JPH0570815U - スローアウェイ式穴明け工具 - Google Patents
スローアウェイ式穴明け工具Info
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- JPH0570815U JPH0570815U JP1085592U JP1085592U JPH0570815U JP H0570815 U JPH0570815 U JP H0570815U JP 1085592 U JP1085592 U JP 1085592U JP 1085592 U JP1085592 U JP 1085592U JP H0570815 U JPH0570815 U JP H0570815U
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Abstract
(57)【要約】
【構成】 工具本体先端に同形状同大で平面視略正三角
形状をなす外周側切刃チップ11と内周側切刃チップ1
2が装着されている。これらは一の辺稜部切刃16とノ
ーズ部切刃17が底刃とされ、切刃間アール刃19が軸
線Oを含む平面上の回転軌跡において軸線Oに垂直な仮
想直線L上に一致するように配設されている。各辺稜部
切刃16,16は交差点Qで交差し、仮想直線Lと外周
側切刃チップ11の辺稜部切刃16とがなす傾斜角θ21
は内周側切刃チップ12の辺稜部切刃16とがなす傾斜
角θ11よりも大きくされ、かつ仮想直線L方向において
軸線Oから交差点Qまでの距離A2と、交差点Qから外
周側切刃チップ11のノーズアール刃18までの距離B
2との比A2:B2が58:42〜55:45の範囲に設
定されている。 【効果】 各切刃チップ11,12に作用する切削負荷
のバランスをとることができ、穴精度が向上する。
形状をなす外周側切刃チップ11と内周側切刃チップ1
2が装着されている。これらは一の辺稜部切刃16とノ
ーズ部切刃17が底刃とされ、切刃間アール刃19が軸
線Oを含む平面上の回転軌跡において軸線Oに垂直な仮
想直線L上に一致するように配設されている。各辺稜部
切刃16,16は交差点Qで交差し、仮想直線Lと外周
側切刃チップ11の辺稜部切刃16とがなす傾斜角θ21
は内周側切刃チップ12の辺稜部切刃16とがなす傾斜
角θ11よりも大きくされ、かつ仮想直線L方向において
軸線Oから交差点Qまでの距離A2と、交差点Qから外
周側切刃チップ11のノーズアール刃18までの距離B
2との比A2:B2が58:42〜55:45の範囲に設
定されている。 【効果】 各切刃チップ11,12に作用する切削負荷
のバランスをとることができ、穴精度が向上する。
Description
【0001】
この考案は、工具本体の先端部に底刃を形成する切刃チップを備えたスローア ウェイ式穴明け工具に関するものである。
【0002】
このようなスローアウェイ式穴明け工具としては、例えば図5に示すようなも のが知られている。 これは実開昭62−201612号公報に記載されたものであって、軸線O回 りに回転される工具本体1の先端部に、内周側切刃チップ2と外周側切刃チップ 3とが装着されて構成されている。これらの切刃チップ2,3は、互いに同形状 同大の平面視略正三角形状をなすポジティブスローアウェイチップであり、その 各辺稜が辺稜部切刃4…とされるとともに、この正三角形の頂部にはその頂角よ り大なる角をなす2つのノーズ部切刃5,5が形成されている。また、この2つ のノーズ部切刃5,5同志の交差部にはノーズアール刃6が、さらに辺稜部切刃 4とノーズ部切刃5との交差部には切刃間アール刃7が形成されている。
