JPH0231343Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、ハンドルに連結されたピニオン軸の
ピニオン歯と操向輪に連結されたラツク軸のラツ
ク歯とを噛合するようにしたラツクアンドピニオ
ン式ステアリング装置のラツク軸支持装置に関す
るものである。

（従来技術） 第１図は従来の第１比較例である。ハンドル軸
に連結されたピニオン軸１のピニオン歯１ａと操
向輪に連結されたラツク軸２のラツク歯２ａが噛
合し、該ラツク軸２の背面２ｂを支持するサポー
トヨーク３を、ハウジング４に形成したラツク軸
２と直角方向の孔４ａに摺動可能に取り付け、孔
４ａの基部には螺子４ｂを刻設し、ヨークプラグ
５を螺合し、サポートヨーク３後面孔３ａ内に装
着したスプリング６をヨークプラグ５で支持し、
ピニオン歯１ａとラツク歯２ａ等の熱処理歪や加
工誤差があつても、ラツク軸２が円滑に摺動でき
る様、予めサポートヨーク３の後端面３ｂとヨー
クプラグ５の先端面５ａ間に僅かな隙間を設けて
ある。ここでラツク軸２の摺動抵抗は、ラツク歯
２ａと噛合つたピニオン軸１の回転必要トルクと
サポートヨーク３とラツク軸背面２ｂとの摩擦力
等により成り、時にラツク軸背面２ｂとの摩擦力
がフリクシヨンとして大きい。このフリクシヨン
は、ラツク軸背面２ｂとサポートヨーク３の摩擦
係数及びスプリング６の荷重によつて決定され
る。

従つて、フリクシヨン低減にはスプリング６の
荷重を低減したらよいのであるが、ハンドル剛性
を高く保つ必要性からピニオン軸１とラツク軸２
の噛合い分力によるサポートヨーク３の軸方向変
位を押えるスプリング６の荷重は高く保つ必要が
あり、低下させることは出来ない。そこで、サポ
ートヨーク３受面での摩擦係数を低減させる方法
が考えられ、サポートヨーク３を樹脂で製作した
り、全体をコーテイングしたりすることが考えら
れたが、前者は全樹脂の為、サポートヨーク先端
部３ｃ，３ｄが弱くなり、後者では不要な所迄コ
ーテイングの為、高価になるという欠点があつ
た。

第２図は従来の第２比較例で、焼結合金で構成
されたサポートヨーク１３の受面１３ｃの一部に
一定深さの溝１３ｄを形成し、樹脂の弾性体から
なる矩形状で一定厚さのシート１７を溝１３ｄに
嵌合固定し、サポートヨーク１３の受面１３ｃよ
り0.2〜0.5mm程度突出することが考えられた。
又、実開昭57−141256号に示すように、ラツクガ
イドの基材をAlあるいはFe等のような金属素材
で形成し、基材の摺接面全面に弗素系合成樹脂層
を形成するようにしたラツクガイド装置は公知で
ある。

又、実開昭56−62280号公報に示す如く、ラツ
ク軸の背後に、ラツク軸を支持し且ラツク軸をピ
ニオンの方向に押圧する弾発されたガイド部材を
設けたラツクピニオン型操向装置において、前記
ガイド部材本体を合成樹脂で作成し、そのラツク
軸との係合凹面に凹所を形成して該凹所に摺動片
を嵌入接着し、該摺動片を凹面より小許突出させ
てラツク軸線に沿う帯状突起を形成し、該帯状突
起によつてラツク軸背面を支持するようにしたラ
ツクピニオン型操向装置は公知である。

（考案が解決しようとする課題） 上記従来技術にあつてはラツク軸よりサポート
ヨークに伝わる通常の振動打音は大巾に緩和でき
るが高荷重、高温での耐久性が悪く、ガイド部本
体が合成樹脂製の場合は高荷重、高温（120℃程
度）で変形し、摺動片はこのような不確かなガイ
ド部本体に嵌入接着されているので、ラツク軸支
持の精度が低下し早期にラツク軸にガタを生ずる
という問題点があつた。

又、ラツク軸が受面全体で受けられず摺動片の
みで長時間支持されるので、本体そのものゝ精度
が高温、高荷重では維持できず、偏摩耗を生じ早
期にラツク軸にガタを発生させるという問題点が
あつた。

