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JPH0827009A - 感染刺激による口腔組織破壊を抑制するために使用されるβ(1,3)−グルカン - Google Patents

感染刺激による口腔組織破壊を抑制するために使用されるβ(1,3)−グルカン

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Publication number
JPH0827009A
JPH0827009A JP18660394A JP18660394A JPH0827009A JP H0827009 A JPH0827009 A JP H0827009A JP 18660394 A JP18660394 A JP 18660394A JP 18660394 A JP18660394 A JP 18660394A JP H0827009 A JPH0827009 A JP H0827009A
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JP
Japan
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glucan
administration
oral
pgg
drug
Prior art date
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Pending
Application number
JP18660394A
Other languages
English (en)
Inventor
Gary R Ostrov
アール. オストロッフ,ゲイリー
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Alpha Beta Technology Inc
Original Assignee
Alpha Beta Technology Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】治療的に有効な量を投与することにより、哺乳
動物において感染刺激による口腔組織破壊または歯肉炎
を治療または予防する、ポリ−β(1−6)−グルコト
リオシル−β(1−3)−グルコピラノースグルカン
(PGG−グルカン)(poly-β(1-6)-glucotriosyl- β
(1-3)-glucopyranose glucan) などのβ(1,3)−グ
ルカンを含んでなる薬剤。 【効果】PGG−グルカンなどのβ(1,3)−グルカ
ンは、サイトカインの産生を刺激することなしに好中球
および単球の食作用や殺菌作用を高め、治療的に有効な
量のβ(1,3)−グルカンを哺乳動物に投与すること
により、感染刺激による口腔の組織破壊を治療又は予防
することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は感染刺激による口腔組織
破壊に対する抑制に関する。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】歯髄およ
び歯周の疾患は、局所の結合組織や骨の破壊をもたらす
細菌感染症である。これらの疾患の病原菌とされている
微生物は、主としてグラム陰性嫌気性菌であり、Actino
bacillus actinomycetemcomitans、Porphyromonas ging
ivalis、Prevotella intermedia およびCampylobacter
recta(ジンクら(Dzink, J.L. et al.), J. Clin. Perio
dontol. 15: 316-323(1988))などがある。これらの細菌
による感染は、T細胞およびB細胞が媒介する特異的な
宿主の反応(エバソールら(Ebersole, J.L., et al.),
J. Periodont. Res. 22:184-186(1987); スタシェンコ
ら(Stashenko, P.et al.), J. Periodont. Res. 18:587
-600(1983)) および非特異的な宿主の反応( 好中球、単
球およびサイトカイン) の両方を刺激するが、これらの
微生物に対する宿主の防御反応においては、特に好中球
や他の食細胞の関与する非特異的な機構が重要な役割を
果たすことをほとんどのデータが支持している( ゲンコ
(Genco, R.J.), J. Periodontol. 63:338-355(1992);
ヴァンダイク(Van Dyke, T.E.)およびフープ(G. A. Hoo
p), Crit. Rev. Oral Biol.Med. 1: 117-133(1990))。
このことは、慢性肉芽腫性疾患、周期性好中球減少症、
パピオン−ルフェーブル症候群(Papillon-Lefevre synd
rome) 、白血球付着障害(leukocyte adhesion deficien
cies) 、チェディアック−東症候群などの患者で、歯周
組織の破壊が高い頻度と程度で見られるという所見から
も示される( バーレットら(Barrett, A.P., et al.), O
ral Surg. Oral Med. Oral Path. 69: 174-176(1990);
バウアー(Bauer, W.H.), J. Dent. Res. 25: 501-508
(1946);コーヘンら(Cohen, M.B., et al.), J.Periodon
tol. 56:611-617(1985); コーヘンとモリス(Cohen, D.
W., and A. L. Morris), J. Periodontol. 32: 159-168
(1961); テンペレら(Tempel. T.T., et al.), J. Perio
dont. Res. 7(Suppl 10):26-27(1972); バンダイク(Van
Dyke, T.E., et al.), Clin. Immunol. Immunopathos.
