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JP7571356B2 - 免震建物 - Google Patents

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JP7571356B2 JP2020197162A JP2020197162A JP7571356B2 JP 7571356 B2 JP7571356 B2 JP 7571356B2 JP 2020197162 A JP2020197162 A JP 2020197162A JP 2020197162 A JP2020197162 A JP 2020197162A JP 7571356 B2 JP7571356 B2 JP 7571356B2
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Description

本発明は、免震建物に関する。
例えば、高層ビルや超高層ビル等の高層建物(高層建築物)においては、耐用年数内に発生する可能性のある地震動に対して継続的な使用を可能とする一方で、想定外の最大級の地震である、極大地震に対しても、可及的に倒壊させない耐震性能が求められている。このような高層建物では、地盤下に免震ピットが設けられ、免震ピットの内部に積層ゴム支承式の免震装置や、滑り免震装置といった各種の免震装置が配設され、免震装置にて建物を支持するようにしている。地震時に作用する地震力により、免震ピットは激しく振動する一方で、免震装置にて地震力が低減されることにより、建物の振動は大きく低減される。建物に作用する振動加速度が大きく低減されて建物は緩やかに振動(横揺れ)することになり、必要に応じて免震ピットに装備されているダンパーにより、建物の振幅も低減されることになる。
免震ピットは一般に、基礎底盤と、基礎底盤の周縁に立設している擁壁とを備えており、免震装置にて直接支持されている建物の下部構造体と、免震ピットを構成する擁壁との間には、所定の隙間(クリアランス)が設けられている。この隙間は、設計段階における最大の地震である、大地震(レベル2相当の地震)の際の、下部構造体と免震ピットとの間の相対水平変位量(設計相対水平変位量)以上に設定されるのが一般的であり、このような隙間が建物の下部構造体と擁壁の間に確保されていることにより、建物の耐用年数内に発生する可能性の少ない(例えば数百年に一度の発生確率)大地震においても、建物の下部構造体と擁壁との衝突を抑止することができる。このような大地震までを想定した耐震設計を前提として免震ピットを含む免震建物が設計されるが、想定外の極大地震(レベル3相当の地震)時に建物の下部構造体と擁壁が衝突することを想定し、この衝突の際の衝撃を緩和したり、あるいは衝突そのものを解消するための様々な技術が提案されている。
例えば、一つ目の従来技術として、特許文献1には、相互に対向する建物の側壁と擁壁の少なくとも一方に、衝撃吸収部材が設けられている免震建物が提案されている。具体的には、基礎と、基礎に配置された免震装置と、免震装置の上に配置された建物とを備え、免震装置は基礎に対する建物の水平移動を許容し、建物の側壁に対して間隔を空けて対向する擁壁が基礎に設けられている。これらの側壁と擁壁の少なくとも一方に、衝撃吸収部材が設けられており、衝撃吸収部材は、20℃における等価粘性減衰定数heqが0.10以上の高減衰ゴムによって形成され、かつ、圧縮変形に対して降伏した後に荷重が大きくなる圧縮特性を有する、中実のブロック状の成形体である。そして、この衝撃吸収部材として、その衝撃吸収性能を保証するべく、その水平方向の幅が10cm(ここでは100mm)程度である実施例が例示されている。
また、二つ目の従来技術として、特許文献2には、免震装置が備えてある免震ピットの周囲を囲む山留め壁が、免震ピットの底盤部の周縁部分から一体として立設する鉄筋コンクリート製の擁壁であり、擁壁には、内側からの衝突荷重によって擁壁が外側に折れ曲がるように誘導する、易損傷部が設けられている、免震建築物が提案されている。
また、三つ目の従来技術として、特許文献3には、建物の免震化のために底盤上に設置された複数の免震装置の周囲を取り巻く擁壁が提案されている。この擁壁は、底盤上に載置され矩形の四辺上に位置する4つの壁板と、各壁板をその周囲地盤の土水圧に抗して鉛直に支持し、また、各壁板の周囲地盤に向けての傾倒又は移動を許す支持手段とを備えており、支持手段は、各壁板と底盤とに連結された、周囲地盤に向けての傾倒を許すストッパー付きヒンジにより形成されている。
さらに、四つ目の従来技術として、その他、想定外の極大地震時における、建物の下部構造体と擁壁の相対水平変位量(設計相対水平変位量を超える超過相対水平変位量)でも双方の衝突を回避するのに十分な隙間を確保するといった技術が挙げられる。
特許第6146791号公報 特許第6172804号公報 特許第6291288号公報
特許文献1に記載の免震建物では、建物の側壁と擁壁の間に、双方の対向する方向に10cm程度と比較的幅の大きな衝撃吸収部材が設けられていることから、設計相対水平変位量に基づいて設定されている建物の側壁と擁壁の間の隙間が極端に狭くなるといった課題がある。大地震までを考慮した設計相対水平変位量に基づく隙間としては、50cm乃至60cm程度の幅が見込まれるのが一般的であるが、この中に10cm程度の幅(隙間全体の20%程度)の衝撃吸収部材が配設されることにより、設計相対水平変位量以下の30cm乃至40cm程度の相対水平変位量でも衝撃吸収部材と側壁もしくは擁壁が接触し、建物に対して衝撃を付与する等の影響が懸念される。