【0003】 ここで内周側切刃チップ2は、一の辺稜部切刃4とこの辺稜部切刃4に隣接し てその内周側に位置するノーズ部切刃5とが底刃とされており、これらの辺稜部 切刃4とノーズ部切刃5との交差部の切刃間アール刃7を軸線O方向先端側に突 出させて工具本体1に装着されている。またこの内周側切刃チップ2は、底刃と されたノーズ部切刃5に隣接するノーズアール刃6が軸線Oを越えてオーバーセ ンターとなるように配設されている。 一方、外周側切刃チップ3は、やはり一の辺稜部切刃4とこの辺稜部切刃4に 隣接してその外周側に位置するノーズ部切刃5とが底刃とされており、これらの 辺稜部切刃4とノーズ部切刃5との交差部の切刃間アール刃7を軸線O方向先端 側に突出させて工具本体1に装着されている。さらにこの外周側切刃チップ3は 、底刃とされたノーズ部切刃5にノーズアール刃6を介して隣接するノーズ部切 刃5が軸線O方向後方に向かうにしたがい、この軸線Oに対して半径方向内方に 向かうように配設されている。
【0004】 そして、これら内周側切刃チップ2と外周側切刃チップ3とは、図6に示すよ うに軸線Oを含む平面上の回転軌跡において、互いの底刃とされる辺稜部切刃4 ,4が交差するように、また両切刃チップ2,3の軸線O方向先端側に突出する 切刃間アール刃7,7が軸線Oに垂直な一の仮想直線L上に一致するように配設 されている。さらに、このスローアウェイ式穴明け工具では両切刃チップ2,3 は、前記仮想直線Lと内周側切刃チップ2の底刃とされる辺稜部切刃4とがなす 傾斜角θ1が、仮想直線Lと外周側切刃チップ3の底刃とされる辺稜部切刃4と がなす傾斜角θ2と等しくなるように配設されており、かつこれらの辺稜部切刃 4,4は互いにその中点を交差点Pとして交差するように設定されている。 このような構成のスローアウェイ式穴明け工具では、一つの切刃チップを内周 側切刃チップ2として3回、外周側切刃チップ3として3回使用でき、一つの切 刃チップで合計6回の使い回しが可能となって、チップに形成された切刃を満遍 無く使い切り、切刃チップの利用効率を極限まで向上させることができる。
【0005】
ところで、このような穴明け工具において工具本体1の1回転当りに底刃が被 削材を削り取る体積は、軸線Oに対して径方向外方側の方が径方向内方側よりも 回転半径が大きくなる分だけ多くなる。従って切削時に各切刃チップに作用する 切削負荷についても、内周側切刃チップ2よりも外周側切刃チップ3の方が大き くなる。
【0006】 しかしながら上記構成のスローアウェイ式穴明け工具では、内周側切刃チップ 2の辺稜部切刃4と外周側切刃チップ3の辺稜部切刃4とが上述のように軸線O を含む平面上の回転軌跡において互いの中点で交差するように配設されており、 かつ内周側切刃チップ2のノーズアール刃6が軸線Oを越えてセンターオーバー となるように配設されているため、図6に示すように前記仮想直線Lの方向にお いて軸線Oから外周側切刃チップ3の底刃と内周側切刃チップ2の底刃との交差 点Pまでの距離A1よりも、この交差点Pから軸線Oに対して半径方向外側に位 置する外周側切刃チップ3のノーズアール刃6までの距離B1の方が大きくなっ てしまうことは避けられない。 すなわち、より大きな切削負荷が作用する外周側切刃チップ3の底刃とされる 辺稜部切刃4の方が、1回の切削時においてより多くの部分が切削に供されるこ ととなり、これによって内周側切刃チップ2と外周刃切刃チップ3とが受ける切 削負荷のバランスが損なわれ、工具本体1が軸線Oに対する径方向に振れを起こ したり、工具本体1に大きな撓みが生じてしまい、許容範囲を越える穴精度の劣 化を招くおそれがあった。
【0007】
本考案は、このような課題を解決するためになされたもので、外周側切刃チッ プと内周側切刃チップとを、工具本体の軸線を含む平面上の回転軌跡において、 内周側切刃チップの底刃とされる辺稜部切刃と外周側切刃チップの底刃とされる 辺稜部切刃とが互いに交差し、両切刃チップの軸線方向先端側に突出する切刃間 アール刃が該軸線に垂直な一の仮想直線上に一致し、この仮想直線と外周側切刃 チップの底刃とされる辺稜部切刃とがなす傾斜角が、この仮想直線と内周側切刃 チップの底刃とされる辺稜部切刃とがなす傾斜角よりも大きくなるように配設し 、かつ当該仮想直線の方向における軸線から外周側切刃チップの底刃と内周側切 刃チップの底刃との交差点までの距離と、この交差点から前記軸線に対して半径 方向外側に位置する外周側切刃チップのノーズアール刃までの距離との比を58 :42〜55:45の範囲に設定したことを特徴とする。