31P:419-429(1984)) 。
【0003】ヒトの歯周病の最近の治療の中心は、壊死
組織切除法(debridement) と外科的手術であり、これら
は患部における微生物負荷を減少させて、感染部位組織
を維持する患者の能力を強化する。現在、歯周病は限ら
れた範囲の病原菌による感染症であることが認識されて
いるので、補助的療法として抗微生物剤も広く使用され
ている( スロッツとラムス(Slots, J., and T.E. Ram
s), J. Clin. Periodontol. 17:479-493(1990)) 。歯周
病の安全で有効な治療方法に対する必要性は依然として
高いものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】したがって、本発明の要
旨は、(1) β(1,3)−グルカンを含んでなる、
哺乳動物において感染刺激による口腔組織破壊を治療ま
たは予防する薬剤、(2) 口腔組織が骨または歯肉組
織である、前記(1)記載の薬剤、(3) β(1,
3)−グルカンを含んでなる、哺乳動物において感染刺
激による歯周軟組織破壊を抑制または予防する薬剤、
(4) β(1,3)−グルカンを含んでなる、哺乳動
物において感染刺激による歯周骨破壊を抑制または予防
する薬剤、(5) β(1,3)−グルカンを含んでな
る、哺乳動物において歯肉炎を抑制または予防する薬
剤、(6) 治療的に有効な量のβ(1,3)−グルカ
ンが連続投与されるように使用される、前記(1)〜
(5)のいずれかに記載の薬剤、(7) 治療的に有効
な量のβ(1,3)−グルカンが単回投与されるように
使用される、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の薬
剤、(8) 治療的に有効なβ(1,3)−グルカンの
1回投与量が0.02〜200mg/kgである、前記
(1)〜(5)のいずれかに記載の薬剤、(9) β
(1,3)−グルカンが薬学的に許容されるキャリアと
ともに使用される、前記(1)〜(8)のいずれかに記
載の薬剤、(10) 皮下投与、静脈内投与、筋肉内投
与、経口投与、噴霧投与、局所注入(例えば、歯肉注
射)、局所塗布、口腔洗浄、徐放性化合物を介する投
与、及び貯蔵体(reservoir)を介する投与から成る群か
ら選ばれる方法により投与される、前記(1)〜(9)
のいずれかに記載の薬剤、(11) 哺乳動物がヒトで
ある、前記(1)〜(10)のいずれかに記載の薬剤、
(12) β(1,3)−グルカンが抗生物質とともに
投与されるように使用される、前記(1)〜(11)の
いずれかに記載の薬剤、(13) 該β(1,3)−グ
ルカンがPGG−グルカンである、前記(1)〜(1
2)のいずれかに記載の薬剤、に関する。
【0005】本発明は、ポリ−β(1-6)-グルコトリオシ
ル−β(1-3)-グルコピラノースグルカン(PGG−グル
カン, poly−β(1-6)-glucotriosyl−β(1-3)-glucopyr
anose glucan)などのβ(1,3)−グルカンを、治療
的に有効な量投与することにより、歯肉炎の治療あるい
は予防に加えて、口腔軟組織の壊死、破壊あるいは欠
損、骨の破壊、吸収または欠損などの感染刺激により起
こる哺乳動物の口腔組織破壊を治療または予防する薬剤
に関する。β(1,3)−グルカンは、好中球および単
球の食作用や殺菌作用を高める生体応答調節剤(biologi
cal response modifiers) である。治療的に有効な量の
β(1,3)−グルカンを哺乳動物に単回あるいは日単
位または週単位の間隔をおいて連続的に投与することに
より、口腔の組織破壊が、治療され、最小限になるか抑
制または予防される。β(1,3)−グルカンは、薬学
的に許容されるビーイクルと伴に、付加的(additional
ly)に投与することもできる。
【0006】β(1,3)−グルカンのような生体応答
調節剤は、宿主の細菌に対する防御機構を高めることに
より、口腔細菌感染の予防と治療に対して新しい治療方
法を提供する。抗生物質が広く使用されることに付随し
て起こる抗生物質に対する細菌の耐性についての懸念が
高まっていることを考えると、この宿主指向の方法は特
に時機を得ているかもしれない。さらに、PGG−グル
カンなど、サイトカインの産生を刺激することなしに好
中球および単球の抗感染機能を選択的に刺激する特異的
β(1,3)−グルカンは、炎症性のサイトカイン誘発
骨吸収の発現を避けることができるため、歯周病などの
