【発明の詳細な説明】
光学的に純粋な(+)セチリジンを用いたアレルギー疾患の治療のための方法お
よび組成発明の背景
本発明は、光学的に純粋な(+)セチリジンを含有する物質の新規組成物に関
するものである。これらの組成物は季節性及び通季性アレルギー性鼻炎、アレル
ギー性喘息の症状、慢性特発性蕁麻疹、ある種の物理的蕁麻疹、及び好酸球の機
能に対する阻害作用から効果が得られる疾患を含むその他の疾患の治療において
強い活性を有する。(+)セチリジンは、好酸球の化学走性及び機能ならびに血
中血小板による細胞障害性メディエーターの産生を阻害し、免疫学的に誘発され
た喘息、特に喘息発作の遅延相において特に有用な療法となる。光学的に純粋な
(+)セチリジンは、以下の副作用、しかしこれに限局したものではないが、セ
チリジンのラセミ混合物の投与に関連する鎮静及び傾眠、頭痛、胃腸管障害、抗
コリン作用、めまい、心不整脈及びその他の心血管作用などの副作用を防ぎなが
らこの治療を提供する。同様に、当該ヒトにセチリジンの(+)異性体を投与す
ることによってセチリジンのラセミ混合物に関連する副作用を防ぎながら、ヒト
における上記疾患の治療法についても開示する。
これらの組成物及び方法の活性化合物はセチリジンの光学異性体、アメリカ特
許番号4,525,358(Baltes et al.)に記載されている製剤である。セチリジン
の薬化学は、Campoli-Richards et al.,[Drugs 40,762-781(1990)]、Snyder
and Snowman[Allergy 59 II,4-8(1987)]、及びRihoux and Dupont[Annals of
Allergy 59,235-238(1987)]によって記述されている。化学的には、活性化
合物は2-[4-[(4-クロロフェニル)フェニルメチル]-1-ピペラジニル]エト
キシ酢酸の(+)異性体であり、以後これをセチリジンと呼ぶ。
本発明の主題である(+)セチリジンは現在市販されていないが;1:1のラ
セミ化合物のみがその二塩酸塩として市販されている。
多くの有機化合物は光学的に活性な形で存在する、すなわちそれらは平面偏光
面を回転させる能力を有する。光学的に活性な化合物を記述する際には、接頭辞
D及びLまたはR及びSを用いて、その偏光中心に関する分子の絶対配置を示す
。接頭辞d及びlまたは(+)及び(−)は、化合物による平面偏光の回転の様
子を示すために用いられ、(−)またはlはその化合物が左旋性であることを意
味する。(+)またはdの接頭辞がつけられた化合物は右旋性である。絶対的な
立体化学に関する命名法とエナンチオマーの回転との間には相関関係はない。し
たがって、D-乳酸は(−)乳酸と同じであり、L-乳酸は(+)と同じである。与
えられた化学構造に関しては、これらの偏光化合物は、それらが互いに重ね合わ
せできない鏡像であることを除いては同一な1対のエナンチオマーとして存在す
る。特異的な立体異性体もまた1つのエナンチオマーとして呼ばれることがあり
、そのような異性体の混合物はしばしば、エナンチオマー混合物またはラセミ混
合物と呼ばれる。
立体化学的純度は製薬学の分野においては重要で、よく処方されている20個の
薬剤のうち12個が偏光性を示す。顕著な1例としてβ-アドレナリン遮断薬のL-
型であるプロプラノロールがあり、これはD-エナンチオマーよりも100倍活性が
強いことが知られている。
さらに、特定の異性体は単に不活性というよりはむしろ実際に有害となること
があるため、光学的純度は重要である。例えば、サリドマイドのD-エナンチオマ
ーは、これを妊娠中の悪阻を抑えるために処方すると、安全で有効な鎮静剤であ
ることが示唆されてきたが、対応するL-エナンチオマーは強力な催奇形物質であ
ると信じられている。(+)セチリジン及び(−)セチリジンの合成は、イギリ
ス出願2,225,321に記述されているが、個々のエナンチオマーの薬理学は報告さ
れていない。
セチリジンのラセミ混合物は現在、季節性及び四季を通じて(通季性)のアレ
ルギー性鼻炎に主に用いられている。アレルギー性鼻炎を含めた即時型アレルギ