【0008】
このような構成のスローアウェイ式穴明け工具によれば、外周側切刃チップの 辺稜部切刃およびノーズ部切刃よりも、内周側切刃チップの辺稜部切刃およびノ ーズ部切刃の方が、より多くの部分が1回の切削時に底刃として使用に供される こととなる。すなわち、大きな切削負荷が作用する外周側切刃チップでは切削に 供される底刃の長さを短くし、逆に切削負荷の比較的小さな内周側切刃チップで は底刃の長さを長くすることができるため、切削時に両切刃チップが受ける切削 負荷のバランスを保つことが可能となる。
【0009】
以下、この考案の実施例について説明する。ただし、本実施例では工具本体の 構成は図5および図6に示した従来の工具本体1と略同様であり、説明を省略す る。 また、本実施例において外周側切刃チップ11および内周側切刃チップ12と して使用に供されるスローアウェイチップも、上記従来例と同様のチップが用い られている。 すなわち、これら外周側切刃チップ11および内周側切刃チップ12は、図1 および図2に示すように平面視略正三角形状をなすポジティブスローアウェイチ ップであって、すくい面とされる上面13と、この上面13に平行に設けられ着 座面とされる下面14と、前記上面13の外周から前記下面14の外周に至る逃 げ面とされる側面15とを有している。そして、この側面15の逃げ角αは5° 〜15°になされている。また、前記正三角形状の上面13の各辺稜はそれぞれ 辺稜部切刃16とされ、正三角形状の頂部には2つのノーズ部切刃17、17が V字状に形成されている。
【0010】 これらノーズ部切刃17、17は、前記正三角形の頂部の二等分線に対して対 称でかつ正三角形の頂角β=60°より大なるノーズ角γをなすようになされて いる。このノーズ角γは100°〜120°に設定するのが望ましく、この外周 側切刃チップ11および内周側切刃チップ12では、100°になされている。 そして、前記ノーズ部切刃17、17同志の交差部には、ノーズアール刃18が 形成されており、このノーズアール刃18の曲率半径R1は0.4〜1.2mmにな されている。 一方、前記辺稜部切刃16の長さCは、3つの辺稜部切刃16,16,16の 内接円の直径をDとすると、31/2Dの40%〜60%にするのが望ましく、こ の外周側切刃チップ11および内周側切刃チップ12では、31/2Dの50%に なされている。また、前記辺稜部切刃16と前記ノーズ部切刃17との交差部に は、切刃間アール刃19が形成されており、その曲率半径R2は0.2〜0.8mm になされている。
【0011】 次に、このような外周側切刃チップ11および内周側切刃チップ12の配置を 、図3を参照して説明する。ただし、この図は外周側切刃チップ11および内周 側切刃チップ12の軸線Oを含む平面における回転軌跡を示すものである。 この図において、前記内周側切刃チップ12は、その一の辺稜部切刃16とこ の辺稜部切刃16に切刃間アール刃19を介してその内周側に位置するノーズ部 切刃17とが底刃とされ、かつ前記切刃間アール刃19がその両端に隣接する辺 稜部切刃16およびノーズ部切刃17より軸線O方向先端側に突出して位置する ように配設されている。また、前記内周側切刃チップ12は、底刃とされた前記 ノーズ部切刃17に隣接するノーズアール刃18が軸線Oを越えてオーバーセン ターとなるように配設されている。 そして、前記軸線Oに垂直で前記切刃間アール刃19の先端を通る仮想直線L と前記辺稜部切刃16とがなす傾斜角θ11は、本実施例では5°に設定されてい る。従って前記ノーズ部切刃17と前記仮想直線Lとがなす傾斜角θ12は15° に設定される。