口腔感染症の治療にとっては理想的な薬剤であると考え
られる。
【0007】本発明は、感染刺激による口腔組織欠損(i
nfection-stimulated oral tissueloss) の予防または
治療薬としての生体応答調節剤(biological response m
odifiers) に関する。好中球および単球の食作用および
殺菌活性(bactricidal activity) を高める生体応答調
節剤であるポリ- β(1-6)-グルコトリオシル- β(1-3)-
グルコピラノースグルカン( PGG−グルカン) は、イ
ン・ビボモデルにおいて感染刺激による歯槽骨吸収を制
限または防止する。PGG−グルカンの基本構造は、β
-D-(1-3)- が結合したグルコピラノシル骨格にβ-D-(1-
6)- が結合した側鎖が付いたものであり、約100 kDの分
子量を持つ( ジャマスら(Jamas, S., etal.), Abstr. I
nt. Congr. Infect. Dis. 698:143(1990)) 。PGG−
グルカンの詳細については、1992年8 月21日出願の米国
特許出願No.07/934,015 (特開平6−107702号公
報)を参照のこと。PGG−グルカンは、好中球の産生
を増加させて、イン・ビボにおいて食作用と殺菌活性を
促す( シャーら(Shah, P.M., et al.), Abstr. Int. Co
ng. Infect. Dis. (1990);マッキンら( Mackin, W.et a
l.), FASEB J. 8:A488(1994))。重要なことは、PGG
−グルカンは、インターロイキン−1(IL−1)や腫
瘍壊死因子(TNF)のような前炎症性(proinflammato
ry) サイトカインを誘発しないということで、このため
に傷害を与える危険のある炎症性の副作用が最小限とな
る(ジナレロ(Dinarello, C.A. ),Abstr. Int. Cong. I
nfect. Dis (1990))。現在まで、この物質の使用に関連
する毒性の報告は、動物においてもヒトにおいても非常
に少ない。
【0008】以下に述べるように、手術により歯髄を露
出し口腔内環境のもとで感染を起こすことにより、Spra
gue-Dawleyラットにおいて歯根尖周囲の骨吸収を誘発し
た。露髄処置日( 0 日目) の前日( −1 日目) 及び露髄
処置後の2 、4 、6 、9 、11、13、16および18日目に、
PGG−グルカン(0.5 mg/kg)または生理食塩水(対
照)を動物に皮下投与した。PGG−グルカンは循環血
中の好中球および単球の数を増加させ、これらの食作用
活性を約2倍に上昇させた。感染刺激による歯根尖周囲
の骨吸収(periapical bone resorption)は、PGG−グ
ルカン処置動物の方が対照動物に比較して有意に少なか
った( 第一および第二臼歯についてそれぞれ−40.8 %と
−42.4%; p<0.01)。PGG−グルカン処置動物では、歯
髄壊死の度合いの低下により示されるように、軟組織破
壊も少なかった。PGG−グルカンを処置した動物の第
一臼歯歯髄のうち完全壊死を示したものは、対照群の4
0.6%に比べて、3.3%にすぎなかった。これらの知見は、
好中球の内因性抗細菌機序を強化する生体応答調節剤に
より、感染刺激による歯槽骨および軟組織の破壊をイン
・ビボにおいて減少させ得ることを示している。
【0009】これらの知見が得られたことにより、ヒト
を含む哺乳類における感染刺激による口腔組織の破壊を
治療または予防する方法が開発されてきた。本明細書に
おいて「口腔組織」とは、骨や歯肉などの軟組織を含
む。本明細書において「組織破壊」とは、軟組織の壊
死、破壊あるいは欠損に加えて、骨の破壊、吸収または
欠損を含む。歯肉炎の治療あるいは予防をするための方
法も開発されている。本明細書において「治療する」お
よび「治療」の用語は、現在存在する骨吸収、骨破壊若
しくは欠損、軟組織の壊死、破壊若しくは欠損または歯
肉の炎症を治療することに加えて、骨吸収、骨破壊若し
くは欠損、軟組織の壊死、破壊若しくは欠損または歯肉
の炎症の進展を最小限にすることも含む。「予防する」
および「予防」の用語は、骨または軟組織の吸収若しく
は破壊または歯肉の炎症の抑制および/または予防を含
む。口腔組織の破壊または歯肉炎を治療または予防する
ために、PGG−グルカンなどのβ(1,3)−グルカ
ンを、治療的に有効な量、哺乳動物に投与する。β
(1,3)−グルカンは、水溶性であることも水に不溶