ー疾患の症状は、おそらく肥満細胞、及び好塩基性白血球からの抗原による種々
の薬理活性物質の放出の結果である。これらの細胞から、またおそらく他の細胞
も同様にこのようにして放出された物質はアナフィラキシーの一次メディエータ
ーと呼ばれ、この中にはとりわけヒスタミンがある。急性季節型のアレルギー性
鼻炎、枯草熱、及び通季性アレルギー性鼻炎の特徴は、くしゃみ、鼻水、鼻づま
り、痒み、結膜炎及び咽頭炎である。急性季節性鼻炎では、鼻、口上部、目及び
咽頭がしばしば痒く、流涙、くしゃみおよび透明な水っぽい鼻水が痒みの後に続
く。さらに、前頭部頭痛、被刺激性、食欲欠乏、抑欝及び不眠症が起こることが
ある。通季性の鼻炎では、慢性的な鼻づまりがしばしば顕著で、オイスタヒイ管
閉鎖にまで及ぶことがある。ほとんどの患者にとって、局所ステロイド、エアロ
ゾルの血管収縮剤、及び長時間持続型の抗ヒスタミン剤は有意な症状の軽減とな
る。非免疫媒介(非IgE)過敏反応に対するセチリジンの作用はそれほど明確で
ないが、労作誘発喘息、寒冷蕁麻疹、及び非特異的気管支過敏症の治療において
何らかの活性があることが示唆されている。
ラセミ体のセチリジン二塩酸は経口投与で活性を示す、強力な長時間作用持続
型の末梢ヒスタミンH1受容体拮抗剤である。この化合物は、H1受容体拮抗剤の
第一世代の化合物よりも一般的にいくつかの優れた長所を持っている第二世代の
一つである。この長所とは、(1)鎮静作用が弱い、(2)抗コリン活性が少な
い、及び(3)持続が長いことであり、これによって患者のコンプライアンスが
改善する。末端臓器部位でヒスタミンの競合的阻害剤であるばかりでなく、第二
世代のヒスタミンH1阻害剤はその他の抗アレルギー的な薬理作用機序を持って
いるように思われ、そのため季節性及び多年性鼻炎ならびに慢性蕁麻疹と共に、
気管支喘息にも用いられるようになった。
Ex vivoでの実験は、ラセミ体のセチリジンが脳血液関門を有意に通過しない
ことを示唆している。したがって、セチリジンが鎮静的な副作用の発生率を減少
させることができるのは、一部は受容体選択性により、又一部はCNSから相対的
に排除されている結果かも知れないと示唆されてきた。その他の実験から、セチ
リジンは肥満細胞の活性化を阻害するのではなく、むしろ抗原または化学剌激後
の肥満細胞から放出されたヒスタミンの作用に拮抗することが示唆された。また
、ラセミ体のセチリジンは抗IgEによって誘発されるヒト好塩基球の脱顆粒を阻
害するという報告もある。セチリジンは、これがなければ喘息の発病に寄与した
であろう好酸球の組織への化学走性を阻害することが示されている。
セチリジンは経口投与によって速やかに吸収され、食物によって吸収速度が僅
かに低下することがあるものの、吸収量は影響を受けない。本化合物は血漿蛋白
質に結合し、脳内のセチリジンのピーク濃度は血漿中濃度の10%未満である。セ
チリジンは大部分が未変化体として尿中に排泄され、消失半減期はおよそ7から
10時間である。
セチリジンのラセミ化合物は、アレルギー性肺疾患などの他の疾患の治療、特
にアレルギー性気管支喘息の症状の治療に有用であるかも知れない。アレルギー
性気管支喘息にかかっている患者は、抗原、環境刺激要因、ウイルス感染、冷気
及び運動に曝された後に喘鳴及び呼吸困難などの臨床症状を起こす。多くの症状
が平滑筋収縮及び血管拡張の結果で、それが今度は抗原が肥満細胞または好塩基
球の表面にあるIgE抗体と反応すると、メディエーターの放出を起こす。これが
ヒスタミンH1拮抗剤を用いる基礎となる。
さらに、ラセミ体のセチリジンは慢性特発性蕁麻疹及びある種の物理的蕁麻疹
の治療に有用であるかも知れない。蕁麻疹の特徴は、皮膚の局所丘疹及び紅斑で
ある;急性蕁麻疹は基本的に、皮膚及び皮下組織に限局されるアナフィラキシー
である。この疾患は食物アレルギー、薬物アレルギー、昆虫の剌し傷またはそれ
に類するものから起こることがあり、数週間持続することがある慢性または突発
性蕁麻疹とは明らかに異なり、特定の原因によることはまれである。これらの蕁
麻疹は多くの症例ではIgE抗体媒介であるように思われるため、症状の多くはセ
