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JP7560245B2 - コイル部品及びコイル部品の製造方法 - Google Patents

コイル部品及びコイル部品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主にコイル部品及びコイル部品の製造方法に関する。
電子部品の磁性基体の材料として従来から様々な磁性材料が用いられている。例えば、インダクタなどのコイル部品用の磁性材料としてフェライトがよく用いられている。フェライトは、透磁率が高いことから、コイル部品の基体用の磁性材料として適している。
フェライト以外の電子部品用の磁性材料として、金属磁性粒子を含む金属磁性材料が知られている。金属磁性材料はフェライトよりも飽和磁束密度が高いため、大電流が流れるコイル部品の磁性基体の材料として適している。
磁性基体に含まれる各金属磁性粒子の表面には、隣接する金属磁性粒子間でショートが起きないようにするために絶縁膜が設けられる。しかしながら、金属磁性材料から作製される磁性基体は、フェライトから作製される磁性基体に比べて体積抵抗率が低く、絶縁破壊を起こしやすいという問題がある。特開2017-092431号公報には、内部導体間に3つ以上の金属磁性粒子を配置することで磁性基体の内部導体間の領域における絶縁性を向上させたコイル部品が開示されている。
特開2017-092431号公報
コイル部品には絶縁信頼性だけでなく小型化も求められる。内部導体の向かい合う部位同士の間隔を大きくすれば絶縁信頼性は向上するが、厚さ方向における寸法が大きくなってしまう。
本発明の目的の一つは、内部導体間での絶縁信頼性を確保しつつ小型化が可能なコイル部品及びこのようなコイル部品の製造方法を提供することである。本発明のこれ以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
本発明の一実施形態に係るコイル部品は、第1平均粒径を有する金属磁性粒子及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有するセラミックス粒子を含む基体と、前記基体内に設けられており、第1導体部と前記第1導体部と対向するように前記基体内に設けられた第2導体部とを含むコイル導体と、を備える。一実施形態において、前記第1導体部と前記第2導体部との間にある前記基体の導体間領域において、前記金属磁性粒子と前記セラミックス粒子との合計体積に対する前記セラミックス粒子の体積比率は、3vol%以上である。
本発明の一実施形態において、前記導体間領域における前記セラミックス粒子の前記金属磁性粒子に対する含有比率は、15vol%以下である。
本発明の一実施形態において、前記第1導体部及び前記第2導体部は金属を含む導電性材料から成り、前記基体は、前記導体間領域に前記金属の原子を実質的に含まない。
本発明の一実施形態において、前記セラミックス粒子は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、又はチタニアから成る。
本発明の一実施形態において、第2平均粒径は、第1平均粒の1/50以下である。本発明の一実施形態において、第2平均粒径は、第1平均粒の1/200以上である。
本発明の一実施形態は、上記のコイル部品を備える回路基板に関する。
本発明の一実施形態は、上記の回路基板を備える電子部品に関する。
本発明の一実施形態によるコイル部品の製造方法は、第1平均粒径を有する金属磁性粒子及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有するセラミックス粒子を含み、その内部にコイル導体が配置された成形体を準備する工程と、前記成形体を前記セラミックス粒子の溶融温度よりも低い温度で加熱する工程と、を備える。一実施形態において、前記金属磁性粒子と前記セラミックス粒子との合計体積に対する前記セラミックス粒子の体積比率が3vol%以上である。
本発明によれば、絶縁の信頼性の向上を図ることが可能なコイル部品が提供される。
本発明の一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。 図1のコイル部品の分解斜視図である。 図1のX-X線断面を模式的に示す断面図である。 図3の領域Aを拡大して模式的に示す拡大断面図である。
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
図1~図4を参照して、本発明の一実施形態に係るコイル部品1について説明する。コイル部品1は、本発明が適用されるコイル部品の一例である。図示の実施形態において、コイル部品1は、積層インダクタである。この積層インダクタは、電源ラインに組み込まれるパワーインダクタ及びそれ以外の様々なインダクタとして使用され得る。本発明は、図示されている積層インダクタ以外の様々なコイル部品に適用され得る。
