JPH0644833A - セラミックス超電導導体 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 製造時の作業性が良く、複合線材が変形せ
ず、複合線材における超電導体の超電導特性が劣化しな
いようにした。 【構成】 セラミックス超電導体１と金属材２とのテー
プ状複合線材３を複数枚積層して積層ブロック４を作成
し、この積層ブロック４を図１のように所望数フォーマ
５の外周に配置した。また、前記積層ブロック４は幅の
異なるテープ状複合線材３を上のものが順次幅が広くな
るように積層して断面台形にした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明のセラミックス超電導導体
は、電力ケーブル等のように電力輸送に利用可能なもの
である。

【０００２】

【従来の技術】近年、Ｙ−Ｂａ−Ｃｕ−Ｏ系、Ｂｉ−
（Ｐｂ）−Ｓｒ−Ｃａ−Ｃｕ−Ｏ系、Ｔｌ−Ｂａ−Ｃａ
−Ｃｕ−Ｏ系等のように、液体窒素温度を越えるＴｃを
持ったセラミックス超電導体が知られている。このよう
なセラミックス超電導体を例えばケーブル等に適用すべ
く、その線材化技術の開発が行われている。一般に線材
化する方法としては金属シ−ス法が用いられている。こ
れは超電導体となり得るセラミックス原料を金属材（通
常は金属製パイプ）内に充填してビレットとし、これを
断面減少加工して所望形状・寸法の複合線材に仕上げ、
しかる後、熱処理を行ってセラミックス超電導導体とす
るものである。

【０００３】得られる複合線材には断面形状が丸型、楕
円形、四角形、テ−プ状等のもの等各種ある。また、テ
−プ状のものにも図５（ａ）に示すように金属材１内に
セラミックス超電導体２が単芯埋設されているもの、図
５（ｂ）に示すように金属材１内にセラミックス超電導
体２が断続的に多数埋設されているもの（多芯線材）、
図５（ｃ）に示すように金属材１内にセラミックス超電
導体２が多芯埋設されているもの（多層線材）、図５
（ｄ）に示すように金属材１の内部にセラミックス超電
導体が渦巻状に埋設されているもの、さらには、図示さ
れていないが、金属材の内部にセラミックス超電導体が
同心円状に配置されたもの等があり、種々試作検討され
ている。

【０００４】前記の断面減少加工としては、得られる線
材の形状に応じて押し出し、圧延、スウェ−ジング、引
き抜き等の従来の塑性加工法がそのまま適用されてい
る。

【０００５】前記の金属材１の材質としては熱伝導性、
電気伝導性に優れた材料、例えばＡｇ，Ａｇ合金、Ｃ
ｕ，Ｃｕ合金等が適用できるが、酸素透過性の点でＡ
ｇ，Ａｇ合金を用いる例が多い。

【０００６】このような複合線材をケ−ブル等のような
電力輸送用導体に使用することが検討されている。図４
（ａ）に示すものは電力輸送用として使用されるセラミ
ックス超電導導体の一例である。これは図５（ａ）に示
すようにセラミックス超電導体１と金属財２とを複合し
テープ状にした複合線材３を、金属製パイプまたは金属
製丸棒等のフォーマ５の外周に複数枚、螺旋状に多層巻
きしたものである。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】図４（ａ）に示したセ
ラミックス超電導導体は、複合線材３をフォーマ５の外
周に螺旋状に巻いた後、その上に同様にして複合線材３
を巻付けて多層巻きされるため、巻き層数が多くなると
作業性が低下するという欠点があった。また、多層にす
るため外側の複合線材３と内側の複合線材３とが同一位
置になるとは限らず、図４（ｂ）に示すようにずれるこ
とがあり、その結果、外側の複合線材３が変形してＩｃ
特性が低下するという欠点もあった。

【０００８】本発明の目的は、製造時の作業性が良く、
複合線材の前記のような変形が生ぜず、複合線材におけ
る超電導体の超電導特性が劣化することがなく、高Ｉｃ
特性を有するセラミックス超電導導体を提供することに
ある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明のうち請求項１の
セラミックス超電導導体は、図３（ａ）に示すようにセ
ラミックス超電導体１と金属材２とを複合した同一幅の
テープ状複合線材３を複数枚積層して積層ブロック４を
作成し、この積層ブロック４を図１のように所望数フォ
ーマ５の外周に配置してなるものである。

【００１０】本発明のうち請求項２のセラミックス超電
導導体は、図３（ｂ）に示すようにセラミックス超電導
体１と金属材２とを複合したテープ状複合線材３であっ
て幅の異なるものを複数枚、上の方が順次幅が広くなる
ように積層して断面台形の積層ブロック４を作成し、こ
の積層ブロック４を図２のように所望数フォーマ５の外
周に配置してなるものである。