また、特許文献2に記載の免震建築物では、内側からの衝突荷重によって擁壁が外側に折れ曲がるように誘導する、易損傷部が擁壁に設けられていることから、構造が複雑で施工に手間のかかる擁壁となることは否めない。
また、特許文献3に記載の擁壁では、擁壁を構成する壁板の周囲地盤に向けての傾倒又は移動を許すストッパー付きヒンジが設けられていることから、特許文献2と同様に構造が複雑で施工に手間のかかる擁壁となることは否めない。
さらに、極大地震時における相対水平変位量を回避するのに十分な隙間を確保する技術では、隙間が大き過ぎることに起因して、免震建物の過大な変形が許容されることになり、免震建物自体の破損が危惧される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、擁壁を含む免震ピットの内部に免震装置が配置され、免震装置にて建物の下部構造体が支持されている免震建物に関し、擁壁と下部構造体の間に設定されている隙間が設計相対水平変位量を概ね確保しながら、想定外の極大地震時において擁壁と下部構造体が衝突した際の衝撃を抑制することのできる、免震建物を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による免震建物の一態様は、
基礎底盤と、前記基礎底盤の周縁に立設している擁壁と、を備えている免震ピットの内部に免震装置が設置され、前記免震装置にて建物の下部構造体が支持され、前記擁壁と前記下部構造体の間に第1隙間が設けられている、免震建物であって、
前記擁壁が、
山留めに供される外側面材と、
前記外側面材における前記免震ピットの内部に臨む内側面において、水平方向に間隔を置いて設けられている複数の補剛材と、を少なくとも有することを特徴とする。
本態様によれば、免震ピットを構成する擁壁が、山留めに供される外側面材と、外側面材の内側面において水平方向に間隔を置いて設けられている複数の補剛材とを有することにより、例えば、外側面材と補剛材を合わせた厚みを有する密実な鉄筋コンクリート製の従来一般の擁壁に比べて、擁壁の剛性を格段に低減することができる。そのため、レベル3相当の極大地震時において、下部構造体が擁壁に衝突した際の衝撃荷重を低減することが可能になる。
ここで、外側面材は、その内側面に配設される複数の補剛材とともに、作用する土圧や土水圧に抗し得る剛性を備えていて、可及的に薄い面材であるのが好ましい。外側面材が可及的に薄い面材であることにより、極大地震時に下部構造体が外側面材に衝突した際に、外側面材が適度に破壊もしくは塑性変形し易くなり、建物の下部構造体(を含む建物本体)に付与される衝撃を緩和し易くなる。
また、「第1隙間」とは、設計段階における最大の地震である、大地震(レベル2相当の地震)の際の、下部構造体と擁壁との間の相対水平変位量(設計相対水平変位量)、もしくは、この設計相対水平変位量に安全代を加味した水平変位量に相当する。例えば、擁壁が外側面材と補剛材のみにより構成されている形態では、極大地震時に下部構造体が振動(横移動)した際に、下部構造体と衝突しない位置に補剛材を配置しておくことにより、下部構造体と外側面材の内側面との間の隙間を第1隙間に設定することができる。
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記擁壁は、前記補剛材における前記免震ピットの内部に臨む内側面において、内側面材をさらに有し、
前記外側面材と前記内側面材により複数の前記補剛材が挟持されていることを特徴とする。
本態様によれば、擁壁が、外側面材及び内側面材と、これらに挟持されている複数の補剛材とを有することにより、二層の面材にて防水性に優れた擁壁が形成される。また、第1隙間は、下部構造体と内側面材との間の隙間となるが、擁壁の内部に補剛材間の間隔によって形成される中空が存在することにより、下部構造体が内側面材に衝突した際の衝撃荷重を低減することが可能になる。ここで、内側面材も外側面材と同様、可及的に薄い面材であるのが好ましい。この形態では、内側面材と外側面材と複数の補剛材の全体で、土圧や土水圧に抗することができるため、外側面材と補剛材のみの形態に比べて、外側面材と内側面材の厚みをより一層薄くすることが可能になる。
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記補剛材が、前記基礎底盤に対して固定されていることを特徴とする。
本態様によれば、補剛材が基礎底盤に対して固定されていることにより、土圧や土水圧を受ける擁壁の倒れを防止して、安定した立設姿勢を保持することができる。ここで、「補剛材が基礎底盤に対して固定されている」とは、補剛材が基礎底盤に密着している形態、補剛材の下端が基礎底盤に対して埋設されている形態、補剛材が基礎底盤を貫通している形態を含んでいる。