図示のように、コイル部品1は、基体10と、基体10内に設けられたコイル導体25と、基体10の表面に設けられた外部電極21と、基体10の表面において外部電極21から離間した位置に設けられた外部電極22と、を備える。
コイル部品1は、回路基板2に実装されている。回路基板2には、2つのランド部3a、3bが設けられている。コイル部品1は、外部電極21,22の各々と回路基板2の対応するランド部3とをはんだにより接合することで当該回路基板2に実装されてもよい。回路基板2は、コイル部品1と、コイル部品1以外の様々な電子部品と、を備えることができる。回路基板2は、様々な電子機器に実装され得る。回路基板2が実装され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品に用いられる電子機器、及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものには限定されない。
基体10はおおむね直方体状に形成される。基体10は、第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fを有する。本体10は、これらの6つの面によってその外面が画定される。第1の主面10aと第2の主面10bとは互いに対向し、第1の端面10cと第2の端面10dとは互いに対向し、第1の側面10eと第2の側面10fとは互いに対向している。図1において第1の主面10aは本体10の上側にあるため、第1の主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10bを「下面」と呼ぶことがある。磁気結合型コイル部品1は、第2の主面10bが回路基板2と対向するように配置されるので、第2の主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。磁気結合型コイル部品1の上下方向に言及する際には、図1の上下方向を基準とする。本明細書においては、文脈上別に理解される場合を除き、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向、及び「厚さ」方向はそれぞれ、図1の「L軸」方向、「W軸」方向、及び「T軸」方向とする。L軸、W軸、及びT軸は互いに直交している。コイル軸Yは、T方向に沿って延びている。コイル軸Yは、例えば、平面視で長方形形状を有する第1の主面10aの対角線の交点を通り第1の主面10aに垂直な方向に延びる。
本発明の一実施形態において、コイル部品1は、長さ寸法(L軸方向の寸法)が0.2~6.0mm、幅寸法(W軸方向の寸法)が0.1~4.5mm、厚さ寸法(T軸方向の寸法)が0.1~4.0mmとなるように形成される。これらの寸法はあくまで例示であり、本発明を適用可能なコイル部品1は、本発明の趣旨に反しない限り、任意の寸法を取ることができる。一実施形態において、コイル部品1は、低背に形成される。例えば、コイル部品1は、その幅寸法が厚さ寸法よりも大きくなるように形成される。
図2及び図3に示されているように、基体10は、積層された複数の磁性体層を有する。図示のように、基体10は、本体部20、この本体部20の上面に設けられた上部カバー層18、この本体部20の下面に設けられた下部カバー層19を備える。本体部20は、積層された磁性体層11~16を含む。基体10においては、図2の上から下に向かって、上部カバー層18、磁性体層11、磁性体層12、磁性体層13、磁性体層14、磁性体層15、磁性体層16、磁性体層17、下部カバー層19の順に積層されている。
上部カバー層18は、4枚の磁性体層18a~18dを含む。この上部カバー層18においては、図2の下から上に向かって、磁性体層18a、磁性体層18b、磁性体層18c、磁性体層18dの順に積層されている。
下部カバー層19は、4枚の磁性体層19a~19dを含む。この下部カバー層19においては、図2の上から下に向かって、磁性体層19a、磁性体層19b、磁性体層19c、磁性体層19dの順に積層されている。
磁性体層11~磁性体層16の各々には、対応する導体パターンC11~C16が設けられている。これらの導体パターンC11~C16により、コイル導体25が構成される。このコイル導体25は、コイル軸Yを有する。各導体パターンC11~C16は、コイル軸Yの周りに延伸するように形成される。図示の実施形態において、コイル軸Yは、T軸方向に延伸しており、磁性体層11~磁性体層16の積層方向と一致する。