【００１１】本発明のセラミックス超電導導体の一例を
示す図１、図２（ａ）（ｂ）において、３は金属材１と
セラミックス超電導体２とを複合したテープ状複合線
材、４はそのテープ状複合線材３を複数枚積層した積層
ブロック、５は同積層ブロック４を配置するフォーマで
ある。

【００１２】前記積層ブロック４のうち図３（ａ）に示
すものは、図１のセラミックス超電導導体に使用するも
のであり、セラミックス超電導体１と金属材２とを複合
したテープ状複合線材３を、幅の同じものを多数枚用意
しておき、それを積層して、断面形状を方形にしてあ
る。

【００１３】前記積層ブロック４のうち図３（ｂ）に示
すものは、図２のセラミックス超電導導体に使用するも
のであり、セラミックス超電導体１と金属材２とを複合
したテープ状複合線材３の、幅の異なるものを多数枚用
意しておき、それを、上に順次幅の広いもの積層して断
面形状を台形にしてある。

【００１４】ここで使用されるテープ状複合線材３は断
面形状に制約がなく、例えば図５（ａ）に示した単芯状
のもの、図５（ｂ）に示した多芯状のもの、或は図５
（ｃ）に示した多層状のもの等いずれを用いても差し支
えがない。また、テープ状複合線材３の幅、厚さはフォ
ーマ５の外径、材質に応じて種々選定できるが、テープ
状複合体３におけるセラミックス超電導体１に付加され
る曲げ歪みは極力小さい方が望ましい。更に、積層ブロ
ック一個当りのテープ状複合線材３の枚数、あるいはフ
ォーマ５の外周に配置する積層ブロック４の数（ブロッ
ク数）にも制約はなく、いずれも電流容量或は得られる
セラミックス超電導導体の外径等を考慮して決定すれば
よい。

【００１５】前記フォーマ５の材質には特に制約はない
が、例えば、Ｃｕ．ＳＵＳ、Ａｌ、Ｆｅ等の金属材料、
あるいはポリエチレン、ナイロン、テフロン、ポリエス
テル等のプラスチック等が適用できる。フォーマ５の構
造や形状も通常のパイプの他、例えばパイプに波付け加
工を施したものとか、テープ状材料を螺旋状に巻いて円
筒状にしたもの等でもよい。テープ状材料を螺旋状に巻
いた場合はフォーマ５自体が可撓性を有するだけでな
く、その外周に積層ブロック４を配置して得られるセラ
ミックス超電導体全体にも可撓性が付与されるので、長
尺なセラミックス超電導体の場合に特に適する。

【００１６】次に、本発明のセラミックス超電導導体の
製造方法の一例を説明する。初めに超電導体となり得る
セラミックス原料と金属とのテープ状複合線材３を作製
する。その方法は通常の金属シース法がそのまま適用で
きる。具体的には超電導体となり得るセラミックス原料
を金属パイプ内に充填してビレットとし、これを塑性加
工して所望形状、寸法の複合線材３に仕上げる。例えば
押し出し、スウェージング、圧延、引き抜きなどが適用
できる。テープ状複合線材３の形状は単芯テープ状の
他、例えば多層状の線材でも差し支えない。このテープ
状複合線材３は熱処理して前記セラミックス原料を超電
導導体にしておいてもよいが、後記するように、このテ
ープ状複合線材３を積層して積層ブロック４にしてから
熱処理を行うことも可能である。

【００１７】そして、前記のテープ状複合線材３を所望
枚数積層して図３（ａ）（ｂ）に示すような積層ブロッ
ク４を形成する。この場合、積層ブロック４の幅方向両
側面８、９（図３）のうち例えば一方の側面８を半田付
けして固定しておくのがよく、このようにすると積層さ
れたテープ状複合線材３が位置ずれしたり、積層ブロッ
ク４が型崩れしたりしにくくなる。この側面９の半田付
けは後記するテープ６を粗いピッチで押え巻きした後、
そのテープ６の巻きピッチの間から行ってもよい。

【００１８】また、積層ブロック４の他の形成方法とし
ては、例えば、幅の異なる長尺なテープ状複合線材３を
熱処理後にボビン等に巻き取っておき、それを複数本同
時に引き出しながら重ねて束ねて積層してもよい。

