JPH0796028A - 人工血管補強材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 金属基材に高分子エラストマー材料を被覆してなる人工
血管補強材及び当該人工血管補強材の人工血管への付与
方法。 【効果】 人工血管本体に容易に熱融着により付与する
ことができ、コンプライアンスの低下を抑制し、耐つぶ
れ性、耐キンク性に優れた人工血管を提供することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、人工血管補強材に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、医療技術の進歩にともない、多く
の人工血管が開発されているが、現在ではポリエステル
を用いた織編物からなる人工血管と、ポリテトラフルオ
ロエチレンの多孔質体を素材とする人工血管が主流を占
めている。

【０００３】人工血管に要求される条件としては、生体
に対する毒性がないこと、異物性がないこと、耐久性が
あり、劣化しないこと、抗血栓性があること、組織によ
る器質化が良好であること等があげられる。

【０００４】また近年、閉塞性動脈硬化症（ＡＳＯ）、
閉塞性血栓血管炎（ＴＡＯ）等の末梢血管障害が急増し
ており、この末梢血管障害は膝の上下等の屈曲し易い部
位に多く発生する。したがってこのような部位での人工
血管の適用は、屈曲に対する耐キンク性と耐つぶれ性に
優れたものを使用することが必要となる。

【０００５】そして上記のような人工血管のキンクおよ
びつぶれを防止するために種々改良された人工血管があ
る。人工血管の外側をネットや不織布で被覆し補強した
人工血管、織編物からなる人工血管に蛇腹加工を施すこ
とにより、適度な湾曲性および耐圧縮性を付与した人工
血管、人工血管の外面に合成樹脂性のテープ状物あるい
はモノフィラメントをスパイラル状に巻き付け補強した
人工血管、人工血管の内面および外面に補強用のリブを
一体的に形成し、キンクを防止した人工血管（特開昭６
０−１０６４６０号公報）、織編物からなる人工血管に
蛇腹加工を施すとともに人工血管の外面に合成樹脂性の
テープ状物あるいはモノフィラメントをスパイラル状に
巻き付け補強した人工血管（特許公報 特開昭６１−４
５７６７号）がある。さらには、人工血管の外周面に巻
き数が１から３の互いに接しない螺旋状部材を付与した
人工血管（特許公報 特開平４−２５３８５６号）が考
案されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記の人
工血管には以下のような欠点を有している。

【０００７】すなわち、人工血管の外側をネットや不織
布で被覆し補強した人工血管では、人工血管自体の厚み
が増大するので吻合時の操作性が著しく低下する。ま
た、織編物からなる人工血管に蛇腹加工を施した人工血
管では、抗血栓性の発現に必要な人工血管内面の滑らか
さおよび平坦さを犠牲にしなければならず、人工血管の
圧縮に対しても優れているとは言い難い。

【０００８】人工血管の外面に合成樹脂性のテープ状物
あるいはモノフィラメントをスパイラル状に巻き付けた
人工血管、人工血管の内面および外面に補強用のリブを
一体成型した人工血管、織編物からなる人工血管に蛇腹
加工を施し、さらに外面に合成樹脂性のテープ状物ある
いはモノフィラメントをスパイラル状に巻き付けた人工
血管では、吻合等の操作性の低下はないが、補強された
人工血管のコンプライアンスが著しく低下するという欠
点を有している。

【０００９】そしてこのようなコンプライアンスの低い
人工血管を生体に移植した場合には、生体血管の拍動に
対して人工血管が良好に追従しないので移植後長期間を
経ると、生体血管との吻合部付近に内膜肥厚が形成さ
れ、人工血管閉塞の原因となることが指摘されている。
また、耐つぶれ性に対しても補強材の強度に比例し、比
較的強いものでも、人工血管に外力が加わり、いったん
つぶれてしまうと、血圧による復元力以外には管腔の維
持は期待できない。したがって血圧の低い末梢血管では
つぶれに対する危険性は大きくなる。

【００１０】さらに、人工血管の外周面に巻き数が１か
ら３の互いに接しない螺旋状部材を付与した人工血管で
はコンプライアンスの著しい低下はないが、補強部材と
隣接する補強部材との間で、すなわち補強部材のないと
ころでの耐つぶれ性は低く、補強部材に硬質なものを用
いると補強部材間でキンクし易くなるという欠点があっ
た。

【００１１】したがって、本発明の目的は、人工血管の
耐キンク性を向上させ、かつ人工血管のつぶれに対する
自発的な復元応力を有し、さらにコンプライアンスの低
下を少なくさせる人工血管補強材を提供するものであ
る。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的は以下の本発明
によって解決される。

【００１３】（１） 人工血管の補強材であって、金属
基材に高分子エラストマー材料を被覆してなる人工血管
補強材。

【００１４】（２） 前記人工血管補強材は、金属基材
に高分子エラストマー材料を被覆してなるモノフィラメ
ントからなり、コイル状スプリングに形成されてなる上
記（１）に記載の人工血管補強材。

【００１５】（３） 前記人工血管補強材を熱融着によ
り人工血管に固定する人工血管の補強方法。

【００１６】（４） 上記（１）ないし（２）に記載の
人工血管補強材により補強されてなる人工血管。

【００１７】本発明の人工血管補強材は、金属基材に高
分子エラストマー材料を被覆させることにより得られ
る。

【００１８】本発明において金属基材としてはステンレ
スあるいはニッケル−チタン超弾性合金等が使用でき
る。高分子エラストマー材料としては、オレフィン系エ
ラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂エラストマー等
が用いられ、特にオレフィン系エラストマーが好まし
い。