本発明の他の実施形態においては、磁性体層11~磁性体層16はL軸方向に積層されてもよい。この場合、磁性体層11~磁性体層16の表面に導体パターンC11~C16を形成することにより、コイル軸Yは、磁性体層11~磁性体層16の積層方向と同じL軸方向を向く。本発明の他の実施形態においては、磁性体層11~磁性体層16をW軸方向に積層してもよい。この場合、磁性体層11~磁性体層16の表面に導体パターンC11~C16を形成することにより、コイル軸Yは、磁性体層11~磁性体層16の積層方向と同じW軸方向を向く。
コイル部品1は、絶縁層11~絶縁層16、絶縁層18a~18d、及び絶縁層19a~19d以外にも、必要に応じて、任意の数の絶縁層を含むことができる。絶縁層11~絶縁層16、絶縁層18a~18d、及び絶縁層19a~19dの一部は、適宜省略することができる。図3においては、磁性体層間の境界が示されているが、本発明が適用された実際のコイル部品の基体においては磁性体層間の境界は視認できないこともある。
導体パターンC11~C16は、対応する絶縁層11~絶縁層16上にそれぞれ形成される。導体パターンC11~C16は、スクリーン印刷等の印刷、メッキ、エッチング、又はこれら以外の任意の公知の手法を用いて形成される。絶縁層11~絶縁層15の所定の位置には、ビアV1~V5がそれぞれ形成される。ビアV1~V5は、絶縁層11~絶縁層15の所定の位置に、絶縁層11~絶縁層15をT軸方向に貫く貫通孔を形成し、当該貫通孔に導電性材料を埋め込むことにより形成される。導体パターンC11~C16及びビアV1~V5は、導電性に優れた金属、例えば、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金を含んでいる。
本明細書においては、導体パターンC11~C16のうち隣接する導体パターンの間にある基体10の領域を導体間領域と呼ぶ。つまり、導体間領域は、基体10の一部の領域であり、隣接する導体パターンで挟まれた領域である。図3には、5つの導体間領域10Xが示されている。導体間領域10Xのうちの一つは、導体パターンC11と当該隣接パターンC11に隣接する導体パターンC12との間にある。他の導体間領域10Xも図示のように隣接する導体パターンの間に配置されている。
導体間領域10Xについて図4を参照してさらに説明する。図4には、図3の領域Aが拡大して示されている。領域Aは、導体パターンC12の一部と、導体パターンC13の一部と、導体パターンC12と導体パターンC13との間にある導体間領域10Xの一部と、を含んでいる。図示のように、基体10は、導体間領域10Xにおいて、複数の金属磁性粒子31及び複数のセラミックス粒子32を含んでいる。
金属磁性粒子31は、軟磁性金属材料から成る粒子又は粉末である。金属磁性粒子31用の軟磁性金属材料は、例えば、(1)金属系のFeもしくはNi、(2)合金系のFe-Si-Cr、Fe-Si-AlもしくはFe-Ni、(3)非晶質のFe―Si-Cr-B-CもしくはFe-Si-B-Cr、(4)またはこれらの混合材料の粒子である。
金属磁性粒子31の平均粒径は、例えば、2μm~10μmとされる。金属磁性粒子31の平均粒径は、2μm~10μmの範囲には限定されず適宜変更可能である。本明細書において、磁性粒子の「平均粒径」は、それと別の意味に解すべき場合を除き、体積基準平均粒径を意味する。磁性粒子の体積基準平均粒径は、JIS Z 8825に従って、レーザ回折散乱法により測定される。レーザ回折・散乱装置としては、例えば、日本国京都府京都市の堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(型番:LA-960)を用いることができる。
金属磁性粒子31は、互いに平均粒径の異なる2種類の金属磁性粒子を含んでいてもよい。金属磁性粒子31が互いに平均粒径の異なる2種類の金属磁性粒子を含む場合には、金属磁性粒子31の大きい方の平均粒径が例えば2μm~10μmとされ、金属磁性粒子31の小さい方の平均粒径が大きい方の平均粒径の例えば1/20~1/2とされる。平均粒径が互いに異なる金属磁性粒子31の小さい方の平均粒径は、例えば、0.2μm~1μmとされる。金属磁性粒子31は、互いに異なる平均粒径を有する3種類以上の金属磁性粒子を含んでもよい。
金属磁性粒子31の表面には絶縁膜が設けられる。金属磁性粒子31の表面の絶縁膜は、例えば、金属磁性粒子31の表面が酸化されることで形成される酸化膜であってもよい。金属磁性粒子31の表面には、絶縁性のコーティング膜が設けられてもよい。このコーティング膜は、例えばシリカから成る又はシリカを含む薄膜であってもよい。