【0012】 また、前記外周側切刃チップ11は、その一の辺稜部切刃16とこの辺稜部切 刃16に切刃間アール刃19を介してその外周側に位置するノーズ部切刃17と が底刃とされ、前記切刃間アール刃19がその両端に隣接する辺稜部切刃16お よびノーズ部切刃17より前記軸線O方向先端側に突出して位置し、かつこの切 刃間アール刃19の先端が前記仮想直線L上に一致するように配設されている。 またこの外周側切刃チップ11は、底刃とされたノーズ部切刃17にノーズアー ル刃18を介して隣接するノーズ部切刃17が前記軸線O方向後端側に向かうに したがい軸線Oに対して半径方向内方に向かうように配設されている。 さらに、前記仮想直線Lとこの外周側切刃チップ11の辺稜部切刃16とがな す傾斜角θ21は、この仮想直線Lと前記内周側切刃チップ12の辺稜部切刃16 とがなす傾斜角θ11よりも大きくなるように設定されており、本実施例では8° に設定されている。従って、外周側切刃チップ11の底刃とされるノーズ部切刃 17と前記仮想直線Lとがなす傾斜角θ22は、本実施例では12°に設定されて いる。なお、この底刃とされたノーズ部切刃17にノーズアール刃18を介して 隣接するノーズ部切刃17の軸線O方向に対する逃げ角εは0°〜5°が望まし く、本実施例では2°に設定されている。
【0013】 そして、このような配置のもとで前記外周側切刃チップ11と前記内周側切刃 チップ12とは、軸線Oを含む前記平面における回転軌跡において前記内周側切 刃チップ12の底刃とされる辺稜部切刃16と前記外周側切刃チップ11の底刃 とされる辺稜部切刃16とが互いに交差するように配設されている。さらに、こ れらの切刃チップ11,12は、前記仮想直線Lの方向における軸線Oから外周 側切刃チップ11の辺稜部切刃16と内周側切刃チップ12の辺稜部切刃16と の交差点Qまでの距離A2と、この交差点Qから軸線Oに対して半径方向外側に 位置する外周側切刃チップ11のノーズアール刃18までの距離B2との比A2: B2が、58:42〜55:45の範囲内になるように設定されていて、本実施 例では57:43となるように設定されている。 なお本実施例では、これらの切刃チップ11,12の前記回転軌跡は、一方の 切刃チップの回転軌跡を前記交差点Qを中心に回動させることにより、他方の切 刃チップの回転軌跡に重なり合うように配設されている。従って本実施例では、 外周側切刃チップ11および内周側切刃チップ12の底刃として切削に供される 切刃部分の長さは、内周側切刃チップ12のセンターオーバーとなるノーズアー ル刃18近傍の部分を除いて考えると、切刃チップの一の辺稜部切刃16とその 両端に位置する2つのノーズ部切刃17,17との長さの和に略等しくなるよう に設定される。
【0014】 図4は、このような構成のスローアウェイ式穴明け工具によって穴明けを実施 した状態を示す図である。この図において内周側切刃チップ12の切刃のうち、 実際の切削に供されるのは、底刃とされるノーズ部切刃17と、このノーズ部切 刃17の外周側に隣接する切刃間アール刃19と、この切刃間アール刃19の外 周側に隣接する辺稜部切刃16のうち前記切刃間アール刃19から前記交差点Q に至る部分とである。また、底刃とされる前記ノーズ部切刃17に隣接してオー バーセンターとなっているノーズアール刃18は切削に供されない。 さらに前記外周側切刃チップ11の切刃のうち実際の切削に供されるのは、底 刃とされる辺稜部切刃16のうち前記交差点Qから外周側に位置する部分と、こ の辺稜部切刃16の外周側に隣接する切刃間アール刃19と、この切刃間アール 刃19の外周側に隣接するノーズ部切刃17と、このノーズ部切刃17の外周側 に隣接するノーズアール刃18である。