性であることも可能で、また化学的に修飾を加えること
もできる。β(1,3)−グルカンの治療的に有効な量
とは、口腔組織破壊または歯肉炎を予防、減少あるいは
消失するのに必要なβ(1,3)−グルカンの用量であ
る。β(1,3)−グルカンは、単回投与によっても、
日単位または週単位の間隔を置いた連続投与によっても
投与できる。本明細書において「単回投与」とは、1回
投与および徐放製剤の投与を含む。β(1,3)−グル
カンは、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、経口投
与、噴霧投与、局所注入(即ち、歯肉への注入)、局所
塗布、口腔洗浄、徐放性化合物として、あるいは通常の
生理的に許容されるキャリアやビーイクルを含む投与剤
形態の貯蔵体(reservoir) により投与することができ
る。PGG−グルカンの投与剤形は、少なくとも部分的
には投与経路によって決まる。
【0010】望ましい治療的に有効な量は、mg/kg 単位
の投与量を決めることができる態様については、およそ
0.02から200 mg/kg/doseのβ(1,3)−グルカンであ
る。口腔洗浄による投与方法などのその他の態様では、
治療的に有効な量はβ(1,3)−グルカンの適切な濃
度である。治療的に有効な量は個体毎に決定され、少な
くとも部分的には、治療および予防しようとする組織破
壊または歯肉炎の重症度、投与方法、使用するβ(1,
3)−グルカンの他に、個体のサイズを考慮して決定さ
れる。ヒトについてのPGG−グルカンの適切な治療的
有効量は、その全ての開示が本明細書に参考として記載
されている、1992年8 月21日出願の米国特許出願No.07/
934,015 (特開平6−107702号公報)に記載する
ように、臨床試験により確立している。
【0011】β(1,3)−グルカンは単独あるいは抗
生物質などの他剤とともに投与することができる。適切
な抗生物質とは、殺菌剤または静菌剤などの抗感染剤を
含む。
【0012】
【実施例】以下の実施例により、さらに詳しく本発明を
説明する。イン・ビボにおける感染刺激による歯槽骨欠損の抑制 口腔内感染に対してPGG−グルカンの適用が可能かど
うかを調べるために、歯槽骨欠損を誘発したラットモデ
ルを用いた(ユーとスタシェンコ(Yu,S.M., and P.Sta
shenko), J. Endondon. 13:535-540(1987))。このモ
デルでは、外科的露髄処置と口腔内環境における感染に
よって歯根尖周囲の骨吸収(periapicalresorption)が
誘発される。歯根尖周囲の骨吸収は露髄後7日目から2
0日目の間では急速であり(活性期)、それ以降の吸収
は緩慢である(慢性期)。好中球やTリンパ球を中心と
する混合炎症性細胞による浸潤がみられる。活性期の歯
根尖周囲組織には高レベルの骨吸収活性があり(ワンと
スタシェンコ(Wang,C.-Y.,and P.Stashenko)J.Dent.R
es.70:1362-1366 (1991))、これは主にインターロイキ
ン−1αによって媒介される(ワンとスタシェンコ(Wa
ng,C.-Y.,and P.Stashenko), Oral Microbiol. Immuno
l. 8:50-56(1993) )。このモデルは、微生物学、免疫
学及び病因について歯周炎とよく似ている(タニ−イシ
イら(Tani-Ishii,N.,et al.),Oral Microbiol.Immun
ol.,印刷中(1994); ユーとスタシェンコ(Yu,S.M., and
P.Stashenko), J. Endondon. 13:535-540(1987))。
しかし、歯根尖周囲破壊の攻撃的な特性を考慮して、歯
周病を引き起こす口腔感染との闘いにおける好中球生体
応答調節剤の効果を、より厳しくテストする方法をこの
モデルは提供する。
【0013】実施例1.歯根尖周囲の病変の誘発 体重300−325gの雄の Sprague-Dawley CDラット
を全部で32匹用いた。歯根尖周囲病変を誘発するため
に(ユーとスタシェンコ(Yu,S.M., and P.Stashenko,
J. Endondon. 13:535-540(1987))、0 日目に、ケ
タミン(80mg/kg)及びキシラジン(xylazine)
(10mg/kg)を無菌リン酸緩衝溶液(PBS)に
溶解し、腹膜内に注射してラットを麻酔し、あご牽引ボ
ード(jawretraction board)にラットを置いた。携帯