セラミックス粒子32は、金属磁性粒子31よりも小さな平均粒径を有するセラミックス材料から成る粒子又は粉末である。セラミックス粒子32は、金属磁性粒子31と比べて高い電気抵抗率を有するセラミックス材料から成る。セラミックス粒子32は、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、もしくはチタニアから成る粒子又はこれらを混合した混合粒子である。セラミックス粒子32は、絶縁膜が設けられた金属磁性粒子31よりも高い絶縁性を有する。
セラミックス粒子32の平均粒径は、例えば10~50nmとされる。セラミックス粒子32の平均粒径は、金属磁性粒子31の平均粒径の1/50以下であってもよい。セラミックス粒子32の平均粒径は、金属磁性粒子31の平均粒径の1/100以下であってもよい。一実施形態において、セラミックス粒子32の平均粒径は、金属磁性粒子31の平均粒径の1/200以上であってもよい。セラミックス粒子32の平均粒径は、金属磁性粒子31の平均粒径の1/50以下且つ1/200以上であってもよい。金属磁性粒子31が互いに平均粒径の異なる2種類以上の金属磁性粒子を含む場合には、セラミックス粒子32の平均粒径は、複数種類の金属磁性粒子31のうちの最も平均粒径が大きなものの平均粒径と比較される。つまり、セラミックス粒子32の平均粒径は、複数種類の金属磁性粒子31のうちの最も平均粒径が大きなものの平均粒径の1/50以下であってもよい。
本発明の一実施形態では、基体10の導体間領域10Xにおいて、金属磁性粒子31とセラミックス粒子32との合計体積に対するセラミックス粒子32の含有量は、体積比率換算で3vol%以上とされる。本発明の一実施形態では、基体10の導体間領域10Xにおいて、金属磁性粒子31とセラミックス粒子32との合計体積に対するセラミックス粒子32の含有量は、体積比率換算で15vol%以下とされる。
基体10に含まれる金属磁性粒子31の体積は、基体10を切断して得られる一断面に現れる各金属磁性粒子の粒径を前述したJIS Z 8825に従ったレーザ回折散乱法で測定し、この測定結果として得られる粒径を体積に換算することで得られる。粒径から体積への換算を行う際は、JIS Z 8825に従ったレーザ回折散乱法の測定原理に鑑みて、各磁性粒子が球形と仮定される。セラミックス粒子32の体積も金属磁性粒子31の体積と同様の方法で測定及び算出される。
本発明の一実施形態において、導体間領域10Xには、コイル導体25に含まれる金属の原子が実質的に存在しない。例えば、導体パターンC11~C16がある金属(例えば、Ag)を含有する場合、導体間領域10Xに含まれる当該金属の元素量が導体パターンC11~C16内の所定領域に含まれる当該金属の元素量の1%以下である場合に、導体間領域10Xにはコイル導体25に含まれる金属の原子が実質的に存在しないと判定することができる。より具体的には、コイル部品1をその厚さ方向(T方向)に沿って切断して導体パターンC11~C16の少なくとも1つ及び導体間領域10Xを含む断面を露出させ、当該断面の導体パターンC11~C16に含まれる領域及び導体間領域10Xに含まれる領域においてエネルギー分散型X線分析(EDS)を行うことで、導体パターンC11~C16に含まれる金属の元素量と導体間領域10Xに含まれる当該金属の元素量とを比較することができる。例えば、導体パターンC11~C16がAgを含む場合、図4に示されている導体パターンC12内の1μm四方の領域A1及び導体間領域10X内の1μm四方の領域A2におけるAg元素の元素量をそれぞれEDSにより分析し、領域A2において得られたAg元素の検出ピークのカウント値が領域A1において得られたAg元素の検出ピークのカウント値の1/100以下である場合に、導体間領域10Xには導体パターンC11~C16に含まれる金属(すなわち、コイル導体25に含まれる金属)の原子が実質的に存在しないと判定することができる。従来のコイル部品における基体は、上記実施形態のセラミックス粒子32に相当するセラミックス粒子を含んでいないため、導体パターンに含まれる金属原子が導体間領域に拡散する。このため、従来のコイル部品における基体の導体間領域には、コイル導体(導体パターン)に含まれる金属の原子が存在している。これに対して、本発明の実施形態においては、導体間領域10Xにセラミックス粒子32を3vol%以上含んでいるため、導体パターンC11~C16から金属原子が導体間領域10Xに拡散しない。その結果、導体間領域10Xには導体パターンC11~C16が含有する金属原子が実質的に存在しない。このため、基体10の導体間領域10Xにおける物性値は、導体パターンC11~C16が含有する金属原子による影響(例えば、当該金属原子が導体間領域10Xに拡散することによる影響)を受けない。例えば、導体間領域10Xにおける絶縁耐性は、導体パターンC11~C16が含有する金属原子による影響を受けない。つまり、導体パターンC11~C16が含有する金属原子は、導体間領域10Xの絶縁抵抗値を実質的に低下させない。
