製には、当該技術分野で用
いられる製薬上許容される添加剤から任意のものを選択
して用いることができるが、該製剤が点眼剤、眼および
その周辺組織への注射剤等の水性製剤である場合、チア
プロフェン酸の眼刺激性を低減又は解消すると共に、製
剤の安全性及び長期安定性を確保するために、各種の添
加剤、特に、緩衝剤、等張化剤、溶解補助剤、保存剤、
安定化剤及び/又は乳化剤の種類、組合わせ及び量等に
留意する必要がある。以下に、本発明製剤の調製におけ
る添加剤の使用例を示す。
【0014】本発明製剤に用い得る緩衝剤としては、ホ
ウ酸緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、酢酸塩緩
衝剤、クエン酸塩緩衝剤などが例示され、ホウ酸系緩衝
剤が好ましい。また、等張化剤としては、ソルビトー
ル、マンニトール、グルコース等の糖類、塩化ナトリウ
ム、塩化カリウム、多価アルコール等が例示される。マ
クロゴール、プロピレングリコール、エチレングリコー
ル、グリセリン等の多価アルコールが好ましく、そのう
ち特にグリセリンが好ましい。溶解補助剤としては、当
該技術分野で用いられる非イオン界面活性剤、陽イオン
界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
非イオン界面活性剤の例として、ポリオキシエチレン硬
化ヒマシ油、ポリエチレングリコール、ポリソルベート
80、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリビニ
ルピロリドン、シクロデキストリン、ポリオキシエチレ
ンポリプロピレングリコール、陽イオン界面活性剤の例
として塩化ベンザルコニウム(BAK)、両性界面活性
剤の例としてテゴ[塩酸アルキルポリアミノエチルグリ
シン(Tego51)]を挙げることができる。後述する試験
例に示すように、本発明製剤には非イオン界面活性剤が
好ましい。本発明製剤が点眼剤である場合、安全性が高
く眼刺激性の低い非イオン界面活性剤が好ましく、ポリ
ソルベート80、ポリビニルピロリドンが好ましく、ポ
リソルベート80が特に好ましい。
【0015】保存剤又は防腐剤は、当該技術分野で既知
のものから適宜選択される。そのような保存剤として、
クロロブタノール、デヒドロ酢酸ナトリウム、塩化ベン
ザルコニウム、塩酸アルキルポリアミノエチルグリシ
ン、塩化セチルピリジニウム、フェネチルアルコール、
パラオキシ安息香酸エステル類及び塩化ベンゼトニウム
等がある。塩化ベンザルコニウムが好ましいが、これに
限定されない。点眼剤の場合、一般的に多数回使用され
ることから、安全に長期保存可能であることが要求さ
れ、溶解補助剤と保存剤は不可欠であるが、一般に、水
性点眼剤の安定化に用いられる界面活性剤は、保存剤の
防腐効果を低下させる。本発明の水性製剤中の保存剤の
防腐効果を維持しつつ製剤の安定性を維持するために
は、溶解補助剤(例、非イオン性界面活性剤)の濃度を
0.01%から5.0%の範囲にすることが好ましい。特
に好ましい濃度は0.01%〜2.0%である。pH調整
剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸
ナトリウム塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸などが挙げら
れる。既述のごとく、本発明製剤が水性製剤である場
合、これらのpH調整剤を用いてpHを約5.0〜9.