【００１９】前記のようにして得られた積層ブロック４
を複数本用意しておく。これらをフォーマ５の外周に螺
旋状に巻付ける。この巻付けピッチは種々選定できる。
また、巻付けた積層ブロック４のうち半田付けされてい
ない他方の側面９を半田付けして固定する。積層ブロッ
ク４はフォーマ５の外周に直線状に配置することもでき
るが、螺旋状に巻付けた方が全体に可撓性が付与されて
好ましい。また、フォーマ５の表面と積層ブロック４の
最下層のテープ状複合線材３とが相互に接触するよう
に、積層ブロック４をテープ幅方向に湾曲させてフォー
マ５の外周に配置するのが望ましい。

【００２０】更に、フォーマ５の外周に配置した積層ブ
ロック４の外周に、必要に応じてテープ６を押え巻きし
て積層ブロック４を固定して、図１、図２（ｂ）に示し
たようなセラミックス超電導導体が得られる。

【００２１】

【作用】本発明のうち請求項１のセラミックス超電導導
体では、予め同一幅のテープ状複合線材３を積層した積
層ブロック４がフォーマ５の外周に複数本配置されてい
るので、内側と外側のテープ状複合線材３が位置ずれす
ることがなく、従って外側の複合線材３が変形すること
もない。

【００２２】本発明のうち請求項２のセラミックス超電
導導体では、積層ブロック４の断面形状が上方が幅広に
なる台形であるため、その積層ブロック４を丸棒状ある
いは円筒状のフォーマ５の外周に配置すると隣接する積
層ブロック４の側面同士が接触するので、テープ状複合
線材３がより一層位置ずれしにくくなり、従って外側の
複合線材３がより一層変形しにくくなる。

【００２３】

【請求項１の発明の実施例１】ＢｉＰｂＳｒＣａＣｕＯ
系の一次原料粉を外径２５ｍｍφ、内径２０ｍｍφ、の
Ａｇパイプ内に充填してビレットとし、これを塑性加工
して幅５ｍｍ、厚さ０．２ｍｍの複合線材に仕上げた。
これを大気中８４０℃×１００ｈ熱処理して超電導テー
プ線材を得た。次に、得られたテープ線材を５枚積層
し、一端を半田付けして固定した。これらを合計１０ブ
ロック作製した。これらを外径３５ｍｍφ、内径３０ｍ
ｍφのＳＵＳ製フォーマ上にピッチ１ｍとなるように螺
旋状に巻きつけ、最後にもう一端を半田付けして第３図
に示したような全長１ｍのセラミックス超電導導体を作
製した。

【００２４】得られたセラミックス超電導導体について
液体窒素中、０磁場におけるＩｃを測定した結果、５０
０（Ａ）の優れた特性が得られた。

【００２５】

【請求項１の発明の実施例２】前記実施例１と同様なセ
ラミックス超電導導体を作製した後、最外層に厚さ０．
０５ｍｍ、幅２０ｍｍのＣｕテープを螺旋状に巻付けて
固定した。この場合、Ｃｕテープを粗いピッチで押え巻
きした後、積層ブロック４の他方の側面９を半田付けし
て固定した。

【００２６】得られた果ラミックス超電導導体について
液体窒素中、０磁場におけるＩｃを測定した結果、４７
０（Ａ）の優れた特性が得られた。

【００２７】

【請求項１の発明の実施例１、２との比較例】前記実施
例１と同様な方法で幅５ｍｍ、厚さ０．２５ｍｍの超電
導テープ状複合線材得、これを実施例１と同様に熱処理
してテープ状複合線材３におけるセラミックス原料を超
電導にした。このようにして得られたテープ状複合線材
３を積層して積層ブロッを得た。これを外径３５ｍｍ
φ、内径３０ｍｍφのＳＵＳ製フォーマ上にピッチ１ｍ
となるように螺旋状に、合計５層巻き得付けてセラミッ
クス超電導導体を作製した。

【００２８】得られたセラミックス超電導導体について
液体窒素中、Ｏ磁場におけるＩｃを測定した結果、２７
０（Ａ）であり、本発明方に比較して極めて劣るもので
あった。測定後、内部のテープ状複合線材を調査したと
ころ、第２図に示してあるようにテープ状複合線材が変
形していることがわかった。

【００２９】

【請求項２の発明の実施例１】ＢｉＰｂＳｒＣａＣｕＯ
系の一次原料粉を、外径２５ｍｍφ、内径２０ｍｍφの
Ａｇパイプ内に充填してビレットとし、これを塑性加工
して幅５ｍｍ、５．２ｍｍ、５．４ｍｍ、５．５ｍｍ、
５．６ｍｍ、５．８ｍｍ、６ｍｍ、６．２ｍｍ、厚さ
０．２５ｍｍの８種類のテープ状複合線材３に仕上げ
た。これを大気中８４０℃×１００ｈ熱処理してテープ
状複合線材３におけるセラミックス原料を超電導にし
た。このようにして得られた８枚のテープ状複合線材３
を幅の広いものを上にして積層し、その幅方向一方の側
面８を半田付けして固定した積層ブロック４を、２０ブ
ロック作製した。これらの積層ブロック４を外径３５ｍ
ｍφ、内径３０ｍｍφのＳＵＳ製フォーマ５の外周にピ
ッチ１ｍとなるように螺旋状に巻きつけ、その後に、積
層ブロック４の他方の側面９を半田付けして、図１に示
したような全長１ｍのセラミックス超電導導体を作製し
た。

