JPH05256704A - 輻射熱温度センサ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】外界からの熱影響および気流影響を受け難くし
て指向性感度を良好に保持し、赤外線透過率を向上させ
て、輻射熱温度の検知効率の向上化を得る輻射温度セン
サを提供する。 【構成】前面が開口するケーシング１内に、互いに並設
された一対の温度センサ５ａ，５ｂを収容し、上記ケー
シング１の前面開口部を赤外線透過膜からなるカバー６
で閉塞して、輻射熱エネルギが有する赤外線光をのみを
透過させ、かつ各温度センサをケーシング内での同一空
間に遮断保持して外界からの熱影響を均一とし、このカ
バーにフレネルレンズ部７ａ，７ｂを一体成形して被検
知範囲の互いに隣接する方向に指向させ、これら指向し
た被検知範囲が保有する輻射熱エネルギを集熱して上記
各温度センサに焦点を結ぶ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、たとえば空気調和機に
備えられ、被検知範囲である壁面や床面からの輻射熱温
度を検知する輻射熱温度センサに関する。

【０００２】

【従来の技術】空気調和機には、室内ユニットのたとえ
ば前面下部に輻射熱温度センサを取付け、室内の壁面や
床面から輻射される熱を捕らえて、これら壁面や床面の
温度を間接的に検知し、その検知温度を空調制御に加え
るものがある。ただし、従来の輻射熱温度センサは、限
られた一方向の箇所の温度しか捕らえることができな
い。

【０００３】一方、広範囲の箇所の温度を検知するもの
として、特開昭６３−２３１１３４号公報に示される輻
射熱温度センサがある。これは、所定範囲の輻射熱を集
める集熱手段として、センサ部が凸型に形成されてい
て、左右もしくは上下の視野を独立させている。

【０００４】あるいは、特開昭６１−１４９７５１号公
報に示される空気調和機では、背面側を断熱材で覆い、
表面を透明板で被冠したセンサケースを設け、この内部
に輻射用の温度センサ素子を付設している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ただし、上記特開昭６
３−２３１１３４号公報のものは、複数のセンサが、そ
れぞれ独立した空間に配置されているため、外界からの
熱影響に対して均一性を欠く不具合がある。センサ部が
凸型に形成されているから、取付け面からの露出があっ
て、左右の気流の影響差が生じる。

【０００６】また、輻射熱透過膜の前方に反射筒を形成
したものでは、反射筒によって装置が大形化するという
問題がある。集熱手段として凸レンズ等を用いたもので
は、レンズ自体が赤外線を吸収して、集熱力が小さくて
感度が悪い。そのため、非常に高価なレンズを使用する
か、もしくは非常に感度の高いセンサを用いる必要がで
て、コストに悪影響がある。

【０００７】上記特開昭６１−１４９７５１号公報のも
のは、透明板として、厚いアクリル板で覆っているの
で、強度的には問題がないが、その反面、赤外線透過率
の減衰が顕著であり、検出精度の低下が避けられない。

【０００８】本発明は、上記の事情を考慮してなされた
ものであり、その目的とするところは、外界からの熱影
響および気流影響を受け難くして指向性感度を良好に保
持し、赤外線透過率を向上させて輻射熱温度の検知効率
の向上化につなげた輻射熱温度センサを提供することに
ある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を満足するた
め、本発明は、前面が開口するセンサ本体内に互いに並
設された一対の輻射熱検知部を収容し、上記センサ本体
の前面開口部を赤外線透過膜で閉塞して、輻射熱エネル
ギが有する赤外線光をのみを透過させ、かつ各輻射熱検
知部をセンサ本体内である同一空間に遮断保持して外界
からの熱影響を均一とし、この赤外線透過膜にフレネル
レンズ部を一体成形して被検知範囲の互いに隣接する方
向に指向させ、それぞれの指向した被検知範囲が保有す
る輻射熱エネルギを集熱して上記各輻射熱検知部に焦点
を結ぶようにしたことを特徴とする輻射熱温度センサで
ある。

【００１０】

【作用】一対の輻射熱検知部は、同一空間に遮断保持す
る赤外線透過膜で覆われて、同一空気層にあるので、た
とえ外部から熱影響があっても、同じ程度の影響を受
け、互いの検出精度に差が生じない。互いに異なる機能
をなす赤外線透過膜とフレネルレンズ部との一体化によ
り、必要な部品数が少なくてすみ、構成が簡素となる。
上記フレネルレンズ部の透過効率の設定のみで、輻射熱
温度センサとしての検知効率を得ることができ、感度が
鋭敏となる。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の一実施例を、空気調和機内に
備えられる輻射熱温度センサに適用し、図面を参照して
説明する。図１は、輻射熱温度センサＳを示す。