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記補剛材が、定型の鋼材により形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、補剛材が定型の鋼材により形成されていることにより、市販の鋼材を適用することによって擁壁の製造コストを低減でき、さらには、可及的にシンプルな構造の擁壁を形成できる。ここで、「定型の鋼材」には、H形鋼や溝形鋼、山形鋼、角形鋼管等が含まれる。
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記鋼材が、前記免震ピットの施工の際に適用されている仮設山留め杭の転用品であることを特徴とする。
本態様によれば、擁壁を構成する補剛材(鋼材)が、免震ピットの施工の際に適用されている仮設山留め杭の転用品であることにより、仮設部材と本設部材が併用されることによって擁壁の施工コストを削減することができる。
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記補剛材が、現場施工にて形成される現場施工コンクリート版により形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、例えば、外側面材の内側面、もしくは外側面材と内側面材の間に、間隔を設けた態様でコンクリートを打設することにより、コンクリートの硬化によって現場施工コンクリート版が形成された際に、外側面材と内側面材が複数の現場施工コンクリート版にて一体とされた擁壁が形成される。
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記補剛材が、プレキャストコンクリート版により形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、外側面材の内側面、もしくは外側面材の内側面と内側面材の外側面にプレキャストコンクリート版が接着やビス、釘等によって固定されることにより、コンクリートの硬化を待つことなく効率的な擁壁の施工が実現できる。
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記補剛材が、プレキャストコンクリート版により形成されており、
少なくとも前記外側面材と前記プレキャストコンクリート版とにより構成されるプレキャストユニットによって、前記擁壁が形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、擁壁の全体が、少なくとも外側面材とプレキャストコンクリート版とを備えるプレキャストユニットよって形成されることにより、効率的な擁壁の施工が実現できる。ここで、プレキャストユニットは、プレキャスト製の外側面材と補剛材のみを備える形態、プレキャスト製の外側面材と内側面材と補剛材を備える形態が含まれる。
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記下部構造体は、複数のフーチングと、前記複数のフーチングと相互に接合され、かつ前記フーチングよりも幅狭の地中梁と、を有し、
前記免震装置は、鉛直方向において前記フーチングと前記基礎底盤との間に設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、極大地震時において、下部構造体を構成するフーチングが擁壁に衝突した際の衝撃荷重を低減することができる。ここで、フーチングは、建物の上部構造体の例えば柱の直下に配設され、各フーチングを地中梁が繋いでいる。また、「フーチングよりも狭幅の地中梁」とは、フーチングと擁壁を結ぶ水平方向の幅を対象として、フーチングよりも地中梁の幅が狭幅であることを意味しており、従って、下部構造体の振動(横移動)により、地中梁よりも相対的に擁壁側に張り出しているフーチングが擁壁と衝突することになる。尚、免震装置は、基礎底盤の表面に直接設置されてもよいし、基礎底盤の上面において上方に突設する下方フーチングが設けられ、この下方フーチングと下部構造体を構成するフーチングの間に免震装置が設置されてもよい。
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記擁壁は、平面視における第1方向に延設し、
前記フーチングと前記地中梁は前記第1方向に沿って相互に接合されており、
前記フーチングと前記擁壁は前記平面視において前記第1方向と直交する第2方向に前記第1隙間を空けて配置され、かつ、前記地中梁と前記擁壁は前記第2方向において第2隙間を空けて配置され、
前記第1隙間は前記第2隙間よりも狭く、
前記フーチングを前記第2方向に沿って前記擁壁に投影した投影領域において、前記補剛材が設けられていないことを特徴とする。
本態様によれば、フーチングを第2方向(フーチングから擁壁に向かう方向)に沿って擁壁に投影した投影領域において、補剛材が設けられていないことにより、極大地震時にフーチングが横移動して擁壁と衝突した際に、衝突領域に補剛材が存在しないことから、フーチングと内側面材の衝突時の衝撃が低減されるとともに、内側面材が衝突によって適度に破壊もしくは塑性変形し易くなり、建物の下部構造体(を含む建物本体)に付与される衝撃が大きく緩和される。ここで、「フーチングを第2方向に沿って擁壁に投影した投影領域」とは、フーチングが擁壁に対向する外側面を側方から見た側面視形状が、擁壁に投影された領域を意味している。例えば、側面視形状が500mm×500mmの正方形である場合は、この正方形を擁壁に投影し、この投影された正方形の投影領域を含む、幅500mm×擁壁の全高さの範囲に補剛材が設けられないことになる。
