JPH05244938A - 細胞及びその培養法 - Google Patents
細胞及びその培養法Info
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- JPH05244938A JPH05244938A JP4009089A JP908992A JPH05244938A JP H05244938 A JPH05244938 A JP H05244938A JP 4009089 A JP4009089 A JP 4009089A JP 908992 A JP908992 A JP 908992A JP H05244938 A JPH05244938 A JP H05244938A
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- Japan
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- cells
- temperature
- polymer
- cell culture
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- Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】 温度を変化させるだけという簡便な操作で不
純物等を全く混入させることなく高収率で培養細胞を組
織状で回収することができ且つ回収された培養細胞は何
等の損傷を受けてない細胞培養法を、提供する。 【構成】 水に対する臨界溶解温度(T)が0〜80℃の
ポリマーを基材表面に被覆した細胞培養支持体上にて、
細胞を(T−10)〜(T+10)℃にて培養することを、
特徴とする。
純物等を全く混入させることなく高収率で培養細胞を組
織状で回収することができ且つ回収された培養細胞は何
等の損傷を受けてない細胞培養法を、提供する。 【構成】 水に対する臨界溶解温度(T)が0〜80℃の
ポリマーを基材表面に被覆した細胞培養支持体上にて、
細胞を(T−10)〜(T+10)℃にて培養することを、
特徴とする。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、細胞及びその培養法に
関する。より詳しくは本発明は、周囲温度を変化させる
だけで培養細胞を、高収率で、細胞を傷つけることなく
且つ薬品等の第3成分の混入若しくは汚染無しに容易に
細胞培養支持体から組織状として剥離回収出来る細胞培
養法に関する。本発明は又、そのような細胞培養法で得
られる細胞に関する。
関する。より詳しくは本発明は、周囲温度を変化させる
だけで培養細胞を、高収率で、細胞を傷つけることなく
且つ薬品等の第3成分の混入若しくは汚染無しに容易に
細胞培養支持体から組織状として剥離回収出来る細胞培
養法に関する。本発明は又、そのような細胞培養法で得
られる細胞に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、種々の目的により、生体内の細胞
を生体外で培養しようとする試みが活発に行なわれてい
る。その中で特に、生体外でも生体内と同様に立体的に
細胞を培養し、皮膚や肝細胞などの組織状細胞を得よう
とする試みは、生体外で細胞本来の機能を維持させよう
とする点、また、各種ハイブリッド型人工臓器、バイオ
シミュレーター、安全性評価用細胞等の開発の点から、
最近注目されている研究である。この組織状細胞を得る
方法としては、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニ
ン等の細胞付着付物質をスポンジ状に成型し、細胞を三
次元に培養する方法、また、プロテオグリカン等の細胞
非付着性物質上で培養する方法、さらに対象とする細胞
を肝細胞とした場合、ポリ−N−P−ビニルベンジル−
D−ラクトンアミド(PVLA)上を培養する方法等が開
発されており、また、これらの方法で得られた組織状細
胞自身の生化学的機能も高いことが確認されている。
を生体外で培養しようとする試みが活発に行なわれてい
る。その中で特に、生体外でも生体内と同様に立体的に
細胞を培養し、皮膚や肝細胞などの組織状細胞を得よう
とする試みは、生体外で細胞本来の機能を維持させよう
とする点、また、各種ハイブリッド型人工臓器、バイオ
シミュレーター、安全性評価用細胞等の開発の点から、
最近注目されている研究である。この組織状細胞を得る
方法としては、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニ
ン等の細胞付着付物質をスポンジ状に成型し、細胞を三
次元に培養する方法、また、プロテオグリカン等の細胞
非付着性物質上で培養する方法、さらに対象とする細胞
を肝細胞とした場合、ポリ−N−P−ビニルベンジル−
D−ラクトンアミド(PVLA)上を培養する方法等が開
発されており、また、これらの方法で得られた組織状細
胞自身の生化学的機能も高いことが確認されている。
【0003】しかしながら、いずれの方法による組織状
細胞においても、基材から剥離させ更に高次の検討に供
するためには、トリプシンのような蛋白質分解酵素や化
学薬品を用いなければならず、細胞が変性し細胞本来の
機能が損なわれるという問題や、剥離の際には種々の人
工基質等が混入するという問題等があった。
細胞においても、基材から剥離させ更に高次の検討に供
するためには、トリプシンのような蛋白質分解酵素や化
学薬品を用いなければならず、細胞が変性し細胞本来の
機能が損なわれるという問題や、剥離の際には種々の人
工基質等が混入するという問題等があった。
【0004】一方、本発明者らは、トリプシンのような
たんぱく分解酵素やキレート剤のEDTA等による処理
を施さずに環境温度を変化させるだけで、培養・増殖さ
せた細胞を、支持体表面から剥離・回収することが可能
な細胞培養支持体材料を以前に提案している(特開平2
−211865号公報)。
たんぱく分解酵素やキレート剤のEDTA等による処理
を施さずに環境温度を変化させるだけで、培養・増殖さ
せた細胞を、支持体表面から剥離・回収することが可能
な細胞培養支持体材料を以前に提案している(特開平2
−211865号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は人工基材上
に、組織状細胞を形成させ、且つ、細胞の機能を損なう
ことなく剥離・回収させることを目的とする。
に、組織状細胞を形成させ、且つ、細胞の機能を損なう
ことなく剥離・回収させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、以上のよ
うな点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、先に提案した細
胞培養支持体において、所定量のポリマーもしくはコポ
リマーが被覆された細胞培養支持体を利用し、且つ、細
胞を培養する温度を所定範囲内とすることにより、細胞
を組織状態で培養することが可能となり、しかも温度を
変化させるだけで、その組織状細胞を剥離・回収するこ
とが可能であり、さらにその剥離した細胞はその機能を
保持していることを見い出し、本発明に至った。
うな点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、先に提案した細
胞培養支持体において、所定量のポリマーもしくはコポ
リマーが被覆された細胞培養支持体を利用し、且つ、細
胞を培養する温度を所定範囲内とすることにより、細胞
を組織状態で培養することが可能となり、しかも温度を
変化させるだけで、その組織状細胞を剥離・回収するこ
とが可能であり、さらにその剥離した細胞はその機能を
保持していることを見い出し、本発明に至った。
【0007】即ち本発明は、水に対する臨界溶解温度
(以下、単に「T」と云うことがある。)が0〜80℃の
ポリマーを5〜80μg/cm2の被覆量で基材表面に被覆
した細胞培養支持体上にて、細胞を(T−10)〜(T+
10)℃にて培養することを特徴とする組織状細胞の培
養法を提供する。
(以下、単に「T」と云うことがある。)が0〜80℃の
ポリマーを5〜80μg/cm2の被覆量で基材表面に被覆
した細胞培養支持体上にて、細胞を(T−10)〜(T+
10)℃にて培養することを特徴とする組織状細胞の培
養法を提供する。
【0008】本発明に使用する細胞培養支持体は、基材
表面上が適当なポリマーで被覆される。そのような適当
なポリマーは、Tが0〜80℃、好ましくは0〜50°
を有する(尚 「臨界溶解温度」とは、2層分離している2
種の物質が或る温度になると互いに完全溶解し均一層と
なるその温度のことを言う。特に、温度を上げて完全溶
解に達する場合の温度を「上限臨界溶解温度」、温度を下
げて完全溶解する場合の温度を「下限臨界溶解温度」と言
うことがある)。Tが80℃を越えると細胞が死滅する
可能性があるので好ましくない。またTが0℃より低い
と、一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細
胞が死滅してしまうため好ましくない。そのような好適
なポリマーとしては、例えば特開平2−211865号
公報に記載のポリマーが挙げられる(これを参照により
ここに導入し、その開示とする)。具体的には適当なポ
リマーとしては、例えばポリ−N−イソ,プロピルアク
リルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアク
リルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタ
クリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチル
アクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒド
ロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N
−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約3
5℃)、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T
=32℃)、等が挙げられる。その他のポリマーとして
は、例えばポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N
−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−シクロプ
ロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタ
クリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポ
リ−N−アクリロイルピペリジン、ポリメチルビニルエ
ーテル等が挙げられる。そのようなポリマーは、例えば
モノマーの単独重合体がT=0〜80℃を有するような
モノマーの単独若しくは共重合により調製される。モノ
マーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N
−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルア
ミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導
体、及びビニルエーテル誘導体等が挙げられ、これらの
1種以上を使用してよい。又、増殖細胞の種類によって
Tを調節する必要がある場合や、被覆物質と細胞培養支
持体との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞支
持体の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場
合などには、上記以外の他のモノマー類を更に加えて共
重合してよい。更に本発明に使用する上記ポリマーとそ
の他のポリマーとのグラフトまたはブロック共重合体、
あるいは本発明のポリマーと他のポリマーとの混合物を
用いてもよい。また、ポリマー本来の性質が損なわれな
い範囲で架橋することも可能である。
表面上が適当なポリマーで被覆される。そのような適当
なポリマーは、Tが0〜80℃、好ましくは0〜50°
を有する(尚 「臨界溶解温度」とは、2層分離している2
種の物質が或る温度になると互いに完全溶解し均一層と
なるその温度のことを言う。特に、温度を上げて完全溶
解に達する場合の温度を「上限臨界溶解温度」、温度を下
げて完全溶解する場合の温度を「下限臨界溶解温度」と言
うことがある)。Tが80℃を越えると細胞が死滅する
可能性があるので好ましくない。またTが0℃より低い
と、一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細
胞が死滅してしまうため好ましくない。そのような好適
なポリマーとしては、例えば特開平2−211865号
公報に記載のポリマーが挙げられる(これを参照により
ここに導入し、その開示とする)。具体的には適当なポ
リマーとしては、例えばポリ−N−イソ,プロピルアク
リルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアク
リルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタ
クリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチル
アクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒド
ロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N
−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約3
5℃)、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T
=32℃)、等が挙げられる。その他のポリマーとして
は、例えばポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N
−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−シクロプ
ロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタ
クリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポ
リ−N−アクリロイルピペリジン、ポリメチルビニルエ
ーテル等が挙げられる。そのようなポリマーは、例えば
モノマーの単独重合体がT=0〜80℃を有するような
モノマーの単独若しくは共重合により調製される。モノ
マーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N
−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルア
ミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導
体、及びビニルエーテル誘導体等が挙げられ、これらの
1種以上を使用してよい。又、増殖細胞の種類によって
Tを調節する必要がある場合や、被覆物質と細胞培養支
持体との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞支
持体の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場
合などには、上記以外の他のモノマー類を更に加えて共
重合してよい。更に本発明に使用する上記ポリマーとそ
の他のポリマーとのグラフトまたはブロック共重合体、
あるいは本発明のポリマーと他のポリマーとの混合物を
用いてもよい。また、ポリマー本来の性質が損なわれな
い範囲で架橋することも可能である。
【0009】本発明に使用する細胞培養支持体は、基材
上に上記ポリマーを被覆して得られる。ポリマーの被覆
量は、5〜80μg/cm2、好ましくは6〜40μg/cm2
である。ポリマー被覆量が80μg/cm2を超過すると細
胞は細胞培養支持体表面上に付着せず、逆に被覆量が5