用可変速電気ハンドピース(handpiece )(Okada Elec
tric Co., カリフォルニア州 ロサンゼルス)を用いて
歯髄を露出させた。露髄処置は、分岐状に貫通(furcal
perforation)しないように、バードリル(bur )の1
/4の大きさで、バードリルの直径の深さで行った。露
出された歯は口腔内の環境下においた。すべての動物に
おいて、手術処置は下顎の第1及び第2大臼歯に対して
なされた(歯4本/動物)。
【0014】実施例2.グルカン処置 動物を1群当たり16匹に無作為に分け、好中球生体応
答調節剤のPGG−グルカン(BETAFECTIN(登録商
標)、Alpha-Beta Technology,Inc., マサチューセッツ
州 ウスター)、又は対照として無菌生理食塩水を、1
kg当たり0.5mg投与した。下顎の第1及び第2大
臼歯の歯髄を露出させる前日に、動物はあらかじめPG
G−グルカン又は生理食塩水を投与しておいた。歯髄の
露出を行った日を0日目とした。その後、2、4、6、
9、11、13、16及び18日目にPGG−グルカン
又は生理食塩水を投与した。全量0.5mlを皮下注射
することにより処置した。
【0015】実施例3.白血球の計数 PGG−グルカン処置の効果は、既報と同様に(オンデ
ルドンクら(Onderdonk,A.B.,et al.,)Infect.Immun.
60:1642-1647(1992))、ベースラインからの白血球数の
変化により評価した。1日目及び10日目に、後眼窩洞
(retroorbitalsinus)よりヘパリン化血液試料を得、
PGG−グルカンが末梢白血球数に与える作用を調べ
た。試料を2%酢酸で希釈し、総白血球数を血球計数器
を用いて計測した。血液塗抹をライト/ギムザで染色
し、光学顕微鏡(400倍)を用いて白血球分画(diff
erential counts )を測定した。処置群と対照群の間の
末梢白血球数の差を分析し、スチューデントt検定によ
り統計上の有意性について調べた。結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】表1に示すように、PGG−グルカン処置
動物は、露髄後10日目において、循環血中の総白血球
が、処置前の状態に比べて約25%増加した(p<0.
01)。一方、生理食塩水を投与された対照動物では、
10日目に増加傾向が見られたものの、総白血球数に有
意な上昇は見られなかった。この僅かに認められた白血
球の増加は好中球数の増加によるもので、歯髄感染が原
因であると考えられる。
【0018】白血球分画の計数により、PGG−グルカ
ン処置動物における白血球数の増加は、全て循環血中の
好中球の増加によるものであり、対照動物および処置前
レベルの両方との比較で、その数は約2倍に増加したこ
とが明らかとなった(表1)。一方、リンパ球は、その
相対比率は低下したものの、絶対数は実験期間中一定で
あった。これらのデータは、β(1,3)−グルカンの
投与は好中球増加(neutrophilia)と単球増加(monocytem
ia) を誘発することを示しており、これはイン・ビボに
おけるこの生体応答調節剤の作用に関する以前の報告と
一致している(オンデルドンクら(Onderdonk, A.B., et
al.), Infect. Immun. 60: 1642-1647(1992)) 。
【0019】実施例4.食作用試験 好中球の抗菌活性を調節するPGG−グルカンの能力を
測定した。好中球を対照動物とPGG−グルカン処置動
物から採取し、オプソニン化E.coliに対する食作用能力
を試験した。20日目に動物を殺す前に、対照またはPG
G−グルカン処置ラットから、心臓穿刺により血を抜い
てEDTAを含んだ試験管に採取した。好中球を、不連続Fi
coll-Hypaque勾配を使用して、全血より分離した。好中
球層を単離し、混入している赤血球を二回蒸留水(doubl
e-distilled water)に短時間(30秒) 曝露することによ
り溶解した。好中球は、ハンクス平衡塩類溶液( Ca
+2、Mg+2を含まない) 中で3 回洗浄し、最終濃度が2
×106 /ml になるように再懸濁した。食作用について
は、オプソニン化したテキサスレッド標識(Texas Red-l
abelled)Escherichia coli(2×107 /ml; Molecular Pro
bes, Eugene, OR)を、好中球とともに37℃で30分、一定
に攪拌しながらインキュベートした。好中球−細菌混合