【0015】 そして本実施例では、上述のように前記仮想直線Lと内周側切刃チップ11の 底刃とされる辺稜部切刃16とがなす傾斜角θ11、および仮想直線Lと外周側切 刃チップ12の底刃とされる辺稜部切刃16とがなす傾斜角θ21が、それぞれ5 °および8°に設定されており、これによって前記仮想直線L方向における軸線 Oから前記交差点Qまでの距離A2と交差点Qから外周側切刃チップ11のノー ズアール刃18までの距離B2との比A2:B2が57:43となるように設定さ れていて、内周側切刃チップ12よりも外周側切刃チップ11の方が底刃として 切削に供される切刃部分の長さが短くなるようになっている。すなわち、切削時 に大きな切削負荷が作用する外周側切刃チップ11においては底刃として切削に 供される切刃部分が短くなっている一方、比較的切削負荷の小さな内周側切刃チ ップ12では相対的に切削に供される切刃部分を長くとることができる。 従って本実施例によれば、切削時に両切刃チップ11,12が受ける切削負荷 のバランスを保つことが可能となり、軸線Oに対する径方向への工具本体の振れ を抑えて、形成される穴の精度の向上を図ることができる。
【0016】 ところで、本実施例では前記仮想直線L方向の距離の比A2:B2を57:43 としたが、この比A2:B2は上述のように58:42〜55:45の範囲に設定 されるべきであり、前記比A2:B2がこの範囲を越えて大きくなったり小さくな ったりした場合には、いずれの場合にも切刃チップ11,12が切削時に受ける 切削負荷のバランスが損なわれてしまうおそれが生じる。 例えば、本実施例や図5および図6に示した従来例のように、軸線O回りに回 転される工具本体の先端部に、底刃の中心部を形成する内周側切刃チップ12と 、底刃の外周部を形成する外周側切刃チップ11とが設けられたスローアウェイ 式穴明け工具では、各切刃チップ11,12に作用する切削負荷の差によって工 具本体に撓みが生じることが知られている。
【0017】 この撓みは、上述のように外周側切刃チップ11に大きな切削負荷が作用する ことから、通常その軸線Oに対する径方向において工具本体が内周側切刃チップ 12の装着された側に向かって膨らむように生じることとなる。 このため、外周側切刃チップ11は相対的に工具本体の回転軸から径方向内側 に変位してしまい、これによって形成される穴の径が縮小してしまうことになる 。従って、前記比A2:B2が55:45よりも小さくなると、すなわち前記回転 軌跡における底刃の長さにおいて外周側切刃チップ11の切刃部分の占める割合 が前記範囲よりも大きくなると、工具本体の撓みによる外周側切刃チップ11の 変位が大きくなり過ぎて、形成される穴の径が許容される範囲を越えてしまう結 果となる。
【0018】 一方、逆に前記比A2:B2を58:42よりも大きく設定し、すなわち前記回 転軌跡における底刃の長さにおいて外周側切刃チップ11の切刃部分の占める割 合が前記範囲よりも小さくした場合には、外周側切刃チップ11の変位は小さく 抑えられるため、形成される穴の径の縮小については防ぐことができる。 しかしながら、このような場合でも工具本体の撓み自体は依然として生じてお り、この結果撓んだ工具本体の内周側切刃チップ12が装着された側の側面と、 穴の内周部との間の間隙(クリアランス)が極端に小さくなってしまい、この間 隙に切削により生じた切屑等が噛み込まれて穴の面粗度を劣化させたり、切削抵 抗の増大を招いたりするおそれがある。
【0019】 これに対して本実施例では、前記比A2:B2を上述の範囲内に設定することに より、工具本体の撓みによる外周側切刃チップ11の過大な変位を防いで穴径の 拡大を許容範囲内に抑え、穴精度を維持することができると同時に、撓んだ工具 本体の側面と穴の内周部との間隙を確保して穴の面粗度の劣化や切削抵抗の増大 を防止することが可能となる。