基体10には、金属磁性粒子31同士の結合を強化するための結合材が含まれていてもよい。基体10に含まれる結合材は、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂であってもよく、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、又はアクリル樹脂である。
基体10は、導体間領域10X以外の領域においても、金属磁性粒子31及びセラミックス粒子32を含んでいてもよい。基体10の導体間領域10X以外の領域におけるセラミックス粒子32の含有量は、導体間領域10Xにおけるセラミックス粒子32の含有量より少なくともよい。例えば、Y軸を中心とする径方向においてコイル導体25よりも内側にある基体10のコア領域においては、セラミックス粒子32の含有量を導体間領域10Xにおける含有量よりも少なくすることができる。これにより、コア領域における金属磁性粒子31の含有量を多くすることができるため、コイル部品1の実効透磁率を向上させることができる。
次に、コイル部品1の製造方法の一例を説明する。本発明の一実施形態において、コイル部品1は磁性体シートを用いたシート製法により作製される。シート製法によりコイル部品1を作製する場合には、まず、上部カバー層18となる上部積層体、中間積層体、及び下部カバー層19となる下部積層体を形成する。上部積層体は磁性体層18a~18dとなる複数の磁性体シートを積層することによって形成され、下部積層体は磁性体層19a~19dとなる複数の磁性体シートを積層することによって形成され、中間積層体は磁性体層11~16となる複数の磁性体シートを積層することによって形成される。磁性体シートは、例えば金属磁性粒子31及びセラミックス粒子32を含む粒子群を樹脂と混練して得られたスラリーを成型金型に入れて所定の成形圧力を加えることで作製される。金属磁性粒子31及びセラミックス粒子32と混練される樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性に優れた樹脂材料が用いられ得る。
中間積層体は、導体パターンC11~C16に対応する導体パターンが形成された複数の磁性体シートを積層することによって形成される。中間積層体用の磁性体シートの各々には積層方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔が形成された磁性体シートにスクリーン印刷等により導体パターンC11~C16に対応する導体パターンが形成される。このとき各導体パターンを構成する金属材料が磁性体シートの貫通孔内に埋め込まれ、ビアが形成される。各導体パターンC11~C16を含むシートをそれぞれ形成した後、ベースフィルムを除去し、導体パターンC16を含むシートから導体パターンC11を含むシートまで順番に積層することで中間積層体が得られる。
次に、上記のように作製された中間積層体を上下から上部積層体及び下部積層体で挟み込み、この上部積層体及び下部積層体を中間積層体に熱圧着して本体積層体を得る。次に、ダイシング機やレーザ加工機などの切断機を用いて当該本体積層体を所望のサイズに個片化することでチップ積層体が得られる。
次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を加熱処理する。チップ積層体への加熱処理は、チップ積層体に含まれるセラミックス粒子32の溶融温度よりも低い温度で行われる。セラミックス粒子32は、1000℃以上で溶融する。セラミックス粒子32がシリカである場合には、セラミックス粒子は約1500℃で溶融する。チップ積層体への加熱処理は、例えば400℃~900℃で20分間~120分間行われる。セラミックス粒子32は、積層体への加熱処理において酸化、還元されない。セラミックス粒子32の材料は、900℃以下では酸化、還元の反応しないものが選ばれる。
次に、加熱処理されたチップ積層体の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成する。以上の工程により、コイル部品1が得られる。
コイル部品1は、シート製法以外の当業者に知られている方法、例えばスラリービルド法や薄膜プロセス製法により作製されてもよい。スラリービルド法や薄膜プロセス製法によってコイル部品1を作製することにより、基体10の導体間領域10Xにおけるセラミックス粒子32の含有量と、Y軸を中心とする径方向においてコイル導体25よりも内側にある基体10のコア領域のセラミックス粒子32の含有量を異ならせることが容易となる。例えば、基体10のコア領域におけるセラミックス粒子32の含有量を導体間領域10Xにおけるセラミックス粒子32の含有量よりも少なくすることで、コア領域における金属磁性粒子31の含有量を多くすることができるため、コイル部品1の実効透磁率を向上させることができる。