μg/cm2未満だと細胞は単層の状態で培養され組織状と
ならず、又培養細胞を支持体から剥離回収するのも困難
となる。このようなポリマー被覆量は、例えばフーリエ
変換赤外分光計全反射法(FT-IR-ATR法)、被覆部若しく
は非被覆部の染色や蛍光物質の染色による分析、更に接
触角測定等による表面分析を単独或は併用して求めるこ
とが出来る。
上に上記ポリマーを被覆して得られる。ポリマーの被覆
量は、5〜80μg/cm2、好ましくは6〜40μg/cm2
である。ポリマー被覆量が80μg/cm2を超過すると細
胞は細胞培養支持体表面上に付着せず、逆に被覆量が5
μg/cm2未満だと細胞は単層の状態で培養され組織状と
ならず、又培養細胞を支持体から剥離回収するのも困難
となる。このようなポリマー被覆量は、例えばフーリエ
変換赤外分光計全反射法(FT-IR-ATR法)、被覆部若しく
は非被覆部の染色や蛍光物質の染色による分析、更に接
触角測定等による表面分析を単独或は併用して求めるこ
とが出来る。
【0010】被覆を施される上記基材の材質は、通常細
胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレ
ン、ポリメチルメタクリレート等の高分子化合物、ある
いはセラミックス、金属等が挙げられる。尚、基材表面
はオゾン処理、プラズマ処理、スパッタリング等の処理
技術を用いて親水化を施されたものでも良い。形状は、
ペトリディッシュに限定されることはなく、プレート、
ファイバー、(多孔質)粒子、また、一般に細胞培養等に
用いられる容器の形状(フラスコ等)を付与されていても
構わない。
胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレ
ン、ポリメチルメタクリレート等の高分子化合物、ある
いはセラミックス、金属等が挙げられる。尚、基材表面
はオゾン処理、プラズマ処理、スパッタリング等の処理
技術を用いて親水化を施されたものでも良い。形状は、
ペトリディッシュに限定されることはなく、プレート、
ファイバー、(多孔質)粒子、また、一般に細胞培養等に
用いられる容器の形状(フラスコ等)を付与されていても
構わない。
【0011】基材へのポリマーの被覆方法は、後述する
ような化学的方法、物理的方法、を単独でまたは併
用して行うことができる。被覆時に前記モノマーを使用
する場合、そのモノマーは気体、液体、固体いずれの状
態でも良い。また、ポリマーを使用する場合にはおいて
も、そのポリマーは、液体、固体状態のいずれの状態で
も良い。これらのものを化学的な反応によって結合さ
せる場合、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、
プラズマ処理、コロナ処理、さらに基材と被覆材料が適
当な反応性官能基を有する場合はラジカル及びイオン反
応等の一般に用いられる有機反応、を用いることができ
る。物理的な相互作用による方法としては、被覆材料
単独または基材との相溶性の良いマトリックスを媒体と
し、塗布、混練等の物理的吸着を用いる方法等がある
が、これらに限られるわけではない。
ような化学的方法、物理的方法、を単独でまたは併
用して行うことができる。被覆時に前記モノマーを使用
する場合、そのモノマーは気体、液体、固体いずれの状
態でも良い。また、ポリマーを使用する場合にはおいて
も、そのポリマーは、液体、固体状態のいずれの状態で
も良い。これらのものを化学的な反応によって結合さ
せる場合、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、
プラズマ処理、コロナ処理、さらに基材と被覆材料が適
当な反応性官能基を有する場合はラジカル及びイオン反
応等の一般に用いられる有機反応、を用いることができ
る。物理的な相互作用による方法としては、被覆材料
単独または基材との相溶性の良いマトリックスを媒体と
し、塗布、混練等の物理的吸着を用いる方法等がある
が、これらに限られるわけではない。
【0012】本発明の細胞培養法は、上記のようにして
得られた細胞培養支持体上にて行われる。本発明の細胞
培養法に適用される細胞としては特に限定されないが、
例えばウシ大動脈血管内皮細胞、ウシ肝実質細胞、ラッ
ト肝実質細胞、ラット線維芽細胞、ヒト血管内皮細胞、
ヒトケラチノサイト等が挙げられる。このような細胞
は、当業者に周知の方法で入手し得る。培養温度は、
(T−10)℃〜(T+10)℃であり、好ましくは(T−
5)℃〜(T+5)℃、より好ましくは(T−4℃)〜(T+
4℃)である。更に好ましくは培養温度は、Tが上限臨
界溶解温度の場合はその温度以下であり、又Tが下限臨
界溶解温度の場合はその温度以上である。基材上に被覆
されるポリマーが下限臨界溶解温度を有し培養温度が
(T+10)℃より高い場合、又はポリマーが上限臨界溶
解温度を有し培養温度が(T−10)℃より低い場合、培
養細胞は単層状となり組織状として回収することが出来
ない。又、基材上に被覆されるポリマーが下限臨界溶解
温度を有し培養温度が(T−10)℃より低い場合、又は
ポリマーが上限臨界溶解温度を有し培養温度が(T+1
0)℃より高い場合は、細胞は支持体上に付着せず培養
が困難となる。具体的には、被覆ポリマーが例えば前記
ポリ−N−イソ,プロピルアクリルアミドである場合の
培養温度は24〜35℃、ポリマーがポリ−N−n−プ
ロピルアクリルアミドである場合の培養温度は17〜2
4℃、ポリマーがポリ−N−n−プロピルメタクリルア
ミドである場合の培養温度は24〜30℃、ポリマーが
ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミドの場合の培養
温度は31〜38℃、ポリマーがポリ−N−テトラヒド
ロフルフリルアクリルアミドの場合の培養温度は24〜
31℃、ポリマーがポリ−N−テトラヒドロフルフリル
メタクリルアミドの場合の培養温度は31〜38℃、ポ
リマーがポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドの場合
の培養温度は24〜35℃が、それぞれ好ましい。その
他の培養条件は特に限定されず、当分野に於いて通常行
われる条件下に培養を行ってよい。例えば培地として
は、ウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されているもの
でもよいし、或は無血清培地でもよい。
得られた細胞培養支持体上にて行われる。本発明の細胞
培養法に適用される細胞としては特に限定されないが、
例えばウシ大動脈血管内皮細胞、ウシ肝実質細胞、ラッ
ト肝実質細胞、ラット線維芽細胞、ヒト血管内皮細胞、
ヒトケラチノサイト等が挙げられる。このような細胞
は、当業者に周知の方法で入手し得る。培養温度は、
(T−10)℃〜(T+10)℃であり、好ましくは(T−
5)℃〜(T+5)℃、より好ましくは(T−4℃)〜(T+
4℃)である。更に好ましくは培養温度は、Tが上限臨
界溶解温度の場合はその温度以下であり、又Tが下限臨
界溶解温度の場合はその温度以上である。基材上に被覆
されるポリマーが下限臨界溶解温度を有し培養温度が
(T+10)℃より高い場合、又はポリマーが上限臨界溶
解温度を有し培養温度が(T−10)℃より低い場合、培
養細胞は単層状となり組織状として回収することが出来
ない。又、基材上に被覆されるポリマーが下限臨界溶解
温度を有し培養温度が(T−10)℃より低い場合、又は
ポリマーが上限臨界溶解温度を有し培養温度が(T+1
0)℃より高い場合は、細胞は支持体上に付着せず培養
が困難となる。具体的には、被覆ポリマーが例えば前記
ポリ−N−イソ,プロピルアクリルアミドである場合の
培養温度は24〜35℃、ポリマーがポリ−N−n−プ
ロピルアクリルアミドである場合の培養温度は17〜2
4℃、ポリマーがポリ−N−n−プロピルメタクリルア
ミドである場合の培養温度は24〜30℃、ポリマーが
ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミドの場合の培養
温度は31〜38℃、ポリマーがポリ−N−テトラヒド
ロフルフリルアクリルアミドの場合の培養温度は24〜
31℃、ポリマーがポリ−N−テトラヒドロフルフリル
メタクリルアミドの場合の培養温度は31〜38℃、ポ
リマーがポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドの場合
の培養温度は24〜35℃が、それぞれ好ましい。その
他の培養条件は特に限定されず、当分野に於いて通常行
われる条件下に培養を行ってよい。例えば培地として
は、ウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されているもの
でもよいし、或は無血清培地でもよい。
【0013】上記培養後、培養細胞を細胞培養支持体か
ら剥離させ回収するには、周囲温度を前記ポリマーの上
限臨界溶解温度に対し、+10℃以上もしくは下限臨界
溶解温度に対し、−10℃以下に変化させるだけで良
く、細胞を培養していた培養液中においてもその他の等
張液中においても可能であり、目的に合わせて選択する
ことができる。その際、培養細胞を効率的に且つ容易に
剥離させる目的で、細胞培養支持体を軽くたたいたり揺
らしたり、更にはピペット等を使用して培地を撹拌する
などしてもよい。
ら剥離させ回収するには、周囲温度を前記ポリマーの上
限臨界溶解温度に対し、+10℃以上もしくは下限臨界
溶解温度に対し、−10℃以下に変化させるだけで良
く、細胞を培養していた培養液中においてもその他の等
張液中においても可能であり、目的に合わせて選択する
ことができる。その際、培養細胞を効率的に且つ容易に
剥離させる目的で、細胞培養支持体を軽くたたいたり揺
らしたり、更にはピペット等を使用して培地を撹拌する
などしてもよい。
【0014】
【作用】以下本発明の作用を、被覆ポリマー調製用モノ
マーとしてN−イソプロピルアクリルアミド、及び支持
体基材として細胞培養用ペトリディッシュ材料として一
般に用いられるポリスチレンを用いた場合を例にとっ
て、より具体的に説明する。
マーとしてN−イソプロピルアクリルアミド、及び支持
体基材として細胞培養用ペトリディッシュ材料として一
般に用いられるポリスチレンを用いた場合を例にとっ
て、より具体的に説明する。
【0015】細胞培養支持体は、例えば上記ポリスチレ
ン基材上でN−イソプロピルアクリルアミドモノマーを
イソプロピルアルコール溶液として被覆し、その後電子
線照射(EB)により重合させて、得られる。その結果、
ポリスチレン基材上には生成ポリマー、即ちポリ−N−
イソプロピルアクリルアミドが被覆される。尚このよう
なポリ−N−イソプロピルアクリルアミドは水溶液中で
約32℃に下限臨界溶解温度を有する。そして下限臨界
溶解温度である32℃以上ではこのポリマーはその占有
体積が小さくなりポリマー中の水分子を排除して、支持
体表面は疎水性を示す。しかし、逆に32℃以下ではポ
リマーの占有体積は大きくなりポリマー中の水分子の占
める体積分率が上昇し、支持体表面は親水性を示すよう
になる。従って温度を制御するだけで、細胞培養支持体
表面の親水・疎水性は調整され、細胞の支持体への接着
性が変化する。そのため、温度を変化させるだけで培養
・増殖後の細胞を破壊することなく細胞培養支持体から
容易に剥離、回収することが可能となるものと考えられ
る。
ン基材上でN−イソプロピルアクリルアミドモノマーを
イソプロピルアルコール溶液として被覆し、その後電子
線照射(EB)により重合させて、得られる。その結果、
ポリスチレン基材上には生成ポリマー、即ちポリ−N−
イソプロピルアクリルアミドが被覆される。尚このよう
なポリ−N−イソプロピルアクリルアミドは水溶液中で
約32℃に下限臨界溶解温度を有する。そして下限臨界
溶解温度である32℃以上ではこのポリマーはその占有
体積が小さくなりポリマー中の水分子を排除して、支持
体表面は疎水性を示す。しかし、逆に32℃以下ではポ
リマーの占有体積は大きくなりポリマー中の水分子の占
める体積分率が上昇し、支持体表面は親水性を示すよう
になる。従って温度を制御するだけで、細胞培養支持体
表面の親水・疎水性は調整され、細胞の支持体への接着
性が変化する。そのため、温度を変化させるだけで培養
・増殖後の細胞を破壊することなく細胞培養支持体から
容易に剥離、回収することが可能となるものと考えられ
る。
【0016】上記のような性質を持った細胞培養支持体
上で正常肝細胞を播種しポリ−N−イソプロピルアクリ
ルアミドの下限臨界温度32℃に対し、上記範囲の培養
温度域で培養すると、正常な肝実質細胞は一般的な接着
性細胞に見られるような支持体全体に単層に伸展するの
ではなく、スフェロイド(組織状態)を形成する。又、血
管内皮細胞を同様な方法で培養すると、管腔組織(組織
状態)を形成する。このようにして得られた組織状細胞
を支持体から剥離するには、培養液の温度を上記ポリマ
ーの下限臨界温度に対し、上記範囲の培養温度域以下に
するだけで高収率に、組織状態を維持したまま、細胞本
来の機能を損なわずに、第3成分の混入なく、回収出来
る。
上で正常肝細胞を播種しポリ−N−イソプロピルアクリ
ルアミドの下限臨界温度32℃に対し、上記範囲の培養
温度域で培養すると、正常な肝実質細胞は一般的な接着
性細胞に見られるような支持体全体に単層に伸展するの
ではなく、スフェロイド(組織状態)を形成する。又、血
管内皮細胞を同様な方法で培養すると、管腔組織(組織
状態)を形成する。このようにして得られた組織状細胞
を支持体から剥離するには、培養液の温度を上記ポリマ
ーの下限臨界温度に対し、上記範囲の培養温度域以下に
するだけで高収率に、組織状態を維持したまま、細胞本
来の機能を損なわずに、第3成分の混入なく、回収出来
る。
【0017】
【発明の効果】本発明により、周囲温度を変化させるだ
けで培養細胞を、組織状で、高収率で、傷つけることな
く且つ薬品等の第3成分の混入若しくは汚染無しに容易
に細胞培養支持体から剥離回収出来る。
けで培養細胞を、組織状で、高収率で、傷つけることな
く且つ薬品等の第3成分の混入若しくは汚染無しに容易
に細胞培養支持体から剥離回収出来る。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0019】実施例1、2、3、4 細胞培養支持体基材として、ベクトン・ディキンソン・
ラブウェア(BectonDickinson Labware)社製ファル
コン(FALCON)3002ペトリディッシュを用い、
培養する細胞としてはラット肝実質細胞を採用した。N
−イソプロピルアクリルアミドを表−1に示す各濃度の
イソプロピルアルコール溶液として、ペトリディッシュ
上に、0.1ml添加後、電子線を30Mrad照射すること
により、ペトリディッシュ表面上に、ポリ−N−イソプ
ロピルアクリルアミドを被覆した。電子線照射後、イオ
ン交換水により、ペトリディッシュを洗浄し、残存モノ
マー及び遊離ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを
取り除き、クリーンベンチ内で乾燥し、さらに、エチレ
ンオキサイド(EO)ガス滅菌さらに十分に脱気を行なう
ことにより、細胞培養支持体材料を得た。
ラブウェア(BectonDickinson Labware)社製ファル
コン(FALCON)3002ペトリディッシュを用い、
培養する細胞としてはラット肝実質細胞を採用した。N
−イソプロピルアクリルアミドを表−1に示す各濃度の
イソプロピルアルコール溶液として、ペトリディッシュ
上に、0.1ml添加後、電子線を30Mrad照射すること
により、ペトリディッシュ表面上に、ポリ−N−イソプ
ロピルアクリルアミドを被覆した。電子線照射後、イオ
ン交換水により、ペトリディッシュを洗浄し、残存モノ
マー及び遊離ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを
取り除き、クリーンベンチ内で乾燥し、さらに、エチレ
ンオキサイド(EO)ガス滅菌さらに十分に脱気を行なう
ことにより、細胞培養支持体材料を得た。
【0020】得られた細胞培養支持体表面上の被覆量
は、フーリエ変換赤外分光計全反射法(FT−IR−A
TR法)を用い、基材に由来する1028cm-1k吸収に対
する被覆物であるポリ−N−イソプロピルアクリルアミ
ドに由来するアミドII(1540cm-1)の比を算出する