チリジンのようなヒスタミンH1受容体拮抗剤で治療されるかも知れない。セチ
リジンによる好酸球化学走性の直接的な阻害もまた、アレルギー性喘息、アレル
ギー性鼻炎などの疾患、及び好酸球増多症という特徴を有するその他の疾患にお
ける遅延型のアレルギー反応に対しても治療法を提供するかも知れない。
第二世代のヒスタミンH1受容体拮抗剤の多くが、鎮静作用及び抗コリン活性
が弱いという点において、第一世代のヒスタミン拮抗剤と比べて長所を持ってい
る。しかし、鎮静及び傾眠の発生;不整脈などの心血管作用;頭痛;胃腸管障害
;めまい及び吐き気などを含むがこれに限定されない幾つかの副作用を有してい
る。セチリジンのラセミ混合物は、鎮静及び傾眠を含めたこれらの副作用の多く
を引き起こすことがわかった。したがって、上述の短所を持たずになおかつセチ
リジンのラセミ化合物の長所を持つ化合物を見つけることが特に望ましい。発明の要約
セチリジンの光学的に純粋な(+)異性体は、季節性及び通季性アレルギー性
鼻炎、アレルギー性喘息の症状、慢性特発性蕁麻疹、ある種の物理的蕁麻疹、及
び好酸球増多症及び好酸球機能に対する阻害作用から効果が得られるような疾患
を含めたその他の疾患の治療に有効な薬剤であることが現在わかっている。セチ
リジンの光学的に純粋な(+)異性体は、鎮静及び傾眠、頭痛、胃腸管障害、め
まい、吐き気、心不整脈及びその他の心血管作用などを含むがこれに限定されな
い副作用を防ぎながら、この効果的な治療を提供する。本発明はまた、当該ヒト
にセチリジンの光学的に純粋な(+)異性体を投与することによってセチリジン
のラセミ体に寄因する副作用を防ぎながら、ヒトにおける上記疾患の治療法を含
む。発明の詳細な説明
本発明は、ヒトにおける季節性及び通季性アレルギー性鼻炎の症状の治療法を
含み、これはそのような症状軽減療法を必要とするヒトに、一定量の(+)セチ
リジン、または(−)立体異性体を実質的に含まない製薬上許容可能なその塩を
、季節性及び通季性アレルギー性鼻炎の症状の軽減に十分な量投与することから
成る。この方法は、セチリジンのラセミ化合物に起因する副作用を引き起こすに
は不十分な量を提供することによって、ラセミ化合物の投与に起因する副作用の
同時発生を防いでいる。
本発明はまた、抗鼻炎療法を必要とするヒトの治療のための抗鼻炎組成を含み
、これは、一定量の(+)セチリジン、またはその(−)立体異性体を実質的に
含まない製薬上許容可能な塩の、当該鼻炎を軽減するには十分であるが、ラセミ
体のセチリジンに起因する副作用を引き起こすには不十分な量から成る。
本発明はさらに、ヒトにおけるアレルギー性喘息及び慢性ならびに物理的蕁麻
疹の治療法を含み、そのような喘息または蕁麻疹療法を必要とするヒトに、一定
量の(+)セチリジン、または(−)立体異性体を実質的に含まない製薬上許容
可能な塩を、当該喘息または蕁麻疹を軽減するのに十分な量投与することから成
る。この方法はラセミ起因体セチリジンの投与に起因する副作用を引き起こすに
は不十分な量を提供することによって、ラセミ体セチリジンの投与に起因する副
作用の同時発生を防いでいる。
さらに、本発明はアレルギー性喘息、慢性特発性蕁麻疹及びある種の物理的蕁
麻疹を有するヒトの治療のための抗アレルギー及び抗蕁麻疹組成を含み、一定量
の(+)セチリジン、その(−)異性体を実質的に含まない製薬上許容可能な塩
の、当該疾患を軽減または一時緩和するには十分であるが、ラセミ体のセチリジ
ンの投与に起因する副作用を引き起こすには不十分な量から成る。
本発明の別の局面は、ヒトにおける好酸球増多症または好酸球機能の増強によ
って引き起こされる、またはこれに起因する疾患の治療法を含み、これは、その
ような療法を必要とするヒトに、一定量の(+)セチリジン、またはその(−)
立体異性体を実質的に含まないその製薬上許容可能な塩を、当該好酸球増多症ま
たは好酸球機能の増強を軽減するのに十分な量投与することから成る。本方法は
ラセミ体のセチリジンの投与に起因する副作用を引き起こすには不十分な量を提
供することによってラセミ体のセチリジンの副作用の同時発生を防いでいる。ヒ