【００３０】得られたセラミックス超電導導体について
液体窒素中、０磁場におけるＩｃを測定した結果、７０
０（Ａ）の優れた特性が得られた。

【００３１】

【請求項２の発明の実施例２】実施例１と同様なセラミ
ックス超電導導体を作製した。このとき、フォーマ５と
積層ブロック４の最下層のテープ状複合線材３とが相互
に接触するように、積層ブロック４をテープ状複合線材
３の幅方向に曲げて巻付けた。その後、更に最外層に厚
さ０．０５ｍｍ、幅２０ｍｍのＣｕテープを螺旋状に押
え巻きし、その後に、積層ブロック４の他方の側面９を
半田付けして固定した。

【００３２】得られたセラミックス超電導導体について
液体窒素中、０磁場におけるＩｃを測定した結果、６８
０（Ａ）の優れた特性が得られた。

【００３３】

【請求項２の発明の実施例１、２との比較例】請求項２
の発明の実施例１と同様な方法で幅５ｍｍ、厚さ０．２
５ｍｍのテープ状複合線材３を得、これを実施例１と同
様に熱処理してテープ状複合線材３におけるセラミック
ス原料を超電導体にした。このようにして得られたテー
プ状複合線材３を積層ブロックにせずにそのままの状態
で、外径３５ｍｍφ、内径３０ｍｍφのＳＵＳ製のフォ
ーマ５の外周にピッチ１ｍとなるように螺旋状に、合計
８層巻付けてセラミックス超電導導体を作製した。

【００３４】得られたセラミックス超電導導体につい
て、液体窒素中、０磁場におけるＩｃを測定した結果、
４７０（Ａ）であり、本発明方に比較して極めて劣るも
のであった。また、測定後、内部のテープ状複合線材を
調査したところ、図３（ｂ）に示してあるようにテープ
状複合線材３が変形していることがわかった。

【００３５】

【発明の効果】本発明のセラミックス超電導導体は、従
来のようなテープ状複合線材３の変形による超電導特性
の低下がなく、高Ｉｃのセラミックス超電導導体とな
り、ケーブル用導体として適用が可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のセラミックス超電導導体の一実施例を
示す斜視図。

【図２】（ａ）は本発明のセラミックス超電導導体の他
の実施例を示す正面図、（ｂ）は同セラミックス超電導
導体の外周に押え巻テープを巻いた状態の実施例を示す
正面図。

【図３】（ａ）（ｂ）は本発明のセラミックス超電導導
体に使用される積層ブロックの異なる例を示す斜視図。

【図４】（ａ）は従来のセラミックス超電導導体の一例
を示す斜視図、（ｂ）は同セラミックス超電導導体の部
分詳細図。

【図５】（ａ）〜（ｄ）は従来のテープ状複合線材の異
なる例を示す正面図である。

【符号の説明】

１ セラミックス超電導体 ２ 金属材 ３ 複合線材 ４ 積層ブロック ５ フォーマ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 悟 東京都千代田区丸の内２丁目６番１号 古 河電気工業株式会社内 (72)発明者 田中 靖三 東京都千代田区丸の内２丁目６番１号 古 河電気工業株式会社内 (72)発明者 原 築志 東京都調布市西つつじケ丘２丁目４番１号 東京電力株式会社技術研究所内 (72)発明者 石井 英雄 東京都調布市西つつじケ丘２丁目４番１号 東京電力株式会社技術研究所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 セラミックス超電導体１と金属材２とを
   複合した同一幅のテープ状複合線材３を複数枚積層して
   積層ブロック４を作成し、この積層ブロック４を所望数
   フォーマ５の外周に配置したことを特徴とするセラミッ
   クス超電導導体。
2. 【請求項２】 セラミックス超電導体１と金属材２とを
   複合したテープ状複合線材３であって幅の異なるものを
   複数枚、上の方が順次幅が広くなるように積層して断面
   台形の積層ブロック４を作成し、この積層ブロック４を
   所望数フォーマ５の外周に配置したことを特徴とするセ
   ラミックス超電導導体。