方法により求めた。その際、検量線は既知量のN−イソ
プロピルアクリルアミドホモポリマーを既知面積の基材
表面上に塗布した試料を利用することで作成した。結果
を表−6に示す。
は、フーリエ変換赤外分光計全反射法(FT−IR−A
TR法)を用い、基材に由来する1028cm-1k吸収に対
する被覆物であるポリ−N−イソプロピルアクリルアミ
ドに由来するアミドII(1540cm-1)の比を算出する
方法により求めた。その際、検量線は既知量のN−イソ
プロピルアクリルアミドホモポリマーを既知面積の基材
表面上に塗布した試料を利用することで作成した。結果
を表−6に示す。
【0021】ラット肝実質細胞は、一般的に知られるベ
リー(Berry)とフレンド(Friend)らのコラゲナーゼ灌
流法により入手し、培養は、得られた細胞培養支持体材
料上にて、5%ウシ胎児血清(FCS)、10-8Mデキサ
メサゾン、10-7Mインスリン、10mMニコチンアミ
ドさらに、10ng/ml 表皮成長因子(EGF)を含むW
illiams E培地を培地として、5%二酸化炭素中、3
0℃で行なった。実施例2の培養1日目と2日目の培養
細胞のようすをそれぞれ光学顕微鏡写真として図1(a)
及び(b)に示す。次に、その増殖細胞の入ったペトリデ
ィッシュを5℃冷却、放置することにより、増殖細胞を
剥離させた。増殖細胞剥離回収率は下式に従って求め
た。
リー(Berry)とフレンド(Friend)らのコラゲナーゼ灌
流法により入手し、培養は、得られた細胞培養支持体材
料上にて、5%ウシ胎児血清(FCS)、10-8Mデキサ
メサゾン、10-7Mインスリン、10mMニコチンアミ
ドさらに、10ng/ml 表皮成長因子(EGF)を含むW
illiams E培地を培地として、5%二酸化炭素中、3
0℃で行なった。実施例2の培養1日目と2日目の培養
細胞のようすをそれぞれ光学顕微鏡写真として図1(a)
及び(b)に示す。次に、その増殖細胞の入ったペトリデ
ィッシュを5℃冷却、放置することにより、増殖細胞を
剥離させた。増殖細胞剥離回収率は下式に従って求め
た。
【0022】 増殖細胞剥離回収率(%)=100×(剥離回収した細胞
総数)/(増殖させた細胞総数)
総数)/(増殖させた細胞総数)
【0023】その際、剥離回収した細胞総数および増殖
させた細胞総数を計測するためには、細胞を個々の状態
にしなければならない。従って、剥離回収した細胞総数
は、5℃に冷却、放置した後、回収した細胞塊に対し、
トリプシン−EDTA処理を行ない、細胞を個々の状態
にして行なった。また、増殖させた細胞総数は、上記方
法で剥離回収した細胞総数に、5℃に冷却、放置しても
剥離しなかった細胞をトリプシン−EDTA処理で、細
胞を個々の状態に剥離させた細胞総数を加え合わせるこ
とにより求めた。結果を表−6に示す。
させた細胞総数を計測するためには、細胞を個々の状態
にしなければならない。従って、剥離回収した細胞総数
は、5℃に冷却、放置した後、回収した細胞塊に対し、
トリプシン−EDTA処理を行ない、細胞を個々の状態
にして行なった。また、増殖させた細胞総数は、上記方
法で剥離回収した細胞総数に、5℃に冷却、放置しても
剥離しなかった細胞をトリプシン−EDTA処理で、細
胞を個々の状態に剥離させた細胞総数を加え合わせるこ
とにより求めた。結果を表−6に示す。
【0024】
【表1】
【0025】実施例5、6、7、8 基材として、ベクトン・ディキンソン・ラブウェア社製
ファルコン3002ペトリディッシュを用い、N−イソ
プロピルアクリルアミドのイソプロピルアルコール溶液
のペトリディッシュ上への塗布量を各々表−2に示す量
とする点以外は、実施例2と同様にして、細胞培養支持
体材料を得、被覆量を求め、さらに、細胞を培養し、こ
れを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率を求めた。結果
を表−6に示す。
ファルコン3002ペトリディッシュを用い、N−イソ
プロピルアクリルアミドのイソプロピルアルコール溶液
のペトリディッシュ上への塗布量を各々表−2に示す量
とする点以外は、実施例2と同様にして、細胞培養支持
体材料を得、被覆量を求め、さらに、細胞を培養し、こ
れを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率を求めた。結果
を表−6に示す。
【0026】
【表2】
【0027】実施例9、10、11 ファルコン3002ペトリディッシュに対し、実施例3
と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を表
−6に示す。この細胞培養支持体材料で、肝細胞を、表
−3に示す温度で培養する点以外は、実施例3と同様に
して実施し、これを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率
を求めた。結果を表−6に示す。
と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を表
−6に示す。この細胞培養支持体材料で、肝細胞を、表
−3に示す温度で培養する点以外は、実施例3と同様に
して実施し、これを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率
を求めた。結果を表−6に示す。
【0029】
【表3】
【0030】実施例12〜23 基材として、ベクトン・ディキンソン・ラブウェア社製
ファルコン3002ペトリディッシュを用い、N−イソ
プロピルアクリルアミドの代わりに、各々表−4に示す
モノマーを利用して細胞培養支持体材料を得、このもの
を利用してラット肝実質細胞を各々表−4に示す温度で
培養する点以外は、実施例2と同様に実施した。各々の
被覆量と増殖細胞剥離回収率を表−6に示す。
ファルコン3002ペトリディッシュを用い、N−イソ
プロピルアクリルアミドの代わりに、各々表−4に示す
モノマーを利用して細胞培養支持体材料を得、このもの
を利用してラット肝実質細胞を各々表−4に示す温度で
培養する点以外は、実施例2と同様に実施した。各々の
被覆量と増殖細胞剥離回収率を表−6に示す。
【0031】
【表4】
【0032】比較例1 細胞培養支持体として、ベクトン・ディキンソン・ラブ
ウェア社製ファルコン3002ペトリディッシュを用
い、表面処理を全く行なわずに実施例1、2、3、4と
同様な実験を行なった。ラット肝実質細胞の培養も実施
例1、2、3、4と同様に、30℃で培養する方法を採
用した。培養1日後のようすを図2に示す。増殖細胞の
剥離回収率を表−6に示す。
ウェア社製ファルコン3002ペトリディッシュを用
い、表面処理を全く行なわずに実施例1、2、3、4と
同様な実験を行なった。ラット肝実質細胞の培養も実施
例1、2、3、4と同様に、30℃で培養する方法を採
用した。培養1日後のようすを図2に示す。増殖細胞の
剥離回収率を表−6に示す。
【0033】比較例2、3 細胞培養用支持体基材として、ベクトン・ディキンソン
・ラブウェア社製ファルコン3002ペトリディッシュ
を用い、N−イソプロピルアクリルアミドを表−5に示
す濃度でイソプロピルアルコールに溶解して、ペトリデ
ィッシュ上に0.1ml添加後、電子線を表−5に示す線
量で照射することにより、ペトリディッシュ表面にポリ
−N−イソプロピルアクリルアミドを被覆した以外は実
施例1、2、3、4、5と同様の実験を行った。ラット
肝実質培養も実施例1、2、3、4、5と同様に実施し
た。各々の被覆量と増殖細胞剥離回収率を表−6に示
す。
・ラブウェア社製ファルコン3002ペトリディッシュ
を用い、N−イソプロピルアクリルアミドを表−5に示
す濃度でイソプロピルアルコールに溶解して、ペトリデ
ィッシュ上に0.1ml添加後、電子線を表−5に示す線
量で照射することにより、ペトリディッシュ表面にポリ
−N−イソプロピルアクリルアミドを被覆した以外は実
施例1、2、3、4、5と同様の実験を行った。ラット
肝実質培養も実施例1、2、3、4、5と同様に実施し
た。各々の被覆量と増殖細胞剥離回収率を表−6に示
す。
【0034】
【表5】
【0035】比較例4 ファルコン3002ペトリディッシュに対し、実施例3
と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を表
−6に示す。この細胞培養支持体材料で、肝細胞を20
℃で培養する点以外は、実施例3と同様にして実施し、
これを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率を求めた。結
果を表−6に示す。
と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を表
−6に示す。この細胞培養支持体材料で、肝細胞を20
℃で培養する点以外は、実施例3と同様にして実施し、
これを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率を求めた。結
果を表−6に示す。
【0036】
【表6】
【0037】以上の実施例、及び比較例の結果により、
実施例1〜11では、基材表面に塗布するN−イソプロ
ピルアクリルアミドの溶液の濃度、及び塗布量を変える
ことにより、本発明で示すところの被覆量の細胞培養支
持体材料が得られ、このものを使用し、本発明で示すと
ころの温度域内でラット肝実質細胞を培養することによ
り、肝細胞は写真−1に示されるようにスフェロイドを
形成した。さらに培地を下限臨界溶解温度より十分に低
い5℃とすることにより、高収率で、スフェロイドを維
持したまま剥離、回収することが可能であった。このこ
とは実施例12〜23に示されるように、使用するモノ
マー種を変化させて細胞培養支持体材料を得、それぞれ
について、本発明で示すところの温度域内で肝細胞を培
養する場合でも同様であった。
実施例1〜11では、基材表面に塗布するN−イソプロ
ピルアクリルアミドの溶液の濃度、及び塗布量を変える
ことにより、本発明で示すところの被覆量の細胞培養支
持体材料が得られ、このものを使用し、本発明で示すと
ころの温度域内でラット肝実質細胞を培養することによ
り、肝細胞は写真−1に示されるようにスフェロイドを
形成した。さらに培地を下限臨界溶解温度より十分に低
い5℃とすることにより、高収率で、スフェロイドを維
持したまま剥離、回収することが可能であった。このこ
とは実施例12〜23に示されるように、使用するモノ
マー種を変化させて細胞培養支持体材料を得、それぞれ
について、本発明で示すところの温度域内で肝細胞を培
養する場合でも同様であった。
【0038】一方、比較例1では、表面処理を全く行わ
なかった材料を用い、実施例と同様に30℃で培養を実
施しても、表−2に示されるように、細胞は単層状態で
あり、スフェロイドを形成せず、また、温度を下げても
剥離現象は観察されなかった。
なかった材料を用い、実施例と同様に30℃で培養を実
施しても、表−2に示されるように、細胞は単層状態で
あり、スフェロイドを形成せず、また、温度を下げても
剥離現象は観察されなかった。
【0039】また、比較例2、3において、細胞培養温
度を実施例1〜8と同様に30℃とし、基材表面の被覆
量が本発明で示すところの範囲外である材料を使用する
と、被覆量が少ない場合では細胞剥離性は認められたも
のの、培養中の細胞は単層状態であり(比較例2)、ま
た、被覆量が多い場合では、細胞は付着しない(比較例
3)ことから、いずれも本発明の効果を十分に満足しな
いことが分かる。
度を実施例1〜8と同様に30℃とし、基材表面の被覆
量が本発明で示すところの範囲外である材料を使用する
と、被覆量が少ない場合では細胞剥離性は認められたも
のの、培養中の細胞は単層状態であり(比較例2)、ま
た、被覆量が多い場合では、細胞は付着しない(比較例
3)ことから、いずれも本発明の効果を十分に満足しな
いことが分かる。
【0040】さらに、比較例4において実施例3で得ら
れた細胞培養支持体材料を使用し、本発明で示すところ
の範囲外の温度で肝細胞を培養した場合、下限臨界溶解
温度より十分に低い温度で培養した場合では、細胞は、
付着せず本発明の効果を十分に満足していないことが分
かる。
れた細胞培養支持体材料を使用し、本発明で示すところ
の範囲外の温度で肝細胞を培養した場合、下限臨界溶解
温度より十分に低い温度で培養した場合では、細胞は、
付着せず本発明の効果を十分に満足していないことが分
かる。
【0041】実施例24、25 ファルコン3002ペトリディッシュに対し、実施例
2、3と同様にして細胞培養支持体材料を得た(それぞ
れ実施例24、25)。基材表面上の被覆量を表−9に
示す。この細胞培養支持体材料を用いて、ウシ大動脈血
管内皮細胞を培養した。ウシ大動脈血管内皮細胞の培養
は、ウシ胎児血清(FCS)を10%含むダルベッコー改
変イーグル培地(DMEM)を培地として、5%二酸化炭
素中で、30℃で行なう方法を採用した。常法に従い培
地交換を行ない24日間培養した。このときの実施例2
4のようすを、光学顕微鏡写真として図3に示す。次に
この増殖細胞の入ったペトリディッシュを5℃に冷却、
放置することにより増殖細胞を剥離させ、実施例1、
2、3、4と同様な方法にて、増殖細胞剥離回収率を求
めた。結果を表−9に示す。
2、3と同様にして細胞培養支持体材料を得た(それぞ
れ実施例24、25)。基材表面上の被覆量を表−9に
示す。この細胞培養支持体材料を用いて、ウシ大動脈血
管内皮細胞を培養した。ウシ大動脈血管内皮細胞の培養
は、ウシ胎児血清(FCS)を10%含むダルベッコー改
変イーグル培地(DMEM)を培地として、5%二酸化炭
素中で、30℃で行なう方法を採用した。常法に従い培
地交換を行ない24日間培養した。このときの実施例2
4のようすを、光学顕微鏡写真として図3に示す。次に
この増殖細胞の入ったペトリディッシュを5℃に冷却、
放置することにより増殖細胞を剥離させ、実施例1、
2、3、4と同様な方法にて、増殖細胞剥離回収率を求
めた。結果を表−9に示す。
【0042】実施例26、27 ファルコン3002ペトリディッシュに対し、実施例2
4と同様な方法で細胞培養支持体材料を得、このものを
利用し、表−7に示す温度で培養する点以外は、実施例
24と同様にして実施し、これを剥離、回収し、増殖細
胞剥離回収率を求めた。結果を表−9に示す。
4と同様な方法で細胞培養支持体材料を得、このものを
利用し、表−7に示す温度で培養する点以外は、実施例
24と同様にして実施し、これを剥離、回収し、増殖細
胞剥離回収率を求めた。結果を表−9に示す。
【0043】
【表7】
【0044】比較例5 細胞培養支持体として、ベクトン・ディキンソン・ラブ
ウェア社製ファルコン3002ペトリディッシュを用
い、表面処理を全く行なわずに実施例24、25と同様
な実験を行なった。ウシ大動脈血管内皮細胞の培養も、
実施例24、25と同様に30℃で培養する方法を採用
した。、培養1日後のようすを光学顕微鏡写真として図
4に示す。増殖細胞の剥離回収率を表−9に示す。
ウェア社製ファルコン3002ペトリディッシュを用
い、表面処理を全く行なわずに実施例24、25と同様
な実験を行なった。ウシ大動脈血管内皮細胞の培養も、
実施例24、25と同様に30℃で培養する方法を採用
した。、培養1日後のようすを光学顕微鏡写真として図
4に示す。増殖細胞の剥離回収率を表−9に示す。
【0045】比較例6、7 ファルコン3002ペトリディッシュに対し、実施例2
4と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を
表−9に示す。この細胞培養支持体材料で、肝細胞を表
−8に示す温度で培養する点以外は、実施例24と同様
にして実施し、これを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収
率を求めた。結果を表−9に示す。
4と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を
表−9に示す。この細胞培養支持体材料で、肝細胞を表
−8に示す温度で培養する点以外は、実施例24と同様
にして実施し、これを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収
率を求めた。結果を表−9に示す。
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】 以上の実施例、及び比較例に示されるように、使用する