図示されている積層インダクタは本発明が適用可能なコイル部品の例であり、本発明は積層インダクタ以外の様々な種類のコイル部品に適用され得る。例えば、本発明は、平面コイルにも適用され得る。
本発明によるコイル部品は、積層プロセスではなく圧縮成形プロセスにより作製されてもよい。コイル部品1を圧縮成形プロセスにより製造する場合には、まず金属磁性粒子31及びセラミックス粒子32を含む粒子群とバインダー樹脂とを混練してスラリーを作成する。次に、コイル導体が設置された成形金型内に当該スラリーを入れ、成形圧力を加えることで内部にコイル導体を含む成形体を得る。次に、当該成形体にセラミックス粒子32の溶融温度よりも低い温度で加熱処理を行うことで基体10が得られる。次に、基体10に導体ペーストを塗布することにより、基体10の表面に外部電極21及び外部電極22が形成される。以上のようにして、圧縮成形プロセスによりコイル部品1が作製される。
本発明の実施例について説明する。まず、Fe―Si-Cr(Fe:92wt%、Si:3.5%、Cr:4.5wt%)の組成を有する金属磁性粒子を準備した。続いて、この金属磁性粒子の粒子と、セラミックス粒子としてのシリカ粒子と、を表1に示す比率で混合して混合粉を得た。表1には、この混合粉における金属磁性粒子とセラミックス粒子との合計体積に対する当該金属磁性粒子及び当該セラミックス粒子の含有量をそれぞれ体積比率換算で表している。次に、この混合粉をポリビニルブチラールと混練してスラリーを作成した。次に、このスラリーをダイコータなどの塗工機を用いて長尺状にシート化し、これを裁断することで、8μmの厚さを有する直方体形状の磁性体シートを複数作成した。このようにして、セラミックス粒子の含有量が異なる9種類の磁性体シート(第1磁性体シート~第9磁性体シートの9種類の磁性体シート)をそれぞれ複数作製した。
次に、第1磁性体シートの所定の位置にレーザなどを用いて貫通孔を設け、次に、当該貫通孔にAgを含む導電性ペーストを埋め込むとともに、Agを含む導電性ペーストを当該磁性体シートに所定パターンで印刷した。このようにして導体パターンが形成された第1磁性体シートを、異なる第1磁性体シートに形成された導体パターン同士が貫通孔に埋め込まれた導電体を介して電気的に接続されるように積層して60℃にて仮圧着を行い積層体を得た。同様に、第2磁性体シート~第9磁性体シートの各々を用いて積層体を作製した。次に、ダイシング機により、これらの9種類の積層体の各々を個片化した。次に、この個片化されたチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体に対して800℃での加熱処理を実施した。加熱処理後の評価チップに外部電極を形成して、9種類の評価用コイル導体(試料A1~A9)を得た。この評価用コイル導体のL方向、W方向、及びT方向における寸法はそれぞれ1.6mm、0.8mm、0.8mmであり、内部に4.5ターンのコイル導体を有していた。
試料A1~A9をそれぞれ20個ずつ準備し、この試料A1~試料A9の評価用コイル導体の各々に対してたわみ試験を行った。たわみ試験は、以下のようにして実施した。まず、評価用コイル導体を厚さ0.8mmのガラスエポキシ基板に実装した。90mm間隔で配置された半径2.5mmの一組の支持柱間に当該基板を取り付け、この支持柱間に取り付けられた基板の下面の中央を、先端がR340の曲率半径を有する圧子で2.5mm/秒の速度で10mmの深さまで押し込むことで上記基板をたわませた。このたわみ試験は、評価用コイルの抵抗をモニタしながら実施した。評価用コイル導体のうち圧子が10mmの深さまで押し込まれたときに、導通破壊がなくクラックが視認されなかったものを良品とした。
表1に、たわみ試験の試験結果を示す。表1に示されているように、セラミックス粒子の含有量が15vol%以下の試料A1~試料A6については、それぞれ20個の評価用コイル部品のいずれにおいても、導通破壊もクラックも発生しなかった。このように、コイル導体の基体がセラミックス粒子を含む場合であっても、その含有量が15vol%以下であれば、コイル部品は十分なたわみ強度を有することがわかった。
Figure 0007560245000001
上記のように導体間領域10Xにおけるセラミックス粒子32の含有量を増加させるとたわみ強度が劣化する。導体間領域10Xにおけるセラミックス粒子32の含有量をさらに増加させ、例えば100vol%とすると、製造過程において層間剥離(デラミネーション)が発生しやすくなる。この製造過程による層間剥離は、歩留まりを劣化させるため望ましくない。また、導体間領域10Xにおけるセラミックス粒子32の含有量が100vol%となると、コイル部品においてインダクタンスの劣化が生じる。
