JP7537305B2 - タクシー車両およびタクシーシステム - Google Patents

Description

本明細書は、運転手が乗車しない状態で、利用者を自動運転で目的地まで輸送するタクシー車両、および、このタクシー車両を複数備えたタクシーシステムを開示する。

タクシー車両には、不特定多数の利用者が乗車する。そのため、タクシー車両の運転手は、いずれの利用者も快適に乗車できるように、その車内環境を清浄に保とうとする。具体的には、タクシー車両の運転手は、必要に応じて、換気を行ったり、消臭剤や消毒剤を用いたりして、車内環境を清浄に保とうとする。

特開２００７－２８４０３８号公報

ところで、近年、自動運転車両をタクシー車両として利用することが提案されている。この場合、タクシー車両に、運転手は、乗車しない。そのため、自動運転のタクシー車両の場合、運転手が、車内環境を清浄に保つことができない。

ここで、特許文献１には、車両に、喫煙を検知する喫煙センサを搭載し、喫煙が検出されている場合には、空調装置を外気循環で運転し、換気を行う技術が開示されている。しかし、この特許文献１の技術は、喫煙時の換気を自動で行うだけであり、利用者が車両に乗車する前に、車内環境を清浄化することはできなかった。また、特許文献１の技術では、車内環境が清浄であるか否かを、利用者が、車両の乗車前に把握することはできない。その結果、従来の技術では、自動運転のタクシー車両を、利用者が安心して利用できないおそれがあった。

そこで、本明細書では、利用者がより安心して利用できるタクシー車両およびタクシーシステムを開示する。

本明細書が開示するタクシー車両は、運転手が乗車しない状態で、利用者を自動運転で目的地まで輸送するタクシー車両であって、前記利用者による前記タクシー車両の利用終了後に、人体に有害な有害物質および臭気の少なくとも一方を車内から除去する清浄化処理を実行する清浄化装置と、前記車内の清浄化の度合いを車外の利用希望者に通知する通知装置と、を備えることを特徴とする。

かかる構成とすることで、タクシー車両を清浄に保つことができる。また、利用者は、乗車前にタクシー車両の清浄化の度合いを把握できるため、より安心してタクシー車両を利用できる。

この場合、前記清浄化処理は、薬剤および浄化エネルギの少なくとも一つを前記車内に出力して、前記車内を消毒する消毒処理を含んでもよい。

消毒処理を行うことで、利用者の健康上のリスクを大幅に軽減できる。

この場合、さらに、人および荷物の前記車内への残存を検知する残存センサを備え、前記清浄化装置は、前記残存センサにより、前記人および前記荷物の少なくとも一方の前記車内への残存が検知されている期間中は、前記消毒処理を実行しなくてもよい。

かかる構成とすることで、人や荷物がない状態で消毒処理を実行できる。その結果、消毒処理に、高濃度の薬剤、または、高出力の浄化エネルギを用いることができるため、より短時間で確実に消毒できる。

また、さらに、前記タクシー車両の利用料金を決済する決済装置を備え、前記清浄化装置は、前記消毒処理の完了前であっても、前記利用者が前記タクシー車両を利用開始する場合は、前記消毒処理を終了し、前記決済装置は、前記利用開始した時点での清浄化の度合いに応じて、前記利用料金を変更してもよい。

かかる構成とすることで、急いでいる利用者は、早期にタクシー車両を利用開始できる。また、消毒完了前に、タクシー車両が利用開始されることで、タクシー車両の待機時間を減らすことができ、タクシー車両の収益性を向上できる。

また、前記通知装置は、前記タクシー車両のうち車外から視認可能な位置に取り付けられたライト、前記タクシー車両のうち車外から視認可能な位置に設けられた表示エリアに画像を表示する表示器、前記タクシー車両の周辺の路面に画像を投影するプロジェクタ、車外に音声を出力するスピーカ、車外の情報端末に情報を送信する通信装置、の少なくとも一つを含んでもよい。

かかる構成とすることで、利用希望者は、乗車前に、タクシー車両の清浄化の度合いを確実に把握できる。

本明細書で開示するタクシーシステムは、上述のタクシー車両を複数備えたタクシーシステムであって、複数の前記タクシー車両は、喫煙が可能な喫煙車両と、喫煙が禁止されている禁煙車両と、に分けられており、前記通知装置は、前記清浄化の度合いに加えて、喫煙の可否も出力してもよい。

かかる構成とすることで、喫煙者および非喫煙者が、互いにタクシー車両を使い分けることができ、両者がともに快適にタクシー車両を利用できる。

本明細書で開示する技術によれば、利用者は、より安心してタクシー車両を利用できる。

タクシーシステムの構成を示すイメージ図である。 迎車利用のイメージ図である。 飛び込み利用のイメージ図である。 タクシー車両の構成を示すブロック図である。 管理装置の構成を示すブロック図である。 清浄化装置の一例を示す図である。 清浄化装置の他の一例を示す図である。 通知装置の構成を示すイメージ図である。 車両リストに基づいて、利用者端末に表示される画像の一例を示す図である。