0、好ましくは約6.5〜8.5の範囲に調整することが
好ましい。
【0016】本発明製剤に用いる無痛化剤として、塩化
ベンザルニウム、塩酸プロカイン等があげられる。増粘
剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセル
ロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボ
キシメチルセルロース、コンドロイチン硫酸およびそれ
らの塩があげられる。キレート剤としては、エデト酸ナ
トリウム、クエン酸などが挙げられる。安定化剤として
は、エデト酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が挙
げられる。
【0017】既述のごとく、本発明製剤には、各種の添
加剤が重要な役割を果たしており、特に、以下に示すよ
うに、緩衝剤、等張化剤、溶解補助剤及び保存剤の組み
合わせが重要である。1つの実施態様として、本発明製
剤はチアプロフェン酸と上記定義に従う緩衝剤とを含有
しており、特にホウ酸を含有することが好ましい。緩衝
剤に加えて等張化剤を含有することが好ましく、等張化
剤としては多価アルコール、特にグリセリンが好まし
い。点眼剤の場合、緩衝剤としてホウ酸、等張化剤とし
てグリセリンを用いることが特に好ましい。また、別の
態様では、本発明の局所投与用製剤は、チアプロフェン
酸と、上記定義に従う非イオン、陽イオン又は両性のイ
オン界面活性剤とを含有している。該製剤における界面
活性剤の濃度は0.01〜5.0%の範囲であってよく、
さらに保存剤をも含有することが好ましい。この場合、
界面活性剤として非イオン界面活性剤、特にポリソルベ
ート80と、保存剤として塩化ベンザルコニウムとを含
有することが特に好ましい。
【0018】本発明製剤が乳化製剤である場合、それ
は、植物油等の油剤やリン脂質等の乳化剤を用い、既知
の方法で、0.05〜1μm程度の平均粒子径の乳化製
剤に調製される。また、リポソーム製剤も、ホスファチ
ジルコリンやホスファチジルエタノールアミン、レシチ
ン等のリン脂質等を用い、既知の方法で平均粒子径10
nm〜200nm程度のリポソーム粒子からなる製剤を調製
する。本発明製剤が眼軟膏剤である場合、慣用の基剤を
使用でき、具体的には、眼科用白色ワセリン、プロペ
ト、プラスチベース等を例示できる。添加剤としては、
流動パラフィン等を使用する。さらに、必要に応じて上
記の保存剤、安定化剤等から選択される任意の添加剤を
加えることができる。
【0019】本発明製剤の用法・用量は、患者の症状、
年齢等により変動するが、点眼剤の場合、通常、1日1
〜6回、1回1〜2滴を点眼投与する。眼軟膏剤の場合
には、通常1日1〜2回、結膜嚢内に適量を塗布して使
用する。眼およびその周辺組織への注射剤の場合には、
10μl/回で、1日1〜数回に分けて投与し、1日当
たりの投与量を1〜30mgとする。以下、実施例を挙
げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるも
のではない。
【0020】
【実施例】試験例1 前房穿刺惹起ブドウ膜炎に対する効果 家兎の両眼から前房穿刺により房水を採取(一次房水)
して前眼部ブドウ膜炎を惹起した。炎症惹起30分後に
再度房水を採取(二次房水)し、一次房水との蛋白濃度
の差を求めて炎症の指標とした。なお、試験薬物は炎症
惹起1時間前に1回、50μlずつ両眼に点眼投与し
た。結果を表1に示す。表1 前房穿刺惹起ブドウ膜炎に対するチアプロフェン
酸点眼液の効果
【表1】 ():例数 *:p<0.5 (0%チアプロフェン酸に対して) **:p<0.01 (0%チアプロフェン酸に対して) 表1に示すように前房穿刺により血液房水柵の破綻した
結果、漏出した蛋白濃出した蛋白濃度をチアプロフェン
酸点眼液は0.1%濃度以上で用量依存的かつ有意に減
少させた。
【0021】試験例2 カラゲニン惹起結膜炎モデルに
対する効果 ラットの両上眼瞼結膜下に0.5%カラゲニンを30μ
lずつ注入して結膜炎を惹起した、炎症惹起4時間後に