細胞をラット肝実質細胞からウシ大動脈血管内皮細胞へ
変更しても、基材表面のポリマー被覆量、及び、細胞培
養温度を本発明で示すところの範囲内であれば、培養し
た細胞は例えば図3に示されるように組織状に増殖し、
管腔形成が認められた(実施例24〜27)。このものに
対し、培地を下限臨界溶解温度より十分に低い5℃とす
ることにより、高収率で、管腔形成を維持したまま剥
離、回収することが可能であった。
細胞をラット肝実質細胞からウシ大動脈血管内皮細胞へ
変更しても、基材表面のポリマー被覆量、及び、細胞培
養温度を本発明で示すところの範囲内であれば、培養し
た細胞は例えば図3に示されるように組織状に増殖し、
管腔形成が認められた(実施例24〜27)。このものに
対し、培地を下限臨界溶解温度より十分に低い5℃とす
ることにより、高収率で、管腔形成を維持したまま剥
離、回収することが可能であった。
【0048】一方、比較例5では表面処理を全く行わな
かった材料を用い、実施例24、25と同様に30℃で
培養を実施しても表−9に示されるように細胞は単層状
態であり、管腔形成せず、また、温度を下げても剥離現
象は観察されなかった。
かった材料を用い、実施例24、25と同様に30℃で
培養を実施しても表−9に示されるように細胞は単層状
態であり、管腔形成せず、また、温度を下げても剥離現
象は観察されなかった。
【0049】さらに、比較例6、7において実施例24
で得られた細胞培養支持体材料を使用し本発明で示すと
ころの範囲外の温度で血管内皮細胞を培養した場合、下
限臨界溶解温度より十分に低い温度で培養した場合で
は、細胞は付着せず(比較例6)高い温度で培養した場合
では、付着はするものの単層状態であり(比較例7)、い
ずれも本発明の効果を十分に満足していないことが分か
る。
で得られた細胞培養支持体材料を使用し本発明で示すと
ころの範囲外の温度で血管内皮細胞を培養した場合、下
限臨界溶解温度より十分に低い温度で培養した場合で
は、細胞は付着せず(比較例6)高い温度で培養した場合
では、付着はするものの単層状態であり(比較例7)、い
ずれも本発明の効果を十分に満足していないことが分か
る。
【0050】実施例28 実施例3で得られた剥離細胞の損傷度合を確認するた
め、これを遠心分離(600G5分)により回収し、全量
をベクトン・ディキンソン・ラブウェア社製ファルコン
3002ペトリディッシュで再び培養させた。細胞の培
養は、実施例1、2、3、4と同様の方法を採用した。
細胞の損傷度合は培養1日後、常法であるエンザイム
イムノアッセイ(EIA)法を用いてアルブミン分泌能を
求めることより判断した。結果を表−10に示す。
め、これを遠心分離(600G5分)により回収し、全量
をベクトン・ディキンソン・ラブウェア社製ファルコン
3002ペトリディッシュで再び培養させた。細胞の培
養は、実施例1、2、3、4と同様の方法を採用した。
細胞の損傷度合は培養1日後、常法であるエンザイム
イムノアッセイ(EIA)法を用いてアルブミン分泌能を
求めることより判断した。結果を表−10に示す。
【0051】実施例29 実施例7で得られた剥離細胞に対し、実施例28と同様
な操作でアルブミン分泌能を求めた。結果を表−10に
示す。
な操作でアルブミン分泌能を求めた。結果を表−10に
示す。
【0052】比較例8 比較例1で培養した肝細胞を0.05%トリプシン溶液
−0.02%EDTA溶液を用いて剥離させ、その後の
操作は、実施例28と同様に行なうことにより、剥離細
胞のアルブミン分泌能を求めた。結果を表−10に示
す。
−0.02%EDTA溶液を用いて剥離させ、その後の
操作は、実施例28と同様に行なうことにより、剥離細
胞のアルブミン分泌能を求めた。結果を表−10に示
す。
【0053】比較例9 実施例28、29及び比較例8の剥離操作前の肝細胞の
アルブミン分泌能を調べるために、比較例1で培養した
肝細胞を剥離させずに、上記EIA法にてアルブミン分
泌能を求めた。結果を表−10に示す。
アルブミン分泌能を調べるために、比較例1で培養した
肝細胞を剥離させずに、上記EIA法にてアルブミン分
泌能を求めた。結果を表−10に示す。
【0054】
【表10】
【0055】実施例28、29及び比較例8,9の結果
より、今回使用した肝細胞は、本来、比較例9に示され
る値のアルブミン分泌能を持っており、この機能は実施
例28、29での細胞では、ほぼ何等のアルブミン分泌
能を示した。一方、比較例8での細胞では、約1/5の
分泌能しか示さなかった。このことは、本発明の剥離細
胞は、従来のそれよりも細胞自身の損傷度が小さいこと
を意味する。
より、今回使用した肝細胞は、本来、比較例9に示され
る値のアルブミン分泌能を持っており、この機能は実施
例28、29での細胞では、ほぼ何等のアルブミン分泌
能を示した。一方、比較例8での細胞では、約1/5の
分泌能しか示さなかった。このことは、本発明の剥離細
胞は、従来のそれよりも細胞自身の損傷度が小さいこと
を意味する。
【0056】
【発明の効果】本発明は、温度を変化させるだけという
簡便な操作で、不純物等を全く混入させることなく高収
率で組織状態の培養細胞を回収することができる。しか
も、従来の方法と比較すると回収された培養細胞は何等
の損傷を受けることがなく、従って細胞機能を十分に保
持しながら、培養・回収の繰り返し操作を行なうことが
できる。
簡便な操作で、不純物等を全く混入させることなく高収
率で組織状態の培養細胞を回収することができる。しか
も、従来の方法と比較すると回収された培養細胞は何等
の損傷を受けることがなく、従って細胞機能を十分に保
持しながら、培養・回収の繰り返し操作を行なうことが
できる。
【図1】光学顕微鏡写真による実施例6のそれぞれ培養
1日と2日の培養細胞の形態を示す。
1日と2日の培養細胞の形態を示す。
【図2】光学顕微鏡写真による実施例6のそれぞれ培養
1日と2日の培養細胞の形態を示す。
1日と2日の培養細胞の形態を示す。
【図3】光学顕微鏡写真による比較例1の培養細胞の形
態を示す。
態を示す。
【図4】光学顕微鏡写真による実施例24の培養細胞の
形態を示す。
形態を示す。
【図5】光学顕微鏡写真による比較例5の培養細胞の形
態を示す。
態を示す。
【手続補正書】
【提出日】平成4年2月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正内容】
【0008】本発明に使用する細胞培養支持体は、基材
表面上が適当なポリマーで被覆される。そのような適当
なポリマーは、Tが0〜80℃、好ましくは0〜50°
を有する(尚 「臨界溶解温度」とは、2層分離している2
種の物質が或る温度になると互いに完全溶解し均一層と
なるその温度のことを言う。特に、温度を上げて完全溶
解に達する場合の温度を「上限臨界溶解温度」、温度を下
げて完全溶解する場合の温度を「下限臨界溶解温度」と言
うことがある)。Tが80℃を越えると細胞が死滅する
可能性があるので好ましくない。またTが0℃より低い
と、一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細
胞が死滅してしまうため好ましくない。そのような好適
なポリマーとしては、例えば特開平2−211865号
公報に記載のポリマーが挙げられる(これを参照により
ここに導入し、その開示とする)。具体的には適当なポ
リマーとしては、例えばポリ−N−イソプロピルアクリ
ルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリ
ルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタク
リルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルア
クリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロ
フルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−
テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35
℃)、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=
32℃)、等が挙げられる。その他のポリマーとして
は、例えばポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N
−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−シクロプ
ロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタ
クリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポ
リ−N−アクリロイルピペリジン、ポリメチルビニルエ
ーテル等が挙げられる。そのようなポリマーは、例えば
モノマーの単独重合体がT=0〜80℃を有するような
モノマーの単独若しくは共重合により調製される。モノ
マーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N
−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルア
ミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導
体、及びビニルエーテル誘導体等が挙げられ、これらの
1種以上を使用してよい。又、増殖細胞の種類によって
Tを調節する必要がある場合や、被覆物質と細胞培養支
持体との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞支
持体の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場
合などには、上記以外の他のモノマー類を更に加えて共
重合してよい。更に本発明に使用する上記ポリマーとそ
の他のポリマーとのグラフトまたはブロック共重合体、
あるいは本発明のポリマーと他のポリマーとの混合物を
用いてもよい。また、ポリマー本来の性質が損なわれな
い範囲で架橋することも可能である。
表面上が適当なポリマーで被覆される。そのような適当
なポリマーは、Tが0〜80℃、好ましくは0〜50°
を有する(尚 「臨界溶解温度」とは、2層分離している2
種の物質が或る温度になると互いに完全溶解し均一層と
なるその温度のことを言う。特に、温度を上げて完全溶
解に達する場合の温度を「上限臨界溶解温度」、温度を下
げて完全溶解する場合の温度を「下限臨界溶解温度」と言
うことがある)。Tが80℃を越えると細胞が死滅する
可能性があるので好ましくない。またTが0℃より低い
と、一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細
胞が死滅してしまうため好ましくない。そのような好適
なポリマーとしては、例えば特開平2−211865号
公報に記載のポリマーが挙げられる(これを参照により
ここに導入し、その開示とする)。具体的には適当なポ
リマーとしては、例えばポリ−N−イソプロピルアクリ
ルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリ
ルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタク
リルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルア
クリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロ
フルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−
テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35
℃)、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=
32℃)、等が挙げられる。その他のポリマーとして
は、例えばポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N
−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−シクロプ
ロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタ
クリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポ
リ−N−アクリロイルピペリジン、ポリメチルビニルエ
ーテル等が挙げられる。そのようなポリマーは、例えば
モノマーの単独重合体がT=0〜80℃を有するような
モノマーの単独若しくは共重合により調製される。モノ
マーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N
−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルア
ミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導
体、及びビニルエーテル誘導体等が挙げられ、これらの
1種以上を使用してよい。又、増殖細胞の種類によって
Tを調節する必要がある場合や、被覆物質と細胞培養支
持体との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞支
持体の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場
合などには、上記以外の他のモノマー類を更に加えて共
重合してよい。更に本発明に使用する上記ポリマーとそ
の他のポリマーとのグラフトまたはブロック共重合体、
あるいは本発明のポリマーと他のポリマーとの混合物を
用いてもよい。また、ポリマー本来の性質が損なわれな
い範囲で架橋することも可能である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】本発明の細胞培養法は、上記のようにして
得られた細胞培養支持体上にて行われる。本発明の細胞
培養法に適用される細胞としては特に限定されないが、
例えばウシ大動脈血管内皮細胞、ウシ肝実質細胞、ラッ
ト肝実質細胞、ラット線維芽細胞、ヒト血管内皮細胞、
ヒトケラチノサイト等が挙げられる。このような細胞
は、当業者に周知の方法で入手し得る。培養温度は、
(T−10)℃〜(T+10)℃であり、好ましくは(T−
5)℃〜(T+5)℃、より好ましくは(T−4℃)〜(T+
4℃)である。更に好ましくは培養温度は、Tが上限臨
界溶解温度の場合はその温度以下であり、又Tが下限臨
界溶解温度の場合はその温度以上である。基材上に被覆
されるポリマーが下限臨界溶解温度を有し培養温度が
(T+10)℃より高い場合、又はポリマーが上限臨界溶
解温度を有し培養温度が(T−10)℃より低い場合、培
養細胞は単層状となり組織状として回収することが出来
ない。又、基材上に被覆されるポリマーが下限臨界溶解
温度を有し培養温度が(T−10)℃より低い場合、又は
ポリマーが上限臨界溶解温度を有し培養温度が(T+1
0)℃より高い場合は、細胞は支持体上に付着せず培養
が困難となる。具体的には、被覆ポリマーが例えば前記
ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドである場合の培
養温度は24〜35℃、ポリマーがポリ−N−n−プロ
ピルアクリルアミドである場合の培養温度は17〜24
℃、ポリマーがポリ−N−n−プロピルメタクリルアミ
ドである場合の培養温度は24〜30℃、ポリマーがポ
リ−N−エトキシエチルアクリルアミドの場合の培養温
度は31〜38℃、ポリマーがポリ−N−テトラヒドロ
フルフリルアクリルアミドの場合の培養温度は24〜3
1℃、ポリマーがポリ−N−テトラヒドロフルフリルメ
タクリルアミドの場合の培養温度は31〜38℃、ポリ
マーがポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドの場合の
培養温度は24〜35℃が、それぞれ好ましい。その他
の培養条件は特に限定されず、当分野に於いて通常行わ