トにおける好酸球増多症または好酸球機能の変化に関連する疾患は、アレルギー
性喘息、季節性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、ある種の寄生虫疾患、及
びアレルギー性喘息の明かな証拠を示さない慢性閉塞性肺疾患などであるが、必
ずしもこれに限定されるものではない。更に、胃腸管及び泌尿器管に共に好酸球
が蓄積することは、これらの管の障害では好酸球機能の制御が望ましいことを示
している。
さらに本発明は、一定量の(+)セチリジン、または(−)立体異性体を実質
的に含まないその製薬上許容可能な塩の、好酸球増多症または好酸球機能の変化
に関連する上記疾患を軽減するには十分であるが、ラセミ体のセチリジンの投与
に起因する副作用を引き起こすには不十分な量から成る、ヒトにおける好酸球化
学走性の強力な阻害剤から効果が得られるような好酸球増多症または好酸球機能
の増強に関連する、またはこれによって悪化する疾患を治療するための組成を含
む。
市販のセチリジンのラセミ混合物(すなわち、2個のエナンチオマーの1:1
混合物)は、末梢のヒスタミンH1受容体部位に対するその選択的及び強力な結
合を通じて抗ヒスタミン活性を示し、好酸球の化学走性の阻害を引き起こすこと
によって療法を提供し、種々の疾患及びアレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息、
幾つかのタイプの蕁麻疹に関連する障害、及び好酸球増多症に関連する疾患の症
状の軽減を提供する;しかし、このラセミ混合物は有効であるとの期待を持たれ
ながら、副作用を引き起こす。光学的に純粋な、または実質的に光学的に純粋な
セチリジンの(+)異性体を利用することは、有効性の増強、副作用の減少に至
り、したがって治療指標の改善に至る。したがって、ラセミ混合物を投与するよ
りもセチリジンの(+)異性体を用いるほうが望ましい。
“副作用”という用語は、鎮静及び傾眠、頭痛、胃腸管障害、めまい、吐き気
、心不整脈、及びその他の心血管疾患などを含むが、必ずしもこれに限定される
わけではない。
ここに用いられている“その(−)立体異性体を実質的に含まない”という用
語は、その組成がセチリジンの(−)異性体と比べて(+)異性体をより多い比
率で含有することを意味する。好ましい態様では、ここで用いられている“その
(−)異性体を実質的に含まない”という用語は、その組成が(+)セチリジン
の重量が少なくとも90%以上で(−)セチリジンの重量が10%未満であることを
意味する。より好ましい態様では、“その(−)異性体を実質的に含まない”と
いう用語は、その組成が(+)セチリジンの重量が少なくとも99%で(−)セチ
リジンの重量が1%未満であることを意味する。最も好ましい態様では、ここに
用いられている“その(−)立体異性体を実質的に含まない”という用語は、そ
の組成が(+)セチリジンの重量で99%以上を含むことを意味する。これらの百
分率はその組成におけるセチリジンの総量に基づいている。“実質的に光学的に
純粋なセチリジンの(+)異性体”、または“実質的に光学的に純粋な(+)セ
チリジン”及び“光学的に純粋なセチリジンの(+)異性体”および“光学的に
純粋な(+)セチリジン”という用語も同様に、上記の量を意味する。
ここに用いられている“季節性及び通季性鼻炎の症状を治療する”という用語
は、そのような疾患を治療、軽減、または一時緩和し、その結果、くしゃみ、鼻
水、鼻づまり、痒み、結膜炎、咽頭炎、流涙、前頭部頭痛、被刺激性、食欲欠乏
、抑欝、不眠症、オイスタヒイ管閉鎖、及びこれに類する症状の軽減を提供する
ことを意味する。
ここに用いられている“ヒトにおけるアレルギー性喘息及び慢性ならびに物理
的蕁麻疹の治療法”という用語は、そのような疾患を治療、軽減、または一時緩
和し、その結果喘鳴、呼吸困難、咳、息切れ、呼吸器粘液過分泌、気道炎症、局
所皮膚丘疹、紅斑及びこれに類する症状の軽減を提供することを意味する。
ここに用いられている“ヒトにおける好酸球増多症、または好酸球機能の増強