浮腫を摘出し、その重量を炎症の指標とした。尚、試験
薬物は炎症惹起1時間前から1時間間隔で10μlずつ
計5回点眼投与した。結果を表2に示す。表2 カラゲニン惹起結膜炎に対するチアプロフェン酸
点眼液の効果
【表2】 ():例数 *:p<0.01 (0%チアプロフェン酸に対して) 表2に示すようにカラゲニン惹起結膜炎に対して、チア
プロフェン酸点眼液は0.01%濃度以上で用量依存的
かつ有意に抑制した。また、1.0%では市販のステロ
イド点眼液(市販点眼液A)を上回る抑制効果を発現し
た。
【0022】試験例3 短期頻回眼刺激性試験 日本白色家兎を用いて本発明の点眼剤の眼刺激性を検討
した。実施例1に記載した点眼剤を調整し、改良ドレイ
ズ法(現代の臨床、4,277(1970))の評価基
準で眼刺激性を検討した。家兎(体重約2kg)5羽を
1群として片眼に被験液(実施例1の点眼剤または市販
点眼液B)を、他眼には対照として生理食塩液をそれぞ
れ100μlずつ15分間隔で8回点眼投与して眼の状
態を観察した。結果を図1に示す。1%チアプロフェン
酸点眼液と市販の非ステロイド性抗炎症点眼液(市販点
眼液B)と比較した結果、本発明のチアプロフェン含有
点眼剤は、ほぼ同等またはそれ以下の眼刺激性を示し
た。市販点眼液Bはヒトではほとんど刺激性を感じない
点眼液であるといわれており、図1から、本発明の点眼
剤はそれに勝るとも劣らない、低刺激性の安全な点眼剤
であることが分かる。
【0023】試験例4 緩衝剤と等張化剤の眼刺激性に
関する試験 この試験には、ドレイズ法よりも鋭敏に眼刺激性を検出
しうる、瞬目反応[田中ら、あたらしい眼科、2, 1127
(1985)]による眼刺激性試験を採用した。試験例3と同
様に、日本白色家兎(体重約2kg)5羽を1群として片
眼に以下の各種の被験液を50μl点眼投与し、投与後
2分間の瞬目回数を数え、平均値を得た。被験液 : 被検物質:1%チアプロフェン酸(T)、ホウ酸+ホウ
砂(B)、リン酸1ナトリウム+リン酸2ナトリウム
(P)、グリセリン(G) 調製法:ホウ酸及びリン酸は、それぞれ、終濃度が40
mMとなるように調製する。グリセリンは終濃度が0.8
%、リン酸は終濃度が40mMとなるように調製する。
少量の溶解補助剤(0.5%Tween)及びpH調整剤(水
酸化ナトリウム)を用いてpHを6.5〜6.8に調節す
る。結果
【表3】表3 緩衝剤と等張化剤の家兎の眼刺激作用被験液 平均瞬目回数 Tのみ 4.0 T+B 3.2 T+P 3.9 T+G 2.9T+B+G 2.8 以上の結果から、本発明のチアプロフェン酸含有点眼剤
は、等張化剤としてグリセリンを用いて浸透圧を調整
し、緩衝剤としてホウ酸系緩衝剤、特にホウ酸を用いて
眼刺激性を軽減することが好ましく、特に、ホウ酸とグ
リセリンとを組み合わせることが好ましいことを示して
いる。
【0024】試験例5 溶解補助剤がチアプロフェン酸
水溶液の安定性に及ぼす影響 室温で、精製水10mlにチアプロフェン酸40mgを加
え、さらに塩化ベンザルコニウム(BAK)又はラウリ
ル硫酸ナトリウム(SDS)(陽イオン性界面活性
剤)、Tego(両性界面活性剤)、又はTween 80(非イオン
性界面活性剤)をそれぞれ少量加え、5分間撹拌して、
沈殿の有無を観察した。チアプロフェン酸を溶解するの
に必要な界面活性剤の量を求めた。結果を表4に示す。
【表4】 表4 0.4%チアプロフェン酸溶液を得るのに必要な界面活性剤の量 界面活性剤 濃度(*) 塩化ベンザルコニウム 0.5%(0.01%) 塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン(Tego51) 0.6%(0.1%) ポリソルベート80 0.7%(2.3%) ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール 1.0%(0.1%) ラウリル硫酸ナトリウム 1.0%<(-) (*):安全性が確認されている最大濃度 −:使用例なく、不明 上記の表から明らかに、本発明の水性製剤の溶解補助剤
としては、安全性が確認されている濃度においてチアプ