れる条件下に培養を行ってよい。例えば培地としては、
ウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されているものでも
よいし、或は無血清培地でもよい。
得られた細胞培養支持体上にて行われる。本発明の細胞
培養法に適用される細胞としては特に限定されないが、
例えばウシ大動脈血管内皮細胞、ウシ肝実質細胞、ラッ
ト肝実質細胞、ラット線維芽細胞、ヒト血管内皮細胞、
ヒトケラチノサイト等が挙げられる。このような細胞
は、当業者に周知の方法で入手し得る。培養温度は、
(T−10)℃〜(T+10)℃であり、好ましくは(T−
5)℃〜(T+5)℃、より好ましくは(T−4℃)〜(T+
4℃)である。更に好ましくは培養温度は、Tが上限臨
界溶解温度の場合はその温度以下であり、又Tが下限臨
界溶解温度の場合はその温度以上である。基材上に被覆
されるポリマーが下限臨界溶解温度を有し培養温度が
(T+10)℃より高い場合、又はポリマーが上限臨界溶
解温度を有し培養温度が(T−10)℃より低い場合、培
養細胞は単層状となり組織状として回収することが出来
ない。又、基材上に被覆されるポリマーが下限臨界溶解
温度を有し培養温度が(T−10)℃より低い場合、又は
ポリマーが上限臨界溶解温度を有し培養温度が(T+1
0)℃より高い場合は、細胞は支持体上に付着せず培養
が困難となる。具体的には、被覆ポリマーが例えば前記
ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドである場合の培
養温度は24〜35℃、ポリマーがポリ−N−n−プロ
ピルアクリルアミドである場合の培養温度は17〜24
℃、ポリマーがポリ−N−n−プロピルメタクリルアミ
ドである場合の培養温度は24〜30℃、ポリマーがポ
リ−N−エトキシエチルアクリルアミドの場合の培養温
度は31〜38℃、ポリマーがポリ−N−テトラヒドロ
フルフリルアクリルアミドの場合の培養温度は24〜3
1℃、ポリマーがポリ−N−テトラヒドロフルフリルメ
タクリルアミドの場合の培養温度は31〜38℃、ポリ
マーがポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドの場合の
培養温度は24〜35℃が、それぞれ好ましい。その他
の培養条件は特に限定されず、当分野に於いて通常行わ
れる条件下に培養を行ってよい。例えば培地としては、
ウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されているものでも
よいし、或は無血清培地でもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正内容】
【0050】実施例28 実施例3で得られた剥離細胞の損傷度合を確認するた
め、これを遠心分離(600G×5分)により回収し、全
量をベクトン・ディキンソン・ラブウェア社製ファルコ
ン3002ペトリディッシュで再び培養させた。細胞の
培養は、実施例1、2、3、4と同様の方法を採用し
た。細胞の損傷度合は培養1日後、常法であるエンザイ
ム イムノアッセイ(EIA)法を用いてアルブミン分泌
能を求めることより判断した。結果を表−10に示す。 ─────────────────────────────────────────────────────
め、これを遠心分離(600G×5分)により回収し、全
量をベクトン・ディキンソン・ラブウェア社製ファルコ
ン3002ペトリディッシュで再び培養させた。細胞の
培養は、実施例1、2、3、4と同様の方法を採用し
た。細胞の損傷度合は培養1日後、常法であるエンザイ
ム イムノアッセイ(EIA)法を用いてアルブミン分泌
能を求めることより判断した。結果を表−10に示す。 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年12月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】光学顕微鏡写真による実施例6のそれぞれ培養
1日と2日の培養細胞の生物の形態を示す。
1日と2日の培養細胞の生物の形態を示す。
【図2】光学顕微鏡写真による実施例6のそれぞれ培養
1日と2日の培養細胞の生物の形態を示す。
1日と2日の培養細胞の生物の形態を示す。
【図3】光学顕微鏡写真による比較例1の培養細胞の生
物の形態を示す。
物の形態を示す。
【図4】光学顕微鏡写真による実施例24の培養細胞の
生物の形態を示す。
生物の形態を示す。
【図5】光学顕微鏡写真による比較例5の培養細胞の生
物の形態を示す。 ─────────────────────────────────────────────────────
物の形態を示す。 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年4月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 細胞及びその培養法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、細胞及びその培養法に
関する。より詳しくは本発明は、周囲温度を変化させる
だけで培養細胞を、高収率で、細胞を傷つけることなく
且つ薬品等の第3成分の混入若しくは汚染無しに容易に
細胞培養支持体から組織状として剥離回収出来る細胞培
養法に関する。本発明は又、そのような細胞培養法で得
られる細胞に関する。
関する。より詳しくは本発明は、周囲温度を変化させる
だけで培養細胞を、高収率で、細胞を傷つけることなく
且つ薬品等の第3成分の混入若しくは汚染無しに容易に
細胞培養支持体から組織状として剥離回収出来る細胞培
養法に関する。本発明は又、そのような細胞培養法で得
られる細胞に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、種々の目的により、生体内の細胞
を生体外で培養しようとする試みが活発に行なわれてい
る。その中で特に、生体外でも生体内と同様に立体的に
細胞を培養し、皮膚や肝細胞などの組織状細胞を得よう
とする試みは、生体外で細胞本来の機能を維持させよう
とする点、また、各種ハイブリッド型人工臓器、バイオ
シミュレーター、安全性評価用細胞等の開発の点から、
最近注目されている研究である。この組織状細胞を得る
方法としては、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニ
ン等の細胞付着付物質をスポンジ状に成型し、細胞を三
次元に培養する方法、また、プロテオグリカン等の細胞
非付着性物質上で培養する方法、さらに対象とする細胞
を肝細胞とした場合、ポリ−N−P−ビニルベンジル−
D−ラクトンアミド(PVLA)上を培養する方法等が開
発されており、また、これらの方法で得られた組織状細
胞自身の生化学的機能も高いことが確認されている。
を生体外で培養しようとする試みが活発に行なわれてい
る。その中で特に、生体外でも生体内と同様に立体的に
細胞を培養し、皮膚や肝細胞などの組織状細胞を得よう
とする試みは、生体外で細胞本来の機能を維持させよう
とする点、また、各種ハイブリッド型人工臓器、バイオ
シミュレーター、安全性評価用細胞等の開発の点から、
最近注目されている研究である。この組織状細胞を得る
方法としては、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニ
ン等の細胞付着付物質をスポンジ状に成型し、細胞を三
次元に培養する方法、また、プロテオグリカン等の細胞
非付着性物質上で培養する方法、さらに対象とする細胞
を肝細胞とした場合、ポリ−N−P−ビニルベンジル−
D−ラクトンアミド(PVLA)上を培養する方法等が開
発されており、また、これらの方法で得られた組織状細
胞自身の生化学的機能も高いことが確認されている。
【0003】しかしながら、いずれの方法による組織状
細胞においても、基材から剥離させ更に高次の検討に供
するためには、トリプシンのような蛋白質分解酵素や化
学薬品を用いなければならず、細胞が変性し細胞本来の
機能が損なわれるという問題や、剥離の際には種々の人
工基質等が混入するという問題等があった。
細胞においても、基材から剥離させ更に高次の検討に供
するためには、トリプシンのような蛋白質分解酵素や化
学薬品を用いなければならず、細胞が変性し細胞本来の
機能が損なわれるという問題や、剥離の際には種々の人
工基質等が混入するという問題等があった。
【0004】一方、本発明者らは、トリプシンのような
たんぱく分解酵素やキレート剤のEDTA等による処理
を施さずに環境温度を変化させるだけで、培養・増殖さ
せた細胞を、支持体表面から剥離・回収することが可能
な細胞培養支持体材料を以前に提案している(特開平2
−211865号公報)。
たんぱく分解酵素やキレート剤のEDTA等による処理
を施さずに環境温度を変化させるだけで、培養・増殖さ
せた細胞を、支持体表面から剥離・回収することが可能
な細胞培養支持体材料を以前に提案している(特開平2
−211865号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は人工基材上
に、組織状細胞を形成させ、且つ、細胞の機能を損なう
ことなく剥離・回収させることを目的とする。
に、組織状細胞を形成させ、且つ、細胞の機能を損なう
ことなく剥離・回収させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、以上のよ
うな点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、先に提案した細
胞培養支持体において、所定量のポリマーもしくはコポ
リマーが被覆された細胞培養支持体を利用し、且つ、細
胞を培養する温度を所定範囲内とすることにより、細胞
を組織状態で培養することが可能となり、しかも温度を
変化させるだけで、その組織状細胞を剥離・回収するこ
とが可能であり、さらにその剥離した細胞はその機能を
保持していることを見い出し、本発明に至った。
うな点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、先に提案した細
胞培養支持体において、所定量のポリマーもしくはコポ
リマーが被覆された細胞培養支持体を利用し、且つ、細
胞を培養する温度を所定範囲内とすることにより、細胞
を組織状態で培養することが可能となり、しかも温度を
変化させるだけで、その組織状細胞を剥離・回収するこ
とが可能であり、さらにその剥離した細胞はその機能を
保持していることを見い出し、本発明に至った。
【0007】即ち本発明は、水に対する臨界溶解温度
(以下、単に「T」と云うことがある。)が0〜80℃の
ポリマーを基材表面に被覆した細胞培養支持体上にて、
細胞を(T−10)〜(T+10)℃にて培養することを特
徴とする組織状細胞の培養法を提供する。
(以下、単に「T」と云うことがある。)が0〜80℃の
ポリマーを基材表面に被覆した細胞培養支持体上にて、
細胞を(T−10)〜(T+10)℃にて培養することを特
徴とする組織状細胞の培養法を提供する。
【0008】本発明に使用する細胞培養支持体は、基材
表面上が適当なポリマーで被覆される。そのような適当
なポリマーは、Tが0〜80℃、好ましくは0〜50°
を有する(尚 「臨界溶解温度」とは、2層分離している2
種の物質が或る温度になると互いに完全溶解し均一層と
なるその温度のことを言う。特に、温度を上げて完全溶
解に達する場合の温度を「上限臨界溶解温度」、温度を下
げて完全溶解する場合の温度を「下限臨界溶解温度」と言
うことがある)。Tが80℃を越えると細胞が死滅する
可能性があるので好ましくない。またTが0℃より低い
と、一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細
胞が死滅してしまうため好ましくない。そのような好適
なポリマーとしては、例えば特開平2−211865号
公報に記載のポリマーが挙げられる(これを参照により
ここに導入し、その開示とする)。具体的には適当なポ
リマーとしては、例えばポリ−N−イソプロピルアクリ
ルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリ
ルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタク
リルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルア
クリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロ
フルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−
テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35
℃)、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=
32℃)、等が挙げられる。その他のポリマーとして
は、例えばポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N
−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−シクロプ
ロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタ
クリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポ
リ−N−アクリロイルピペリジン、ポリメチルビニルエ
ーテル等が挙げられる。そのようなポリマーは、例えば
モノマーの単独重合体がT=0〜80℃を有するような
モノマーの単独若しくは共重合により調製される。モノ
マーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N
−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルア
ミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導
体、及びビニルエーテル誘導体等が挙げられ、これらの
1種以上を使用してよい。又、増殖細胞の種類によって
Tを調節する必要がある場合や、被覆物質と細胞培養支
持体との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞支
持体の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場
合などには、上記以外の他のモノマー類を更に加えて共
重合してよい。更に本発明に使用する上記ポリマーとそ
の他のポリマーとのグラフトまたはブロック共重合体、
あるいは本発明のポリマーと他のポリマーとの混合物を
用いてもよい。また、ポリマー本来の性質が損なわれな
い範囲で架橋することも可能である。
表面上が適当なポリマーで被覆される。そのような適当
なポリマーは、Tが0〜80℃、好ましくは0〜50°
を有する(尚 「臨界溶解温度」とは、2層分離している2
種の物質が或る温度になると互いに完全溶解し均一層と
なるその温度のことを言う。特に、温度を上げて完全溶
解に達する場合の温度を「上限臨界溶解温度」、温度を下
げて完全溶解する場合の温度を「下限臨界溶解温度」と言
うことがある)。Tが80℃を越えると細胞が死滅する
可能性があるので好ましくない。またTが0℃より低い
と、一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細
胞が死滅してしまうため好ましくない。そのような好適
なポリマーとしては、例えば特開平2−211865号
公報に記載のポリマーが挙げられる(これを参照により
ここに導入し、その開示とする)。具体的には適当なポ
リマーとしては、例えばポリ−N−イソプロピルアクリ
ルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリ
ルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタク
リルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルア
クリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロ
フルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−
テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35
℃)、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=
32℃)、等が挙げられる。その他のポリマーとして
は、例えばポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N
−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−シクロプ
ロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタ
クリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポ
リ−N−アクリロイルピペリジン、ポリメチルビニルエ
ーテル等が挙げられる。そのようなポリマーは、例えば
モノマーの単独重合体がT=0〜80℃を有するような
モノマーの単独若しくは共重合により調製される。モノ
マーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N
−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルア
ミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導
体、及びビニルエーテル誘導体等が挙げられ、これらの
1種以上を使用してよい。又、増殖細胞の種類によって
Tを調節する必要がある場合や、被覆物質と細胞培養支
持体との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞支
持体の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場
合などには、上記以外の他のモノマー類を更に加えて共
重合してよい。更に本発明に使用する上記ポリマーとそ
の他のポリマーとのグラフトまたはブロック共重合体、
あるいは本発明のポリマーと他のポリマーとの混合物を
用いてもよい。また、ポリマー本来の性質が損なわれな
い範囲で架橋することも可能である。
【0009】本発明に使用する細胞培養支持体は、基材
上に上記ポリマーを被覆して得られる。ポリマーの被覆
量は、5〜80μg/cm2が好ましく、さらに好ましくは
6〜40μg/cm2である。ポリマー被覆量が80μg/c
m2を超過すると細胞は細胞培養支持体表面上に付着せ
ず、逆に被覆量が少ないと細胞は単層の状態で培養され
組織状とならず、又培養細胞を支持体から剥離回収する
のも困難となる。このようなポリマー被覆量は、例えば
フーリエ変換赤外分光計全反射法(FT-IR-ATR法)、被覆
部若しくは非被覆部の染色や蛍光物質の染色による分
析、更に接触角測定等による表面分析を単独或は併用し
て求めることが出来る。
上に上記ポリマーを被覆して得られる。ポリマーの被覆
量は、5〜80μg/cm2が好ましく、さらに好ましくは
6〜40μg/cm2である。ポリマー被覆量が80μg/c
m2を超過すると細胞は細胞培養支持体表面上に付着せ
ず、逆に被覆量が少ないと細胞は単層の状態で培養され
組織状とならず、又培養細胞を支持体から剥離回収する
のも困難となる。このようなポリマー被覆量は、例えば
フーリエ変換赤外分光計全反射法(FT-IR-ATR法)、被覆
部若しくは非被覆部の染色や蛍光物質の染色による分
析、更に接触角測定等による表面分析を単独或は併用し
て求めることが出来る。
【0010】被覆を施される上記基材の材質は、通常細
胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレ
ン、ポリメチルメタクリレート等の高分子化合物、ある
いはセラミックス、金属等が挙げられる。尚、基材表面
はオゾン処理、プラズマ処理、スパッタリング等の処理
技術を用いて親水化を施されたものでも良い。形状は、
ペトリディッシュに限定されることはなく、プレート、
ファイバー、(多孔質)粒子、また、一般に細胞培養等に
用いられる容器の形状(フラスコ等)を付与されていても
構わない。
胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレ
ン、ポリメチルメタクリレート等の高分子化合物、ある
いはセラミックス、金属等が挙げられる。尚、基材表面
はオゾン処理、プラズマ処理、スパッタリング等の処理
技術を用いて親水化を施されたものでも良い。形状は、
ペトリディッシュに限定されることはなく、プレート、
ファイバー、(多孔質)粒子、また、一般に細胞培養等に
用いられる容器の形状(フラスコ等)を付与されていても
構わない。
【0011】基材へのポリマーの被覆方法は、後述する
ような化学的方法、物理的方法、を単独でまたは併
用して行うことができる。被覆時に前記モノマーを使用
する場合、そのモノマーは気体、液体、固体いずれの状
態でも良い。また、ポリマーを使用する場合にはおいて
も、そのポリマーは、液体、固体状態のいずれの状態で
も良い。これらのものを化学的な反応によって結合さ
せる場合、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、
プラズマ処理、コロナ処理、さらに基材と被覆材料が適
当な反応性官能基を有する場合はラジカル及びイオン反
応等の一般に用いられる有機反応、を用いることができ
る。物理的な相互作用による方法としては、被覆材料
を単独または基材との相溶性の良いマトリックスを媒体
とし、塗布、混練等の物理的吸着を用いる方法等がある
が、これらに限られるわけではない。
ような化学的方法、物理的方法、を単独でまたは併
用して行うことができる。被覆時に前記モノマーを使用
する場合、そのモノマーは気体、液体、固体いずれの状
態でも良い。また、ポリマーを使用する場合にはおいて
も、そのポリマーは、液体、固体状態のいずれの状態で
も良い。これらのものを化学的な反応によって結合さ
せる場合、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、
プラズマ処理、コロナ処理、さらに基材と被覆材料が適
当な反応性官能基を有する場合はラジカル及びイオン反
応等の一般に用いられる有機反応、を用いることができ
る。物理的な相互作用による方法としては、被覆材料
を単独または基材との相溶性の良いマトリックスを媒体
とし、塗布、混練等の物理的吸着を用いる方法等がある
が、これらに限られるわけではない。
【0012】本発明の細胞培養法は、上記のようにして
得られた細胞培養支持体上にて行われる。本発明の細胞
培養法に適用される細胞としては特に限定されないが、
例えばウシ大動脈血管内皮細胞、ウシ肝実質細胞、ラッ
ト肝実質細胞、ラット線維芽細胞、ヒト血管内皮細胞、
ヒトケラチノサイト等が挙げられる。このような細胞
は、当業者に周知の方法で入手し得る。培養温度は、
(T−10)℃〜(T+10)℃であり、好ましくは(T−
5)℃〜(T+5)℃、より好ましくは(T−4℃)〜(T+
4℃)である。更に好ましくは培養温度は、Tが上限臨
界溶解温度の場合はこの温度範囲内でしかもその上限臨
界溶解温度以下が良く、又Tが下限臨界溶解温度の場合
はこの温度範囲内でしかもその下限臨界溶解温度以上が
良い。基材上に被覆されるポリマーが下限臨界溶解温度
を有し培養温度が(T+10)℃より高い場合、又はポリ
マーが上限臨界溶解温度を有し培養温度が(T−10)℃
より低い場合、培養細胞は単層状となり組織状として回
収することが出来ない。又、基材上に被覆されるポリマ
ーが下限臨界溶解温度を有し培養温度が(T−10)℃よ
り低い場合、又はポリマーが上限臨界溶解温度を有し培
養温度が(T+10)℃より高い場合は、細胞は支持体上
に付着せず培養が困難となる。具体的には、被覆ポリマ
ーが例えば前記ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド
である場合の培養温度は24〜35℃、ポリマーがポリ
−N−n−プロピルアクリルアミドである場合の培養温
度は17〜24℃、ポリマーがポリ−N−n−プロピル
メタクリルアミドである場合の培養温度は24〜30
℃、ポリマーがポリ−N−エトキシエチルアクリルアミ
ドの場合の培養温度は31〜38℃、ポリマーがポリ−
N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミドの場合の培
養温度は24〜31℃、ポリマーがポリ−N−テトラヒ
ドロフルフリルメタクリルアミドの場合の培養温度は3
1〜38℃、ポリマーがポリ−N,N−ジエチルアクリ
ルアミドの場合の培養温度は24〜35℃が、それぞれ
好ましい。その他の培養条件は特に限定されず、当分野
に於いて通常行われる条件下に培養を行ってよい。例え
ば培地としては、ウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加さ
れているものでもよいし、或は無血清培地でもよい。
得られた細胞培養支持体上にて行われる。本発明の細胞
培養法に適用される細胞としては特に限定されないが、
例えばウシ大動脈血管内皮細胞、ウシ肝実質細胞、ラッ
ト肝実質細胞、ラット線維芽細胞、ヒト血管内皮細胞、
ヒトケラチノサイト等が挙げられる。このような細胞
は、当業者に周知の方法で入手し得る。培養温度は、
(T−10)℃〜(T+10)℃であり、好ましくは(T−
5)℃〜(T+5)℃、より好ましくは(T−4℃)〜(T+
4℃)である。更に好ましくは培養温度は、Tが上限臨
界溶解温度の場合はこの温度範囲内でしかもその上限臨
界溶解温度以下が良く、又Tが下限臨界溶解温度の場合
はこの温度範囲内でしかもその下限臨界溶解温度以上が
良い。基材上に被覆されるポリマーが下限臨界溶解温度
を有し培養温度が(T+10)℃より高い場合、又はポリ
マーが上限臨界溶解温度を有し培養温度が(T−10)℃
より低い場合、培養細胞は単層状となり組織状として回
収することが出来ない。又、基材上に被覆されるポリマ
ーが下限臨界溶解温度を有し培養温度が(T−10)℃よ
り低い場合、又はポリマーが上限臨界溶解温度を有し培
養温度が(T+10)℃より高い場合は、細胞は支持体上
に付着せず培養が困難となる。具体的には、被覆ポリマ
ーが例えば前記ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド
である場合の培養温度は24〜35℃、ポリマーがポリ
−N−n−プロピルアクリルアミドである場合の培養温
度は17〜24℃、ポリマーがポリ−N−n−プロピル
メタクリルアミドである場合の培養温度は24〜30
℃、ポリマーがポリ−N−エトキシエチルアクリルアミ
ドの場合の培養温度は31〜38℃、ポリマーがポリ−
N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミドの場合の培
養温度は24〜31℃、ポリマーがポリ−N−テトラヒ
ドロフルフリルメタクリルアミドの場合の培養温度は3
1〜38℃、ポリマーがポリ−N,N−ジエチルアクリ
ルアミドの場合の培養温度は24〜35℃が、それぞれ
好ましい。その他の培養条件は特に限定されず、当分野
に於いて通常行われる条件下に培養を行ってよい。例え
ば培地としては、ウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加さ
れているものでもよいし、或は無血清培地でもよい。
【0013】上記培養後、培養細胞を細胞培養支持体か
ら剥離させ回収するには、周囲温度を前記ポリマーの上
限臨界溶解温度に対し、+10℃以上もしくは下限臨界
溶解温度に対し、−10℃以下に変化させるだけで良
く、細胞を培養していた培養液中においてもその他の等
張液中においても可能であり、目的に合わせて選択する
ことができる。その際、培養細胞を効率的に且つ容易に
剥離させる目的で、細胞培養支持体を軽くたたいたり揺
らしたり、更にはピペット等を使用して培地を撹拌する
などしてもよい。
ら剥離させ回収するには、周囲温度を前記ポリマーの上
限臨界溶解温度に対し、+10℃以上もしくは下限臨界
溶解温度に対し、−10℃以下に変化させるだけで良
く、細胞を培養していた培養液中においてもその他の等
張液中においても可能であり、目的に合わせて選択する
ことができる。その際、培養細胞を効率的に且つ容易に
剥離させる目的で、細胞培養支持体を軽くたたいたり揺
らしたり、更にはピペット等を使用して培地を撹拌する
などしてもよい。
【0014】
【作用】以下本発明の作用を、被覆ポリマー調製用モノ
マーとしてN−イソプロピルアクリルアミド、及び支持
体基材として細胞培養用ペトリディッシュ材料として一
般に用いられるポリスチレンを用いた場合を例にとっ
て、より具体的に説明する。
マーとしてN−イソプロピルアクリルアミド、及び支持
体基材として細胞培養用ペトリディッシュ材料として一
般に用いられるポリスチレンを用いた場合を例にとっ
て、より具体的に説明する。
【0015】細胞培養支持体は、例えば上記ポリスチレ
ン基材上でN−イソプロピルアクリルアミドモノマーを
イソプロピルアルコール溶液として被覆し、その後電子
線照射(EB)により重合させて、得られる。その結果、
ポリスチレン基材上には生成ポリマー、即ちポリ−N−
イソプロピルアクリルアミドが被覆される。尚このよう
なポリ−N−イソプロピルアクリルアミドは水溶液中で
約32℃に下限臨界溶解温度を有する。そして下限臨界
溶解温度である32℃以上ではこのポリマーはその占有
体積が小さくなりポリマー中の水分子を排除して、支持
体表面は疎水性を示す。しかし、逆に32℃以下ではポ
リマーの占有体積は大きくなりポリマー中の水分子の占
める体積分率が上昇し、支持体表面は親水性を示すよう
になる。従って温度を制御するだけで、細胞培養支持体
表面の親水・疎水性は調整され、細胞の支持体への接着
性が変化する。そのため、温度を変化させるだけで培養
・増殖後の細胞を破壊することなく細胞培養支持体から
容易に剥離、回収することが可能となるものと考えられ
る。
ン基材上でN−イソプロピルアクリルアミドモノマーを
イソプロピルアルコール溶液として被覆し、その後電子
線照射(EB)により重合させて、得られる。その結果、
ポリスチレン基材上には生成ポリマー、即ちポリ−N−
イソプロピルアクリルアミドが被覆される。尚このよう
なポリ−N−イソプロピルアクリルアミドは水溶液中で
約32℃に下限臨界溶解温度を有する。そして下限臨界
溶解温度である32℃以上ではこのポリマーはその占有
体積が小さくなりポリマー中の水分子を排除して、支持
体表面は疎水性を示す。しかし、逆に32℃以下ではポ
リマーの占有体積は大きくなりポリマー中の水分子の占
める体積分率が上昇し、支持体表面は親水性を示すよう
になる。従って温度を制御するだけで、細胞培養支持体
表面の親水・疎水性は調整され、細胞の支持体への接着
性が変化する。そのため、温度を変化させるだけで培養
・増殖後の細胞を破壊することなく細胞培養支持体から
容易に剥離、回収することが可能となるものと考えられ
る。
【0016】上記のような性質を持った細胞培養支持体
上で正常肝細胞を播種しポリ−N−イソプロピルアクリ
ルアミドの下限臨界温度32℃に対し、上記範囲の培養
温度域で培養すると、正常な肝実質細胞は一般的な接着
性細胞に見られるような支持体全体に単層に伸展するの
ではなく、スフェロイド(組織状態)を形成する。又、血
管内皮細胞を同様な方法で培養すると、管腔組織(組織
状態)を形成する。このようにして得られた組織状細胞
を支持体から剥離するには、培養液の温度を上記ポリマ
ーの下限臨界温度に対し、上記範囲の培養温度域以下に
するだけで高収率に、組織状態を維持したまま、細胞本
来の機能を損なわずに、第3成分の混入なく、回収出来
る。
上で正常肝細胞を播種しポリ−N−イソプロピルアクリ
ルアミドの下限臨界温度32℃に対し、上記範囲の培養
温度域で培養すると、正常な肝実質細胞は一般的な接着
性細胞に見られるような支持体全体に単層に伸展するの
ではなく、スフェロイド(組織状態)を形成する。又、血
管内皮細胞を同様な方法で培養すると、管腔組織(組織