によって引き起こされる、またはそれが一因である疾患の治療”という用語は、
好酸球増多症に関連するそのような疾患を治療、軽減、または一時緩和し、それ
によって前述の疾患の症状の軽減を提供することを意味する。アレルギー性喘息
、季節性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、およびある
種の寄生虫疾患に関連する症状、胃腸管及び泌尿器管障害は、好酸球増多症によ
って引き起こされる、またはそれに起因する疾患である。
セチリジンのラセミ混合物の化学合成は、先に引用したアメリカ特許4,525,35
8に記載の方法、またはイギリス出願2,225,320に開示されている改善法によって
実施することができる。セチリジンの(+)異性体は、光学活性分解酸などの従
来の手段を用いて、セチリジンのエナンチオマーまたはその前駆体を分解するこ
とによって、そのラセミ混合物から得ることができる。例えば、本明細書中に参
照により導入されているイギリス出願2,225,321(Cossement et al.)は、酒石
酸のエタノール溶液を用いて1-[(4-クロロフェニル)フェニルメチル]ピぺラ
ジン前駆体を分解する方法を開示している。単純な結晶化及びクロマトグラフィ
ー分離法などのその技術分野で知られているその他の標準的な分解法も用いるこ
とができるが、これに限定されるわけではない(例えば、E.L.Eliel,Stereochem
istry of Carbon Compounds(炭素化合物の立体化学)、McGraw Hill(1962)及
び[Wilen and Lochmuller“物質分解表”Journal ofChromatography 113,283-3
02(1975)参照]。さらに、光学的に純粋な(+)異性体は、酵素的な生物触媒
分解によってラセミ混合物から調製することができる。例えばアメリカ特許番号
5,057,427及び5,077,217の、本明細書中に参照により導入されている開示を参照
。
疾患の急性または慢性的な処置における(+)セチリジンの予防または治療用
量は、治療すべき疾患の重症度及び投与経路によって異なるだろう。用量及びお
そらく投与回数もまた、個々の患者の年齢、体重及び反応性によって異なるだろ
う。一般に、ここに記載した疾患のための(+)セチリジンの1日の総投与量は
単回または分割投与で約1.0mgから約25mgである。好ましい1日の用量範囲は単
回または分割投与で約2.0mgから約20mgでなければならず、最も好ましい1日の
用量範囲は単回または分割投与で5mgから約10mgである。患者の処置にあたって
、療法はおそらく約2mgから約5mgという低い用量から始めるべきで、患者の総
合的な反応に応じて10mgまで増加する。さらに、子供及び年齢65歳以上の患者な
らびに腎または肝機能障害がある患者にはまず低用量を投与し、個々の反応及び
血中濃度に基づいて用量設定することを勧める。幾つかの症例では、その技術分
野では明らかなように、これらの範囲を超えた用量を用いる必要があるかも知れ
ない。さらに、臨床医または治療担当医は、個々の患者の反応に関連してどのよ
うに、またはいつ中止、補正、または治療終了するかを知るように留意する。“
季節性及び通季性アレルギー性鼻炎の症状を軽減または一時緩和するのに十分で
あるが、副作用を引き起こすには不十分な量”、“アレルギー性喘息及び慢性な
らびに物理的募麻疹の症状を軽減または一時緩和するには十分であるが、副作用
を引き起こすには不十分な量”及び“アレルギー性喘息、季節性アレルギー性鼻
炎、アトピー性皮膚炎、寄生虫疾患、慢性閉塞性肺疾患、胃腸管及び泌尿器管障
害の好酸球増多症から生じる症状を軽減または一時緩和するには十分であるが、
副作用を引き起こすには不十分な量”という用語は、上記の投与量及び投与回数
スケジュールに含まれる。
患者に(+)セチリジンの有効量を提供するためには、適したいかなる投与経
路を用いてもよい。例えば、経口、直腸、非経口(皮下、筋肉内、静脈内)、経
皮及びこれに類する投与経路を用いてよい。投与剤形は、錠剤、トローチ剤、分