以下、図面を参照してタクシーシステム１０の構成について説明する。図１は、タクシーシステム１０の構成を示すイメージ図である。このタクシーシステム１０は、複数のタクシー車両１２と、管理装置１４と、を備えている。

タクシー車両１２は、利用者からの依頼を受けて、個別契約で利用者を目的地まで輸送する車両である。本例のタクシー車両１２は、定員１名の一人乗り車両である。なお、当然ながら、乳幼児等は乗員としてカウントせず、大人と同乗可能である。また、このタクシー車両１２は、動的運転タスクの全てを車両側で行う自動運転車両である。したがって、タクシー車両１２には、運転手は乗車していない。

ここで、「自動運転」とは、動的運転タスクのほぼ全てを車両が行うことを意味しており、例えば、米国の自動車技術会（ＳＡＥ）で定められたレベル３からレベル５のいずれかを意味する。レベル３は、高速道路等、特定の場所において、全ての動的運転タスクが自動化されているものの、緊急時には、ドライバーの操作が必要となる運転形態である。また、レベル４は、特定の場所に限り、全ての動的運転タスクが自動化されており、緊急時の対応も自動的に処理される運転形態である。レベル５は、場所等の制限なく、ほぼ全ての条件で自動運転が可能な運転形態であり、いわゆる、「完全自動運転」を意味する。

管理装置１４は、タクシー車両１２の配車を管理する。管理装置１４は、複数のタクシー車両１２それぞれの位置と運行状態を収集し、管理している。ここで、タクシー車両１２の運行状態としては、例えば、空車、賃走、回送、迎車、清浄中等がある。また、管理装置１４は、タクシー車両１２の車内の清浄化の度合いを示す清浄化レベルも収集し、管理しているが、これについては、後述する。管理装置１４は、さらに、利用者からのリクエストや、市中におけるタクシー車両１２および人の分布状況等を考慮して、タクシー車両１２の望ましい配置を算出し、タクシー車両１２に配車指示を出力する。タクシー車両１２は、この配車指示に従い、適宜、走行する。

ここで、タクシー車両１２の利用形態としては、タクシー車両１２の利用日時を指定する予約利用と、利用者１００がタクシー車両１２を呼び出して利用する迎車利用と、利用者１００がタクシー車両１２の近傍まで移動して利用開始する飛び込み利用と、がある。予約利用の場合、利用者１００は、利用者１００自身が管理する情報端末（以下「利用者端末１１０」と呼ぶ）を操作して、予約リクエストを管理装置１４に送信する。予約リクエストは、少なくとも、利用者が希望する乗車日時および乗車位置を含む。管理装置１４は、この予約リクエストに従い、タクシー車両１２を、指定された日時に、指定された場所に配車する。

次に、迎車利用について説明する。図２は、迎車利用のイメージ図である。迎車利用の場合、利用者１００は、利用者端末１１０を操作して、利用リクエスト６４を管理装置１４に送信する。利用リクエスト６４は、少なくとも、利用者１００の位置情報を含む。また、利用リクエスト６４は、さらに、目的地や、決済方法、利用したいタクシー車両１２の台数、その他の要望事項（例えばタクシー車両１２の空調条件等）の少なくとも一つを含んでもよい。

管理装置１４は、利用リクエスト６４を受信すれば、車両リスト６６を、利用者端末１１０に送信する。車両リスト６６は、利用者１００が利用可能なタクシー車両１２、すなわち、所定時間内に利用者１００のもとに移動できるタクシー車両１２のリストである。利用者１００は、車両リスト６６に記録されている複数のタクシー車両１２の中から、利用するタクシー車両１２を選択する。この選択を助けるために、車両リスト６６は、さらに、各タクシー車両１２が利用者１００の位置に到達するまでの予想時間や、タクシー車両１２の清浄化レベル等を含んでもよい。いずれにしても、利用者１００が、利用するタクシー車両１２を選択すれば、管理装置１４は、選択されたタクシー車両１２に配車指示６８を送信する。この配車指示６８を受けたタクシー車両１２は、自動運転で、利用者１００の現在位置まで移動する。

次に、飛び込み利用について説明する。図３は、飛び込み利用のイメージ図である。飛び込み利用の場合、利用者１００は、空車状態のタクシー車両１２の近傍まで移動し、このタクシー車両１２の利用開始をタクシー車両１２に通知する。ここで、利用開始の通知は、利用者端末１１０を操作して行ってもよいし、タクシー車両１２に搭載されたユーザインターフェース装置（以下「ユーザＩ／Ｆ」と略す）を操作して行ってもよい。したがって、利用者１００は、利用者端末１１０を操作して、利用開始を示すデータをタクシー車両１２に送信してもよい。また、利用者１００は、タクシー車両１２に乗り込み、タクシー車両１２に搭載されたユーザＩ／Ｆ（例えば、タッチパネル等）を操作して、利用開始をタクシー車両１２に通知してもよい。利用開始の通知を受けた場合、タクシー車両１２は、利用者１００の輸送を開始したこと、すなわち、賃走状態になったことを、管理装置１４に通知する。