状態)を形成する。このようにして得られた組織状細胞
を支持体から剥離するには、培養液の温度を上記ポリマ
ーの下限臨界温度に対し、上記範囲の培養温度域以下に
するだけで高収率に、組織状態を維持したまま、細胞本
来の機能を損なわずに、第3成分の混入なく、回収出来
る。
【0017】
【発明の効果】本発明により、周囲温度を変化させるだ
けで培養細胞を、組織状で、高収率で、傷つけることな
く且つ薬品等の第3成分の混入若しくは汚染無しに容易
に細胞培養支持体から剥離回収出来る。
けで培養細胞を、組織状で、高収率で、傷つけることな
く且つ薬品等の第3成分の混入若しくは汚染無しに容易
に細胞培養支持体から剥離回収出来る。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0019】実施例1、2、3、4 細胞培養支持体基材として、ベクトン・ディキンソン・
ラブウェア(BectonDickinson Labware)社製ファル
コン(FALCON)3002ペトリディッシュを用い、
培養する細胞としてはラット肝実質細胞を採用した。N
−イソプロピルアクリルアミドを表−1に示す各濃度の
イソプロピルアルコール溶液として、ペトリディッシュ
上に、0.1ml添加後、電子線を30Mrad照射すること
により、ペトリディッシュ表面上に、ポリ−N−イソプ
ロピルアクリルアミドを被覆した。電子線照射後、イオ
ン交換水により、ペトリディッシュを洗浄し、残存モノ
マー及び遊離ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを
取り除き、クリーンベンチ内で乾燥し、さらに、エチレ
ンオキサイド(EO)ガス滅菌さらに十分に脱気を行なう
ことにより、細胞培養支持体材料を得た。
ラブウェア(BectonDickinson Labware)社製ファル
コン(FALCON)3002ペトリディッシュを用い、
培養する細胞としてはラット肝実質細胞を採用した。N
−イソプロピルアクリルアミドを表−1に示す各濃度の
イソプロピルアルコール溶液として、ペトリディッシュ
上に、0.1ml添加後、電子線を30Mrad照射すること
により、ペトリディッシュ表面上に、ポリ−N−イソプ
ロピルアクリルアミドを被覆した。電子線照射後、イオ
ン交換水により、ペトリディッシュを洗浄し、残存モノ
マー及び遊離ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを
取り除き、クリーンベンチ内で乾燥し、さらに、エチレ
ンオキサイド(EO)ガス滅菌さらに十分に脱気を行なう
ことにより、細胞培養支持体材料を得た。
【0020】得られた細胞培養支持体表面上の被覆量
は、フーリエ変換赤外分光計全反射法(FT−IR−A
TR法)を用い、基材に由来する1028cm-1の吸収に
対する被覆物であるポリ−N−イソプロピルアクリルア
ミドに由来するアミドII(1540cm-1)の吸収の比を
算出する方法により求めた。その際、検量線は既知量の
N−イソプロピルアクリルアミドホモポリマーを既知面
積の基材表面上に塗布した試料を利用することで作成し
た。結果を表−6に示す。
は、フーリエ変換赤外分光計全反射法(FT−IR−A
TR法)を用い、基材に由来する1028cm-1の吸収に
対する被覆物であるポリ−N−イソプロピルアクリルア
ミドに由来するアミドII(1540cm-1)の吸収の比を
算出する方法により求めた。その際、検量線は既知量の
N−イソプロピルアクリルアミドホモポリマーを既知面
積の基材表面上に塗布した試料を利用することで作成し
た。結果を表−6に示す。
【0021】ラット肝実質細胞は、一般的に知られるベ
リー(Berry)とフレンド(Friend)らのコラゲナーゼ灌
流法により入手し、培養は、得られた細胞培養支持体材
料上にて、5%ウシ胎児血清(FCS)、10-8Mデキサ
メサゾン、10-7Mインスリン、10mMニコチンアミ
ドさらに、10ng/ml 表皮成長因子(EGF)を含むW
illiams E培地を培地として、5%二酸化炭素中、3
0℃で行なった。実施例2の培養1日目と2日目の培養
細胞のようすをそれぞれ光学顕微鏡写真として図1及び
図2に示す。次に、その増殖細胞の入ったペトリディッ
シュを5℃冷却、放置することにより、増殖細胞を剥離
させた。増殖細胞剥離回収率は下式に従って求めた。
リー(Berry)とフレンド(Friend)らのコラゲナーゼ灌
流法により入手し、培養は、得られた細胞培養支持体材
料上にて、5%ウシ胎児血清(FCS)、10-8Mデキサ
メサゾン、10-7Mインスリン、10mMニコチンアミ
ドさらに、10ng/ml 表皮成長因子(EGF)を含むW
illiams E培地を培地として、5%二酸化炭素中、3
0℃で行なった。実施例2の培養1日目と2日目の培養
細胞のようすをそれぞれ光学顕微鏡写真として図1及び
図2に示す。次に、その増殖細胞の入ったペトリディッ
シュを5℃冷却、放置することにより、増殖細胞を剥離
させた。増殖細胞剥離回収率は下式に従って求めた。
【0022】 増殖細胞剥離回収率(%)=100×(剥離回収した細胞
総数)/(増殖させた細胞総数)
総数)/(増殖させた細胞総数)
【0023】その際、剥離回収した細胞総数および増殖
させた細胞総数を計測するためには、細胞を個々の状態
にしなければならない。従って、剥離回収した細胞総数
は、5℃に冷却、放置した後、回収した細胞塊に対し、
トリプシン−EDTA処理を行ない、細胞を個々の状態
にして行なった。また、増殖させた細胞総数は、上記方
法で剥離回収した細胞総数に、5℃に冷却、放置しても
剥離しなかった細胞をトリプシン−EDTA処理で、細
胞を個々の状態に剥離させた細胞総数を加え合わせるこ
とにより求めた。結果を表−6に示す。
させた細胞総数を計測するためには、細胞を個々の状態
にしなければならない。従って、剥離回収した細胞総数
は、5℃に冷却、放置した後、回収した細胞塊に対し、
トリプシン−EDTA処理を行ない、細胞を個々の状態
にして行なった。また、増殖させた細胞総数は、上記方
法で剥離回収した細胞総数に、5℃に冷却、放置しても
剥離しなかった細胞をトリプシン−EDTA処理で、細
胞を個々の状態に剥離させた細胞総数を加え合わせるこ
とにより求めた。結果を表−6に示す。
【0024】
【表1】
【0025】実施例5、6、7、8 基材として、ベクトン・ディキンソン・ラブウェア社製
ファルコン3002ペトリディッシュを用い、N−イソ
プロピルアクリルアミドのイソプロピルアルコール溶液
のペトリディッシュ上への塗布量を各々表−2に示す量
とする点以外は、実施例2と同様にして、細胞培養支持
体材料を得、被覆量を求め、さらに、細胞を培養し、こ
れを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率を求めた。結果
を表−6に示す。
ファルコン3002ペトリディッシュを用い、N−イソ
プロピルアクリルアミドのイソプロピルアルコール溶液
のペトリディッシュ上への塗布量を各々表−2に示す量
とする点以外は、実施例2と同様にして、細胞培養支持
体材料を得、被覆量を求め、さらに、細胞を培養し、こ
れを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率を求めた。結果
を表−6に示す。
【0026】
【表2】
【0027】実施例9、10、11 ファルコン3002ペトリディッシュに対し、実施例3
と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を表
−6に示す。この細胞培養支持体材料で、肝細胞を、表
−3に示す温度で培養する点以外は、実施例3と同様に
して実施し、これを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率
を求めた。結果を表−6に示す。
と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を表
−6に示す。この細胞培養支持体材料で、肝細胞を、表
−3に示す温度で培養する点以外は、実施例3と同様に
して実施し、これを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率
を求めた。結果を表−6に示す。
【0028】
【表3】
【0029】実施例12〜23 基材として、ベクトン・ディキンソン・ラブウェア社製
ファルコン3002ペトリディッシュを用い、N−イソ
プロピルアクリルアミドの代わりに、各々表−4に示す
モノマーを利用して細胞培養支持体材料を得、このもの
を利用してラット肝実質細胞を各々表−4に示す温度で
培養する点以外は、実施例2と同様に実施した。各々の
被覆量と増殖細胞剥離回収率を表−6に示す。
ファルコン3002ペトリディッシュを用い、N−イソ
プロピルアクリルアミドの代わりに、各々表−4に示す
モノマーを利用して細胞培養支持体材料を得、このもの
を利用してラット肝実質細胞を各々表−4に示す温度で
培養する点以外は、実施例2と同様に実施した。各々の
被覆量と増殖細胞剥離回収率を表−6に示す。
【0030】
【表4】
【0031】比較例1 細胞培養支持体として、ベクトン・ディキンソン・ラブ
ウェア社製ファルコン3002ペトリディッシュを用
い、表面処理を全く行なわずに実施例1、2、3、4と
同様な実験を行なった。ラット肝実質細胞の培養も実施
例1、2、3、4と同様に、30℃で培養する方法を採
用した。培養1日後のようすを図3に示す。増殖細胞の
剥離回収率を表−6に示す。
ウェア社製ファルコン3002ペトリディッシュを用
い、表面処理を全く行なわずに実施例1、2、3、4と
同様な実験を行なった。ラット肝実質細胞の培養も実施
例1、2、3、4と同様に、30℃で培養する方法を採
用した。培養1日後のようすを図3に示す。増殖細胞の
剥離回収率を表−6に示す。
【0032】比較例2 ファルコン3002ペトリディッシュに対し、実施例3
と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を表
−6に示す。この細胞培養支持体材料で、肝細胞を20
℃で培養する点以外は、実施例3と同様にして実施し、
これを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率を求めた。結
果を表−5に示す。
と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を表
−6に示す。この細胞培養支持体材料で、肝細胞を20
℃で培養する点以外は、実施例3と同様にして実施し、
これを剥離、回収し、増殖細胞剥離回収率を求めた。結
果を表−5に示す。
【0033】
【表5】
【0034】以上の実施例、及び比較例の結果により、
実施例1〜11では、基材表面に塗布するN−イソプロ
ピルアクリルアミドの溶液の濃度、及び塗布量を変える
ことにより、本発明で示すところの被覆量の細胞培養支
持体材料が得られ、このものを使用し、本発明で示すと
ころの温度域内でラット肝実質細胞を培養することによ
り、肝細胞は図1及び図2に示されるようにスフェロイ
ドを形成した。さらに培地を下限臨界溶解温度より十分
に低い5℃とすることにより、高収率で、スフェロイド
を維持したまま剥離、回収することが可能であった。こ
のことは実施例12〜23に示されるように、使用する
モノマー種を変化させて細胞培養支持体材料を得、それ
ぞれについて、本発明で示すところの温度域内で肝細胞
を培養する場合でも同様であった。
実施例1〜11では、基材表面に塗布するN−イソプロ
ピルアクリルアミドの溶液の濃度、及び塗布量を変える
ことにより、本発明で示すところの被覆量の細胞培養支
持体材料が得られ、このものを使用し、本発明で示すと
ころの温度域内でラット肝実質細胞を培養することによ
り、肝細胞は図1及び図2に示されるようにスフェロイ
ドを形成した。さらに培地を下限臨界溶解温度より十分
に低い5℃とすることにより、高収率で、スフェロイド
を維持したまま剥離、回収することが可能であった。こ
のことは実施例12〜23に示されるように、使用する
モノマー種を変化させて細胞培養支持体材料を得、それ
ぞれについて、本発明で示すところの温度域内で肝細胞
を培養する場合でも同様であった。
【0035】一方、比較例1では、表面処理を全く行わ
なかった材料を用い、実施例と同様に30℃で培養を実
施しても、図3に示されるように、細胞は単層状態であ
り、スフェロイドを形成せず、また、温度を下げても剥
離現象は観察されなかった。
なかった材料を用い、実施例と同様に30℃で培養を実
施しても、図3に示されるように、細胞は単層状態であ
り、スフェロイドを形成せず、また、温度を下げても剥
離現象は観察されなかった。
【0036】さらに、比較例2において実施例3で得ら
れた細胞培養支持体材料を使用し、本発明で示すところ
の範囲外の温度で肝細胞を培養した場合、下限臨界溶解
温度より十分に低い温度で培養した場合では、細胞は、
付着せず本発明の効果を十分に満足していないことが分
かる。
れた細胞培養支持体材料を使用し、本発明で示すところ
の範囲外の温度で肝細胞を培養した場合、下限臨界溶解
温度より十分に低い温度で培養した場合では、細胞は、
付着せず本発明の効果を十分に満足していないことが分
かる。
【0037】実施例24、25 ファルコン3002ペトリディッシュに対し、実施例
2、3と同様にして細胞培養支持体材料を得た(それぞ
れ実施例24、25)。基材表面上の被覆量を表−8に
示す。この細胞培養支持体材料を用いて、ウシ大動脈血
管内皮細胞を培養した。ウシ大動脈血管内皮細胞の培養
は、ウシ胎児血清(FCS)を10%含むダルベッコー改
変イーグル培地(DMEM)を培地として、5%二酸化炭
素中で、30℃で行なう方法を採用した。常法に従い培
地交換を行ない24日間培養した。このときの実施例2
4のようすを、光学顕微鏡写真として図4に示す。次に
この増殖細胞の入ったペトリディッシュを5℃に冷却、
放置することにより増殖細胞を剥離させ、実施例1、
2、3、4と同様な方法にて、増殖細胞剥離回収率を求
めた。結果を表−8に示す。
2、3と同様にして細胞培養支持体材料を得た(それぞ
れ実施例24、25)。基材表面上の被覆量を表−8に
示す。この細胞培養支持体材料を用いて、ウシ大動脈血
管内皮細胞を培養した。ウシ大動脈血管内皮細胞の培養
は、ウシ胎児血清(FCS)を10%含むダルベッコー改
変イーグル培地(DMEM)を培地として、5%二酸化炭
素中で、30℃で行なう方法を採用した。常法に従い培
地交換を行ない24日間培養した。このときの実施例2
4のようすを、光学顕微鏡写真として図4に示す。次に
この増殖細胞の入ったペトリディッシュを5℃に冷却、
放置することにより増殖細胞を剥離させ、実施例1、
2、3、4と同様な方法にて、増殖細胞剥離回収率を求
めた。結果を表−8に示す。
【0038】実施例26、27 ファルコン3002ペトリディッシュに対し、実施例2
4と同様な方法で細胞培養支持体材料を得、このものを
利用し、表−6に示す温度で培養する点以外は、実施例
24と同様にして実施し、これを剥離、回収し、増殖細
胞剥離回収率を求めた。結果を表−8に示す。
4と同様な方法で細胞培養支持体材料を得、このものを
利用し、表−6に示す温度で培養する点以外は、実施例
24と同様にして実施し、これを剥離、回収し、増殖細
胞剥離回収率を求めた。結果を表−8に示す。
【0039】
【表6】
【0040】比較例3 細胞培養支持体として、ベクトン・ディキンソン・ラブ
ウェア社製ファルコン3002ペトリディッシュを用
い、表面処理を全く行なわずに実施例24、25と同様
な実験を行なった。ウシ大動脈血管内皮細胞の培養も、
実施例24、25と同様に30℃で培養する方法を採用
した。、培養1日後のようすを光学顕微鏡写真として図
5に示す。増殖細胞の剥離回収率を表−8に示す。
ウェア社製ファルコン3002ペトリディッシュを用
い、表面処理を全く行なわずに実施例24、25と同様
な実験を行なった。ウシ大動脈血管内皮細胞の培養も、
実施例24、25と同様に30℃で培養する方法を採用
した。、培養1日後のようすを光学顕微鏡写真として図
5に示す。増殖細胞の剥離回収率を表−8に示す。
【0041】比較例4、5 ファルコン3002ペトリディッシュに対し、実施例2
4と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を