【００１２】図中１は、矩形状にした前面側に開口部１
ｂを有するセンサ本体であるところのケーシングであ
る。このケーシング１内周面の所定部位には、複数のリ
ブ１ａ…が一体に設けられる。

【００１３】ケーシング１の前面開口部１ｂを除いた部
分に、リブ１ａ…に当接する状態で断熱材２が挿嵌され
る。すなわち、ケーシング１内周面と断熱材２との間に
は、空気層３部分が形成されることになる。

【００１４】上記断熱材２の内周面側で、かつケーシン
グ１内部を左右に仕切る中央部には、突部２ａが一体に
設けられる。この突部２ａの左右部位に、受熱板４で支
持される一対の輻射熱検知部である温度センサ５ａ，５
ｂが並設される。各温度センサ５ａ，５ｂの信号出力
を、これらに接続される図示しないリード線によって取
り出す構成としている。

【００１５】図２に示すように、上記受熱板４は矩形枠
状であり、それ自体の熱容量を低減するため、たとえば
ガラエボの薄膜で形成される。断熱材２の突部２ａは、
受熱板４の図において上下枠部を除いた中央部位置に突
出しており、左右部分は互いに独立した熱的雰囲気を得
られる。換言すれば、ケーシング１内部では突部２ａが
事実上の熱境界線となり、この左右部分の互いに熱的な
干渉が避けられようになっている。

【００１６】突部２ａを中心にして受熱板４の左右部分
には、突部２ａと平行に支持枠部４ａ，４ｂが一体に設
けられ、ここに上記温度センサ５ａ，５ｂが熱伝導性接
着剤を用いて接着固定される。

【００１７】再び図１に示すように、上記ケーシング１
の前面開口部１ｂは、赤外線透過膜からなるカバー６で
閉塞される。このカバー６は、所定厚さ（１mm程度）
で、かつ容易に変形しない程度の剛性を有する、たとえ
ば高密度ポリエチレンシートを用いる。

【００１８】このようなカバー６を備えたことにより、
ケーシング１内へは赤外線のみ透過され、かつ外界の吹
出気流などの影響が、受熱板４および温度センサ５ａ，
５ｂ等に及ぶことはない。

【００１９】図１および図３に示すように、上記カバー
６は基端開口部６ａが矩形状に形成され、ケーシング１
の開口部１ｂ周縁に挿嵌される。中央部のみ上下方向に
沿って手前側に突出しており、この左右の部分は基端開
口部６ａに向かって曲成される。したがって、カバー６
を平面視で見ると、変形した山形状に形成される。カバ
ー６の前面左右傾斜面には、それぞれ後述するフレネル
レンズ部７ａ，７ｂが一体に形成される。

【００２０】図４に、上記フレネルレンズ部７ａ，７ｂ
の原形をなす周知のフレネルレンズＦ・Ｒを模式的に表
す。これは、レンズの厚みを減らすために、数個または
多数の輪帯状レンズに分割したレンズである。この種の
レンズの特徴は、レンズの厚さを厚くすることなく、口
径の大きなレンズが得られことである。たとえば、一眼
レフカメラのファインダ部や、投影機の被投影面に対す
る集光レンズとして用いられる。

【００２１】上記フレネルレンズ部７ａ，７ｂは、カバ
ー６の左右曲成面に設けられているところから、受熱板
４に取着された各温度センサ５ａ，５ｂは、それぞれ左
右のフレネルレンズ部７ａ，７ｂの軸心線ａ，ｂと、そ
の焦点位置で定まる視野角を有する。

【００２２】図５に示すように、輻射熱温度センサＳ
は、たとえば空気調和機の室内ユニットＹに取付けられ
る。上記カバー６は、室内ユニットＹの前面パネル８に
開口する開口部から露出してよい。

【００２３】上記室内ユニットＹは、空気調和機本体９
の前面上部に空気吸込口１０が設けられ、前面下部に空
気吹出口１１が設けられている。そして、輻射熱温度セ
ンサＳは空気吹出口１１の側方内部に配置される。

【００２４】図６に示すように、輻射熱温度センサＳの
上述したカバー６構成と、ここに設けられるフレネルレ
ンズ部７ａ，７ｂから、これらの視野範囲は、室内ユニ
ットＹの上面から見て左右に振り分けられる。また、側
面から見た状態では、図７に示すように一致する。つぎ
に、室内ユニットＹに取付けられた、輻射熱温度センサ
Ｓの作用を説明する。被検知範囲である壁面や床面から
熱が輻射されると、その輻射熱エネルギが赤外線光とな
って輻射熱温度センサＳに投射される。