予約利用、迎車利用、飛び込み利用のいずれの場合であっても、利用者１００は、目的地まで到達すれば、タクシー車両１２の利用終了を通知する。利用終了の通知を受けた時点で、タクシー車両１２の利用料金の決済が行われる。決済後、タクシー車両１２は、管理装置１４からの配車指示６８に従い、次の目的地へと移動する。また、タクシー車両１２は、利用者１００による利用が終了すれば、車内から有害物質および／または臭気を除去する清浄化処理を開始する。この清浄化処理の詳細については、後述する。

次に、タクシー車両１２および管理装置１４それぞれの構成について説明する。図４は、タクシー車両１２の構成を示すブロック図である。駆動ユニット２６は、タクシー車両１２を走行させるための機械的作用を発生させる機器であり、例えば、原動機や動力伝達装置、ブレーキ装置、懸架装置、舵取り装置等を含む。車両センサ群２８は、タクシー車両１２の走行に必要な各種情報をセンシングするための複数のセンサを含む。かかる車両センサ群２８は、例えば、タクシー車両１２の周辺環境を検知するためのセンサ（例えばカメラ、ＬｉＤＡＲ、ミリ波レーダ、超音波センサ等）や、タクシー車両１２の現在位置を検知するためのセンサ（例えばＧＰＳ等）、タクシー車両１２の走行状態を検知するためのセンサ（例えば加速度センサ、ジャイロセンサ等）等を含む。車両センサ群２８で検知された情報は、車両コントローラ２０に送信される。車両コントローラ２０は、車両センサ群２８で検知された情報に基づいて、タクシー車両１２の加減速量および操舵量を演算し、駆動ユニット２６を駆動する。

通信Ｉ／Ｆ３０は、通信技術を利用して、車外の情報機器と通信する。この場合、通信対象である情報機器としては、例えば、管理装置１４、利用者端末１１０、および、他のタクシー車両１２等が含まれる。こうした通信は、携帯電話会社が提供するモバイルデータ通信を利用して行われてもよいし、ブルートゥース（登録商標）等の近距離無線通信を利用して行われてもよいし、専用の通信回線を利用して行われてもよい。

ユーザＩ／Ｆ３２は、利用者１００に対して情報を提示するとともに、利用者１００からの操作を受け付ける装置である。このユーザＩ／Ｆ３２は、例えば、利用者１００に情報を出力する出力装置と、利用者１００の操作を受け付ける入力装置と、を有する。出力装置は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、および、ランプの少なくとも一つを含んでもよい。また、入力装置は、例えば、タッチパネル、キーボード、スイッチ、レバー、ペダル、マイクの少なくとも一つを含んでもよい。

ドアアクチュエータ３４は、タクシー車両１２のドアを開閉するアクチュエータである。タクシー車両１２のドアは、このドアアクチュエータにより自動的に開閉される。そのため、利用者１００は、その乗降に際して、タクシー車両１２のドアを触る必要がない。

残存センサ３６は、人および荷物の車内への残存を検知するセンサである。かかる残存センサ３６は、例えば、車両の重量を検知する重量センサでもよい。この場合、車両コントローラ２０は、検知重量が、人および荷物がない初期状態での車両重量より重い場合、人または荷物が残存していると判断する。また、別の形態として、残存センサ３６は、車内を撮像するカメラでもよい。この場合、車両コントローラ２０は、撮像で得られた画像を解析することで、人および荷物の有無を判断する。また、別の形態として、残存センサ３６は、電波（例えば赤外線等）または超音波を照射した際に得られる反射波に基づいて、物体の凹凸を検知する凹凸センサでもよい。この場合、残存センサ３６は、車内の凹凸状態が、予め記憶した初期状態と異なる場合に、人または荷物が残存していると判断する。そして、いずれの場合であっても、車両コントローラ２０は、この残存センサ３６での検知結果に応じて、清浄化処理、特に、消毒処理の実行の可否を決定する。

清浄化装置３８は、車内を清浄化する清浄化処理を実行する装置である。ここで、清浄化とは、人体に有害な有害物質、および、臭気の少なくとも一方を車内から除去することを意味する。この清浄化装置３８の具体的な構成については、後述する。