散剤、懸濁剤、溶液、カプセル剤、パッチ及びこれに類するものである。
本発明の製薬学的組成は、活性成分として(+)セチリジンまたはその製薬上
許容可能な塩から成り、また製薬上許容可能な担体、及び随意に他の治療成分を
含んでもよい。
“製薬上許容可能な塩”または“その製薬上許容可能な塩”という用語は、無
機酸及び塩基、ならびに有機酸及び塩基を含む製薬上許容可能な毒性のない酸ま
たは塩基から調製した塩をさす。本発明の化合物は塩基性であるため、無機及び
有機酸などの製薬上許容可能な毒性のない酸から塩を調製してもよい。本発明の
化合物に適した製薬上許容可能な酸付加塩は、酢酸、ベンゼンスルホン酸(ベシ
レート)、安息香酸、カンホスルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、フマル
酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレ
イン酸、林檎酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パ
ントテン酸、燐酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸及びこれに類
するものである。
本発明の組成は、懸濁液、溶液、エリクシル剤、エアロゾル、または固体投与
剤形である。澱粉、糖類、微小結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結
合剤、崩壊剤等などの担体は、経口固形製剤(散剤、カプセル剤、及び錠剤)の
場合に適しており、経口固形製剤は経口液体製剤より好ましい。最も好ましい経
口固形製剤は錠剤である。
投与のしやすさから、錠剤及びカプセル剤は最も使いやすい投与剤形であり、
この場合製薬学的な固形担体が用いられる。希望するならば、錠剤を標準的な水
性または非水性技法によってコーティングしてもよい。
上述の通常の投与剤形に加えて、本発明の化合物もまた、アメリカ特許番号:
3,845,770;3,916,899;3,536,809;3,598,123;及び4,008,719のここに引用と
して記載されている開示に記載の徐放手段及び投与方法によって投与してもよい
。
経口投与に適した本発明の製薬学的組成は、それぞれが予め決められた量の活
性成分を粉末または顆粒、または非水性溶液、水中油型乳化剤、または油中水型
乳化剤として含むカプセル剤、オブラート剤、錠剤、またはエアロゾル噴霧器な
どの剤形で与えてもよい。そのような組成はいずれの製造法によって調製しても
よいが、全ての方法は活性成分を1個以上の必要な成分で構成される担体と結合
させる工程を含む。一般に、組成は活性成分を液体担体または細かく砕いた固体
担体またはその両方に均一にかつ十分に混合して調製し、必要に応じて製品を望
ましい剤形に成型する。
例えば、錠剤は場合によっては1個以上の付属成分と共に圧縮または成型して
調製してもよい。圧縮錠剤は、適当な機械で粉末または顆粒などの自由流動形の
活性成分を、場合によっては結合剤、潤滑剤、不活性な希釈剤、表面活性剤また
は分散剤と混合して圧縮して調製する。成型錠は適当な機械で、不活性な液体希
釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を成型して作ってよい。各錠剤は約2mgから
約10mgの活性成分を含有することが望ましく、各オブラート剤またはカプセル剤
は約2mgから約10mgの活性成分を含有することが望ましい。最も望ましいのは、
錠剤、オブラート剤、またはカプセル剤は3つの投与量、すなわち約2mg、約5
mg及び約10mgの経口投与用の(+)セチリジン塩酸のいずれかを含有することで
ある。
本発明をさらに、化合物の調製及び本発明の組成を、その利用法とともに詳細
に記述した以下の例を参考にして定義する。変更は、材料及び方法に対するもの
もいずれも、本発明の目的及び関心から逸脱しなければ、多くの変更を行っても
よいことは、この技術分野では明かである。例 例1