また、本発明による免震建物の他の態様は、前記投影領域における前記第1方向の両端部に、前記第1隙間の1/2の幅の追加領域を加えた拡大投影領域において、前記補剛材が設けられていないことを特徴とする。
本態様によれば、投影領域における第1方向の両端部に、第1隙間の1/2の幅の追加領域を加えた拡大投影領域において補剛材が設けられていないことにより、極大地震時にフーチングが横移動して擁壁に衝突し得る可能性の高い範囲において、補剛材が設置されることを解消できる。すなわち、極大地震時において、フーチングは様々な方向に横移動し得ることから、水平方向である第2方向に沿って擁壁に衝突することはむしろ稀であることに鑑み、補剛材を設置しない領域として、投影領域における第1方向の両端部に追加領域を含めた拡大投影領域を設定することとした。
また、本発明による免震建物の他の態様において、前記第1隙間は、レベル2相当の大地震時における前記下部構造体と前記免震ピットとの間の設計相対水平変位量以上に設定されており、
レベル3相当の極大地震時において、前記設計相対水平変位量を超える超過相対水平変位量により前記フーチングが前記擁壁に衝突する領域が、想定衝突領域として設定されており、
前記擁壁において、前記想定衝突領域に前記補剛材が設けられていないことを特徴とする。
本態様によれば、レベル3相当の極大地震時において、設計相対水平変位量を超える超過相対水平変位量によりフーチングが擁壁に衝突する、想定衝突領域に補剛材が設けられていないことにより、極大地震時にフーチングが横移動して擁壁と衝突した際に、内側面材が衝突によって適度に破壊もしくは塑性変形し易くなり、建物の下部構造体(を含む建物本体)に付与される衝撃を緩和することができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の免震建物によれば、擁壁を含む免震ピットの内部に免震装置が配置され、免震装置にて建物の下部構造体が支持されている免震建物に関し、擁壁と下部構造体の間に設定されている隙間が設計相対水平変位量を概ね確保しながら、想定外の極大地震時において擁壁と下部構造体が衝突した際の衝撃を抑制することができる。
各実施形態に共通する免震建物の一例の全体構成を示す正面図である。 図1のII-II矢視図であって、第1実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部の天端面と擁壁の高さ方向の途中位置で水平方向に切断して示した図である。 図2のIII方向矢視図であって、擁壁の内側面の正面図である。 図2のIV-IV矢視図であって、地中梁と擁壁の途中位置で鉛直方向に切断して示した図である。 (a)、(b)、(c)はいずれも、擁壁を構成する補剛材と基礎底盤との固定形態を示す図である。 極大地震時において、下部構造体が横移動して擁壁に衝突している状態を示す図である。 第2実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部と擁壁を示す図である。 第3実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部と擁壁を示す図である。 (a)、(b)は順に、第4実施形態に係る免震建物を構成する擁壁の施工方法を説明する図である。 (a)、(b)は順に、第5実施形態に係る免震建物を構成する擁壁の施工方法を説明する図である。
以下、各実施形態に係る免震建物について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[免震建物の全体構成]
はじめに、図1を参照して、各実施形態に共通する免震建物の全体構成について説明する。ここで、図1は、各実施形態に共通する免震建物の一例の全体構成を示す正面図である。
図1において、紙面に対して直交するX1方向を第1方向とし、この第1方向に直交する紙面の左右方向を第2方向とする。擁壁20は、建物本体60の周囲を包囲するように設けられているが、図1に示す擁壁20は、第1方向に延設している。
免震建物70は、地盤Gの掘削領域に設けられている免震ピット30と、免震ピット30の上方に立設する建物本体60とを有する。図示例の免震建物70は、高層ビルや超高層ビル等の高層建物を対象としてその途中階を省略して図示しているが、免震建物70には、その他、一階もしくは低層階の大型の物流倉庫や、大型のショッピングモールやホール、体育館等、平面規模と階層が多様な建物が含まれる。
免震ピット30は、基礎底盤10と、基礎底盤10の周縁に立設している擁壁20とを有し、擁壁20が周辺の地盤Gから作用する土圧や土水圧に抗する山留め壁となっている。基礎底盤10と擁壁20はいずれも鉄筋コンクリート製であり、擁壁20には、以下で詳説するように様々な形態がある。また、図示例の基礎底盤10は直接基礎であるが、その他、PHC杭や鋼管杭等の既製杭、もしくは場所打ち杭等を備えた杭基礎であってもよい。