（課題を解決するための手段） 本考案は上記課題を解決することを目的とし、
ラツク軸背面を支持するサポートヨークをハウジ
ングに形成したラツク軸と直角方向の孔に摺動可
能に取り付け、バネによりラツク軸をピニオン軸
に押圧する如くなしたラツクアンドピニオン式ス
テアリング装置に於て、該サポートヨークは、摺
動性を有する硬質材で形成され、かつラツク軸背
面に当接しうる第２摺動面としての凹状受面を有
するサポートヨーク本体と、表面が弗素系の低摩
擦係数樹脂でコーテイングされ、全体として該サ
ポートヨーク本体の凹状受面に沿つた形状の薄鋼
板からなり、該サポートヨーク本体の凹状受面に
一定深さで設けられた凹部に、該表面をサポート
ヨーク本体の凹状受面より僅かに突出してラツク
軸背面に当接するように固定された第１摺動面と
してのシートとで構成され、該シートは中央部に
固定用の凸部が形成されており、該凸部を該サポ
ートヨーク本体の凹状受面の凹部中央部に凹部よ
り深く形成された孔部に圧入することにより、サ
ポートヨーク本体に固定されていることを特徴と
するものである。

（実施例） 第３図、第４図は本考案の一実施例である。１
１１はピニオン軸、１１２はラツク軸、１１３は
サポートヨーク、１１４はハウジング、１１５は
ヨークプラグ、１１６はスプリングである。サポ
ートヨーク１１３の受面１１３ｃ中央に矩形状の
一定深さの溝１１３ｄを形成してある。１１７は
弗素系の低摩擦係数樹脂でコーテイング（0.02〜
0.2mm位）された矩形状の鋼薄板からなるシート
で、前記溝１１３ｄに嵌合され、バーリング加工
された凸部１１７ａがサポートヨーク受面１１３
ｃの孔１１３ｅに嵌合固定され、該シート１１７
表面がサポートヨーク受面１１３ｃより僅か突出
している。

次に作用について説明する。ハンドル軸と連結
したピニオン軸１１１側、又は操向輪と連結した
ラツク軸１１２側どちらかが回転、摺動すると、
ラツク軸１１２の背面１１２ｂとシート１１７表
面間で摩擦摺動が行われる。背面１１２ｂは焼結
合金（鉄系）と摺動する時、摩擦係数0.15以上を
有し、一方、突出したシート１１７表面と摺動す
る時は低摩擦係数0.05〜0.1を有しているので両
摩擦係数の差により摺動抵抗は大巾に低減され
る。突出したコーテイング層が摩耗し、サポート
ヨーク受面１１３ｃと面一になつてからはコーテ
イング層とサポートヨーク受面１１３ｃとが同時
にラツク軸１１２に当接することゝなり、ヨーク
受面としての摩耗速度は著しく減少し、ガタの発
生を最小限にとゞめることができる。もちろん、
ラツクガイドの摺動面たるサポートヨーク受面の
摩擦抵抗の低減はコーテイング層の存在により効
果的に行われる。又、ピニオン歯１１１ａとラツ
ク歯１１２ａの噛合いにより生ずるラツク軸１１
２の軸と直角方向の分力によりサポートヨーク１
１３が軸方向に押圧されるがシート１１７が鋼薄
板製なので殆ど変形はなく、必要とされるハンド
ル剛性は保たれる。又、シート１１７が変形し難
いのでサポートヨーク１１３を押圧するスプリン
グ１１６の荷重をあげることができ、サポートヨ
ーク１１３後端面１１３ｂとヨークプラグ１１５
先端面１１５ａとの間隙を小さくでき衝突音が発
生しない。