【0020】 また本実施例では、内周側切刃チップ12の底刃とされる辺稜部切刃16と前 記仮想直線Lとがなす傾斜角θ11を5°に、外周側切刃チップ11の辺稜部切刃 16と仮想直線Lとがなす傾斜角θ21を8°にそれぞれ設定したが、傾斜角θ11 については2°〜7°の範囲に、傾斜角θ21については3°〜8°の範囲内にそ れぞれ設定されるのが望ましい。 これは、傾斜角θ11,θ21が前記範囲を越えて大きくなると外周側切刃チップ 11の最外周に位置するノーズ部切刃17に適当な逃げ角εを与えることができ なくなり、逆に傾斜角θ11,θ21が前記範囲より小さくなると両切刃チップ11 ,12の辺稜部切刃16,16が仮想直線Lに沿う一直線状に近い状態となって しまい、切削時の押し込み力の増大を招く結果となるからである。
【0021】 また本実施例では、一方の切刃チップの回転軌跡を前記交差点Qを中心に回動 させることによって他方の切刃チップの回転軌跡に重なり合うように両切刃チッ プ11,12が配設されており、かつ1回の切削においては、外周側切刃チップ 11の交差点Qから外周側の辺稜部切刃16およびノーズ部切刃17と、内周側 切刃チップ12の交差点Qから内周側の辺稜部切刃16およびノーズ部切刃17 とが底刃として切削に供される。 従って、内周側切刃チップ12として使用されるスローアウェイチップは、そ れ自体を120°ずつ回転させることによって3回切削に供することが可能であ り、この場合切削に供される切刃部分は図1においてMで示す範囲となる。一方 、外周側切刃チップ11として使用されるスローアウェイチップも、同様に3回 切削に供することが可能であり、この場合には切削に供される切刃部分は図1に おいてNで示す範囲となる。
【0022】 このように本実施例によれば、内周側切刃チップ12として3回切削に供した 場合の切刃部分と、外周側切刃チップ11として3回切削に供した場合の切刃部 分とは、互いに重なり合うことなく連続することになる。従って、1つの切刃チ ップを内周側切刃チップ12として3回、外周側切刃チップ11として3回使用 できて合計6回の使い回しが可能となり、スローアウェイチップに形成された切 刃を満遍無く使いきって切刃チップの利用効率を向上させることができる。
【0023】 また、上記構成のスローアウェイ式穴明け工具にあっては、外周側切刃チップ 11と内周側切刃チップ12とが、ともに底刃とされる辺稜部切刃16とノーズ 部切刃17との交差部の切刃間アール刃19が軸線O方向先端側に突出するよう に配設されており、底刃としては軸線O方向先端側に膨らむ山型に形成されてい る。このため、切削時に辺稜部切刃16から生成される切屑とノーズ部切刃17 から生成される切屑とは互いに干渉し合うこととなり、これによって切屑の分断 が促進され、切屑の排出性を向上させることができる。さらに、切削幅を底刃と される4つの切刃毎に分割させることができるから、切削抵抗を減少させること もできる。
【0024】 なお本実施例においては、外周側切刃チップ11および内周側切刃チップ12 として、すくい面とされる上面13が直平面状になされた切刃チップを採用して いるが、これに限る必要はなく、上面13の外周部にチップブレーカーを設けた スローアウェイチップを用いてもよい。
【0025】
以上に説明したように本考案によれば、内周側切刃チップと外周側切刃チップ との底刃として切削に供される切刃部分の比が58:42〜55:45の範囲に 設定されており、大きな切削負荷の作用する外周側切刃チップでは切刃部分を短 く、切削負荷の比較的小さな内周側切刃チップでは切刃部分を長くして切削負荷 のバランスをとることが可能となる。そしてこれにより、切削時の工具本体の振 れを抑えて穴精度の向上を図ることができる。
【図1】本考案の一実施例に用いられるスローアウェイ
チップの上面13側からの平面図である。
チップの上面13側からの平面図である。
【図2】図1に示すスローアウェイチップのXX断面図
である。
である。
【図3】本考案の一実施例において、外周側切刃チップ
11と内周側切刃チップ12との軸線Oを含む平面にお
ける回転軌跡を示す図である。
11と内周側切刃チップ12との軸線Oを含む平面にお
ける回転軌跡を示す図である。
【図4】本考案の一実施例による切削状態を示す断面図
である。
である。
【図5】従来のスローアウェイ式穴明け工具の先端部を