物を固定し、顕微鏡台にのせ、蛍光顕微鏡( ニコンダイ
アフォト(Nikon Diaphot))を用いて観察した。好中球数
と消化された細菌の細胞あたりの数を測定した。代表的
な実験により得られたデータを図1に示す。
【0020】全体として、細胞あたり消化された細菌数
は、PGG−グルカン処置動物でおよそ2倍に増加した
(8.3±5.3 vs 4.5±3.5 細菌/ 細胞) 。さらに、E.coli
を含む好中球の割合は、PGG−グルカン処置ラットか
ら好中球を単離した場合(24.8%) の方が対照ラットから
単離した場合(16.2%) に比べて、大きかった。PGG−
グルカン処置動物から採取した好中球は、数の増加と食
作用活性の増強の両方を示すことをこれらのデータは立
証している。
【0021】実施例5.歯髄壊死を測定するための放射
線写真法および組織形態計測 PGG−グルカン処置動物における骨吸収の抑制機序を
調べるために、軟組織歯髄破壊への作用を測定した。露
髄処置の20日目に動物をCO2 箱中で窒息させること
により殺した。下顎を組織から切離し、「ソフト」X線
装置(Hewlitt-Packard FAXITRON Model 43855A)および
高速、高解像ホログラフフィルム( コダック(Kodak)SO-
253)を使用して、放射線写真を撮影した。放射線写真
は、A/T 2000自動現像装置を用いて現像し、歯根尖周囲
に放射線透過部位(radiolucencies)が存在するか調べ
た。組織形態計測については、下顎を固定し、EDTA中で
脱灰(decalcified) し、パラフィン中に埋め込み、切片
を作製した。10切片毎にヘマトキシリンとエオジンで染
色した。分析のために選択した切片は、歯根髄(radicul
ar pulp)、歯根尖孔(apical foramen)および最も広範囲
に吸収を示した歯根尖周囲領域等である。歯の尖端周辺
の吸収された部位の大きさを、前もってミリメータ単位
の目盛りを付けたオプチマスバイオスキャンシステム(O
ptimas Bioscan system)を用いて測定した。結果は、吸
収された骨をmm 2で示した。歯髄壊死の程度は、細胞と
核の組織学的内容の欠損により定義される壊死を起こし
た歯根髄の長さを、エナメルセメント境から歯根尖まで
の距離で割った比率で示した。両群間の歯髄壊死の差
は、カイ二乗検定(Chi-Square analysis) で決定した。
【0022】図2に示すように、PGG−グルカン処置
動物では対照動物に比較して第一大臼歯の歯根髄壊死の
程度の有意な低下が認められた。PGG−グルカン処置
群では、30本の歯の内1本(3.3%)のみが完全な歯髄壊死
を示したが、対照群では32本の内13本(40.6 %)が完全壊
死を示した(p<0.0 01)。第二大臼歯についても
同様の結果が見られた( 完全壊死: PGG−グルカン処
置動物において30本中13本、対照動物において32本中22
本) 。PGG−グルカン処置動物では、感染と壊死の領
域は、典型的な例で、歯根髄のおよそ60% に限局されて
おり( データ示さず) 、わずかに歯根尖周囲の骨吸収が
見られるだけであった。壊死組織と生きた組織の境界
に、炎症性細胞の極度の浸潤が見られた。一方、対照動
物では、完全壊死と軽度の歯根尖周囲破壊がしばしば認
められた( データ示さず) 。これらのデータにより、観
察された骨吸収の抑制は、細菌感染が、歯髄組織を侵し
たり歯根尖周囲領域に進行する速度を低下させることに
よる可能性が示唆される。
【0023】実施例6.骨吸収試験 PGG−グルカンの最終的な作用が歯根尖周囲の骨破壊
の抑制であったことから、この物質が破骨吸収(osteoc
lastic resorption)に直接的な調節作用を及ぼすかを検
討した。この目的のために、推定アゴニストの骨吸収活
性を評価するために広く使用されている胎仔ラット長骨
試験を利用した。胎仔ラット長骨試験は、ペア無しのフ
ォーマット(unpaired format) を用いて、報告されてい
る方法で行った( ワンとスタシェンコ(Wang, C.-Y., an
d P.Stashenko), J. Dent. Res.70: 1362-1366(199
1))。簡単に説明すると、妊娠しているHolzman ラット
に妊娠18日目に100 μCIの45Ca(New England Nuclear,
Boston, MA) を注射することにより、胎仔の骨を標識し
た。マイクロディセクション(microdissection) によ
り、橈骨幹および尺骨幹を、胎令19日の胎仔から得