【００１９】本発明において、高分子エラストマー材料
の金属基材への被覆の方法としては、熱融着、または高
分子エラストマー材料により中空状のモノフィラメント
を作成し、該中空内に線状の属基材を挿入する等の方法
が用いられる。

【００２０】本発明の人工血管補強材は、特に好ましく
はコイル状スプリングに形成し、該コイル状スプリング
の内腔に人工血管の外面が接するように通し、加熱して
人工血管に融着させて用いる。

【００２１】また、場合によっては線状の人工血管補強
材を編、織、組などの処理をしたものを人工血管表面に
付与する方法などもある。また、コイル状スプリングに
成形した人工血管補強材は、人工血管の外面に限らず、
中間層、内面に付与してもよい。

【００２２】金属基材の線径および外径は、人工血管が
生体に移植された場合、物性的に十分機能するよう設定
されていれば特に限定されるものではないが、操作性の
点から線径０.０５〜０.５mm、外径０.２〜１mm程度の
物が望ましい。また、高分子エラストマー材料による中
空状のモノフィラメントは、内径は金属基材の外径によ
って決定され、外径は内径よりも０.１〜０.５mm程度大
きめにすれば良い。

【００２３】また本発明は、上記人工血管補強材を固定
することを特徴とする人工血管補強方法および上記人工
血管補強材を固定した人工血管からなる。

【００２４】詳しく述べると、上述した人工血管補強材
は金属基材に高分子エラストマー材料を被覆してなるこ
とから、該高分子エラストマー材料を人工血管に付与し
た後、熱を加えることにより溶解し、該高分子エラスト
マー材料は人工血管にも付着する。その後、冷却するこ
とにより溶解した該高分子エラストマー材料は、人工血
管補強材と人工血管を被覆した状態で固まり、人工血管
補強材と人工血管は一体化された状態で固定される。

【００２５】上記の方法によって得られた人工血管は、
人工血管補強材によって人工血管の耐キンク性を向上さ
せ、かつ人工血管のつぶれに対する自発的な復元応力を
有し、さらにコンプライアンスの低下が少ない。

【００２６】本発明において人工血管補強材により補強
される人工血管の基材は特に限定されないが、ポリテト
ラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリウレタン等の
生体内で安定な合成高分子材料による織編物、不織布、
延伸物等が用いられる。特に、組織細胞の侵入性、器質
化の良好さからポリエステルによる織編物が望ましい。

【００２７】次ぎに、本発明の人工血管補強材について
実施例を用いてさらに詳細に説明する。

【００２８】

【実施例】

（実施例１）ステンレス（SUS304）製スプリング（線
径：０.１mm、外径：０.４mm、ピッチ：０.１５mm 東
京発条社製）をオレフィン系エラストマー（三井石油化
学工業株式会社製 TAFMER A20090）よりなる外径０.６m
m、内径０.５mmの中空フィラメントの中空部分に挿入
し、人工血管補強材を作製した。

【００２９】これをポリエステル製の編み管状体（内径
６mm）にピッチが１.５mmとなるように螺旋状に連続し
て巻き付けた後、外径６mmのステンレス棒を人工血管内
腔に通し、１８５℃で１０分間加熱することにより、該
人工血管補強材を人工血管に融着させ、人工血管１を作
製した。これにより付与された人工血管補強材の線径は
最終的におよそ０.５mmであった。

【００３０】（比較例）実施例１で用いたポリエステル
製の編み管状体（内径６mm）を実施例１と同様にして、
１８５℃、１０分間ヒートセットし、人工血管補強材を
付与しない人工血管２を作製した。

【００３１】また、中空部分を有さないオレフィン系エ
ラストマー（三井石油化学工業株式会社製 TAFMER A200
90）よりなる外径０.５mmのモノフィラメントを実施例
１と同様にしてポリエステル製管状体に付与し、人工血
管３を作製した。

【００３２】さらに、外径０.５mmのポリプロピレン製
モノフィラメントを人工血管補強材として用いた人工血
管４を作製した。

【００３３】（実施例２）それぞれ作製した人工血管１
〜４の物性を測定した。測定は耐つぶれ強度、つぶれ復
元応力、コンプライアンス、キンクの生じる半径につい
て実施した。結果を表１に示す。

【００３４】

【表１】

【００３５】表１に示すように、本発明の人工血管補強
材を付与した人工血管１は、人工血管補強材を付与しな
いもの（人工血管２）と比べコンプライアンスの低下を
抑え、耐つぶれ性、耐キンク性にも優れ、かつ、つぶれ
復元応力に非常に優れていた。ポリプロピレンモノフィ
ラメントで補強した人工血管４は、耐つぶれ強度は高値
を示したが、つぶれ復元応力測定においては人工血管補
強材自身が破壊されてしまい、復元応力は補強材がない
ものと同程度になってしまった。

【００３６】以上のことから、現在多く市販されている
人工血管を模倣したポリプロピレンモノフィラメントで
補強した人工血管４は、優れた耐つぶれ強度を有する
が、いったん外力が加わり完全につぶれてしまうと、復
元する力はほとんどないことが確認された。

【００３７】

【発明の効果】以上、詳述したように、本発明の人工血
管補強材および人工血管補強材の固定方法は、人工血管
本体に容易に熱融着により付与することができ、コンプ
ライアンスの低下を抑制し、耐つぶれ性、耐キンク性に
優れた人工血管を提供することができる。

【００３８】したがって、人工血管に圧縮外力がかかっ
た場合でも、優れた復元応力を有するために良好な血流
路を確保し、完全にはつぶれてしまうことがない。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】人工血管の補強材であって、金属基材に高
   分子エラストマー材料を被覆してなる人工血管補強材。