通知装置４０は、タクシー車両１２の清浄化レベルを、車外の利用希望者に通知する装置である。通知を受ける利用希望者は、タクシー車両１２の近傍にいる人、すなわち、タクシー車両１２を飛び込み利用しようとしている人でもよいし、タクシー車両１２から離れている人、すなわち、タクシー車両１２を迎車利用しようとしている人でもよい。この通知装置４０の具体的構成についても、後述する。

決済装置４２は、タクシー車両１２の利用料金を決済する。決済の形態は、特に限定されず、現金決済、プリペイドカード決済、自動引き落とし決済、クレジットカード決済、バーコード決済の少なくとも一つを含んでもよい。これらの決済に対応するために、決済装置４２は、投入された現金の金額を計数して必要に応じて釣銭を出す金銭装置や、カードリーダ、ＲＦＩＤリーダ、バーコードリーダ等を有してもよい。

車両コントローラ２０は、タクシー車両１２の駆動を制御する。車両コントローラ２０は、例えば、車両センサ群２８での検知結果からタクシー車両１２の周辺環境を把握し、タクシー車両１２が安全に走行できるように駆動ユニット２６の駆動を制御する。また、車両コントローラ２０は、必要に応じて、清浄化装置３８を駆動し、車内を清浄化する。

こうした車両コントローラ２０は、物理的には、プロセッサ２２とメモリ２４とを有するコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラーも含まれる。また、プロセッサ２２とは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ（例えばＣＰＵ：Ｃｅｎｔｒａｌ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｕｎｉｔ、等）や、専用のプロセッサ（例えばＧＰＵ：Ｇｒａｐｈｉｃｓ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｕｎｉｔ、ＡＳＩＣ：Ａｐｐｌｉｃａｔｉｏｎ Ｓｐｅｃｉｆｉｃ Ｉｎｔｅｇｒａｔｅｄ Ｃｉｒｃｕｉｔ、ＦＰＧＡ：Ｆｉｅｌｄ Ｐｒｏｇｒａｍｍａｂｌｅ Ｇａｔｅ Ａｒｒａｙ、プログラマブル論理デバイス、等）を含むものである。また、プロセッサ２２は、物理的に一つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサを含んでもよい。同様に、メモリ２４も、物理的に一つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のメモリで構成されてもよい。また、メモリ２４は、半導体メモリ（例えばＲＡＭ、ＲＯＭ、ソリッドステートドライブ等）および磁気ディスク（例えば、ハードディスクドライブ等）の少なくとも一つを含んでもよい。

次に、管理装置１４の構成について説明する。図５は、管理装置１４の構成を示すブロック図である。管理装置１４は、管理コントローラ５０と、通信Ｉ／Ｆ５６と、車両ＤＢ５８と、利用者ＤＢ６０と、を有している。通信Ｉ／Ｆ５６は、モバイルデータなど汎用的な通信網を介して利用者端末１１０と通信を行う。また、通信Ｉ／Ｆ５６は、汎用的な通信網、または、専用通信網を介して、複数のタクシー車両１２と通信を行う。

車両ＤＢ５８は、タクシーシステム１０を構成する複数のタクシー車両１２の情報を記録したデータベースである。車両ＤＢ５８は、複数のタクシー車両１２それぞれの識別情報、位置、運行状態、清浄化レベル等が記録されている。

利用者ＤＢ６０には、利用者１００の情報が記録されている。利用者ＤＢ６０に記録される利用者１００の情報としては、例えば、利用者１００の識別情報や、氏名、決済方法、連絡先等が含まれる。また、利用者１００が目的地として設定することが多い場所、例えば自宅や勤務している会社等の住所も、利用者１００の識別情報と対応付けて記録してもよい。

管理コントローラ５０は、利用者端末１１０から送信された利用者１００からの要求に応じて、タクシー車両１２の配車をコントロールする。また、管理コントローラ５０は、タクシー車両１２から送られる情報に基づいて、車両ＤＢ５８を更新する。また、管理コントローラ５０は、利用者端末１１０から送信される利用者１００の登録情報に基づいて、利用者ＤＢ６０も更新する。こうした管理コントローラ５０も、プロセッサ５２とメモリ５４とを有したコンピュータで構成される。

次に、タクシー車両１２に搭載される清浄化装置３８の構成について詳説する。清浄化装置３８は、車内を清浄化する装置である。清浄化とは、上述した通り、人体に有害な有害物質、および、臭気の少なくとも一方を、車内から除去することを意味する。有害物質としては、例えば、感染症の原因となる細菌やウィルス、アレルギーの原因となるアレルゲン、その他、健康に悪影響を与える有機物や化学物質等が含まれる。