セチリジンのラセミ体及びエナンチオマーの抗ヒスタミン活性は、Snyder and
Snowman(op cit)法に従って、洗浄したモルモット脳及び肺組織膜による受容
体結合アッセイで調べる。組織を用いてラセミ体のセチリジンのマイクロモル濃
度(IC50)で表される阻害濃度の値を確立し、そのエナンチオマーを用いてトリ
チウムメピラミンの結合を阻害する。これらの組織を選択することによって、中
枢及び末梢のH1受容体結合に関する情報が得られる。次に、H1受容体結合の特
異性をその他の中枢メディエーターに対する放射リガンド標識受容体での結合と
比較してもよい。例2
セチリジンの異性体の抗ヒスタミン活性も同様に、Staff[Pharmacological E
xperiments on Isolated Preparations(単離標本での薬理実験)、E & S.Livi
ngstone Ltd.,Edinburgh(1968)]が記述したin vitroでのモルモット回腸標
本で調べる。例3
セチリジン異性体の活性は同様に、Campoli-Richards et al.[Drugs 40,762
-781(1990)]及びWardell et al.[J.Pharm.Exp.Ther.167-184(1974)]の
方法に従って単離したモルモット気管支平滑筋標本で調べる。これらの標本は、in
vivoでのヒスタミン誘発障害の抑制に適したモデルにおいて、ヒスタミン誘
発収縮に対して競合的拮抗を示す。次に主たる抗ヒスタミン活性を、同じ組織に
おいてセチリジンの相対的な抗コリン活性(“副作用”)と比較する。抗コリン
活性は組織にコリン作動薬を与えることによって評価する。例4
バラバラにした心室心筋細胞を単離したネコ心臓から従来の方法で得る。桿状
のバラバラの細胞をHEPES緩衝液で維持し、吸引ピペットを用いて“パッチクラ
ンプ”を行う。パッチクランプL/M-PEC 7増幅器を用いて電流のトレーシングを
記録し、記録電極にはアスパラギン酸カリウムを満たす。電圧クランプパルス及
びデータ獲得は、Sperry PC/ITコンピューターでパッチクランプソフトウェアを
作動させて制御する。以下の薬剤の各試験濃度について、少なくとも4個の細胞
を調べる:ラセミ体セチリジン、(+)セチリジン、(−)セチリジン及びキニ
ジン(対照化合物として)。経口製剤
カプセル剤:
(+)セチリジン、乳糖及びコーンスターチは均一になるまで混ぜ、次にこの
粉末にステアリン酸マグネシウムを混ぜ、これを篩いにかけて従来の装置を用い
て適当な大きさの2つの硬ゼラチンカプセルの中に入れる。他の用量は、充填重
量を変えて、必要であればこれに合わせてカプセルサイズを変化させて調製して
もよい。経口製剤 錠剤:
(+)セチリジンを均一な混合物が得られるまで乳糖と混ぜる。コーンスター
チの少量を水と混ぜて、コーンスターチペーストを作る。次にこれを、均一な湿
った塊ができるまで均一な混合物と混ぜる。得られた湿った塊に残りのコーンス
ターチを加えて均一な顆粒が得られるまで混合する。次に顆粒を1/4インチのス
テンレススチールスクリーンを用いて適当な製粉器を通して選別する。製粉した
顆粒は、望ましい水分含量が得られるまで、これを適当な乾燥器で乾燥させる。
次に乾燥した顆粒を適当な製粉器を通して製粉し、ステアリン酸マグネシウムを
混ぜ込み、得られた混合物を望ましい形、厚さ、硬さ、及び崩壊の錠剤に圧縮す
る。活性成分と賦形剤または錠剤の最終重量との比を変えて、別の強度の錠剤を
調製してもよい。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1994年4月21日
【補正内容】
請求の範囲
1.ヒトにおける季節性及び通季性アレルギー性鼻炎の症状の治療方法であっ
て、同時にラセミ体のセチリジンに起因する望ましからぬ副作用を減少または消
失させる方法において、そのような症状軽減療法を必要とするヒトに、(−)立
体異性体を実質的に含まない治療有効量の(+)セチリジン、またはその製薬上
許容可能な塩を投与することを含んで成る上記方法。
2.ヒトにおけるアレルギー性喘息及び慢性ならびに物理的蕁麻疹の治療方法