ロフェン酸を溶解させることから、ポリソルベート80
が好ましい。
【0025】試験例6 溶解補助剤が保存剤の防腐力に
及ぼす影響 以下の表5〜7に示すように、溶解補助剤(ポリソルベ
ート80又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)が、各種
の保存剤の防腐力に及ぼす影響を、USP試験法(米国
薬局方)による防腐試験で検討した。防腐試験の1日後
の生菌数を測定し、防腐力を調べた。
【表5】表5 ポリソルベート80が0.01%塩化ベンザルコニウムの防腐力に及ぼす 影響ポリソルベート80の濃度 細菌 細菌死滅効果 1.0% S. aureus1) 24時間後で99.999%以上死滅 1.0% E. coli2) 24時間後で99.9%以上死滅 2.0% S. aureus 24時間後で99.9%以上死滅 2.0% E. coli 24時間後で99.9%以上死滅 1): Staphylococcus aureus 2): Escherichia coli
【0026】
【表6】表6 ポリソルベート80が0.01%塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン の防腐力に及ぼす影響ポリソルベート80の濃度 細菌 細菌死滅効果 1.0% S. aureus 24時間後で99%以上死滅 1.0% E. coli 24時間後で99.9%以上死滅 2.0% S. aureus 24時間後で99%以上死滅 2.0% E. coli 24時間後で99.9%以上死滅
【0027】
【表7】表7 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が0.01%塩化ベンザルコニウムの防 腐力に及ぼす影響ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の濃度 細菌 細菌死滅効果 1.0% S. aureus 24時間後で99%以上死滅 1.0% E. coli 24時間後で99%以上死滅
【0028】実施例1 点眼剤 100ml中 チアプロフェン酸 300mg ポリソルベート80 1000mg 塩化ベンザルコニウム 10mg 0.1N水酸化ナトリウム水溶液 適 量 0.1N塩酸水溶液 適 量 滅菌精製水 適 量 全 量 100ml 滅菌精製水60mlにチアプロフェン酸を加え、ポリソ
ルベート80、塩化ベンザルコニウム及び少量の水酸化
ナトリウム溶液を加えて溶解した希塩酸を適量加えるこ
とにより適当なpHに調整する。最後に滅菌精製水を加
えて全量を100mlとし、無菌製剤を調製して点眼剤
とする。pH7.4、浸透圧比1.1。
【0029】実施例2 点眼剤 100ml中 チアプロフェン酸 300mg ポリビニルピロリドン 1000mg 塩化ベンザルコニウム 10mg 0.1N水酸化ナトリウム水溶液 適 量 0.1N塩酸水溶液 適 量 滅菌精製水 適 量 全 量 100ml 上記の成分を用いて、公知の方法により無菌製剤を調製
して点眼剤とする。pH7.4、浸透圧比1.1。
【0030】 上記の成分を用いて、公知の方法により無菌製剤を調製
して眼軟膏剤とする。
【0031】実施例4 乳化製剤(点眼剤) チアプロフェン酸0.1g、精製大豆油10g、精製卵
黄レシチン1.2gを55〜65℃に加温し、ホモミキ
サーにより均質化した。次にグリセリン2.5gを加
え、滅菌精製水で全量を100mlとして、ダブルモーシ
ョン型クレアミックスCLM−0.8W(エム・テクニ
ック社製)を用いて撹拌、乳化することによってチアプ
ロフェン酸含有乳化製剤を調製した。
【0032】実施例5 リポソーム製剤(点眼剤) チアプロフェン酸10mg及び精製卵黄レシチン100mg
をクロロホルムに溶解させた後、窒素気流下、約55℃
で減圧乾固させた。次いで、等張リン酸緩衝液(pH
7.4、125mM塩化ナトリウムを含有)100mlを加
え、1分間放置した後、氷冷下、5分間超音波処理し、
ポリカーボネート製、孔径0.2μmフィルター(ミリポ
ア社製)を通過させることにより、チアプロフェン酸含
有リポソーム製剤を調製した。