示す側面図である。
示す側面図である。
【図6】図5に示す従来例の内周側切刃チップ2と外周
側切刃チップ3との軸線Oを含む平面における回転軌跡
を示す図である。
側切刃チップ3との軸線Oを含む平面における回転軌跡
を示す図である。
11 外周側切刃チップ 12 内周側切刃チップ 16 辺稜部切刃 17 ノーズ部切刃 18 ノーズアール刃 19 切刃間アール刃 O 工具本体の軸線 L 軸線Lに垂直で各切刃チップ11,12の切刃間ア
ール刃19,19の先端を通る仮想直線 Q 各切刃チップ11,12の底刃とされる辺稜部切刃
16,16の交差点 A2 仮想直線L方向における軸線Oから交差点Qまで
の距離 B2 仮想直線L方向における交差点Qから外周側切刃
チップ11の外周側に位置するノーズアール刃18まで
の距離 θ11 内周側切刃チップ12の底刃とされる辺稜部切刃
16と仮想直線Lとがなす傾斜角 θ21 外周側切刃チップ11の底刃とされる辺稜部切刃
16と仮想直線Lとがなす傾斜角
ール刃19,19の先端を通る仮想直線 Q 各切刃チップ11,12の底刃とされる辺稜部切刃
16,16の交差点 A2 仮想直線L方向における軸線Oから交差点Qまで
の距離 B2 仮想直線L方向における交差点Qから外周側切刃
チップ11の外周側に位置するノーズアール刃18まで
の距離 θ11 内周側切刃チップ12の底刃とされる辺稜部切刃
16と仮想直線Lとがなす傾斜角 θ21 外周側切刃チップ11の底刃とされる辺稜部切刃
16と仮想直線Lとがなす傾斜角
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 川出 保彦 岐阜県安八郡神戸町大字横井字中新田1528 番地 三菱マテリアル株式会社岐阜製作所 内
Claims (2)
- 【請求項1】 軸線回りに回転される工具本体の先端部
に、底刃の中心部を形成する内周側切刃チップと、底刃
の外周部を形成する外周側切刃チップとを備えたスロー
アウェイ式穴明け工具であって、 前記内周側切刃チップと前記外周側切刃チップとは、同
形状同大の平面視略正三角形状をなすポジティブスロー
アウェイチップであり、その各辺稜が辺稜部切刃とさ
れ、正三角形状の頂部にこの頂部の二等分線に対して対
称でかつ頂角より大なる角をなす2つのノーズ部切刃が
V字状に形成され、この2つのノーズ部切刃同志の交差
部にノーズアール刃が形成されるとともに、前記辺稜部
切刃とノーズ部切刃との交差部には切刃間アール刃が形
成されており、 前記内周側切刃チップは、辺稜部切刃とこの辺稜部切刃
に隣接してその内周側に位置するノーズ部切刃とが底刃
とされ、これらの辺稜部切刃とノーズ部切刃との交差部
の切刃間アール刃を前記軸線方向先端側に突出させ、か
つ底刃とされたノーズ部切刃に隣接するノーズアール刃
が前記軸線を越えてオーバーセンターとなるように配設
され、 前記外周側切刃チップは、辺稜部切刃とこの辺稜部切刃
に隣接してその外周側に位置するノーズ部切刃とが底刃
とされ、これらの辺稜部切刃とノーズ部切刃との交差部
の切刃間アール刃を前記軸線方向先端側に突出させ、か
つ底刃とされたノーズ部切刃にノーズアール刃を介して
隣接するノーズ部切刃が前記工具本体の軸線方向後方に
向かうにしたがい前記軸線に対して半径方向内方に向か
うように配設され、 さらに前記外周側切刃チップと前記内周側切刃チップと
は、前記軸線を含む平面上の回転軌跡において、前記内
周側切刃チップの底刃とされる辺稜部切刃と前記外周側
切刃チップの底刃とされる辺稜部切刃とが互いに交差
し、両切刃チップの前記軸線方向先端側に突出する切刃
間アール刃が前記軸線に垂直な一の仮想直線上に一致
し、この仮想直線と前記外周側切刃チップの底刃とされ
る辺稜部切刃とがなす傾斜角が、前記仮想直線と前記内
周側切刃チップの底刃とされる辺稜部切刃とがなす傾斜
角よりも大きくなるように配設されており、かつ当該仮
想直線の方向における前記軸線から前記外周側切刃チッ