基礎底盤10の上面には、上方に突設する複数の下方フーチング12が設けられており、各下方フーチング12の上面に免震装置35が固定されている。図示例の免震装置35は、積層ゴム支承式の免震装置であるが、免震装置にはその他、球面滑り装置や平面滑り装置等の免震装置が適用されてもよい。
各免震装置35には、建物本体60を構成する下部構造体40が支持される。建物本体60は、上部構造体50と下部構造体40とを有する。複数階の上部構造体50において、各階はいずれも、下床版51と、柱52(もしくは壁)と、上床版53とを有し、例えば柱52の直下に免震装置35が配置されている。
また、上部構造体50の下には、平面視において、複数の格点に配設されている複数のフーチング41と、各フーチング41を例えば格子状に繋ぐ複数の地中梁45が設けられている。
建物本体60を構成する上部構造体50と下部構造体40は、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)のいずれであってもよいが、図示例はRC造の建物本体として説明する。尚、ピット空間31において、下部構造体40と基礎底盤10を繋ぐ一基もしくは複数基のダンパーが設けられてもよい。
擁壁20と下部構造体40の間には、所定幅の隙間Sが設けられている。以下で詳説するように、隙間Sにおいて、相互に平行な下部構造体40を構成するフーチング41と擁壁20の間の、第2方向に平行な第1隙間の長さ(双方の壁面に直交する長さ)をt1とする。
この第1隙間の長さt1は、レベル2相当の大地震時までを考慮した、下部構造体40と擁壁20の間の設計相対水平変位量に基づく長さであり、例えば、50cm乃至60cm程度の長さが設定される。
次に、以下、擁壁の構造に特徴を有する様々な形態の免震建物に関し、擁壁の構造を中心に説明する。
[第1実施形態の免震建物]
次に、図2乃至図6を参照して、第1実施形態に係る免震建物について説明する。ここで、図2は、図1のII-II矢視図であって、第1実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部の天端面と擁壁の高さ方向の途中位置で水平方向に切断して示した図である。また、図3は、図2のIII方向矢視図であって、擁壁の内側面の正面図であり、図4は、図2のIV-IV矢視図であって、地中梁と擁壁の途中位置で鉛直方向に切断して示した図である。さらに、図5(a)、(b)はいずれも、擁壁を構成する補剛材と基礎底盤との固定形態を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係る免震建物70の備える免震ピット30を構成する擁壁20は、背面の地盤G側に配設される外側面材21と、ピット空間31側に配設される内側面材22と、外側面材21の内側面21aと内側面材22の外側面22bにて挟持される複数の補剛材23とを有する。
外側面材21と内側面材22はいずれも、可及的に薄い面材であるのが好ましい。外側面材21の厚みの設計は、二つの補剛材23で支持される範囲が設計対象範囲とされることから、補剛材23間の間隔Kに対応する幅の外側面材21が、作用する土圧や土水圧に抗し得る剛性を備えた薄い面材となる。また、内側面材22も、厚みが設定された外側面材21と同じ厚みでかつ同じ素材の面材が適用されてよい。外側面材21と内側面材22としては、コンクリート製面材や鋼製面材等が適用できる。
一方、複数の補剛材23は、外側面材21と内側面材22の間において、擁壁20の延設する第1方向に所定の間隔Kを置いて配設されている。補剛材23は、鉛直方向に延設する鋼製の軸部材、コンクリート製の軸部材、硬質樹脂製の軸部材等であり、図示例の補剛材23は、定型の鋼材に含まれるH形鋼により形成される。
この補剛材23は、免震ピット30の施工の際に適用されている仮設山留め杭の転用品であってもよい。擁壁20を構成する補剛材23が、免震ピット30の施工の際に適用されている仮設山留め杭の転用品であることにより、仮設部材と本設部材が併用されることによって擁壁20の施工コストを削減することができる。
図示する擁壁20によれば、二枚の外側面材21と内側面材22の間に、複数の補剛材23が所定の間隔K(中空)を置いて設けられていることにより、擁壁全体の剛性が所望に低減される。このことにより、想定外の極大地震(レベル3相当の地震)時に、下部構造体40が、設計相対水平変位量を超える超過相対水平変位量にて横移動して内側面材22に衝突した際の衝撃荷重を低減することが可能になる。
下部構造体40において、地中梁45は、フーチング41に対して第2方向に幅狭であり、従って、地中梁45に比べて、フーチング41の外側面41aは擁壁20(の内側面材22の内側面22a)に対して相対的に近接している。
フーチング41の外側面41aと、内側面材22の内側面22aとの間の第2方向に平行な隙間である、第1隙間の長さをt1で示し、地中梁45の外側面45aと内側面材22の内側面22aとの間の第2方向に平行な隙間である、第2隙間の長さをt2で示す(t1<t2)。また、フーチング41のうち、第1方向に平行な幅をb1とし、高さをb2とする(図3、図4参照)。
擁壁20において、補剛材23を設置しない領域は、各フーチング41がそれぞれ、図3に示すように、投影領域A1とその左右の追加領域A2を合わせた拡大投影領域Aとなる。この拡大投影領域Aは、レベル3相当の極大地震時において、レベル2相当の大地震までを考慮した設計相対水平変位量以上に設定されている、第1隙間の長さt1を超える超過相対水平変位量によってフーチング41が擁壁20の内側面材22に衝突する、想定衝突領域となる。