た。交換可能な(exchangeable) Ca 45を減らすため
に、骨を0.5 ml のBGJb培地で1日間前培養した。次に
橈骨と尺骨を無作為に、加湿した95% 空気/5% CO2 の中
で5日間37℃で培養した。培養2日後に培地を1回交換
した。特に注記しない限り、試験群は各群5本の骨から
成り、一方対照群( 培地のみ) は15-20 本の骨から構成
した。各骨から遊離した45Caのパーセンテージは、0か
ら2日目の培地、2から5日目の培地およびトリクロロ
酢酸に溶解した残留骨の放射活性を液体シンチレーショ
ンカウンターを用いて測定することにより決定した。骨
の各群について、平均値と標準偏差を計算した。刺激さ
れた45Ca遊離を対照と比較した場合の有意差をスチュー
デントt検定を用いて検討した。結果を下記の表2に示
す。
【0024】
【表2】
【0025】表2に示されるように、副甲状腺ホルモン
(PTH;65 ±5.0%) とインターロイキン1β(IL−
β;49.7±16.5%)はともに、対照(19.6±1.4 %)と比較
して破骨細胞による骨吸収(osteoclastic bone resorpt
ion)を刺激した。PGG−グルカンは、0.05-5μg/mlの
濃度では、基礎45Ca遊離に有意な作用を及ぼさず、PT
HやIL−1 の刺激による骨吸収も変化させなかった。
これらのデータは、イン・ビトロにおいてPGG−グル
カンは骨吸収を直接的に調節しないことを立証してお
り、PGG−グルカンの主要な作用は、好中球の機能を
強化することであるという解釈を支持している。
【0026】実施例7.骨吸収の放射線写真による分析
と組織形態計測 PGG−グルカンの歯根尖周囲吸収に対する作用を高解
像放射線写真により評価した。放射線写真分析は、解剖
学的な理由からもっとも放射線写真法を行いやすい第一
大臼歯の遠心根(distal root)においてのみ実施した。
表3に示されるように、露髄の20日目に、PGG−グル
カン処置動物において歯根尖周囲の放射線透過部分の面
積が48% 減少した。
【0027】
【表3】
【0028】放射線写真法は、しばしば歯根尖周囲の骨
吸収について重大な過少評価をすることがある(ベンダ
ーとセルツァー(Bender, I.B., and S. Seltzer), J. A
m. Dent. Assoc. 62 (Part I): 153-160(1961)) 。より
確実に歯根尖周囲破壊を測定するために、下顎骨を組織
形態計測のために処理した。表4と図3に結果を示す。
【0029】
【表4】
【0030】表4と図3に示すように、組織学的切片の
直接測定により、PGG−グルカン処置ラットでは、対
照ラットに比較して、第一大臼歯と第二大臼歯の両方の
遠心根の周囲において歯根尖周囲骨吸収の程度が有意に
低かった(それぞれ−40.8%と−42.4% 、p<0.0
1)。対照動物とPGG−グルカン処置動物の両方にお
いて、第二大臼歯に関する吸収の程度は第一大臼歯周辺
の吸収よりも大きかった。これは、第二大臼歯の遠心根
は短いために、歯根尖周囲領域に感染がより急速に進行
するという事実を反映していると考えられる。
【0031】実施例8.歯髄壊死と吸収の関係 歯髄壊死と骨吸収との関係を、点図プロット(scatter
plots)と回帰分析によりさらに調べた。図4に示すよう
に、PGG−グルカン処置動物において、壊死した歯根
髄組織の割合と発現した歯根尖周囲病変のサイズの間に
高度に有意な相関性が見られた(r=0.52、p<0.0
1)。両値はともに組織形態計測により測定した。この
関係は、対照ラットにおいても当てはまり( データ提示
無し;r=0.75、p<0.001)、同様の結果が第二大
臼歯についても得られた(データ提示無し;対照群およ
びPGG−グルカン処置群ともにp<0.001)。こ
のように、これらの知見は、PGG−グルカンが、細菌
感染が軟組織を侵し破壊する速度を有意に低下させ、感
染により骨吸収が刺激される部位である根尖周囲への感
染の進行を制限することを立証している。データはさら
に、このモデルにおいては、歯根尖周囲の骨吸収は歯髄
壊死の程度と相関することを示唆している。
【0032】当業者は、通常の実験を用いるだけで、本
願中に述べられている特定の態様に対する多くの均等物
を認識するか、または確認し得るであろう。このような
均等物は前記特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0033】