清浄化装置３８は、かかる有害物質を除去するために、浄化エネルギまたは薬剤を用いて有害物質を無害化する消毒装置を有してもよい。この場合、消毒装置は、浄化エネルギとして、紫外線（例えば波長が２００ｎｍ～２８０ｎｍの紫外線Ｃ波等）または熱を出力してもよい。なお、紫外線を照射する場合、紫外線の車外への漏洩を防止するために、窓に電動シェードを設けておき、紫外線照射期間中は、当該電動シェードで窓を覆ってもよい。熱を出力する場合、消毒装置は、消毒対象物そのものを加熱してもよいし、消毒対象物に、熱媒体（例えば熱水や蒸気等）を供給してもよい。また、消毒装置は、薬剤として、オゾン、エタノール、塩素系消毒剤、および、界面活性剤の少なくとも一つを出力してもよい。こうした薬剤は、気体として出力されてもよいし、液体として出力されてもよい。なお、通常、有害物質を無害化する浄化エネルギおよび薬剤は、臭気の原因物質の一部を無臭化する効果もある。そのため、消毒装置で消毒することで、消臭効果も得られる場合が多い。

また、消毒装置は、車内の物体表面を消毒する表面消毒装置でもよいし、車内空間全体を消毒する空間消毒装置でもよい。表面消毒装置は、例えば、紫外線を照射するＵＶランプ、蒸気を噴射するスチーマー、液状の薬剤を吐出する薬剤ノズル等を含んでもよい。なお、スチーマーが噴射する蒸気は、液体を沸騰させて生成する飽和蒸気でもよいし、飽和蒸気をさらに加熱した過熱蒸気でもよい。こうした表面消毒装置は、感染症対策として非常に有効である一方、消毒対象部位が物体表面に限られるため、車内全体を消毒する場合に比べて、消毒時間を短縮できる。

また、空間消毒装置は、空間内に紫外線を照射するＵＶランプ、液状の薬剤を車内に噴霧する噴霧器、および、気体状のガスを空間に噴射する噴射器の少なくとも一つを含んでもよい。ここで、薬剤は、高濃度であるほど消毒効果が高いが、高濃度薬剤は、人体に有害であることが多い。そのため、高濃度の薬剤を、霧状または気体状で車内に供給する場合には、当該薬剤の車外への漏洩を防止するために、タクシー車両１２に十分なシール機構を設けておく。また、高濃度の薬剤を、霧状または気体状で車内に供給している期間中は、車内空気と車外空気とを入れ替える換気処理は行わず、また、ドアの開放を禁止する。

ところで、こうした消毒処理では、浄化エネルギの強度が高いほど、また、薬剤の濃度が高いほど、消毒効果が高く、短時間で消毒できる。しかし、高強度の浄化エネルギまたは高濃度の薬剤は、人や動物にとっても有害である場合も多い。また、浄化エネルギや薬剤の種類によっては、劣化損傷する素材がある。例えば、オゾンガスは、消毒効果が高いが、高濃度のオゾンガスは、樹脂を劣化させることが知られている。そのため、車内に、人または荷物（動物含む）が残っている状態で消毒処理を実行することは望ましくない。そこで、車両コントローラ２０は、消毒処理に先立って、残存センサ３６の検知結果を確認する。そして、人および荷物の少なくとも一方の車内への残存が検知されている場合、車両コントローラ２０は、消毒処理を禁止する。また、荷物の残存が検知された場合、車両コントローラ２０は、利用者端末１１０に、残存を知らせるメッセージを送信してもよい。

また、消毒処理の実行中、車外の人がタクシー車両１２の利用開始を希望した場合、清浄化装置３８は、消毒処理の完了前であっても、消毒処理を終了し、利用者１００が乗車できる状態にする。この場合、決済装置４２は、利用開始した時点での清浄化度合いに応じて、タクシー車両１２の利用料金を変更してもよい。すなわち、清浄化が不十分な状態で利用開始した場合には、清浄化が完了した状態で利用開始した場合に比べて、利用料金を低くしてもよい。

また、清浄化装置３８は、有害物質および／または臭気を車内から除去するために、車内の空気を、清浄な空気と置換する空気置換装置を有してもよい。空気置換装置は、換気装置および空気清浄機の少なくとも一つを有してもよい。換気装置は、車内の空気を車外の空気と入れ替える装置で、例えば、車載空調装置は、外気導入モードで運転することで、換気装置として機能する。また、空気清浄機は、車内の空気を、フィルタ等を用いて清浄化したうえで、車内に戻す装置である。こうした換気装置また空気清浄機を用いることで、車内の空気を清浄化することができる。なお、本例のタクシー車両１２は、一人乗りの小型車両であり、容積が小さいため、空気置換は、数分程度で実現できる。また、清浄化装置３８は、臭気を他のよい香りでマスキングするために、芳香性薬剤を出力する装置を含んでもよい。