【００２５】図６および図７に示すように、被空調室Ｒ
の床面および壁面における、左右にスポット状に並んだ
視野範囲から、室内ユニットＹ内の輻射熱温度センサＳ
へ輻射熱エネルギが投射される。

【００２６】再び図１に示すように、赤外線光となった
輻射熱エネルギは、赤外線透過膜からなるカバー６を透
過するとともに、各フレネルレンズ部７ａ，７ｂで焦点
位置に絞り込まれる。すなわち、フレネルレンズ部７
ａ，７ｂは、互いの軸心線ａ，ｂをカバー６の曲率によ
り傾斜させているので、左右の指向性を持つ。

【００２７】そして、輻射熱エネルギは、受熱板４に取
り込まれ、かつ温度センサ５ａ，５ｂに集中する。それ
ぞれの温度センサ５ａ，５ｂが検知する温度は、リード
線を通して外部に信号出力される。

【００２８】この輻射熱温度センサＳは、上記フレネル
レンズ部７ａ，７ｂ自体の透過効率だけで、検知効率が
定まる。したがって、従来の複数の部品を組み合わせた
輻射熱温度センサの場合のように、それら部品の効率の
積で定まる検知効率よりも、大幅な感度の向上が得られ
ることとなる。

【００２９】また、輻射熱温度センサＳの視野範囲は、
フレネルレンズ部７ａ，７ｂの光学設計と、ここでは左
右に傾斜するカバー６の曲率の設定、および温度センサ
５ａ，５ｂの面積（直径）により適宜な調節が可能であ
る。

【００３０】特に、各温度センサ５ａ，５ｂは、受熱板
４とともに空中に浮いた状態で配置され、かつカバー６
によってケーシング１内の同一空気層に位置しており、
たとえ外部の熱影響があっても、同じように影響を受け
ることとなり、左右差の検知精度を高く保持できる。

【００３１】赤外線透過膜からなるカバー６は、ケーシ
ング１の前面開口部１ａを閉塞して、赤外線透過と同時
に、被空調室Ｒに浮遊する塵埃等のケーシング１内侵入
を阻止する。したがって、受熱板４および温度センサ５
ａ，５ｂに対する熱的悪影響がないとともに機械的な保
護をなす。

【００３２】なお、空気調和機本体１の前面パネル８
を、先に説明した実施例におけるカバー６に代用させて
もよい。この場合、上記前面パネル８に赤外線透過材か
らなる一対のフレネルレンズを嵌め込むことになる。上
記各フレネルレンズは、左右に並べて設けられ、それぞ
れの視野範囲を上記実施例と同様の左右方向に振り分け
るよう設定する。したがって、上記実施例と同様の効果
が得られ、かつ前面パネル８から突出する部分がなく、
空気調和機本体の外観的に有利である。

【００３３】

【発明の効果】以上述べたように、本発明は、センサ本
体内に一対の輻射熱検知部を並設し、このセンサ本体の
前面開口部を赤外線透過膜で閉塞し、この赤外線透過膜
に上記輻射熱検知部に焦点を結ぶフレネルレンズ部を一
体成形したから、外界からの熱影響および気流影響を受
け難くして指向性感度を良好に保持し、赤外線透過率を
向上させて、輻射熱温度の検知効率の向上化を図れる効
果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す、輻射熱温度センサの
横断平面図。

【図２】同実施例の、輻射熱温度センサの一部正面図。

【図３】同実施例の、赤外線透過膜からなるカバーの斜
視図。

【図４】フレネルレンズ構造を模式的に描いた図。

【図５】輻射熱温度センサを備えた、空気調和機室内ユ
ニットの斜視図。

【図６】輻射熱温度センサの視野範囲を示す、空調空間
の平面図。

【図７】輻射熱温度センサの視野範囲を示す、空調空間
の側面図。

【符号の説明】

１…センサ本体（ケーシング）、５ａ，５ｂ…輻射熱検
知部（温度センサ）、６…赤外線透過膜（カバー）、７
ａ，７ｂ…フレネルレンズ部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】前面が開口するセンサ本体と、このセンサ
   本体内に収容され互いに並設された一対の輻射熱検知部
   と、上記センサ本体の前面開口部を閉塞し輻射熱エネル
   ギが有する赤外線光をのみを透過させ、かつ各輻射熱検
   知部をセンサ本体内である同一空間に遮断保持して外界
   からの熱影響を均一にする赤外線透過膜と、この赤外線
   透過膜に一体成形され互いに隣接する被検知範囲の方向
   に指向し、それぞれの指向した被検知範囲が保有する輻
   射熱エネルギを集熱して上記各輻射熱検知部に焦点を結
   ぶフレネルレンズ部とを具備したことを特徴とする輻射
   熱温度センサ。