であって、同時にラセミ体のセチリジンに関連する望ましからぬ副作用を減少ま
たは消失させる方法において、そのような症状軽減療法を必要とするヒトに、(
−)立体異性体を実質的に含まない治療有効量の(+)セチリジン、またはその
製薬上許容可能な塩を投与することを含んで成る上記方法。
3.ヒトにおける好酸球増多症または好酸球機能の増強によって引き起こされ
る、またはそれに起因する疾患を治療する方法であって、同時にラセミ体のセチ
リジンに起因する望ましからぬ副作用を減少または消失させる方法において、好
酸球増多症療法を必要とするヒトに、(−)立体異性体を実質的に含まない治療
有効量の(+)セチリジン、またはその製薬上許容可能な塩を投与することを含
んで成る上記方法。
4.当該疾患をアレルギー性喘息、季節性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚
炎、寄生虫疾患、アレルギー性喘息の明確な証拠がない慢性閉塞性肺疾患、胃腸
管疾患及び泌尿器疾患からなるグループから選択する請求項3に記載の方法。
5.(+)セチリジンを静脈内注入、経皮投与、または錠剤またはカプセル剤
として経口投与する請求項1から4のいずれかに記載の方法。
6.(+)セチリジンまたはその製薬上許容可能な塩の投与量が、1日当たり
約1mgから約25mgである請求項1から4のいずれかに記載の方法。
7.投与量が1日当たり約5mgから約10mgである請求項6に記載の方法。
8.(+)セチリジンまたはその製薬上許容可能な塩の量が、セチリジンの総
重量のおよそ90重量%より多い請求項1から4のいずれかに記載の方法。
9.(+)セチリジンを塩酸塩として投与する請求項1から4のいずれかに記
載の方法。
10.治療有効量の(+)セチリジン、またはその製薬上許容可能な塩を、製薬
上許容可能な担体と共に投与する請求項1から4のいずれかに記載の方法。
11.ヒトにおける季節性及び通季性アレルギー性鼻炎の症状の治療用で、しか
も同時にラセミ体のセチリジンに関連する望ましからぬ副作用を減少または消失
させる薬剤の製造のための、(−)セチリジンを実質的に含まない(+)セチリ
ジンの使用。
12.ヒトにおけるアレルギー性喘息及び慢性ならびに物理的蕁麻疹の治療用で
、しかも同時にラセミ体のセチリジンに関連する望ましからぬ副作用を減少また
は消失させる薬剤の製造のための、(−)セチリジンを実質的に含まない(+)
セチリジンの使用。
13.ヒトにおける好酸球増多症または好酸球機能の増強によって引き起こされ
る、またはこれに起因する疾患の治療用で、しかも同時にラセミ体のセチリジン
に関連する望ましからぬ副作用を減少または消失させる薬剤の製造のための、(
−)セチリジンを実質的に含まない(+)セチリジンの使用。
14.当該疾患をアレルギー性喘息、季節性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚
炎、寄生虫疾患、アレルギー性喘息の明確な証拠がない慢性閉塞性肺疾患、胃腸
管疾患及び泌尿器疾患からなるグループから選択する請求項13に記載の使用法。
15.(+)セチリジンを静脈内注入、経皮投与、または錠剤またはカプセル剤
として経口投与する請求項11から14のいずれかに記載の使用。
16.(+)セチリジンまたはその製薬上許容可能な塩の投与量が、1日当たり
約1mgから約25mgである請求項11から14のいずれかに記載の使用。
17.投与量が1日当たり約5mgから約10mgである請求項16に記載の使用法。
18.(+)セチリジンまたはその製薬上許容可能な塩の量が、セチリジンの総
重量のおよそ90重量%より多い請求項11から14のいずれかに記載の使用。
19.(+)セチリジンを塩酸塩として投与する請求項11から14のいずれかに記
載の使用。
20.薬剤が治療有効量の(+)セチリジンまたはその製薬上許容可能な塩に加
えて製薬上許容可能な担体を含む請求項11から14のいずれかに記載の使用。
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