次に、試料A1~A9の作成工程と同様にして9種類の磁性体シート(第1磁性体シート~第9磁性体シート)をそれぞれ複数作製した。次に、2枚の第1磁性体シートの各々にAgを含む導電性ペーストを所定パターンで印刷した。この導体パターンが印刷された2枚の第1磁性体シートを互いの導体パターン同士が対向するように積層した。この2枚の第1磁性体シートの上面及び下面に導体パターンが印刷されていない所定数の第1磁性体シートを積層して60℃にて仮圧着を行い積層体を得た。同様に、第2磁性体シート~第9磁性体シートの各々を用いて積層体を作製した。次に、ダイシング機により、これらの9種類の積層体の各々を個片化した。次に、この個片化されたチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体に対して800℃での加熱処理を実施した。加熱処理後の評価チップに外部電極を形成して、9種類の評価用コンデンサチップ(試料B1~B9)を得た。この評価用コンデンサチップのL方向、W方向、及びT方向における寸法はそれぞれ1.6mm×0.8mm×0.8mmである。
また、試料B1~B9の評価用コンデンサチップの各々について、外部電極間に加える電圧を段階的に増加させ、ショートが発生したときの電圧を計測した。このショートが発生したときの電圧を電極間の間隔で除した値を各試料の耐電圧として表2にまとめた。
Figure 0007560245000002
表2に示されているように、セラミックス粒子の含有量が3vol%以上の試料B3~B9については、耐電圧が2.0V/μm以上であった。コイル部品の大電流化が望まれている電源系のインダクタでは、耐電圧が2V/μm以上であることが望ましい。表2に示されているように、セラミックス粒子の含有量が3vol%以上であれば、耐電圧が2V/μm以上の基体が得られることが分かった。当該基体をコイル部品の基体として用いることにより耐電圧が2V/μm以上のコイル部品が得られる。
続いて、上記の実施形態による作用効果について説明する。上記の一実施形態において、基体10は導体間領域10Xにおいて金属磁性粒子31よりも絶縁性が高いセラミックス粒子32を含むので、基体10の導体間領域10Xにおける体積抵抗率を向上させることができる。これにより、導体パターンC11~C16間での絶縁耐性、すなわち耐電圧が改善したコイル部品1が得られる。特に、セラミックス粒子32の含有量が3vol%以上の場合には、2V/μm以上の高い耐電圧を有するコイル部品1が得られる。
上記の実施形態によれば、セラミックス粒子32の平均粒径が金属磁性粒子31の平均粒径よりも小さいので、セラミックス粒子32は金属磁性粒子31の間の隙間に入り込む。よって、セラミックス粒子32を添加しても導体間領域10Xの体積はほとんど増加しない。よって、上記実施形態によって、導体間領域10Xお寸法の増加を抑制しつつ導体間領域10Xの体積抵抗率を向上させることができる。セラミックス粒子32の平均粒径を金属磁性粒子31の平均粒径の1/50以下または1/100以下とすることにより、セラミックス粒子32が金属磁性粒子31の粒子間に入り込みやすくなる。この場合、セラミックス粒子32を添加しても導体間領域10Xの寸法は実質的に増加しないので、導体間領域10Xの寸法を増加させることなく体積抵抗率を向上させることができる。セラミックス粒子32の平均粒径は金属磁性粒子31の平均粒径の1/200より小さくなるとスラリーの凝集等により、セラミックス粒子32は金属磁性粒子31の間の隙間に入りにくくなってしまう。このためセラミックス粒子32の平均粒径を金属磁性粒子31の平均粒径の1/200以上とすることが好ましい。
導体パターンC11~C16は、金属を含んでいる。この金属の一部はカチオンとして導体パターンC11~C16に存在している。コイル部品1の製造時の加熱処理において金属磁性粒子31に含まれる金属元素(例えば、Fe)が酸化される。金属磁性粒子31が酸化するときに放出される電子と導体パターンC11~C16内の金属(例えばAg)のカチオン(Ag+)とが導体間領域10Xにおいて反応すると、導体間領域10Xに当該金属(Ag)が析出する。つまり、導体パターンC11~C16に含まれる金属は、導体間領域10Xに拡散し得る。上記の実施形態によれば、導体間領域10Xにセラミックス粒子32が存在することにより、導体パターンC11~C16と導体間領域10Xに含まれる金属磁性粒子31との接触面積が減少するため、導体パターンC11~C16に含まれる金属の原子が導体間領域10Xに拡散しにくくなる。一実施形態においては、導体パターンC11~C16に含まれる金属の原子が導体間領域10Xには実質的に存在しない。導体パターンC11~C16に含まれる金属の原子が導体間領域10Xに拡散すると導体間領域10Xの絶縁性が劣化する要因となるが、上記の実施形態によれば、導体パターンC11~C16に含まれる金属の原子が導体間領域10Xに拡散しないため、導体間領域10Xの絶縁耐性、すなわち耐電圧をさらに向上させることができる。