次に、清浄化装置３８の具体例について説明する。図６は、清浄化装置３８の一例を示す図である。図６の例では、清浄化装置３８は、ＵＶランプ８４と、アクチュエータ８６と、換気装置８２と、を有している。ＵＶランプ８４は、波長２００ｎｍ～２８０ｎｍで、「紫外線Ｃ波」と呼ばれる紫外線を照射する。紫外線Ｃ波は、「殺菌紫外線」とも呼ばれ、感染症の原因となる細菌やウィルスを効果的に不活性化することが知られている。例えば、インフルエンザウィルスは、紫外線Ｃ波を、６．６ｍＪ／ｃｍ^２以上照射することで、９９．９％不活性化できることが知られている。

なお、紫外線Ｃ波は、高い消毒能力を有しているが、紫外線Ｃ波が届かない陰部分は、当然ながら、消毒できない。そこで、図６の清浄化装置３８は、車両コントローラ２０の指示に従い、ＵＶランプ８４の姿勢および位置の少なくとも一方を変更するアクチュエータ８６を有している。アクチュエータ８６は、例えば、モータや電磁シリンダ等を有する。かかるアクチュエータ８６で、ＵＶランプ８４の位置および姿勢の少なくとも一方を変更することで、紫外線を、車内の様々な箇所に到達させることができる。また、ＵＶランプ８４およびアクチュエータ８６は、いずれも、単一である必要はなく、一つのタクシー車両１２に複数のＵＶランプ８４およびアクチュエータ８６が設けられていてもよい。そして、図６の例では、紫外線Ｃ波を用いて、車内空間全体を消毒する空間消毒を行う。

なお、紫外線Ｃ波は、高い消毒能力を有する一方で、人体に対して有害であるため、有人環境での使用は、禁止されている。本例のタクシー車両１２は、繰り返し述べている通り、運転手が乗車しておらず、利用者１００が降車した後は、無人車両となる。そのため、紫外線Ｃ波を車内全体に照射することが可能となる。また、ＵＶランプ８４の光が車外に漏洩しないように、本例のタクシー車両１２は、電動シェード９２を有している。電動シェード９２は、窓部を覆ってＵＶランプ８４の車外への漏洩を防止する。車両コントローラ２０は、ＵＶランプ８４の点灯開始に先立って、電動シェード９２を駆動して、窓部をシェード部材で覆う。また、ＵＶランプ８４の点灯期間中は、ドアアクチュエータ３４でドアをロックし、人が乗車することを防止する。さらに、残存センサ３６により、人または荷物の残存が検知された場合には、ＵＶランプ８４を点灯させない。

換気装置８２は、車内空気を車外空気と入れ替えるもので、具体的には、車載空調装置である。この換気装置８２は、紫外線Ｃ波の照射と並行して駆動してもよい。なお、当然ながら、換気装置８２に替えて、または、加えて、空気清浄機を設けてもよい。いずれにしても、図６の清浄化装置３８では、ＵＶランプ８４を用いて、車内空間全体を消毒しているため、車内をより確実に清浄化できる。

次に、清浄化装置３８の他の例について説明する。図７は、清浄化装置３８の他の例を示すブロック図である。この清浄化装置３８は、局所消毒装置８０と、換気装置８２と、を有している。換気装置８２は、上述した通り、車内空気を車外空気と入れ替えるもので、具体的には、車載空調装置である。

局所消毒装置８０は、利用者１００の手指が接触する接触部位の表面を消毒する装置である。接触部位としては、例えば、操作パネル、取っ手、座席等が含まれる。局所消毒装置８０は、こうした接触部位に対して表面消毒処理を施す。局所消毒装置８０の構成は、特に、限定されないが、例えば、紫外線Ｃ波を照射するＵＶランプ８４、蒸気を噴射するスチーマー８８、および、液状の消毒薬剤を吐出する薬剤ノズル９０の少なくとも一つを有してもよい。また、局所消毒装置８０は、消毒対象部位の特性に応じて、消毒処理の内容を変更してもよい。例えば、局所消毒装置８０は、操作パネル等の電子部品の表面を消毒する場合には、スチーマー８８や水分の多い薬剤は使用せず、ＵＶランプ８４または揮発性の高い薬剤（例えばエタノール等）を用いて消毒してもよい。また、局所消毒装置８０は、取っ手のように樹脂が含まれる部材の表面を消毒する場合には、ＵＶランプ８４を用いず、スチーマー８８または樹脂を劣化させない薬剤を用いてもよい。

なお、局所消毒の場合であっても、紫外線Ｃ波を照射する場合は、電動シェード９２を駆動して、窓を覆っておく。また、残存センサ３６により、人および荷物の少なくとも一方の車内への残存が検知された場合、車両コントローラ２０は、局所消毒装置８０を駆動しない。

図７の例のように、車内全体ではなく、利用者１００の手指が接触する箇所のみを消毒することで、車内空間全体を消毒する場合に比べて、消毒に要する時間を大幅に短縮できる。その一方で、利用者１００の手指が接触する箇所を消毒し、また、換気を行うことで、感染症の感染リスクは、十分に低減できる。