ここで、投影領域A1は、フーチング41を第2方向に沿って擁壁20の内側面材22に投影した領域であり、フーチング41の外側面41aを側方から見た側面視形状を示しており、図示例は、幅b1,高さb2の長方形の面積となる。尚、フーチングの側面視形状に応じて、投影領域A1は変化し得る。
また、追加領域A2は、幅が第1隙間の長さt1の1/2であり、高さがb2の長方形の面積を有する。尚、追加領域A2の設定方法には様々な方法があり、図示例以外にも、地震応答解析の結果に基づき、例えば、追加領域A2の幅を第1隙間の長さt1の1/2倍から1倍の範囲で適宜設定してもよい。
極大地震時において、フーチング41(を含む下部構造体40)は様々な方向に横移動し得ることから、水平方向である第2方向に沿って擁壁20の内側面材22に衝突することはむしろ稀であることに鑑み、補剛材23を設置しない領域として、投影領域A1における第1方向の両端部に追加領域A2を含めた拡大投影領域Aを設定している。拡大投影領域Aは、第1方向の幅がb1+t1、高さがb2の長方形となる。
このように、拡大投影領域Aに補剛材23が設けられていないことにより、極大地震時にフーチング41が横移動して擁壁20の内側面材22に衝突し得る可能性の高い範囲において、補剛材23が設置されることを解消できる。
次に、図4及び図5を参照して、基礎底盤10に対する擁壁20の固定形態について説明する。
擁壁20は、可及的に薄厚で高い剛性を期待できない外側面材21及び内側面材22と、ある程度の剛性を期待できる補剛材23を構成要素とすることから、作用する土圧や土水圧に抗しながら擁壁20の立設姿勢を保持するには、剛性のある補剛材23を鉄筋コンクリート製の基礎底盤10に固定する必要がある。
図4に示す固定形態は、基礎底盤10の端部にある張り出し部11を擁壁20を超えて張り出させ、張り出し部11の途中位置に補剛材23を貫通させ、補剛材23の貫通箇所と張り出し部11を一体化させることにより、基礎底盤10に対する補剛材23の固定を図るものである。例えば、基礎底盤10と擁壁20がともに新設の場合は、基礎底盤10のコンクリート打設に先行して補剛材23を所定位置に立て込んでおき、基礎底盤10施工用のコンクリートを打設し、コンクリートが硬化することにより双方の一体化が図られる。尚、補剛材23において基礎底盤10を貫通する箇所にアンカーを設けておき、アンカーを基礎底盤10に埋設することにより、固定強度を高めることができる。
一方、図5(a)に示す固定形態は、基礎底盤10の端部の張り出し部11Aを補剛材23の内側面11aまで張り出させ、張り出し部11Aの端部と補剛材23の内側面11aを密着させることにより、基礎底盤10に対する補剛材23の固定を図るものである。この形態においても、補剛材23において基礎底盤10と密着する箇所にアンカーを設けておき、アンカーを基礎底盤10に埋設することにより、固定強度を高めることができる。
一方、図5(b)に示す固定形態は、基礎底盤10の端部にある張り出し部11を擁壁20を超えて張り出させ、張り出し部11の途中位置に補剛材23の下端23aを埋設させ、補剛材23の埋設箇所と張り出し部11を一体化させることにより、基礎底盤10に対する補剛材23の固定を図るものである。この形態においても、補剛材23において基礎底盤10に埋設される箇所にアンカーを設けておき、アンカーを基礎底盤10に埋設することにより、固定強度を高めることができる。
一方、図5(c)に示す固定形態は、基礎底盤10の端部にある張り出し部11を擁壁20を超えて張り出させ、張り出し部11の途中位置において補剛材23を貫通させ、補剛材23の貫通箇所と張り出し部11を一体化させることにより、基礎底盤10に対する補剛材23の固定を図るものである。この形態においても、補剛材23において基礎底盤10を貫通する箇所にアンカーを設けておき、アンカーを基礎底盤10に埋設することにより、固定強度を高めることができる。
上記いずれの固定形態ともに、擁壁20を構成する補剛材23を基礎底盤10に対して安定的に固定することができ、土圧や土水圧に抗する擁壁20の立設姿勢を保持することができる。また、擁壁20が、補剛材23を挟んで外側面材21と内側面材22の二層の面材を備えていることにより、擁壁20の内外からの水の浸入を防止することができる。
次に、図6を参照して、極大地震時に下部構造体40が横移動して擁壁20に衝突した際の衝撃を緩和する、免震ピット30の衝撃緩和性能について説明する。ここで、図6は、極大地震時において、下部構造体が横移動して擁壁に衝突している状態を示す図である。
既に説明したように、極大地震時には、フーチング41を含む下部構造体40は様々な方向に横移動し得ることから、例えば、図6に示すように第1方向と第2方向の間の水平斜め方向であるZ1方向にフーチング41が横移動し、擁壁20の内側面材22に衝突することが想定される。
しかしながら、図示例の免震ピット30では、想定衝突領域A(図3参照)に補剛材23が配設されていないことから、内側面材22にフーチング41が衝突した際に、内側面材22の例えば衝突領域BAは容易に破壊もしくは塑性変形することになり、発生する衝撃を可及的に低減することができる。また、内側面材22の衝突領域BAの外側に中空Kが存在することによっても発生する衝撃が緩和される。以上のことにより、下部構造体40(を含む建物本体60)に付与される衝撃を大きく緩和することができる。