【0033】
【発明の効果】本発明の抗炎症剤は、全身又は局所投与
で眼炎症に対して優れた効果を発現し、ステロイド性製
剤に匹敵する効果が期待できる。特に、本発明の点眼剤
は眼刺激性が少なく、極めて安全性の高い薬剤であるた
め、局所投与製剤として眼炎症の治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 短期頻回眼刺激性試験の結果を示すグラフ。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チアプロフェン酸またはその薬学上許容
    される塩を含有する局所投与用の抗眼炎症剤。
  2. 【請求項2】 水性製剤である請求項1記載の抗眼炎症
    剤。
  3. 【請求項3】 製薬上許容される緩衝剤、等張化剤、溶
    解補助剤、保存剤、乳化剤から選択される1又はそれ以
    上の添加剤をも含有する請求項1又は2に記載の抗眼炎
    症剤。
  4. 【請求項4】 緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸塩緩衝
    剤、炭酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤及びクエン酸塩緩衝剤
    から選択される請求3記載の抗眼炎症剤。
  5. 【請求項5】 緩衝剤がホウ酸緩衝剤である請求項4記
    載の抗眼炎症剤。
  6. 【請求項6】 等張化剤が、ソルビトール、マンニトー
    ル、グルコース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリ
    セリン及び多価アルコールから選択される請求項3記載
    の抗眼炎症剤。
  7. 【請求項7】 等張化剤が多価アルコールである請求項
    6記載の抗眼炎症剤。
  8. 【請求項8】 溶解補助剤が、非イオン界面活性剤、陽
    イオン界面活性剤、両性界面活性剤から選択される請求
    項3記載の抗眼炎症剤。
  9. 【請求項9】 保存剤が、クロロブタノール、デヒドロ
    酢酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム及び塩酸アルキ
    ルポリアミノエチルグリシンから選択される請求項3記
    載の抗眼炎症剤。
  10. 【請求項10】 0.01〜5.0%の濃度の非イオン界
    面活性剤から選択される溶解補助剤と保存剤とを含有す
    る請求項3記載の抗眼炎症剤。
  11. 【請求項11】 溶解補助剤がポリソルベート80であ
    って、保存剤が塩化ベンザルコニウムである請求項10
    記載の抗眼炎症剤。
  12. 【請求項12】 点眼剤、眼軟膏又は眼内注射剤である
    請求項1〜11のいずれかに記載の抗眼炎症剤。
  13. 【請求項13】 チアプロフェン酸の濃度が0.01%
    〜3.0%の範囲である請求項12記載の点眼剤。
  14. 【請求項14】 チアプロフェン酸の濃度が0.05%
    〜5.0%の範囲である請求項12記載の眼軟膏又は眼
    内注射剤。
  15. 【請求項15】 pHが約5.0〜9.0の範囲である請
    求項1〜14のいずれかに記載の抗眼炎症剤。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002249445A (ja) * 2000-12-19 2002-09-06 Ophtecs Corp 眼科用液剤組成物
JP2005536516A (ja) * 2002-07-23 2005-12-02 ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト 薬剤、軟膏基剤および可溶化剤/分散剤を含む、眼科用軟膏組成物
CN102058581A (zh) * 2010-11-30 2011-05-18 广东宏盈科技有限公司 一种眼科外用非甾体抗炎药

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