表−8に示す。この細胞培養支持体材料で、ウシ大動脈
血管内皮細胞を表−7に示す温度で培養する点以外は、
実施例24と同様にして実施し、これを剥離、回収し、
増殖細胞剥離回収率を求めた。結果を表−8に示す。
4と同様にして、細胞培養支持体材料を得た。被覆量を
表−8に示す。この細胞培養支持体材料で、ウシ大動脈
血管内皮細胞を表−7に示す温度で培養する点以外は、
実施例24と同様にして実施し、これを剥離、回収し、
増殖細胞剥離回収率を求めた。結果を表−8に示す。
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】 以上の実施例、及び比較例に示されるように、使用する
細胞をラット肝実質細胞からウシ大動脈血管内皮細胞へ
変更しても、基材表面のポリマー被覆量、及び、細胞培
養温度を本発明で示すところの範囲内であれば、培養し
た細胞は例えば図4に示されるように組織状に増殖し、
管腔形成が認められた(実施例24〜27)。このものに
対し、培地を下限臨界溶解温度より十分に低い5℃とす
ることにより、高収率で、管腔形成を維持したまま剥
離、回収することが可能であった。
細胞をラット肝実質細胞からウシ大動脈血管内皮細胞へ
変更しても、基材表面のポリマー被覆量、及び、細胞培
養温度を本発明で示すところの範囲内であれば、培養し
た細胞は例えば図4に示されるように組織状に増殖し、
管腔形成が認められた(実施例24〜27)。このものに
対し、培地を下限臨界溶解温度より十分に低い5℃とす
ることにより、高収率で、管腔形成を維持したまま剥
離、回収することが可能であった。
【0044】一方、比較例3では表面処理を全く行わな
かった材料を用い、実施例24、25と同様に30℃で
培養を実施しても図5に示されるように細胞は単層状態
であり、管腔形成せず、また、温度を下げても剥離現象
は観察されなかった。
かった材料を用い、実施例24、25と同様に30℃で
培養を実施しても図5に示されるように細胞は単層状態
であり、管腔形成せず、また、温度を下げても剥離現象
は観察されなかった。
【0045】さらに、比較例4、5において実施例24
で得られた細胞培養支持体材料を使用し本発明で示すと
ころの範囲外の温度で血管内皮細胞を培養した場合、下
限臨界溶解温度より十分に低い温度で培養した場合で
は、細胞は付着せず(比較例4)高い温度で培養した場合
では、付着はするものの単層状態であり(比較例5)、い
ずれも本発明の効果を十分に満足していないことが分か
る。
で得られた細胞培養支持体材料を使用し本発明で示すと
ころの範囲外の温度で血管内皮細胞を培養した場合、下
限臨界溶解温度より十分に低い温度で培養した場合で
は、細胞は付着せず(比較例4)高い温度で培養した場合
では、付着はするものの単層状態であり(比較例5)、い
ずれも本発明の効果を十分に満足していないことが分か
る。
【0046】実施例28 実施例3で得られた剥離細胞の損傷度合を確認するた
め、これを遠心分離(600GX5分)により回収し、全
量をベクトン・ディキンソン・ラブウェア社製ファルコ
ン3002ペトリディッシュで再び培養させた。細胞の
培養は、実施例1、2、3、4と同様の方法を採用し
た。細胞の損傷度合は培養1日後、常法であるエンザイ
ム イムノアッセイ(EIA)法を用いてアルブミン分泌
能を求めることより判断した。結果を表−9に示す。
め、これを遠心分離(600GX5分)により回収し、全
量をベクトン・ディキンソン・ラブウェア社製ファルコ
ン3002ペトリディッシュで再び培養させた。細胞の
培養は、実施例1、2、3、4と同様の方法を採用し
た。細胞の損傷度合は培養1日後、常法であるエンザイ
ム イムノアッセイ(EIA)法を用いてアルブミン分泌
能を求めることより判断した。結果を表−9に示す。
【0047】実施例29 実施例7で得られた剥離細胞に対し、実施例28と同様
な操作でアルブミン分泌能を求めた。結果を表−9に示
す。
な操作でアルブミン分泌能を求めた。結果を表−9に示
す。
【0048】比較例6 比較例1で培養した肝細胞を0.05%トリプシン溶液
−0.02%EDTA溶液を用いて剥離させ、その後の
操作は、実施例28と同様に行なうことにより、剥離細
胞のアルブミン分泌能を求めた。結果を表−9に示す。
−0.02%EDTA溶液を用いて剥離させ、その後の
操作は、実施例28と同様に行なうことにより、剥離細
胞のアルブミン分泌能を求めた。結果を表−9に示す。
【0049】比較例7 実施例28、29及び比較例6の剥離操作前の肝細胞の
アルブミン分泌能を調べるために、比較例1で培養した
肝細胞を剥離させずに、上記EIA法にてアルブミン分
泌能を求めた。結果を表−9に示す。
アルブミン分泌能を調べるために、比較例1で培養した
肝細胞を剥離させずに、上記EIA法にてアルブミン分
泌能を求めた。結果を表−9に示す。
【0050】
【表9】
【0051】実施例28、29及び比較例6、7の結果
より、今回使用した肝細胞は、本来、比較例7に示され
る値のアルブミン分泌能を持っており、この機能は実施
例28、29での細胞では、ほぼ同等のアルブミン分泌
能を示した。一方、比較例6での細胞では、約1/5の
分泌能しか示さなかった。このことは、本発明の剥離細
胞は、従来のそれよりも細胞自身の損傷度が小さいこと
を意味する。
より、今回使用した肝細胞は、本来、比較例7に示され
る値のアルブミン分泌能を持っており、この機能は実施
例28、29での細胞では、ほぼ同等のアルブミン分泌
能を示した。一方、比較例6での細胞では、約1/5の
分泌能しか示さなかった。このことは、本発明の剥離細
胞は、従来のそれよりも細胞自身の損傷度が小さいこと
を意味する。
【0052】
【発明の効果】本発明は、温度を変化させるだけという
簡便な操作で、不純物等を全く混入させることなく高収
率で組織状態の培養細胞を回収することができる。しか
も、従来の方法と比較すると回収された培養細胞は何等
の損傷を受けることがなく、従って細胞機能を十分に保
持しながら、培養・回収の繰り返し操作を行なうことが
できる。
簡便な操作で、不純物等を全く混入させることなく高収
率で組織状態の培養細胞を回収することができる。しか
も、従来の方法と比較すると回収された培養細胞は何等
の損傷を受けることがなく、従って細胞機能を十分に保
持しながら、培養・回収の繰り返し操作を行なうことが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学顕微鏡写真による実施例2の培養1日の培
養細胞の生物の形態を示す。
養細胞の生物の形態を示す。
【図2】光学顕微鏡写真による実施例2の培養2日の培
養細胞の生物の形態を示す。
養細胞の生物の形態を示す。
【図3】光学顕微鏡写真による比較例1の培養細胞の生
物の形態を示す。
物の形態を示す。
【図4】光学顕微鏡写真による実施例24の培養細胞の
生物の形態を示す。
生物の形態を示す。
【図5】光学顕微鏡写真による比較例3の培養細胞の生
物の形態を示す。
物の形態を示す。
フロントページの続き (72)発明者 桜井 靖久 東京都杉並区永福3−17−6 (72)発明者 坂井 秀昭 和歌山県那賀郡岩出町畑毛310−3 フレ グランス畑毛210号 (72)発明者 ▲吉▼野 智子 和歌山県和歌山市関戸3丁目5−2 (72)発明者 中村 浩一 和歌山県和歌山市園部1030の15
Claims (9)
- 【請求項1】 水に対する臨界溶解温度(T)が0〜80
℃のポリマーを5〜80μg/cm2の被覆量で基材表面に
被覆した細胞培養支持体上にて、細胞を(T−10)〜
(T+10)℃にて培養することを特徴とする細胞培養
法。 - 【請求項2】 ポリマーがポリ−N−イソ,プロピルア
クリルアミドであり、培養温度が24〜35℃である請
求項1記載の細胞培養法。 - 【請求項3】 ポリマーがポリ−N−n−プロピルアク
リルアミドであり、培養温度が17〜24℃である請求
項1記載の細胞培養法。 - 【請求項4】 ポリマーがポリ−N−n−プロピルメタ
クリルアミドであり、培養温度が24〜30℃である請
求項1記載の細胞培養法。 - 【請求項5】 ポリマーがポリ−N−エトキシエチルア
クリルアミドであり、培養温度が31〜38℃である請
求項1記載の細胞培養法。 - 【請求項6】 ポリマーがポリ−N−テトラヒドロフル
フリルアクリルアミドであり、培養温度が24〜31℃
である請求項1記載の細胞培養法。 - 【請求項7】 ポリマーがポリ−N−テトラヒドロフル
フリルメタクリルアミドであり、培養温度が31〜38
℃である請求項1記載の細胞培養法。 - 【請求項8】 ポリマーがポリ−N,N−ジエチルアク
リルアミドであり、培養温度が24〜35℃である請求
項1記載の細胞培養法。 - 【請求項9】 請求項1〜8何れかに記載の細胞培養法
で得られる細胞。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4009089A JPH05244938A (ja) | 1992-01-22 | 1992-01-22 | 細胞及びその培養法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4009089A JPH05244938A (ja) | 1992-01-22 | 1992-01-22 | 細胞及びその培養法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05244938A true JPH05244938A (ja) | 1993-09-24 |
Family
ID=11710894
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4009089A Pending JPH05244938A (ja) | 1992-01-22 | 1992-01-22 | 細胞及びその培養法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05244938A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006019043A1 (ja) * | 2004-08-17 | 2006-02-23 | Kyushu Institute Of Technology | 細胞培養用多孔性シート状物とそれを用いたバイオリアクター及び培養方法 |
EP1970439A2 (en) | 2007-03-15 | 2008-09-17 | Dai Nippon Printing Co., Ltd. | Cell culture support and manufacture thereof |
WO2009025043A1 (ja) * | 2007-08-22 | 2009-02-26 | Celagix, Res. Ltd. | 新規架橋ポリマー、その製造方法及びその用途 |
JP2009131275A (ja) * | 2009-03-11 | 2009-06-18 | Cellseed Inc | 細胞培養支持体 |
EP2298858A1 (en) * | 2000-03-16 | 2011-03-23 | Cellseed Inc. | Bed material for cell culture, method for co-culture of cell and co-cultured cell sheet obtainable therefrom |
JP4755368B2 (ja) * | 2001-07-24 | 2011-08-24 | 株式会社セルシード | 高密度細胞アレイ用基板、製造法、及びその利用方法 |
WO2011108503A1 (ja) * | 2010-03-01 | 2011-09-09 | 独立行政法人科学技術振興機構 | 培養細胞の剥離方法及び同培養細胞の剥離方法に用いる細胞剥離装置並びに培養器 |
-
1992
- 1992-01-22 JP JP4009089A patent/JPH05244938A/ja active Pending
Cited By (14)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2298858A1 (en) * | 2000-03-16 | 2011-03-23 | Cellseed Inc. | Bed material for cell culture, method for co-culture of cell and co-cultured cell sheet obtainable therefrom |
JP4755368B2 (ja) * | 2001-07-24 | 2011-08-24 | 株式会社セルシード | 高密度細胞アレイ用基板、製造法、及びその利用方法 |
EP1788073A4 (en) * | 2004-08-17 | 2011-10-26 | Kyushu Inst Technology | POROUS LEAF MEMBER FOR CELL CULTURE, BIOREACTOR AND CULTURE METHOD USING THE SAME |
EP1788073A1 (en) * | 2004-08-17 | 2007-05-23 | Kyushu Institute of Technology | Porous sheet member for cell culture and, utilizing the same, bioreactor and culturing method |
US8435781B2 (en) | 2004-08-17 | 2013-05-07 | Kyushu Institute Of Technology | Porous sheet-form material for cell culture, and bioreactor and culturing method utilizing same |
WO2006019043A1 (ja) * | 2004-08-17 | 2006-02-23 | Kyushu Institute Of Technology | 細胞培養用多孔性シート状物とそれを用いたバイオリアクター及び培養方法 |
EP1970439A2 (en) | 2007-03-15 | 2008-09-17 | Dai Nippon Printing Co., Ltd. | Cell culture support and manufacture thereof |
US8557583B2 (en) | 2007-03-15 | 2013-10-15 | Dai Nippon Printing Co., Ltd. | Cell culture support and manufacture thereof |
EP2135940A1 (en) | 2007-03-15 | 2009-12-23 | Dai Nippon Printing Co., Ltd. | Cell culture support and manufacture thereof |
JPWO2009025043A1 (ja) * | 2007-08-22 | 2010-11-18 | 有限会社セラジックス | 新規架橋ポリマー、その製造方法及びその用途 |
WO2009025043A1 (ja) * | 2007-08-22 | 2009-02-26 | Celagix, Res. Ltd. | 新規架橋ポリマー、その製造方法及びその用途 |
JP2009131275A (ja) * | 2009-03-11 | 2009-06-18 | Cellseed Inc | 細胞培養支持体 |
WO2011108503A1 (ja) * | 2010-03-01 | 2011-09-09 | 独立行政法人科学技術振興機構 | 培養細胞の剥離方法及び同培養細胞の剥離方法に用いる細胞剥離装置並びに培養器 |
US8753855B2 (en) | 2010-03-01 | 2014-06-17 | Japan Science And Technology Agency | Method for detaching cultured cells, cell detachment device used in said method for detaching cultured cells, and incubator |
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