なお、図６、図７で示した清浄化装置３８の構成は、一例であり、適宜、変更されてもよい。例えば、図６では、車内空間を消毒するために、紫外線Ｃ波を用いたが、他の薬剤、例えば、オゾンガスや、次亜塩素酸水等を用いてもよい。また、局所消毒装置の構成も、適宜、変更されてもよい。

次に、通知装置４０の構成について説明する。図８は、通知装置４０の構成を示すイメージ図である。通知装置４０は、上述した通り、タクシー車両１２の清浄化レベルを車外の人に通知する装置である。ここで、清浄化レベルは、車内の清浄化の度合いを示す数値であり、例えば、清浄化処理の進捗を示す数値である。図８の例では、清浄化レベルは、Ｌｖ．０～Ｌｖ．５が設定されている。そして、清浄化レベルの数値は、清浄化処理が２０％進むたびに一つ繰り上がり、清浄化処理が完全に終了すれば、Ｌｖ．５となる。

通知装置４０は、この清浄化レベルを、車外の人に通知する。この通知のために、通知装置４０は、例えば、タクシー車両１２のうち、車外から視認可能な位置（例えば、タクシー車両１２の天井等）に取り付けられた通知用ライト７０を有してもよい。この場合、清浄化レベルに応じて、通知用ライト７０の色や点灯形態を変更することで、清浄化レベルを周囲の人に通知してもよい。

また、別の形態として、通知装置４０は、タクシー車両１２のうち、車外から視認可能な位置（例えばタクシー車両１２の側面等）に設定された表示エリアに画像を表示する表示器７２を有してもよい。また、別の形態として、通知装置４０は、タクシー車両１２の周囲の路面に、画像を投影するプロジェクタ７４を有してもよい。この場合、表示器７２またはプロジェクタ７４は、清浄化レベルを示す画像を表示または投影すればよい。また、清浄化レベルを示す画像に加え、清浄化処理が完全に完了するまでの予想時間を示す画像も、表示または投影してもよい。

また、別の形態として、通知装置４０は、タクシー車両１２の外部に向かって音声を出力するスピーカ７６を有してもよい。この場合、スピーカ７６は、少なくとも、清浄化レベルを示す音声を出力し、さらに、清浄化処理が完全終了するまでの予想時間等を出力してもよい。また、別の形態として、通知装置４０は、タクシー車両１２の周囲に位置する利用者端末１１０に、清浄化レベルを送信する通信装置７８を有してもよい。

こうした通知装置４０を設けることで、タクシー車両１２の周辺にいる利用希望者、すなわち、タクシー車両１２を飛び込み利用したい人は、タクシー車両１２に乗車しなくても、タクシー車両１２の清浄化の度合いを把握できる。そして、これにより、タクシー車両１２を利用する際の利用者１００の衛生上の不安を大幅に軽減できる。

また、上述した通り、本例では、利用者１００が、希望すれば、清浄化処理が完全に終了していなくても、タクシー車両１２を利用開始できる。すなわち、飛び込み利用の場合、利用者１００が、利用開始の意思をタクシー車両１２に通知すれば、タクシー車両１２は、消毒処理を終了して、利用者１００による利用開始を許可する。この場合、タクシー車両１２は、その利用料金を、清浄化処理完了後に利用開始する場合に比べて割り引く。かかる構成とすることで、急いでいる利用者１００は、タクシー車両１２を早期に利用開始できる。また、タクシー車両１２は、利用者１００を乗車させていない待機時間が減るため、その収益性が向上する。

また、これまでの説明では、通知装置４０は、清浄化レベルを、タクシー車両１２の周辺にいる人、すなわち、タクシー車両１２を飛び込み利用しようとする人に対して通知している。しかし、通知装置４０は、清浄化レベルを、タクシー車両１２から離れている人、すなわち、タクシー車両１２を迎車利用しようとする人にも、通知してもよい。

例えば、上述した通り、また、図２に示す通り、迎車利用の場合、利用者１００は、タクシー車両１２を呼び出すために、利用リクエスト６４を管理装置１４に送信する。管理装置１４は、利用リクエスト６４を受信すれば、利用者１００が利用可能なタクシー車両１２のリスト、すなわち、車両リスト６６を利用者端末１１０に送信する。また、管理装置１４は、この車両リスト６６とともに、各タクシー車両１２の清浄化レベルも、利用者端末１１０に送信する。利用者端末１１０は、送信された情報を画面に表示する。図９は、車両リスト６６に基づいて、利用者端末１１０に表示される画像の一例を示す図である。図９の例では、利用者１００の周辺の地図画像に、現在位置を示すマークＰ１と、利用可能なタクシー車両１２を示すマークＶ１～Ｖ５と、が重畳されている。また、タクシー車両１２を示すマークＶ１～Ｖ５には、そのタクシー車両１２の現在の清浄化レベルを示す画像も含まれている。利用者１００は、利用者端末１１０に表示された、この画像を見て、呼び出したいタクシー車両１２を選択する。