また、擁壁20と下部構造体40の間の隙間Sには、特許文献1に示すように水平方向に厚みのある衝撃吸収部材が設けられていないことから、大地震までを考慮した設計相対水平変位量に基づく隙間(例えば、50cm乃至60cm程度)を概ね確保することができる。
[第2実施形態の免震建物]
次に、図7を参照して、第2実施形態に係る免震建物について説明する。ここで、図7は、第2実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部と擁壁を示す図である。
図7に示す第2実施形態に係る免震建物を構成する免震ピット30Aは、外側面材21と複数の補剛材23のみを備える擁壁20Aを有する点において、図2等に示す免震ピット30と相違する。
免震ピット30Aでは、第1隙間の長さt1を、外側面材21の内側面21aとフーチング41の外側面41aとの間の長さとして設定することができる。すなわち、極大地震時には、横移動したフーチング41が補剛材23と衝突せずに外側面材21の内側面21aに衝突し、外側面材21が破壊もしくは塑性変形することになる。
免震ピット30Aによれば、擁壁20A(外側面材21)とフーチング41の間の第1隙間の長さt1を確保しながら、免震ピット30に比べて山留め壁となる外側面材21とフーチング41を近接させることができる。このことにより、擁壁施工時おける地盤の掘削量を大幅に削減することができる。また、内側面材22の施工を省略できることから、材料コストの削減と工期の短縮を図ることができる。
[第3実施形態の免震建物]
次に、図8を参照して、第3実施形態に係る免震建物について説明する。ここで、図8は、第3実施形態に係る免震建物の下部構造体の一部と擁壁を示す図である。
図8に示す第3実施形態に係る免震建物を構成する免震ピット30Bは、補剛材23Aが現場施工にて形成される現場施工コンクリート版である点において、図2等に示す免震ピット30と相違する。
免震ピット30Bにおいても、免震ピット30と同様に、第1方向の幅がb1+t1、高さがb2の長方形である、想定衝突領域Aに中空Kを設け、それ以外の領域に現場施工コンクリート版23Aが形成される。
免震ピット30Bによれば、外側面材21と内側面材22の間に、間隔Kを設けた態様でコンクリートを打設することにより、コンクリートの硬化によって現場施工コンクリート版23Aが形成された際に、外側面材21と内側面材22が複数の現場施工コンクリート版23Aにて一体とされた擁壁20Bが形成される。
尚、図示を省略するが、免震ピットが、外側面材21と複数の現場施工コンクリート版23Aのみを備える擁壁を有する形態であってもよい。
[第4、第5実施形態の免震建物]
次に、図9及び図10を参照して、第4、第5実施形態に係る免震建物について説明する。ここで、図9(a)、(b)は順に、第4実施形態に係る免震建物を構成する擁壁の施工方法を説明する図である。また、図10(a)、(b)は順に、第5実施形態に係る免震建物を構成する擁壁の施工方法を説明する図である。
図9(b)に示す第4実施形態に係る免震建物を構成する免震ピット30Cは、擁壁を構成する補剛材23Bがプレキャストコンクリート版である点において、図8に示す免震ピット30Bと相違する。
図9(a)に示すように、擁壁20Cの施工においては、まず、仮設山留め壁25を施工し、仮設山留め壁25の内側において、第1方向に一定幅の外側面材21Aを順次設置し、各外側面材21Aの内側面21aの中央において、外側面材21Aよりも幅狭のプレキャストコンクリート版23BをZ2方向に固定する。この固定方法には、ビスや釘等の打ち込み手段、接着剤を介した接着等がある。
次いで、各プレキャストコンクリート版23Bの内側面23bに対して、第1方向に一定幅の内側面材22AをZ3方向に順次固定することにより、擁壁20Cが施工され、擁壁20Cを備える免震ピット30Cが形成される。
免震ピット30Cによれば、外側面材21の内側面21aと内側面材22の外側面22bにプレキャストコンクリート版23Bが接着やビス、釘等によって固定されることにより、コンクリートの硬化を待つことなく効率的な擁壁の施工が実現できる。
一方、図10(b)に示す第5実施形態に係る免震建物を構成する免震ピット30Dは、第1方向に並んで相互に接続される複数のプレキャストユニット24により形成される擁壁20Dを備えている点において、図9に示す免震ピット30Cと相違する。
プレキャストユニット24は、第1方向に一定幅の外側面材21A及び内側面材22Aの間に、プレキャストコンクリート版23Bが配設され、双方に固定されることにより形成される。工場もしくは現場ヤードにおいて複数のプレキャストユニット24が製作され、図10(a)に示すように、先行して設置されている仮設山留め壁25の内側において、第1方向に各プレキャストユニット24が並ぶように、Z4方向にプレキャストユニット24を設置し、隣接するプレキャストユニット24の端部同士を適宜の連結手段(図示せず)で連結することにより、擁壁20Dが施工され、擁壁20Dを備える免震ピット30Dが形成される。