（効果） 本考案によると、ラツク軸背面を支持するサポ
ートヨークをハウジングに形成したラツク軸と直
角方向の孔に摺動可能に取り付け、バネによりラ
ツク軸をピニオン軸に押圧する如くなしたラツク
アンドピニオン式ステアリング装置に於て、該サ
ポートヨークは、摺動性を有する硬質材で形成さ
れ、かつラツク軸背面に当接しうる第２摺動面と
しての凹状受面を有するサポートヨーク本体と、
表面が弗素系の低摩擦係数樹脂でコーテイングさ
れ、全体として該サポートヨーク本体の凹状受面
に沿つた形状の薄鋼板からなり、該サポートヨー
ク本体の凹状受面に一定深さで設けられた凹部
に、該表面をサポートヨーク本体の凹状受面より
僅かに突出してラツク軸背面に当接するように固
定された第１摺動面としてのシートとで構成さ
れ、該シートは中央部に固定用の凸部が形成され
ており、該凸部を該サポートヨーク本体の凹状受
面の凹部中央部に凹部より深く形成された孔部に
圧入することにより、サポートヨーク本体に固定
されているので、第１摺動面としての突出したコ
ーテイング層により当初はラツクガイドの摺動面
たるサポートヨーク本体の第２摺動面としての凹
状受面の摩擦抵抗の低減を効果的に行い、突出コ
ーテイング層が摩耗し、サポートヨーク受面と面
一になつてからは、第１摺動面としてのコーテイ
ング層と第２摺動面としてのヨーク本体の受面と
が同時にラツク軸に当接することとなり、ヨーク
本体の受面としての摩耗速度は著しく減少し、ガ
タの発生を最小限にとどめることができる。勿
論、ラツクガイドの第２摺動面たるサポートヨー
ク本体の受面の摩擦抵抗の低減は第１摺動面とし
てのコーテイング層の存在により効果的に行われ
る結果、サポートヨーク部の剛性を低下させるこ
となくラツク軸とサポートヨークとの摺動抵抗を
低減でき、ハンドル剛性を保持でき、高荷重、高
温（120℃程度）での耐久性がよく、ラツク軸が
早期にガタを生ずることがなくサポートヨーク後
端面とヨークプラグ先端面との衝突音をなくすこ
とができるという第１引例には期待できないすぐ
れた作用、効果を有する。

又、シートがその中央部の凸部を本体凹部の孔
部に圧入嵌合するのみで本体に固定されている。
これはシート及び本体いずれもが硬質材であるた
め、圧入嵌合によつても充分な固定状態が得られ
るからであり、前述したようにシートが本体の凹
状受面に沿つた形状であるため、ラツク軸の荷重
をラツク軸との摺動面に対応したシート全面で受
けられ、シートに偏荷重がかゝるおそれがなく圧
入嵌合部にも過大な応力がかゝることもない。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の第１比較例正断面図、第２図は
従来の第２比較例正断面図、第３図は本考案の一
実施例正断面図、第４図は第３図のサポートヨー
ク左側面図である。 １１１……ピニオン軸、１１１ａ……ピニオン
歯、１１２……ラツク軸、１１２ａ……ラツク
歯、１１２ｂ……ラツク軸背面、１１３……サポ
ートヨーク、１１３ｃ……サポートヨーク受面、
１１３ｄ……サポートヨーク溝、１１４……ハウ
ジング、１１６……スプリング、１１７……シー
ト。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ラツク軸背面を支持するサポートヨークをハウ
   ジングに形成したラツク軸と直角方向の孔に摺動
   可能に取り付け、バネによりラツク軸をピニオン
   軸に押圧する如くなしたラツクアンドピニオン式
   ステアリング装置に於て、該サポートヨークは、
   摺動性を有する硬質材で形成され、かつラツク軸
   背面に当接しうる第２摺動面としての凹状受面を
   有するサポートヨーク本体と、表面が弗素系の低
   摩擦係数樹脂でコーテイングされ、全体として該
   サポートヨーク本体の凹状受面に沿つた形状の薄
   鋼板からなり、該サポートヨーク本体の凹状受面
   に一定深さで設けられた凹部に、該表面をサポー
   トヨーク本体の凹状受面より僅かに突出してラツ
   ク軸背面に当接するように固定された第１摺動面
   としてのシートとで構成され、該シートは中央部
   に固定用の凸部が形成されており、該凸部を該サ
   ポートヨーク本体の凹状受面の凹部中央部に凹部
   より深く形成された孔部に圧入することにより、
   サポートヨーク本体に固定されていることを特徴
   とするラツクアンドピニオン式ステアリング装置
   のラツク軸支持装置。