【発明の効果】PGG−グルカンなどのβ(1,3)−
グルカンは、サイトカインの産生を刺激することなしに
好中球および単球の食作用や殺菌作用を高め、治療的に
有効な量のβ(1,3)−グルカンを哺乳動物に投与す
ることにより、感染刺激による口腔の組織破壊を治療又
は予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ラット好中球の食作用活性に対するP
GG−グルカンの作用を示す。好中球は、PGG−グル
カン(●)または対照として生理食塩水(■)で処置し
たラットの末梢血より得た。オプソニン化テキサスレッ
ド標識Escherichia coliに対する好中球の食作用能を、
蛍光顕微鏡により定量した。X軸は細胞あたりの食作用
を受けた細菌の数を、Y軸は食作用を受けた細菌を含む
細胞の割合をそれぞれ表す。
【図2】図2は、歯髄壊死に対するPGG−グルカンの
作用を示す。壊死の程度は、下顎第一大臼歯の遠心根(t
he distal root of mandibular first molars)について
組織形態計測により測定した。データは、PGG−グル
カン群および対照群の16匹の動物( 歯2本/ 動物) の
ものである。対照群においてかなりの数の歯が完全な壊
死を示していることが注目される。水平の棒線は平均値
を示す。
【図3】図3は、歯根尖周囲の骨吸収に対するPGG−
グルカンの作用を示す。データは、下顎第一大臼歯の遠
心根周辺において組織形態計測により測定した吸収面積
(mm2)である。データは、PGG−グルカン群および対
照群の16匹の動物(歯2本/動物)のものである。水
平の棒線は平均値を示す。
【図4】図4は、歯髄壊死と歯根尖周囲の骨吸収との関
係を示している。X軸は壊死した歯髄、遠心根、第一大
臼歯の割合を、Y軸は歯根尖周囲の吸収面積(mm2)をそ
れぞれ表す。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 β(1,3)−グルカンを含んでなる、
    哺乳動物において感染刺激による口腔組織破壊を治療ま
    たは予防する薬剤。
  2. 【請求項2】 口腔組織が骨または歯肉組織である、請
    求項1記載の薬剤。
  3. 【請求項3】 β(1,3)−グルカンを含んでなる、
    哺乳動物において感染刺激による歯周軟組織破壊を抑制
    または予防する薬剤。
  4. 【請求項4】 β(1,3)−グルカンを含んでなる、
    哺乳動物において感染刺激による歯周骨破壊を抑制また
    は予防する薬剤。
  5. 【請求項5】 β(1,3)−グルカンを含んでなる、
    哺乳動物において歯肉炎を抑制または予防する薬剤。
  6. 【請求項6】 治療的に有効な量のβ(1,3)−グル
    カンが連続投与されるように使用される、請求項1〜5
    のいずれかに記載の薬剤。
  7. 【請求項7】 治療的に有効な量のβ(1,3)−グル
    カンが単回投与されるように使用される、請求項1〜5
    のいずれかに記載の薬剤。
  8. 【請求項8】 治療的に有効なβ(1,3)−グルカン
    の1回投与量が0.02〜200mg/kgである、請
    求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
  9. 【請求項9】 β(1,3)−グルカンが薬学的に許容
    されるキャリアとともに使用される、請求項1〜8のい
    ずれかに記載の薬剤。
  10. 【請求項10】 皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、
    経口投与、噴霧投与、局所注入(例えば、歯肉注射)、
    局所塗布、口腔洗浄、徐放性化合物を介する投与、及び
    貯蔵体(reservoir)を介する投与から成る群から選ばれ
    る方法により投与される、請求項1〜9のいずれかに記
    載の薬剤。
  11. 【請求項11】 哺乳動物がヒトである、請求項1〜1
    0のいずれかに記載の薬剤。
  12. 【請求項12】 β(1,3)−グルカンが抗生物質と
    ともに投与されるように使用される、請求項1〜11の
    いずれかに記載の薬剤。
  13. 【請求項13】 該β(1,3)−グルカンがPGG−
    グルカンである、請求項1〜12のいずれかに記載の薬
    剤。
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