例えば、清浄化レベルが低くても、タクシー車両１２を早期に利用したい場合、利用者１００は、最も近くにいるタクシー車両１２のマークＶ１を選択すればよい。また、衛生性を重視する場合、利用者１００は、多少離れていても、清浄化レベルが高いタクシー車両１２のマークＶ５を選択すればよい。このように、利用者１００に、タクシー車両１２それぞれの清浄化レベルを通知することで、利用者１００は、自身の希望に合ったタクシー車両１２を選択できる。

また、通知装置４０は、清浄化レベルに加えて、喫煙の可否を通知してもよい。すなわち、タクシーシステム１０は、複数のタクシー車両１２を有しているが、この複数のタクシー車両１２を、喫煙が禁止された禁煙車両と、喫煙が可能な喫煙車両と、に分けてもよい。そして、通知装置４０を介して、喫煙の可否を、車外の利用希望者に通知してもよい。かかる構成とすることで、喫煙者と非喫煙者が、互いにタクシー車両１２を使い分けることができ、両者がともに快適にタクシー車両１２を利用できる。

また、これまで説明した構成は、いずれも一例であり、タクシー車両１２は、利用者１００による利用終了後に、清浄化処理を実行する清浄化装置３８と、車内の清浄化の度合いを車外の利用希望者に通知する通知装置４０と、を有し、運転手が乗車しない状態で、利用者を自動運転で目的地まで輸送するのであれば、その他の構成は、変更されてもよい。例えば、本例では、タクシー車両１２を一人乗りとしているが、タクシー車両１２は、利用終了後に無人となるのであれば、複数人乗りであってもよい。

１０ タクシーシステム、１２ タクシー車両、１４ 管理装置、２０ 車両コントローラ、２２，５２ プロセッサ、２４，５４ メモリ、２６ 駆動ユニット、２８ 車両センサ群、３０，５６ 通信Ｉ／Ｆ、３２ ユーザＩ／Ｆ、３４ ドアアクチュエータ、３６ 残存センサ、３８ 清浄化装置、４０ 通知装置、４２ 決済装置、５０ 管理コントローラ、５８ 車両ＤＢ、６０ 利用者ＤＢ、６４ 利用リクエスト、６６ 車両リスト、６８ 配車指示、７０ 通知用ライト、７２ 表示器、７４ プロジェクタ、７６ スピーカ、７８ 通信装置、８０ 局所消毒装置、８２ 換気装置、８４ ＵＶランプ、８６ アクチュエータ、８８ スチーマー、９０ 薬剤ノズル、９２ 電動シェード、１００ 利用者、１１０ 利用者端末。

Claims (4)

1. 運転手が乗車しない状態で、利用者を自動運転で目的地まで輸送するタクシー車両であって、
   前記利用者による前記タクシー車両の利用終了後に、人体に有害な有害物質および臭気の少なくとも一方を車内から除去する清浄化処理を実行する清浄化装置と、
   前記車内の清浄化の度合いを車外の利用希望者に通知する通知装置と、
   前記タクシー車両の利用料金を決済する決済装置を備え、
   を備え、
   前記清浄化処理は、薬剤および浄化エネルギの少なくとも一つを前記車内に出力して、前記車内を消毒する消毒処理を含み、
   前記清浄化装置は、前記消毒処理の完了前であっても、前記利用者が前記タクシー車両を利用開始する場合は、前記消毒処理を終了し、
   前記決済装置は、前記利用開始した時点での清浄化の度合いに応じて、前記利用料金を変更する、
   ことを特徴とするタクシー車両。
2. 請求項１に記載のタクシー車両であって、さらに、
   人および荷物の前記車内への残存を検知する残存センサを備え、
   前記清浄化装置は、前記残存センサにより、前記人および前記荷物の少なくとも一方の前記車内への残存が検知されている期間中は、前記消毒処理を実行しない、
   ことを特徴とするタクシー車両。
3. 請求項１または２に記載のタクシー車両であって、
   前記通知装置は、前記タクシー車両のうち車外から視認可能な位置に取り付けられたライト、前記タクシー車両のうち車外から視認可能な位置に設けられた表示エリアに画像を表示する表示器、前記タクシー車両の周辺の路面に画像を投影するプロジェクタ、車外に音声を出力するスピーカ、車外の情報端末に情報を送信する通信装置、の少なくとも一つを含む、ことを特徴とするタクシー車両。
4. 請求項１から３のいずれか１項に記載のタクシー車両を複数備えたタクシーシステムであって、
   複数の前記タクシー車両は、喫煙が可能な喫煙車両と、喫煙が禁止されている禁煙車両と、に分けられており、
   前記通知装置は、前記清浄化の度合いに加えて、喫煙の可否も出力する、
   ことを特徴とするタクシーシステム。

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