上記の実施形態によれば、基体10の導体間領域10Xにおいて、金属磁性粒子31とセラミックス粒子32との合計体積に対するセラミックス粒子32の含有量は、体積比率換算で15vol%以下とされるので、セラミックス粒子32を添加することによる基体10のたわみ強度の劣化を抑制しつつ導体間領域10Xの体積抵抗率を向上させることができる。金属磁性粒子31を含む基体10のたわみ強度は、基体10中の金属磁性粒子31同士の結合により確保されている。セラミックス粒子32の含有量を15vol%以下とすることにより、金属磁性粒子31同士の結合が阻害されず、その結果、基体10のたわみ強度の低下を防止又は抑制できる。
上記の実施形態によれば、コイル部品1の製造工程における加熱がセラミックス粒子32の溶融温度よりも低い温度で行われるので、セラミックス粒子32の流動による基体10の形状の歪みを防止できる。これにより、コイル導体25の対向する部位の間隔が小さくなることによる絶縁耐性、すなわち耐電圧の低下を防止することができる。
上記の実施形態によれば、コイル部品1の耐電圧を従来に比べて高くすることができる。これにより、コイル導体25の対向する部位の間隔を、セラミックス粒子を含まない従来のコイル部品におけるコイル導体間の間隔よりも小さく設計しても、当該従来のコイル部品と同等の絶縁耐性を得ることができる。これにより部品のサイズを低背化することができる。
スマートフォンなどの情報通信機器と比較して、自動車の電装品に用いられるコイル部品には、大電流が流されるのみならず高い電圧が印加されることがある。このため、自動車の電装品に使用されるコイル部品には、主に情報通信機器に使用されている従来のコイル部品と比べて2倍以上の高い絶縁性が要求されることがある。上記の実施形態によるコイル部品は、かかる高い絶縁性が要求される用途にも用いられ得る。
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
1 コイル部品
10 基体
10X 導体間領域
21、22 外部電極
25 コイル導体
31 金属磁性粒子
32 セラミックス粒子
C11~C16 導体パターン

Claims (6)

  1. 属磁性粒子セラミックス粒子と樹脂とを含む複数の磁性体シートであって、導体パターンが形成された磁性体シートを含む複数の磁性体シートを積層させることにより、隣り合う磁性体シートに形成された導体パターン同士が対向し、対向する導体パターンの間に導体間領域を形成する積層体を準備する工程と、
    前記積層体を前記セラミックス粒子の溶融温度よりも低い温度である400℃~900℃で加熱する加熱処理工程と、
    を備え、
    前記加熱処理工程後の前記積層体の前記導体間領域においては、
    前記金属磁性粒子と前記セラミックス粒子との合計体積に対する前記セラミックス粒子の体積比率が3vol%以上であり
    前記金属磁性粒子は、第1平均粒径を有し、表面にシリカを含む絶縁膜を有し、
    前記セラミック粒子は、前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する、
    積層インダクタの製造方法。
  2. 前記加熱処理工程後の前記積層体は、前記導体間領域を含む複数の絶縁層、及び前記複数の絶縁層の間にそれぞれ配された前記導体パターンを含み、
    前記積層体は、前記導体間領域を除く領域において、前記複数の絶縁層間の境界が視認できないように形成される、
    請求項1に記載の積層インダクタの製造方法。
  3. 前記セラミック粒子は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、又はチタニアを含む、
    請求項1又は2に記載の積層インダクタの製造方法。
  4. 前記加熱処理工程後の前記積層体の前記導体間領域において、複数の前記金属磁性粒子は結合材により結合される、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層インダクタの製造方法。
  5. 前記結合材は、前記積層体に含まれる前記樹脂、もしくは該樹脂が前記加熱処理工程を経たもの、を含む、請求項4に記載の積層インダクタの製造方法。
  6. 前記結合材は、熱硬化性樹脂を含む、請求項4に記載の積層インダクタの製造方法。
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