プの底刃と内周側切刃チップの底刃との交差点までの距
離と、この交差点から前記軸線に対して半径方向外側に
位置する前記外周側切刃チップのノーズアール刃までの
距離との比が58:42〜55:45の範囲に設定され
ていることを特徴とするスローアウェイ式穴明け工具。 - 【請求項2】 前記仮想直線と前記内周側切刃チップの
底刃とされる辺稜部切刃とがなす傾斜角が2°〜7°の
範囲に設定されており、かつ前記仮想直線と前記外周側
切刃チップの底刃とされる辺稜部切刃とがなす傾斜角が
3°〜8°の範囲に設定されていることを特徴とする請
求項1記載のスローアウェイ式穴明け工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1085592U JPH0570815U (ja) | 1992-03-04 | 1992-03-04 | スローアウェイ式穴明け工具 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1085592U JPH0570815U (ja) | 1992-03-04 | 1992-03-04 | スローアウェイ式穴明け工具 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0570815U true JPH0570815U (ja) | 1993-09-24 |
Family
ID=11761973
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1085592U Pending JPH0570815U (ja) | 1992-03-04 | 1992-03-04 | スローアウェイ式穴明け工具 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0570815U (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001287112A (ja) * | 2000-04-07 | 2001-10-16 | Hitachi Tool Engineering Ltd | 高送りスローアウェイ式回転工具 |
JP2004505790A (ja) * | 2000-08-16 | 2004-02-26 | コメート プレツィジオーンスヴェルクツォイゲ ローベルト ブロイニング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 回転工具のカッティングプレート |
JP2010528887A (ja) * | 2007-06-07 | 2010-08-26 | ブイマックス インコーポレーテッド | 調整可能な刃先交換式ドリル |
-
1992
- 1992-03-04 JP JP1085592U patent/JPH0570815U/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001287112A (ja) * | 2000-04-07 | 2001-10-16 | Hitachi Tool Engineering Ltd | 高送りスローアウェイ式回転工具 |
JP2004505790A (ja) * | 2000-08-16 | 2004-02-26 | コメート プレツィジオーンスヴェルクツォイゲ ローベルト ブロイニング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 回転工具のカッティングプレート |
JP2010528887A (ja) * | 2007-06-07 | 2010-08-26 | ブイマックス インコーポレーテッド | 調整可能な刃先交換式ドリル |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 19971028 |