免震ピット30Dによれば、擁壁20Dの全体が複数のプレキャストユニット24により形成されていることから、より一層効率的な擁壁の施工が実現できる。また、プレキャストユニット24を構成する外側面材21Aと内側面材22Aが薄い面材であることから、プレキャストユニット24の重量を抑制することができ、現場における揚重及び設置の際の作業性が向上する。
尚、図9に示す擁壁20Cにおいて、内側面材22Aが省略された形態であってもよい。また、図10に示す擁壁20Dにおいて、プレキャストユニット24が外側面材21Aとプレキャストコンクリート版23Bのみにより形成される形態であってもよい。
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
10:基礎底盤
11,11A:張り出し部
12:下方フーチング
20,20A,20B,20C,20D:擁壁
21,21A:外側面材
21a:内側面
22,22A:内側面材
22a:内側面
23:補剛材(H形鋼)
23a:下端
23b:内側面
23A:補剛材(現場施工コンクリート版)
23B:補剛材(プレキャストコンクリート版)
24:プレキャストユニット
25:仮設山留め壁
30,30A,30B,30C,30D:免震ピット
31:ピット空間
35:免震装置
40:下部構造体
41:フーチング
41a:外側面
45:地中梁
45a:外側面
50:上部構造体
51:下床版
52:柱
53:上床版
60:建物本体
70:免震建物
S:隙間
K:中空(間隔)
G:地盤
A:想定衝突領域(拡大投影領域)
A1:投影領域
A2:追加領域

Claims (8)

  1. 基礎底盤と、前記基礎底盤の周縁に立設している擁壁と、を備えている免震ピットの内部に免震装置が設置され、前記免震装置にて建物の下部構造体が支持され、前記擁壁と前記下部構造体の間に第1隙間が設けられている、免震建物であって、
    前記擁壁が、
    山留めに供される外側面材と、
    前記外側面材における前記免震ピットの内部に臨む内側面において、水平方向に間隔を置いて設けられている複数の補剛材と、
    前記補剛材における前記免震ピットの内部に臨む内側面に設けられている内側面材とを有し、
    前記外側面材と前記内側面材により複数の前記補剛材が挟持されており、
    前記下部構造体は、複数のフーチングと、前記複数のフーチングと相互に接合され、かつ前記フーチングよりも幅狭の地中梁と、を有し、
    前記免震装置は、鉛直方向において前記フーチングと前記基礎底盤との間に設けられており、
    前記擁壁は、平面視における第1方向に延設し、
    前記フーチングと前記地中梁は前記第1方向に沿って相互に接合されており、
    前記フーチングと前記擁壁は前記平面視において前記第1方向と直交する第2方向に前記第1隙間を空けて配置され、かつ、前記地中梁と前記擁壁は前記第2方向において第2隙間を空けて配置され、
    前記第1隙間は前記第2隙間よりも狭く、
    前記フーチングを前記第2方向に沿って前記擁壁に投影した投影領域において、前記補剛材が設けられておらず、
    前記第1隙間は、レベル2相当の大地震時における前記下部構造体と前記免震ピットとの間の設計相対水平変位量以上に設定されており、
    レベル3相当の極大地震時において、前記設計相対水平変位量を超える超過相対水平変位量により前記フーチングが前記擁壁に衝突する領域が、想定衝突領域として設定されており、
    前記擁壁において、前記想定衝突領域に前記補剛材が設けられておらず、
    前記内側面材の上面レベルは前記フーチングの上面レベル以上であり、前記極大地震時において該内側面材における前記想定衝突領域に前記フーチングが直接衝突した際に、該内側面材が破壊もしくは塑性変形することを特徴とする、免震建物。
  2. 前記補剛材が、前記基礎底盤に対して固定されていることを特徴とする、請求項に記載の免震建物。
  3. 前記補剛材が、定型の鋼材により形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の免震建物。
  4. 前記鋼材が、前記免震ピットの施工の際に適用されている仮設山留め杭の転用品であることを特徴とする、請求項に記載の免震建物。
  5. 前記補剛材が、現場施工にて形成される現場施工コンクリート版により形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の免震建物。
  6. 前記補剛材が、プレキャストコンクリート版により形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の免震建物。
  7. 前記補剛材が、プレキャストコンクリート版により形成されており、
    少なくとも前記外側面材と前記プレキャストコンクリート版とにより構成されるプレキャストユニットによって、前記擁壁が形成されていることを特徴とする、請求項に記載の免震建物。
  8. 前記投影領域における前記第1方向の両端部に、前記第1隙間の1/2の幅の追加領域を加えた拡大投影領域において、前記補剛材が設けられていないことを特徴とする、請求項記載の免震建物。
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